説明

輸送手段の吸音内側クラッディングのためのサンドイッチ部材、特に、航空機胴体部のセルの吸音内側クラッディングのためのサンドイッチ部材

【課題】本発明は、輸送手段の吸音内側クラッディングのためのサンドイッチ部材(1)に関し、より詳細には、ハニカム状のコア構造体(2)およびコア構造体(2)の両側に適用されるカバー層(3、4)を備える、航空機胴体部のセルの吸音内側クラッディングのためのサンドイッチ部材(1)に関する。
【解決手段】本発明によれば、少なくとも1つのカバー層(3、4)は少なくとも部分的に空気に対して半透過性に構成されており、カバー(6)は少なくとも1つのカバー層(3、4)上に少なくとも部分的に配置され、吸音層(5)は少なくとも1つのカバー層(3、4)の領域において、少なくとも部分的に配置される。カバー層(3、4)における複数の通路(8)は、外部からサンドイッチ部材(1)の吸音層(5)まで、サンドイッチ部材(1)に影響する音波の効率的な透過を可能にするので、サンドイッチ部材が優れた吸音特性を有する。カバー(6)が存在することで、特にサンドイッチ部材(1)のコア構造体(2)の領域において、異物および/または湿気の所望されない侵入を主に回避する。優れた吸音特性に加えて、サンドイッチ部材(1)はさらに、より良い機械的特性および高い断熱性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送手段の吸音内側クラッディングのためのサンドイッチ部材に関し、より詳細には、ハニカム状のコア構造体およびコア構造体の両側に適用されるカバー層を備える、航空機胴体部のセルの吸音内側クラッディングのためのサンドイッチ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
サンドイッチ部材は、航空機の製造において広く使われている。
軽量化と相まったサンドイッチ部材を用いて達成可能な好ましい機械的特性がここでは特に有利である。
周知のコア構造体は、多くの場合、両側に適用されるカバー層を有するハニカム状のコア構造体を備えている。
ハニカム状のコア構造体は、略六角形のベース面を有して、それ自身、閉じて反復した部分という特徴を有する。
ハニカム状のコア構造体に接着されているカバー層により、これらの反復した部分はそれ自身閉じたセルを形成する。
【0003】
現代の航空機製造における防音の必要性の高まりにより、特に航空機に内側クラッディングを取り付ける際には、有利な機械的特性だけでなく、音波を効果的に減衰する特性を有するサンドイッチパネルを用いることが必要である。
【0004】
一般に、例えば、ハニカム状のコア構造体を使用して製造される従来のサンドイッチパネルは、特に胴体部のセルの内側クラッディングを形成する際に、現在の防音の要件を満たすために十分な吸音特性を有しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、通常のサンドイッチ部材のさらなる開発として、特に、より良い吸音特性を有する、航空機胴体部のセルの吸音内側クラッディングを形成するためのサンドイッチ部材を提供することである。
さらに、サンドイッチ部材は十分な機械的負荷特性を有しおよび、同時に軽量であるべきである。
さらに、本発明に係るサンドイッチ部材は十分な断熱特性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有する装置によって解決する。
【0007】
少なくとも1つのカバー層は少なくとも部分的に空気に対して半透過性に構成されており、カバーは少なくとも1つのカバー層上に少なくとも部分的に配置され、吸音層は少なくとも1つのカバー層の領域において、少なくとも部分的に配置されるので、本発明に係るサンドイッチ部材は、高い機械的負荷特性および軽量と同時に優れた吸音特性を有してもよい。
外部からサンドイッチ部材に影響を与える音波は、カバーおよび、空気を透過可能なように作製された少なくとも1つのカバー層を通過し、サンドイッチ部材のコア構造体をほぼ減衰されずに通過してもよい。次いで、その音波は吸音層において主に吸収してもよい。
少なくとも1つのカバー層に、少なくとも部分的に適用されたカバーは、異物および/または液体の、コア構造体への所望されない侵入を主に防いでもよい。
吸音層は、同時に、サンドイッチ部材のより良い断熱属性を生じてもよい。
【0008】
さらなる例示的実施形態によれば、カバーは複数の開口部を備え、その開口部は、各々、異物および/または液体の侵入を主に防ぎ、音波の透過を許容する断面領域を有する。
【0009】
カバー内の開口部は、外部からサンドイッチ部材に入射する音波の透過を主に妨げなくてよい。
【0010】
さらなる例示的な実施形態によれば、カバー層または複数のカバー層は複数の通路を有し、これらの通路は音波を透過させることができる断面領域を有する。
【0011】
