近接場光導波路
【課題】導波効率の高い近接場光導波路を提供する。
【解決手段】誘電体層と、誘電体層内に分散された金属ナノ粒子群を有し、金属ナノ粒子の粒径が4nmから100nmの範囲にありかつ金属ナノ粒子の中心間の距離と金属ナノ粒子の直径との比が1.1から3.8の範囲にある。金属ナノ粒子は、内部に金属コアと外周部に有機物からなるシェルを有するコアシェル構造のナノ粒子であって、前記金属コアとして金(Au)または銀(Ag)から形成される。
【解決手段】誘電体層と、誘電体層内に分散された金属ナノ粒子群を有し、金属ナノ粒子の粒径が4nmから100nmの範囲にありかつ金属ナノ粒子の中心間の距離と金属ナノ粒子の直径との比が1.1から3.8の範囲にある。金属ナノ粒子は、内部に金属コアと外周部に有機物からなるシェルを有するコアシェル構造のナノ粒子であって、前記金属コアとして金(Au)または銀(Ag)から形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光であるプラズモンを導波する近接場光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ロードマップITRSによるとLSIは2015年頃よりリーク電流や回路内の情報遅延などの問題により、進歩が衰えるといわれており、それに変わる情報制御システムの一つとして近接場システムが提唱されている。光システムは波長多重性、光速情報伝達性、高速論理演算性を有しているが、回折限界があるため集積化には向かないといわれている。しかし近年、回折限界がない近接場光が提唱されてきたことで、この問題は解決される可能性がでてきた。
【0003】
一般に、近接場光は金属系−いわゆるプラズモンを用いる方が、相互作用が強いことが知られている。プラズモン導波には一次元金属細線、一次元サブミクロンドット(あるいは円柱)配列が知られている。一次元金属配線では金属表面で発生する表面プラズモンポラリトンが導波する。すなわち、表面でのみエネルギーが導波する。また一次元サブミクロン配列方式でも、表面で発生するプラズモンがエネルギーを導波するが、球間のスペースもエネルギー伝達空間となる。そして、特許文献1には、直径が4nmの金ナノ粒子を分散した系においてもプラズモンが導波することが示されている。
【0004】
このように、情報伝達で有効なプラズモンは、表面プラズモン、あるいは表面プラズモンポラリトンである。金属ナノ構造体に光を照射すると光の電場により金属ナノ構造体の自由電子が振動する。金属ナノ構造体の表面においては自由電子が光電場の振動に従い、金属ナノ構造体(原子核結晶体)の表面位置から外側へ出たり、内側へ入ったりする。その場合、金属ナノ構造体における電気的中性条件が崩れ、分極が発生する。その分極が表面プラズモンの起源である。この場合、電子は一つ一つ別々の位相で振動するよりも集団で同位相の振動運動をすることがエネルギー的に安定であり、集団で同位相の振動運動は、素励起の一つである。
【特許文献1】特開2007−148289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プラズモンの導波は一般的にロスが大きく、SoC(System on Tip)のローカル配線のような、微細で短距離の情報伝達には向いているが、チップ間光配線やグローバル配線のような長距離の導波の実現には大きな課題となっている。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、導波効率の高い近接場光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による近接場光導波路は、誘電体層と、前記誘電体層内に分散された金属ナノ粒子群を有し、前記金属ナノ粒子の粒径が4nmから100nmの範囲にありかつ金属ナノ粒子の中心間の距離と金属ナノ粒子の直径との比が1.1から3.8の範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導波効率の高い近接場光導波路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を説明する前に本発明に至った経緯について説明する。
【0010】
特許文献1に記載のプラズモン導波路においては、導波スペースが金属ナノ粒子の間であることにより導波ロスは少ない。しかし、電場強度は金属ナノ粒子間の距離が短い方が強い。
【0011】
また、表面プラズモンとして考えれば、吸収に関係しては、体積の対する表面積の比が大きい方、すなわち球の直径が小さい方が全体の相互作用が強い。しかし、金属ナノ粒子の中心間の距離が平均自由工程より小さすぎると、金属としての特性が落ち、プラズモン導波の効率が悪くなる。
【0012】
したがって、金属ナノ粒子のサイズ(直径)や間隔(中心間距離)は導波特性にとって最適値が存在するはずであると、本発明者達は考え、鋭意研究に努めた結果、下記の結論を得ることができた。
【0013】
有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションと実験を行った結果、金属ナノ粒子の直径が10nm近傍、直径と球の中心間距離の比が1.5の近傍にあることが有効である結果を得た。
【0014】
次に、実現するための材料作製プロセスについて述べる。材料系ではコアシェル構造金属ナノ粒子系が粒子の直径や粒子間距離を良く制御できる可能性があり、最も有効である。
【0015】
金をコアとするコアシェル構造はチオール系のリガンドを用いるが、この場合、粒子合成時に利用する還元剤の還元能力が高いため、2nm〜3.5nm程度の比較的小さな直径の粒子しか作ることはできなかった。
【0016】
一方で、アミンを利用した粒子の作製法があり、アミン系の粒子ではAuおよびAgの粒子が合成できる。その中でもオレイルアミンを利用した手法は直径が5nm〜30nm程度の粒子を作製することが可能となり、好ましい。有機溶剤への溶解性とその後の薄膜形成、および粒子の直径の大径化、これらの条件を満たす径が10nm前後の金属ナノ粒子が最も望ましい。小径の金属ナノ粒子では伝播光によるプラズモンポラリトンの発生効率が低く、また金属ナノ粒子の直径が20nmを越えると有機溶媒への溶解性が低下する。
【0017】
本発明の一実施形態において、直径が10nmの金属ナノ粒子を実現するためには、第1級のアミンを用いる必要があることを見出した。第2級および第3級アミン、また第1級でも多官能型アミンでは所望のナノ粒子が合成されない。例えば、エチレンジアミンやp−n−アニリンのようなアミンでは溶媒への溶解性が良い粒子が合成されないし、アリルメチルアミンやジブチルアミンのような2級アミンでも同様に好適な金属ナノ粒子は生成されない。第1級の1官能性長鎖アミンに限って、可溶性で、金属コア粒子の直径が適切で、薄膜安定性の良い、の3要素を満たすことが判明した。可溶性は通常は固体で安定化させて保存し、これを必要に応じて溶媒に溶かして利用するために必要な要素である。金属コア粒子の直径の最適化は伝播光によるプラズモンポラリトン発生の効率を高め、薄膜安定性は導波路への加工に必要な要素である。
【0018】
次に、コア粒子の直径、およびコア粒子の直径と粒子の中心間距離と比の評価方法について述べる。金属コア粒子の直径の評価はTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法が的確である。材料の段階でグリッドに掬い上げて観察するグリッドTEMは比較的安価でコアの直径のみを観察するのには都合がよい。TEMでは奥行きの距離の情報が無く、粒子の中心間距離が判別できないため、コア粒子の直径と粒子の中心間距離と比は、熱分析によって算出した。
【0019】
