説明

農業用積層フィルム

【課題】フィルムの剛性が著しく改善され、且つ、透明性、光沢に優れ、強度と保温性がバランス良く改善された安価な農業用積層フィルムの提供。
【解決手段】メタロセン触媒を用いて重合され、MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜20g/10分、融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃、(Mw/Mn)が1.5〜3.5の特性を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体50〜90重量%及び、MFR:190℃、2.16kg荷重)が0.1〜10g/10分、酢酸ビニル含有量が5〜25重量%の特性を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体10〜50重量%からなる樹脂層を少なくとも一層有することを特徴とする農業用積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用積層フィルムに関し、詳しくは、優れた剛性、透明性、光沢を有し、且つ、強度及び、保温性能がバランスよく改善された農業用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
農業上の促成栽培を行うために主として保温性を高めることを目的にハウス栽培、トンネル栽培等が実施されている。一般に、そのハウス、トンネル等の被覆資材として各種熱可塑性樹脂からなる農業用フィルムが使用されているが、その保温性能を改善するために従来よりさまざまな工夫がなされている。
その一つとして、例えば、シリカ粉末(例えば、特許文献1参照。)、マグネシウム化合物(例えば、特許文献2参照。)、ゼオライト(例えば、特許文献3参照。)、ハイドロタルサイト(例えば、特許文献4参照。)の様な赤外線吸収能の高い無機化合物を熱可塑性樹脂内に添加しハウス内の赤外線放射冷却を防止する等の保温性改善の方法が用いられている。
【0003】
しかしながらこの様な改善手法にも限界があり、近年ではハウスの構造を工夫することによる保温性改善の手法が試みられる様になってきた。その一つとして、ハウスを二重張り構造としフィルムとフィルムの間に空気層を設けて断熱層を付与することにより大幅な保温性改善を行うというような方法が採用される様になってきた。
この方法は、保温性改善効果も高く有効な手法であるが、欠点として従来の一般的な農業用ポリオレフィンフィルムが使用出来ないと言う問題がある。即ち、ある一定圧力の空気をフィルムとフィルムの間に供給し保持しようとすると、日中、太陽光に暖められた空気層は約60℃程度まで上昇し、結果として高温下で圧力がかかった状況となり、従来のポリエチレン系フィルムではクリープによるフィルム伸びが生じ使用出来なくなると言う問題があった。
【0004】
この問題を解決するためにフィルム内部へ繊維或いは延伸テープ等を挿入した糸入り農業用ポリオレフィンフィルム等が使用されたりしているが、クリープによるフィルム伸びは抑えられるものの、糸状のものがフィルム内にあることから光線透過率が低下し作物の生育、収量が落ちると言う問題がある。また、剛性、透明性等を改善する方法として、特定のポリプロピレン樹脂にエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂等を混練する方法(例えば、特許文献5〜6参照。)が提案されているが、これらを農業用フィルムを製造する典型的な成形方法である空冷インフレーションフィルム成形法で製造した場合、衝撃強度が極端に低下したり、あるいは混練するエチレン・酢酸ビニル共重合体の種類によっては透明性も阻害されると言う問題がある。また、高透明でフィルムの剛性が高いことからフッ素系フィルムが使用されることがあるが、性能は満足されるもののコストが数倍以上となり、非常に高価で実用上問題がある。
【特許文献1】特公昭47−13853号公報
【特許文献2】特公平3−50791号公報
【特許文献3】特公昭61−44092号公報
【特許文献4】特公昭62−31744号公報
【特許文献5】特開2003−41070号公報
【特許文献6】特開平8−48831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述の問題点に鑑み、フィルムの剛性が著しく改善され、且つ、透明性、光沢に優れ、強度と保温性がバランス良く改善された安価な農業用積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、特定のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂と特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂を特定量配合した樹脂層を少なくとも一層有する積層フィルム、更にはその両外層に特定のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂を積層することにより上記目的を達成出来ることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メタロセン触媒を用いて重合され、且つ下記(A1)〜(A3)の特性を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体50〜90重量%及び、下記(B1)〜(B2)の特性を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体10〜50重量%からなる樹脂層を少なくとも一層有することを特徴とする農業用積層フィルムが提供される。
(A1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜20g/10分
(A2)示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃
(A3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5
(B1)メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)が0.1〜10g/10分
(B2)酢酸ビニル含有量が5〜25重量%
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、内層及び外層に、下記(C1)〜(C3)の特性を有するエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体を用い、中間層として第1の発明の樹脂層を配した農業用積層フィルムが提供される。
(C1)メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)が0.5〜10g/10分
(C2)密度が0.906〜0.924g/cm
