説明

農産物用の着色された包装資材

【課題】レタスなどの非包装物との間に空間が保持され、或いは包装機におけるフィルム送りに資するように、ある程度の硬さ、ないしは、張りのある性質を有し、かつ、商品性の向上等を目的として着色され、しかもコスト高にならない農産物の着色された包装資材を提供する。
【解決手段】野菜類を始めとする農産物の包装のために使用するフィルム状の包装資材であって、フィルム状資材は、複数の樹脂組成物から成る多層フィルム構造を有し、上記フィルム状資材の多層フィルム構造は、空冷インフレーション装置による共押出し成形法によって成形されたものであり、かつ多層フィルム構造中の1層が、包装対象の野菜類と同系色に、一部又は全体が着色された着色フィルムであり、上記着色フィルムの厚さを1〜3μmとした構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜類を始めとした農産物を包装するために使用するフィルム状の着色された包装資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野菜類を包装するためのフィルム状資材については、これまでもレタスなどの、いわゆる葉物を始めとする野菜その他のものについて使用されている。この野菜包装用のフィルムは、フィルムでありさえすれば良いというものではなく、適切な包装性能の求められるものである。例えば、キュウリやナスなどの果菜類や、ニンジン、ジャガイモなどの根菜類などは、いわゆるビニール袋に包装されている。これに対して、レタス用のフィルム状包装資材は、包んでいるレタスとの間に空間が保持されるように、ある程度の硬さ、ないしは、張りのある性質が求められる。これまで用いられているレタス用のフィルムも、上記の性質を満たすものであるが、しかし単層フィルムであったために、裂けたり破れたりしやすいという問題があった。なお、ある程度の硬さ、ないしは、張りのある性質は、包装機におけるフィルム送りのためにも有効性が高い。
【0003】
また、この種のフィルム状資材では、被包装物の色彩を均一化させたり、商品性を向上させたり、というような意図のもとに、着色フィルムを使用することもある。ところが、この種のフィルムはこれまでTダイ方式によって形成されており、Tダイ方式はプラントのように大規模な設備を必要とするため、一旦着色フィルムを成形した場合には、洗浄に大量の樹脂材料を消費することになるので、着色はコストを増大させる原因になり、生産効率的にも困難である。また、単層フィルムに十分な着色を施すとなると、フィルムの厚さの全体に多量の着色剤を分散することになり、これもコストを押し上げる原因になる。着色によるコストを下げるために、フィルムの厚さを減少すればさらに強度不足となり、実用に耐えないものとなることは明らかである。なお、農産物の包装用フィルムとして関連する技術には、例えば特開平5−177783号があるが、同発明は耐酷使性と高い気体透過度などを兼ね備えた農産物包装用フィルムであり、野菜類の鮮度保持を目的とするものである。また、特開平9−1744号、特開2001−171058号も農産物の包装を目的とするものであるが、鮮度保持が目的であり、それ以上のものではない。
【0004】
【特許文献1】特開平5−177783号
【特許文献2】特開平9−1744号
【特許文献3】特開2001−171058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたものであり、その課題は、例えばレタスなどの被包装物との間に空間が保持されるように、或いは包装機におけるフィルム送りに資するように、ある程度の硬さ、ないしは、張りのある性質を有し、かつ、商品性の向上等を目的として着色され、しかもコスト高にならない農産物用の着色された包装資材を提供することである。また本発明の他の課題は、大規模な生産設備を必要とせずに生産可能な農産物用の着色された包装資材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、野菜類を始めとした農産物を包装するために使用するフィルム状の包装資材について、フィルム状資材として、複数の樹脂組成物から成る多層フィルム構造を有するものを使用し、上記フィルム状資材の多層フィルム構造は、空冷インフレーション装置による共押出し成形法によって成形されたものとし、かつ多層フィルム構造中の1層が、包装対象の野菜類と同系色に、一部又は全体が着色された着色フィルムとし、上記着色フィルムの厚さを1〜3μmとする、という手段を講じたものである(請求項1記載の発明)。
【0007】
本発明に係る農産物用の着色された包装資材は、農産物の包装に使用することを目的とするものである。農産物は、一般に、農業によって生み出される産品を指すが、中でも野菜類が主な対象である。適用可能な野菜類としては、例えばレタスのような葉物類、キュウリやナスなどの果菜類、及びニンジン、ジャガイモのような根菜類など野菜一般を含むが、本発明に係るフィルム状の包装資材の場合には、どちらかといえばレタスのような葉物類が、包装対象として適している。
【0008】
フィルム状資材としては、複数の樹脂組成物から成る多層フィルム構造を有するものを使用する。2層以上の多層フィルム構造は、フィルム状資材全体の構造強度を高める方向に作用し、また、単層フィルムにおける裂け易さを改良する方向にも作用する。一般に単層フィルムではロールの縦方向には強いが横方向に弱いとされているが、本発明の多層フィルム構造とすることによって上記の問題を解決することができる。さらに、多層フィルム構造中の1層を極薄として、この層に特別の機能を持ったフィルム要素を適用することにより、強度の著しい向上と、着色によるコスト高を抑制することができる。