次に、コア粒子の直径と粒子の中心間距離と比を算出するために用いた熱分析について説明する。コアシェル型のナノ粒子が充填された薄膜内では、粒子のシェルの厚みがコアである金属部の距離を決めている。したがって、シェルとなる有機物がコアである金属の周囲に存在している体積が重要となる。しかしながら、ナノサイズの金属粒子を被覆している有機物の体積を直接調べる手法は無く、体積量から密度を用いて間接的に算出する方法が用いられる。このため、ナノ粒子に熱を加えて、有機物が昇華する重量損失を求めれば、ナノ粒子を被覆している有機物重量が算出できる。この方法には示差熱・熱重量同時分析測定装置を用いるのが良い。この方法は、500度という高温まで物質を加熱することができ、同時に重量の変化を観察することができる。この方法を用いることにより、重量変化、すなわち有機物の重量損失を知ることができる。重量損失から密度を用いて体積を計算することが可能であり、体積から被覆している有機物の厚みを見積もることができる。図1および図2に示すように、例えば、コアとなるAu粒子2の密度が19.3g/cm3であり、有機物4を0.781g/cm3(n−オクチルアミンの比重)とすると、重量減少量が10wt%の時に、Auと有機物との比率は1:1.03となる。粒子2が完全な球であるとして、体積V=4πr3/3として、コアのAu粒子2の半径をr=5nmとし、有機物4の厚みを「a」とする。この時、球2の中心を通る直線上(Y方向とする)に有機物4が占める距離は、2a=5.5nmと見積もることができる。この見積もりの結果から、コア2間の距離がコア2の半径以下となるのは重量損失が10wt%より小さい時であると見積もることができる。
【0020】
下記の表1に、計算結果を示す。例えば金属コアの粒子の直径を10nmとすると、金属コアの粒子の直径とコアの中心間距離との比は1.5が好ましい値だが、これはコアの表面間の距離が5nmであることを示しており、表1に対応させると重量損失は7.0wt%から10.0wt%の間に最適値が存在する。この条件はAuのコア2と、有機物4として1級アミンの組み合わせを選択することによって得られる条件であることを、本発明者達は、見出した。
【表1】
【0021】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1を説明する。この実施例1において、FDTDシミュレータを用いて、銀ナノ粒子が分散されたプラズモンポラリトン導波路系の導波効率の測定を行った。この測定は図3に示す装置で行った。この装置は、光源から発生された波長が1μmの光がSiO2からなる伝播光導波路を伝播し、その後、この伝播光導波路に接合された、銀ナノ粒子(Agナノ粒子)が分散された幅が100nmのプラズモンポラリトン導波路との接合面で近接場光であるプラズモンポラリトンに変換され、上記プラズモンポラリトン導波路中を伝播する。SiO2からなる伝播光導波路はPtで覆われており、プラズモン導波路は空気で覆われている。そして、伝播光導波路中の上記接合面近傍と、プラズモンポラリトン導波路中に光の強度を測定するモニターが設けられている。そして、銀ナノ粒子の直径と、銀ナノ粒子の中心間距離を変えた複数種類のプラズモンポラリトン導波路を用意し、それぞれの導波効率の測定を行った。銀ナノ粒子中心間の距離と銀ナノ粒子の直径との比を横軸にとり、銀ナノ粒子の直径を縦軸にとり、測定した導波効率の等高曲線を図4に示す。
【0022】
図4から、銀ナノ粒子の粒径が4nmから100nmであってかつ銀ナノ粒子の中心間の距離と銀ナノ粒子の直径との比とが1.1から3.8の範囲において、導波効率が高いことがわかった。また、銀ナノ粒子の直径が7nmから25nmであってかつ銀ナノ粒子の中心間の距離と銀ナノ粒子の直径との比が1.4から1.8の範囲ではさらに高く、直径=10nmでかつ銀ナノ粒子の中心間の距離と銀ナノ粒子の直径との比が1.5である場合に最も導波効率が得られることがわかった。
【0023】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
【0024】
(1)オレイルアミン型のAgナノ粒子の合成
バイアル管に酢酸銀0.50gとオレイルアミン20.0gを加えてローターにて撹拌し、固体成分を溶解させた。これを還流状態のヘキサン100mlの入った丸底フラスコに入れて、24時間還流を続けた。反応が進行すると黄色から橙色、濃赤色に変化した。室温まで放冷して、200mlのメタノールを加えて沈殿を形成させた。デカントによりメタノールを取り除き、残った固体を再度メタノールで洗った。再びメタノールをデカントで取り除いた。フラスコ内の固体を10mlのトルエンに溶解させてメタノール100mlで再沈殿を形成させた。この作業を数回繰り返して固体を洗浄した。黒色固体0.1gを得た。これを物質A(Ag)とする。リガンドの構造を以下に示す。
【化1】
【0025】
(2)オレイルアミン型のAuナノ粒子の合成
バイアル管にテトラクロロ金酸1.00gとオレイルアミン20.0g、トルエン10.0mlの混合液を入れて固体成分を溶解させ、これを溶液A1とした。オレイルアミン20.0gと20mlのトルエンからなる溶液を80度に熱した丸底フラスコ内に、上記溶液A1を加えて溶液Bを作った。この溶液Bをさらに加熱して、2時間還流を行なった。室温になるまで放冷して200mlメタノールに入れ沈殿を形成した。これを濾集して再びトルエンに溶解してメタノールで沈殿を形成した。メタノールで固体を洗浄して濾集した。緑黒色固体0.1gを得た。これを物質B(Au)とする。リガンドの構造は物質A(Ag)の場合と同じである。
【化2】
【0026】
(3)示差熱・熱重量同時分析測定
上記のようにして得られた、物質A(Ag)と物質B(Au)に対して、示差熱・熱重量同時分析測定(セイコーインスツルメンツ、TG/DTA6200ECSTAR6000)を利用して有機物シェルの損失に相当する重量損失(wt%)を調べた。この結果を表2に示す。
【表2】
【0027】
(4)グリッドTEM観察
また、物質A(Ag)と物質B(Au)に対して、グリッドTEM観察を行ったところ、物質A(Ag)は金属コア径が平均約11nm程度、物質B(Au)は金属コア径が平均約8.5nm程度であることが分かった。なお、図5に物質A(Ag)のグリッドTEMによる観察写真を示し、図6に物質B(Au)のグリッドTEMによる観察写真を示す。
【0028】
(5)PP確認光学測定
物質A(Ag)、物質B(Au)を各々トルエンに溶解した。この溶液をスピンコート法により、BK7プリズムの全反射形成面上に成膜を行なった。スピンコータ用の専用台上部にプリズムを固定できるアルミニウム製の冶具を設置した。これをスピンコータの回転部位に設置して1000rpmの高速回転を行なった。
【0029】
この試料系で白色光を光源とするATR(Attenuated Total Reflection)測定を行った。測定系を図7に示す。ATRはプラズモンポラリトンを測定する際に一般的に使用されている方法であり、通常はHe−Neレーザー等の小型レーザーを光源とする。フォトン(伝播光)やプラズモンポラリトンにはエネルギー(波長に対応)と波数(運動量に対応)に対応関係(図8)があり、それを分散関係と呼ぶが、これはフォトンとプラズモンポラリトンで異なった対応関係となっている。従って、通常は波長(エネルギー)が同一でも波数が異なる。しかし、光(フォトン)からプラズモンにエネルギーが移動するには、エネルギーと運動量が一致する必要がある。この波数(運動量)の不一致を解消する方法がATR法である。プリズムの全反射面ではエバネッセント光が発生する。その波数はプリズムへの入射角度によって変わり、その波数は、
【数1】
で表される。ここで、Kはエバネッセント光の波数、ω0は入射光の角運動量(波長に対応)、cは光速、ngはプリズムの屈折率、θは全反射面の垂線からの入射角である。また、光の電場成分がプリズム全反射面に垂直な偏光をp偏光、面内にある偏光をs偏光というが、エバネッセント光はp偏光の入射の時に発生する。このエバネッセント光の波数がプラズモンポラリトンの波数に一致したときにエネルギーが移動する。従って、特定の波長のレーザー光が、角度を変化させながら入射した場合、ある角度で全反射光量が減少する。また、光源を白色にするとある特定の角度では特定の波長が吸収される。ここで、波数は入射角度によって決まるため、入射角度によって吸収ピークの波長が変化することが、プラズモンポラリトンが導波する証明となる。
