説明

農作業車

【課題】農作業車において、作業済み面積を計測可能な計測具を装備してDPFの自動再生処理の開始時期の判別と燃料消費量を算出しようとするものである。
【解決手段】DPFを有するディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、この農作業車にGPS装置を装備し、該GPS装置による移動軌跡の情報により、現在の作業状態から前記DPFの自動再生処理の実施が可能かどうかの判別を行うように構成したことを特徴とする農作業車の構成とする。また、GPS装置の移動軌跡の情報により、現在の作業内容から燃料消費量の算出を行い、燃料タンク内の残燃料で作業可能面積の算出を行い報知するように構成したことを特徴とする農作業車の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農作業車のGPS装置に関し、GPS(グローバル ポジショニング システム)を装備した農作業車において、GPSの移動情報により作業面積の計測を行うもの等の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガス浄化のためにDPFを用いて排気ガス中の粒子状物質(以下PMという)等を捕集することが行われている。この場合、DPFにて捕集されたPMが所定量を超えるとDPF内の流通抵抗が増大してエンジン出力の低下をもたらすため、DPFに堆積したPMを除去してDPFのPM捕集能力を回復させる再生処理が行われている。
【0003】
この種の再生方式の一例として化学反応型再生方式がある。化学反応型再生方式とは、エンジンの排気経路のうちDPFの上流側にあるDOC(酸化触媒)にて、排気ガス中のNO(一酸化窒素)を不安定なNO2(二酸化窒素)に酸化させ、NO2がNOに戻る際に放出するO(酸素)を用いてPMを酸化除去するものである。かかるDOCの酸化作用を利用することにより、エンジン駆動中のDPFの再生が可能になっている。
【0004】
但し、化学反応型再生方式は、排気ガス温度が再生可能温度(例えば約300度)以上でなければ化学反応が行われない。つまり、排気ガス温度が再生可能温度未満である状態が続くと、PMがDPF内に大量に堆積し、その結果、DPFが目詰まりを起こすことになる。従って、PM堆積量が所定量に達した場合は排気ガス温度を再生可能温度以上に高める必要がある。
【0005】
そこで、これらの問題を解消するために、特許文献1では、作業車両等のエンジンの運転中において、所定の一定時間毎にDPFの温度を上昇させるためのポスト噴射,マルチ噴射等の燃料噴射制御や排気管内への燃料噴射を行う排気温度上昇手段を備え、この排気温度上昇手段により排気温度の昇温を短時間の間行って強制的にDPFを昇温させ、この時のDPF出口側温度等のDPF下流側の排気温度を測定し、所定の温度以上の温度上昇を示すようであれば本格的な再生制御を行い、示さないようであれば通常運転を継続し、更に所定の一定時間後に再度排気温度上昇を短時間の間行うことを繰り返してDPFの再生開始時期を調べ、適切なPM蓄積量を正確に検知して再生開始時期を判定することができるので、DPFの溶損やエンジンの燃費悪化等のトラプルを回避できるもの等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−31955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1の構成では、前記の如く、排気温度上昇手段により排気温度の昇温を短時間の間行って強制的にDPFを昇温させ、この時DPF下流側の排気温度を測定し、所定の温度以上の温度上昇を示すようであれば本格的な再生制御を行わせることができるから、DPFにて捕集されたPMを連続して燃焼させ除去することが可能であるが、農作業車の場合、DPFの自動再生処理の開始時期については、現在の作業状態が所定の大きさ以上の圃場面積の作業を実行していることが開始時期の適否を判別する条件となるため、この判別条件を満たす作業済み面積を随時計測する手段が必要となる。
【0008】
また、燃料タンク内の残り燃料によって作業可能な面積の算出を行うには、作業済み面積に対応する燃料消費量の算出が条件となるため、この条件を満たす作業済み面積を随時計測する手段が必要となる。
【0009】
そこで本発明では、農作業車において、作業済み面積を随時計測可能な計測具を装備することにより、的確なDPFの自動再生処理の開始時期の判別と燃料消費量の算出を行おうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、DPFを有するディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、この農作業車にGPS装置を装備し、該GPS装置による移動軌跡の情報により、現在の作業状態から前記DPFの自動再生処理の実施が可能かどうかの判別を行うように構成したことを特徴とする農作業車の構成とする。
