説明

軸受冷却装置及びポンプ

【課題】軸受の温度上昇に対して十分な冷却効果が得られ、且つ、軸受周りに余計なシールドスペースを必要とせず、また、オイルバスのオイル交換のようなメンテナンスの必要のない軸受冷却装置、及び、その軸受冷却装置を用いたポンプの提供。
【解決手段】軸受を収容する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングに隣接して回転軸に固定され、該回転軸と一体に回転する回転円板とを備え、前記回転円板は、前記軸受ハウジングに対向する側に設けられた凹部と、前記凹部に設けられた1つ又は複数の羽根と前記凹部から、前記回転円板の前記軸受ハウジングとは反対の面まで貫通する1つ又は複数の貫通穴とを有していることを特徴とする軸受冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大口径のポンプ等に用いられる軸受の軸受冷却装置、及び、その軸受冷却装置を用いたポンプに関し、手間のかかるメンテナンスを必要とせず、また、回転部位の危険性を低減させた軸受冷却装置及びポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ、送風機等の回転機械には、その回転体を支える要素として、転がり軸受が広く使用されている。軸受が支える荷重、回転数により異なるものの、軸受は回転により摩擦熱を生じる。軸受が過度に加熱されると、熱膨張により望ましい性能を発揮できなくなる、潤滑材が焼けてしまう等のトラブルが起きる。従って、軸受は適切に冷却されなければならない。
【0003】
例えば、大口径ポンプの場合、回転数はそれほど大きくないものの、軸受の受ける荷重が大きいため、軸受での発熱量は大きくなる。このような大口径ポンプを、潤滑材としてのグリースを軸受に充填したのみで運転した場合、軸受の温度上昇が軸受の使用許容値を超えてしまうことがある。従って、このような運転時の軸受の温度上昇を防ぐため、一般的に、軸受の収容されたハウジングにファンで風をあてて軸受を冷却する空冷や、軸受の収容されたハウジングをオイルバスにしてそのオイルによって軸受を冷却する油冷が行われている。
【0004】
また、軸受の冷却方法としては、軸受を収容するハウジングに冷水を通すジャケットを接触させて、別のポンプにより冷水を循環させて軸受を冷却する水冷もある。しかし、水冷の場合、冷水用の配管等の設備が複雑になる上、配管・バルブ・水を供給するポンプ等の付帯設備が必要となり、コストもかかることから殆ど行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−136249号公報
【特許文献2】特開昭60−39335号公報
【特許文献3】特開2001−226845号公報
【特許文献4】特開2001−314744号公報
【特許文献5】特開2007−192265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファンを用いた空冷は、構成も単純で効果があるが、回転中のファンに作業員の手などが触れた場合大変危険である。そのため、通常、ファンの周りを薄板や網板などでシールドするが、シールドのための薄板や網板を軸受周辺に取り付けなくてはならず、それらの設置スペースが必要になる上、部品点数も増えてしまう。
【0007】
また、オイルバスを用いた油冷は、軸や、軸受をオイルバスに浸漬して冷却するためファンによる空冷と同様に十分な冷却効果がある。しかし、冷却に用いられるオイルは、定期的に交換しなければならず、メンテナンスの手間が増える上、毎回オイル交換のためのコストがかかりランニングコストが上がってしまう。また、オイルの補充を忘れたような場合には、軸受の温度が上昇し潤滑材のオイルの消耗が激しくなり、軸受部のかじりや破損の原因ともなる。また、交換した使用済みオイルの廃棄等、環境負荷が高くなるという問題も生じる。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みて為されたものであり、軸受の温度上昇に対して十分な冷却効果が得られ、且つ、軸受周りに余計なシールドスペースを必要とせず、また、オイルバスのオイル交換のようなメンテナンスの必要のない軸受冷却装置、及び、その軸受冷却装置を用いたポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の一形態では、