【0030】
プリズムに入射する光として、入射角度が45度のp偏光に設定して測定し、吸収ピークを570nm付近に確認した後、入射角度を42度、48度に変えて吸収ピークを観察した。これらの結果、光の入射角度に対して、吸収ピークが長波長方向へシフトする傾向が見られた。この結果によって、プラズモンポラリトンの発生を確認した。物質A(Ag)の測定結果を図9に示す。また物質B(Au)の測定結果を図10に示す。ここで、このスペクトルはハロゲンランプのスペクトルを用いた吸収スペクトルのデータであるため、透過スペクトルとハロゲンランプのスペクトルの掛け合わせとなっている。
【0031】
(比較例)
次に、比較例について説明する。
【0032】
(1)チオールで作った小径粒子の場合
テトラクロロ金酸1.0gを水60mlに溶解し、TOAB3.3gをトルエン100mlに溶解させて、双方を混合した。分液状態の2層を強制撹拌して混ぜ合わせた。ここにノルマル−1−ドデカンチオール0.6gをトルエン20mlに溶解させて加えた。水素化ホウ素ナトリウム1.1gを60mlの水に溶かした溶液をさらに加えた。3時間撹拌を続けたあと、分液を行った。有機層を取り出して濃縮した後、アルコールに沈殿させた。黒色粉末を濾集した。黒色固体0.1gを得た。これを物質C(Au)とする。リガンド構造を以下に記す。
S−(CH2)12
【0033】
次に、硝酸銀0.5gを水に溶かして水溶液とした。この水溶液60mlを、TOAB5.36gが溶解したトルエン溶液100mlと混合した。分液状態の2層を強制攪拌して混ぜ合わせる。ノルマル−1−ドデカンチオール2.98gをトルエン20mlに溶解させて加える。室温で10分ほど攪拌した後、水素化ホウ素ナトリウム3.89gを水溶液60mlに溶解した溶液を加えた。3時間撹拌を続けた後に分液を行った。有機層を取り出して濃縮した後、アルコールに沈殿させた。白色粉末を濾集した。黒色固体0.1gを得た。これを物質D(Ag)とする。リガンド構造を以下に記す。
S−(CH2)12
【0034】
次に、物質C(Au)および物質D(Ag)をトルエンに溶解させ、プリズム上に1000rpmでスピンコートし、薄膜を形成した。薄膜が形成されたプリズムを図7に示す光学系に組み込み、全反射測定を行なった。特有の吸収ピークは吸収量が少なく、ノイズ信号と分離することが困難であった。入射角度に対する波長シフトが確認できる状態ではなかった。
【0035】
示差熱・熱重量同時分析測定(セイコーインスツルメンツ、TG/DTA6200ECSTAR6000)を利用して有機物シェルの損失に相当する重量損失(wt%)を調べた。この結果を表3に示す。
【表3】
【0036】
テトラクロロ金酸1.0g水溶液60mlをテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)3.28gとトルエン溶液100mlとの混合溶液に加えた。分液状態の2層をマグネチックスターラで強制攪拌して混ぜ合わせた。ジ−n−ヘキシル−ジサルファイド0.607gをトルエン20mlに溶解させて加える。室温で10分ほど攪拌した後、水素化ホウ素ナトリウム1.13g水溶液60mlを攪拌された中に入れる。3時間攪拌し続けた後、有機層のみを取り出してエバポレータで濃縮した。一部析出した固体を含めて、再度トルエン30mlに溶解させた後、メタノール300mlに加えて攪拌して黒色固体を沈下させた。黒色固体0.1gを得た。これを物質E(Au)とする。リガンドの構造を以下に示す。
【化3】
【0037】
(2)グリッドTEM観察
物質C(Au)、物質D(Ag)、物質E(Au)に対して、グリッドTEM観察を行った。それぞれのグリッドTEM観察像を、図11、図12、図13に示す。これらの観察像から、物質C(Au)は粒径2.5nm、物質D(Ag)は粒径1.5nm、物質E(Au)は粒径約3.5nmであることが分かる。
【0038】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3として、金属ナノ粒子を用いた導波路加工について説明する。導波路のパターニングには凹型の溝に金属ナノ粒子を埋める方法(図14(a))と、予め平板の基板に金属ナノ粒子を堆積して凸型に切り出す方法(図14(b))の2種類が考えられる。溝に埋める場合には、予め基板に溝を掘っておき、そこに埋め込む。
【0039】
これに対して、基板上に形成したナノ粒子薄膜にパターニングを施して凸型の構造を作製する場合は、従来のガスによるドライエッチング法やウエット法による化学または物理エッチングをそのまま適用するのは難しく、新たな手法が求められる。コアが金属、シェルが有機物のコアシェル型金属ナノ粒子のエッチングを従来のドライエッチング法で行うと、金属と有機物を同時にエッチングするため、1種類のガスではエッチングできず、エッチング条件が複雑になる。また、堆積された金属ナノ粒子層をエッチングしようとすると、まず金属の回りの有機物をエッチングすることになり、金属が表面に出てくる。次に金属をエッチングすると、今度は有機物が表面に出てくる、この繰り返しとなるためエッチングが複雑化する。このため、常に遮蔽物が存在し、その下部に存在する金属ナノ粒子の均一なエッチングを妨げる。よって単に有機物エッチング用のガスを用いた後に金属エッチング用のガスを用いればよいわけではない。このため、均一なエッチングを実現することは極めて難しい。金属と有機物の複合型の粒子を用いることもあるが、この場合はレジストによる凹型の穴に金属ナノ粒子を堆積させ、レジストをリフトオフするという手法を用いる。この場合には、充填した金属ナノ粒子の溶液が蒸発する際に表面張力の影響によって湾曲した形状が形成されてしまい、断面が四角形にならないという問題も残る。
【0040】
これらの問題を解決するために、本実施例ではオゾンを利用したエッチング方法を用いた。オゾンによる酸素ラジカルの発生により、CとHからなる炭化水素部にC=Oの親水性基を発生させることができる。疎水性から親水性に変わった金属ナノ粒子は水系の溶液に溶け出すように性質が変化する。
【0041】
下記の式(1)から式(3)に一重項酸素の発生メカニズムを示した。外部から紫外線相当の振動数(ν)を持つ光を入射して、酸素からオゾンを介して、活性化された酸素の一種である一重項酸素が連続して生成される。この一重項酸素が露出した金属ナノ粒子の有機シェル部位に衝突して、シェル部位の有機物質を改質する。改質された有機物質は親水性を有するため、後に水系の酸アルカリなどで処理することで、溶液中に溶け込んで取り除くことが可能となる。このようなメカニズムによって、有機物と金属の複合物質であるコアシェル型金属ナノ粒子の回路形成が簡便で効率的に行なえる。
【0042】
図15ではジ−n−ヘキシル−ジサルファイドからなるAuナノ粒子に酸素ラジカルを照射した場合に、直鎖のアルカン鎖に官能基発生に伴う吸収が現れている。IR測定では、主に1200cm−1や1700cm−1にピークが現れていることからカルボン酸(C=O)に由来したピークである。このようにアルカン鎖を改質して、金属ナノ粒子全体の性質を疎水性から親水性へと変化させて、これを水系溶剤でエッチングしてパターンを形成する。エッチングされた膜厚が0.4μmであったが、数μm程度まで同様の手法を用いることができる。表面付近の親水性粒子が溶媒に溶け込む際に膜内部の粒子を同時に引き剥がしてゆく力が働くためである。
(式1) O2 + hν(185nm) → 2×O(3P)
(式2) O(3P) + 2O2 → O3 + O2
(式3) O3 + hν(254nm) → O(1D) +O2
ここで、P、Dは全角運動量子数を示し、肩の値は多重度である。また、hはプランク定数、νは光の振動数を示している。
【0043】
本実施例のプロセス工程を図16(a)乃至図16(h)を参照して説明する。本実施例を用いて回路形成を行なうためには、金属ナノ粒子を堆積させた基板上に、予めレジストによる回路パターンを転写しておく必要がある。支持基板20を用意し、この支持基板20上に金属ナノ粒子層22を塗布する(図16(a)、16(b))。