【0011】
このような構成により、DPFを有するディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、GPS装置によって検出した農作業車の移動軌跡の情報により、現在の作業の進行状態からDPFの自動再生処理の実施が可能かどうかの判別をすることができる。
【0012】
請求項2の発明は、前記GPS装置による移動軌跡の情報により、農作業車が所定以上の面積の圃場を作業中と判断すると、前記DPFの自動再生処理が可能と判断し、DPFの自動再生を行うように構成したことを特徴とする請求項1に記載の農作業車の構成とする。
【0013】
このような構成により、農作業車が所定以上の面積の圃場を作業中であれば、DPFの自動再生を行う。
請求項3の発明は、前記GPS装置の移動軌跡の情報により、現在の作業内容から燃料消費量の算出を行い、燃料タンク内の残燃料で作業可能面積の算出を行い報知するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の農作業車の構成とする。
【0014】
このような構成により、GPS装置によって検出した農作業車の移動軌跡の情報により、現在の作業の進行状態を把握することができ、この把握した作業済み面積に対応する燃料消費量の算出を行い、この算出された燃料消費量に基づいて燃料タンク内の残り燃料で作業可能な面積の算出を行い、この算出面積の報知を行う。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、上記作用の如く、DPFを有するディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、GPS装置によって検出した農作業車の移動軌跡の情報により、現在の作業の進行状態からDPFの自動再生処理の実施が可能かどうかの判別をすることができるので、自動再生処理の開始時期を容易に確認することが可能となる。
【0016】
請求項2の発明では、上記作用の如く、農作業車が所定以上の面積の圃場を作業中であれば、DPFの自動再生を行うので、開始時期が遅れることによるDPFの溶損やエンジンの燃費悪化等のトラブル発生を防止することができる。
【0017】
請求項3の発明では、上記作用の如く、GPS装置によって検出した農作業車の移動軌跡の情報により、現在の作業の進行状態を把握することができ、この把握した作業済み面積に対応する燃料消費量の算出を行い、この算出された燃料消費量に基づいて燃料タンク内の残り燃料で作業可能な面積の算出を行い、この算出面積の報知を行うので、ユーザーが燃料タンク内の残り燃料を気にすることなく安心して作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コモンレールによる蓄圧式燃料噴射ディーゼルエンジンを示すシステム図。
【図2】三種類の制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図。
【図3】トラクタに装備したGPSによって検出した作業済み面積により、DPFの自動再生処理の開始時期の判別を行う状態を示す圃場区画図。
【図4】トラクタに装備したGPSによって検出した作業済み面積で消費した燃費量から、燃料タンクの残燃料により作業可能な面積状態を示す圃場区画図。
【図5】トラクタにおいて、DOCとDPFをステップフロアの前端側下部に左右側に分けて配設し、DOCとDPFを連結する連結管をフライホイールとミッションケースの上側を通る配管状態を示す正面図及び一部の拡大図。
【図6】トラクタにおいて、DOCとDPFをステップフロアの前端側下部に左右側に分けて配設し、DOCとDPFを連結する連結管をフライホイールとミッションケースの上側を通る配管状態を示す側面図。
【図7】トラクタにおいて、DOCとDPFをステップフロアの前端側下部に左右側に分けて配設し、DOCとDPFを連結する連結管をフライホイールとミッションケースの下側を通る配管状態を示す正面図及び一部の拡大図。
【図8】トラクタにおいて、DOCとDPFをステップフロアの前端側下部に左右側に分けて配設し、DOCとDPFを連結する連結管をフライホイールとミッションケースの下側を通る配管状態を示す側面図。
【図9】トラクタにおいて、DOCとDPFをエンジンの左右外側に配設し、DOCとDPFを連結する連結管をクーリングファンの下側を通る配管状態を示す正面図及び一部の拡大図と展開図。
【図10】トラクタにおいて、DOCとDPFをエンジンの左右外側に配設し、DOCとDPFを連結する連結管をクーリングファンの下側を通る配管状態を示す側面図。
【図11】(a)エンジン上面に左右方向に配設した後処理装置と、エンジン前方のインタークーラーとに接続可能となるようターボ過給器を配設した状態を示す平面図。(b)エンジン上面に左右方向に配設した後処理装置と、エンジン前方のインタークーラーとに接続可能となるようターボ過給器を配設した状態を示す部分正面図。
