説明

輻輳制御システム、輻輳制御方法、および輻輳経路検出装置

【課題】新規フローの輻輳の発生を防止する技術を提供する。
【解決手段】輻輳経路検出装置2は、ネットワーク6上のルータ4から、各インタフェースのアドレスと経路表の情報とを収集し、各インタフェースを通る経路を示す送信元および宛先のIPアドレスの組の全てを算出して予め記憶し、ルータ4のインタフェースが出力するトラヒック量が、輻輳発生の可能性を示す閾値を超えたインタフェースを検出すると、当該経路情報をセッション管理装置3へ通知する。セッション管理装置3は、端末5から予め取得したIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を記憶し、輻輳発生の可能性の経路情報を受信すると、当該IPアドレスをSIP−URIに変換して輻輳経路リストに登録しておき、端末5から受信するセッションの接続要求が輻輳経路リストに登録されたSIP−URIと同じ場合に接続拒否を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末間をルータが接続するネットワークにおける輻輳制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図16は、従来の輻輳制御システムの一例を示す構成図である(非特許文献1参照)。
従来の輻輳制御システム101においては、端末(送信元端末)102から、「帯域割当が必要なフロー」がエッジノード103に到着したときに、エッジノード(発信者側ノード)103は、そのフローの通信品質を保証するのに必要な帯域を、フローの宛先と共に帯域管理サーバ104へ通知している。なお、フローとは、端末102にある1つのデータを転送するのに用いられる複数のパケットからなるパケット群を指す。
【0003】
帯域管理サーバ104は、「エッジノード103から、宛先の端末(宛先端末)105に接続するエッジノード(受信者側ノード)106まで」のネットワーク107上の経路を調べる。そして、帯域管理サーバ104は、必要な帯域が確保できた場合には、当該フローへ必要な帯域を割り当て、エッジノード103へ帯域割当を行ったことを通知し、当該サーバに記憶している帯域割当情報を更新する。このように帯域割当が行われた場合には、エッジノード103は、当該フローを宛先のエッジノード106に転送する。
【0004】
一方、帯域管理サーバ104は、必要な帯域が確保できなかった場合には、帯域割当ができなかったことをエッジノード103へ通知する。このように帯域割当が行われなかった場合には、エッジノード103は、当該フローを廃棄し、端末102へ帯域割当ができなかったことを通知する。
【0005】
つまり、従来の輻輳制御システム101においては、帯域管理サーバ104が、通信中のフローの経路と使用帯域とを全て把握し、新規フローが必要とする帯域が、経路上で確保できないときには、通信を拒否することで、輻輳が発生しないようにしていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Z. Zhang, Z. Duan, and Y. Hou, “On scalable design of bandwidth brokers,”IEICE Transaction on Communications Vol.E84-B No.8, Aug 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、通信ネットワークの運用上、例えば、次の(1),(2)のような正常とは言えない事態が生じることがある。
(1)通信終了を、エッジノード103から帯域管理サーバ104へ通知する制御パケットが、ネットワーク107上で廃棄される。
(2)保守作業で予備系に切り替える際に、作業上の誤りによって、帯域管理サーバ104の持つ情報が正常に引き継がれない。
【0008】
従来の輻輳制御システム101においては、帯域管理サーバ104が、各フローの経路と使用帯域を管理しているため、(1),(2)のような事態が発生すると、これが原因となって、実際に使用されている帯域と、帯域管理サーバ104がもつ各フローの情報との不一致が発生するという問題があった。このように不一致が生じた場合、輻輳の発生を的確に防止することが困難になってしまう。
【0009】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、新規フローの輻輳の発生を防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の輻輳制御システムは、端末間をルータが接続するネットワークの輻輳を制御するために、前記ネットワークにそれぞれ接続された輻輳経路検出装置とセッション管理装置とを備える輻輳制御システムであって、前記輻輳経路検出装置が、前記ネットワーク上のルータから、各インタフェースのアドレスと経路表の情報とを収集し、前記ルータの各インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の全てを算出して、記憶する経路情報管理部と、前記ルータが転送するトラヒック量を監視し、前記ルータのインタフェースが出力するトラヒック量が、当該インタフェースの許容する帯域の範囲として予め設定された閾値を上回ったことを検出すると、当該インタフェースに輻輳発生の可能性が生じたことを示すインタフェース情報を、輻輳経路判定部へ通知するルータ監視部と、前記ルータ監視部から前記インタフェース情報を通知されると、前記経路情報管理部から当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の情報を取得し、取得した情報を、輻輳発生の可能性が生じた経路の経路情報として、前記セッション管理装置へ通知する輻輳経路判定部とを有し、前記セッション管理装置が、前記端末から、当該端末のIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を取得し、記憶する端末情報管理部と、前記端末からセッションの接続要求を受信すると、前記接続要求に含まれる送信元端末と宛先端末のSIP−URIを輻輳情報管理部へ通知し、前記輻輳情報管理部から接続拒否を通知されると、送信元端末へ接続拒否を通知し、一方、前記輻輳情報管理部から接続許可を通知されると、宛先端末へ接続要求を転送するセッション制御部と、前記輻輳経路検出装置から、前記経路情報を受信し、受信した経路情報に基づいて、当該経路情報で示される経路の送信元のIPアドレスと宛先のIPアドレスをもつ各端末のそれぞれのSIP−URIを前記端末情報管理部から取得し、取得したSIP−URIを輻輳経路リストに登録し、前記セッション制御部から、前記接続要求に含まれる各SIP−URIを通知されると、前記通知された各SIP−URIが、前記輻輳経路リストに登録されているか否かを判定し、登録されている場合には、前記セッション制御部へ接続拒否を通知し、未登録の場合には、前記セッション制御部へ接続許可を通知する輻輳情報管理部とを有することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、輻輳制御システムは、輻輳経路検出装置と、セッション管理装置とを備えている。このうち、輻輳経路検出装置は、経路情報管理部によって、ネットワーク上のルータから、各インタフェースのアドレスと経路表の情報とを収集し、各インタフェースを通る経路を示す送信元および宛先のIPアドレスの組の全てを算出して予め記憶しておく。この輻輳経路検出装置は、ルータ監視部によって、ルータのインタフェースが出力するトラヒック量が、輻輳発生の可能性を示す閾値を超えたか否かを判別する。そして、輻輳経路検出装置は、トラヒック量が閾値を超えたインタフェースを検出すると、輻輳経路判定部によって、当該インタフェースを通る経路の経路情報をセッション管理装置へ通知する。この輻輳制御システムにおいて、セッション管理装置は、端末情報管理部によって、各端末から、そのIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を予め取得しておく。そして、セッション管理装置は、輻輳発生の可能性の経路情報を受信すると、輻輳情報管理部によって、当該IPアドレスをSIP−URIに変換して輻輳経路リストに登録しておく。そして、セッション管理装置は、セッション制御部によって、端末からセッションの接続要求を受信したときに、輻輳情報管理部によって、接続要求に含まれる各SIP−URIが輻輳経路リストに登録されたSIP−URIと同じであるか否かを判別する。そして、同じである場合には、セッション管理装置は、セッション制御部によって、送信元端末に対して接続拒否を通知し、一方、異なる場合には、宛先端末へ接続要求を転送する。
【0012】
