説明

輝度向上フィルム及び液晶表示装置

【課題】表示品位が高く、コントラスト比が高く、且つ表示面の外観が良好な液晶表示装置及びそのような装置を与えうる輝度向上フィルムを提供する。
ここから始まる。
【解決手段】円偏光分離素子、及び光学異方性素子を備える輝度向上フィルムであって、前記円偏光分離素子と前記光学異方性素子との間に拡散層を備え、その拡散層が、傾斜屈折率粒子を含有することを特徴とする、輝度向上フィルム;並びにこの輝度向上フィルムを備えた液晶表示装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度向上フィルム及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の表示装置において、輝度を向上させるための光学素子を設けることが知られている。例えば、液晶表示装置の液晶セルの視認側からみて裏側、すなわちバックライト側に、輝度向上フィルムを設けることが提案されている。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライト等の光源から光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定螺旋軸方向の円偏光を透過し、他の光は反射する特性を示すものを備えるものである。
バックライト等の光源から入射された光が輝度向上フィルムに入射すると、前記光のうち所定偏光状態の光は透過する。一方、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射され、バックライトに戻る。バックライトに戻った光は、そこに設けられた反射板等により、偏光状態が変化する。そして、この偏光状態が反転された光が、輝度向上フィルムに再度入射すると、前記光のうち所定偏光状態の光は輝度向上フィルムを透過することになる。このサイクルを繰り返すことにより、輝度向上フィルムを透過する光量や、偏光板に吸収されにくい偏光を供給して液晶表示装置等に利用しうる光量を増大することができ、それにより液晶表示装置の輝度を向上させることができる。
【0003】
輝度向上フィルムは、その表示品位の向上のために、光拡散性を備えていることが望ましい。そのような輝度向上フィルムとして、例えば特許文献1には、鏡面反射性半透過反射体と位相差フィルムからなる広帯域1/4λ板が、光拡散性粘接着層を介して接着した輝度向上フィルムが、開示されている。さらに、特許文献2には、接着性を有する光拡散層を反射型偏光フィルムと吸収型偏光フィルムの間に設けた輝度向上フィルムが開示されている。
【0004】
しかしながら、光拡散層による光の拡散は、通常偏光の変化をもたらす。例えば、所定の円偏光のみを選択的に透過させる層により、かかる所定の円偏光のみからなるものとした光を、光拡散層に通すと、円偏光の一部が、楕円偏光などの、偏光状態が変化した光になってしまう。かかる楕円偏光を含む光を、1/4λ板及び液晶セルにさらに通した場合、本来光が透過すべきでない操作条件下(黒表示状態等)において光が漏れて透過し、コントラスト比の低下をもたらす。また、偏光状態の制御の不良のため、表示面にギラツキなどの好ましくない外観が現れることもある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−323610号公報
【特許文献2】特開2004−354678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、表示品位が高く、コントラスト比が高く、且つ表示面の外観が良好な液晶表示装置及びそのような装置を与えうる輝度向上フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく検討した結果、本発明者らは、光拡散層中に、特定の粒子を配合することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔5〕を提供するものである。
〔1〕 円偏光分離素子、及び光学異方性素子を備える輝度向上フィルムであって、前記円偏光素子と前記光学異方性素子との間に拡散層を備え、その拡散層が、傾斜屈折率粒子を含有することを特徴とする、輝度向上フィルム。
〔2〕 前記光学異方性素子及び前記円偏光分離素子が、前記拡散層を介して粘着されてなる前記輝度向上フィルム。
〔3〕 前記拡散層が、さらに粘着性の樹脂を含有する前記輝度向上フィルム。
〔4〕 前記円偏光分離素子が、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を重合してなる非液晶性のコレステリック規則性を有する樹脂層を含むものである、前記輝度向上フィルム。
〔5〕 前記輝度向上フィルムを備えた液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の輝度向上フィルムは、拡散層として傾斜屈折率粒子を含有するものを備えるため、本発明の輝度向上フィルムを備える本発明の液晶表示装置は、拡散層による光の拡散に基づく高い表示品位を有し、高いコントラスト比を達成することができ、且つ表示面の外観が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の輝度向上フィルムは、円偏光分離素子及び光学異方性素子を備え、前記円偏光分離素子と前記光学異方性素子との間に拡散層を備え、その拡散層は、傾斜屈折率粒子を含有する。
図1は、かかる輝度向上フィルムの一例を示す部分断面図である。図1において、輝度向上フィルム100は、円偏光分離素子110、光学異方性素子130、及び円偏光分離素子110と光学異方性素子130との間に拡散層120を備え、拡散層120は、粘着性の樹脂121と、その中に分散された傾斜屈折率粒子125を含有している。
以下、かかる輝度向上フィルムの各構成要素について順次説明する。
【0010】
(円偏光分離素子)
本発明に用いる円偏光分離素子は、所定の円偏光のみを選択的に透過し、他の光を反射させる性質を有する素子である。具体的には、コレステリック規則性を有する樹脂層(以下、単に「コレステリック樹脂層」という場合がある。)を有する素子を用いることができる。当該コレステリック樹脂層は、非液晶性の層であることが好ましい。より具体的には、コレステリック規則性を持った分子配向が固定された樹脂層であることが好ましい。コレステリック樹脂層の好ましい例としては、棒状液晶性化合物を含有するコレステリック液晶組成物を硬化させたものを挙げることができる。
【0011】
(コレステリック液晶組成物)
本発明に用いるコレステリック液晶組成物としては、Δnが0.18以上であって、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する棒状液晶性化合物を含有するものを好ましく挙げることができる。
【0012】
前記棒状液晶性化合物としては、(式2)で表される化合物を挙げることができる。
3−C3−D3−C5−M−C6−D4−C4−R4 (式2)
(式中、R3及びR4は反応性基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。D3及びD4は単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。C3〜C6は単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO− 、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される基を表す。Mはメソゲン基を表し、具体的には、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−等の結合基によって結合されて形成される。)
【0013】