軸受を収容する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングに隣接して回転軸に固定され、該回転軸と一体に回転する回転円板とを備え、
前記回転円板は、前記軸受ハウジングに対向する側に設けられた凹部と、
前記凹部に設けられた1つ又は複数の羽根と
前記凹部から、前記回転円板の前記軸受ハウジングとは反対の面まで貫通する1つ又は複数の貫通穴とを有していることを特徴とする軸受冷却装置を提供する。
【0010】
本発明の軸受冷却装置において、前記凹部の外周側は、前記軸受ハウジングに向かって開口するように傾斜するテーパ面又は曲面を有していることが好ましい。
【0011】
本発明の軸受冷却装置において、前記回転円板と前記軸受ハウジングとの距離が0.01〜20mmの範囲にあることが好ましい。
【0012】
本発明の軸受冷却装置において、前記回転円板は、前記軸受ハウジングとは反対の面に、前記貫通穴よりも内周側に、前記軸受ハウジングとは反対の方向に開口するように傾斜する面を有していることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一形態は、回転軸に固定された羽根車と、該羽根車を収容するポンプケーシングを備えたポンプであって、
前記回転軸を支える軸受を有し、該軸受の冷却装置として上述のような軸受冷却装置を採用したことを特徴とするポンプを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転円板の回転によって、貫通穴を通して供給される空気が凹部の羽根によって空気流となり、軸受ハウジング表面に沿って流れる。この空気流により軸受を十分に冷却することができる。そして、回転するのが円板であるため、軸受周りに余計なシールドスペースを必要とせず、また、オイルバスのオイル交換のようなメンテナンスの必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る軸受冷却装置を採用した横軸両吸込渦巻ポンプの概略断面図である。
【図2】図1に示す一方の軸受冷却装置の要部拡大図である。
【図3】図1、2に示す軸受冷却装置の回転円板の詳細図である。
【図4】回転円板の凹部に設けられる凸部の形状の一例を示す図である。
【図5】回転円板の凹部に設けられる凸部の形状の他の一例を示す図である。
【図6】軸受カバーの変形例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る軸受冷却装置の回転円板の変形例を示す詳細図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る軸受冷却装置の回転円板の他の変形例を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照にして解説する。
図1は、本発明の実施形態に係るポンプの断面図を示しており、本発明の実施形態に係る軸受冷却装置が適用されている。ポンプ1は両吸込の横軸渦巻ポンプであり、回転軸2には羽根車3が固定されている。羽根車3はポンプケーシング4内に収容され、回転軸2がポンプケーシング4を貫通する部分にはシール部材5が挿入されている。回転軸2は、羽根車3、ポンプケーシング4を挟んで両側で、軸受装置6に支えられている。そして、この両方の軸受装置6に軸受冷却装置7が備わっている。
【0017】
回転軸2の右側は、軸受装置6を貫通しており、図示しない電動機等の駆動源に接続される。ポンプ1は電動機等により回転駆動され、図示しない吸込管からの吸い込まれた取扱液は、羽根車3により加圧され、吐出ボリュート9を介して図示しない吐出管に送水される。
【0018】
図2は図1に示した軸受冷却装置7を備えた軸受装置6の要部拡大図である。なお、図2では図1に示す右側の回転軸2が貫通している側の軸受装置を図示しているが、図1の左側の軸受装置も構成に根本的な差はなく、特に、軸受冷却装置については同一であるため、図1右側の軸受装置及び軸受冷却装置のみを説明する。