また、前記目的を達成するために、本発明の請求項2に記載の輻輳制御方法は、端末間をルータが接続するネットワークの輻輳を制御するために、前記ネットワークにそれぞれ接続された輻輳経路検出装置とセッション管理装置とを備える輻輳制御システムの輻輳制御方法であって、前記輻輳経路検出装置が、前記ルータの各インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスとの組を予め調べて調査結果を登録した経路管理表を作成する経路管理表作成ステップと、前記ルータの各インタフェースから出力されるトラヒック量を取得するステップと、前記取得したトラヒック量が、当該インタフェースの許容する帯域の範囲として予め設定された閾値を超えた場合、当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスとの組の情報を、前記経路管理表から選択するステップと、前記選択した情報を、輻輳発生の可能性が生じた経路の経路情報として、前記セッション管理装置へ通知するステップとを実行し、前記セッション管理装置が、前記輻輳経路検出装置から、前記輻輳発生の可能性が生じた経路の経路情報を受信するステップと、前記端末のIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を予め登録した端末管理表から、前記受信した経路情報で示される経路の送信元のIPアドレスと宛先のIPアドレスをもつ各端末のそれぞれのSIP−URIを探索するステップと、前記探索されたSIP−URIを輻輳経路リストへ登録するステップと、前記端末からセッションの接続要求を受信するステップと、前記接続要求にて接続する送信元端末と宛先端末のSIP−URIの組が前記輻輳経路リストに登録されているSIP−URIの組と一致する場合、当該接続要求を拒否するステップとを含んで実行することを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の輻輳制御システム、または、請求項2に記載の輻輳制御方法によれば、輻輳経路検出装置もセッション管理装置も各フローの使用帯域の情報を管理していないので、従来のシステムにおいて管理していた各フローの使用帯域の情報と実際に使用している帯域との不一致の問題が発生しない。したがって、かかる構成、または、かかる手順によれば、輻輳制御システムは、各フローの使用帯域の情報を管理することなく新規フローの輻輳の発生を防止することができる。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の輻輳制御方法は、請求項2に記載の輻輳制御方法において、前記輻輳経路検出装置が、前記トラヒック量が前記閾値を超えたインタフェースから出力されるトラヒック量が前記閾値を下回った場合、当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスとの組の情報を、前記経路管理表から選択するステップと、前記選択した情報を、輻輳発生の可能性を解除すべき経路の経路情報として、前記セッション管理装置へ通知するステップとをさらに実行し、前記セッション管理装置が、前記輻輳経路検出装置から、前記輻輳発生の可能性を解除すべき経路の経路情報を受信するステップと、前記受信した経路情報で示される経路の送信元のIPアドレスと宛先のIPアドレスをもつ各端末のそれぞれのSIP−URIを前記端末管理表から探索するステップと、前記輻輳経路リストから、前記探索されたSIP−URIを削除するステップと、をさらに実行することを特徴とする。
【0015】
かかる手順によれば、輻輳制御システムにおいて、輻輳経路検出装置が、トラヒック量が閾値を超えたインタフェースから出力されるトラヒック量を監視し続けて、そのトラヒック量が閾値を下回った場合、輻輳発生の可能性を解除すべき経路の経路情報をセッション管理装置へ通知し、これに応じて、セッション管理装置が輻輳経路リストを更新することができる。したがって、輻輳制御システムは、調査時点のトラヒック量の増減に応じて端末からのセッションの接続要求に対してより柔軟に対処しつつ、新規フローの輻輳の発生を防止することができる。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載の輻輳制御方法は、請求項2または請求項3に記載の輻輳制御方法において、前記輻輳経路検出装置が、前記経路管理表作成ステップに、前記ネットワークにおいて、宛先として1つのサブネットワークを選択する宛先選択ステップと、各ルータが持つ経路表に基づいて、前記選択した宛先以外の各サブネットワークから前記選択した宛先への経路を調査する経路調査ステップと、前記経路に沿った各ルータにおいて、前記選択した宛先に対する送信元IPアドレスを調査する送信元IPアドレス調査処理を順次実行するアドレス調査ステップとを含み、前記宛先選択ステップにて前記ネットワークの全てのサブネットワークを選択するまで、前記経路調査ステップと、前記アドレス調査ステップとを繰り返して実行することを特徴とする。
【0017】
かかる手順によれば、輻輳制御方法は、経路管理表作成ステップにて、輻輳の発生を防止する対象のネットワークを、複数のサブネットワークに分割して、サブネットワーク毎に、送信元と宛先との組み合わせをすべて調査する。したがって、輻輳経路検出装置は、対象とするネットワーク内の全ルータの各インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスとの組を調査した全経路の情報を経路管理表に格納することができる。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載の輻輳制御方法は、請求項4に記載の輻輳制御方法において、前記輻輳経路検出装置が、前記経路調査ステップにて、前記経路において前記ルータ間の分岐点がない部分を葉と定義すると共に、分岐点がある部分を枝と定義して、前記ルータ間の接続状態を管理し、前記アドレス調査ステップにて、前記経路から前記葉を選択する葉選択処理と、前記選択した葉ごとに前記送信元IPアドレスを調査するアドレス調査処理とを実行し、前記経路に定義された全ての葉を調査した後に、前記経路に定義された枝に接続している葉の全てが調査済みとなった場合に、当該枝を前記葉に置き換える再定義を行い、前記置き換えた葉について前記アドレス調査処理を、前記調査前に定義された枝の全てが葉として再定義されて調査済みとなるまで繰り返すことを特徴とする。
【0019】
かかる手順によれば、輻輳制御方法は、経路管理表作成ステップにてネットワークを細分化したサブネットワークの集合体を、経路調査ステップにてツリー構造の葉と枝として管理することで、アドレス調査ステップにて葉から枝へと調査を容易に進めることができる。
【0020】
また、本発明の請求項6に記載の輻輳制御方法は、請求項5に記載の輻輳制御方法において、前記輻輳経路検出装置が、前記アドレス調査処理にて、前記宛先選択ステップにて選択された宛先への経路の葉において、前記選択された宛先から最も遠いルータから当該宛先に向けて調査対象のルータを順次選択し、前記選択されたルータに直結したサブネットのIPアドレスを当該宛先の送信元IPアドレスとして登録し、前記経路上の前段の位置に送信元IPアドレスが調査済みのルータがある場合には、前段のルータで登録した送信元IPアドレスをさらに登録し、当該調査対象のルータに、送信元IPアドレスが調査済みの葉が接続されている場合、前記調査済みの葉で登録した送信元IPアドレスを当該ルータの送信元IPアドレスとしてさらに登録し、当該調査対象のルータの次に選択されたルータに、送信元IPアドレスが未調査である葉が接続していない場合、当該次に選択されたルータについて前記アドレス調査処理を実行し、一方、当該次に選択されたルータに、送信元IPアドレスが未調査である葉が接続している場合、前記葉選択処理で選択した葉についての調査を終了することを特徴とする。
【0021】
かかる手順によれば、輻輳制御方法は、経路管理表作成ステップの中の経路調査ステップにて、ネットワークをツリー構造の葉および枝として管理し、アドレス調査ステップにて葉から枝へと調査を進める際に、各葉において、アドレス調査処理を実行する。このアドレス調査処理は、各ルータに直結したサブネットのIPアドレスを、宛先の送信元IPアドレスとして登録するものである。また、このアドレス調査処理は、葉においてルータにアドレスを調査済みの前段のルータが接続している場合や、当該葉にアドレスを調査済みの葉が接続している場合に、それらの調査済みの情報も宛先の送信元IPアドレスとしてさらに登録する。したがって、輻輳経路検出装置は、対象とするネットワーク内の全ルータの各インタフェースを通る全経路の情報を、漏れがないように確認しながら経路管理表に格納することができる。
【0022】
また、本発明の請求項7に記載の輻輳制御方法は、請求項2ないし請求項6のいずれか一項に記載の輻輳制御方法において、前記輻輳経路検出装置が、前記経路管理表作成ステップにて、各経路の宛先IPアドレスに対する送信元IPアドレスを送信元グループで示した第1調査表と、前記送信元グループと当該送信元グループに含まれる送信元IPアドレスとの関係を示した第2調査表とにより、前記経路管理表を作成することを特徴とする。