前記、メソゲン基Mが有しうる置換基としては、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R5、−O−C(=O)−R5、−C(=O)−O−R5、−O−C(=O)−O−R5、−NR5−C(=O)−R5、−C(=O)−NR5、または−O−C(=O)−NR5を表す。ここで、R5は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、アルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR6−C(=O)−、−C(=O)−NR6−、−NR6−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R6は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。前記「置換基を有してもよい炭素数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0014】
本発明において、該棒状液晶性化合物は非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、一般式(2)において、メソゲン基Mを中心としてR3−C3−D3−C5−と−C6−D4−C4−R4が異なる構造のことをいう。該棒状液晶性化合物として、非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0015】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、そのΔn値が好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。Δn値が0.30以上の化合物を用いると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高いΔn値を有することにより、高い光学的性能(例えば、円偏光分離特性)を有する円偏光分離シートを与えることができる。
【0016】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有することが好ましい。前記反応性基としては、具体的にはエポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、フマレート基、シンナモイル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、オキサゾリン基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基が挙げられる。これらの反応性基を有することにより、本発明に用いるコレステリック液晶組成物を硬化させた際に、安定した硬化物を得ることができる。1分子中に反応性基が1つ以下の化合物を用いると、コレステリック液晶組成物を硬化させた際に、架橋した硬化物が得られないため実用に耐えうる膜強度が得られない。後述する架橋剤を使用した場合でも、膜強度が不足してしまい実用は困難である。実用に耐えうる膜強度とは鉛筆硬度(JIS K5400)でHB以上、好ましくはH以上である。膜強度がHBより低いと傷がつきやすくハンドリング性に欠けてしまう。好ましい鉛筆硬度の上限は、光学的性能や耐久性試験に悪影響を及ぼさなければ特に限定されない。
【0017】
本発明に用いるコレステリック液晶組成物は、好ましくは、前記棒状液晶性化合物に加えて、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
1−A1−B−A2−R2 (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状の、非置換又はハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよいアルキル基;炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状の、非置換又はハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよいアルキレンオキサイド基;水素原子;炭素原子数1〜2個のアルキル基又はアルキレンオキサイド基と結合していてもよい、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基;からなる群より選択される基であり、
1及びA2は、それぞれ独立して、非置換若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基で1つ以上置換されていてもよい、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基;からなる群より選択される基を表し、
Bは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される。)
【0018】
一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基である。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの意味である。
【0019】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は置換されていないか若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は炭素原子数1〜2個のアルキル基、アルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0020】
1及びR2として好ましいものとしては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0021】
また、R1及びR2の少なくとも一方は反応性基であることが好ましい。R1及び/又はR2として反応性基を有することにより、前記一般式(1)で表される化合物が硬化時に液晶層中に固定され、より強固な膜を形成することができる。ここで反応性基とは、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基を挙げることができる。
【0022】
一般式(1)において、A1及びA2はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていないか若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基で1つ以上置換されていてもよい。A1及びA2のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0023】
1及びA2として特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、本発明の液晶組成物が含有する棒状液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一能がより高くなる。
【0024】
一般式(1)において、Bは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される。
【0025】
Bとして特に好ましいものとしては、単結合、−OCO−及び−C=N−N=C−が挙げられる。
【0026】
一般式(1)の化合物は、少なくとも一種が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、本発明に用いるコレステリック液晶組成物は、一般式(1)の化合物として、複数の光学異性体の混合物を含有することが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物を含有することができる。一般式(1)の化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0027】
一般式(1)の化合物が液晶性を有する場合には、高Δnであることが好ましい。高Δn液晶を含有させることによって、コレステリック液晶組成物としてのΔnを向上させることができ、広帯域の円偏光分離シートを作製することができる。一般式(1)の化合物の少なくとも一種のΔnは好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上とすることができる。
【0028】