【0019】
転がり軸受である玉軸受10は、回転軸2と軸受ケーシング11との間に設置されている。軸受カバー12は、軸受ケーシング11の大きな開口を塞ぎ、軸受ケーシング11と軸受カバー12とで軸受ハウジング13が構成される。玉軸受10は軸受ハウジング13内に収容される。軸受ケーシング11、軸受カバー12と回転軸2との間には、それぞれオイルシール14、15が挿入されていて、玉軸受10の潤滑材であるグリースが軸受ハウジング13外に漏れるのを防いでいる。
【0020】
軸受ハウジング13に隣接して、軸受ハウジング外表面に沿う風を起こす回転円板16が、回転軸2と共に回転するように固定されている。回転円板16は、凹部17と、その凹部17内に羽根18、更に凹部17からその反対側の面(回転円板16の裏面)まで貫通する貫通穴19を有する。図2中の矢印は回転円板16により起こされる風の向きを示す。風は回転軸半径方向全周にわたって起きるが、図では、その一部のみを図示している。
【0021】
軸受冷却装置7は、軸受を収容する軸受ハウジング13と回転円板16によって構成される。玉軸受10の熱は軸受ハウジング13に伝達し(本実施形態では、玉軸受10から、軸受ケーシング11、軸受カバー12の順に伝達する。)、軸受ハウジング13が回転円板16からの空気流によって冷却されることにより、玉軸受10が冷却されることになる。
【0022】
図3は、回転円板16の詳細図である。図3(a)は、図2において回転円板16を軸受ハウジング13の方向から見た図面であり、図3(b)は、A−A断面、図3(c)は、図3(a)の裏面である。回転円板16は、中心部に回転軸を差し込むための貫通穴を有する円環形状をしている。回転円板16の軸受ハウジング13に対抗する面には、円環状の凹部17が形成されており、その凹部17は、基部20、側部21、テーパ部22によって囲まれている。
【0023】
テーパ部22には、軸受ハウジング13に向かって開口するような傾斜を有するテーパ面23がついており、テーパ面23は、軸方向(図でいう水平方向)に対して5〜80度の角度を持つように形成されているのが好ましい。また、側部21には、凹部17から反対側の面まで貫通する貫通穴19が設けられている。貫通穴19は、1つまたは2つ以上の複数設けられるが、複数の貫通穴19を設ける場合には、貫通穴19の位置は、同一円周上に等角度に配されるのが好ましい。本実施形態では、貫通穴19は、基部20の直近で、凹部17の最内周部分に12個設けられている。
【0024】
また、回転円板16は、凹部17内に矩形板状の羽根18を有する。回転円板16は、羽根18を1つまたは2つ以上の複数有するが、複数の羽根18を有する場合は、羽根18の位置は、円板の中心振り分けで等角度に配されるのが好ましい。本実施形態では4つの羽根18が設けられている。
【0025】
基部20には、軸に垂直な方向(半径方向)に止め穴24が4つ設けられ、その止め穴24の内面には、ネジ溝が切られている。回転円板16は、この止め穴24に差し込まれたネジによって、回転軸2と一体に回転するように固定される。また、テーパ部22のそれら止め穴24それぞれに対応する位置には、ネジ固定用穴25が設けられている。
【0026】
また、回転円板16の凹部とは反対側の面(裏面)の最内周部、回転軸2連接する部分には、水切り部26が設けられている。水切り部26は、回転軸2に連接して半径方向に垂直に広がる垂直面27と、垂直面27に連接して、図2のポンプケーシング側に開口するような傾斜を有する水切りテーパ面28とで構成される。
【0027】
水切りテーパ面28は、貫通穴19よりも内周側にある必要がある。また、水切りテーパ面28の最外周部は、軸方向に対して貫通穴19の裏面側の端と同じか、それよりも軸受ハウジング13とは反対側のポンプケーシング寄りの位置にあることが好ましい。本実施形態では、水切り部26は、回転円板16の裏面の最内周部に窪みとして設けられ、水切りテーパ部28の最外周がその裏面に一致するように接続する。テーパ部28の傾斜角度は、軸方向(水平方向)に対し10〜70度の角度を有することが好ましい。
【0028】
次に、このような軸受冷却装置7を備えた軸受装置の動作作用を説明する。