【0023】
かかる手順によれば、輻輳制御方法は、経路管理表作成ステップにて経路管理表を作成する際に、第1調査表と第2調査表により、宛先のIPアドレスに対して送信元のIPアドレスをグループ単位で管理することができる。調査対象のネットワーク内で、ルータの各インタフェースを通る経路を調査する際に、例えば、宛先を1つだけ決定したときに当該1つの宛先に対する送信元は、通常、複数存在する。仮に送信元それぞれを単独で管理した場合には、同じ送信元IPアドレスを経路管理表に繰り返し記載する必要がある。しかしながら、本発明の輻輳制御方法は、宛先IPアドレスに対する送信元IPアドレスをグループ単位で管理するので、同じ送信元IPアドレスを経路管理表に繰り返し記載する必要がなく、経路情報のデータ量を低減することができる。
【0024】
また、本発明の請求項8に記載の輻輳経路検出装置は、端末間をルータが接続するネットワークにおける端末間のセッションを管理するセッション管理装置と前記ルータとに接続された輻輳経路検出装置であって、前記ネットワーク上のルータから、各インタフェースのアドレスと経路表の情報とを収集し、前記ルータの各インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の全てを算出して、記憶する経路情報管理部と、前記ルータが転送するトラヒック量を監視し、前記ルータのインタフェースが出力するトラヒック量が、当該インタフェースの許容する帯域の範囲として予め設定された閾値を上回ったことを検出すると、当該インタフェースに輻輳発生の可能性が生じたことを示すインタフェース情報を、輻輳経路判定部へ通知するルータ監視部と、前記ルータ監視部から前記インタフェース情報を通知されると、前記経路情報管理部から当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の情報を取得し、取得した情報を、輻輳発生の可能性が生じた経路の経路情報として、前記セッション管理装置へ通知する輻輳経路判定部とを備えることを特徴とする。
【0025】
かかる構成によれば、輻輳経路検出装置は、ルータが転送するトラヒック量を監視し、トラヒック量が閾値を上回ったことを検出することで、輻輳発生の可能性がある経路を判定し、この輻輳発生の可能性がある経路の情報をセッション管理装置に通知することができる。これにより、セッション管理装置は、輻輳発生の可能性がある経路の情報を通知されて予め記憶しておけば、端末からセッションの接続要求を受けたときに、接続要求された経路に、輻輳発生の可能性があるか否かを判定できる。この判定の結果、輻輳発生の可能性があると判定した場合、接続拒否を通知することにより、輻輳の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、輻輳制御システムは、各フローの使用帯域の情報を管理することなく新規フローの輻輳の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る輻輳制御システムで輻輳を管理するネットワークの一例を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る輻輳経路検出装置およびセッション管理装置の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る輻輳制御システムで輻輳を管理するネットワークの他の例を示す構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る輻輳経路検出装置が輻輳発生の可能性を検出したときの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係るセッション管理装置が輻輳経路検出装置から輻輳発生の可能性が生じた経路の情報を受信した際の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係るセッション管理装置が端末からセッションの接続要求を受信したときの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る輻輳経路検出装置が輻輳発生の可能性がある状態が解消されたときの動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係るセッション管理装置が輻輳経路検出装置から輻輳発生の可能性がなくなった経路の情報を受信した際の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る輻輳経路検出装置がルータの各インタフェースを通る経路を調べる処理の概要を示したフローチャートである。
【図10】図9に示す送信元IPアドレス調査処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】図10に示す「葉」ごとの調査処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る輻輳制御システムで管理するネットワークにおける経路の例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る輻輳経路検出装置による送信元IPアドレスの調査方法において定義した経路の枝および葉の具体例を示す図であって、(a)は調査開始前の状態、(b)は調査途中の状態をそれぞれ示している。
【図14】本発明の実施形態に係る輻輳経路検出装置による送信元IPアドレスの調査方法において調査結果を記録する第1調査表の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係る輻輳経路検出装置による送信元IPアドレスの調査方法において調査結果を記録する第2調査表の一例を示す図である。
【図16】従来の輻輳制御システムのネットワークの構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図面を参照して本発明の輻輳制御システムおよび輻輳制御方法を実施するための形態(以下「実施形態」という)について詳細に説明する。以下では、説明の都合上、1.輻輳制御システムの概要、2.輻輳制御システムの各装置の構成、3.システム構成例、4.輻輳発生防止方法、5.輻輳が発生する可能性がある経路の管理方法、6.輻輳制御対象の経路の調査方法、7.経路管理表の作成方法の各章に分けて順次説明することとする。
【0029】
[1.輻輳制御システムの概要]
図1に示す輻輳制御システム1は、輻輳経路検出装置2と、セッション管理装置3とを備え、ルータ4が端末5間を接続するネットワーク6の輻輳を制御するものである。なお、ネットワーク6内のルータ4や端末5の個数は任意である。
輻輳経路検出装置2は、セッション管理装置3と、ネットワーク6の各ルータ4とに接続されており、各ルータ4のトラヒック量を監視することで、輻輳発生の可能性が生じた経路(以下では、これを単に輻輳経路と呼ぶ)を検出し、セッション管理装置3に通知するものである。
ルータ4(図2参照)は、1以上のインタフェース(IF)を有しており、ルータ4の図示しない記憶部には、宛先アドレスと出力インタフェースの関係が記載された経路表41が格納されている。
【0030】
セッション管理装置3は、図1に示すように、ネットワーク6の各端末5と接続されており、端末5間のセッションを管理する。このセッション管理装置3は、輻輳経路検出装置2からの通知にしたがって、輻輳経路については、端末5からセッションの接続要求があったとしても接続拒否を通知する。
端末5は、IPアドレスとSIP−URI(Session Initiation Protocol−Uniform Resource Identifier)との対応関係を示す情報を登録情報51(図2参照)として有している。この登録情報は、端末5からセッション管理装置3へ登録される情報である。
【0031】
[2.輻輳制御システムの各装置の構成]
<輻輳経路検出装置>
輻輳経路検出装置2は、CPU等の演算装置と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置(記憶手段)と、外部との各種情報の送受信を行うインタフェース装置とを備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。この輻輳経路検出装置2は、ハードウェア装置とソフトウェアとが協働することによって、前記したハードウェア資源がプログラムによって制御されることにより実現され、図2に示すように、経路情報管理部21と、ルータ監視部22と、輻輳経路判定部23とを備えることとした。
【0032】
経路情報管理部21は、ネットワーク6上のルータ4から、各インタフェースのアドレスと経路表の情報とを収集し、ルータ4の各インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の全てを算出して、記憶するものである。
【0033】