一般式(1)の化合物として特に好ましい具体例としては、例えば下記の化合物(A1)〜(A3)及び(A5)〜(A10)が挙げられる:
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
上記化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
【0032】
本発明に用いるコレステリック液晶組成物において、(前記一般式(1)の化合物の合計重量)/(棒状液晶性化合物の合計重量)の重量比は0.05〜1、好ましくは0.1〜0.65、より好ましくは0.15〜0.45である。前記重量比が0.05より少ないと配向均一性が不十分となる場合があり、また逆に1より多いと配向均一性が低下したり、液晶相の安定性が低下したり、液晶組成物としてのΔnが低下して所望する光学的性能(例えば、円偏光分離特性)が得られない場合があり好ましくない。なお、合計重量とは、1種を用いた場合にはその重量を、1種以上用いた場合には合計の重量を示す。
【0033】
本発明に用いるコレステリック液晶組成物において、前記一般式(1)の化合物の分子量が600未満、前記棒状液晶化合物の分子量が600以上であることが好ましい。一般式(1)の化合物の分子量が600未満であることにより、それよりも分子量の大きい棒状液晶化合物の隙間に入り込むことができ、配向均一性を向上させることができる。
【0034】
本発明に用いるコレステリック液晶組成物は、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のために、任意に架橋剤を含有することができる。当該架橋剤としては、液晶組成物を塗布した液晶層の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、又は湿気により自然に反応が進行して液晶層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができ、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。架橋剤の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、該架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。
前記架橋剤の配合割合は、コレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中に0.1〜15重量%となるようにすることが好ましい。該架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られず、逆に15重量%より多いと液晶層の安定性を低下させてしまうため好ましくない。
【0035】
本発明に用いるコレステリック液晶組成物は、任意に光開始剤を含有することができる。当該光開始剤としては、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェノン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、所望する物性に応じて2種以上の化合物を混合することができ、必要に応じて公知の光増感剤や重合促進剤としての三級アミン化合物を添加して硬化性をコントロールすることもできる。
該光開始剤の配合割合はコレステリック液晶組成物中0.03〜7重量%であることが好ましい。該光開始剤の配合量が0.03重量%より少ないと重合度が低くなってしまい膜強度が低下してしまう場合があるため好ましくない。逆に7重量%より多いと、液晶の配向を阻害してしまい液晶相が不安定になってしまう場合があるため好ましくない。
【0036】
本発明に用いるコレステリック液晶組成物は、任意に界面活性剤を含有することができる。当該界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。当該界面活性剤としては、具体的には、疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に使用でき、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤は、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652、ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D、セイミケミカル社サーフロンのKH−40等を用いることができる。界面活性剤の配合割合はコレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。該界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる場合があるため好ましくない。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込み、配向均一性を低下させる場合があるため好ましくない。
【0037】
本発明に用いるコレステリック液晶組成物は、必要に応じてさらに他の任意成分を含有することができる。当該他の任意成分としては、カイラル剤、溶媒、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。これらの任意成分は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加できる。
【0038】
本発明に用いるコレステリック液晶組成物の調製方法は、特に限定されず、上記必須成分及び任意成分を混合することにより製造することができる。
【0039】
(円偏光分離素子の調製)
本発明に用いる円偏光分離素子の調製方法は、特に限定されないが、前記コレステリック液晶組成物を透明樹脂基材に塗布して液晶層を得、次いで少なくとも1回の、光照射及び/又は加温処理により硬化して調製することができる。
【0040】
前記透明樹脂基材は、特に限定されず1mm厚で全光透過率80%以上の基材を使用することができる。具体的には、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂などの合成樹脂からなる単層又は積層のフィルムが挙げられる。これらの中でも、脂環式オレフィンポリマー又は鎖状オレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式オレフィンポリマーが特に好ましい。
【0041】
前記透明樹脂基材は、必要に応じて、配向膜を有することができる。配向膜を有することにより、その上に塗布されたコレステリック液晶組成物を所望の方向に配向させることができる。配向膜は、基材表面上に、必要に応じてコロナ放電処理等を施した後、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを水又は溶剤に溶解させた溶液等を、リバースグラビアコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、ダイコーティング、バーコーティング等の公知の方法を用いて塗布し、乾燥させ、その後乾燥塗膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。配向膜の厚さは、所望する液晶層の配向均一性が得られる膜厚であればよく、0.001〜5μmであることが好ましく、0.01〜2μmであることがさらに好ましい。
【0042】
前記透明樹脂基材への液晶組成物の塗布は、リバースグラビアコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、ダイコーティング、バーコーティング等の公知の方法により行うことができる。液晶組成物の塗布層の厚さは、後述する所望の液晶層乾燥膜厚が得られるよう、適宜調整することができる。
【0043】
前記塗布により得られた塗布層を硬化する前に、必要に応じて、配向処理を施すことができる。配向処理は、例えば塗布層を50〜150℃で0.5〜10分間加温することにより行うことができる。当該配向処理を施すことにより、コレステリック液晶層を良好に配向させることができる。