【0044】
続いて、金属ナノ粒子層22上にフォトレジストからなるレジスト層24を塗布する(図16(c))。このとき、レジスト24が金属ナノ粒子層22を溶かさない溶媒を使用していなければならない。例えばアルコール系の溶媒であれば金属ナノ粒子層22を溶かすことはない。スピンコート法によりレジスト層24を設けた後、100℃前後程度でプリベークし、このレジスト層24を、フォトマスク26を用いて露光し(図16(d))、マスクパターンを転写する。
【0045】
その後、TMAHなどで現像処理を行い(図16(e))、レジスト24が露光された部分24aのみを選択的に取り除き、取り除かれた領域の底部に金属ナノ粒子層22を露出させる。この時、金属ナノ粒子層22は親油性であるから、露出した金属ナノ粒子層22は水系のTMAH現像液によって同時に溶け出すことはない。
【0046】
その後、残ったレジスト層24bをオゾンガスに暴露する(図16(f))。オゾンに暴露されると金属ナノ粒子層22の露出部22aに親水性の官能基が生成する(図16(g))。オゾン発生装置はUV光による励起であるため、サンプルが紫外線に晒されて、残りのレジスト24bも全面露光される。次に水系の溶剤で処理すると、金属ナノ粒子層22の親水性官能基発生部22aが溶解すると同時に全面露光された残りのレジスト層24bも溶け出す(図16(h))。
【0047】
水系溶媒には、レジスト用の現像液であるTMAHを使うのが良い。以上説明したような処理工程を経ることで、基板上の所望の位置に金属ナノ粒子のみの凸型構造物を形成することが可能となる。
【0048】
(1)リソグラフィープロセスによる凸型の導波路
本実施例の製造プロセスを用いて凸型の導波路を形成した。その工程を以下に説明する。
【0049】
支持基板としてガラス基板を用意した。前述のナノ粒子物質A(Ag)、物質B(Au)、物質E(Au)の内から1つを選び、トルエンに溶解してスピンコート法により1000rpmで製膜した。次にi線レジスト(THMR−iP5720HP、東京応化工業)をスピンコート法で塗布して90℃でプリベークを行った。ラインマスクパターン(ライン幅5μm)に従った露光を行い、110℃でポストベークしたのち、ディベロッパー(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液、TMAH)で露光部を剥離した。
【0050】
充分に乾燥させた後に、オゾン発生装置(DP−6506、TOYODA)に入れて1時間オゾン暴露を行った。続いてディベロッパーに浸漬してパドリングし、マスクとなっていたレジストを剥離した。プロセスは図15のものを用いた。レーザー顕微鏡(KEYENCE、超深度形状測定顕微鏡VK−8510)で観察した結果、図17に示すようなパターンが形成されていた。
【0051】
(2)リフトオフプロセスによる凸型の導波路
本実施例の製造プロセスを用いて凸型の導波路を形成した。その工程を以下に説明する。
【0052】
支持基板としてガラス基板を用意した。i線レジスト(THMR−iP5720HP、東京応化工業)をスピンコート法で塗布して90℃でプリベークを行った。ラインマスクパターン(ライン幅5μm)に従った露光を行い、110℃でポストベークしたのち、ディベロッパー(TMAH水溶液)で露光部を剥離した。物質A(Ag)、物質B(Au)、物質E(Au)をトルエンに溶解し、スピンコート法を用いて2000rpmで製膜した。40℃で30分乾燥させた後、全面露光を行ってレジストを感光させ、エタノール溶液に浸漬して取り除いた。図18に示す配線パターンを得た。なお、図18は、レーザー顕微鏡を用いた観察像を示す。
【0053】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4を説明する。
【0054】
Snをシード(seed)とした還元銀析出法により有機SiO2膜中にAgナノ粒子を析出させた。グリッドTEMで調べたところ、作製時期や温度によって試料内のAgナノ粒子の平均直径や、銀ナノ粒子の中心間の平均距離と銀ナノ粒子の平均直径との比にばらつきが生じ、それぞれを分類して分けた。
【0055】
有機SiO2膜中にAgナノ粒子を析出させ試料を、FIB(Focused Ion Beam)を用いて幅100nmに加工し、プラズモンポラリトン導波路を作製した。膜厚は約200nm、プローブへの入射波長はである。二つの近接場プローブを用い、一つを近接場光が入射するのに用い、他の一つを近接場光(プラズモン)の導波の観測に用い、導波ロスを測定した。この測定結果は、金属ナノ粒子の直径が10nm、金属ナノ粒子の中心間距離と、金属ナノ粒子の直径との比が1.5であるものが最も導波効率が高かった。
【0056】
(実施例5)
次に、本発明の実施例5について説明する。
【0057】
FIBで50nm直径の銀を円柱状に二次元状に加工し、その外側に囲うようにTEOSの加水分解で作製した有機SiO2膜の塗布を行った。膜厚は約500nmである。波長は同様に1μmである。この結果、やはり、金属ナノ粒子の直径が10nm、金属ナノ粒子の中心間距離と、金属ナノ粒子の直径との比が1.5であるものが最も導波効率が高かった。
【0058】
また、実施例5において銀ナノ粒子を金ナノ粒子に変えた場合においても実施例5と同様の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に用いられる金属ナノ粒子の断面図。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる金属ナノ粒子群の断面図。
【図3】本発明の実施例1で用いた導波効率を測定する装置を示す図。
【図4】本発明の実施例1で測定された導波効率の等高線を示す図。
【図5】物質AのグリッドTEMの観察写真。
【図6】物質BのグリッドTEMの観察写真。
【図7】ATR測定系を示すブロック図。
【図8】光とプラズモンの分散関係を示す図。
【図9】物質Aの全反射強度の入射光の波長に対する特性を示す図。
【図10】物質Bの全反射強度の入射光の波長に対する特性を示す図。
【図11】物質CのグリッドTEMの観察写真。
【図12】物質DのグリッドTEMの観察写真。
【図13】物質EのグリッドTEMの観察写真。
【図14】プラズモン導波路の例を示す斜視図。
【図15】酸素ラジカル照射処理を行う前後の透過率特性を示す図。
【図16】実施例3の製造方法を説明する断面図。
【図17】凸型導波路のレーザー顕微鏡による観察像を示す写真。
【図18】凸型導波路のレーザー顕微鏡による観察像を示す写真。
【符号の説明】
【0060】
2 金属ナノ粒子(コア)
4 有機物
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光であるプラズモンを導波する近接場光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ロードマップITRSによるとLSIは2015年頃よりリーク電流や回路内の情報遅延などの問題により、進歩が衰えるといわれており、それに変わる情報制御システムの一つとして近接場システムが提唱されている。光システムは波長多重性、光速情報伝達性、高速論理演算性を有しているが、回折限界があるため集積化には向かないといわれている。しかし近年、回折限界がない近接場光が提唱されてきたことで、この問題は解決される可能性がでてきた。
【0003】
一般に、近接場光は金属系−いわゆるプラズモンを用いる方が、相互作用が強いことが知られている。プラズモン導波には一次元金属細線、一次元サブミクロンドット(あるいは円柱)配列が知られている。一次元金属配線では金属表面で発生する表面プラズモンポラリトンが導波する。すなわち、表面でのみエネルギーが導波する。また一次元サブミクロン配列方式でも、表面で発生するプラズモンがエネルギーを導波するが、球間のスペースもエネルギー伝達空間となる。そして、特許文献1には、直径が4nmの金ナノ粒子を分散した系においてもプラズモンが導波することが示されている。
【0004】
