説明

農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置及び走行経路認識に用いられる防草シート

【課題】金属片を埋設するような手間を要する作業をせず、簡単、安価な構成で感度の高い、農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置を提供することが課題である。
【解決手段】金属検知センサにより予め定められた経路に沿って設けられた金属体を検出し、金属体に対する位置を算出して進行方向を制御する農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置おいて、前記金属体を、防草シートにおける幅方向中央部の前記自律走行ロボット走行方向へ織り込んだ第1の金属線とし、前記経路に沿って前記防草シートを敷設することで、金属片を埋設するような手間を要せずに金属体を設けられるようにし、かつ、金属検知センサをブリッジ回路で構成して農作業支援用自律走行ロボット表面に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置及び走行経路認識に用いられる防草シートに係り、特に、所定の経路に沿い、移植する苗を運んだり収穫した作物を農地外のトラックまで運搬する、農作業支援ロボットなどの自律走行ロボットにおける走行経路認識装置及び走行経路認識に用いられる防草シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、若年層の農村離れによる農業従事者の高齢化に伴い、農地の合併・大規模化が進み、農作業の効率化と機械化への需要が高まっている。しかしながら多機能かつ大規模な農機は高価であり、農地面積の小さい農家においては大規模な農機を導入したところで、設備投資の割合に対する生産性の向上が期待できない。また、特に苗の移植や収穫作業などにおいては、苗や収穫物等(以下、作物類等)はデリケートな取り扱いを要するのに対し、手作業ほど丁寧で細やかな作業を機械により行うことができる技術は未だ実用化されていない。
【0003】
一方、市場においては、手作業により機械では不可能な丁寧で細やかな農作業を行うことによって得られる、高品質の作物に対するニーズが広く存在する。しかし、農業従事者の高齢化によりこれらの作業に対する負担が大きくなっていることも事実であり、例えば農地で収穫された重い作物を農地外のトラックまで運搬する作業などは、高齢者にとって大きな負担となっている。
【0004】
そのため本願出願人は特許文献1において、進行方向に対する全体の幅方向の大きさが成人の肩幅の大きさと同等若しくはそれ以下であり、内部に制御部を有して進行方向前面側と、幅方向の両側面を含む位置に障害物検出センサを有した本体部と、本体部の上側に取りつけられた農作物類載置部と、本体部の下側に取り付けられた移動手段とで構成されて、畝や作物の株を避けつつ、農作業者が携帯する発信機からの信号に基づいて自律走行する農作業補助ロボットを提案した。
【0005】
また、このようなロボットによる移植する苗や収穫した農作物類の運搬に際しては、移植する苗が無くなったり農作物類載置部が一杯になった場合、ロボットを移植する苗のある位置や農作物類を運搬するトラックまで自律走行させる必要がある。こういった自律走行は、例えば工場や農場で用いられる自動搬送システムでは、ロボットを誘導するための磁気テープ、もしくは電源に接続された誘導用ケーブルを所定のルートに沿って施設し、ロボットがこれら磁気テープや誘導用ケーブルが発生する磁界を検知しながら荷物運搬を行う方式が多い。
【0006】
しかしながらこのような制御方法のうち、誘導用ケーブルに電流を流すことで生じた磁界を検出する方法では、別途電源回路を必要としてその分コストがかかる。それに規模が大きくなるほど電力損失も多くなり、安全上の問題も発生する。また磁気テープを用いる場合、磁気テープに外部から電力を投入する必要はないが、値段が高くて導入できる場所も限られてくる。
【0007】
そのため特許文献2には、金属片をロボットの走行経路に沿って埋設し、それをロボットに備えた発振部、高周波磁界を作る送信コイル、受信コイル、検波器などからなる金属検知センサ(単一でも左右両側に複数設けても良いとしている)で検出し、進行方向を演算して自律走行する自動走行車輌の誘導装置が開示されている。
【0008】
また本願出願人になる特許文献3には、農地に作られた畝を覆うマルチフィルムの埋設位置内側の長手方向に畝位置認識用の線を設け、その線を農薬散布用ビークルなどの農作業支援機器に設けられた撮像装置で撮像し、画像認識によって畝位置認識用の線を認識して、正確に畝と畦の間を進行できるようにした農作業支援機器の進行方向認識方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−66809号公報
【特許文献2】特開平3−150607号公報