【0044】
必要に応じて配向処理を施した後、コレステリック液晶組成物を硬化させることにより、コレステリック液晶組成物の硬化層(以下単に「硬化液晶層」ということがある。)を有する円偏光分離素子を得ることができる。前記硬化の工程は、1回以上の光照射と加温処理との組み合わせにより行うことができる。加温条件は、具体的には例えば、温度40〜200℃、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは50〜140℃、時間は1秒〜3分、好ましくは5〜120秒とすることができる。本発明において光照射に用いる光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。光照射は、具体的には例えば波長200〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行うことができる。また、例えば0.01〜50mJ/cm2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返し、反射帯域の広い円偏光分離素子とすることもできる。上記の微弱な紫外線照射等による反射帯域の拡張を行った後に、50〜10,000mJ/cm2といった比較的強い紫外線を照射し、液晶性化合物を完全に重合させ、硬化液晶層とすることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行うこともできる。
【0045】
本発明において、透明樹脂基材上へのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化の工程は、1回に限られず、塗布及び硬化を複数回繰り返し2層以上の硬化液晶層を形成することもできる。ただし本発明においては、1回のみのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化によっても、良好に配向したΔnが0.18以上の棒状液晶性化合物を含む5μm以上の厚みの硬化液晶層を容易に形成することができる。
【0046】
本発明に用いる円偏光分離素子において、硬化液晶層の乾燥膜厚は好ましくは3.0μm〜10.0μm、より好ましくは3.5〜8μmとすることができる。前記硬化液晶層の乾燥膜厚が3.0μmより薄いと反射率が低下してしまい、逆に10.0μmより厚いと、硬化液晶層に対して斜め方向から観察した時に着色してしまうため、それぞれ好ましくない。なお、前記乾燥膜厚は、硬化液晶層が2以上の層である場合は、各層の膜厚の合計を、硬化液晶層が1層である場合にはその膜厚をさす。
【0047】
(光学異方性素子)
本発明の輝度向上フィルムは、前記円偏光分離素子に加えて、光学異方性素子を備える。
本発明に用いる光学異方性素子は、その正面方向のリターデーションRe(以下、「Re」と略記することがある。)が透過光の略1/4波長である素子である。ここで、透過光の波長範囲は、本発明の輝度向上フィルムに求められる所望の範囲とすることができ、具体的には例えば400nm〜700nmである。また、正面方向のリターデーションReが透過光の略1/4波長であるとは、Re値が、透過光の波長範囲の中心値において、中心値の1/4の値から±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲であることをいう。
【0048】
また、光学異方性素子は、厚み方向のリターデーションRth(以下、「Rth」と略記することがある。)が0nm未満であることが望ましい。厚み方向のリターデーションRthの値は、透過光の波長範囲の中心値において、好ましくは−30nm〜−1000nm、より好ましくは−50nm〜−300nmとすることができる。このようなRe値及びRthを有する光学異方性素子を採用することにより、輝度を向上させ輝度ムラを低減させながら、出射光の色ムラをも低減させることができる。
ここで、前記正面方向のリターデーションReは、式I:Re=(nx−ny)×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(正面方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値であり、厚み方向のリターデーションRthは、式II:Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxに直交する方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値である。
なお、前記正面方向のリターデーションRe及び厚み方向のリターデーションRthは、市販の位相差測定装置を用いて、光学異方性素子を長手方向及び幅方向に100mm間隔(長手方向又は横方向の長さが200mmに満たない場合は、その方向へは等間隔に3点指定する)で、全面にわたり、格子点状に測定を行い、その平均値とする。
【0049】
本発明に用いる光学異方性素子としては、(i)フィルム状のポリマーを延伸したもの、又は(ii)液晶性の材料を透明樹脂基材上に塗布し、配向させ、硬化させたものを用いることができる。(ii)の光学異方性素子を用いる場合は、適当な基材上に液晶性の材料を塗布し、配向させ、硬化させて当該光学異方性素子を得ることができる。一方、(i)のフィルム状のポリマーを延伸したものである光学異方性素子の好ましい例として、以下に述べる光学異方性素子を挙げることができる。
【0050】
前記光学異方性素子を構成する材質は、特に限定されないが、スチレン系樹脂からなる層を有するものを好ましく用いることができる。ここでスチレン系樹脂とは、スチレン構造を繰り返し単位の一部又は全部として有するポリマー樹脂であり、ポリスチレン、又は、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン系単量体と、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、酢酸ビニルなどのその他の単量体との共重合体などを挙げることができる。これらの中で、ポリスチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体を好適に用いることができる。
【0051】
光学異方性素子に用いるスチレン系樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜300,000、好ましくは15,000〜250,000、より好ましくは20,000〜200,000である。
【0052】
前記光学異方性素子は、好ましくは、前記スチレン系樹脂からなる層と、他の熱可塑性樹脂を含む層との積層構造を有する。当該積層構造を有することにより、スチレン系樹脂による光学的特性と、他の熱可塑性樹脂による機械的強度とを兼ね備えた素子とすることができる。他の熱可塑性樹脂としては、脂環式オレフィンポリマー、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリル酸エステル−ビニル芳香族化合物共重合体樹脂、メタクリル酸エステル−ビニル芳香族化合物共重合体樹脂、ポリエーテルスルホンなどを挙げることができる。これらの中で、脂環式構造を有する樹脂やメタクリル樹脂を好適に用いることができる。
【0053】
脂環式オレフィンポリマーは、主鎖及び/または側鎖にシクロアルカン構造又はシクロアルケン構造を有する非晶性のオレフィンポリマーである。具体的には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。これらの脂環式構造を有する樹脂は、特開平05−310845号公報、特開平05−097978号公報、米国特許第6,511,756号公報に記載されているものが挙げられる。
【0054】
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。
【0055】
メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体や、メタクリル酸エステルとその他の単量体との共重合体が挙げられる、メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。共重合体とする場合は、メタクリル酸エステルと共重合するその他の単量体としては、アクリル酸エステルや、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
【0056】
本発明に用いる光学異方性素子の好ましい具体的態様として、ポリスチレン樹脂からなるフィルム(a層)の両面に、他の熱可塑性樹脂からなるフィルム(b層)を積層してなる複層フィルムを延伸してなる延伸複層フィルムを挙げることができる。以下、この具体的態様について説明する。
【0057】
前記a層を構成するポリスチレン樹脂しては、上記「スチレン系樹脂」と同様のものを用いることができる。
【0058】
a層を構成するポリスチレン樹脂は、ガラス転移温度が120℃以上であることが好ましく、120〜200℃であることがより好ましく、120〜140℃であることがさらに好ましい。
【0059】
本発明において、前記ポリスチレン樹脂及び前記他の熱可塑性樹脂は、それらのガラス転移温度をそれぞれTg(a)(℃)及びTg(b)(℃)としたとき、Tg(a)>Tg(b)+20℃の関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことにより、延伸した際にポリスチレン樹脂からなるa層に有効に光学的異方性を与え、良好な光学異方性素子を得ることができる。
【0060】
a層の材料である前記ポリスチレン樹脂及びb層の材料である前記他の熱可塑性樹脂を積層して、複層フィルムに成形する方法は、特に限定されないが、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及びコーティング成形方法などの公知の方法が適宜利用され得る。中でも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出による成形方法が好ましい。押出し温度は、使用する前記ポリスチレン樹脂、及び前記他の熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択され得る。
【0061】
複層フィルムは、前記a層の両面に、前記b層を積層してなる。a層とb層の間には、接着層や粘着層を設けることができるが、a層とb層とを直接に積層させる(つまり、b層/a層/b層の3層構成の積層体とする)ことが好ましい。また、複層フィルムにおいて、前記a層及びその両面に積層されたb層の厚みは特に制限はないが、好ましくはそれぞれ10〜300μm及び10〜400μmとすることができる。
【0062】
前記延伸複層フィルムは、前記複層フィルムを延伸してなる。前記延伸複層フィルムは、a層の延伸により設けられたA層、及びb層の延伸により設けられたB層を含むことができる。前記延伸複層フィルムは、前記複層フィルムのb層/a層/b層の3層構造の積層体を延伸してなり、B層/A層/B層の3層構造の延伸フィルムであることが好ましい。
当該延伸は、好ましくは一軸延伸又は斜め延伸により行うことができ、さらに好ましくはテンターによる一軸延伸又は斜め延伸により行うことができる。
【0063】
光学異方性素子の正面方向リターデーションReや厚み方向のリターデーションRthは、延伸温度や延伸倍率等の延伸条件を適宜調整することにより製造することができる。延伸温度は、前記Tg(a)−10℃〜前記Tg(a)+20℃が好ましく、前記Tg(a)−5℃〜前記Tg(a)+15℃の範囲であることがより好ましい。延伸倍率は、1.05〜30倍が好ましく、1.1〜10倍であることがより好ましい。延伸温度や延伸倍率が、上記範囲を外れると、配向が不十分で屈折率異方性、ひいてはリターデーションの発現が不十分になったり、積層体が破断したりするおそれがある。
【0064】
光学異方性素子の厚みは、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは50〜600μmである。
【0065】
(拡散層)
本発明の輝度向上フィルムは、前記光学異方性素子及び前記円偏光分離素子の間に設けられた拡散層を備える。光学異方性素子と拡散層との間、及び拡散層と円偏光分離素子との間には、さらに他の層が介在してもよいが、好ましくは、光学異方性素子及び円偏光分離素子は拡散層の材料を介して粘着され、図1に示す例の通り、光学異方性素子及び円偏光分離素子は拡散層に直接接して設けられる。
拡散層の材料としては、常温(20±15℃:JIS規格)において粘着性を示すものが好ましい。ここで粘着性を示すとは、JIS Z0237の傾斜式ボールタック測定による測定で、ボールナンバーで2以上の粘着性を示すことをいう。
【0066】
本発明において、拡散層は、傾斜屈折率粒子を含有し、好ましくは傾斜屈折率粒子と粘着性の樹脂とを含有する。粘着性の樹脂としては、以下に述べる特定の粘着性組成物を好ましく用いることができる。
【0067】
(粘着性組成物)
本発明における粘着性組成物は、少なくとも粘着剤を構成する主ポリマーを含有する。
該主ポリマーとしては、アクリル系重合体およびアクリル系共重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、熱可塑性エラストマー、エポキシ系、天然ゴム系、合成ゴム系などが挙げられる。これらの中でも、透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集力を示し、耐候性に優れる点で、熱可塑性エラストマー、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体が好ましい。熱可塑性エラストマーとは、加硫処理をしなくても、室温でゴム弾性を有する樹脂であり、具体的には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体およびエチレン−プロピレンターポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらにカルボキシル基、スルホニル基を導入したものが挙げられる。また、これらの主ポリマーの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜500,000であり、好ましくは20,000〜400,000である。
【0068】
前記粘着性組成物には、主ポリマーの種類に応じて、他の配合剤を配合することができる。他の配合剤としては、粘着付与剤、架橋剤又は硬化剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤が挙げられる。
【0069】
上記粘着付与剤は、軟らかくなりかつ固体表面が濡れやすくなった主ポリマーに、粘着力を付与するものである。このような粘着付与剤としては、ロジンおよびロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油樹脂、水素化石油樹脂などが挙げられる。これらの中でも、透明性や主ポリマーとの相溶性に優れる点で、石油樹脂、水素化石油樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。粘着付与剤の配合量は、主ポリマー100重量部に対して、好ましくは2〜50重量部であり、より好ましくは5〜20重量部である。粘着付与剤の添加量が2重量部より少ないと、粘着付与剤の効果が発現せず、逆に添加量が50重量部を超えると、接着剤の凝集力の低下による接着力の低下が見られる傾向がある。
【0070】
上記架橋剤又は硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート架橋剤又は硬化剤;エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、などのエポキシ系架橋剤又は硬化剤;ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン系架橋剤又は硬化剤;メラミン樹脂系架橋剤;金属キレート系架橋剤;アミン系架橋剤が用いられる。架橋剤又は硬化剤の配合量は、主ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部であり、より好ましくは0.01〜3重量部である。架橋剤又は硬化剤の添加量が0.001重量部より少ないと、架橋剤の効果が発現せず、耐候性試験などで発泡や剥離が目立つ。逆に架橋剤又は硬化剤の添加量が10重量部より多くなると、接着剤の応力緩和性が低下し、ソリなどが目立つようになる。