(C3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体がメタロセン触媒を用いて製造されたことを特徴とする農業用積層フィルムが提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第2又は3の発明において、中間層に、第1の発明のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂の合計量100重量部に対し、Mg、Ca、Zn、Liから選ばれる少なくとも一種とAlの(含水)複合水酸化物塩を1〜20重量部添加したことを特徴とする農業用積層フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の農業用積層フィルムは、特定のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂に特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂を特定量配合した層を有することにより、優れた剛性、透明性、光沢が付与され、更にはその両外層に特定のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂を積層し且つ、中間層へ特定の無機化合物を特定量添加することにより、保温性と強度が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、プロピレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル系樹脂を配合した樹脂層を少なくとも一層有する農業用積層フィルムであり、好ましくは、該樹脂層を中間層として用い、この樹脂層の両外層にエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂層を配した農業用積層フィルムである。以下にプロピレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル系樹脂を配合した樹脂層、該樹脂層の両外層の各層の成分、フィルムの成形法等を詳細に説明する。
【0013】
1.プロピレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル系樹脂配合層
(1)プロピレン系樹脂
本発明に用いるプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて重合され、且つ下記(A1)〜(A3)の特性を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である。
【0014】
本発明に用いられるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、プロピレンから誘導される構成単位を主成分としたプロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体である。コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくはエチレンまたは炭素数4〜18のα−オレフィンである。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。また、α−オレフィンとしては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
【0015】
かかるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の具体例としては、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体等が挙げられる。
【0016】
(A1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、1〜20g/10分、好ましくは1.5〜15g/10分、より好ましくは2〜10g/10分である。MFRが上記範囲未満の場合には、押出し性が低下し好適な生産性が得られず、更に透明性が悪化するので好ましくない。上記範囲を超える場合には、フィルムの強度が低下し、且つインフレーションフィルム成形におけるチューブの安定性が悪くなるので好ましくない。
ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、触媒量、分子量調節剤としての水素の供給量など適宜調節する方法がとられる。
なお、MFRは、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定する値である。
【0017】
(A2)融解ピーク温度(Tm)
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の示差走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)は、110〜150℃、好ましくは110〜135℃、更に好ましくは110〜130℃である。Tmが上記範囲未満の場合には、剛性の低下があり、上記範囲を超える場合には、衝撃強度等が損なわれる。
Tmは、α−オレフィン含量やその種類およびプロピレン構成単位のレジオ規則性などの影響を受ける。α−オレフィンがエチレンの場合には、その含有量は0.1〜5重量%程度であり、α−オレフィンが1−ブテンの場合には、その含有量0.1〜15重量%程度である。Tmの調節は、共重合させるα−オレフィンの種類と量を制御することにより適宜調整することができる。
なお、Tmの測定は、セイコー社製DSCを用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させて後に1分間保持し、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度(Tm)で評価する値である。
【0018】
(A3)重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5〜3.5、好ましくは1.8〜3.3、より好ましくは2.0〜3.0である。Mw/Mnが上記範囲を超える場合には透明性が低下するので好ましくなく、上記範囲未満の場合には、押出し負荷が上昇するなど加工性が悪化する。
Mw/Mnを所定の範囲に調整する方法としては、適当なメタロセン触媒を選択する方法等が挙げられる。
なお、Mw/Mnの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500 , A2500 , F1 , F2 , F4 , F10 , F20 , F40 , F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリプロピレンの粘度式を用いてポリプロピレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリプロピレンはα=0.707、logK=−3.616である。
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0019】