ここでは、経路情報管理部21は、ネットワーク情報収集手段211と、経路情報算出手段212とを備え、図示しない記憶部に、作成した経路管理表213を保持することとした。ネットワーク情報収集手段211は、ルータ4から、各インタフェースのアドレスと経路表41の情報とを収集する。経路情報算出手段212は、ルータ4の各インタフェースのアドレスを調査する処理の手順を管理するものである。ルータ4毎、インタフェース毎に、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組は、経路管理表213に登録される。
【0034】
経路管理表213は、例えば、図14に示す第1調査表213Aおよび図15に示す第2調査表213Bにより構成される。第1調査表213Aは、ルータ4の各インタフェースを通る経路を示す表であり、第2調査表213Bは、送信元アドレスグループと送信元IPアドレスの関係を示す表である。この例では、図14および図15に示すように、宛先IPアドレスと送信元IPアドレスとは、送信元アドレスグループを介して対応付けられており、その結果、ルータの各インタフェースは、宛先IPアドレスおよび送信元IPアドレスと関連付けられている。なお、経路情報管理部21が経路管理表213を作成する処理の詳細については後記する。
【0035】
ルータ監視部22は、ルータ4が転送するトラヒック量を監視し、ルータ4のインタフェースが出力するトラヒック量が、当該インタフェースの許容する帯域の範囲として予め設定された閾値を上回ったことを検出すると、当該インタフェースに輻輳発生の可能性が生じたことを示すインタフェース情報(インタフェースID)を、輻輳経路判定部23へ通知するものである。本実施形態では、この輻輳経路検出装置2の管理者が、ルータ4の各インタフェースにおいて許容する帯域の上限の閾値を予め設定しておくこととした。
【0036】
ここでは、ルータ監視部22は、トラヒック量取得手段221と、輻輳可能性判定手段222とを備えることとした。
トラヒック量取得手段221は、ルータ4から、各インタフェースが出力するトラヒック量を取得し、輻輳可能性判定手段222に出力する。
輻輳可能性判定手段222は、トラヒック量取得手段221から通知されたトラヒック量と閾値とを、ルータ毎およびインタフェース毎に比較する。この輻輳可能性判定手段222は、閾値を上回るトラヒック量のインタフェース情報を輻輳経路判定部23に出力する。
【0037】
輻輳経路判定部23は、ルータ監視部22からインタフェース情報を通知されると、経路情報管理部21から当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の情報を取得し、取得した情報を、輻輳経路の経路情報として、セッション管理装置3へ通知するものである。
【0038】
本実施形態では、輻輳経路判定部23は、経路管理表213としての第1調査表213A(図14参照)から、通知されたインタフェースIDに関連付けられた宛先IPアドレスと送信元アドレスグループとを取得し、また、取得した送信元アドレスグループを第2調査表213B(図15参照)により送信元IPアドレスに変換することとした。そして、輻輳経路判定部23は、通知されたインタフェースIDに対応した宛先IPアドレスと送信元IPアドレスとの組の各情報(IPアドレス)を、輻輳経路の経路情報としてセッション管理装置3へ通知する。
【0039】
<セッション管理装置>
セッション管理装置3は、輻輳経路検出装置2と同様に、演算装置と、記憶装置と、インタフェース装置とを備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。このセッション管理装置3は、ハードウェア装置とソフトウェアとが協働することによって、前記したハードウェア資源がプログラムによって制御されることにより実現され、図2に示すように、端末情報管理部31と、輻輳情報管理部32と、セッション制御部33とを備えることとした。
端末情報管理部31は、端末5から、当該端末5のIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を取得し、記憶するものである。
【0040】
本実施形態では、端末情報管理部31は、端末登録情報収集手段311を備え、図示しない記憶部に、作成した端末管理表312を保持することとした。この端末登録情報収集手段311は、ネットワーク6内の各端末5を登録する際に、登録情報51として、端末5のIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を取得し、端末管理表312に格納する。
【0041】
輻輳情報管理部32は、輻輳経路検出装置2から取得する輻輳経路の経路情報を管理し、この輻輳経路の経路情報に基づいて、端末5から取得するセッションの接続する経路に、輻輳発生の可能性が生じているか否かを判定するものである。本実施形態では、輻輳情報管理部32は、経路情報受信手段321と、リスト作成手段322と、輻輳経路判定手段324とを備え、図示しない記憶部に、作成した輻輳経路リスト323を保持することとした。
【0042】
経路情報受信手段321は、輻輳経路検出装置2から輻輳経路の経路情報を受信し、リスト作成手段322に出力する。
リスト作成手段322は、受信した輻輳経路の経路情報に基づいて、当該経路情報で示される経路の送信元のIPアドレスと宛先のIPアドレスをもつ各端末のそれぞれのSIP−URIを、端末情報管理部31から取得し、取得したSIP−URIを輻輳経路リスト323に登録する。つまり、リスト作成手段322は、端末管理表312に記載されたIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を参照して、受信した輻輳経路の情報としてのIPアドレスを、端末管理表312にしたがってSIP−URIに変換する。
【0043】
輻輳経路判定手段324は、セッション制御部33から、セッションの接続要求に含まれる各SIP−URIを通知されると、輻輳経路リスト323を参照して、輻輳発生の可能性を判定し、判定結果をセッション制御部33へ通知する。すなわち、輻輳経路判定手段324は、通知された各SIP−URIが、輻輳経路リスト323に登録されている場合には、判定結果として、セッション制御部33へ接続拒否を通知し、未登録の場合には、セッション制御部33へ接続許可を通知する。
【0044】
セッション制御部33は、端末(送信元端末)5からセッションの接続要求を受信すると、接続要求に含まれる送信元端末と宛先端末のSIP−URIを輻輳情報管理部32へ通知し、輻輳情報管理部32の判定結果に応じた処理を実行するものである。このセッション制御部33は、輻輳情報管理部32から接続拒否の判定結果を通知されると、送信元端末へ接続拒否を通知する。また、セッション制御部33は、輻輳情報管理部32から接続許可を通知されると、当該セッションの接続要求を宛先端末へ転送する。
【0045】
[3.システム構成例]
簡便のため、図1に示す輻輳制御システム1は、輻輳の発生を防止する制御対象のネットワーク6に対して、1つの輻輳経路検出装置2と、1つのセッション管理装置3とを備えるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。実際の運用においては、例えば、ネットワーク6を複数のエリアに分割し、各エリアに輻輳経路検出装置2を設置してもよいし、1つの輻輳経路検出装置2が複数のセッション管理装置3に接続されるようにしてもよい。
【0046】
図3に示す輻輳制御システム1Aは、ネットワーク6を4つのエリア(A1,A2,A3,A4)に分割し、各エリアに輻輳経路検出装置2a,2b,2c,2dを設置したものである。このように構成することで、対象とするネットワーク6において、各輻輳経路検出装置2は、経路情報管理部21によって、割り当てられたエリア内のルータ4の各インタフェースを通る経路を把握すればよい。例えば、輻輳経路検出装置2aは、割り当てられたエリア内のルータ4a,4b,4cの各インタフェースを通る経路を把握する。また、各輻輳経路検出装置2は、ルータ監視部22によって、割り当てられたエリア内のルータ4が転送するトラヒック量を監視すればよい。例えば、輻輳経路検出装置2aは、割り当てられたエリア内のルータ4a,4b,4cの各インタフェースから出力されるトラヒックを監視し、ルータ4bのインタフェースから出力されるトラヒックが閾値を超えたことを検出する。したがって、各輻輳経路検出装置2の処理負荷を低減することができる。
【0047】
また、図3に示す輻輳経路検出装置2aは、2つのセッション管理装置3に接続され、それぞれに輻輳経路の経路情報を通知することとした。このように構成することで、対象とするネットワーク6において、各セッション管理装置3の処理負荷を低減することができる。なお、図3では、セッション管理装置3や端末5を適宜省略して表示した。
【0048】
[4.輻輳発生防止方法]