【図12】アクセル開度の変化率が一定値以上のときは、PM堆積量の補正値計算による加減計算を行う手順を示すフローチャート。
【図13】EGRバルブ開閉作用が完全に行えるかどうかの確認を行う手順を示すフローチャート。
【図14】(a)エアコンスイッチの入力により目標回転数送受信をCAN通信によりドループ制御からアイソクロナス制御に変更する手順を示すフローチャート。(b)アクセル開度小及び100%におけるドループ制御とアイソクロナス制御の状態を示す線図。
【図15】(a)始動,ON,ACC,OFFとプッシュターンによるDPF診断の各作用部位を配置したキースイッチの形態を示す平面図。(b)CAN等による無線同時通信によって複数の車両を同時に診断を行う診断装置の作用状態を示す作用図。
【図16】オイルパン内におけるオイル量点検用のフロートと圧力センサによって燃料混入割合を算出する状態を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
DPFを有するディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、この農作業車に装備したGPSの移動軌跡の情報により、現在の作業内容からDPFの自動再生処理の実施が可能かどうかの判別を行う。また、ディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、この農作業車に装備したGPSの移動軌跡の情報により、現在の作業内容から燃料消費量の算出を行い、燃料タンク内の残燃料で作業可能面積の算出を行い告知する。
【0020】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
コモンレール式ディーゼルエンジンEついて、図1のシステム図によりその概要を示す如く、コモンレール式(蓄圧式燃料噴射方式)とは、各気筒への燃料噴射を要求圧力に調整して供給するコモンレール1(蓄圧室)を介して行うものである。
【0021】
燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介して該エンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれ蓄えられる。
【0022】
該コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒5の数分インジェクター6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各気筒5毎にインジェクター6が開弁作動して、高圧燃料が該エンジンEの各燃焼室内に噴射供給され、各インジェクター6での余剰燃料(リターン燃料)は各燃料戻し管10により共通の燃料戻し通路10aへ導かれ、この燃料戻し通路10aによって燃料タンク3へ戻される。
【0023】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料の燃料戻し通路10aの流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0024】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する。
【0025】
農作業機に搭載したコモンレール式ディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示す如く、回転数と出力トルクの関係において、回転数の変動で出力も変動するドループ制御と、負荷が変動しても回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御と、アイソクロナス制御が負荷限界近くになると回転数を上昇させ出力を上げる重負荷制御とによる三種類の制御モードを設定している。
【0026】
ドループ制御は走行モード(A)として、農作業を行わず移動走行する場合に使用するものであり、例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができる。
【0027】
アイソクロナス制御は通常作業モード(B)として、通常の農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるとき、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するものでオペレータが楽に操縦できる。
【0028】
重負荷制御は重作業モード(C)として、特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断するようなことがない。
【0029】