本発明に用いられるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、メタロセン触媒を用いて重合されていることが必要である。メタロセン触媒以外の触媒で重合されたプロピレン系重合体を用いると、空冷インフレーションフィルム成形法で成形した場合、フィルムの透明性が低下することと、エチレン・α−オレフィン共重合体と積層した時に、その層間強度が弱くなるため積層フィルムとしての強度が低下したり、場合によっては層間剥離等の形状破壊にまで進む可能性があり好ましくない。
【0020】
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の重合に用いるメタロセン触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
【0021】
(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号、特開平8−85708号の各公報に開示されている。
【0022】
更に、具体的には、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4Hアズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)〕ジクロニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシレンビス〔4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス〔1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)〕ジスコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−(2−メチル−フェニル−4H−アズレニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−(2−エチル−4−ナフテル−4H−アズレニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス〔1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス〔1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス〔1−(2−エチル−4−フェノルインデニル)〕ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることができる。これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。
【0023】
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
【0025】
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムハライド;アルキルアルミニウムセスキハライド;アルキルアルミニウムジハライド;アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0026】
重合法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を得る方法としては、例えば、重合温度やコモノマー量を調節して、分子量および結晶性の分布を適宜制御することにより、所望のポリマーを得ることができる。
【0027】
かかるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、メタロセン系ポリプロピレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製「ウィンテック」等が挙げられる。
【0028】
(2)エチレン・酢酸ビニル系樹脂
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体は下記(B1)〜(B2)の特性を有する。
【0029】
(B1)メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)
本発明で用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体のMFRは、0.1〜10g/10分、好ましくは0.3〜7g/10分、より好ましくは0.8〜4g/10分である。MFRが上記範囲未満の場合には、押出し圧力の増大、押出し性の低下を招き好適な生産性が得られない。上記範囲を超える場合には、フィルムの強度が低下し、且つインフレーションフィルム成形におけるチューブの安定性が悪くなるので好ましくない。
なお、MFRは、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定する値である。
【0030】
(B2)酢酸ビニル含有量
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、5〜25重量%、好ましくは8〜25重量%、より好ましくは10〜18重量%である。該樹脂がポリプロピレン系樹脂に混合される場合、酢酸ビニル含量の選択が重要である。酢酸ビニル含有量が上記範囲を超えるとフィルムの透明性、透視性が阻害され、フィルム剛性の低下を招き耐クリープ性にも問題を生じ好ましくない。また上記範囲未満の場合にも上記範囲を超える場合と同様にフィルムの透明性、透視性が阻害されることと、ハウスに展張した場合に保温性が低下し好ましくない。
なお、酢酸ビニル含有量は、JIS K6924−2 1997の「プラスチック−エチレン/酢酸ビニル(E/VAC) 成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方」の附属書「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して、測定する値である。
【0031】
(3)プロピレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル系樹脂の配合量
本発明に用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体の配合量は、それぞれプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は50〜90重量%、好ましくは56〜88重量%、より好ましくは62〜86重量%であり、エチレン・酢酸ビニル共重合体は10〜50重量%、好ましくは12〜44重量%、より好ましくは14〜38重量%である。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の配合量が上記配合量未満の場合(エチレン・酢酸ビニル共重合体の配合量が上記配合量を超える場合)、フィルムの剛性が低下し、ハウス展張時の高温下での耐クリープ性に問題を生じる。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の配合量が上記配合量を超える場合(エチレン・酢酸ビニル共重合体の配合量が上記配合量未満の場合)、ハウス内の保温性が低下することに加え、衝撃強度も低下し好ましくない。