【特許文献3】特開2007−185111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示された農作業補助ロボットは、農作業者が携帯する発信機からの信号に基づいて自律走行し、移植する苗が無くなったり農作物類載置部が一杯になったりした場合、苗の補充場所または収穫物収集地点に設けられた発信機から発せられる、補充側または収集地側信号を受信してGPS(Global Positioning System:汎地球測位システム)を用い、移動手段により駆動制御されて苗の補充場所または収穫物収集地点まで移動するが、これら苗の補充場所または収穫物収集地点まで、どのようにして誘導するかは言及されていない。
【0011】
また、特許文献2に示された自動走行車輌の誘導装置は、走行経路に沿って埋設した金属片を金属検知センサで検出することで進行方向を演算して自律走行するため、誘導用ケーブルや磁気テープを用いる場合に比較し、電力が不用でコストもかからない。しかしながら金属片を、自律走行するロボットにおける走行経路に埋設する必要があり、農場が大きければその手間も大変である。また、金属片を検出する金属検知センサは特許文献2の図2に示されているように、受信コイル2つを単に増幅器に接続しただけのものであり、感度的に全ての金属片を検知可能かどうかに疑問が残る。
【0012】
特許文献3に示された農作業支援機器の進行方向認識方法は、畝位置認識用の線を正確に認識できれば畝に添って正確に自律走行できるが、撮像装置や畝位置認識用の線を認識する画像処理装置が必要であり、高価にならざるをえない。
【0013】
そのため本発明においては、自律走行ロボット用にわざわざ金属片を埋設するような手間を要する作業をしなくても良く、簡単、安価な構成で感度の高い、農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置及び走行経路認識に用いられる防草シートを提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明になる農作業支援用自律走行ロボットの走行経路認識に用いられる防草シートは、
走行手段と、金属体を検知する金属検知センサと、該金属検知センサにより検知した金属体に対する位置を算出し、前記走行手段を制御して進行方向を制御する制御装置とを備えた農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識に用いられ、前記金属体として、幅方向中央部の前記農作業支援用自律走行ロボット走行方向に金属線を織り込んだことを特徴とする。
【0015】
そして、本発明になる農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置は、
走行手段と、予め定められた経路に沿って設けられた金属体を検知する金属検知センサとを有し、該金属検知センサ出力により前記金属体に対する位置を算出し、前記走行手段を制御して進行方向を制御する制御装置を備えた農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置おいて、
前記金属検知センサは交流電流を流すコイル体を前記自律走行ロボット表面に有し、前記金属体は、前記経路に沿って敷設された防草シートの幅方向中央部に、前記自律走行ロボット走行方向へ織り込まれた第1の金属線であることを特徴とする。
【0016】
このように本発明では、農場において雑草を防ぐために一般的に用いられている防草シートに、農作業支援用自律走行ロボットを誘導するための金属線を織り込み、それによって防草シートを敷設したとき、同時に農作業支援用自律走行ロボット誘導用の金属線も敷設されるようにしたから、特許文献2に示されたような金属片(本発明では金属線)を埋め込む作業は必要が無くなる。
【0017】
そして、前記防草シートは前記第1の金属線と直交する方向に一定間隔毎に織り込まれた第2の金属線を有し、前記制御装置は前記金属検知センサによる前記第2の金属線の検知信号により、前記自律走行ロボットの現在位置を算出するようにしたから、GPSのように高価な機器が必要なシステムを用いずとも現在位置を認識することが可能となる。
【0018】
また、前記第2の金属線のそれぞれは所定間隔毎に配された複数の金属線からなる金属線群で構成され、該金属線群を構成する各金属線は、それぞれの有無が「1」、「0」に対応されて前記自律走行ロボットにおける制御信号を形成するようにすると、この制御信号をそのまま現在位置情報とすれば自律走行ロボットの現在位置の認識が非常に簡単に行える。さらに例えば折り返し点などでは、この制御信号に「これから半径2mの左カーブに沿って進行」、などの自律走行ロボット駆動制御用信号を含ませることで、自律走行ロボット側で特別な判断を行わずに誘導することも可能となり、より安価に自律走行ロボットと走行経路認識装置を構成することができる。
【0019】
