説明

農作業機の通電通知手段

【課題】トラクタの後方で、クイックヒッチで連結される農作業機のトラクタ側からの電気が農作業機側に通電されていることを通知するための通電通知手段を設けた農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機30は、トラクタ1にクイックヒッチ20を介して連結され、クイックヒッチ20にはトラクタ1側から農作業機30側へ電気を供給するためのトラクタ側電源カプラ100を設け、農作業機30には農作業機側電源カプラ101を設け、トラクタ側電源カプラ100と農作業機側電源カプラ101が正常に連結されたことにより、電気がトラクタ1側から、農作業機30側へ確実に通電されていることを通知するための通電通知手段105を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体であるトラクタの後部に装着され、トラクタ側の電源を農作業機に供給して農作業機のアクチュエータを作動させることによって作業を行う農作業機に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開平08−266106号公報 従来、例えばトラクタと作業機をヒッチフレーム(クイックヒッチ)にて着脱し、ヒッチフレームに設けられた雄側カプラと、農作業機に設けられた雌側カプラの電源用カプラをワンタッチで接続する農作業機が知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、雄側カプラと雌側カプラが確実に接続されたかどうかの確認はトラクタに乗った作業者からは見え難く、リモコンの操作ボタンを操作して初めて電気が農作業機に通電しているかどうかを判断していた。
【0004】
つまり、トラクタ本体に装着される作業機を作業の種類によって付け替えて使用する場合、ヒッチフレームを用いてワンタッチで付け替え作業ができると共に、電源用カプラを備えた作業機を装着する場合は、電源用雄側カプラと、雌側カプラもワンタッチで接続できるメリットがあるが、確実に電源用カプラが接続できたか確認しにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、トラクタの後方にクイックヒッチを介して連結されて、トラクタのPTO軸にジョイント等の回転伝達手段を介して回転を伝達して作業を行う農作業機において、クイックヒッチで連結する際に、ワンタッチで連結されるトラクタ側電源カプラと作業機側電源カプラを備え、前記電源カプラが連結され、電気がトラクタ側から農作業機側へ通電されていることを通知する通電通知手段を設けたものである。
【0006】
請求項2に記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、通電通知手段は、クイックヒッチの後方に連結された農作業機に設けたものである。
【0007】
請求項3に記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、通電通知手段は、作業者の近くに配置可能な操作用無線リモコンに設けたものである。
【0008】
請求項4に記載の農作業機は、請求項1ないし3記載の農作業機において、通電通知手段は、音又は光にて電気がトラクタ側から作業機側に通じていることを通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、ワンタッチで連結されるトラクタ側電源カプラと農作業機側電源カプラを備え、電源カプラが連結され、電気がトラクタ側から農作業機側へ通電されていることを通知する通電通知手段を設けたことにより、通電状態を確認することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、通電通知手段は、クイックヒッチの後方に連結された農作業機に設けたことにより、簡単な構成で通電状態を確認することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、通電通知手段は、作業者の近くに配置可能な操作用無線リモコンに設けたことにより、作業者の手元で通電状態を確認することができる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、通電通知手段は、音又は光にて電気がトラクタ側から農作業機側に通じていることを通知することにより、安価で正確な通電状態の通知ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
【図2】同上農作業機の正面図である。
【図3】同上農作業機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1及び図2に示されるように、30は農作業機で、この農作業機30は、走行車であるトラクタ1に連結された状態でトラクタの走行により圃場を耕耘する農作業機である。