【0009】
より具体的に説明すれば、多層フィルム構造中の少なくとも1層を構成するフィルム要素として、強度の高いフィルムを使用するという条件を満たすことが必要である。この条件を満たすフィルムであればどのようなものでも良いが、メタロセン(metallocene)触媒法によって製造されたものは特に好ましい(請求項2記載の発明)。この1層を構成するフィルム要素は、機械的強度が特に優れており、光学的には透明性に優れた性能を発揮するので、上記の特別の機能を持ったフィルム要素の役割を果たす。
【0010】
メタロセン触媒は、一義的な分子構造を持つ錯体であり、ただ1種類の活性点を持つ、構造的曖昧さのない触媒であり、メタロセン触媒法によって製造されたフィルムは、従来のチグラー(Ziegler)触媒を用いる方法と比較して、構造的な均一性が大きいという利点がある。かくしてメタロセン触媒法によって製造されたフィルムは強度が著しく高く、そのため極薄で目的の強度を発揮し、また、透明性も優れていることと相まって、染料、顔料の量が少なくても良好な着色、発色が得られるので、経済性が損なわれることもない。
【0011】
多層フィルム構造の中間の1層を構成するフィルム要素は、メタロセン触媒法を除く製法によって成形されたものであっても良い(請求項3記載の発明)。メタロセン触媒法を除く製法によって成形されたフィルムとしては、メタロセン触媒法以外の製法によって製造された、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、環状オレフィン、ポリアミド(PA)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアセタールの内から選ばれた、何れか1種類を使用することが望ましい。このうち、本発明の目的に最も適しているのはポリプロピレンであり、ポリエチレンがそれに次ぐ。例えばメタロセン触媒法により製造されたポリプロピレンを材料とするフィルム要素の場合、1〜3μmの厚さがあれば十分に目的を達する。
【0012】
本発明に係る、多層フィルム構造を構成するフィルム状資材は、3層又はそれ以上の多層フィルム構造を有するものであること、そして、全体の厚さが、10〜40μmであることが望ましい(請求項4記載の発明)。3層構造を取る場合、メタロセン触媒法により製造されるフィルム要素は中央に配置し、外側のフィルム要素でサンドイッチする構造とすることが望ましい。なお、全体の厚さが10μm未満では強度が不足する傾向となり、40μmを超える厚さでは強度過剰となり、扱いもしにくくなるからである。3層構造を取る場合、本発明の目的を果たすフィルムとして、内層にはメタロセン(metallocene)触媒法によって製造された直鎖状低密度ポリエチレンフィルムや、メタロセン触媒法によって製造されたポリプロピレンフィルムが強度、コストなどの面から最良であり、メタロセン触媒法以外の製法によって製造された、ポリプロピレン、ポリエチレン等がそれに次ぐ。外層には、透明度に優れ、ツヤがあり、コシも強いなどという理由から、ポリプロピレンフィルムを適用することが望ましい。また、内層のフィルムに着色を施すことにより、色落ちの問題を避けることができる。
【0013】
農産物は、緑黄色野菜を始めとして、例えば、レタス、ブロッコリー、カリフラワー、パプリカなどは、色合いの良さが大きな影響を持つ。このため着色フィルムで包装することの利点も小さくないわけであるが、その目的の一つとして、被包装物の色彩を均一にすることが挙げられる。その色の濃淡が目立つ野菜でも品質や栄養の面では差のない場合が殆どであるにも拘らず、見た目に左右されて売行きに大きな差が出るのは好ましくない。このような場合に、着色フィルムにより色の濃淡の差を弱めて均一化することにより、商品価値の均一化を図ることができる。着色は、フィルム全体に及んでいわゆる着色フィルムとする方法だけではなく、無色透明部分と着色透明部分が交互に並ぶ縞模様を形成する方法もあり、任意の着色形態を選択することができる。なお、文字、図柄などは、フィルムの着色とは別に、外側フィルムに印刷する方が良い。
【0014】
さらに本発明において必要とされる重要な事項は、多層フィルム構造を有するフィルム状資材が、空冷インフレーション装置による共押出し成形法によって成形されたものであることである(請求項4記載の発明)。野菜包装などに使用されるフィルム製造は、これまで、ほとんどTダイ方式によって行なわれてきたが、Tダイ方式による装置はプラントレベルの大掛かりな設備であり、装置の建設に数十億円を超えるような巨費が掛かるので容易には実施できなかったものであるが、最近実用化された空冷インフレーション装置の場合、小規模なものでは数千万円程度と経費の負担が少なくて実施できるという利点がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、例えばレタスなどの被包装物との間に空間が保持されるように、或いは包装機におけるフィルム送りに資するように、ある程度の硬さ、ないしは、張りのある性質を有し、かつ、商品性の向上等を目的として着色され、しかもコスト高にならない農産物用の着色された包装資材を提供することができるという効果を奏する。また本発明によれば、大規模な生産設備を必要としない空冷インフレーション法により生産可能な農産物用の着色された包装資材を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図示の実施形態を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明に係る農産物用の着色された包装資材10の一例を示す断面図であり、フィルム状資材11は、3種の樹脂組成物を共押出しして得られる外層フィルム12、13と、内層フィルム14から成る多層フィルム構造を有し、多層フィルム構造の中央の1層を構成するフィルム要素即ち内装フィルム14は、メタロセン触媒法によって製造され、かつ、包装対象の野菜類と同系色の色素15を分散して着色された着色フィルムから成る。上記着色された内層フィルム14の厚さは1〜3μmが望ましい範囲であった。
