説明

輝度及び色差を用いた管路点検用画像解析方法、画像解析装置、管路点検システム及びプログラム

【課題】リアルタイムで高精度に管内の状況を定量化したデータを取得する技法を提供する。
【解決手段】本発明による画像処理方法は、パイプカメラによって撮影された地中埋設管内の画像を取得するステップと、取得された画像を解析し、所定の範囲の色を有する箇所を抽出するステップと、抽出された箇所と前記地中埋設管の管内面積との比率を算出するステップと、算出された比率を補正するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度及び色差を用いた管路点検用画像解析方法、画像解析装置、管路点検システム及びプログラムに関し、特に、管路内部の状況を色分析して定量化する管路点検用画像解析方法、画像解析装置、管路点検システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信管、電力管等の地中埋設管の管内における錆・腐食等の劣化状況を色分析し定量化する方法として、管路点検用のパイプカメラ本体に予め側視機能を設けた側視機能付きカメラや広角度魚眼レンズ付きカメラを用いて劣化箇所の静止画を取得し、取得した静止画を、R,G,Bの原色成分を用いて表現するRGB法により色分析するものがある(例えば、非特許文献1を参照されたい。)。
【0003】
【非特許文献1】株式会社バーナム、“カメラ・レーダ複合型管内探査システム「P−BESE(ピービス)”[online]、[平成20年5月15日検索]、インターネット、〈http://www.burn-am.com/products_sub1_2.html〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1による技法では、管内の劣化状況を定量化したデータ(定量化データ)を取得するための劣化箇所ごとの静止画の画像解析が、管内の計測・点検後に行われる。従って、劣化状況の定量化データを、計測・点検時にリアルタイムでかつ連続的に取得することができないという欠点がある。さらに、非特許文献1による技法では、輝度を考慮しないRGB法で静止画の画像解析を行うため、管内のような暗所においてカメラ本体に取り付けたライトによって照射された画像を色分析する場合、微妙な色の違いを判別することが困難である。従って、錆と似た色をしている土砂等が混入している管内において、錆・腐食のみを精度良く色分析することは不可能である。
【0005】
本発明の目的は、上述のような諸問題を解決し、リアルタイムで高精度に管内の状況を定量化したデータを取得することができる技法(管路点検用画像解析方法、画像解析装置、管路点検システム及びプログラム)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明による管路点検用画像解析方法は、
(管路点検用パイプカメラによって撮影された)地中埋設管内の(原色信号から成るアナログ)画像(及び挿入距離情報)を取得するステップと、
(前記取得するステップによって取得したアナログ画像をデジタル画像に変換するアナログ/デジタル変換ステップと、)
前記取得するステップによって取得された画像を解析し、所定の範囲の色を有する箇所を抽出する画像処理ステップと、
前記画像処理ステップによって抽出された箇所と前記地中埋設管の管内面積との比率を算出するステップと、
前記算出するステップによって算出された比率を補正するステップとを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の実施態様に係る管路点検用画像解析方法は、
前記画像処理ステップが、
前記取得するステップによって取得した画像における解析範囲を設定し、前記解析範囲の画素の原色成分を輝度成分及び色差成分に変換するステップと、
前記変換するステップによって変換された前記解析範囲の画素の輝度成分及び色差成分の値が、前記所定の範囲にあるか否かを判定するステップと、
前記判定するステップによって輝度成分及び色差成分の値が前記所定の範囲にあると判定された画素の色を所定の色で置換するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の別の実施態様に係る管路点検用画像解析方法は、
前記補正するステップが、
所定の補正係数を用いて、前記取得するステップによって取得された画像のうち前記地中埋設管以外の部分を差し引くことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の実施態様に係る管路点検用画像解析方法は、
前記置換するステップによって前記所定の範囲の色を有する画素の色が所定の色に置換された画像をモニタへ出力する出力ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0010】
上述したように本発明の解決手段を方法として説明してきたが、本発明はこれらの方法のステップを実行する装置としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0011】