次に、輻輳制御システム1の輻輳制御方法の典型的な動作として輻輳発生防止方法について、図4ないし図6を参照(適宜図1および図2参照)して説明する。この輻輳発生防止方法では、輻輳経路検出装置2が、経路管理表213を既に作成して保持していることと、セッション管理装置3が、端末管理表312を既に作成して保持していることとを前提としている。なお、経路管理表213の作成方法については、後記する。
【0049】
<輻輳発生の可能性を検出するときの動作>
図4に示すように、輻輳経路検出装置2は、ルータ監視部22のトラヒック量取得手段221によって、ルータ4の各インタフェースから出力されるトラヒック量を監視している(ステップS1)。そして、ルータ監視部22は、輻輳可能性判定手段222によって、トラヒック量がインタフェースの帯域の閾値を超えたと判定した場合には(ステップS2:Yes)、そのインタフェースIDを輻輳経路判定部23に出力する。これにより、当該インタフェースで輻輳が発生する可能性があると判断できる。このとき、輻輳経路判定部23は、当該インタフェースを通る経路を、経路管理表213から選択し(ステップS3)、当該経路の送信元および宛先のIPアドレスと、輻輳検出を示す識別子とをセッション管理装置3へ通知し(ステップS4)、ステップS1へ戻る。
【0050】
続いて、図5に示すように、セッション管理装置3は、輻輳情報管理部32の経路情報受信手段321によって、輻輳経路検出装置2から、輻輳経路の送信元および宛先のIPアドレスと、輻輳検出を示す識別子とを受信し(ステップS11)、リスト作成手段322に出力する。そして、リスト作成手段322は、端末管理表312の中から、当該経路の送信元および宛先のIPアドレスと対応するSIP−URIを探索し(ステップS12)、輻輳経路リスト323に当該SIP−URIを登録する(ステップS13)。
輻輳制御システム1において、ここまでの動作により、輻輳の発生を防止するための準備が整ったこととなる。
【0051】
<端末からセッションの接続要求がなされたときの動作>
図6に示すように、セッション管理装置3は、セッション制御部33によって、端末5(送信元端末)から、セッションの接続要求を示すパケットを受信する(ステップS21)。セッション管理装置3は、輻輳情報管理部32の輻輳経路判定手段324によって、当該パケットにおいて、接続する送信元端末および宛先端末のSIP−URIが、輻輳経路リスト323に登録されているSIP−URIと一致するか否かを判定する(ステップS22)。一致する場合には(ステップS22:Yes)、セッション管理装置3は、セッション制御部33によって、接続要求を拒否する(ステップS23)。一方、一致しない場合には(ステップS22:No)、接続を許可し、セッション制御部33は、宛先端末へ接続要求のパケットを転送する(ステップS24)。
【0052】
[5.輻輳が発生する可能性がある経路の管理方法]
簡便のため、図1に示す輻輳制御システム1は、輻輳経路検出装置2が、ルータ4の各インタフェースのトラヒック量が閾値を超えた場合に、輻輳経路の経路情報をセッション管理装置3へ通知するものとして説明した。しかしながら、本発明は、このような運用だけに限定されるものではない。輻輳経路検出装置2は、各ルータ4のインタフェースから出力されるトラヒック量を常に監視しているので、一旦、閾値を超えてしまったインタフェースであっても、時間が経過すればトラヒック量が閾値を下回る場合が生じる。以下では、このように輻輳が発生する可能性がなくなった経路を、輻輳解除経路と呼称することとする。そして、輻輳制御システム1において、輻輳経路検出装置2は、トラヒック量が閾値を超えたインタフェースから出力されるトラヒック量が閾値を下回ることを検出した場合に、輻輳解除経路の経路情報をセッション管理装置3へ通知するものとして説明を拡張する。
【0053】
このため、輻輳経路検出装置2は、ルータ監視部22の輻輳可能性判定手段222が、インタフェース情報に、インタフェースIDと共に、輻輳検出を示す識別子または輻輳解除を示す識別子を含めることとする。つまり、前記した輻輳経路(輻輳が発生する可能性がある経路)は、この輻輳検出を示す識別子で特定される経路である(図4および図5参照)。一方、輻輳解除を示す識別子で特定される経路が輻輳解除経路である。この説明の拡張は、図4および図5を参照して説明した動作から容易に類推できるので、対応した動作について図7および図8に示して、説明を適宜省略することとする。
【0054】
<輻輳が発生する可能性がなくなった経路を検出するときの動作>
図7に示すように、輻輳経路検出装置2は、ルータ監視部22のトラヒック量取得手段221によって、ルータ4の各インタフェースから出力されるトラヒック量を監視している(ステップS31)。そして、ルータ監視部22は、輻輳可能性判定手段222によって、トラヒック量が設定された帯域の閾値を上回っていたインタフェースにおいて、当該閾値を下回ったと判定した場合には(ステップS32:Yes)、そのインタフェースIDおよび輻輳解除を示す識別子を輻輳経路判定部23に出力する。これにより、当該インタフェースで輻輳が発生する可能性がなくなったと判断できる。このとき、輻輳経路判定部23は、当該インタフェースを通る経路を、経路管理表213から選択し(ステップS33)、当該経路の送信元および宛先のIPアドレスと、輻輳解除の識別子とをセッション管理装置3へ通知し(ステップS34)、ステップS31へ戻る。
【0055】
続いて、図8に示すように、セッション管理装置3は、輻輳情報管理部32の経路情報受信手段321によって、輻輳経路検出装置2から、輻輳解除経路の送信元および宛先のIPアドレスと、輻輳解除の識別子とを受信し(ステップS41)、リスト作成手段322に出力する。そして、リスト作成手段322は、端末管理表312の中から、当該輻輳解除経路の送信元および宛先のIPアドレスと対応するSIP−URIを探索し(ステップS42)、輻輳経路リスト323から当該SIP−URIを削除する(ステップS43)。
【0056】
輻輳制御システム1をこのように構成することで、セッション管理装置3は、輻輳経路リスト323を更新することができる。したがって、輻輳制御システム1は、調査時点のトラヒック量の増減に応じて端末5からのセッションの接続要求に対して、より柔軟に対処できる。つまり、セッション管理装置3は、セッションの接続要求に対して、接続拒否を一度通知したとしても、所定時間経過後に、同じ接続要求の経路の接続を許可することができる。
【0057】
[6.輻輳制御対象の経路の調査方法]
次に、輻輳制御システム1による輻輳発生防止方法で前提としている経路管理表213を作成するために、ルータ4の各インタフェースを通る経路の調査方法について、図9ないし図15を参照(適宜図1および図2参照)して説明する。図9は、調査方法の概要、図10は図9に示す処理の詳細、図11は図10に示す処理の詳細をそれぞれ示し、図12および図13は処理の具体例を説明するための図である。以下では、輻輳制御対象の経路の調査方法について、6−1.ネットワークの具体例、6−2.調査方法の概要、6−3.ルータ間の接続状態の管理、6−4.調査方法の詳細に区分して、順次説明する。
【0058】
<6−1.ネットワークの具体例>
図12に示すネットワーク6は、9個のルータ4を備えている。ここでは、各ルータ4は、それぞれルータA,ルータB,…,ルータIのルータ名を有している。また、ネットワーク6は、16個のサブネットワーク61に分割されている。ここでは、各サブネットワーク61を区別するために名称を、宛先サブネット0,サブネット1,…,サブネット15と表記する。また、各ルータ4は、一例として、ルータAをルートノードとするツリー構造を形成している。このルータAは、16個のサブネットワーク61のうち、宛先サブネット0とサブネット1,12とにだけ直結し、かつ、9個のルータ4のうち、ルータBおよびルータGと隣り合って接続されている。そして、一例として、1つのサブネットワーク61(宛先サブネット0)を宛先として、他のすべてのサブネットワーク61が送信元となっている。このため、ツリー構造の端部の各ルータ4からルータAに向く方向に矢印を示した。
【0059】
<6−2.調査方法の概要>
図9に示すように、輻輳経路検出装置2は、経路情報管理部21によって、ルータ4の各インタフェースを通る経路を調査し、調査結果を登録した経路管理表213を作成する経路管理表作成ステップを実行する。まず、経路情報管理部21は、経路の“宛先”として1つのサブネットワーク61(図12では宛先サブネット0)を選択する(ステップS51:宛先選択ステップ)。そして、経路情報管理部21は、他の各サブネットワーク61から、“選択した宛先”へ向かう経路そのものの情報を、各ルータ4から取得する経路表41に基づいて調査する(ステップS52:経路調査ステップ)。
【0060】