図2に示すように、回転円板16は、軸受ハウジング13の端面(本実施例では軸受カバー12の端面)に隣接して、止め穴24に差し込まれた止めネジによって回転軸2に対して固定される。このとき、回転円板16と軸受ハウジング13との距離は、0.01〜20mmになるように、回転円板16の設置位置を調整するのが好ましい。ポンプ1が運転されると、回転軸2が回転駆動され、回転円板16は、回転軸2と同じ回転方向、同じ回転速度で回転する。
【0029】
回転軸2の回転により、玉軸受10では摩擦熱が生じる。玉軸受で生じた熱は、玉軸受10が接触している回転軸2及び軸受ケーシング11に伝わる。そして、軸受ケーシング11に伝わった熱の一部は軸受カバー12に伝わる。玉軸受10から軸受ケーシング11、軸受カバー12を含む軸受ハウジング13に伝わった熱は、軸受ハウジング13の外表面から大気に放熱され、また、回転軸2に伝わった熱も回転軸2を拡散して、最終的には、ポンプ1の取扱液や大気に放熱される。しかし、軸受ハウジング13から大気への放熱の熱伝達が悪ければ、玉軸受10は過熱状態になってしまう。
【0030】
回転円板16と軸受ハウジング13との間の空気は、回転円板16の回転に伴い、特に羽根18によって攪拌、旋回される。旋回している空気は、遠心作用により回転の半径方向外方に流れる。外方に向かった空気は、テーパ面23によって方向を変えられ、軸受カバー12に吹き付けられ、回転円板16と軸受カバー12との間を通過して、軸受カバー表面に沿って半径方向外方に流れる。
【0031】
凹部17の空気が流出するため、圧力が低下するが、凹部17には貫通穴19を介して回転円板16の裏面から空気が供給される。また、軸受カバー12の表面に沿う空気の流れは、軸受カバー12の更に外側に流れる。そして、この空気の流れに引きずられて、軸受ケーシング11の外周(及び、軸受カバー12の外周部)に沿う空気の流れが形成される。
【0032】
これらの回転円板16の回転に伴い引き起こされた、軸受ハウジング13表面の空気の流れは、軸受ハウジング13に伝わった玉軸受10で生じた熱を強制熱伝達により冷却する。この冷却により玉軸受10の過熱が抑制される。
【0033】
なお、羽根18によって旋回させられた空気の一部は、回転円板16と軸受カバー12との間を通過するのではなく、テーパ部22に設けられたネジ固定用穴25からも噴き出す。この回転円板16の外周部に設けられた穴を通した空気の流れは、回転円板16の回転に伴う空気流の全体量を増加させる効果が期待できる。従って、止めネジの存在とは無関係に、回転円板16の外周部に凹部17と連通する穴を設けても良い。
【0034】
一方、ポンプ1の運転中はシール部材5を潤滑させるため、ポンプ1の取扱液がシール部材5を浸潤し、外に漏れる。漏れた取扱液は回転軸2を伝わり、軸受装置へと向かう。漏れた取扱液が水切り部26に到達すると、水切りテーパ面28にそって遠心力により水切りされる。取扱液は水切りテーパ面28に沿ってポンプケーシング側へ押し戻されるため、貫通穴19内に取扱液が回り込み、凹部17に流入する空気にその取扱液が巻き込まれることが防がれる。従って、玉軸受10を始めとする軸受側へ、ポンプ1の取扱液が侵入することを妨げられる。一般に図1に示すようなポンプでは、軸受装置とポンプケーシングとの間に取扱液が軸受装置に到達することを防ぐための水切りが設けられるが、本実施形態では、この水切りの機能を回転円板に一体化することで水切りを別途設けることを省略することができる。
【0035】
軸受冷却装置7の回転部分は回転円板16となるが、回転円板16には、回転時の外形(図3の例でいえば、符号29、30、31が示す直線の範囲に相当する)の外に突出するような、回転の円周方向で連続していない突起が存在しない。これによって、回転円板の外側にシールドを設けることなく、安全を確保することができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、回転円板の軸方向に設けられた貫通穴19は、本実施形態では円形だが、矩形や扇形等の形状をしていても良い。また、本実施形態では回転円板16を止めネジによって回転軸に固定したが、キー溝とキーによって、回転円板16と回転軸2とが一体に回転するように構成しても構わない。