例えば、本発明を装置として実現した画像解析装置は、
(管路点検用パイプカメラによって撮影された)地中埋設管内の(原色信号から成るアナログ)画像(及び挿入距離情報)を取得する取得部と、
(前記取得部によって取得したアナログ画像をデジタル画像に変換するアナログ/デジタル変換部と、)
前記取得部によって取得された画像を解析し、所定の範囲の色を有する箇所を抽出する画像処理部と、
前記画像処理部によって抽出された箇所と前記地中埋設管の管内面積との比率を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された比率を補正する補正部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の実施態様に係る画像解析装置は、
前記画像処理部が、
前記取得部によって取得した画像における解析範囲を設定し、前記解析範囲の画素の原色成分を輝度成分及び色差成分に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された前記解析範囲の画素の輝度成分及び色差成分の値が、前記所定の範囲にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって輝度成分及び色差成分の値が前記所定の範囲にあると判定された画素の色を所定の色で置換する置換部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の他の実施態様に係る画像解析装置は、
前記補正部が、
所定の補正係数を用いて、前記取得部によって取得された画像のうち前記地中埋設管以外の部分を差し引くことを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに別の実施態様に係る画像解析装置は、
前記置換部によって前記所定の範囲の色を有する画素の色が所定の色に置換された画像をモニタへ出力する出力部をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る地中埋設管の管路点検用パイプカメラと、画像解析装置とを備える管路点検システムは、
前記画像解析装置が、
パイプカメラによって撮影された地中埋設管内の(原色信号から成るアナログ)画像(及び挿入距離情報)を取得する取得部と、
(前記取得部によって取得した画像をデジタル画像に変換するアナログ/デジタル変換部と、)
前記取得部によって取得された画像を解析し、所定の範囲の色を有する箇所を抽出する画像処理部と、
前記画像処理部によって抽出された箇所と前記地中埋設管の管内面積との比率を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された比率を補正する補正部とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体として実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。例えば、本発明をプログラムとして実現した画像解析プログラムは、上述の画像解析方法を実行する装置を構成するコンピュータに、前記画像解析方法における各ステップの処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管内のような暗所においてカメラに付属のライトを照射して得た画像を色分析する場合でも、微妙な色の違いを判別することができ、錆と似た色をしている土砂などが混入している管内において、錆・腐食を精度良く検出することが可能となる。さらに、管内に既設収容ケーブル等が存在する場合でも、既設収容ケーブル等で覆われ測定不可能な面積をキャンセルすることができ、データの精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、諸図面を参照しながら、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明による管路点検システムの概略図である。図1のように、本発明による管路点検システムは、マンホール1間を結ぶ地中埋設管2の管内劣化状況(錆・腐食等)を点検するシステムであり、管路点検用パイプカメラ4、管路点検用パイプカメラ4で撮影した画像等のデータを収集し解析するための画像解析装置3を含む。地中埋設管2には、通信用等のケーブルを収容する既設収容ケーブル5が存在する。画像解析装置3は、輝度及び色差を用いた画像解析を行って、管路点検用パイプカメラ4による動画収集、即ち画像の撮影と同時に、定量化データ(管内の劣化状況を定量化したデータ)を算出する。なおこれ以降、輝度及び色差を用いる方法を、「輝度色差法(YCbCr法)」と称する。モニタ(表示部)6は、画像解析装置3によって解析された画像を表示する。なお、図1の例では画像解析装置3とモニタ6とを別の装置としたが、画像解析装置3にモニタ(表示部)を備えてもよい。
【0020】
