農作業機
【課題】付着土の悪影響によって一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じることを抑制できる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、回転軸16を有する中央作業部2と、延長回転軸26を有する左右の延長作業部3とを備える。回転軸16には一方側動力伝達体20を設け、延長回転軸26には他方側動力伝達体30を設ける。一方側動力伝達体20は、回転中心を中心として放射状に位置する複数の嵌合部を有する。他方側動力伝達体30は、回転中心を中心として放射状に位置して嵌合部と嵌脱可能に嵌合する複数の嵌合溝部を有する。各嵌合溝部は、回転中心側から外周端側に向って徐々に嵌合部から離れるように傾斜する傾斜溝底面を有する。
【解決手段】農作業機1は、回転軸16を有する中央作業部2と、延長回転軸26を有する左右の延長作業部3とを備える。回転軸16には一方側動力伝達体20を設け、延長回転軸26には他方側動力伝達体30を設ける。一方側動力伝達体20は、回転中心を中心として放射状に位置する複数の嵌合部を有する。他方側動力伝達体30は、回転中心を中心として放射状に位置して嵌合部と嵌脱可能に嵌合する複数の嵌合溝部を有する。各嵌合溝部は、回転中心側から外周端側に向って徐々に嵌合部から離れるように傾斜する傾斜溝底面を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着土の悪影響によって一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じることを抑制できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば回転軸を有する作業機本体と、延長回転軸を有し作業機本体に回動可能に設けられ一方向への回動により折畳非作業状態になり他方向への回動により展開作業状態になる左右の延長作業体と、回転軸の外端部に設けられ突出片を有する一方側動力伝達体と、延長回転軸の内端部に設けられ突出片と密に嵌合する嵌合溝を有する他方側動力伝達体とを備えた折畳式の農作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−33018号公報(図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の農作業機では、突出片や嵌合溝に付着した泥、砂利等の付着土の悪影響を受け、一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、付着土の悪影響によって一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じることを抑制できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、回転軸を有する作業機本体と、被伝動回転軸を有し、前記作業機本体に回動可能に設けられた回動作業体と、前記回転軸および前記被伝動回転軸のいずれか一方に設けられた一方側動力伝達体と、前記回転軸および前記被伝動回転軸のいずれか他方に設けられ、前記一方側動力伝達体と嵌脱可能に嵌合する他方側動力伝達体とを備え、前記一方側動力伝達体は、複数の嵌合部を有し、前記他方側動力伝達体は、前記嵌合部と嵌脱可能に嵌合する複数の嵌合溝部を有し、前記嵌合溝部は、前記他方側動力伝達体の回転中心側から外周端側に向って徐々に前記嵌合部から離れるように傾斜する傾斜溝底面を有するものである。
【0006】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、嵌合溝部は、嵌合部の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面を有するものである。
【0007】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、他方側動力伝達体は、一方側動力伝達体の嵌合部を嵌合溝部内に向けて案内する案内部を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、他方側動力伝達体の嵌合溝部が他方側動力伝達体の回転中心側から外周端側に向って徐々に嵌合部から離れるように傾斜する傾斜溝底面を有するため、嵌合部と嵌合溝部との間に付着土が詰まりにくく、付着土の悪影響によって一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じることを抑制できる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、他方側動力伝達体の嵌合溝部が嵌合部の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