この実施形態は、まず、コア構造体をコーティングする公知の手順に従って、主に、カバー層をコア構造体に適用することを可能にする。その理由は、全体として、通路の下に配置されたコア構造体に接着するのに十分な領域を構成する十分な数の網の目が通路間に残っているからである。
さらに、カバー層内の通路により、カバー層およびコア構造体から吸音層までほぼ減衰されずに音波を透過し得る。
【0012】
さらなる例示的な実施形態は、カバー層または複数のカバー層における通路は、好ましくは、各々カバーにおける開口部よりも大きい断面積を有することを示す。
これにより、異物および/または液体の、カバーへの侵入が主に回避される一方で、カバー層を介した音波の侵入をほぼ妨げないことが可能である。
【0013】
配置構成のさらなる例示的実施形態はさらなる請求項において示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図において、同様の特徴は同一または類似の参照符号を付す。
【0015】
図1は本発明の例示的な実施形態に係るサンドイッチ部材の等角図を示す。
【0016】
サンドイッチ部材1は、特に、コア構造体2を備え、カバー層3、4は該コア構造体2の両側に適用される。
また、吸音層5はカバー層3上に配置される。
カバー6は上側のカバー層3に、好ましくはその全体の領域に適用され、該カバー6は音波の透過を可能とするが、異物および/または液体のコア構造体2への侵入を主に防ぐ。
【0017】
図2は本発明の例示的な実施形態に係るサンドイッチ部材の組立分解等角図を示す。
【0018】
コア構造体2は複数の隣接するハニカム状のセルによる公知の形状において形成される。
カバー層3、4を適用した後、ハニカム状のセルは、それぞれそれ自体閉じた、小さな反復される部分を形成する。
入射音を吸収する吸音層5はカバー層4に適用される。
副次的な効果として、吸音層5は、本発明に係るサンドイッチ部材1の断熱特性を改善する。
【0019】
カバー6は、好ましくは、カバー層3の全域に亘って配置される。
カバー6は、異物およびまたは液体がコア構造体2および吸音層5へ侵入するのを低減する。
カバー6は複数の開口部を備えるが、それらはより良い明瞭化のために図には詳細に示さない。
複数の開口部は、好ましくは、空気および音波が通過できるが、主に液体および/または異物をコア構造体2の内部領域に近付かせない、小さな断面領域を有する。
外界からサンドイッチ部材上に入射する音波7はカバー6を介して主として減衰されずに通過する。
【0020】
また、カバー層3および4は複数の通路8を有し、図2には明瞭化のために、代表としてそのうちの4つに参照符号を付してある。
複数の通路8は、カバー層3および4の表面上に互いに間隔を置いて略均一に配置され、特に、マトリクス状に配置される。
カバー6内の開口部と比較して、通路8は著しく広い断面積を有しており、可能な限り音波7の通過を妨げないようにすることができる。
さらに、カバー6内の開口部とは対照的に、通路8は、異物および/または液体のコア構造体2への不必要な通過を妨げることはない。
【0021】
音波7は、カバー6を通過した後、カバー層3に影響を与え、コア構造体2を通過し、カバー層4を貫通して、最後に吸音層5上でほぼ減衰されていない状態で影響を与え、そこで音波7は、主に熱へと変換されることによって吸収される。
図に示す例示的な実施形態において、吸音層5はその全域に亘ってカバー層4に直接に適用される。
あるいは、吸音層5はカバー層4と距離を置いて配置してもよい。
この場合、吸音層5とカバー層4との間に中間の空気のある空間が存在する。
【0022】
吸音層5と共に、カバー6、カバー層3、4、ならびにコア構造体1を介して音波をほぼ損失することなく伝達した結果、本発明に係るサンドイッチ部材1はより良く音波を減衰する効果を有する。
音波を減衰する効果におけるさらなる改善策は、例えば、コア構造体2に、例えば、発泡プラスチックのフロック加工を用い、少なくとも部分的に、吸音コーティングをさらに施すことによって達成可能である。
【0023】
吸音層5は、例えば、ガラスウールまたはミネラルウール(鉱滓綿)を用いて形成してもよい。
あるいは、吸音層5は、細かい金属繊維の紡績糸、炭素繊維、合成樹脂繊維、および通気孔を有する発泡プラスチックを用いて形成してもよい。
あるいは、吸音層5は天然繊維を用いて形成してもよい。
【0024】
ハニカム状のセルを有するコア構造体2は、例えば、エポキシ樹脂を含浸させたノーメックス(登録商標)紙などの、繊維強化プラスチック材料を用いて形成してもよい。
あるいは、コア構造体2は、金属材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール、またはチタニウムを用いて形成してもよい。
【0025】
カバー層3、4のうちの1つに接着する個々の領域内において、コア構造体2のハニカム状のセルはそれぞれ、セルの壁面と比べて、相対的に小さい断面積を有する1つ以上の小さい孔部を備える。