このように、情報伝達で有効なプラズモンは、表面プラズモン、あるいは表面プラズモンポラリトンである。金属ナノ構造体に光を照射すると光の電場により金属ナノ構造体の自由電子が振動する。金属ナノ構造体の表面においては自由電子が光電場の振動に従い、金属ナノ構造体(原子核結晶体)の表面位置から外側へ出たり、内側へ入ったりする。その場合、金属ナノ構造体における電気的中性条件が崩れ、分極が発生する。その分極が表面プラズモンの起源である。この場合、電子は一つ一つ別々の位相で振動するよりも集団で同位相の振動運動をすることがエネルギー的に安定であり、集団で同位相の振動運動は、素励起の一つである。
【特許文献1】特開2007−148289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プラズモンの導波は一般的にロスが大きく、SoC(System on Tip)のローカル配線のような、微細で短距離の情報伝達には向いているが、チップ間光配線やグローバル配線のような長距離の導波の実現には大きな課題となっている。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、導波効率の高い近接場光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による近接場光導波路は、誘電体層と、前記誘電体層内に分散された金属ナノ粒子群を有し、前記金属ナノ粒子の粒径が4nmから100nmの範囲にありかつ金属ナノ粒子の中心間の距離と金属ナノ粒子の直径との比が1.1から3.8の範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導波効率の高い近接場光導波路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を説明する前に本発明に至った経緯について説明する。
【0010】
特許文献1に記載のプラズモン導波路においては、導波スペースが金属ナノ粒子の間であることにより導波ロスは少ない。しかし、電場強度は金属ナノ粒子間の距離が短い方が強い。
【0011】
また、表面プラズモンとして考えれば、吸収に関係しては、体積の対する表面積の比が大きい方、すなわち球の直径が小さい方が全体の相互作用が強い。しかし、金属ナノ粒子の中心間の距離が平均自由工程より小さすぎると、金属としての特性が落ち、プラズモン導波の効率が悪くなる。
【0012】
したがって、金属ナノ粒子のサイズ(直径)や間隔(中心間距離)は導波特性にとって最適値が存在するはずであると、本発明者達は考え、鋭意研究に努めた結果、下記の結論を得ることができた。
【0013】
有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションと実験を行った結果、金属ナノ粒子の直径が10nm近傍、直径と球の中心間距離の比が1.5の近傍にあることが有効である結果を得た。
【0014】
次に、実現するための材料作製プロセスについて述べる。材料系ではコアシェル構造金属ナノ粒子系が粒子の直径や粒子間距離を良く制御できる可能性があり、最も有効である。
【0015】
金をコアとするコアシェル構造はチオール系のリガンドを用いるが、この場合、粒子合成時に利用する還元剤の還元能力が高いため、2nm〜3.5nm程度の比較的小さな直径の粒子しか作ることはできなかった。
【0016】
一方で、アミンを利用した粒子の作製法があり、アミン系の粒子ではAuおよびAgの粒子が合成できる。その中でもオレイルアミンを利用した手法は直径が5nm〜30nm程度の粒子を作製することが可能となり、好ましい。有機溶剤への溶解性とその後の薄膜形成、および粒子の直径の大径化、これらの条件を満たす径が10nm前後の金属ナノ粒子が最も望ましい。小径の金属ナノ粒子では伝播光によるプラズモンポラリトンの発生効率が低く、また金属ナノ粒子の直径が20nmを越えると有機溶媒への溶解性が低下する。
【0017】
本発明の一実施形態において、直径が10nmの金属ナノ粒子を実現するためには、第1級のアミンを用いる必要があることを見出した。第2級および第3級アミン、また第1級でも多官能型アミンでは所望のナノ粒子が合成されない。例えば、エチレンジアミンやp−n−アニリンのようなアミンでは溶媒への溶解性が良い粒子が合成されないし、アリルメチルアミンやジブチルアミンのような2級アミンでも同様に好適な金属ナノ粒子は生成されない。第1級の1官能性長鎖アミンに限って、可溶性で、金属コア粒子の直径が適切で、薄膜安定性の良い、の3要素を満たすことが判明した。可溶性は通常は固体で安定化させて保存し、これを必要に応じて溶媒に溶かして利用するために必要な要素である。金属コア粒子の直径の最適化は伝播光によるプラズモンポラリトン発生の効率を高め、薄膜安定性は導波路への加工に必要な要素である。
【0018】
次に、コア粒子の直径、およびコア粒子の直径と粒子の中心間距離と比の評価方法について述べる。金属コア粒子の直径の評価はTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法が的確である。材料の段階でグリッドに掬い上げて観察するグリッドTEMは比較的安価でコアの直径のみを観察するのには都合がよい。TEMでは奥行きの距離の情報が無く、粒子の中心間距離が判別できないため、コア粒子の直径と粒子の中心間距離と比は、熱分析によって算出した。
【0019】
次に、コア粒子の直径と粒子の中心間距離と比を算出するために用いた熱分析について説明する。コアシェル型のナノ粒子が充填された薄膜内では、粒子のシェルの厚みがコアである金属部の距離を決めている。したがって、シェルとなる有機物がコアである金属の周囲に存在している体積が重要となる。しかしながら、ナノサイズの金属粒子を被覆している有機物の体積を直接調べる手法は無く、体積量から密度を用いて間接的に算出する方法が用いられる。このため、ナノ粒子に熱を加えて、有機物が昇華する重量損失を求めれば、ナノ粒子を被覆している有機物重量が算出できる。この方法には示差熱・熱重量同時分析測定装置を用いるのが良い。この方法は、500度という高温まで物質を加熱することができ、同時に重量の変化を観察することができる。この方法を用いることにより、重量変化、すなわち有機物の重量損失を知ることができる。重量損失から密度を用いて体積を計算することが可能であり、体積から被覆している有機物の厚みを見積もることができる。図1および図2に示すように、例えば、コアとなるAu粒子2の密度が19.3g/cm3であり、有機物4を0.781g/cm3(n−オクチルアミンの比重)とすると、重量減少量が10wt%の時に、Auと有機物との比率は1:1.03となる。粒子2が完全な球であるとして、体積V=4πr3/3として、コアのAu粒子2の半径をr=5nmとし、有機物4の厚みを「a」とする。この時、球2の中心を通る直線上(Y方向とする)に有機物4が占める距離は、2a=5.5nmと見積もることができる。この見積もりの結果から、コア2間の距離がコア2の半径以下となるのは重量損失が10wt%より小さい時であると見積もることができる。
【0020】
下記の表1に、計算結果を示す。例えば金属コアの粒子の直径を10nmとすると、金属コアの粒子の直径とコアの中心間距離との比は1.5が好ましい値だが、これはコアの表面間の距離が5nmであることを示しており、表1に対応させると重量損失は7.0wt%から10.0wt%の間に最適値が存在する。この条件はAuのコア2と、有機物4として1級アミンの組み合わせを選択することによって得られる条件であることを、本発明者達は、見出した。
【表1】