さらに、前記第2の金属線における防草シート端部、及び前記第1の金属線の端部の両方、または前記第2の金属線のみに、通電制御装置を介して電源に接続された通電用電極を設け、必要に応じて通電するようにすれば、第1、第2の金属線周囲(第2の金属線のみの場合は第2の金属線周囲)に電界が生じて金属探知センサの感度を上げることができる。また、第1、第2の金属線周囲(第2の金属線のみの場合は第2の金属線周囲)に電界だけでなく、磁界も生じるから、金属探知センサだけでなくて磁界センサを使って位置検出を行うことも可能となる。
【0020】
そして、前記通電制御装置は前記自律走行ロボットの現在位置信号を受け、前記自律走行ロボットの走行方向に位置する次の第2の金属線に通電する制御を行えば、全ての第2の金属線に通電するのではなく、次に自律走行ロボットが通過する位置の第2の金属線のみに通電することが可能となり、電力の節約になる。
【0021】
さらに、前記コイル体のそれぞれは、ブリッジ回路を形成する2つのコイルで構成することで、感度の高い金属検知センサとすることができ、第1、第2の金属線を確実に検出することができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
以上記載のごとく本発明になる農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置は、金属検知センサにより検出する金属線を、農場において雑草を防ぐために一般的に用いられている防草シートに織り込んだ第1の金属線としたから、特許文献2に示されたような金属片の埋め込み作業を独立しておこなう必要が無い。
【0023】
そして、第2の金属線を設けることで自律走行ロボットの現在位置を算出できるようにしたり、制御信号を形成することで、自律走行ロボット側で現在位置把握や走行距離の把握、駆動制御用の判断などをする必要を無くすことができ、より安価に自律走行ロボットと走行経路認識装置を構成することができる。
【0024】
また、第1、第2の金属線に必要に応じて通電する機構を設ければ、金属探知センサの感度を上げたり磁界センサを使うことができ、さらに、自律走行ロボットからの現在位置信号を受け、次に自律走行ロボットが通過する位置の第2の金属線のみを通電すれば、電力の節約をすることもできる。さらに金属検知センサは、2つのコイルでブリッジ回路を構成すれば、感度を高めて確実に第1、第2の金属線を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1と第2の金属線を織り込んだ防草シートを敷設した経路を農作業支援用自律走行ロボットが走行するイメージを示した図である。
【図2】本発明になる農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置に用いる第1の金属線を織り込んだ防草シート(A)と、同じく第1と第2の金属線を織り込んだ防草シート(B)の例である。
【図3】本発明になる農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置のブロック図である。
【図4】本発明になる農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置を構成する金属検知センサと、防草シートに織り込んだ第1の金属線との位置関係を説明するための図である。
【図5】第1の金属線と直交する方向に一定間隔毎に織り込まれた第2の金属線を、所定間隔毎に設けられた複数本の金属線で構成した場合の一例を示した図である。
【図6】第2の金属線を複数の金属線で構成し、それぞれの有無を「1」、「0」に対応させて自律走行ロボットにおける制御信号を形成することを説明するための図である。
【図7】第1と第2の金属線を織り込んで敷設した防草シートの幅方向端部に通電用電極を設け、必要に応じて通電できるようにした場合の構成ブロック図である。
【図8】本発明に用いる農作業支援用自律走行ロボットの1例の全体像の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0027】
最初に図1を用い、本発明の概略を簡単に説明すると、この図1において20は農作業支援用自律走行ロボット、106、116は後記する金属検知センサ10、11を構成するコイル体、24は農場などにおいて雑草を防ぐために一般的に用いられている防草シート、26はこの防草シート24の幅方向中央部に長手方向に織り込まれた第1の金属線、27は一定間隔毎に第1の金属線26と直交する方向に織り込まれた第2の金属線、40は畝に植えられた農作物である。
【0028】
本発明においては農場などにおいて雑草を防ぐため、一般的に用いられている防草シート24の幅方向略中央の長手方向に第1の金属線26を織り込む。そしてその防草シート24を、図1に示したように農作物40の植えられている畝の間などの予め定められた農作業支援用自律走行ロボット20が走行する経路に沿って敷設すると共に、農作業支援用自律走行ロボット20側に、防草シート24に織り込まれた第1の金属線26を検知する金属検知センサ10、11を設け、第1の金属線26に対する農作業支援用自律走行ロボット20の位置を算出して進行方向を制御するようにしたものである。