従来、ディーゼルエンジンでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジン特有の、所謂ノック音を低減することが知られている。
【0030】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回乃至2回に固定して行われるものであったが、前記コモンレール1のシステムを用いることで、エンジンの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できる。
【0031】
図3に示す如く、DPFを有するディーゼルエンジンを搭載した農作業車としてのトラクタ15において、このトラクタ15に装備したGPS装置によって検出したトラクタ15の作業軌跡の情報により、現在の作業の進行状態を把握することができるから、この把握した作業済み面積aが所定の大きさ以上の面積の作業を実行していることが判明したときは、DPFの自動再生処理の開始時期として判別を行うことができるので、自動再生処理の開始時期を容易に確認することが可能となり、開始時期が遅れることによるDPFの溶損やエンジンの燃費悪化等のトラブル発生を防止して、DPFにより捕集されたPMを連続燃焼させ除去することができる。なお、DPFの自動再生中はエンジンを停止させてはいけないため、エンジンが停止されないことを確証した上で実行することが必要である。
【0032】
また、図4に示す如く、前記トラクタ15において、このトラクタ15に装備したGPSによって検出したトラクタ15の作業軌跡の情報により、現在の作業の進行状態を把握することができるから、この把握した作業済み面積bに消費した燃料消費量の算出を行い、この算出された燃料消費量に基づいて燃料タンク内の残り燃料で作業可能な面積cの算出を行い、この算出された面積cをユーザーにリアルタイムにて告知を行うことにより、ユーザーが燃料タンク内の残り燃料を気にすることなく安心して作業を行うことができる。
【0033】
また、農作業車におけるディーゼルエンジンの後処理装置の装備位置については、スペースの確保が難しいため未だ確立されていないのが現状である。なお、DPFの再生時に後処理装置の外周温度が低いときは、DPFの外周部にPMが燃焼不十分で燃え残ってしまうという難点がある。
【0034】
このため、後処理装置を有するディーゼルエンジン17を搭載したトラクタ18において、図5及び図6に示す如く、触媒固定部20aとガス流路20bとにより適宜短寸長さ円筒状のDOC20を内装した後処理ケースdと、同じく触媒固定部21aとガス流路21bとにより適宜短寸長さ円筒状のDPF21を内装した後処理ケースeとを、ステップフロア22の前端側下部に車体の左右側に分けて配設すると共に、DOC20とDPF21を連結する連結管23をフライホイールハウジングとミッションケースfの上側を通るよう配設し、該エンジン17からのガス流入管20cを後処理ケースdの外周部で該エンジン17近傍に接続して設けると共に、ガス排出管21cを後処理ケースeの外周部で該エンジン17近傍に接続して設け構成させる。なお、24はボンネット、25はハンドル、26は前輪、27は後輪を示す。
【0035】
このような構成により、後処理装置をDOC20側とDPF21側に分けて左右のステップフロア22前端側下部に配設しているので、一箇所に広いスペースを要することなく後処理装置の装備用スペースの確保が容易になると共に、メンテナンスについても個別に容易に行うことができる。また、DOC20とDPF21の外周から中心軸方向へ沿って排気ガスが流れるため、流入する排気ガスの濃度が均一化されると共に、DPF21の外周が保温され内側との温度差を小さくしてPMの燃え残りを抑制することができ、DPF21の再生時間を短縮することが可能となる。また、該エンジン17近傍にガス流入管20cを設けているので配管を短くすることが可能となり、排気温度の低下や排気抵抗を小さくすることができる
また、前記図5及び図6に示す如く、後処理装置を有するディーゼルエンジン17を搭載したトラクタ18において、DOC20を内装した後処理ケースdとDPF21を内装した後処理ケースeとを、ステップフロア22の前端側下部に車体の左右側に分けて配設すると共に、図7及び図8に示す如く、DOC20とDPF21を連結する連結管23をフライホイールハウジングとミッションケースfの下側を通るよう配設して構成させる。
【0036】
このような構成により、前記と同様な作用効果を有することができる。
また、前記図5及び図6に示す如く、後処理装置を有するディーゼルエンジン17を搭載したトラクタ18において、図9及び図10に示す如く、小径円筒で車体の前後方向に長いDOC28と、同じく小径円筒で車体の前後方向に長いDPF29とを、該エンジン17の左右外側に分けて配設すると共に、DOC28とDPF29を連結する連結管30を該エンジン17前側部のクーリングファンhの下側を通るよう配設し、該エンジン17からのガス流入管28aをDOC28の後部で該エンジン17近傍に接続して設けると共に、ガス排出管29aをDPF29の後部で該エンジン17近傍に接続して設けて構成させる。なお、DOC28とDPF29とに、泥水や可燃物等の接触や発熱による被害を抑えるため必要に応じてカバーを設ける。