【0021】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1を説明する。この実施例1において、FDTDシミュレータを用いて、銀ナノ粒子が分散されたプラズモンポラリトン導波路系の導波効率の測定を行った。この測定は図3に示す装置で行った。この装置は、光源から発生された波長が1μmの光がSiO2からなる伝播光導波路を伝播し、その後、この伝播光導波路に接合された、銀ナノ粒子(Agナノ粒子)が分散された幅が100nmのプラズモンポラリトン導波路との接合面で近接場光であるプラズモンポラリトンに変換され、上記プラズモンポラリトン導波路中を伝播する。SiO2からなる伝播光導波路はPtで覆われており、プラズモン導波路は空気で覆われている。そして、伝播光導波路中の上記接合面近傍と、プラズモンポラリトン導波路中に光の強度を測定するモニターが設けられている。そして、銀ナノ粒子の直径と、銀ナノ粒子の中心間距離を変えた複数種類のプラズモンポラリトン導波路を用意し、それぞれの導波効率の測定を行った。銀ナノ粒子中心間の距離と銀ナノ粒子の直径との比を横軸にとり、銀ナノ粒子の直径を縦軸にとり、測定した導波効率の等高曲線を図4に示す。
【0022】
図4から、銀ナノ粒子の粒径が4nmから100nmであってかつ銀ナノ粒子の中心間の距離と銀ナノ粒子の直径との比とが1.1から3.8の範囲において、導波効率が高いことがわかった。また、銀ナノ粒子の直径が7nmから25nmであってかつ銀ナノ粒子の中心間の距離と銀ナノ粒子の直径との比が1.4から1.8の範囲ではさらに高く、直径=10nmでかつ銀ナノ粒子の中心間の距離と銀ナノ粒子の直径との比が1.5である場合に最も導波効率が得られることがわかった。
【0023】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
【0024】
(1)オレイルアミン型のAgナノ粒子の合成
バイアル管に酢酸銀0.50gとオレイルアミン20.0gを加えてローターにて撹拌し、固体成分を溶解させた。これを還流状態のヘキサン100mlの入った丸底フラスコに入れて、24時間還流を続けた。反応が進行すると黄色から橙色、濃赤色に変化した。室温まで放冷して、200mlのメタノールを加えて沈殿を形成させた。デカントによりメタノールを取り除き、残った固体を再度メタノールで洗った。再びメタノールをデカントで取り除いた。フラスコ内の固体を10mlのトルエンに溶解させてメタノール100mlで再沈殿を形成させた。この作業を数回繰り返して固体を洗浄した。黒色固体0.1gを得た。これを物質A(Ag)とする。リガンドの構造を以下に示す。
【化1】
【0025】
(2)オレイルアミン型のAuナノ粒子の合成
バイアル管にテトラクロロ金酸1.00gとオレイルアミン20.0g、トルエン10.0mlの混合液を入れて固体成分を溶解させ、これを溶液A1とした。オレイルアミン20.0gと20mlのトルエンからなる溶液を80度に熱した丸底フラスコ内に、上記溶液A1を加えて溶液Bを作った。この溶液Bをさらに加熱して、2時間還流を行なった。室温になるまで放冷して200mlメタノールに入れ沈殿を形成した。これを濾集して再びトルエンに溶解してメタノールで沈殿を形成した。メタノールで固体を洗浄して濾集した。緑黒色固体0.1gを得た。これを物質B(Au)とする。リガンドの構造は物質A(Ag)の場合と同じである。
【化2】
【0026】
(3)示差熱・熱重量同時分析測定
上記のようにして得られた、物質A(Ag)と物質B(Au)に対して、示差熱・熱重量同時分析測定(セイコーインスツルメンツ、TG/DTA6200ECSTAR6000)を利用して有機物シェルの損失に相当する重量損失(wt%)を調べた。この結果を表2に示す。
【表2】
【0027】
(4)グリッドTEM観察
また、物質A(Ag)と物質B(Au)に対して、グリッドTEM観察を行ったところ、物質A(Ag)は金属コア径が平均約11nm程度、物質B(Au)は金属コア径が平均約8.5nm程度であることが分かった。なお、図5に物質A(Ag)のグリッドTEMによる観察写真を示し、図6に物質B(Au)のグリッドTEMによる観察写真を示す。
【0028】
(5)PP確認光学測定
物質A(Ag)、物質B(Au)を各々トルエンに溶解した。この溶液をスピンコート法により、BK7プリズムの全反射形成面上に成膜を行なった。スピンコータ用の専用台上部にプリズムを固定できるアルミニウム製の冶具を設置した。これをスピンコータの回転部位に設置して1000rpmの高速回転を行なった。
【0029】
この試料系で白色光を光源とするATR(Attenuated Total Reflection)測定を行った。測定系を図7に示す。ATRはプラズモンポラリトンを測定する際に一般的に使用されている方法であり、通常はHe−Neレーザー等の小型レーザーを光源とする。フォトン(伝播光)やプラズモンポラリトンにはエネルギー(波長に対応)と波数(運動量に対応)に対応関係(図8)があり、それを分散関係と呼ぶが、これはフォトンとプラズモンポラリトンで異なった対応関係となっている。従って、通常は波長(エネルギー)が同一でも波数が異なる。しかし、光(フォトン)からプラズモンにエネルギーが移動するには、エネルギーと運動量が一致する必要がある。この波数(運動量)の不一致を解消する方法がATR法である。プリズムの全反射面ではエバネッセント光が発生する。その波数はプリズムへの入射角度によって変わり、その波数は、
【数1】
で表される。ここで、Kはエバネッセント光の波数、ω0は入射光の角運動量(波長に対応)、cは光速、ngはプリズムの屈折率、θは全反射面の垂線からの入射角である。また、光の電場成分がプリズム全反射面に垂直な偏光をp偏光、面内にある偏光をs偏光というが、エバネッセント光はp偏光の入射の時に発生する。このエバネッセント光の波数がプラズモンポラリトンの波数に一致したときにエネルギーが移動する。従って、特定の波長のレーザー光が、角度を変化させながら入射した場合、ある角度で全反射光量が減少する。また、光源を白色にするとある特定の角度では特定の波長が吸収される。ここで、波数は入射角度によって決まるため、入射角度によって吸収ピークの波長が変化することが、プラズモンポラリトンが導波する証明となる。
【0030】
プリズムに入射する光として、入射角度が45度のp偏光に設定して測定し、吸収ピークを570nm付近に確認した後、入射角度を42度、48度に変えて吸収ピークを観察した。これらの結果、光の入射角度に対して、吸収ピークが長波長方向へシフトする傾向が見られた。この結果によって、プラズモンポラリトンの発生を確認した。物質A(Ag)の測定結果を図9に示す。また物質B(Au)の測定結果を図10に示す。ここで、このスペクトルはハロゲンランプのスペクトルを用いた吸収スペクトルのデータであるため、透過スペクトルとハロゲンランプのスペクトルの掛け合わせとなっている。
【0031】
(比較例)
次に、比較例について説明する。
【0032】
(1)チオールで作った小径粒子の場合
テトラクロロ金酸1.0gを水60mlに溶解し、TOAB3.3gをトルエン100mlに溶解させて、双方を混合した。分液状態の2層を強制撹拌して混ぜ合わせた。ここにノルマル−1−ドデカンチオール0.6gをトルエン20mlに溶解させて加えた。水素化ホウ素ナトリウム1.1gを60mlの水に溶かした溶液をさらに加えた。3時間撹拌を続けたあと、分液を行った。有機層を取り出して濃縮した後、アルコールに沈殿させた。黒色粉末を濾集した。黒色固体0.1gを得た。これを物質C(Au)とする。リガンド構造を以下に記す。
S−(CH2)12
【0033】
次に、硝酸銀0.5gを水に溶かして水溶液とした。この水溶液60mlを、TOAB5.36gが溶解したトルエン溶液100mlと混合した。分液状態の2層を強制攪拌して混ぜ合わせる。ノルマル−1−ドデカンチオール2.98gをトルエン20mlに溶解させて加える。室温で10分ほど攪拌した後、水素化ホウ素ナトリウム3.89gを水溶液60mlに溶解した溶液を加えた。3時間撹拌を続けた後に分液を行った。有機層を取り出して濃縮した後、アルコールに沈殿させた。白色粉末を濾集した。黒色固体0.1gを得た。これを物質D(Ag)とする。リガンド構造を以下に記す。
S−(CH2)12
【0034】
次に、物質C(Au)および物質D(Ag)をトルエンに溶解させ、プリズム上に1000rpmでスピンコートし、薄膜を形成した。薄膜が形成されたプリズムを図7に示す光学系に組み込み、全反射測定を行なった。特有の吸収ピークは吸収量が少なく、ノイズ信号と分離することが困難であった。入射角度に対する波長シフトが確認できる状態ではなかった。