【0032】
2.内層及び外層に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体
本発明の農業用積層フィルムは、上記のプロピレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル系樹脂を含有する樹脂層を少なくとも一層有していれば良いが、好ましくは該樹脂層を中間層に用い、その内層、及び外層にエチレン・α−オレフィン共重合体の層を有しているものが好ましい。
【0033】
内層及び外層に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体からなり、下記(C1)〜(C3)の特性を有し、好ましくはメタロセン触媒で重合されたものである。内層及び外層に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、同じでも異なっていてもよい。
【0034】
本発明の内層、外層に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα−オレフィンの共重合体である。
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜12のα−オレフィンが用いられる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン等が挙げられるが、これらα−オレフィンの中で、好ましくは炭素数4〜12のもの、特に好ましくは炭素数6〜10のものが望ましい。かかる共重合体の具体例としては、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1共重合体が挙げられる。また、α−オレフィンは、1種選んで用いても、所望に応じて2種以上を併用することもできる。エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、概ね5〜15重量%である。
【0035】
(C1)メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)
本発明の内層、外層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、好ましくは0.5〜10g/10分、より好ましくは0.7〜7g/10分、特に好ましくは1〜4g/10分である。MFRが上記範囲未満の場合には、成形時の樹脂圧力が高くなり樹脂発熱を生じたり、あるいは、押出しエネルギーが増大する等加工性が悪化し好適な生産性が得られない。上記範囲を超える場合には、フィルムの強度が低下することに加え、インフレーションフィルム成形時におけるチューブの安定性が悪くなる。
なお、MFRは、JIS−K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定する値である。
【0036】
(C2)密度
本発明の内層、外層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、好ましくは0.906〜0.924g/cm、より好ましくは0.906〜0.920g/cm、特に好ましくは0.910〜0.918g/cmである。密度が上記範囲を超えると、透明性、衝撃強度が不良となる。また、密度が上記範囲未満ではフィルム表面にベタツキを生じたり、結晶性低下に伴い成形時にフロストラインが上昇し成膜不安定となったりする。
なお、密度は、JIS−K7112に準拠して測定する値である。
【0037】
(C3)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比
本発明の内層、外層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.8〜3.3、特に好ましくは2.0〜3.2である。Mw/Mnが上記範囲を超える場合には透明性が低下することと、強度も低下する。上記範囲未満の場合には、押出し負荷が上昇するなど加工性が悪化する。
なお、Mw/Mnの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3,4μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較性は東ソー製単文散ポリスチレン(A500 , A2500 , F1 , F2 , F4 , F10 , F20 , F40 , F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=−3.407である。
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0038】
本発明の内層、外層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、種々の方法により製造することができる。チーグラー触媒、バナジウム触媒、好ましくはメタロセン触媒を使用して製造することができる。共重合の方法としては、気相法、スラリー法、溶液法、高圧イオン重合法等が挙げられるが、何れの方法を用いても構わない。
【0039】
3.中間層への添加剤
本発明の農業用積層フィルムにおいて中間層として、上記のプロピレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル系樹脂を含有する樹脂層を用いた場合、中間層にMg、Ca、Zn、Liから選ばれる少なくとも一種とAlの複合水酸化物塩又はその水和物(以下、(含水)複合水酸化物塩とする。)を添加することができる。このような無機化合物は、保温効果を向上させる機能を有する。
【0040】
(含水)複合水酸化物塩としては、下記一般式(I)で表されるハイドロタルサイト類、一般式(II)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩等が挙げられる。
2+1−xAl(OH)(An−x/n・mHO …(I)
[式中、M2+は、Mg、CaまたはZnの二価金属イオンであり、An−はn価アニオンであり、xは、0<x<0.5 の条件を満足する数値であり、mは、0≦m≦2 の条件を満足する数値である]
【0041】
上記一般式(I)中のAとしては、たとえばCl、Br、I、NO、ClO−、SO2−、CO2−、SiO2−、Si2−、HPO2−、HBO2−、PO3−、Fe(CN)3−、Fe(CN)4−、CHCOO、C(OH)COO、(OCOCOO)、(OCOCCOO)などの1種又は2種以上を例示することができる。Aとしては、とくにCO2−、SiO2−、Si2−などが好ましい。
【0042】