【0029】
このようにすることにより、農作業支援用自律走行ロボット20の位置を算出するための特許文献2に示されたような金属体の走行経路への埋め込みは、農場において雑草を防ぐために一般的に用いられている防草シート24の敷設時に同時に行われることになり、特別に金属体を埋め込む作業を実施する必要が無くなる。また、金属検知センサ10、11は、後記するようにコイル体106、116を構成するそれぞれ2つのコイル101、102、111、112でブリッジ回路を構成して高感度化し、農作業支援用自律走行ロボット20の表面、例えば前面左右に設けて、確実に防草シート24に織り込まれた第1の金属線26を検出することができるようにした。
【0030】
また防草シート24への金属線の織り込みは、農作業支援用自律走行ロボット20の走行方向の第1の金属線26だけでなく、農作業支援用自律走行ロボット20の走行方向の一定間隔毎に、この第1の金属線26に直交する方向に第2の金属線27を織り込むようにしてもよい。こうすると、その第2の金属線27の検知信号によって自律走行ロボットの現在位置算出を容易に行うことができる。また、第2の金属線27のそれぞれを金属線群とし、その金属線群を構成する各金属線を微小な所定間隔毎に配すると共に、それぞれの有無を「1」、「0」に対応させ、それによって制御信号を形成すれば、農作業支援用自律走行ロボット20の制御を第2の金属線で実施することもできる。
【0031】
さらに、防草シート24を敷設後、第1の金属線26の始端と終端などの端部、第2の金属線27における防草シート24の端部に通電制御装置を介して電源を接続し、必要に応じて通電して金属検知センサ10、11の感度を高めたり、磁界センサを使えるようにするなどしてもよい。なお、このとき、第2の金属線27に常時通電するのではなく、農作業支援用自律走行ロボット20の現在位置信号を受け、次に農作業支援用自律走行ロボット20が通過する位置の第2の金属線27のみに通電すれば、電力の節約を計ることができる。
【0032】
図8は、本発明に用いる農作業支援用自律走行ロボット20の1例の全体像の斜視図で、この農作業支援用自律走行ロボット20は、前記した特許文献1に詳細が述べられている農作業補助ロボットをベースとしたものである。そのため、本発明に関連する構成を簡単に説明すると、21は後述する図3に示した制御回路を内部に有する本体部であり、この本体部21の上側に取りつけられているのは農作物類載置部22で、本体部21の下側に取り付けられているのは走行装置23である。
【0033】
また、この農作業支援用自律走行ロボット20における進行方向前面左右には、防草シート24の、幅方向中央部に織り込まれた第1の金属線26を検出する、金属検知センサ10、11を構成するコイル体106、116が設けられている。なお、図示した農作業支援用自律走行ロボット20は、走行装置23がクローラタイプのものを示したが、特許文献1に詳細に述べられているように、小回りの利くホイールタイプで構成しても良いことは勿論であり、また、コイル体106、116も前面だけでなく、どの方向からも金属線を検知できるよう、農作業支援用自律走行ロボット20における前後左右の表面の複数箇所に設けるようにしても良い。
【0034】
また、この農作業支援用自律走行ロボット20の走行装置23や制御回路は、前記特許文献1に述べられているように、本体部21に内蔵された充電式、又は非充電式電池等の電力供給部(図示せず)より電力が供給され、さらに必要に応じ、図示していない農作業者やその他の場所から無線による指示を受けられるよう、通信装置などを備えたものであっても良い。
【0035】
図2は、前記した第1と第2の金属線26、27を織り込んだ防草シート24を示した図である。まず図2(A)は、防草シート24の幅方向略中央部に第1の金属線26を織り込んだもので、その他の部分は通常の防草シートである。また図2(B)は、この(A)の状態の防草シート24に、さらに第1の金属線26に直交する方向に一定間隔で第2の金属線27を織り込んだ場合である。これら図2(A)、(B)に示した防草シート24は、図1に示したように農作業支援用自律走行ロボット20の走行経路に敷設される。
【0036】
図2(A)のように第1の金属線26だけを織り込んだものは、前記したように金属検知センサ10、11でこの第1の金属線26を検知し、農作業支援用自律走行ロボット20の第1の金属線26に対する位置を算出して、進行方向の制御を行う。図2(B)のように第2の金属線27も織り込んだものは、前記したように第2の金属線27の検知信号により、自律走行ロボット20の現在位置を算出するようにしたり、第2の金属線27を金属線群として微小間隔毎にそれぞれの有無を「1」、「0」に対応させて設け、制御信号を形成して自律走行ロボット20を制御したりする。
【0037】