【0035】
示差熱・熱重量同時分析測定(セイコーインスツルメンツ、TG/DTA6200ECSTAR6000)を利用して有機物シェルの損失に相当する重量損失(wt%)を調べた。この結果を表3に示す。
【表3】
【0036】
テトラクロロ金酸1.0g水溶液60mlをテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)3.28gとトルエン溶液100mlとの混合溶液に加えた。分液状態の2層をマグネチックスターラで強制攪拌して混ぜ合わせた。ジ−n−ヘキシル−ジサルファイド0.607gをトルエン20mlに溶解させて加える。室温で10分ほど攪拌した後、水素化ホウ素ナトリウム1.13g水溶液60mlを攪拌された中に入れる。3時間攪拌し続けた後、有機層のみを取り出してエバポレータで濃縮した。一部析出した固体を含めて、再度トルエン30mlに溶解させた後、メタノール300mlに加えて攪拌して黒色固体を沈下させた。黒色固体0.1gを得た。これを物質E(Au)とする。リガンドの構造を以下に示す。
【化3】
【0037】
(2)グリッドTEM観察
物質C(Au)、物質D(Ag)、物質E(Au)に対して、グリッドTEM観察を行った。それぞれのグリッドTEM観察像を、図11、図12、図13に示す。これらの観察像から、物質C(Au)は粒径2.5nm、物質D(Ag)は粒径1.5nm、物質E(Au)は粒径約3.5nmであることが分かる。
【0038】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3として、金属ナノ粒子を用いた導波路加工について説明する。導波路のパターニングには凹型の溝に金属ナノ粒子を埋める方法(図14(a))と、予め平板の基板に金属ナノ粒子を堆積して凸型に切り出す方法(図14(b))の2種類が考えられる。溝に埋める場合には、予め基板に溝を掘っておき、そこに埋め込む。
【0039】
これに対して、基板上に形成したナノ粒子薄膜にパターニングを施して凸型の構造を作製する場合は、従来のガスによるドライエッチング法やウエット法による化学または物理エッチングをそのまま適用するのは難しく、新たな手法が求められる。コアが金属、シェルが有機物のコアシェル型金属ナノ粒子のエッチングを従来のドライエッチング法で行うと、金属と有機物を同時にエッチングするため、1種類のガスではエッチングできず、エッチング条件が複雑になる。また、堆積された金属ナノ粒子層をエッチングしようとすると、まず金属の回りの有機物をエッチングすることになり、金属が表面に出てくる。次に金属をエッチングすると、今度は有機物が表面に出てくる、この繰り返しとなるためエッチングが複雑化する。このため、常に遮蔽物が存在し、その下部に存在する金属ナノ粒子の均一なエッチングを妨げる。よって単に有機物エッチング用のガスを用いた後に金属エッチング用のガスを用いればよいわけではない。このため、均一なエッチングを実現することは極めて難しい。金属と有機物の複合型の粒子を用いることもあるが、この場合はレジストによる凹型の穴に金属ナノ粒子を堆積させ、レジストをリフトオフするという手法を用いる。この場合には、充填した金属ナノ粒子の溶液が蒸発する際に表面張力の影響によって湾曲した形状が形成されてしまい、断面が四角形にならないという問題も残る。
【0040】
これらの問題を解決するために、本実施例ではオゾンを利用したエッチング方法を用いた。オゾンによる酸素ラジカルの発生により、CとHからなる炭化水素部にC=Oの親水性基を発生させることができる。疎水性から親水性に変わった金属ナノ粒子は水系の溶液に溶け出すように性質が変化する。
【0041】
下記の式(1)から式(3)に一重項酸素の発生メカニズムを示した。外部から紫外線相当の振動数(ν)を持つ光を入射して、酸素からオゾンを介して、活性化された酸素の一種である一重項酸素が連続して生成される。この一重項酸素が露出した金属ナノ粒子の有機シェル部位に衝突して、シェル部位の有機物質を改質する。改質された有機物質は親水性を有するため、後に水系の酸アルカリなどで処理することで、溶液中に溶け込んで取り除くことが可能となる。このようなメカニズムによって、有機物と金属の複合物質であるコアシェル型金属ナノ粒子の回路形成が簡便で効率的に行なえる。
【0042】
図15ではジ−n−ヘキシル−ジサルファイドからなるAuナノ粒子に酸素ラジカルを照射した場合に、直鎖のアルカン鎖に官能基発生に伴う吸収が現れている。IR測定では、主に1200cm−1や1700cm−1にピークが現れていることからカルボン酸(C=O)に由来したピークである。このようにアルカン鎖を改質して、金属ナノ粒子全体の性質を疎水性から親水性へと変化させて、これを水系溶剤でエッチングしてパターンを形成する。エッチングされた膜厚が0.4μmであったが、数μm程度まで同様の手法を用いることができる。表面付近の親水性粒子が溶媒に溶け込む際に膜内部の粒子を同時に引き剥がしてゆく力が働くためである。
(式1) O2 + hν(185nm) → 2×O(3P)
(式2) O(3P) + 2O2 → O3 + O2
(式3) O3 + hν(254nm) → O(1D) +O2
ここで、P、Dは全角運動量子数を示し、肩の値は多重度である。また、hはプランク定数、νは光の振動数を示している。
【0043】
本実施例のプロセス工程を図16(a)乃至図16(h)を参照して説明する。本実施例を用いて回路形成を行なうためには、金属ナノ粒子を堆積させた基板上に、予めレジストによる回路パターンを転写しておく必要がある。支持基板20を用意し、この支持基板20上に金属ナノ粒子層22を塗布する(図16(a)、16(b))。
【0044】
続いて、金属ナノ粒子層22上にフォトレジストからなるレジスト層24を塗布する(図16(c))。このとき、レジスト24が金属ナノ粒子層22を溶かさない溶媒を使用していなければならない。例えばアルコール系の溶媒であれば金属ナノ粒子層22を溶かすことはない。スピンコート法によりレジスト層24を設けた後、100℃前後程度でプリベークし、このレジスト層24を、フォトマスク26を用いて露光し(図16(d))、マスクパターンを転写する。
【0045】
その後、TMAHなどで現像処理を行い(図16(e))、レジスト24が露光された部分24aのみを選択的に取り除き、取り除かれた領域の底部に金属ナノ粒子層22を露出させる。この時、金属ナノ粒子層22は親油性であるから、露出した金属ナノ粒子層22は水系のTMAH現像液によって同時に溶け出すことはない。
【0046】
その後、残ったレジスト層24bをオゾンガスに暴露する(図16(f))。オゾンに暴露されると金属ナノ粒子層22の露出部22aに親水性の官能基が生成する(図16(g))。オゾン発生装置はUV光による励起であるため、サンプルが紫外線に晒されて、残りのレジスト24bも全面露光される。次に水系の溶剤で処理すると、金属ナノ粒子層22の親水性官能基発生部22aが溶解すると同時に全面露光された残りのレジスト層24bも溶け出す(図16(h))。
【0047】
水系溶媒には、レジスト用の現像液であるTMAHを使うのが良い。以上説明したような処理工程を経ることで、基板上の所望の位置に金属ナノ粒子のみの凸型構造物を形成することが可能となる。
【0048】
(1)リソグラフィープロセスによる凸型の導波路
本実施例の製造プロセスを用いて凸型の導波路を形成した。その工程を以下に説明する。
【0049】
支持基板としてガラス基板を用意した。前述のナノ粒子物質A(Ag)、物質B(Au)、物質E(Au)の内から1つを選び、トルエンに溶解してスピンコート法により1000rpmで製膜した。次にi線レジスト(THMR−iP5720HP、東京応化工業)をスピンコート法で塗布して90℃でプリベークを行った。ラインマスクパターン(ライン幅5μm)に従った露光を行い、110℃でポストベークしたのち、ディベロッパー(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液、TMAH)で露光部を剥離した。