【0071】
上記酸化防止剤としては、テトラキス(メチレン−3−(3,5ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の配合量は、接着層の透明性や接着力が低下しない範囲である。
【0072】
前記粘着性組成物は、温度23℃におけるせん断貯蔵弾性率が0.1〜10MPaであることが好ましい。かかる範囲のせん断貯蔵弾性率とすることにより、粘着剤組成物が適度な粘着性(即ち、被着体を容易に貼り合わせる貼着力を保持し、且つ剥離時に容易に剥離できる性質)を有し得る。
【0073】
前記粘着性組成物の屈折率は、1.45〜1.55の範囲内であることが好ましい。かかる範囲の屈折率とすることにより、円偏光分離素子−拡散層−光学異方性素子の構成において界面反射を防止できる。
【0074】
(傾斜屈折率粒子)
本発明において、拡散層に含まれる傾斜屈折率粒子とは、その表面から中心への深さが深くなるにつれて変化する、屈折率の勾配を有する粒子をいう。ここで、屈折率の勾配は、粒子の表面から中心までの深さ方向の全ての範囲において存在していてもよいが、粒子の表面から中心までの深さ方向の一部の範囲において存在していてもよい。具体的には例えば、均一な屈折率を有する核と、かかる核を被覆する、厚さ方向に屈折率の勾配を有する被覆層を有するものとすることができる。
【0075】
かかる傾斜屈折率粒子の一例を、図2を参照して説明する。図2において、傾斜屈折率粒子125は、核125Cと、その周囲を被覆する被覆層125Dとからなる球状の粒子である。核125Cは、実質的に均一な屈折率を有しているので、その半径方向(即ち粒子表面からの深さ方向)142における屈折率の勾配はない。一方、被覆層125Dは、その厚さ方向(即ち粒子表面からの深さ方向)143に沿って、屈折率の勾配を有する。
【0076】
かかる被覆層の勾配は、核125Cと被覆層125Dとの界面125Bで核に近く、粒子125の表面125Sで、その周囲を取り囲む他の材料(粘着性組成物等)に近い勾配であることが好ましい。例えば、拡散層材料が、前記粘着性組成物からなるバインダーと、傾斜屈折率粒子からなるフィラーとを含む場合において、粘着性組成物の屈折率が核125Cの屈折率より小さい場合、被覆層125Dの屈折率の勾配は、表面125Sから界面125Bへ向かうにつれて屈折率が大きくなるような勾配とすることが好ましい。
【0077】
さらに好ましくは、界面125Bにおける被覆層125Dの屈折率、表面125Sにおける被覆層125Dの屈折率、核125Cの屈折率、及び粘着性組成物の屈折率をそれぞれn、n、n及びnとすると、これらは下記式(III)〜式(VI)の関係を満たすことが好ましい。
0.05≦|n−n|・・・(III)
0.05≦|n−n|≦0.5・・・(IV)
0≦|n−n|≦0.1・・・(V)
0≦|n−n|≦0.2・・・(VI)

及びnは、式(III)の如くその差の絶対値が0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。粘着剤組成物から被覆層を介し核に至るまでの間になだらかに屈折率傾斜(勾配)を有することがさらに好ましい。
【0078】
及びnは、式(IV)の如くその差の絶対値が0.05以上0.5以下であることが好ましく、さらに0.05以上0.3以下であることがさらに好ましい。屈折率の差の絶対値が0.05よりも小さいと十分な光拡散効果が得られず、また、0.5よりも大きいと透明性が悪くなり光学フィルムとしての機能が低下するため好ましくない。
【0079】
及びnは、式(V)の如くその差の絶対値が0以上0.1以下であることが好ましく、さらに0以上0.06以下であることがさらに好ましい。屈折率の差の絶対値が0.1よりも大きいと粒子内部での散乱性が大きくなり光学フィルムとしての色むら機能が低下するため好ましくない。
【0080】
及びnは、式(VI)の如くその差の絶対値が0以上0.2以下であることが好ましく、さらに0以上0.12以下であることがさらに好ましい。屈折率の差の絶対値が0.2よりも大きいと拡散層内部の散乱性が大きくなり光学フィルムとしての色むら機能が低下するため好ましくない。
【0081】
傾斜屈折率粒子の形状は、球状であることが、光の拡散方向を等方的にできる点で好ましいが、球状の形状から逸脱した楕円回転体状等の形状であってもよい。傾斜屈折率粒子の粒径141は、特に限定されないが、平均一次粒径として0.5〜20μmであることが好ましい。尚、ここでいう直径は、完全な球状ではない場合は、同一体積の球の直径で代用される。また、核125Dの半径142と被覆層125Dの厚さ143との比は、2:3〜3:2であることが好ましい。
【0082】
傾斜屈折率粒子は、透明な粒子状のものであれば特に制限されないが、より優れた光拡散効果を得ることが出来る観点から、微粒子状のものが好ましい。微粒子としては、屈折率の傾斜構造を形成させることができるものであれば特に限定されない。例えば有機微粒子、無機微粒子が挙げられる。
有機微粒子として、例えばアクリル微粒子、スチレン微粒子、シリコーン微粒子、スチレン−ブタジエン微粒子、アクリル−アクリルコアシェル型微粒子、アクリル−スチレン−ブタジエンコアシェル型微粒子等が挙げられる。特にコアシェル型微粒子が傾斜屈折率を形成させる上で好ましい。
無機微粒子として、例えば酸化チタン等の高屈折率を示す微粒子表面に組成の異なる金属アルコキシド溶液をコーティングすることにより、コーティング層の屈折率が連続的または段階的に傾斜した無機微粒子を作製することができる。
【0083】
傾斜屈折率を有する有機微粒子は、乳化重合法、シード重合法、懸濁重合法などを用いて作製することができる。具体的には初期にそのホモポリマーが高屈折率を示すモノマー(A)を重合し、微粒子中央部に高屈折率を形成させる。その後、そのホモポリマーが、前記(A)のホモポリマーより屈折率が小さく、かつマトリックスとなる粘着性の樹脂と同じ屈折率、またはマトリックスとなる粘着性の樹脂よりも屈折率が小さいモノマー(B)と前記(A)の混合物を、(A)及び(B)の比率を変化させて重合系に添加することにより、中央部が高屈折率でかつ粒子被覆層部に行くに従い屈折率が連続的または段階的に傾斜した有機微粒子を作製することができる。
【0084】
拡散層材料における傾斜屈折率粒子の好ましい配合割合は、粘着性組成物100重量部に対して0.1〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部とすることができる。
【0085】
拡散層に含まれる傾斜屈折率粒子の平均一次粒径(図2における矢印141)dと、拡散層の厚みlの比は、好ましくは0.05≦d/l≦0.6、特に好ましくは、0.07≦d/l≦0.3である。0.05未満であると、粒子の粒径が小さすぎるか、拡散層の膜厚が厚すぎるため、前者であれば必要な散乱特性が得られないおそれが、後者では拡散層が不要な位相差を発生させるおそれがあり、0.6を超えると、必要な接着面積が得られず、粘着力が不足し拡散層が剥離するおそれがある。なお拡散層の厚みlは、特に限定されないが、2〜50μmの範囲とすることができる。さらに5〜30μmが好ましい。
【0086】
本発明において、拡散層が、拡散層を透過する光を拡散させる拡散剤として、上記の傾斜屈折率粒子を含有することにより、光の偏光状態の変化を少ないものとしながら、拡散を達成することができる。即ち、傾斜屈折率粒子に入射した光は、粒子内部において、傾斜屈折率を有する層を通過するにつれてその進行方向及び偏光状態を変化させ、偏光状態の変化は、光の経路が粒子の中心に最も近づいたときに最大となる。しかし、その後光の経路が粒子の中心から遠ざかり再び粒子表面から出射するまでに、偏光状態の変化が打ち消され、出射に際しては入射時と同じ偏光状態で光の進行方向のみが変化した光が出射される。
【0087】