コア構造体2のハニカム状のセル内に存在し得る凝縮水は、これらの孔部を制御されて流れ出ることができる。
孔部は、したがって、最も広範囲の意味では、コア構造体2を排水するために用いられる。
湿気が誘発する侵食または腐食作用によるコア構造体2への損傷は、ここではその大部分が回避される。
あるいは、コア構造体2のハニカム状のセルのセル壁は、開口部、少なくとも部分的には、特に、穿孔の形で配置された円筒状の通路を備える。
【0026】
カバー層3、4は、例えば、繊維強化プラスチック材料からなる複合材料、例えば、エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂を有する炭素繊維またはガラス繊維強化プリプレグを用いて形成してもよい。
マトリクス状に配置された通路8は、例えば、プリプレグに組み込んでカバー層3、4を形成してもよく、ここで、複数の通路8が組み込まれた結果、カバー層3、4の繊維強化材全体の弱化が生じることがある。なぜならば、繊維強化材は通常、通路8の領域内において分離されているからである。
全体として、通路8は、個々のカバー層3、4において、表面を覆う一連の穿孔を形成することが好ましい。
【0027】
通路8は、例えば、カバー層3、4に、公知の機械的掘削方法またはスタンピング方法によって組み込まれてもよい。
通路8を掘削方法またはスタンピング方法で作製する場合、通路8は円形の断面領域を有することが好ましい。
円形ではない断面形状もまた、それに対応するツールを用いれば可能である。
【0028】
さらにまた、カバー層3、4は、表面が編み込まれた繊維(surface knitted fiber)または繊維状の樹脂含浸処理された構造体を用いて形成してもよい。
【0029】
例えば、ストランド(strand)を用いて、表面が編み込まれた繊維を形成してもよい。
ストランドは、均一に距離を置いて、互いに略並行して配置することで第1の層を形成することが好ましい。
上下に配置された少なくとも2つの層は、次いで、荒い繊維状の構造体を有する、表面が編み込まれた繊維を形成する。
層は、上下に配置され、0度より大きい角度にて互いに対して捩れていることが好ましい。
さらに、少なくとも部分的に、互いに交互にストランドを織り交ぜることも可能である。
ストランドは、例えば、層形成の前または後のいずれかに、樹脂を含浸させた、ガラス繊維、炭素繊維、プラスチック繊維、または天然繊維を用いて形成し、最終的にカバー層3、4を作製してもよい。
【0030】
あるいは、網状の構造体を有する、表面が編み込まれた繊維を用いてカバー層3、4を形成することも可能であり、ここで、そのストランドは互いに結ばれるか、または網目の交点の位置において、異なる方法で接合される。
【0031】
原則的には、表面が編み込まれた繊維によって形成されたカバー層3、4は、荒い繊維状または網目状の構造体を有する。
この場合、表面が編み込まれた繊維の網の目はそれぞれ、カバー層3、4の通路8を形成し、ここで、その網の目は、それぞれ、カバー層3、4がコア構造体2と十分に機械的に接着するために、ハニカム状のコア構造体2の個々のセルの断面積よりも小さい断面積を有することが好ましい。
この網の目の断面形状は、使用する、表面が編み込まれた繊維の構造体に依存するが、通常は円形ではない。
【0032】
表面が編み込まれた繊維を用いてカバー層3、4を形成することは、カバー層3、4を作製するために用いられる出発材料を機械的に加工することが、例えば「プリプレグ」を穴開け加工または打抜き加工することで通路8を形成するために必要とされないという利点を特に有する。
なぜならば、機械的な加工は一般に、通路8の領域内の繊維強化材の不確定な、少なくとも局所的な破損を生じ、これと共に、そこから形成されたサンドイッチ部材1の機械的特性の低下を生じさせるからである。
例えば、レーザ加工、化学工程などによってプリプレグに通路8を組み込むために、カバー層3、4のための出発材料の機械的な加工をしない場合にも同じことが当てはまる。
【0033】
さらに、カバー層3、4は、金属薄板、金属薄膜など用いて形成してもよい。
この場合、特に、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール、またはチタニウムが、カバー層3、4の金属材料として検討可能である。
カバー層3、4を形成するために金属材料を用いる利点は、特に、例えば打抜き加工や穴開け加工などによる機械的な加工で通路8をシンプルに形成できることであり、それによって、複合材料の繊維強化プリプレグに穴開け加工または打抜き加工を組み込まれる場合と同様に、材料の著しい機械的な弱化を生じることはない。
【0034】
あるいは、カバー層3、4は、非繊維強化プラスチック材料、例えばプラスチックフィルム、プラスチックパネルまたは発泡プラスチックパネルなどを使用して形成してもよい。