また、前記したように防草シート24を敷設後、第1の金属線26の始端と終端などの端部、第2の金属線27における防草シート24の端部に通電制御装置を介して電源を接続し、必要に応じて通電して金属検知センサ10、11の感度を高めたり、磁界センサを使えるようにするなどしてもよい。なおこのとき、前記したように第2の金属線27は、常時通電するのではなく、農作業支援用自律走行ロボット20の現在位置信号を受け、次に農作業支援用自律走行ロボット20が通過する位置の第2の金属線27のみに通電するようにして、電力の節約を計るようにしても良い。
【0038】
図3は、農作業支援用自律走行ロボット20の本体部21に収容された走行経路認識装置の回路ブロック図である。図中、10、11は金属検知センサ、12、13はこの金属検知センサ10、11の検知信号における振幅又は位相の検出回路、14は左右に設けられたこれら金属検知センサ10、11の出力を比較する出力比較回路、15は農作業支援用自律走行ロボット20の制御装置、16は演算部、17は記憶部、18は図8に23で示した移動手段(図3では走行装置19)を制御する走行装置制御装置である。
【0039】
図4は、図3に10、11で示した金属検知センサを構成するコイル体106、116と防草シート24に織り込まれた第1の金属線26との関係を示した図である。金属検知センサ10、11を構成するコイル体106、116のそれぞれは、図上、地面25に垂直な方向に設置された上側コイル101、111、下側コイル102、112で構成され、図1、図8にも示したように、農作業支援用自律走行ロボット20の前面、または前後左右のいずれかまたは複数箇所の表面に取り付けられている。なお、この図4において、231は移動手段23(走行装置19)を構成する車輪である。
【0040】
再度図3に戻って、金属検知センサ10、11は、これらコイル体106、116を構成する上側コイル101、111、下側コイル102、112、及び可変抵抗103、113により、図示したようにブリッジ回路が構成されて交流電源104、114に接続され、これらのコイルに金属が近づいた時、金属に誘起される誘導電流によってそれぞれのコイルに流れる電流の振幅及び位相が変化する。そのため、これらブリッジ回路の出力を増幅回路105、115で増幅し、振幅又は位相検出回路12、13で振幅又は位相を検出してそれを左右出力比較回路14で比較し、その比較結果が制御装置15に送られる。
【0041】
このように金属検知センサ10、11を構成すると、例えば農作業支援用自律走行ロボット20が進行方向に対して右側にずれると、敷設した防草シート24に織り込まれた第1の金属線26に対して左側、即ち図4において106で示したコイル体がこの第1の金属線26に近づくことになるから、このコイル体106を含む金属検知センサ10からの信号が大きくなる。逆に、第1の金属線26に対して左側にずれれば、今度は敷設した防草シートに織り込まれた第1の金属線26に対して右側、即ち図4において116で示したコイル体がこの第1の金属線26に近づくことになるから、このコイル体116を含む金属検知センサ11からの信号が大きくなる。
【0042】
そのため、左右出力比較回路14により、例えば右へのずれはプラス電圧出力、左へのずれはマイナス電圧出力となるようにして比較結果を制御装置15に送ることで、金属検知センサ10、11の第1の金属線26に対するずれの方向と、その距離を推定可能なセンシングシステムを構成することができる。そのため制御装置15は、この左右出力比較回路14から送られてきたデータを基に、例えば送られてきたデータが上記したようにアナログ電圧値であればそれをアナログ/デジタル変換し、演算部16でこの比較結果である振幅又は位相の差に基づき、防草シート24に織り込まれた第1の金属線26に対する農作業支援用自律走行ロボット20の位置を算出する。そして、走行装置制御装置18に信号を送り、第1の金属線26が農作業支援用自律走行ロボット20の中心付近となるよう走行装置19を制御させる。
【0043】
このようにすることで、前記したように特許文献2に示された金属体の走行経路への埋め込みは、農場において雑草を防ぐために一般的に用いられている防草シート24の敷設時に行われ、特別に金属体を埋め込む作業を実施する必要が無くなり、また、金属検知センサ10、11は、コイル体106、116を構成するそれぞれ2つのコイル101、102、111、112でブリッジ回路を構成し、高感度化したから、確実に防草シート24に織り込まれた第1の金属線26を検出することができる。
【0044】
また、図2(B)、あるいは図1に示したように、第1の金属線26だけでなく、この第1の金属線26に直交する方向に第2の金属線27を織り込んだ場合、農作業支援用自律走行ロボット20が正常に進行していれば、その表面、特に前面や後面に取り付けた金属検知センサ10、11から第2の金属線27までの距離は略等しくなり、第2の金属線27の検知出力もほぼ等しくなる。
【0045】