本発明の輝度向上フィルムにおいては、拡散層のヘイズが、好ましくは10%〜90%、特に好ましくは30%〜80%である。10%未満であると、プリズムシートによって発生する、出射光の観察角度の変化に伴う急峻な輝度変化、いわゆるギラツキが輝度向上フィルムを通して視認されるおそれがあり、90%を超えると、過剰な散乱によって期待する輝度が得られないおそれがある。ヘイズを上記範囲にするための方法としては、傾斜屈折率粒子の配合割合を適宜調節することが挙げられる。なお、ヘイズの測定は、ヘイズメータ(例えば、ヘイズガードII(東洋精機社製))を用いて行う。
【0088】
本発明の輝度向上フィルムの製造方法は、特に限定されないが、光学異方性素子及び円偏光分離素子のうちのいずれか一方又は両方に、拡散層を形成するための拡散層材料を塗布した後、光学異方性素子及び円偏光分離素子を貼り合わせ、その後必要に応じて拡散層材料の層を硬化させることにより製造することができる。
【0089】
拡散層材料の塗工方法は特に制限されず、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などが挙げられる。また、円偏光分離素子又は光学異方性素子に拡散層材料を直接塗工する場合には、濡れ性および密着性を高めるために、塗工に先立ち、塗工面を適宜プラズマ放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、又は火炎処理等の処理に供してもよい。
【0090】
光学異方性素子及び円偏光分離素子を貼り合わせた後の、必要に応じて拡散層材料の層を硬化させる工程は、40℃〜110℃、好ましくは60℃〜100℃の温度範囲での加熱等により行なうことができる。
【0091】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の輝度向上フィルムを備える。具体的には例えば、光源、反射板及び拡散板を含むバックライト装置と、前記本発明の輝度向上フィルムと、液晶パネルとを有し、バックライト装置からの光が輝度向上フィルムに入射し選択的に一方の円偏光を反射し、他方の円偏光を透過して、液晶パネルに供給される液晶表示装置とすることができる。より具体的には、本発明の輝度向上フィルムを、前記円偏光分離素子側の面が光源側、光学異方性素子側の面が液晶パネル側に面するように配置し、光学異方性素子から出射した直線偏光が液晶パネルに入射するよう構成することができる。
本発明の液晶表示装置は、必要に応じてさらに、拡散シート、プリズムシート等の任意の構成要素を備えることもできる。
【実施例】
【0092】
以下に、本発明を実施例により説明する。なお、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。
【0093】
<製造例1>
以下の手順で、図2に示す態様の、球状の傾斜屈折率粒子を得た。
撹拌機を取り付けたステンレス製反応器に、脱イオン水75重量部、分散剤であるポリビニルアルコール1.0重量部、ラジカル開始剤である過酸化ベンゾイル0.6重量部を入れ、減圧脱気で窒素置換した後に、α−メチルスチレン40重量部およびジビニルベンゼン3重量部を入れ、撹拌してエマルジョン化した。このエマルジョンを別に脱気されたオートクレーブに移し、ホモジナイザーで撹拌しながら65℃に昇温して2時間重合を行った。
【0094】
次に、重合液A(脱イオン水250重量部、分散剤であるポリビニルアルコール3重量部、ラジカル開始剤である過酸化ベンゾイル2.5重量部を入れ、減圧脱気で窒素置換した後に、α−メチルスチレン100重量部、ジビニルベンゼン10重量部を撹拌することによりエマルジョン化したもの)、重合液B(重合液Aのモノマーをメチルメタクリレートに変えたもの)の混合液100重量部(重合液Aは88重量部、重合液Bは12重量部)を前記オートクレーブに加え、30分間重合を行った。次いで、2回目の混合液100重量部(重合液Aは75重量部、重合液Bは25重量部)を前記オートクレーブに加え、30分間重合を行なった。続いて、3回目の混合液100重量部(重合液Aは62重量部、重合液Bは28重量部)、4回目の混合液100重量部(重合液Aは50重量部、重合液Bは50重量部)、5回目の混合液100重量部(重合液Aは40重量部、重合液Bは60重量部)、6回目の混合液100重量部(重合液Aは28部、重合液Bは72重量部)、7回目の混合液100重量部(重合液Aは20重量部、重合液Bは80重量部)、及び8回目の混合液100重量部(重合液Aは12重量部、重合液Bは88重量部)を順次用いて、2回目の混合液による重合と同様の作業をそれぞれ実施した。続いて、9回目の混合液100重量部(重合液Aは7重量部、重合液Bは93重量部)を前記オートクレーブに加え、2時間重合を行った時点で冷却して重合を終了して、ポリマービーズ分散液を得た。
得られたポリマービーズ分散液を濾別、洗浄、乾燥し、篩別(50μm以上の粒子を除去)することにより、図2に示す態様の、球状の傾斜屈折率粒子125を得た。
得られた傾斜屈折率粒子125の粒径141の平均は18.5μmであり、核125Cの半径142の平均は8.5μmであり、傾斜屈折率被覆層125Dの厚さ143の平均は10.0μmであった。粒子125の表面125Sにおける被覆層125Dの屈折率は1.50であり、核125Cと被覆層125Dとの境界125Bにおける被覆層125Dの屈折率は1.67であり、また、核125Cの屈折率は1.73であった。屈折率分布は差分干渉顕微鏡(Interphako、Carl−Zeiss社製)を用いて測定した。
【0095】
<製造例2>
モノマーのα−メチルスチレンをビニルナフタレンに変更した以外は、製造例1と同様にして傾斜屈折率粒子を得た。
得られた傾斜屈折率粒子の粒径141の平均は15.5μmであり、核125Cの半径142の平均は7.5μmであり、傾斜屈折率被覆層125Dの厚さ143の平均は8.0μmであった。粒子125の表面125Sにおける被覆層125Dの屈折率は1.42であり、核125Cと被覆層125Dとの境界125Bにおける被覆層125Dの屈折率は1.65であり、また、核125Cの屈折率は1.68であった。
【0096】
<製造例3>
撹拌機を取り付けたステンレス製反応器に、脱イオン水300重量部、分散剤であるポリビニルアルコール1.0重量部、ラジカル開始剤である過酸化ベンゾイル0.6重量部を入れ、減圧脱気で窒素置換した後に、α−メチルスチレン40重量部およびジビニルベンゼン3重量部を入れ、撹拌してエマルジョン化した。このエマルジョンを別に脱気されたオートクレーブに移し、ホモジナイザーで撹拌しながら65℃に昇温して2時間重合を行った。
次に、重合液A(脱イオン水250重量部、分散剤であるポリビニルアルコール3重量部、ラジカル開始剤である過酸化ベンゾイル2.5重量部を入れ、減圧脱気で窒素置換した後に、α−メチルスチレン60重量部、ジビニルベンゼン40重量部を撹拌することによりエマルジョン化したもの)、重合液B(重合液Aのモノマーをメチルメタクリレートに変えたもの)の混合液100重量部(重合液Aは50重量部、重合液Bは50重量部)を前記オートクレーブに加え、2時間重合を行った時点で冷却して重合を終了して、ポリマービーズ分散液を得た。
得られたポリマービーズ分散液を濾別、洗浄、乾燥し、篩別(50μm以上の粒子を除去)することにより、コアシェル構造を有する粒子を得た。
得られた粒子の粒径の平均は9.5μmであり、核の半径の平均は4.5μmであり、被覆層の厚さの平均は5.0μmであった。粒子の表面における被覆層の屈折率は1.52であり、核と被覆層との境界における被覆層の屈折率は1.53であり、また、核の屈折率は1.65であった。
【0097】
<実施例1>
円偏光分離素子と光学異方性素子を、それぞれ以下のようにして作製した。
【0098】
(円偏光分離素子)
厚さ100μm、幅50mm、長さ200mmの脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(株式会社オプテス製)の片面を、表面の濡れ指数が56dyne/cmになるように、コロナ放電処理を施した。これを基材フィルムとして用いた。