【0037】
このような構成により、DOC28とDPF29を該エンジン17の左右外側に分けて配設することにより、一箇所に広いスペースを要することなく後処理装置の装備用スペースの確保が容易になると共に、個別にメンテナンスを容易に行うことができる。また、DOC28とDPF29を各々長い小径円筒形状として体積を確保することにより搭載性を向上させることができる。また、DOC28とDPF29を各々該エンジン17の左右外側に配設することで、エンジン室内の部品形状の変更を少なくして安定した配置を行うことができる。
【0038】
また、後処理装置を有するターボ過給器付きディーゼルエンジンにおいて、通常では、ターボ過給器は該エンジンの前後(長手)方向に沿って平行に取り付けられているものが多く、排気タービンの出口が後方に向いているため、該エンジン上に後処理装置を配設する場合に、配管が長くなり排気ガスの温度低下や排気圧力の上昇等による不具合が発生すると共に、インタークーラーを有するものでは、該クーラーへの配管が該エンジンのヘッド上を通るためのスペースを必要としていた。
【0039】
このため、図11(a),(b)に示す如く、ディーゼルエンジン31において、ターボ過給器32の排気タービン32a側を該エンジン31の内側向きに、吸気コンプレッサ32b側を外側向きに配置して取付け、該エンジン31上に左右方向に配設した後処理装置33を排気タービン32aの出口に直結すると共に、前方を向いている吸気コンプレッサ32bの出口に接続した配管34aを、真っ直ぐに延長して該エンジン31前方のインタークーラー34に接続し、インタークーラー34から吸気マニホールド35へ配管34bにより接続して構成させる。なお、36は排気マニホールド、37は吸気管、38は排気管、39はクーリングファン、40はシリンダヘッドを示す。
【0040】
このような構成により、ターボ過給器32をディーゼルエンジン31の前後方向に対し直交位置に配設することにより、該エンジン31の上方に配置した後処理装置33を、ターボ過給器32の排気タービン32a側と直結することが可能となって配管を短くすることができるので、排気温度の低下と共に排気抵抗を小さくすることができる。
【0041】
また、該エンジン31の前方に配置したインタークーラー34を配管34aと配管34bにて該エンジン31の上方を通らずに接続することができるので、後処理装置33の該エンジン31上方への装備が容易になると共に、シリンダヘッド40のメンテナンス性を向上させることができる。また、後処理装置33による後処理後の排気ガスによりEGRを行う場合、後処理装置33後の排気管38と吸気マニホールド35が近くなるためEGR配管(図示なし)を短くすることが可能となり、管路抵抗を小さくすることができる。
【0042】
また、DPFを有するコモンレール式ディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、加速時は定常作業状態よりDPFのPM詰まりが早く、PM堆積量を燃料噴射量から計算する計測値では類推できないという課題がある。
【0043】
このため、図12のフローチャートに示す如く、PM堆積量の計算について、先ず、アクセル開度の変化率の確認を行い、変化率が一定値以上のときは、PM堆積量の補正制御に入り、PM堆積量の補正値を計算すると共に、PM堆積量の加減計算を行う。なお、変化率が一定の定常時にはPM堆積量の補正制御は行わない。このように、アクセル開度の変化率によってDPFのPM堆積量の補正を行うことにより、PM堆積量の正確な算出が可能となる。
【0044】
また、農作業車において、搭載しているエンジンは全負荷作業が多いため、排気ガス中のカーボンがEGRバルブ周辺に堆積し易く、バルブの動きを低下させてしまう恐れがある。EGRバルブの動きが低下すると排ガス性能が低下し、DPFのPM堆積量演算性能の低下によりDPF再生時に悪影響を及ぼすと共に、耐久信頼性も低下するという難点がある。
【0045】
このため、図13のフローチャートに示す如く、エンジンのキー差し込み時に自動でEGRバルブを動作させるか、又は、キーON時に意図的にEGRバルブを動作させ、バルブの開閉作用が完全に行えるかどうかの確認を行い、異常があればエラー表示を行い、異常がなければエンジンをスタートさせ通常の運転を行わせる。なお、このEGRバルブの動作により、バルブ周辺に堆積したカーボンを振るい落す作用を行わせることができる。
【0046】
このように、EGRバルブの動作確認と、カーボン落しができることにより、安定した排ガスレベルの維持保障と共に、バルブ固着等の不具合を防止することができる。