面を有するため、がたつきが少なく、騒音防止を図ることができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、他方側動力伝達体が一方側動力伝達体の嵌合部を嵌合溝部内に向けて案内する案内部を有するため、嵌合部と嵌合溝部との嵌合をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1において、1は折畳式の農作業機で、この農作業機1は、例えば図示しない走行車であるトラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降支持装置)に昇降可能に連結して使用する3分割折畳式の代掻装置である。
【0013】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部に連結される左右方向長手状の1つの作業機本体である中央作業部2と、この中央作業部2の左右方向両端部に略前後方向の回動軸(回動支点)4を中心として上下方向に回動可能に設けられ回動軸4を中心とする一方向(折畳方向)への略180度の回動により折畳非作業状態になり回動軸4を中心とする他方向(展開方向)への略180度の回動により展開作業状態になる左右の回動作業体としての延長作業体である延長作業部3とを備えている。左右の延長作業部3は、左右対称構造でそれぞれ同じ長さのもので、それぞれが左右方向長手状に形成されている。
【0014】
ここで、中央作業部2は、トラクタの後部の3点リンク部に連結される左右方向長手状の機体11と、機体11に回転可能に設けられ耕耘作業をする耕耘体(ロータリ)12と、機体11の後部に上下回動可能に設けられ耕耘体12の後方で整地作業をする整地体(図示せず)とを有している。
【0015】
機体11は、左右方向に細長い円形パイプ状のフレーム部を有している。フレーム部の左右方向略中央にはギアボックス部が設けられ、このギアボックス部に入力軸が回転可能に設けられている。入力軸は、トラクタTのPTO軸にユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続される。また、フレーム部の両端部には伝動ケース部15およびブラケット部が設けられ、これら伝動ケース部15およびブラケット部に耕耘体12が回転可能に架設され、この耕耘体12は入力軸側からの動力によって回転する。
【0016】
耕耘体12は、入力軸側からの動力をシャフトおよびチェーン等にて構成された伝動手段から受けて回転する左右方向に延びる回転軸16と、この回転軸16にこの回転軸16の軸方向に間隔をおいて放射状に突設された複数の耕耘爪17とを有している。耕耘体12の回転軸16の軸方向両端部、つまり伝動ケース部15より外側方に突出する端部およびブラケット部より外側方に突出する端部の各々には、一方側動力伝達体20が設けられている。
【0017】
整地体は、機体11のカバー部14にゴム板等の弾性板を介して取り付けられた第1整地板(均平板)と、この第1整地板に左右方向の軸を介して回動可能に取り付けられた第2整地板(レーキ)とを有している。
【0018】
各延長作業部3は、中央作業部2の機体11の端部に回動軸4を介して略180度回動可能に取り付けられた延長機体21と、延長機体21に回転可能に設けられ中央作業部2の耕耘体12の作業幅を延長して耕耘作業をする延長耕耘体(延長ロータリ)22と、延長機体21の後部に上下回動可能に設けられ延長耕耘体22の後方で中央作業部2の整地体の作業幅を延長して整地作業をする延長整地体(図示せず)とを有している。
【0019】
延長耕耘体22は、延長作業部3の展開作業状態時に耕耘体12の回転軸16と同軸上に位置する左右方向に延びる被伝動回転軸である延長回転軸26と、この延長回転軸26にこの延長回転軸26の軸方向に間隔をおいて放射状に突設された複数の耕耘爪27とを有している。延長耕耘体22の延長回転軸26の内端部、つまり内側のブラケット部28より内側方に突出する端部には、対応する一方側動力伝達体と嵌脱可能に嵌合する他方側動力伝達体30が設けられている。
【0020】
延長整地体は、延長機体21のカバー部24にゴム板等の弾性板を介して取り付けられた第1延長整地板(均平板)と、この第1延長整地板に左右方向の軸を介して回動可能に取り付けられた第2延長整地板(レーキ)とを有している。
【0021】
ここで、中央作業部2の一方側動力伝達体20は、図2ないし図4、および図8に示すように、この一方側動力伝達体20の回転中心(回転軸16の軸芯)を中心として放射状に位置する複数の嵌合部31、すなわち例えば一方側動力伝達体20の周方向に60度間隔で位置する突出板状の6つの嵌合部31を有している。嵌合部31は、耕耘体12の回転軸16の端部に固着された略円板状の本体部32に突設され、嵌合部31の先端部両側には傾斜面33が形成され、嵌合部31の先端側が山形状になっている。
【0022】