ハイドロタルサイト類を例示すれば、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)12CO・3HO、MgAl(OH)14CO・4HO、Mg10Al(OH)22(CO・4HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHOが協和化学社製DHT4A(商品名)として入手可能である。
【0043】
Li(Al3+(OH)・(An−1/n・mHO …(II)
[式中、An−はn価のアニオンを示し、nは1〜4の整数を示し、mは0≦m≦3である]
上記一般式(II)中のAとしては、たとえばCl、Br、I、NO、ClO、SO2−、CO2−、SiO2−、Si2−、HPO2−、HBO2−、PO3−、Fe(CN)63−、Fe(CN)4−、CHCOO、C(OH)COO、(OCOCOO)2−、(OCOCCOO)2−などの1種又は2種以上を例示することができる。Aとしては、とくにCO2−、SiO2−、Si2−などが好ましい。
市販品としては、LiAl(OH)12CO・4HOが水澤化学社製ミズカラック(商品名)として入手可能である。
【0044】
添加される無機化合物は、平均粒径が好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。平均粒径が大きすぎるとフィルムの透明性が低下する。
【0045】
無機化合物の添加量は、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体の合計量100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは5〜15重量部である。無機化合物の添加量が上記範囲を超える場合は、透明性が低下したり、強度が低下したり、或いはフィルム成形時に発泡を生じる。添加量が上記範囲未満の場合は保温性が低下する。
【0046】
無機化合物の添加方法は、中間層樹脂に無機化合物を所定量添加したものを押出機、ニーダー、ロール等の混練機で混練しても良いし、また、予め中間層に使用される樹脂をベースとして高濃度の無機化合物を押出機、ニーダー、ロール等の混練機で混練しマスターバッチ化したものをフィルム成形時に添加してもよい。
【0047】
本発明のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂配合層及び、内外層に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂層には、必要に応じて、一般に樹脂組成物用として用いられている公知の各種補助添加剤、例えば、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、熱安定剤、中和剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、核剤等を配合することが出来る。更には、ハウス展張時に長期の防曇性が必要とされる場合、フィルムのハウス内面側に公知の無機ゾル塗布等の処方を講じることが出来る。
【0048】
また、発明の効果を損なわない範囲で、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、石油樹脂等を必要に応じ添加することができる。この場合、その添加量は、エチレン・α−オレフィン共重合体の強靱性或いは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の剛性を実用上損なわない範囲として、5〜15重量%程度が好ましい。
前記付加成分の市販されているものの例としては、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体としては日本ポリエチレン(株)製カーネルシリーズやノバテックLLシリーズが、オレフィン系エラストマーとしては、三井化学(株)製タフマーPシリーズやタフマーAシリーズ、JSR(株)製EPシリーズやEBMシリーズが例示できる。また、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体としては日本ポリプロ(株)製ノバテックPPシリーズやニューコンシリーズなどが例示できる。
【0049】
4.フィルム積層構造
本発明の積層フィルムは、外層/中間層/内層の三層を基本とするが、必要に応じて更に保護層等を追加で設けることができる。
積層フィルムとする場合の積層構成比は、例えば三層フィルムの場合、外層の厚みが好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmの範囲にあり、中間層の厚みが好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜120μm、さらに好ましくは30〜100μmの範囲にあり、内層の厚みが好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmの範囲である
このような3層積層フィルムにおいては、外層、中間層および内層の各層の厚みの比(外層/中間層/内層)は、好ましくは0.2〜4/1〜10/1、より好ましくは0.5〜2/2〜6/1であることが望ましい。
積層フィルム全体の厚みは、好ましくは30〜200μm、より好ましくは50〜180μm、さらに好ましくは70〜150μmの範囲である。
【0050】
5.農業用積層フィルムの製造
本発明の農業用積層フィルムは、所定の添加剤を配合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂配合層及び、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂層を公知の成形方法により成形加工して製造することができる。その製造方法としては、積層数に応じた押出機と通常のマルチマニホールドタイプの接合・合流部を有する環状積層ダイによる空冷インフレーションフィルム成形により好適なフィルムを得ることができる。空冷インフレーションフィルム成形の成形条件としては、本発明で特定する特性が得られる限り特に限定しないが、成形温度は160〜200℃、成形速度は5〜30m/分が好適である。
なお本発明の農業用積層フィルムは、成形時における外層がハウス内面になるように展張される。
【実施例】
【0051】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は以下の通りである。
【0052】
1.物性の測定方法と評価方法
(1)MFR:JIS−K7210に準拠して測定した。
(2)密度:JIS−K7112に準拠して測定した。
(3)ヘイズ:JIS−K7105に準拠して測定した。
(4)打ち抜き衝撃強度:JIS−P8134(1976)に準じて、先端に貫通部を取り付けることのできる90°弧状の腕をもち、自由に振動することができる振子、上記貫通部は、12.7mmφの球型の金属製を標準とし、表面は鏡面光沢をもち確実に振子の弧状の腕の先端に取り付けできるもの、試験片を水平均一に締め付ける内径50mmφのクランプを備えた試験機を用い、貫通破壊エネルギーを測定した。