また、コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、エアコンのスイッチ入力時に、エアコンの負荷によりエンジン回転数が低下するという不具合がある。
【0047】
このため、作業時はドループ制御によりエンジン回転数の制御を行うと共に、図14(a)のフローチャートに示す如く、エアコンスイッチが入力された場合は、目標回転数送受信をCAN通信により、ドループ制御からアイソクロナス制御に切替るためのアイソクロナス制御定数としてのPTOstにより、図14(b)に示す如く、制御モードをドループ制御からアイソクロナス制御に変更し、目標とするエンジン回転数の送信を行わせる。なお、エアコンスイッチの切りによりドループ制御定数としてのPTOstに戻してエンジン回転数の制御を行わせる。
【0048】
また、農作業車における車両内のスイッチ操作によるDPFの手動再生機能が知られているが、キースイッチにDPF診断位置の部位を設け、診断装置から手動再生を実施する構成は見当らない。また、無線通信により複数車両を同時に診断,再生を実施する構成も見当らない。
【0049】
そこで、オペレータのスイッチ操作等により、ポスト噴射を実施し強制的に排気温度を高め、PMを燃焼させる手動強制再生機能を有するDPF装備のエンジンを搭載した農作業車において、図15(a)に示す如く、始動,ON,ACC,OFFとプッシュターンによるDPF診断の各作用部位を配置してキースイッチ41を構成させ、このキースイッチ41をDPF診断の作用部位に回したときは、エンジンECUと通信を行う。そして、図15(b)に示す如く、診断装置42により、現在のDPFのPM堆積量,稼働時間,手動再生の開始等のチェックを実施すると共に、この診断装置42をCAN等による無線同時通信によって、複数の車両1,車両2,車両3を同時に診断を行わせることができる。なお、診断通信中の識別を行う識別燈rを各車両に装備して識別点灯させる。
【0050】
このように、複数の車両を有する大規模農家におけるメンテナンス性が向上すると共に、キースイッチ41のDPF診断部位にプッシュターンを設けることにより、予期せず再生運転が開始されることを防止することができる。なお、通信中は識別燈rを点灯させることにより通信車両を容易に識別することができる。
【0051】
また、後処理装置を有する電子制御エンジンを搭載した農作業車において、このエンジンにおけるDPF再生時にポスト噴射制御を行うものでは、ポスト噴射によってエンジンオイル内に燃料が混入することにより、オイルの粘度が低くなり潤滑性能が悪化し焼き付き等のトラブルを引き起こすことになる。
【0052】
このため、図16に示す如く、オイルパン43内のオイル量点検用のフロート44の浮力を圧力センサ45によって計測し、ECU46によって燃料混入割合の算出を行う。なお、運転時は油面が安定していないため、エンジン停止数秒後に自動計測を行う。この自動計測により一定値以上の圧力上昇がある場合は、次回運転時にエンジンオイルの交換を促す警告を行わせることにより、燃料の混入を早期に知ることが可能であり、オイルの粘度低下による焼き付きを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
トラクターやコンバイン等の農作業車を始め一般車両にも利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
15 トラクタ
29 DPF
a 面積
b 面積
c 面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DPFを有するディーゼルエンジンを搭載した農作業車において、この農作業車にGPS装置を装備し、該GPS装置による移動軌跡の情報により、現在の作業状態から前記DPFの自動再生処理の実施が可能かどうかの判別を行うように構成したことを特徴とする農作業車。
【請求項2】
前記GPS装置による移動軌跡の情報により、農作業車が所定以上の面積の圃場を作業中と判断すると、前記DPFの自動再生処理が可能と判断し、DPFの自動再生を行うように構成したことを特徴とする請求項1に記載の農作業車。
【請求項3】
前記GPS装置の移動軌跡の情報により、現在の作業内容から燃料消費量の算出を行い、燃料タンク内の残燃料で作業可能面積の算出を行い報知するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の農作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−47077(P2012−47077A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188461(P2010−188461)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】