延長作業部3の他方側動力伝達体30は、図5ないし図8に示すように、この他方側動力伝達体30の回転中心(延長回転軸26の軸芯)を中心として放射状に位置して嵌合部と嵌脱可能に嵌合する複数の嵌合溝部41、すなわち例えば他方側動力伝達体30の周方向に60度間隔で位置する凹溝状の6つの嵌合溝部41を有している。嵌合溝部41は、延長耕耘体22の延長回転軸26の内端部に固着された略円筒状の本体部42に凹設されている。
【0023】
図8から明らかなように、嵌合溝部41は、他方側動力伝達体30の回転中心側から外周端側に向って徐々に嵌合部31の先端から離れるように傾斜する傾斜溝底面43と、嵌合部31の周方向の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面44とを有している。そして、延長作業部3の展開作業状態時には、嵌合部31の先端と嵌合溝部41の傾斜溝底面43とが点状に接触し、嵌合部31と嵌合溝部41との間には径方向に貫通状の空間45が形成される。なお、延長回転軸26の軸芯に対する傾斜溝底面43の傾斜角度αは、例えば約45度である(図7参照)。
【0024】
また、他方側動力伝達体30は、一方側動力伝達体20の突出状の嵌合部31を嵌合溝部41内に向けて案内する案内部46を有している。各案内部46は、嵌合部31の傾斜面33と面状に接触してこの傾斜面33を嵌合溝部41内に案内するテーパ状の案内傾斜面47にて構成されている。
【0025】
なお、農作業機1は、中央作業部2のみで作業をする状態(作業幅=B)と、中央作業部2と左右いずれか一方の延長作業部3とで作業をする状態(作業幅=A+B)と、中央作業部2と左右両方の延長作業部3とで作業をする状態(作業幅=2A+B)とに選択的に切換え可能となっている。また、農作業機1は、図示しないが、延長作業部3を回動させるアクチュエータ等の駆動手段、展開作業状態時に延長作業部3を中央作業部2に対してロックする展開ロック手段、折畳非作業時に延長作業部3を中央作業部に対してロックする折畳ロック手段等を備えている。
【0026】
次に、上記農作業機1の作用等を説明する。
【0027】
例えば最大の作業幅で代掻作業をする場合、左右の延長作業部3を展開作業状態に設定する。すなわち中央作業部2に対して左右の延長作業部3を回動軸4を中心として展開方向へ略180度回動させると、左右の延長作業部3は、中央作業部2の左右両側方に位置してこの中央作業部2と左右方向に沿って一直線状に並んだ状態になる。
【0028】
この延長作業部3の回動時に、一方側動力伝達体20の嵌合部31が他方側動力伝達体30の嵌合溝部41内に案内部46にて案内されつつ入り込み、嵌合部31と嵌合溝部41とが互いに嵌合する。この嵌合の際、嵌合部31や嵌合溝部41に付着した泥等の付着土は、傾斜溝底面43に沿って外周側に押し出される。
【0029】
そして、この状態でトラクタの走行により農作業機1を進行方向前方に移動させると、中央作業部2の耕耘体12が入力軸側からの動力で回転するとともに、左右の延長作業部3の延長耕耘体22が耕耘体12側からの動力を互いに嵌合した動力伝達体20,30から受けて回転し、これら耕耘体12および延長耕耘体22にて耕耘作業が行なわれる。
【0030】
また、中央作業部2のみで代掻作業をする場合には、中央作業部2に対して左右の延長作業部3を回動軸4を中心として折畳方向へ略180度回動させ、一方側動力伝達体20の嵌合部31と他方側動力伝達体30の嵌合溝部41との嵌合を解除する。そして、この状態でトラクタの走行により農作業機1を進行方向前方に移動させると、中央作業部2の耕耘体12にて耕耘作業が行なわれ、中央作業部2の整地体にて整地作業が行なわれる。
【0031】
なお、中央作業部2と左右いずれか一方の延長作業部3とで代掻作業をする場合は、左右の延長作業部3のいずれか一方を展開作業状態に設定しかつ左右の延長作業部3のいずれか他方を折畳非作業状態に設定すればよい。
【0032】
そして、上記農作業機1によれば、嵌合溝部41が回転中心側から外周端側に向って徐々に嵌合部31から離れるように傾斜する傾斜溝底面43を有し、延長作業部3の展開作業状態時には嵌合部31の先端と嵌合溝部41の傾斜溝底面43とが点状に接触して嵌合部31と嵌合溝部41との間に空間45が形成されるため、嵌合部31と嵌合溝部41との間に付着土が詰まりにくく、付着土の悪影響によって一方側動力伝達体20と他方側動力伝達体30との嵌合に不具合が生じることを抑制でき、動力伝達を適切に行うことができる。
【0033】
また、嵌合溝部41が嵌合部31の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面44,44を有するため、一方側動力伝達体20と他方側動力伝達体30との間でのがたつきが少なく、騒音防止を図ることができる。
【0034】