従って、金属検知センサ10、11の出力は、第2の金属線27と第1の金属線26の両方を検知した出力となるが、第1の金属線26のみの場合に比較し、それぞれの検知出力が第2の金属線27の存在分だけ、等しく大きなものとなる。また、第1の金属線26から金属検知センサ10、11それぞれまでの距離に対応した出力はそのままであるから、第1の金属線26、第2の金属線27の検知出力をそれぞれ別個に分離することが可能となる。そのため、第2の金属線27の検出回数を計数することで、農作業支援用自律走行ロボット20の走行距離や現在位置を、GPSなどの高価な機器を使わずとも認識することが可能となる。
【0046】
図5、図6は、第2の金属線27のそれぞれを所定間隔で並べた複数の金属線(金属線群)で構成し、さらに所定間隔で並べたそれぞれの金属線の有無を、「1」、「0」に対応させて制御信号を形成した場合の一例を示した図である。まず、図5において第2の金属線27は金属線群が始まることを知らせるコントロール用の線を含め、例えば50mm毎に7本配され、その金属線群が例えば5m毎に27a、27b、27c、……のように設けた場合である。なお、この金属線群の間隔、各金属線を構成する個々の金属線の間隔は一例であり、上記した数値に限定されないことは自明である。
【0047】
図6は、各金属線群の有無を「1」、「0」に対応させることを説明するための図である。即ち各金属線群は、進行方向に対して金属線群が始まることを知らせるコントロール用の線50から始まり、1ビット目から6ビット目までを構成する51で示した6本の線と併せて7本の線で構成される。そして図6(A)に示したように、各ビットを表す線が全て存在している場合は「111111」(図5の27a)を表し、図6(B)のように1ビット目の線がない場合は「011111」(図5の27b)を、図6(C)のように2ビット目の線がない場合は「101111」(図5の27c)を、さらに図6(D)のように1ビット目と2ビット目の線がない場合は「001111」を、という具合にして制御信号が構成される。
【0048】
そして、それぞれの金属線群で構成される制御信号に対応した制御内容を例えば図1の記憶部17に記憶させることで、制御装置15により対応する記憶内容を読み出せば種々の制御が可能となる。例えばその制御信号が現在位置情報を表すようにすると、わざわざ第2の金属線27の本数を数えずとも自律走行ロボットの現在位置を知ることが可能となる。また折り返し点などでは、この制御信号によって例えば「これから半径2mの左カーブに沿って進行」、などの駆動制御用信号を構成すれば、自律走行ロボット側で駆動制御用の判断を行わずとも誘導が可能となり、より安価に自律走行ロボットと走行経路認識装置を構成することができる。なお、図5、図6では金属線群を構成する金属線を7本の場合を例に説明したが、この数は7本に限らないことは自明である。
【0049】
またこの第1、第2の金属線26、27は、単に防草シートに金属線を織り込むだけでなく、例えば図7に第2の金属線27の場合を示したように、第2の金属線27における防草シート24の端部に電極30を設け、通電することで電界を発生させて金属探知センサ10、11の感度を上昇させたり、通電により生じる磁界を利用し、金属探知センサ10、11の代わりに磁界検出センサを用いるようにしても良い。これは第1の金属線26の場合も同様である。
【0050】
そして第2の金属線27の場合、この電極30を介した通電も、常時通電するのではなく、例えば農作業支援用自律走行ロボット20が現在何処にいるかを判断し、農作業支援用自律走行ロボット20の走行方向に位置する第2の金属線27を順次通電する制御を行うようにすれば、全ての第2の金属線に通電する場合に比較して電力の節約になる。
【0051】
それを実現するのが図7に示した構成であり、図中、今まで説明してきたのと同一の構成要素には同一番号を付してあるが簡単に説明すると、24は防草シート、26は第1の金属線、27は第2の金属線、30はこの第2の金属線27の各々に通電するために設けられた電極、31は第2の金属線27のうち、農作業支援用自律走行ロボット20の走行方向に位置する金属線に通電する制御を行う通電制御装置、32は電源、33は農作業支援用自律走行ロボット20からの信号を受け、農作業支援用自律走行ロボット20の現在位置を通電制御装置31に通知する、ロボット位置信号受信装置である。
【0052】
このうち33のロボット位置信号受信装置は、第2の金属線27のそれぞれが単線の場合、農作業支援用自律走行ロボット20による第2の金属線27の検出信号をこのロボット位置信号受信装置で受け、本数をカウントすることで、農作業支援用自律走行ロボット20の現在位置を特定する。また、前記図5、図6で説明したように第2の金属線27が複数の金属線(金属線群)で構成され、制御信号を形成して位置が特定できる場合、その信号を受けて同じく農作業支援用自律走行ロボット20の現在位置を特定する。そして通電制御装置31は、この農作業支援用自律走行ロボット20の現在位置をもとに、通電する第2の金属線27を特定するわけである。
