説明

軸流ファン

【課題】翼とハブ部との接続部の前縁(点)への応力集中を減少させ、応力による破損を著しく改善する。
【解決手段】本発明のプロペラファン10は、中心に回転軸部11を備えたハブ部12と、このハブ部12の外周に設けられた複数枚の前進翼20とを備えたものであって、翼20とハブ部12との接続部15中に所定の屈曲点Pを構成し、回転によって翼20とハブ部12との接続部15の前縁に点集中してしまった応力を屈曲点Pの存在によって形成された辺16によって支える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転軸部を備えたハブ部と、このハブ部の外周に設けられた複数枚の前進翼とを備えた軸流ファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置の室外機、換気扇及び扇風機などには、空気を軸方向から吸い込んで軸方向に送風する軸流ファンが採用されている。軸流ファンは、回転軸部を備えたハブ部と、ハブ部の外周に所定間隔で配置され、接続部において接続された複数枚の同一形状の前進翼を備え、この翼が三次元の曲面形状とされている(例えば、特許文献1参照)。これらのハブ部及び各前進翼は、例えば一体に樹脂成形される。
【0003】
回転により、前進翼の翼前縁側から翼後縁側へ向かい空気(外気)を流動させ、この空気を全体として、軸流ファンの裏側から表側方向に送風する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−69400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5には、上記従来の軸流ファンの前進翼100と、該翼100とハブ部との接続部の両端部を円筒面(ハブ部の外周面)に沿って長さが最短となるように結んだ線(翼弦線)Kを平面に展開したものを示す。図は前進翼100の正圧面103S側から見ている。翼100は、外面円柱形状のハブ部に翼前縁101が翼後縁102よりも負圧面側に位置するように三次元的に形成されている。
【0006】
そのため、軸流ファンが回転すると、遠心力により翼前縁101の外端部には正圧面103S側に捩る力(図中矢印A)が、翼後縁102の外端部には負圧面側に捩る力(図中矢印B)が加わる。これら捩る力は、翼弦線Kの中間付近がその中心K1となり、捩る力によって翼弦線Kの両端部に位置する翼100とハブ部との接続部には、応力が集中することとなる。
【0007】
この際、翼弦線Kにて示した翼弦の前端、即ち、翼100とハブ部との接続部の前縁104に、応力が点集中するため、この前縁104部分が破損する虞がある。
【0008】
本発明は、従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、翼とハブ部との接続部の前縁(点)への応力集中を減少させ、応力による破損を著しく改善することができる軸流ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の軸流ファンは、中心に回転軸部を備えたハブ部と、該ハブ部の外周に設けられた複数枚の前進翼とを備えたものであって、翼とハブ部との接続部中に所定の屈曲点を構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の軸流ファンは、中心に回転軸部を備えたハブ部と、該ハブ部の外周に設けられた複数枚の前進翼とを備えたものであって、翼とハブ部との接続部は、前縁より後縁側の所定の位置に屈曲点を有する形状としたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、上記各発明において、屈曲点は、翼とハブ部との接続部の中間点よりも前縁側に位置していることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、上記請求項1又は請求項2の発明において、屈曲点から前縁までの長さを、翼のハブ部に接続される翼断面における翼弦長の10%以上25%以下に設定したことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、上記各発明において、屈曲点と前縁とを結ぶ線と、回転軸部の軸方向と直交する線との成す角度を、15°未満に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中心に回転軸部を備えたハブ部と、該ハブ部の外周に設けられた複数枚の前進翼とを備えた軸流ファンにおいて、翼とハブ部との接続部中に所定の屈曲点、例えば、請求項2の発明の如く翼とハブ部との接続部が、前縁より後縁側の所定の位置に屈曲点を有するように構成したことにより、回転によって翼とハブ部との接続部の前縁に点集中してしまった応力を屈曲点の存在によって形成された辺によって支えることが可能となる。