【0016】
トラクタ1に農作業機30を装着する場合、トラクタ1の後部の3点リンクに取り付けられたクイックヒッチ20にて農作業機30をワンタッチで装着する。
【0017】
図2に示される折り畳み式の農作業機30は、トラクタ1の後部に連結される本体部(中央作業部)40と、この本体部40の左右両側に回動支点45を中心に上下回動可能に設けられ略180度の回動により作業状態および非作業状態に切り換えられる左右一対の延長作業部41とを備えている。
【0018】
本体部40は、トラクタ1の後部の3点リンク(作業機昇降装置)に連結される機体32を備えている。機体32にはトラクタ1側からの動力を入力する入力軸31が回転可能に設けられている。入力軸31には、トラクタのPTO軸がユニバーサルジョイントを介して連結される。また、入力軸31からの動力に基づいて所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体34が回転可能に設けられている。耕耘体34は、左右方向の回転軸を有し、回転軸には複数の耕耘爪が放射状に突設されている。
【0019】
さらに、機体32には、耕耘体34の上方部を覆う湾曲板状のカバー体33が設けられている。そして、カバー体33の後端部には、耕耘体34の後方で整地作業をする略板状の整地体35がこの整地体35の上端側の左右方向の回動中心軸線を中心として上下方向に回動可能に設けられている。整地体35は、第1整地板(均平板)および第2整地板(レーキ)等にて構成されている。
【0020】
延長作業部41は、中央の本体部40の機体32の側端部に回動支点45を介して上下回動可能に設けられた延長機体43を備えている。延長機体43には、本体部40の耕耘体側からの動力に基づいて所定方向に回転しながら耕耘作業をする延長耕耘体(図示せず)が回転可能に設けられている。延長耕耘体は、左右方向の回転軸を有し、回転軸には複数の耕耘爪が放射状に突設されている。
【0021】
そして、農作業機30は、作業状態に応じて、本体部40と左右両方の延長作業部41とにて作業をする状態と、本体部40と左右いずれか一方の延長作業部41とにて作業をする状態と、本体部40のみで作業する状態とに切換え可能となっている。また、各延長作業部41の延長整地体の第2延長整地板の外端には、略180度の回動により作業状態および非作業状態になる追加整地部である追加整地板部(サイドレーキ)54が回動可能に設けられている。
【0022】
延長作業部41は、アクチュエータである電動油圧シリンダ50の伸縮によって、作業状態と非作業状態に略180度回動する。
【0023】
また、サイドレーキ54もアクチュエータである電動モータ(図示せず)で構成されたサイドレーキ開閉装置51の回動によって作業状態と非作業状態に略180度回動する。
【0024】
つまり、農作業機30のアクチュエータである電動油圧シリンダ50および電動モータで構成されたサイドレーキ開閉装置51を駆動させるためには電気が必要であり、通常その電気はトラクタ1側から農作業機30側に供給される。
【0025】
図1に表す実施例においてトラクタ側ハーネス110の先端にはトラクタ側電源カプラ100が設けられ、クイックヒッチ20に固定されている。
【0026】
そして、作業機側ハーネス111の先端には作業機側電源カプラ101が設けられ、マスト60近傍に固定されている。
【0027】
したがって、トラクタ1に農作業機30を装着する場合、トラクタ1の後部の3点リンクに取り付けられたクイックヒッチ20にて農作業機30をワンタッチで装着する。すると、トラクタ側電源カプラ100と作業機側カプラ101もワンタッチで接続される。
【0028】
すると、トラクタ側電源カプラ100と作業機側カプラ101が正常に接続された場合、通電通知手段105が点灯または点滅、あるいは音を発して作業者に正常に電源カプラが接続されたことを通知する。
【0029】
次に、トラクタ1と農作業機30の作用等を説明する。
【0030】
トラクタ1の後部の3点リンクにクイックヒッチ20を取り付け、農作業機30をクイックヒッチ20で連結するとワンタッチでトラクタ1と農作業機30が連結される。するとクイックヒッチ20に設けられたトラクタ側電源カプラ100とマスト60近傍に設けられた農作業機側電源カプラ101もワンタッチで接続される。
【0031】
農作業機30は、水田等の圃場においてトラクタ1の前進走行により農作業機30を進行方向前方に移動させると、耕耘体34にて耕耘作業が行われ、この耕耘体34の後方で、整地体35にて整地作業が行われる。
【0032】
ここで、例えば農作業機30の延長作業部41を展開状態から折り畳み状態にするため電動油圧シリンダ50を作動させ、回動支点45を回動中心として延長作業部41を本体部40の上方に略180度回動させる。