図2は、本発明による画像解析装置の構成図である。なお、図には、画像解析装置3に結合される管路点検用パイプカメラ4、システム制御部7、及びモニタ(表示部)6も合わせて示している。図のように、画像解析装置3は、入力部(取得部)10、A/D(アナログ/デジタル)変換部20、画像処理部30、D/A(デジタル/アナログ)変換部40、出力部50、制御部60、記憶部70及び電源部80を備える。画像解析装置3における入力部10は、管路点検用パイプカメラ4によって撮影された地中埋設管内部の画像信号及び管路点検用パイプカメラ4の挿入距離情報を、システム制御部7を介して取得する。なお、管路点検用パイプカメラ4からの画像は、RGB形式の3つの原色成分からなるアナログカラー画像信号である。また、挿入距離情報とは、マンホール1から地中埋設管2内への管路点検用パイプカメラ4の挿入距離である。システムの制御を司るシステム制御部7に、予め点検する地中埋設管4の距離(点検区間)、管路点検用パイプカメラ4の進行速度、管路点検用パイプカメラ4が解析すべき画像の分解能等のパラメータが予め設定されており、システム制御部7は、設定されたパラメータに基づき、管路点検用パイプカメラ4の挿入距離を算出して、挿入距離情報として画像解析装置3に送信する。
【0021】
A/D変換部20は、入力部10からのアナログカラー画像信号をアナログ/デジタル変換し、デジタルカラー画像データを生成する。画像処理部30は、A/D変換部20の生成した画像データの色分析等の画像解析(画像処理)を行う(詳細は後述する)。D/A変換部40は、画像処理部30によって色分析されたデジタル画像データをアナログ画像信号に変換する。出力部50は、色分析された画像データをアナログ画像信号として出力する。記憶部70は、例えばRAM,ROM等の半導体メモリで実現され、装置全体の制御を行うための制御情報と、色分析等の画像解析及び後述する補正処理等で用いる演算式や各種パラメータ等を格納する。また、記憶部70は、画像処理部30によって画像解析された画像データ、定量化データ、及びA/D変換部から入力した未処理のデジタル画像データを一時的に格納しても良い。制御部60は、記憶部70に格納された制御情報に基づいて制御全体の制御を行う。電源部80は、画像解析装置3に含まれる各構成部を駆動させるための電力を供給する。なお、記憶部70としては半導体メモリ以外に限られるものではなく例えば、磁気記録テープ、外付けハードディスク又は大容量半導体メモリ等の、着脱自在な記憶媒体で実現してもよい。また、図3は、画像処理部30のより詳細な構成図である。図3に示すように、画像処理部30は、色情報変換部31、符号化/復号部32、判定部33、色情報出力部34、算出部35及び補正部36を備える。
【0022】
これ以降に、本発明による画像解析装置3の各構成部の機能及び画像解析方法(色分析方法)について、図4及び図5のフローチャートを用いて説明する。図4は、本発明による画像解析方法の一例のフローチャートである。まず、管路点検用パイプカメラ4のカメラヘッドが地中埋設管2内に挿入され、オペレータの操作を受けると、管路点検用パイプカメラ4による撮影が開始される。画像解析装置3は、入力部10を介して、管路点検用パイプカメラ4で撮影された動画像(アナログカラー画像信号)及び挿入距離情報を取得する(ステップS11)。
【0023】
ここで、管路点検用パイプカメラ4によって撮影された地中埋設管2内部の画像について説明する。図7は、管路点検用パイプカメラ4によって撮影され、モニタ(表示部)6に表示された地中埋設管2内部の画像(管路画像)の一例である。なお、図7(a)は、画像解析前の管路画像、同図(b)は、画像解析後の管路画像の一例である。図7(a)に示すように、管路画像21は、その全体に地中埋設管2の内壁が撮影された画像である。さらに、既設収容ケーブル5が撮影され、地中埋設管2の内壁の一部を覆っている。画像処理部30は、管路画像21に対して解析範囲を設定して、その解析範囲について色分析を行う。図6は、モニタ6に表示された管路画像及びその解析範囲についての説明図である。図に示すように、解析範囲22は、地中埋設管の中心から半径Rの円と、その円に対して検出幅Lだけ短い半径との2つの同心円で囲まれた形状である。2つの同心円のほぼ中心には、目標球23が存在する。これは、パイプカメラの付属品である劣化判断用の球であり、管内に折損(折れ曲がり)による段差があると、目標球23の一部が隠れて見えなくなるため、その隠れ度合いで折損状態を判別するためのものである。
【0024】
図4のフローチャートに戻り説明を行う。A/D変換部20は、入力部10からのアナログカラー画像信号をアナログ/デジタル変換して、上述した管路画像21となるデジタル画像データを生成し、画像処理部3へ出力する(ステップS12)。画像解析装置3は、取得した挿入距離情報に基づき、指定された検出幅(距離)Lごと(例えば5cmごと)に、予め設定された解析範囲22を管路画像21から抽出する。そして、予め設定された色指定に基づいて輝度色差法による色分析を行って、解析範囲22における錆・腐食を判定する(ステップS13)。ここで、ステップS13の画像解析について説明する。図5は、画像解析の一例のフローチャートである。まず、画像処理部30における色情報変換部31は、A/D変換部20から出力されたRGB形式(赤(R)、緑(G)、青(B)の原色成分)の画像データを、輝度成分(Y)及び色差成分(Cb,Cr)に変換する(ステップS21)。これは、以下の式により行う。