【0035】
加えて、カバー層3、4、ならびにコア構造体2は、上述のタイプに従い、複合材料、繊維強化プラスチック材料、発泡プラスチック材、プラスチック材料および/または金属材料の任意の組合せを使用して形成してもよい。
【0036】
カバー6は、一方では音波の透過を許容するが、他方では異物および/または液体を主に保持する、表面構造または、表面が編み込まれた繊維を用いて形成してもよい。
GoreTex(登録商標)、Sympatex(登録商標)等の公知の半透性膜を、表面構造を有するカバーを形成するために用いてもよい。
上述した特性を有する繊維または材料を、カバー6を形成する、表面が編み込まれた繊維として用いてもよい。
【0037】
カバー層3、4の、コア構造体2、カバー6、および吸音層5への機械的接着は、接合される材料の種類および状態に依存して、例えば、加熱接着法(hot adhesion)、冷却接着法(cold adhesion)、または通常の溶接法などの公知の接着方法によって達成される。
また、リベット打ち、接着片などで接着してもよい。
【0038】
重量の都合により、カバー層3、4、ならびにコア構造体2の材料の厚さは、一般には、比較的低い値である。
カバー層3、4の材料の厚さは、通常、10mm未満であり、コア構造体2の高さは50mm未満である。
吸音層5の材料の厚さは100mm未満が好ましい。
カバー6の材料の厚さは10mm未満が好ましい。
【0039】
用語「含む(comprising)」は他の部材または工程を排除せず、用語「1つ(「a」または「an」)」は複数を排除しないことに留意されたい。
また、異なる実施形態に関連して記載した部材も組み合わせてよい。
特許請求の範囲における参照符号は特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の例示的な実施形態に係るサンドイッチ部材の等角図である。
【図2】本発明の例示的実施形態に係るサンドイッチ部材の組立分解等角図を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 サンドイッチ部材
2 コア構造体
3 カバー層
4 カバー層
5 吸音層
6 カバー
7 音波
8 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機胴体部のセルの吸音内側クラッディングのためのサンドイッチ部材(1)であって、
前記サンドイッチ部材は、
ハニカム状のコア構造体(2)と、
前記コア構造体(2)の両側に適用されるカバー層(3、4)とを備え、
両方のカバー層(3、4)はそれぞれ、音波を透過するための複数の通路(8)を備え、
プラスチック材料の半透性膜を用いて形成されたカバー(6)は、前記音波の方向にあるカバー層(3)上に配置され、
前記プラスチック材料からなる前記半透性膜は、断面領域を有する複数の開口部を備え、異物および/または液体の侵入が主に防がれ、かつ音波の透過が許容され、吸音層(5)が前記音波から離れた方向にあるカバー層(4)上に形成されることを特徴とする、サンドイッチ部材。
【請求項2】
前記開口部および前記通路(8)が配置され、前記カバー(6)および前記カバー層(3、4)に亘って、互いに間隔を置いて一様に配置され、特にマトリクス状に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のサンドイッチ部材(1)。
【請求項3】
前記コア構造体(2)は、プラスチック材料、特に、樹脂含浸紙、および/または、金属材料、特に、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール、またはチタニウムを用いて形成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のサンドイッチ部材(1)。
【請求項4】
前記カバー層(3、4)は、繊維強化プラスチック材料、および/または、金属材料、特に、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール、またはチタニウムを用いて形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のサンドイッチ部材(1)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−538746(P2009−538746A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512417(P2009−512417)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005161
【国際公開番号】WO2007/137607
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】