これにより、翼とハブ部との接続部の前縁(点)への応力集中を減少させることができ、当該接続部が破損してしまう不都合を未然に回避することが可能となる。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、上記各発明において、屈曲点は、翼とハブ部との接続部の中間点よりも前縁側に位置する、又は、請求項4の発明の如く、屈曲点から前縁までの長さを、翼のハブ部に接続される翼断面における翼弦長の10%以上25%以下に設定したことにより、風量を確保しつつ、効果的に翼とハブ部との接続部の前縁(点)への応力集中を減少させることができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、上記各発明において、屈曲点と前縁とを結ぶ線と、回転軸部の軸方向と直交する線との成す角度を、15°未満に設定したことにより、風量を確保しつつ、効果的に翼とハブ部との接続部の前縁(点)への応力集中を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の軸流ファンの一実施形態にかかるプロペラファンを適用した室外機の斜視図である。
【図2】プロペラファンの側方から見た斜視図である。
【図3】プロペラファンの側面図である。
【図4】翼とハブ部との接続部の翼弦線を示す図である。
【図5】従来の翼とハブ部との接続部の翼弦線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の軸流ファンの一実施形態にかかるプロペラファンを適用した室外機1の斜視図である。この室外機1は、室外に配置され、室内の天井や壁に配置された図示しない室内機と配管接続されて空気調和装置を構成するものである。空気調和装置は、室外機1と室内機とで構成される冷媒回路に冷媒を流して冷房運転や暖房運転などを行う。室外機1は、外気と冷媒とを熱交換し、冷房運転時には冷媒を凝縮させて外気へ熱を放出し、暖房運転時には冷媒を蒸発させて外気から熱を取り込むものである。
【0019】
この室外機1は、筐体2内に図示しない圧縮機や熱交換器を配設し、本実施例では、当該筐体2の側面に図示しない空気流入部が形成されており、その前面には、空気吐出部(オリフィス)4が形成されている。そして、この空気吐出部4内には、本発明の軸流ファンの一実施例としてのプロペラファン10が配設されている。このプロペラファン10は上流側に位置するファンモータ10M(従って、プロペラファン10はファンモータの下流側に位置する)に連結され、このファンモータ10Mが前記熱交換器の下流側に配置される。このプロペラファン10のファンモータ10Mによる回転駆動によって、空気(外気)が空気流入部より筐体2内に吸入され、熱交換器に至り、当該熱交換器内の冷媒と外気とが熱交換される。そして、熱交換された後の空気は、プロペラファン10の回転駆動によって空気吐出部4より外部に吐出される。
【0020】
次に、本願発明の軸流ファンの一例としてのプロペラファン10について図面を参照して説明する。図2はプロペラファン10の側方から見た斜視図、図3はプロペラファン10の側面図である。
【0021】
プロペラファン10は、中心に回転軸部11を備えたハブ部12と、このハブ部12の外周に所定翼列ピッチで配置された(設けられた)複数枚(例えば3枚)の同一形状の前進翼20とを有して構成される。これらのハブ部12及び各前進翼20は、例えば一体に樹脂成形される。
【0022】
ハブ部12は、その回転軸部11に前記ファンモータのモータシャフト5が挿通され、ファンモータの駆動により各前進翼20を各図の矢印N方向に回転させる。本実施例では、筐体2の前面に形成された空気吐出部4にプロペラファン10が配設されることから、当該プロペラファン10の正圧面21S側が前面、負圧面21F側が筐体2側(背面)となるように配設される。また、このハブ部12は、外径が略円柱形状に構成されている。尚、ハブ部12は、円柱形状に限定されず、翼20の接続部を底辺とする三角錐形状や円錐台形状であっても良い。
【0023】
これにより、上記翼20は、矢印N方向の回転により、その翼前縁22側から翼後縁23側へ向かい空気(外気)を流動させ、この空気を全体として、プロペラファン10の裏側から表側方向、この場合、筐体2内側から筐体2の前面方向に送風する。
【0024】
ここで、本実施例では、各翼20とハブ部12との接続部15は、即ち、翼20のハブ部12側に位置し、翼前縁22から翼後縁23に至る端面と、ハブ部12外周面との接続部15は、翼前縁22が翼後縁23よりも負圧面21F側に位置するようにハブ部12外周面に沿って形成されている。
【0025】