前記基材フィルムのコロナ放電処理を施した面に、ワイヤーバー#2を用いて5%の変性ポリアミド(FR105/CM4000の70/30混合物、FR105:株式会社鉛市製 メトキシメチル化ナイロン CM4000:東レ株式会社製 共重合ポリアミド)の水溶液を塗布した。塗布後120℃にて5分間乾燥し、膜厚0.1μmの乾膜を作製した。
【0099】
該乾膜を一方向にラビング処理することで、配向膜を得た。作製した配向膜上に、下記組成の塗布液をワイヤーバー#6を用いて塗布し、100℃にて5分間乾燥および配向熟成した。
【0100】
〔コレステリック樹脂層形成用塗布液組成〕
固形分率:40重量%
棒状液晶性化合物(Δn(=ne−no)=0.18を有する棒状液晶性化合物) 29.0重量部
A1化合物(前記(A1)で表される化合物;融点66℃) 7.5部
光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 IRG907)1.2重量部
界面活性剤(セイミケミカル(株)製 KH−40) 0.04重量部
カイラル剤(BASF社製 LC756) 2.3重量部
メチルエチルケトン(SP値:9.3) 60重量部
【0101】
塗布膜に紫外線を70mJ/cm2(UV−A)を照射し、100℃にて1〜5分間保持し、次いで紫外線を照射して塗布膜を硬化させて、膜厚3μmのコレステリック樹脂層(光学機能層)を有する円偏光分離シート1を得た。このコレステリック樹脂層は、400nm〜570nmまでの光線透過率の平均値がおよそ55%であり、界面反射も含めて、残るおよそ45%が反射していることが分かった。
【0102】
前記円偏光分離シート1の作製において、重合性液晶性化合物29.0重量部を29.4重量部に、カイラル剤2.3重量部を1.9重量部に変更した以外は、同様にして、円偏光分離シート2を得た。このコレステリック樹脂層は560〜730nmまでの光線透過率の平均値はおよそ55%であり、界面反射も含めて、残るおよそ45%が反射していることが分かった。
作製した円偏光分離シート2のコレステリック樹脂層側を、円偏光分離シート1の基材フィルム側と、粘着剤(住友スリーエム社製、「8142」)を介して貼り合せ固着し、円偏光分離素子を得た。
【0103】
(光学異方性素子)
メタクリル酸メチル97.8重量%とアクリル酸メチル2.2重量%とからなるモノマー組成物を、バルク重合法により重合させ、樹脂ペレットを得た。
【0104】
特公昭55−27576号公報の実施例3に準じて、ゴム粒子を製造した。このゴム粒子は、球形3層構造を有し、芯内層が、メタクリル酸メチル及び少量のメタクリル酸アリルの架橋重合体であり、内層が、主成分としてのアクリル酸ブチルとスチレン及び少量のアクリル酸アリルとを架橋共重合させた軟質の弾性共重合体であり、外層が、メタクリル酸メチル及び少量のアクリル酸エチルの硬質重合体である。また、内層の平均粒子径は0.19μmであり、外層をも含めた粒径は0.22μmであった。
【0105】
上記樹脂ペレット70重量部と、上記ゴム粒子30重量部とを混合し、二軸押出機で溶融混練して、メタクリル酸エステル重合体組成物A(ガラス転移温度105℃)を得た。
【0106】
上記メタクリル酸エステル重合体組成物A(b層)、及びスチレン無水マレイン酸共重合体(ガラス転移温度130℃)(a層)を温度280℃で共押出成形することにより、b層/a層/b層の三層構造で、各層が45/70/45(μm)の平均厚みを有する複層フィルムを得た。この積層フィルムを、テンター延伸機で、遅相軸がMD方向に対して45度傾いた方向になるように、延伸温度134℃、延伸倍率1.8倍で斜め延伸し、光学異方性素子を得た。
【0107】
光学異方性素子の正面方向のリターデーションは、140nm、厚み方向のリターデーションは−85nm(各数値は斜め延伸後の測定値である。)であった。さらにこの光学異方性層の片面を、濡れ指数が56dyne/cmになるようにコロナ放電処理を施した。
【0108】
(輝度向上フィルムの作製及び評価)
次に、円偏光分離素子と光学異方性素子とを、粘着性を有する拡散層材料にて貼り合わせて一体化して、輝度向上フィルムを作製した。
【0109】
アクリルエマルジョン系粘着剤(大同化成製;ビニゾールE−5301、屈折率1.53)に、製造例1で得た傾斜屈折率粒子を混合し、拡散層材料を得た。粘着性組成物における傾斜屈折率粒子の配合割合は、前記粘着剤100重量部に対して3重量部とした。この拡散層材料を、前記円偏光分離素子のコレステリック樹脂層上に平均厚みが25μmとなるように積層し、この層と、前記光学異方性層のコロナ処理面とを、ラミネーターを用いて、80℃において、2kgf/50mmのニップ圧にて貼り合わせ、輝度向上フィルムを得た。
【0110】
市販の液晶表示装置(Sharp製、AQUOS、LC−37BE1W)を分解し、輝度向上フィルムとして、上で得た輝度向上フィルムを組み込み、組み立て直した。市販の液晶表示装置は、光源、拡散板、拡散シート、プリズムシート、輝度向上フィルム、液晶パネルの順で構成されていた。フィルムの把持には、装置の部品をそのまま利用した。なお、輝度向上フィルムを組み込む際には、光学異方性素子が液晶パネル側になるようにした。組み立て直して液晶表示装置を白表示させ、その時の正面輝度をErgoscope(Autronic−MELCHERS社製)を用いて測定し、正面輝度は実施例1の測定結果を1として、他の実施例及び比較例の測定結果を相対値として表した。また表示面のギラツキ、色むらを目視評価し、ギラツキは観察角度を変化させた際の急峻な輝度変化が解消している場合を○、解消していない場合を×として判断した。色むらは観察されなかった場合を○、観察されたが軽度の場合を△、観察され表示品位を著しく悪化させた場合を×とした。結果を表1に示す。
【0111】
<実施例2>
傾斜屈折率粒子の配合割合を10重量部とした以外は、実施例1と同様にして輝度向上フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
【0112】
<実施例3>
傾斜屈折率粒子として、製造例1で得たものに代えて製造例2で得たものを用いた他は、実施例1と同様にして輝度向上フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
【0113】
<比較例1>
製造例1で得た傾斜屈折率粒子の代わりに製造例3で得た粒子を用いた他は実施例1と同様に、輝度向上フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の輝度向上フィルムの一例を示す部分断面図である。
【図2】本発明における傾斜屈折率粒子の一例を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0116】
100 輝度向上フィルム
110 円偏光分離素子
120 拡散層
125 傾斜屈折率粒子
130 光学異方性素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円偏光分離素子、及び光学異方性素子を備える輝度向上フィルムであって、
前記円偏光分離素子と前記光学異方性素子との間に拡散層を備え、
その拡散層が、傾斜屈折率粒子を含有することを特徴とする、輝度向上フィルム。
【請求項2】
前記光学異方性素子及び前記円偏光分離素子が、前記拡散層を介して粘着されてなる請求項1に記載の輝度向上フィルム。
【請求項3】
前記拡散層が、さらに粘着性の樹脂を含有する請求項1又は2に記載の輝度向上フィルム。
【請求項4】
前記円偏光分離素子が、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を重合してなる非液晶性のコレステリック規則性を有する樹脂層を有する素子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の輝度向上フィルムを備えた液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−180830(P2009−180830A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18159(P2008−18159)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】