Y=0.29891×R+0.58661×G+0.11448×B (式1)
Cb=−0.16874×R−0.33126×G+0.50000×B(式2)
Cr=0.50000×R−0.41869×G−0.08131×B (式3)
【0025】
次に、符号化/復号部32が、輝度色差(YCbCr)形式データの符号化/復号処理を行う(ステップS22)。まず、変換後のCb,Crをそれぞれ1/4に間引き、さらに情報量を減らして処理を迅速にするために、Cb,Crを16階調に再量子化する。その後、Cb,Crの情報をYに埋め込み、符号化(グレースケール化)する。次に、符号化されたグレースケール画像を2×2のブロック単位で読み込み、それぞれの下位2ビットからCbとCrの情報を復元(復号)する。そして、CbとCrをそれぞれ16倍して0〜255の値にし、解析範囲22の各ピクセル(画素)におけるCb,Crの値とする。
【0026】
その後、判定部33は、解析範囲22の各ピクセル(画素)におけるY,Cb,Crの色範囲(0〜255までの値を取る。)に対し、あらかじめ設定した錆・腐食の色範囲を対比させ、そのピクセルに対応する箇所が錆・腐食であるか否かを判定する(ステップS23)。例えば、錆・腐食の色範囲をY,Cb,Crともに0〜24と予め設定した場合は、Y,Cb,Crの3要素全てが設定した色範囲内の値であれば「錆・腐食」と判定する(ステップS24)。これに対し、このうち1つの要素でも色範囲外であれば、「錆・腐食」と判定しない。そして、解析範囲22の全てのピクセルについての色範囲の判定が終了したと判定されるまで(ステップS25)、ステップS23及びS24の判定処理を繰り返す。判定部33による判定結果は、色情報出力部34へ出力される。なお、錆・腐食以外の例えば土砂についても、あらかじめ土砂と判定すべきY,Cb,Crの色範囲を設定しておくことで、錆・腐食同様に正確に判別することができる。
【0027】
図4のフローチャートに戻り説明を継続する。色情報出力部34は、判定部33の判定結果に基づき、錆・腐食と判定された箇所のピクセルを所定の色に置換する。また、錆・腐食以外に土砂等の判別を行った場合は、土砂の箇所のピクセルを、錆・腐食の場合とは別の所定の色に置換する。即ち、色情報出力部34は、判別した種類ごとに異なる色を割当て、判定部33の判定結果に基づき解析範囲22のカラーニングを行う(ステップS17)。D/A変換部40は、色情報出力部34によってカラーリングされた解析範囲22のデジタル画像データを、アナログ画像信号に変換する(ステップS18)。出力部50は、D/A変換部40からのアナログ画像信号をモニタ6へ出力する。その後、制御部60は、色分析すべき次の画像があるか否かを判定する(ステップS20)。これは、検出幅Lと画像の撮影回数から、点検区間(図1におけるマンホール1間の距離)の撮影が終了したか否かを判定することによって行う。又は、管路点検用パイプカメラ4が進行先のマンホール1に到達し、撮影された画像がマンホールであると判定された場合に、次の画像がないと判定する。次の画像があると判定された場合は、ステップS11へ戻り、上述した処理を継続する。
【0028】
図7(b)に、本発明による図4の画像解析を行なった後の管路画像の一例を示す。モニタ6には、管路点検用パイプカメラ4によって撮影される画像に、リアルタイムでカラーリングされた解析範囲22の画像が重ね合わされて表示される。図に示すように、錆や腐食等が、あらかじめ指定した色で置換されていることが分かる。
【0029】
次に、腐食率の算出について説明する。算出部35は、ステップS13の色分析結果に基づき、解析範囲22における腐食率を算出する(ステップS14)。これは、ステップS13で判別された錆・腐食をピクセル単位で示し、同じくピクセル単位で示された解析範囲22に対する割合で腐食率を算出する。即ち、式で表すと次式のようになる。
腐食率=錆・腐食のピクセル数/解析範囲のピクセル数 (式4)
これは、錆・腐食に対応する所定の色に置換されたピクセル数の割合を求めることに相当する。なお、例えば土砂や穴等の判別も合わせて行った場合は、判別した種類ごとに所定の色で置換された画像が生成されている。従って、解析範囲内の指定された色ごとの解析結果の色面積比を計算することで、土砂率、穴の発生率等を算出することができる。
【0030】
次に、補正部36は、算出した腐食率の補正処理を行う(ステップS15)。図6及び図7に示すように、管内に既設収容ケーブル5等がある場合には、既設収容ケーブル等で覆われた部分は錆・腐食等の測定が不可能となる。従って、本発明は、管内全面積に対する既設収容ケーブル等の面積の割合を補正係数としてあらかじめ計算しておき、得られる腐食率等の定量化データを補正係数で補正することで、既設収容ケーブルの影響が定量化データに出ないようにする。この補正係数は、αを補正係数、βを管内周長、γを既設収容ケーブル等の直径とすると、以下の式で表すことができる。
α=(β―γ)/β (式5)