ここで、図4を参照して翼20とハブ部12との接続部15について詳述する。図4は、前進翼20と、該翼20とハブ部12との接続部15の両端部を円筒面(ハブ部12の外周面)に沿って長さが最短となるように結んだ線(翼弦線)Lを平面に展開したものLを示す。図は前進翼20の正圧面21S側から見ている。
【0026】
従来技術においても示したように、プロペラファン10が回転すると、遠心力により翼前縁22の外端部には正圧面21S側に捩る力(図中矢印A)が、翼後縁23の外端部には負圧面21F側に捩る力(図中矢印B)が加わる。これは、吊り下げた振り子を垂直方向の軸を中心として回転させたときに、先端のおもりが遠心力によって上がってくるのと同様の現象によって生じる。
【0027】
この際、本発明における翼20とハブ部12との接続部15中には、翼20の前縁22より後縁23側の所定の位置に、本実施例では、翼弦Lの中間点よりも翼前縁22側の位置に屈曲点Pが構成されている。具体的には、接続部15の屈曲点Pから翼前縁22間での長さL1が、翼20のハブ部に接続される翼断面における翼弦長の10%以上25%以下となる位置に屈曲点Pが設定されていると共に、この屈曲点Pと翼前縁22とを結ぶ線Qと、回転軸部11の軸方向と直交する線R(破線にて示す)との成す角度αが、15°未満となるように設定されている。
【0028】
このように、遠心力によって翼20に加わる捩る力は、翼弦Lの屈曲点Pから翼後縁23までの中間付近がその中心L2となり、前進翼が故に、捩る力によって翼弦Lの端部に加わる応力は、接続部15の屈曲点Pから翼前縁22に至る部分(辺16)に集中することとなる。尚、翼後縁23側にも応力が集中するが、前進翼であるためあまり大きくない。
【0029】
そのため、従来技術では、回転によって翼20とハブ部12との接続部15の前縁に点集中してしまった応力を、接続部15の翼前縁22より翼後縁23側の所定の位置に屈曲点Pを有する形状とすることで、係る屈曲点Pの存在によって形成された辺16で支えることが可能となる。
【0030】
従って、翼20とハブ部12との接続部15の翼前縁(点)部分への応力集中を、接続部15の屈曲点Pから翼前縁22に至る辺16にて分散して支持することができ、接続部15が破損してしまう不都合を未然に回避することができる。これにより、翼20とハブ部12との接続部15の強度向上を図ることができる。
【0031】
特に、本実施例では、接続部15に構成された屈曲点Pは、翼20とハブ部12との接続部15の中間点よりも前縁側に位置するように設定し、また、屈曲点Pから前縁までの長さを、翼20のハブ部12に接続される翼断面における翼弦長の10%以上25%以下に設定したことにより、風量を確保しつつ、効果的に翼20とハブ部12との接続部15の前縁(点)への応力集中を減少させることができる。
【0032】
また、本実施例では、接続部15の屈曲点Pと前縁とを結ぶ線Qと、回転軸部11の軸方向と直交する線Rとの成す角度αを、15°未満に設定したことにより、風量を確保しつつ、効果的に翼20とハブ部12との接続部15の前縁(点)への応力集中を減少させることができる。
【符号の説明】
【0033】
L 翼弦
P 屈曲点
1 室外機
2 筐体
4 空気吐出部(オリフィス)
5 モータシャフト
10 プロペラファン
11 回転軸部
12 ハブ部
15 接続部
16 辺
20 前進翼
21S 正圧面
21F 負圧面
22 翼前縁
23 翼後縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に回転軸部を備えたハブ部と、該ハブ部の外周に設けられた複数枚の前進翼とを備えた軸流ファンにおいて、
前記翼と前記ハブ部との接続部中に所定の屈曲点を構成したことを特徴とする軸流ファン。
【請求項2】
中心に回転軸部を備えたハブ部と、該ハブ部の外周に設けられた複数枚の前進翼とを備えた軸流ファンにおいて、
前記翼と前記ハブ部との接続部は、前縁より後縁側の所定の位置に屈曲点を有する形状としたことを特徴とする軸流ファン。
【請求項3】
前記屈曲点は、前記翼と前記ハブ部との接続部の中間点よりも前縁側に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軸流ファン。
【請求項4】
前記屈曲点から前縁までの長さを、前記翼のハブ部に接続される翼断面における翼弦長の10%以上25%以下に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軸流ファン。
【請求項5】
前記屈曲点と前縁とを結ぶ線と、前記回転軸部の軸方向と直交する線との成す角度を、15°未満に設定したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の軸流ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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