【0050】
充分に乾燥させた後に、オゾン発生装置(DP−6506、TOYODA)に入れて1時間オゾン暴露を行った。続いてディベロッパーに浸漬してパドリングし、マスクとなっていたレジストを剥離した。プロセスは図15のものを用いた。レーザー顕微鏡(KEYENCE、超深度形状測定顕微鏡VK−8510)で観察した結果、図17に示すようなパターンが形成されていた。
【0051】
(2)リフトオフプロセスによる凸型の導波路
本実施例の製造プロセスを用いて凸型の導波路を形成した。その工程を以下に説明する。
【0052】
支持基板としてガラス基板を用意した。i線レジスト(THMR−iP5720HP、東京応化工業)をスピンコート法で塗布して90℃でプリベークを行った。ラインマスクパターン(ライン幅5μm)に従った露光を行い、110℃でポストベークしたのち、ディベロッパー(TMAH水溶液)で露光部を剥離した。物質A(Ag)、物質B(Au)、物質E(Au)をトルエンに溶解し、スピンコート法を用いて2000rpmで製膜した。40℃で30分乾燥させた後、全面露光を行ってレジストを感光させ、エタノール溶液に浸漬して取り除いた。図18に示す配線パターンを得た。なお、図18は、レーザー顕微鏡を用いた観察像を示す。
【0053】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4を説明する。
【0054】
Snをシード(seed)とした還元銀析出法により有機SiO2膜中にAgナノ粒子を析出させた。グリッドTEMで調べたところ、作製時期や温度によって試料内のAgナノ粒子の平均直径や、銀ナノ粒子の中心間の平均距離と銀ナノ粒子の平均直径との比にばらつきが生じ、それぞれを分類して分けた。
【0055】
有機SiO2膜中にAgナノ粒子を析出させ試料を、FIB(Focused Ion Beam)を用いて幅100nmに加工し、プラズモンポラリトン導波路を作製した。膜厚は約200nm、プローブへの入射波長はである。二つの近接場プローブを用い、一つを近接場光が入射するのに用い、他の一つを近接場光(プラズモン)の導波の観測に用い、導波ロスを測定した。この測定結果は、金属ナノ粒子の直径が10nm、金属ナノ粒子の中心間距離と、金属ナノ粒子の直径との比が1.5であるものが最も導波効率が高かった。
【0056】
(実施例5)
次に、本発明の実施例5について説明する。
【0057】
FIBで50nm直径の銀を円柱状に二次元状に加工し、その外側に囲うようにTEOSの加水分解で作製した有機SiO2膜の塗布を行った。膜厚は約500nmである。波長は同様に1μmである。この結果、やはり、金属ナノ粒子の直径が10nm、金属ナノ粒子の中心間距離と、金属ナノ粒子の直径との比が1.5であるものが最も導波効率が高かった。
【0058】
また、実施例5において銀ナノ粒子を金ナノ粒子に変えた場合においても実施例5と同様の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に用いられる金属ナノ粒子の断面図。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる金属ナノ粒子群の断面図。
【図3】本発明の実施例1で用いた導波効率を測定する装置を示す図。
【図4】本発明の実施例1で測定された導波効率の等高線を示す図。
【図5】物質AのグリッドTEMの観察写真。
【図6】物質BのグリッドTEMの観察写真。
【図7】ATR測定系を示すブロック図。
【図8】光とプラズモンの分散関係を示す図。
【図9】物質Aの全反射強度の入射光の波長に対する特性を示す図。
【図10】物質Bの全反射強度の入射光の波長に対する特性を示す図。
【図11】物質CのグリッドTEMの観察写真。
【図12】物質DのグリッドTEMの観察写真。
【図13】物質EのグリッドTEMの観察写真。
【図14】プラズモン導波路の例を示す斜視図。
【図15】酸素ラジカル照射処理を行う前後の透過率特性を示す図。
【図16】実施例3の製造方法を説明する断面図。
【図17】凸型導波路のレーザー顕微鏡による観察像を示す写真。
【図18】凸型導波路のレーザー顕微鏡による観察像を示す写真。
【符号の説明】
【0060】
2 金属ナノ粒子(コア)
4 有機物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、前記誘電体層内に分散された金属ナノ粒子群を有し、前記金属ナノ粒子の粒径が4nmから100nmの範囲にありかつ金属ナノ粒子の中心間の距離と金属ナノ粒子の直径との比が1.1から3.8の範囲にあることを特徴とする近接場光導波路。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子の粒径が7nmから25nmの範囲にありかつ金属ナノ粒子の中心間の距離と金属ナノ粒子の直径との比が1.4から1.8の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の近接場光導波路。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子は、金、あるいは銀から形成されることを特徴とする請求項1または2記載の近接場光導波路。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子は、内部に金属コアと外周部に有機物からなるシェルを有するコアシェル構造のナノ粒子であって、前記金属コアとして金(Au)または銀(Ag)から形成され、前記有機物からなるシェルとして1級アミン、特にオレイルアミンまたはこの誘導体からなるシェルで形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の近接場光導波路。
【請求項1】
誘電体層と、前記誘電体層内に分散された金属ナノ粒子群を有し、前記金属ナノ粒子の粒径が4nmから100nmの範囲にありかつ金属ナノ粒子の中心間の距離と金属ナノ粒子の直径との比が1.1から3.8の範囲にあることを特徴とする近接場光導波路。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子の粒径が7nmから25nmの範囲にありかつ金属ナノ粒子の中心間の距離と金属ナノ粒子の直径との比が1.4から1.8の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の近接場光導波路。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子は、金、あるいは銀から形成されることを特徴とする請求項1または2記載の近接場光導波路。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子は、内部に金属コアと外周部に有機物からなるシェルを有するコアシェル構造のナノ粒子であって、前記金属コアとして金(Au)または銀(Ag)から形成され、前記有機物からなるシェルとして1級アミン、特にオレイルアミンまたはこの誘導体からなるシェルで形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の近接場光導波路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−38648(P2010−38648A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200017(P2008−200017)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低損失オプティカル新機能部材技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低損失オプティカル新機能部材技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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