次に、経路情報管理部21は、後記する送信元IPアドレス調査処理を実行する(ステップS53:アドレス調査ステップ)。この送信元IPアドレス調査処理は、経路に沿って各ルータにおいて、“選択した宛先”に対する送信元IPアドレスを調査し、その調査結果を、図14に示す第1調査表213Aおよび図15に示す第2調査表213Bへ記録するものである。そして、経路情報管理部21は、調査のために“宛先”とはしていないサブネットワーク61がある場合(ステップS54:No)、ステップS51に戻る。一方、全てのサブネットワーク61を“宛先”として調査した場合(ステップS54:Yes)、経路情報管理部21は、第1調査表213Aにおいて、同じルータのインタフェースで同じ送信元IPアドレスを持つ宛先アドレスを集約する(ステップS55)。図14に示す第1調査表213Aは集約済みの状態を示している。なお、詳細については後記する。
【0061】
<6−3.ルータ間の接続状態の管理>
ここで、ネットワーク6においてルータ4間の接続状態を管理するために、以下の用語を定義する。送信元IPアドレス調査処理を開始する前に、ある“宛先”へ向かうルータ4間の経路において、始点から経路の分岐点までの途中に、分岐点がない部分を「葉」と定義し、その他の経路部分(分岐点がある部分)は、「枝」と定義する。
【0062】
また、送信元IPアドレス調査処理を開始した後に(調査の途中に)、ある“宛先”へ向かう経路において、始点から経路の分岐点までの途中に、送信元IPアドレスを調査済みの「葉」が接続している分岐点がある部分を「葉」と定義する。これは、送信元IPアドレス調査処理を開始する前には、「枝」と定義されていた部分である。そのため、調査の途中において「葉」と定義される部分は、再定義された部分である。
このような定義により、経路情報管理部21は、前記経路調査ステップ(ステップS52)にて、ルータ4間の接続状態を管理する。
【0063】
図12に示したネットワーク6を用いた「葉」と「枝」の具体例を図13に示す。図13(a)に示すように、“宛先”である宛先サブネット0を選択したときに、送信元IPアドレス調査処理の開始前では、例えば、ツリー端部のルータFから見ると、ルータF―ルータE間(以下、経路F−Eと呼ぶ)には、経路の分岐点は無い。しかし、ルータEよりも1つだけ宛先に近いルータBには分岐点がある。そのため、「経路F−E」が葉62であると定義される。また、ツリー端部のルータIから見ると、ルータI−ルータH間(経路I−H)や、ルータH−ルータG間(経路H−G)には、経路の分岐点は無い。しかし、ルータGよりも1つだけ宛先に近いルータAには分岐点がある。そのため、「経路I−H−G」が葉62と定義される。そして、ルータA、ルータBは、経路の分岐点になっているので、これらのルータを含む部分の「経路D−C−B−A」が枝63と定義される。
【0064】
送信元IPアドレスの調査は、図13(a)に示す葉62の部分から行うこととするので、「経路D−C−B−A」よりも先に、「経路F−E」と「経路I−H−G」との調査を行う。例えば「経路F−E」の調査が終了すると、ルータBに接続している「葉」が調査済みになる。また、「経路I−H−G」の調査が終了すると、ルータAに接続している「葉」が調査済みになる。
【0065】
これらの結果、図13(a)に示す枝63である「経路D−C−B−A」に接続している未調査の「葉」がなくなることになる。そのため、宛先サブネット0へ向かう経路において、ツリー端部のルータDを始点としたときに、経路の分岐点であるルータB,Aに、調査済みの「葉」が接続している分岐点がある部分を「葉」と再定義する。これにより、図13(b)に示すように、「経路D−C−B−A」は、枝から葉62へ変わる。
【0066】
[6−4.調査方法の詳細]
図10に示すように、輻輳経路検出装置2は、経路情報管理部21によって、経路から「葉」を選択する(ステップS61:葉選択処理)。そして、経路情報管理部21は、後記する「葉」ごとの調査処理(ステップS62:アドレス調査処理)を実行する。「葉」ごとの調査処理(アドレス調査処理)は、ステップS61で選択した「葉」において送信元IPアドレスを調査する処理である。そして、経路情報管理部21は、未調査の「葉」がある場合(ステップS63:No)、ステップS61に戻る。一方、経路の全ての「葉」を調査した場合(ステップS63:Yes)、経路情報管理部21は、『接続している「葉」の全てが調査済み』の枝が、残っているか否かを判定する(ステップS64)。枝が残っている場合には(ステップS64:No)、当該枝を「葉」と定義して(ステップS65)、ステップS61に戻り、送信元IPアドレスの調査を続行する。一方、『接続している「葉」全てが調査済み』の枝が、残っていない場合には(ステップS64:Yes)、調査を終了する。
【0067】
次に、「葉」ごとの調査処理(ステップS62)の詳細について、図13(b)に示すように葉62へ変わった「経路D−C−B−A」を一例として説明する。
図11に示すように、まず、輻輳経路検出装置2は、経路情報管理部21によって、宛先から最も遠いルータである「葉」の端部のルータ4を選択する(ステップS71:葉選択処理)。すなわち、経路情報管理部21は、経路の始点のルータ4から調査を開始する。例えば、ルータDが選択される。そして、経路情報管理部21は、選択した当該ルータについて、後記するステップS72〜ステップS77の処理(アドレス調査処理)を実行した後、ステップS78にて、宛先に向けて、葉の中で次のルータ(Next-Hopのルータ)を選択して処理を進める。例えば、ルータCが選択される。
【0068】
次いで、経路情報管理部21は、Next-Hopのルータに、送信元IPアドレスが未調査である葉が接続しているか否かを判別する(ステップS79)。未調査である葉が接続している場合(ステップS79:Yes)、ステップS71で選択した葉についての調査を終了する。なお、例えば、図13(b)において、ルータGからルータAに進んだ場合や、ルータEからルータBに進んだ場合がこれに当たる。
【0069】
一方、ステップS79において、未調査である葉が接続していない場合(ステップS79:No)、ステップS72に戻り、当該Next-Hopのルータについて、ステップS72〜ステップS77の処理(アドレス調査処理)を実行する。例えば、ルータC,B,Aの場合、これに当たる。
【0070】
以下、ステップS72〜ステップS77の処理(アドレス調査処理)の詳細を説明する。まず、最初に、ステップS71でルータDを選択したものとする。この場合、経路情報管理部21は、当該ルータ(ルータD)に直結したサブネットのIPアドレスを、当該宛先(宛先サブネット0)の送信元IPアドレスとして登録する(ステップS72)。具体的には、図13(b)に示すサブネット5,6,7のIPアドレスが、登録候補となる。次いで、経路情報管理部21は、前段のルータがないと判定し(ステップS73:No)、ステップS74をスキップして、当該ルータ(ルータD)に、「送信元IPアドレスが調査済み」である葉が接続されていないと判定し(ステップS75:No)、ステップS76をスキップする。したがって、経路情報管理部21は、ステップS77にて、宛先とその送信元IPアドレスを、第1調査表213Aおよび第2調査表213Bへ登録する。つまり、この段階で、宛先(宛先サブネット0)の送信元IPアドレスとして、サブネット5,6,7のIPアドレスの登録が確定する。なお、これを「ルータDの送信元IPアドレス」ともいう。
【0071】
次に、ステップS78でルータCへ進み、ステップS72に戻ったものとする。この場合、ステップS72にて、経路情報管理部21は、当該ルータ(ルータC)に直結したサブネットのIPアドレスを、当該宛先(宛先サブネット0)の送信元IPアドレスとして登録する(ステップS72)。具体的には、図13(b)に示すサブネット3,4,5のIPアドレスが登録候補となる。次いで、経路情報管理部21は、前段のルータ(ルータD)があると判定する(ステップS73:Yes)。この場合、経路情報管理部21は、前段ルータ(ルータD)で登録された送信元IPアドレスを、当該ルータ(ルータC)の送信元IPアドレスとして登録する(ステップS74)。このとき、経路情報管理部21は、ステップS72で登録候補となったIPアドレスと同じアドレスが、前段ルータ(ルータD)で登録されているか否かを確認し、前段ルータ(ルータD)で登録されていると判断した場合には、重複登録しないようにする。具体的には、経路情報管理部21は、「サブネット5」のIPアドレスを重複登録することはしない。次に、当該ルータ(ルータC)に、「送信元IPアドレスが調査済み」である葉が接続されていないと判定し(ステップS75:No)、ステップS76をスキップする。そして、経路情報管理部21は、ステップS77にて、宛先(宛先サブネット0)の送信元IPアドレスとして、サブネット3,4,5,6,7のIPアドレスを登録する。
【0072】