(5)引張弾性率:JIS−K7127−1989を参考に、巾15mm×長さ150mmのフィルム試験片をつかみ具間距離100mm、引張速度1.0mm/minで引張試験を行い、伸び率0.4%時点での引張応力を求め、その数値を伸び率で徐した値を引張弾性率とした。本数値が大きいほどフィルムの剛性が高くハウス展張時の耐クリープ性に有利である。
(6)クリープ試験:巾15mm×長さ250mmのフィルム試験片を60℃にコントロールされたオーブン内に長さ方向が垂直になる様に吊り下げ、その下部に240gの重りを吊り下げて48時間放置した。その後予め標しておいた標線(200mm)の長さを測定しフィルムの伸び量を測定し、標線長さに対する伸び率を算出した。
(7)保温性:赤外線分光光度計で得られるフィルムの各波長に対応した吸収率でプランクの放射法則によって得られる各波長の分光放射発散度を重みづけし、その吸収率で重みづけされた分光放射発散度と、元の分光放射発散度との比を持って保温性とした。数値が大きい程赤外線吸収能が高く保温性に優れる。
【0053】
2.使用する樹脂及び、無機化合物
(1)プロピレン系樹脂
PP−1:メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂(日本ポリプロ社製ウインテック「WFX6」;MFR2g/10分、密度0.90g/cm、Mw/Mn=2.9、融解ピーク温度125℃)
PP−2:メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂(日本ポリプロ社製ウインテック「WFX4」;MFR7g/10分、密度0.90g/cm、Mw/Mn=2.8、融解ピーク温度125℃)
PP−3:チーグラー触媒を用いて製造されたプロピレン・エチレンランダム共重合体樹脂(日本ポリプロ社製ノバテック「FG4」MFR7g/10分、密度0.90g/cm3、Mw/Mn=4.0、融解ピーク温度142℃)
(2)エチレン系樹脂
PE−1:メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(日本ポリエチレン社製カーネル「KF282」MFR2.2g/10分、密度0.915g/cm、Mw/Mn=3.1)
PE−2:メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(日本ポリエチレン社製ハーモレックス「NF444A」MFR2.0g/10分、密度0.912g/cm、Mw/Mn=2.9)
PE−3:メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(日本ポリエチレン社製ハーモレックス「NF366A」MFR1.5g/10分、密度0.919g/cm、Mw/Mn=3.2)
(3)エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂
EVA−1:日本ポリエチレン社製ノバテック「LV430」MFR1.0g/10分、酢酸ビニル含量15wt%
EVA−2:日本ポリエチレン社製ノバテック「LV120」MFR0.5g/10分、酢酸ビニル含量3.5wt%
EVA−3:日本ポリエチレン社製ノバテック「LV660」MFR6.0g/10分、酢酸ビニル含量28wt%
(4)無機化合物
無機化合物−1:Mg4.3Al(OH)12.6COの水和物(協和化学工業社製「DHT4A」)
無機化合物−2:LiAl(OH)12CO・4HO(水澤化学工業社製「ミズカラック」)
【0054】
(実施例1)
内層及び外層部に、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂としてPE−1を100重量部としたものを用い、中間層部に、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体としてPP−1を65重量%、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂としてEVA−1を35重量%と、無機化合物−1をPP−1とEVA−1の合計量100重量部に対し10重量部配合したものを用い、トミー機械工業社製三種三層インフレーションフィルム成形機にて、設定温度185℃で成膜を行い、外層部の厚み25μm、中間層部の厚み80μm、内層部の厚み25μmの三層インフレーションフィルムを得た。尚、外層部には、ブロッキング防止剤としてシリカを0.16重量部、滑剤としてオレイン酸アミドを0.13重量部を添加し、内層部には、ブロッキング防止剤としてシリカ0.35重量部、滑剤としてオレイン酸アミド0.18重量部を添加した。また耐候安定剤として光安定剤共重合樹脂(日本ポリエチレン社製ノバテックXJ100H)を各層に3.0重量部を添加した。無機化合物−1及び、ブロッキング防止剤、滑剤は、予め基材樹脂と同一の樹脂を用い高濃度のマスターバッチを作成し、それを希釈添加した。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0055】
(実施例2)
中間層部のPP−1を85重量%、EVA−1を15重量%、無機化合物−1をPP−1とEVA−1の合計量100重量部に対し10重量部配合した以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0056】
(実施例3)
中間層部のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂としてPP−2を65重量%、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂としてEVA−1を35重量%、無機化合物−1をPP−2とEVA−1の合計量100重量部に対し10重量部配合した以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例4)
内層部のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂としてPE−2を100重量部とし、外層部のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂としてPE−3を100重量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例5)
中間層部のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂としてPP−1を65重量%、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂としてEVA−1を35重量%、無機化合物として無機化合物−2をPP−1とEVA−1の合計量100重量部に対し10重量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
中間層部のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂としてPP−1を100重量%、無機化合物−1をPP−1の100重量部に対し10重量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0060】