さらに、他方側動力伝達体30が一方側動力伝達体20の嵌合部31を嵌合溝部41内に向けて案内する案内部46を有するため、嵌合部31と嵌合溝部41との嵌合をスムーズに行うことができる。
【0035】
なお、図示しないが、延長回転軸26に一方側動力伝達体20を設け、回転軸16に他方側動力伝達体30を設ける構成でもよい。
【0036】
また、3分割折畳式の農作業機には限定されず、例えば左右いずれか一方にのみ延長作業体を設ける構成でもよく、また左右に延長作業体の長さが互いに異なる構成等でもよい。
【0037】
さらに、農作業機は、トラクタに連結される作業機本体と、この作業機本体に水平方向に回動可能に設けられロータリおよび畦塗りディスクで畦塗り作業をする回動作業体とを備える畦塗り装置等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の農作業機の一実施の形態を示す概略部分正面図である。
【図2】同上農作業機の動力伝達体の嵌合状態を示す図である。
【図3】同上農作業機の一方側動力伝達体の正面図である。
【図4】同上農作業機の一方側動力伝達体の側面図である。
【図5】同上農作業機の他方側動力伝達体の正面図である。
【図6】同上農作業機の他方側動力伝達体の側面図である。
【図7】図5のA−A断面図である。
【図8】同上動力伝達体の嵌合状態の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 農作業機
2 作業機本体である中央作業部
3 回動作業体である延長作業部
16 回転軸
20 一方側動力伝達体
26 被伝動回転軸である延長回転軸
30 他方側動力伝達体
31 嵌合部
41 嵌合溝部
43 傾斜溝底面
44 溝側面
46 案内部
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着土の悪影響によって一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じることを抑制できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば回転軸を有する作業機本体と、延長回転軸を有し作業機本体に回動可能に設けられ一方向への回動により折畳非作業状態になり他方向への回動により展開作業状態になる左右の延長作業体と、回転軸の外端部に設けられ突出片を有する一方側動力伝達体と、延長回転軸の内端部に設けられ突出片と密に嵌合する嵌合溝を有する他方側動力伝達体とを備えた折畳式の農作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−33018号公報(図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の農作業機では、突出片や嵌合溝に付着した泥、砂利等の付着土の悪影響を受け、一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、付着土の悪影響によって一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じることを抑制できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、回転軸を有する作業機本体と、被伝動回転軸を有し、前記作業機本体に回動可能に設けられた回動作業体と、前記回転軸および前記被伝動回転軸のいずれか一方に設けられた一方側動力伝達体と、前記回転軸および前記被伝動回転軸のいずれか他方に設けられ、前記一方側動力伝達体と嵌脱可能に嵌合する他方側動力伝達体とを備え、前記一方側動力伝達体は、複数の嵌合部を有し、前記他方側動力伝達体は、前記嵌合部と嵌脱可能に嵌合する複数の嵌合溝部を有し、前記嵌合溝部は、前記他方側動力伝達体の回転中心側から外周端側に向って徐々に前記嵌合部から離れるように傾斜する傾斜溝底面を有するものである。
【0006】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、嵌合溝部は、嵌合部の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面を有するものである。