【0037】
また、図4、及び、図5に羽根18の形状の変形例を示す。図4(a)〜(d)は、回転円板16の一部、羽根18の設けられた部分のみを図示したものである。図4(a)は、図3に示した羽根18の形状であり、羽根18は基部20からテーパ部22に向かってテーパ部22の手前まで延びる矩形状である。羽根18は、図4(b)に示すように、基部20からテーパ部22まで、凹部の半径方向全体に渡る形状であっても良いし、図4(c)に示すように、テーパ部22から基部20方向に延びて、基部20との間に隙間を持つようにしても良い。また、羽根18は、図4(d)に示すように、基部20、テーパ部22の両方から隙間を開けて設けても良い。
【0038】
図5(a)〜(d)も、同様に、回転円板16の一部、羽根18の設けられた部分のみを図示したものである。図5(a)〜(d)は、羽根18を軸方向に見たときの形状の変形例を示したものである。軸方向に見たときの羽根18の形状は、図3に示したような長方形に限らず、図5(a)の正方形、図(b)の半円形、図(c)の三日月形状、図5(d)の翼形状等としてもよい。
【0039】
また、本発明の軸受冷却装置7では、空気流と軸受ハウジング13との強制熱伝達によって軸受の冷却を促進している。従って、空気流を流す軸受ハウジング13の表面にフィンを設けることによって、熱伝達の効率を向上させることもできる。図6は、軸受カバー12の回転円板16に対向する面に多数の半径方向のフィン29を設けた例を示したものである。図示はしないが、軸受カバー12の外周面や、軸受ケーシングの外周面にも、空気流の流れに沿ったフィンを設けることができる。
【0040】
図7は、回転円板の変形例を示す図である。図7に示す回転円板16−1では、図3に示す回転円板と異なり、テーパ部22に貫通穴(ネジ固定用穴)が設けられていない。よって、羽根18によって引き起こされる空気流の全てが、回転円板16−1と軸受ハウジング13との間を通過することになる。そして、ネジ固定用穴が設けられないので、基部20は回転円板16−1の裏面側に隆起し、その隆起部分に止めネジ用の止め穴24が設けられている。
【0041】
図8は、回転円板の更に別の変形例を示す図である。図8に示す回転円板16−2では、図3に示す回転円板とは異なり、側部21が外周に行くに従って、軸受ハウジング側に曲がるような曲面部32を形成されている。凹部17はその曲面部32により形成されている。曲面部32は、図3のテーパ面23と同様に、軸受ハウジング13に向かって開口するような傾斜を有し、羽根18によって引き起こされた空気流を軸受ハウジング方向へ向かわせる作用を持つ。
【0042】
このような回転円板の形状であっても、羽根18は、回転時の外形(図8の例でいえば、符号33、34が示す直線と符号35が示す曲線の範囲に相当する)の内側に存在し、回転時の外形の外に突出するような回転の円周方向で連続していない突起が存在しない。
【実施例】
【0043】
本発明の軸受冷却装置の冷却効果を確認するために、図2、3に示した軸受冷却装置を用いた場合の軸受ケーシングの温度上昇を、本発明の軸受冷却装置を用いない比較例の軸受ケーシングの温度上昇と比較した。
【0044】
本発明の軸受冷却装置を用いた例としては、回転円板16と軸受カバー12との隙間を2mm、テーパ面23と軸方向(水平方向)とのなす角を30度、羽根18は矩形で4つというものを用いた。対して、比較例は、回転円板16を取り外し、玉軸受10に潤滑材としてグリースを塗っただけのものとした。本発明例と比較例に対して、それぞれ1790rpmで回転軸2を回転させ、軸受ケーシングの温度が上昇し平衡状態に達して安定したときの温度を計測した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、比較例では、室温25.5℃で、軸受ケーシングの温度77.5℃であり、それらの温度差Δt=52.0℃であった。一方、本発明例では、室温32.0℃で、軸受シングの温度66.0℃であり、それらの温度差Δt=34.0℃であった。温度差Δtを比較すると、本発明例は、比較例に対して18℃も温度差が小さく、本発明が十分な冷却効果を奏することを確認できた。