次に、ステップS78でルータBへ進み、ステップS72に戻ったものとする。この場合、ステップS72にて、経路情報管理部21は、当該ルータ(ルータB)に直結したサブネット(サブネット1,2,3,8:図13(b)参照)のIPアドレスを、当該宛先(宛先サブネット0)の送信元IPアドレスとして登録する(ステップS72)。次いで、経路情報管理部21は、前段のルータ(ルータC)があると判定し(ステップS73:Yes)、前段ルータ(ルータC)で登録された送信元IPアドレスを、当該ルータ(ルータB)の送信元IPアドレスとして登録する(ステップS74)。このとき、経路情報管理部21は、ステップS72で登録候補となった「サブネット3」のIPアドレスが、前段ルータ(ルータC)で登録されていると判断し、重複を避けてサブネット4〜7のIPアドレスを登録する。次に、経路情報管理部21は、当該ルータ(ルータB)に、「送信元IPアドレスが調査済み」である葉が接続されていると判定する(ステップS75:Yes)。具体的には、図13(b)に示すように、葉62であると定義された「経路F−E」が存在している。この場合、接続されている葉(経路F−E)で登録された送信元IPアドレスを、当該ルータ「ルータB」の送信元IPアドレスとして登録する(ステップS76)。このとき、経路情報管理部21は、ステップS72で登録候補となった「サブネット8」のIPアドレスが、葉62(経路F−E)で登録されていると判断し、重複を避けてサブネット9〜11のIPアドレスを登録する。そして、経路情報管理部21は、ステップS77にて、宛先(宛先サブネット0)の送信元IPアドレスとして、サブネット1〜11のIPアドレスを登録する。
【0073】
さらに、経路に沿って“宛先”に向かって次のルータAへ進む(ステップS78)と、同様な処理により、経路情報管理部21は、ステップS77にて、宛先(宛先サブネット0)の送信元IPアドレスとして、サブネット1〜15のIPアドレスを登録する。なお、この場合、Next-Hopのルータは存在しないので、経路情報管理部21は、ステップS71で選択した葉についての調査を終了する。
【0074】
[7.経路管理表の作成方法]
輻輳経路検出装置2の経路情報管理部21は、ルータ4の各インタフェースを通る経路を示す宛先および送信元のIPアドレスを経路管理表213(図2参照)に登録する。本実施形態では、一例として、経路管理表213を、図14に示す第1調査表213Aと、図15に示す第2調査表213Bとを用いて作成することとした。経路情報管理部21は、第1調査表213Aにおいて、「同じ送信元IPアドレスをもつ宛先IPアドレス」がある場合には、当該同じ送信元IPアドレスを重複記載せずに、代わりに、送信元アドレスグループの識別子を記載する。そして、経路情報管理部21は、第2調査表213Bにおいて、送信元アドレスグループの識別子と、送信元IPアドレスとの対応の関係を記載する。
【0075】
経路情報管理部21は、各サブネットワーク61を“宛先”として選択し、それぞれの“宛先”に対して送信元を調査し、送信元をグループ表示する。例えば、第1調査表213Aにおいて、インタフェースIDが「3」、宛先IPアドレスが「128.6.0.0/15」である送信元アドレスグループの識別子は「4」である。これに対して、第2調査表213Bにおいて、送信元アドレスグループの識別子が「4」である送信元IPアドレスとして、「128.1.0.0/16」、「128.2.0.0/15」、「128.4.0.0/16」の3つが記載されている。なお、このうち「128.2.0.0/15」は、「128.2.0.0/16」と「128.3.0.0/16」とが集約されたものである。
第1調査表213Aにおいて、同様に、他の送信元アドレスグループの識別子も複数の送信元IPアドレスを代表している。このように、第1調査表213Aにおいて送信元をグループ表示することで、管理すべきデータ量を削減することができる。
【0076】
また、経路情報管理部21は、送信元をグループ表示した上で、その後に、同じルータのインタフェースで同じ送信元IPアドレスを持つ宛先IPアドレスを集約する。以下、この宛先IPアドレスの集約について、第1調査表213Aの例で説明する。マスク長が「16」である各宛先のサブネットワーク61の送信元を調査し、送信元をグループで表示したことを想定する。この段階では、宛先IPアドレス「128.6.0.0/16(図示は省略する)」の送信元グループの識別子は「4」、宛先IPアドレス「128.7.0.0/16(図示は省略する)」の送信元グル一プの識別子は「4」となる。これら宛先IPアドレス「128.6.0.0/16」,「128.7.0.0/16」は、共通のデータとして、インタフェースID「3」と、送信元アドレスグループの識別子「4」とを有している。したがって、経路情報管理部21は、これら2つの宛先IPアドレスを、1つのIPアドレス「128.6.0.0/15」に集約し、これを第1調査表213Aに記載した。このように、第1調査表213Aにおいて、宛先IPアドレスを集約することで、さらにデータ量を削減することができる。
【0077】
本実施形態の輻輳制御システムおよび輻輳制御方法によれば、輻輳経路検出装置2が、ルータ4の各インタフェースを通る経路を予め調査して経路管理表213を作成して保持した上で、現状の実際のトラヒックを監視して、ルータ4の各インタフェースの帯域に対して管理者が予め設定した閾値と比較することにより、輻輳可能性経路を検出することができる。また、セッション管理装置3は、輻輳経路検出装置2が検出した輻輳経路の経路情報に応じて輻輳経路リスト323を更新可能に保持しておき、端末5から要求されたセッションの経路が輻輳経路リスト323に載っていたら、接続拒否を通知することができる。したがって、輻輳制御システムおよび輻輳制御方法によれば、各フローの使用帯域の情報を管理せずに、新規フローの輻輳の発生を防止することができる。ゆえに、従来は、実際に使用している帯域と、システムが管理する各フローの使用帯域の情報との不一致が発生する問題があったが、この問題が生じることがなくなる。
【0078】
また、輻輳経路検出装置2は、輻輳制御対象のネットワーク6内のルータ4の各インタフェースを通る経路の情報を管理する際に、送信元IPアドレスを送信元アドレスグループ単位で管理することができる。したがって、同じ送信元IPアドレスを経路管理表213に繰り返し記載する必要がなくなり、経路情報の量を小さくすることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。例えば、輻輳経路検出装置2の管理者が、ルータ4の各インタフェースにおいて許容する帯域の上限の閾値を予め設定しておくこととしたが、この際に、帯域の下限の閾値を設定してもよい。そして、トラヒック量が上限の閾値を超えたインタフェースにおいて、時間経過に伴って、下限の閾値を下回るまで回復したときに、輻輳経路リスト323からSIP−URIを削除する運用をするようにしてもよい。また、上限の閾値を超えた経過時間や、上限または下限の閾値を下回り続けた経過時間を加味して輻輳発生の可能性を判定するようにしてもよい。このようにすることで、トラヒック量の急変に対しても柔軟に対応することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,1A 輻輳制御システム
2(2a,2b,2c,2d) 輻輳経路検出装置
21 経路情報管理部
211 ネットワーク情報収集手段
212 経路情報算出手段
213 経路管理表
213A 第1調査表
213B 第2調査表
22 ルータ監視部
221 トラヒック量取得手段
222 輻輳可能性判定手段
23 輻輳経路判定部
3 セッション管理装置
31 端末情報管理部
311 端末登録情報収集手段
312 端末管理表
32 輻輳情報管理部
321 経路情報受信手段
322 リスト作成手段
323 輻輳経路リスト
324 輻輳経路判定手段
33 セッション制御部
4 ルータ
41 経路表
5 端末
51 登録情報
6 ネットワーク
61 サブネットワーク
62 葉
63 枝
1,A2,A3,A4 エリア
IF インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末間をルータが接続するネットワークの輻輳を制御するために、前記ネットワークにそれぞれ接続された輻輳経路検出装置とセッション管理装置とを備える輻輳制御システムであって、
前記輻輳経路検出装置は、
前記ネットワーク上のルータから、各インタフェースのアドレスと経路表の情報とを収集し、前記ルータの各インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の全てを算出して、記憶する経路情報管理部と、
前記ルータが転送するトラヒック量を監視し、前記ルータのインタフェースが出力するトラヒック量が、当該インタフェースの許容する帯域の範囲として予め設定された閾値を上回ったことを検出すると、当該インタフェースに輻輳発生の可能性が生じたことを示すインタフェース情報を、輻輳経路判定部へ通知するルータ監視部と、
前記ルータ監視部から前記インタフェース情報を通知されると、前記経路情報管理部から当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の情報を取得し、取得した情報を、輻輳発生の可能性が生じた経路の経路情報として、前記セッション管理装置へ通知する輻輳経路判定部とを有し、