【0033】
つまり、左右両側の延長作業部41を折り畳むことで、圃場までトラクタを移動させるとき、または狭い倉庫から農作業機30を外に出すときに農作業機30の幅をコンパクトにできる。
【0034】
さらに、サイドレーキ開閉装置51の電動モータの一方側への回動により、アーム52とワイヤ53を回動させることでサイドレーキ54を外側に開くことにより、より広い幅で圃場表面を平らにすることができる。
【0035】
また、圃場の隅部の作業等ではサイドレーキ開閉装置51の電動モータを他方側へ回動させることによりサイドレーキ54を内側へ折り畳むことによりコンクリート畦などにぶつけてサイドレーキ54が壊れることを防止することができる。
【0036】
つまり、農作業機30の延長作業部41を回動させる電動油圧シリンダ50や、サイドレーキ54を回動させるサイドレーキ開閉装置51の電動モータ等のアクチュエータ251を駆動させるためには電気が必要であり通常その電気はトラクタ1側から農作業機30側に供給される。
【0037】
そして、図1に示す実施例によると、トラクタ1の後部のクイックヒッチ20で農作業機30を連結すると、同時にトラクタ側電源カプラ100と農作業機側電源カプラ101も自動的に連結される。
【0038】
つまり、図1および図3に示すようにトラクタ1側のバッテリー2に接続された外部電源ハーネス3に、トラクタ側ハーネス110の一端を接続し、トラクタ側ハーネス110の他端にトラクタ側電源カプラ100を設け、農作業機30側では農作業機側電源カプラ101に農作業機側ハーネス111の一端側が接続され、他端側には制御部250、無線送受信部252、アクチュエータ251等が接続される。
【0039】
さらに、図1および図3に示すように農作業機30側に通電通知手段105を設けることで、トラクタ1に農作業機30を接続すると同時にトラクタ側電源カプラ100と農作業機側電源カプラ101が正常に接続された場合通電通知手段105により通電を通知する。
【0040】
そして、通電通知手段105は農作業機30側の見やすい場所に設置されているので、例えばランプを点灯することで通電を通知するので、トラクタ1側にいる作業者から目視できる。
【0041】
また、通電通知手段105はランプを点灯することで通電を通知する以外にも、ランプを点滅させるなど光で通知する方法、またはブザー等の音で通知する方法を適用することも可能である。
【0042】
そして、光で通知する場合も、音で通知する場合も、通電後一定の時間(例えば10秒間)通知すれば作業者が確認できる。
【0043】
また、図1および図3に示すように通電通知手段201を無線リモコン200側に設けることも可能である。この場合は無線送受信部252に通電があったことを操作用無線リモコン200に送信することで通電通知手段201にて通知がされる。
【0044】
操作用無線リモコン200側に通電通知手段201を設けた場合、作業者のすぐそばに操作用無線リモコン200があるのでより確認しやすい。
【符号の説明】
【0045】
1 トラクタ
20 クイックヒッチ
30 農作業機
100 トラクタ側電源カプラ
101 農作業機側電源カプラ
105、201 通電通知手段
200 操作用無線リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後方にクイックヒッチを介して連結されて、トラクタのPTO軸にジョイント等の回転伝達手段を介して回転を伝達して作業を行う農作業機において、クイックヒッチで連結する際に、ワンタッチで連結されるトラクタ側電源カプラと作業機側電源カプラを備え、前記電源カプラが連結され、電気がトラクタ側から農作業機側へ通電されていることを通知する通電通知手段を設けたことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記通電通知手段は、前記クイックヒッチの後方に連結された前記農作業機に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記通電通知手段は、作業者の近くに配置可能な操作用無線リモコンに設けられたことを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項4】
前記通電通知手段は、音又は光にて電気がトラクタ側から作業機側に通じていることを通知することを特徴とする請求項1ないし3に記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−157340(P2012−157340A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21298(P2011−21298)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】