【0047】
本発明の軸受冷却装置は、回転円板2による空気流を用いた強制熱伝達を用いている。従って、同様に強制熱伝達を用いるファンを用いた空冷と比較して、同程度の冷却効果が得られる。そして、本発明の軸受冷却装置は、作業者と接する面に突起物を有しない構造になっているので、通常のファンよりも安全性が高い。また、安全確保のためにシールドしなくてはならない通常のファンによる冷却装置と異なり、シールドの必要がないため、部品点数を増やすことなく、また、シールドスペースも必要としない。
【0048】
また、本発明の軸受冷却装置は、オイルバスを設置する必要がないため、オイルの交換やオイルの補充といったメンテナンスの必要がない。本発明の軸受冷却装置は、オイルバス式の軸受冷却装置に較べて、非常に簡単なメンテナンスで済ませることができる。そして、オイル交換のコストを削減できる他、廃オイルの処理という環境負荷も低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、軸受の温度上昇に対して十分な冷却効果が得られ、且つ、軸受周りに余計なシールドスペースを必要とせず、また、オイルバスのオイル交換のようなメンテナンスの必要のない軸受冷却装置、及び、その軸受冷却装置を用いたポンプを提供することができる。また、本発明の軸受冷却装置が適用できる回転機械はポンプに限られず、ファンやブロワ、コンプレッサ等の軸受が使用される回転機械一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ポンプ
2 回転軸
3 羽根車
4 ポンプケーシング
5 シール部材
6 軸受装置
7 軸受冷却装置
8 吸込流路
9 吐出ボリュート
10 玉軸受
11 軸受ケーシング
12 軸受カバー
13 軸受ハウジング
14、15 オイルシール
16 回転円板
17 凹部
18 羽根
19 貫通穴
20 基部
21 側部
22 テーパ部
23 テーパ面
24 止め穴
25 ネジ固定用穴
26 水切り部
27 垂直面
28 水切りテーパ面
29、30、31 回転時の外形に相当する線
32 曲面部
33、34、35 回転時の外形に相当する線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受を収容する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングに隣接して回転軸に固定され、該回転軸と一体に回転する回転円板とを備え、
前記回転円板は、前記軸受ハウジングに対向する側に設けられた凹部と、
前記凹部に設けられた1つ又は複数の羽根と
前記凹部から、前記回転円板の前記軸受ハウジングとは反対の面まで貫通する1つ又は複数の貫通穴とを有していることを特徴とする軸受冷却装置。
【請求項2】
前記凹部の外周側は、前記軸受ハウジングに向かって開口するように傾斜するテーパ面又は曲面を有していることを特徴とする請求項1に記載の軸受冷却装置。
【請求項3】
前記回転円板と前記軸受ハウジングとの距離が0.01〜20mmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受冷却装置。
【請求項4】
前記回転円板は、前記軸受ハウジングとは反対の面に、前記貫通穴よりも内周側に、前記軸受ハウジングとは反対の方向に開口するように傾斜する面を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の軸受冷却装置。
【請求項5】
回転軸に固定された羽根車と、該羽根車を収容するポンプケーシングを備えたポンプであって、
前記回転軸を支える軸受を有し、該軸受の冷却装置として請求項1乃至4のいずれか1項に記載の軸受冷却装置を採用したことを特徴とするポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−99508(P2011−99508A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254307(P2009−254307)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】