【0017】
例示したフィルム状資材11の内層フィルム14は、メタロセン(metallocene)触媒法によって製造された直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであり、外層フィルム12、13はポリプロピレンフィルムである。内層フィルム14の厚さは1〜3μmが望ましい範囲であり、全体の厚さは10〜40μmが望ましい範囲であるが、実施した例では、内層フィルム14の厚さは2μm、外層フィルム12、13の厚さは夫々6μmであった。従って、フィルム状資材11全体の厚さは約14μmである。
【0018】
色素15を分散する方法には、内層フィルム14の全体に分散して着色透明フィルムを形成する図2の方法と、一部にのみ分散する図3の方法を実施し、後者の例では、無色透明部分16と着色透明部分17が交互に並ぶ縞模様を形成している。縞模様を形成する方法としては、例えば、多色同時押出し法とでもいうべき技術を使用することができる。
【0019】
メタロセン触媒法以外の製法によって製造された樹脂組成物から成る、多層フィルム構造のものについても、ほぼ同様の構成を取る。例えば、一般的なチグラー法によって製造されたポリプロピレン、ポリエチレン等を用いた場合において、内層フィルム14の厚さは2μm、外層フィルム12、13の厚さは夫々6μmであった。従って、フィルム状資材11全体の厚さは約14μmである。
【0020】
図4は、本発明に係る多層フィルム構造を有するフィルム状資材を共押出し成形により製造する、上向き空冷インフレーションフィルム成形装置の例を示す。図において、20はホッパー、21は押出し機、22は3層の樹脂を共押し出しする3重のノズルから成るエアーリングであり、3重のインフレーションフィルム18を上向きに押出し、タワー上端のピンチロール23で平坦な3重のインフレーションフィルム18′とする。24は安定版を示す。平坦な3重のインフレーションフィルム18′はスリット25及び任意の切断手段を用いて1枚のシート状に切り開かれ、本発明に係る着色された包装用資材10の外形を備えたもの18″となり、第2ピンチロール26を介してワインダー27に巻き取られる。
【0021】
このように本発明に係る農産物用の着色された包装資材は、野菜類を始めとする農産物の包装のために使用するフィルム状の包装資材として、野菜類と同系色に着色され、かつ抑制されたコストで製造可能なものであり、有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る農産物用の着色された包装資材の一例を示す断面図。
【図2】同上の一例を示す部分平面図。
【図3】同じく他の例を示す部分平面図。
【図4】本発明に係る農産物用の着色された包装資材を製造するための装置を示す側面説明図。
【符号の説明】
【0023】
10 包装用資材
11 フィルム状資材
12、13 外層フィルム
14 内層フィルム
15 色素
16 無色透明部分
17 着色透明部分
18、18′、18″ インフレーションフィルム
20 ホッパー
21 押出し機
22 エアーリング
23 ピンチロール
24 安定版
25 スリット
26 第2ピンチロール
27 ワインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜類を始めとする農産物の包装のために使用するフィルム状の包装用資材であって、
フィルム状資材は、複数の樹脂組成物から成る多層フィルム構造を有し、
上記フィルム状資材の多層フィルム構造は、空冷インフレーション装置による共押出し成形法によって成形されたものであり、かつ多層フィルム構造中の1層が、包装対象の野菜類と同系色に、一部又は全体が着色された着色フィルムであり、上記着色フィルムの厚さを1〜3μmとしたことを特徴とする農産物用の着色された包装資材。
【請求項2】
多層フィルム構造の中間の少なくとも1層を構成するフィルム要素は、メタロセン触媒法によって成形されたポリプロピレン又はポリエチレンの何れかより成る請求項1記載の農産物用の着色された包装資材。
【請求項3】
多層フィルム構造の中間の1層を構成するフィルム要素は、メタロセン触媒法を除く製法によって製造された、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状オレフィン、ポリアミド、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアセタールの内から選ばれた、何れか1種よりなる請求項1記載の農産物用の着色された包装資材。
【請求項4】
フィルム状資材は、3層以上の多層フィルム構造を有し、全体の厚さが、10〜40μmである請求項1記載の農産物用の着色された包装資材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−213230(P2008−213230A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51806(P2007−51806)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(391023529)三愛化成商事株式会社 (1)
【出願人】(305044420)
【Fターム(参考)】