式5で求められた補正係数αの逆数を、ステップS14で算出された腐食率の定量化データに乗じることで、即ち、腐食率を求める式4において、分母の「解析範囲のピクセル数」に補正係数αを乗じることで、既設収容ケーブル等で覆われ測定不可能な面積を差し引き(キャンセルし)、得られる定量化データの精度を向上させることができる。なお、腐食率に限らず、土砂等の割合も同様に補正することができる。その後、算出された腐食率は、記憶部70に格納される。
【0031】
ステップS11〜ステップS20の処理を、挿入距離情報に基づき指定した距離(検出幅)L(cm)ごと(例えば5cmごと)に繰り返すことによって、点検区間の管路内部の色分析をリアルタイムで実施することができる。検出幅Lごとに算出され記憶部70に格納されている定量化データは、点検区間にわたる上述の処理が終了した時点で総和を取り、点検区間全体の錆・腐食率を算出することができる。その際、解析範囲ごとに既設収容ケーブルの影響を上述の補正係数を用いて補正しているため、結果として、点検区間の管路全面積に対して、既設収容ケーブル等で覆われ測定不可能な面積がキャンセルされた、精度のよい定量化データを得ることができる。
【0032】
本発明の特徴及び効果を再度述べる。本発明は、管路点検用カメラによって撮影された管路画像に対して、2つの同心円で囲まれた形状の解析範囲を設定し、当該解析範囲内で輝度色差法を用いた画像解析を行って錆・腐食部分を検出し、検出された錆・腐食部分の面積の管内面積に対する比率を算出し、算出された比率を管内周長と既設収容ケーブル直径から求めた補正係数に基づき補正する。本発明によれば、管路点検用パイプカメラで取得した動画像をそのまま画像解析ソフトで色分析可能なため、分析するための静止画を記録する必要が無く、劣化状況をリアルタイムに定量化することが可能である。また、色分析方法として輝度色差法(YCbCr法)を適用することにより、従来のRGB法による定量化方法より精度の良い定量化データを得ることが可能となる。
【0033】
なお、上述したように、実施例の画像解析方法を実現するための装置は、コンピュータによって好適に実現することができる。その場合、画像解析装置による画像解析方法の各ステップ(図4及び図5参照)を実行するための処理内容は、プログラムによって記述される。従って、そのような画像解析装置として機能するコンピュータに、図4及び図5に示す各ステップを実行させるためのプログラムは、コンピュータに接続されるハードディスク等の記憶装置又はコンピュータ内部に設けられるROM或いはRAM等の記憶装置に適宜格納することができる。即ち、そのようなプログラムを画像解析装置として機能するコンピュータが備える中央演算処理装置(CPU)によって実行することにより、本発明の画像解析方法はコンピュータ上で実現される。この場合に、本画像解析方法の各処理は、ハードウェアの一部で実現してもよい。
【0034】
さらに、この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録装置、半導体メモリ等が挙げられる。
【0035】
また、この処理内容を記述したプログラムを、例えばDVD又はCD−ROM等の可搬型記録媒体の販売、譲渡、貸与等により流通させることができるほか、そのようなプログラムを、ネットワーク上のサーバコンピュータの記録装置に格納しておき、ネットワークを介してサーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、流通させることができる。
【0036】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。例えば、RGB形式の画像データから輝度色差形式の画像データを取得する方法としては、上述したものに限られるものではなく、輝度色差形式の画像データを取得することができる方法であれば、画像解析装置3の処理能力や求められる画像の解像度に応じて適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による管路点検システムの概略図である。
【図2】本発明による画像解析装置の構成図である。
【図3】画像処理部30のより詳細な構成図である。
【図4】本発明による画像解析方法の一例のフローチャートである。
【図5】画像処理方法の一例のフローチャートである。
【図6】モニタ6に表示された管路画像及びその解析範囲についての説明図である。
【図7a】モニタ6に表示された画像処理前の管路画像の一例である。
【図7b】モニタ6に表示された画像処理後の管路画像の一例である。
【符号の説明】
【0038】
1 マンホール
2 地中埋設管
3 画像解析装置
4 管路点検用パイプカメラ
5 既設収容ケーブル
6 モニタ
7 システム制御部
10 入力部
20 A/D変換部
21 管路画像
22 解析範囲
23 目標球
30 画像処理部
31 色情報変換部
32 符号化/復号部
33 判定部
34 色情報出力部
35 算出部
36 補正部
40 D/A変換部
50 出力部
60 制御部
70 記憶部
80 電源部
L 検出幅
R 半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中埋設管内の画像を取得するステップと、