前記セッション管理装置は、
前記端末から、当該端末のIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を取得し、記憶する端末情報管理部と、
前記端末からセッションの接続要求を受信すると、前記接続要求に含まれる送信元端末と宛先端末のSIP−URIを輻輳情報管理部へ通知し、前記輻輳情報管理部から接続拒否を通知されると、送信元端末へ接続拒否を通知し、一方、前記輻輳情報管理部から接続許可を通知されると、宛先端末へ接続要求を転送するセッション制御部と、
前記輻輳経路検出装置から、前記経路情報を受信し、受信した経路情報に基づいて、当該経路情報で示される経路の送信元のIPアドレスと宛先のIPアドレスをもつ各端末のそれぞれのSIP−URIを前記端末情報管理部から取得し、取得したSIP−URIを輻輳経路リストに登録し、前記セッション制御部から、前記接続要求に含まれる各SIP−URIを通知されると、前記通知された各SIP−URIが、前記輻輳経路リストに登録されているか否かを判定し、登録されている場合には、前記セッション制御部へ接続拒否を通知し、未登録の場合には、前記セッション制御部へ接続許可を通知する輻輳情報管理部とを有する、
ことを特徴とする輻輳制御システム。
【請求項2】
端末間をルータが接続するネットワークの輻輳を制御するために、前記ネットワークにそれぞれ接続された輻輳経路検出装置とセッション管理装置とを備える輻輳制御システムの輻輳制御方法であって、
前記輻輳経路検出装置は、
前記ルータの各インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスとの組を予め調べて調査結果を登録した経路管理表を作成する経路管理表作成ステップと、
前記ルータの各インタフェースから出力されるトラヒック量を取得するステップと、
前記取得したトラヒック量が、当該インタフェースの許容する帯域の範囲として予め設定された閾値を超えた場合、当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスとの組の情報を、前記経路管理表から選択するステップと、
前記選択した情報を、輻輳発生の可能性が生じた経路の経路情報として、前記セッション管理装置へ通知するステップとを実行し、
前記セッション管理装置は、
前記輻輳経路検出装置から、前記輻輳発生の可能性が生じた経路の経路情報を受信するステップと、
前記端末のIPアドレスとSIP−URIとの対応関係を予め登録した端末管理表から、前記受信した経路情報で示される経路の送信元のIPアドレスと宛先のIPアドレスをもつ各端末のそれぞれのSIP−URIを探索するステップと、
前記探索されたSIP−URIを輻輳経路リストへ登録するステップと、
前記端末からセッションの接続要求を受信するステップと、
前記接続要求にて接続する送信元端末と宛先端末のSIP−URIの組が前記輻輳経路リストに登録されているSIP−URIの組と一致する場合、当該接続要求を拒否するステップとを含んで実行する、
ことを特徴とする輻輳制御方法。
【請求項3】
前記輻輳経路検出装置は、
前記トラヒック量が前記閾値を超えたインタフェースから出力されるトラヒック量が前記閾値を下回った場合、当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスとの組の情報を、前記経路管理表から選択するステップと、
前記選択した情報を、輻輳発生の可能性を解除すべき経路の経路情報として、前記セッション管理装置へ通知するステップとをさらに実行し、
前記セッション管理装置は、
前記輻輳経路検出装置から、前記輻輳発生の可能性を解除すべき経路の経路情報を受信するステップと、
前記受信した経路情報で示される経路の送信元のIPアドレスと宛先のIPアドレスをもつ各端末のそれぞれのSIP−URIを前記端末管理表から探索するステップと、
前記輻輳経路リストから、前記探索されたSIP−URIを削除するステップと、をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の輻輳制御方法。
【請求項4】
前記輻輳経路検出装置は、
前記経路管理表作成ステップに、
前記ネットワークにおいて、宛先として1つのサブネットワークを選択する宛先選択ステップと、
各ルータが持つ経路表に基づいて、前記選択した宛先以外の各サブネットワークから前記選択した宛先への経路を調査する経路調査ステップと、
前記経路に沿った各ルータにおいて、前記選択した宛先に対する送信元IPアドレスを調査する送信元IPアドレス調査処理を順次実行するアドレス調査ステップとを含み、
前記宛先選択ステップにて前記ネットワークの全てのサブネットワークを選択するまで、前記経路調査ステップと、前記アドレス調査ステップとを繰り返して実行することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の輻輳制御方法。
【請求項5】
前記輻輳経路検出装置は、
前記経路調査ステップにて、前記経路において前記ルータ間の分岐点がない部分を葉と定義すると共に、分岐点がある部分を枝と定義して、前記ルータ間の接続状態を管理し、
前記アドレス調査ステップにて、
前記経路から前記葉を選択する葉選択処理と、
前記選択した葉ごとに前記送信元IPアドレスを調査するアドレス調査処理とを実行し、
前記経路に定義された全ての葉を調査した後に、前記経路に定義された枝に接続している葉の全てが調査済みとなった場合に、当該枝を前記葉に置き換える再定義を行い、前記置き換えた葉について前記アドレス調査処理を、前記調査前に定義された枝の全てが葉として再定義されて調査済みとなるまで繰り返す、
ことを特徴とする請求項4に記載の輻輳制御方法。
【請求項6】
前記輻輳経路検出装置は、
前記アドレス調査処理にて、
前記宛先選択ステップにて選択された宛先への経路の葉において、前記選択された宛先から最も遠いルータから当該宛先に向けて調査対象のルータを順次選択し、
前記選択されたルータに直結したサブネットのIPアドレスを当該宛先の送信元IPアドレスとして登録し、
前記経路上の前段の位置に送信元IPアドレスが調査済みのルータがある場合には、前段のルータで登録した送信元IPアドレスをさらに登録し、
当該調査対象のルータに、送信元IPアドレスが調査済みの葉が接続されている場合、前記調査済みの葉で登録した送信元IPアドレスを当該ルータの送信元IPアドレスとしてさらに登録し、
当該調査対象のルータの次に選択されたルータに、送信元IPアドレスが未調査である葉が接続していない場合、当該次に選択されたルータについて前記アドレス調査処理を実行し、一方、当該次に選択されたルータに、送信元IPアドレスが未調査である葉が接続している場合、前記葉選択処理で選択した葉についての調査を終了する、
ことを特徴とする請求項5に記載の輻輳制御方法。
【請求項7】
前記輻輳経路検出装置は、
前記経路管理表作成ステップにて、各経路の宛先IPアドレスに対する送信元IPアドレスを送信元グループで示した第1調査表と、前記送信元グループと当該送信元グループに含まれる送信元IPアドレスとの関係を示した第2調査表とにより、前記経路管理表を作成する、
ことを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか一項に記載の輻輳制御方法。
【請求項8】
端末間をルータが接続するネットワークにおける端末間のセッションを管理するセッション管理装置と前記ルータとに接続された輻輳経路検出装置であって、
前記ネットワーク上のルータから、各インタフェースのアドレスと経路表の情報とを収集し、前記ルータの各インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の全てを算出して、記憶する経路情報管理部と、
前記ルータが転送するトラヒック量を監視し、前記ルータのインタフェースが出力するトラヒック量が、当該インタフェースの許容する帯域の範囲として予め設定された閾値を上回ったことを検出すると、当該インタフェースに輻輳発生の可能性が生じたことを示すインタフェース情報を、輻輳経路判定部へ通知するルータ監視部と、
前記ルータ監視部から前記インタフェース情報を通知されると、前記経路情報管理部から当該インタフェースを通る経路を示す送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組の情報を取得し、取得した情報を、輻輳発生の可能性が生じた経路の経路情報として、前記セッション管理装置へ通知する輻輳経路判定部と、
を備えることを特徴とする輻輳経路検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−278716(P2010−278716A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128653(P2009−128653)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】