【0007】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、他方側動力伝達体は、一方側動力伝達体の嵌合部を嵌合溝部内に向けて案内する案内部を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、他方側動力伝達体の嵌合溝部が他方側動力伝達体の回転中心側から外周端側に向って徐々に嵌合部から離れるように傾斜する傾斜溝底面を有するため、嵌合部と嵌合溝部との間に付着土が詰まりにくく、付着土の悪影響によって一方側動力伝達体と他方側動力伝達体との嵌合に不具合が生じることを抑制できる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、他方側動力伝達体の嵌合溝部が嵌合部の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面を有するため、がたつきが少なく、騒音防止を図ることができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、他方側動力伝達体が一方側動力伝達体の嵌合部を嵌合溝部内に向けて案内する案内部を有するため、嵌合部と嵌合溝部との嵌合をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1において、1は折畳式の農作業機で、この農作業機1は、例えば図示しない走行車であるトラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降支持装置)に昇降可能に連結して使用する3分割折畳式の代掻装置である。
【0013】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部に連結される左右方向長手状の1つの作業機本体である中央作業部2と、この中央作業部2の左右方向両端部に略前後方向の回動軸(回動支点)4を中心として上下方向に回動可能に設けられ回動軸4を中心とする一方向(折畳方向)への略180度の回動により折畳非作業状態になり回動軸4を中心とする他方向(展開方向)への略180度の回動により展開作業状態になる左右の回動作業体としての延長作業体である延長作業部3とを備えている。左右の延長作業部3は、左右対称構造でそれぞれ同じ長さのもので、それぞれが左右方向長手状に形成されている。
【0014】
ここで、中央作業部2は、トラクタの後部の3点リンク部に連結される左右方向長手状の機体11と、機体11に回転可能に設けられ耕耘作業をする耕耘体(ロータリ)12と、機体11の後部に上下回動可能に設けられ耕耘体12の後方で整地作業をする整地体(図示せず)とを有している。
【0015】
機体11は、左右方向に細長い円形パイプ状のフレーム部を有している。フレーム部の左右方向略中央にはギアボックス部が設けられ、このギアボックス部に入力軸が回転可能に設けられている。入力軸は、トラクタTのPTO軸にユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続される。また、フレーム部の両端部には伝動ケース部15およびブラケット部が設けられ、これら伝動ケース部15およびブラケット部に耕耘体12が回転可能に架設され、この耕耘体12は入力軸側からの動力によって回転する。
【0016】
耕耘体12は、入力軸側からの動力をシャフトおよびチェーン等にて構成された伝動手段から受けて回転する左右方向に延びる回転軸16と、この回転軸16にこの回転軸16の軸方向に間隔をおいて放射状に突設された複数の耕耘爪17とを有している。耕耘体12の回転軸16の軸方向両端部、つまり伝動ケース部15より外側方に突出する端部およびブラケット部より外側方に突出する端部の各々には、一方側動力伝達体20が設けられている。
【0017】
整地体は、機体11のカバー部14にゴム板等の弾性板を介して取り付けられた第1整地板(均平板)と、この第1整地板に左右方向の軸を介して回動可能に取り付けられた第2整地板(レーキ)とを有している。
【0018】
各延長作業部3は、中央作業部2の機体11の端部に回動軸4を介して略180度回動可能に取り付けられた延長機体21と、延長機体21に回転可能に設けられ中央作業部2の耕耘体12の作業幅を延長して耕耘作業をする延長耕耘体(延長ロータリ)22と、延長機体21の後部に上下回動可能に設けられ延長耕耘体22の後方で中央作業部2の整地体の作業幅を延長して整地作業をする延長整地体(図示せず)とを有している。
【0019】
延長耕耘体22は、延長作業部3の展開作業状態時に耕耘体12の回転軸16と同軸上に位置する左右方向に延びる被伝動回転軸である延長回転軸26と、この延長回転軸26にこの延長回転軸26の軸方向に間隔をおいて放射状に突設された複数の耕耘爪27とを有している。延長耕耘体22の延長回転軸26の内端部、つまり内側のブラケット部28より内側方に突出する端部には、対応する一方側動力伝達体と嵌脱可能に嵌合する他方側動力伝達体30が設けられている。
【0020】
延長整地体は、延長機体21のカバー部24にゴム板等の弾性板を介して取り付けられた第1延長整地板(均平板)と、この第1延長整地板に左右方向の軸を介して回動可能に取り付けられた第2延長整地板(レーキ)とを有している。
【0021】
ここで、中央作業部2の一方側動力伝達体20は、図2ないし図4、および図8に示すように、この一方側動力伝達体20の回転中心(回転軸16の軸芯)を中心として放射状に位置する複数の嵌合部31、すなわち例えば一方側動力伝達体20の周方向に60度間隔で位置する突出板状の6つの嵌合部31を有している。嵌合部31は、耕耘体12の回転軸16の端部に固着された略円板状の本体部32に突設され、嵌合部31の先端部両側には傾斜面33が形成され、嵌合部31の先端側が山形状になっている。