前記取得するステップによって取得された画像を解析し、所定の範囲の色を有する箇所を抽出する画像処理ステップと、
前記画像処理ステップによって抽出された箇所と前記地中埋設管の管内面積との比率を算出するステップと、
前記算出するステップによって算出された比率を補正するステップと、
を含むことを特徴とする画像解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像解析方法において、
前記画像処理ステップが、
前記取得するステップによって取得した画像における解析範囲を設定し、前記解析範囲の画素の原色成分を輝度成分及び色差成分に変換するステップと、
前記変換するステップによって変換された前記解析範囲の画素の輝度成分及び色差成分の値が、前記所定の範囲にあるか否かを判定するステップと、
前記判定するステップによって輝度成分及び色差成分の値が前記所定の範囲にあると判定された画素の色を所定の色で置換するステップをさらに含む、
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像解析方法において、
前記補正するステップが、
所定の補正係数を用いて、前記取得するステップによって取得された画像のうち前記地中埋設管以外の部分を差し引く、
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像解析方法において、
前記置換するステップによって前記所定の範囲の色を有する画素の色が所定の色に置換された画像をモニタへ出力する出力ステップをさらに含む、
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項5】
地中埋設管内の画像を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された画像を解析し、所定の範囲の色を有する箇所を抽出する画像処理部と、
前記画像処理部によって抽出された箇所と前記地中埋設管の管内面積との比率を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された比率を補正する補正部と、
を備えることを特徴とする画像解析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像解析装置において、
前記画像処理部が、
前記取得部によって取得した画像における解析範囲を設定し、前記解析範囲の画素の原色成分を輝度成分及び色差成分に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された前記解析範囲の画素の輝度成分及び色差成分の値が、前記所定の範囲にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって輝度成分及び色差成分の値が前記所定の範囲にあると判定された画素の色を所定の色で置換する置換部をさらに備える、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の画像解析装置において、
前記補正部が、
所定の補正係数を用いて、前記取得部によって取得された画像のうち前記地中埋設管以外の部分を差し引く、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の画像解析装置において、
前記置換部によって前記所定の範囲の色を有する画素の色が所定の色に置換された画像をモニタへ出力する出力部をさらに備える、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項9】
地中埋設管の管路点検用パイプカメラと、
画像解析装置と、
を含む管路点検システムであって、
前記画像解析装置が、
前記管路点検用パイプカメラによって撮影された地中埋設管内の画像を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された画像を解析し、所定の範囲の色を有する箇所を抽出する画像処理部と、
前記画像処理部によって抽出された箇所と前記地中埋設管の管内面積との比率を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された比率を補正する補正部と、
を備えることを特徴とする管路点検システム。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像解析方法を実行する装置を構成するコンピュータに、前記画像解析方法における各ステップの処理を実行させることを特徴とする画像解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公開番号】特開2010−19807(P2010−19807A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183050(P2008−183050)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【Fターム(参考)】