【0053】
なお、以上の説明では、第1の金属線26、第2の金属線27または金属線群を構成する各線は、いずれも単線の場合を想定して説明してきたが、複数本の線を微小間隔で複数並べて織り込むことで、流れる誘導電流を増やして金属検知センサ10、11の感度を向上させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、金属片を埋設するような手間を要する作業をせずに簡単、安価な構成で感度の高い、農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置を提供できるから、農作業の省力化を低価格で実現することができる。
【符号の説明】
【0055】
10、11 金属検知センサ
101、111 上側コイル
102、112 下側コイル
103、113 可変抵抗
104、114 交流電源
105、115 増幅回路
106、116 コイル体
12、13 振幅又は位相検出回路
14 左右出力比較回路
15 制御装置
16 演算部
17 記憶部
18 走行装置制御装置
19 走行装置
20 農作業支援用自律走行ロボット
21 本体部
22 農作物類載置部
23 移動手段(走行装置)
231 車輪
24 防草シート
25 地面
26 第1の金属線
27 第2の金属線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段と、金属体を検知する金属検知センサと、該金属検知センサにより検知した金属体に対する位置を算出し、前記走行手段を制御して進行方向を制御する制御装置とを備えた農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識に用いられ、前記金属体として、幅方向中央部の前記農作業支援用自律走行ロボット走行方向に金属線を織り込んだことを特徴とする走行経路認識に用いられる防草シート。
【請求項2】
走行手段と、予め定められた経路に沿って設けられた金属体を検知する金属検知センサとを有し、該金属検知センサ出力により前記金属体に対する位置を算出し、前記走行手段を制御して進行方向を制御する制御装置を備えた農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置おいて、
前記金属検知センサは交流電流を流すコイル体を前記自律走行ロボット表面に有し、前記金属体は、前記経路に沿って敷設された防草シートの幅方向中央部に、前記自律走行ロボット走行方向へ織り込まれた第1の金属線であることを特徴とする農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置。
【請求項3】
前記防草シートは前記第1の金属線と直交する方向に一定間隔毎に織り込まれた第2の金属線を有し、前記制御装置は前記金属検知センサによる前記第2の金属線の検知信号により、前記自律走行ロボットの現在位置を算出することを特徴とする請求項2に記載した農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置。
【請求項4】
前記第2の金属線のそれぞれは所定間隔毎に配された複数の金属線からなる金属線群で構成され、該金属線群を構成する各金属線は、それぞれの有無が「1」、「0」に対応されて前記自律走行ロボットにおける制御信号を形成していることを特徴とする請求項3に記載した農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置。
【請求項5】
前記第2の金属線における防草シート端部、及び前記第1の金属線の端部の両方、または前記第2の金属線のみに、通電制御装置を介して電源に接続された通電用電極を設けたことを特徴とする請求項3または4に記載した農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置。
【請求項6】
前記通電制御装置は前記自律走行ロボットの現在位置信号を受け、前記自律走行ロボットの走行方向に位置する次の第2の金属線に通電する制御を行うことを特徴とする請求項5に記載した農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置。
【請求項7】
前記コイル体のそれぞれは、ブリッジ回路を形成する2つのコイルで構成されていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載した農作業支援用自律走行ロボットにおける走行経路認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−161980(P2010−161980A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7712(P2009−7712)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】