【0022】
延長作業部3の他方側動力伝達体30は、図5ないし図8に示すように、この他方側動力伝達体30の回転中心(延長回転軸26の軸芯)を中心として放射状に位置して嵌合部と嵌脱可能に嵌合する複数の嵌合溝部41、すなわち例えば他方側動力伝達体30の周方向に60度間隔で位置する凹溝状の6つの嵌合溝部41を有している。嵌合溝部41は、延長耕耘体22の延長回転軸26の内端部に固着された略円筒状の本体部42に凹設されている。
【0023】
図8から明らかなように、嵌合溝部41は、他方側動力伝達体30の回転中心側から外周端側に向って徐々に嵌合部31の先端から離れるように傾斜する傾斜溝底面43と、嵌合部31の周方向の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面44とを有している。そして、延長作業部3の展開作業状態時には、嵌合部31の先端と嵌合溝部41の傾斜溝底面43とが点状に接触し、嵌合部31と嵌合溝部41との間には径方向に貫通状の空間45が形成される。なお、延長回転軸26の軸芯に対する傾斜溝底面43の傾斜角度αは、例えば約45度である(図7参照)。
【0024】
また、他方側動力伝達体30は、一方側動力伝達体20の突出状の嵌合部31を嵌合溝部41内に向けて案内する案内部46を有している。各案内部46は、嵌合部31の傾斜面33と面状に接触してこの傾斜面33を嵌合溝部41内に案内するテーパ状の案内傾斜面47にて構成されている。
【0025】
なお、農作業機1は、中央作業部2のみで作業をする状態(作業幅=B)と、中央作業部2と左右いずれか一方の延長作業部3とで作業をする状態(作業幅=A+B)と、中央作業部2と左右両方の延長作業部3とで作業をする状態(作業幅=2A+B)とに選択的に切換え可能となっている。また、農作業機1は、図示しないが、延長作業部3を回動させるアクチュエータ等の駆動手段、展開作業状態時に延長作業部3を中央作業部2に対してロックする展開ロック手段、折畳非作業時に延長作業部3を中央作業部に対してロックする折畳ロック手段等を備えている。
【0026】
次に、上記農作業機1の作用等を説明する。
【0027】
例えば最大の作業幅で代掻作業をする場合、左右の延長作業部3を展開作業状態に設定する。すなわち中央作業部2に対して左右の延長作業部3を回動軸4を中心として展開方向へ略180度回動させると、左右の延長作業部3は、中央作業部2の左右両側方に位置してこの中央作業部2と左右方向に沿って一直線状に並んだ状態になる。
【0028】
この延長作業部3の回動時に、一方側動力伝達体20の嵌合部31が他方側動力伝達体30の嵌合溝部41内に案内部46にて案内されつつ入り込み、嵌合部31と嵌合溝部41とが互いに嵌合する。この嵌合の際、嵌合部31や嵌合溝部41に付着した泥等の付着土は、傾斜溝底面43に沿って外周側に押し出される。
【0029】
そして、この状態でトラクタの走行により農作業機1を進行方向前方に移動させると、中央作業部2の耕耘体12が入力軸側からの動力で回転するとともに、左右の延長作業部3の延長耕耘体22が耕耘体12側からの動力を互いに嵌合した動力伝達体20,30から受けて回転し、これら耕耘体12および延長耕耘体22にて耕耘作業が行なわれる。
【0030】
また、中央作業部2のみで代掻作業をする場合には、中央作業部2に対して左右の延長作業部3を回動軸4を中心として折畳方向へ略180度回動させ、一方側動力伝達体20の嵌合部31と他方側動力伝達体30の嵌合溝部41との嵌合を解除する。そして、この状態でトラクタの走行により農作業機1を進行方向前方に移動させると、中央作業部2の耕耘体12にて耕耘作業が行なわれ、中央作業部2の整地体にて整地作業が行なわれる。
【0031】
なお、中央作業部2と左右いずれか一方の延長作業部3とで代掻作業をする場合は、左右の延長作業部3のいずれか一方を展開作業状態に設定しかつ左右の延長作業部3のいずれか他方を折畳非作業状態に設定すればよい。
【0032】
そして、上記農作業機1によれば、嵌合溝部41が回転中心側から外周端側に向って徐々に嵌合部31から離れるように傾斜する傾斜溝底面43を有し、延長作業部3の展開作業状態時には嵌合部31の先端と嵌合溝部41の傾斜溝底面43とが点状に接触して嵌合部31と嵌合溝部41との間に空間45が形成されるため、嵌合部31と嵌合溝部41との間に付着土が詰まりにくく、付着土の悪影響によって一方側動力伝達体20と他方側動力伝達体30との嵌合に不具合が生じることを抑制でき、動力伝達を適切に行うことができる。
【0033】
また、嵌合溝部41が嵌合部31の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面44,44を有するため、一方側動力伝達体20と他方側動力伝達体30との間でのがたつきが少なく、騒音防止を図ることができる。