(比較例2)
中間層部のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂としてPP−1を35重量%、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂としてEVA−1を65重量%、無機化合物−1をPP−1とEVA−1の合計量100重量部に対し10重量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0061】
(比較例3)
中間層部のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂としてPP−3を65重量%、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂としてEVA−1を35重量%、無機化合物−1をPP−3とEVA−1の合計量100重量部に対し10重量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例4)
中間層部のエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂としてEVA−1を100重量%、無機化合物−1をEVA−1の100重量部に対し10重量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例5)
中間層部のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂としてPP−1を65重量%、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂としてEVA−2を35重量%、無機化合物−1をPP−1とEVA−2の合計量100重量部に対し10重量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例6)
中間層部のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体樹脂としてPP−1を65重量%、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂としてEVA−3を35重量%、無機化合物−1をPP−1とEVA−3の合計量100重量部に対し10重量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い三層フィルムを得た。得られたフィルムの品質評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から明らかなように、本発明の積層フィルムは、剛性、透明性、保温性、衝撃強度のバランスが優れた積層フィルムであった(実施例1〜5)。一方、中間層にプロピレン・α−オレフィン共重合体のみを用いた積層フィルムは保温性、衝撃強度に劣り(比較例1)、中間層のプロピレン・α−オレフィン共重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体の組成比が本発明の範囲を外れる積層フィルムは剛性が低下し耐クリープ性に劣り(比較例2)、中間層にチーグラー触媒で得られたプロピレン・α−オレフィン共重合体を用いた積層フィルムは衝撃強度、透明性に劣り(比較例3)、中間層にエチレン・酢酸ビニル共重合体のみを用いた積層フィルムは剛性が低下し耐クリープ性に劣り(比較例4)、中間層にプロピレン・α−オレフィン共重合体と共に用いられるエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量が本発明の範囲を外れる積層フィルムは、上限に外れる場合、下限に外れる場合の何れも透明性が低下し(比較例5、6)、更に、上限に外れる場合は剛性が低下し耐クリープ性に劣る(比較例6)。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の農業用積層フィルムは、優れた剛性、透明性、光沢が付与され、更には保温性と強度が改善され、従来使用が困難であった高いクリープ性が要求される保温二重ハウス等での使用が可能となり、ハウス促成栽培に益するところ大である。産業上優れた効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒を用いて重合され、且つ下記(A1)〜(A3)の特性を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体50〜90重量%及び、下記(B1)〜(B2)の特性を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体10〜50重量%からなる樹脂層を少なくとも一層有することを特徴とする農業用積層フィルム。
(A1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜20g/10分
(A2)示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃
(A3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5
(B1)メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)が0.1〜10g/10分
(B2)酢酸ビニル含有量が5〜25重量%
【請求項2】
内層及び外層に、下記(C1)〜(C3)の特性を有するエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体を用い、中間層として請求項1記載の樹脂層を配した農業用積層フィルム。
(C1)メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)が0.5〜10g/10分
(C2)密度が0.906〜0.924g/cm
(C3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5
【請求項3】
エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体がメタロセン触媒を用いて製造されたことを特徴とする請求項2記載の農業用積層フィルム。
【請求項4】
中間層に、請求項1記載のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂の合計量100重量部に対し、Mg、Ca、Zn、Liから選ばれる少なくとも一種とAlの(含水)複合水酸化物塩を1〜20重量部添加したことを特徴とする請求項2又は3に記載の農業用積層フィルム。


【公開番号】特開2008−273031(P2008−273031A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119192(P2007−119192)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】