【0034】
さらに、他方側動力伝達体30が一方側動力伝達体20の嵌合部31を嵌合溝部41内に向けて案内する案内部46を有するため、嵌合部31と嵌合溝部41との嵌合をスムーズに行うことができる。
【0035】
なお、図示しないが、延長回転軸26に一方側動力伝達体20を設け、回転軸16に他方側動力伝達体30を設ける構成でもよい。
【0036】
また、3分割折畳式の農作業機には限定されず、例えば左右いずれか一方にのみ延長作業体を設ける構成でもよく、また左右に延長作業体の長さが互いに異なる構成等でもよい。
【0037】
さらに、農作業機は、トラクタに連結される作業機本体と、この作業機本体に水平方向に回動可能に設けられロータリおよび畦塗りディスクで畦塗り作業をする回動作業体とを備える畦塗り装置等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の農作業機の一実施の形態を示す概略部分正面図である。
【図2】同上農作業機の動力伝達体の嵌合状態を示す図である。
【図3】同上農作業機の一方側動力伝達体の正面図である。
【図4】同上農作業機の一方側動力伝達体の側面図である。
【図5】同上農作業機の他方側動力伝達体の正面図である。
【図6】同上農作業機の他方側動力伝達体の側面図である。
【図7】図5のA−A断面図である。
【図8】同上動力伝達体の嵌合状態の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 農作業機
2 作業機本体である中央作業部
3 回動作業体である延長作業部
16 回転軸
20 一方側動力伝達体
26 被伝動回転軸である延長回転軸
30 他方側動力伝達体
31 嵌合部
41 嵌合溝部
43 傾斜溝底面
44 溝側面
46 案内部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する作業機本体と、
被伝動回転軸を有し、前記作業機本体に回動可能に設けられた回動作業体と、
前記回転軸および前記被伝動回転軸のいずれか一方に設けられた一方側動力伝達体と、
前記回転軸および前記被伝動回転軸のいずれか他方に設けられ、前記一方側動力伝達体と嵌脱可能に嵌合する他方側動力伝達体とを備え、
前記一方側動力伝達体は、複数の嵌合部を有し、
前記他方側動力伝達体は、前記嵌合部と嵌脱可能に嵌合する複数の嵌合溝部を有し、
前記嵌合溝部は、前記他方側動力伝達体の回転中心側から外周端側に向って徐々に前記嵌合部から離れるように傾斜する傾斜溝底面を有する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
嵌合溝部は、嵌合部の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面を有する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
他方側動力伝達体は、一方側動力伝達体の嵌合部を嵌合溝部内に向けて案内する案内部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項1】
回転軸を有する作業機本体と、
被伝動回転軸を有し、前記作業機本体に回動可能に設けられた回動作業体と、
前記回転軸および前記被伝動回転軸のいずれか一方に設けられた一方側動力伝達体と、
前記回転軸および前記被伝動回転軸のいずれか他方に設けられ、前記一方側動力伝達体と嵌脱可能に嵌合する他方側動力伝達体とを備え、
前記一方側動力伝達体は、複数の嵌合部を有し、
前記他方側動力伝達体は、前記嵌合部と嵌脱可能に嵌合する複数の嵌合溝部を有し、
前記嵌合溝部は、前記他方側動力伝達体の回転中心側から外周端側に向って徐々に前記嵌合部から離れるように傾斜する傾斜溝底面を有する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
嵌合溝部は、嵌合部の幅寸法と略等しい離間距離をもって互いに離間対向する溝側面を有する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
他方側動力伝達体は、一方側動力伝達体の嵌合部を嵌合溝部内に向けて案内する案内部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−60924(P2007−60924A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247847(P2005−247847)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
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