説明

近接配置建物

【課題】複数の建物が近接配置されていても、それら建物同士が対向し合う側で、採光や通風を確保することが可能となる近接配置建物を提供すること。
【解決手段】同じ方向に延びる一対の道路R1,R2の間に設けられた分譲地11は、第1境界線L1によって一方の道路側と他方の道路側とに区分され、さらに、第2境界線L2によっても道路R1,R2に沿って複数に区分されている。これらの区分により、分譲地11は4つの敷地12a,12b,13a,13bに区画され、それぞれに戸建住宅22a,22b,23a,23bが密集状態で建てられている。各住宅22a,22b,23a,23bの第1境界線L1側は入隅形状に形成され、これにより、分譲地11の中央部には屋外共同スペースAが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土地が複数に区分されて設けられた複数の敷地にそれぞれ建物が建てられ、それら各建物が近接配置されてなる近接配置建物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、狭小敷地に住宅等の建物を建てる場合、敷地の全域を利用して、可能な限りの建築スペースが確保される。また、狭小敷地とまでいえない敷地であっても、道路に面して車両の駐車スペースや玄関へのアプローチが設けられたり、南側に道路が存在する敷地であれば前庭等が設けられたりする。このため、道路から奥まった位置に建物が配置されることが多い。
【0003】
ところで、分譲地においては、同じ方向に延びる道路間に存在する土地が、それら各道路と同じ方向に延びる第1境界線と、交差する方向に延びる第2境界線と、で区分される。これにより、一方の道路側の敷地と他方の道路側の敷地とに区分され、また、道路に沿っても複数の敷地に区分される(例えば、特許文献1の図5参照)。この場合、一方の道路側の敷地と他方の道路側の敷地にそれぞれ建てられる建物が、いずれも前述のような配置とされれば、それら各建物が近接配置される。そして、このような建物の近接配置により、敷地の境界線に迫るまで建物の建築スペースを確保する等、敷地の有効利用を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−81215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建物の近接配置は、前述のように敷地の有効利用を可能とする一方で、前記第1境界線側で対向し合う建物同士では、建物間の近接によって通風や採光が犠牲にされてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の建物が近接配置されていても、それら建物同士が対向し合う側で、採光や通風を確保することが可能となる近接配置建物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0008】
すなわち、第1の発明では、同じ方向に延びる道路間に存在する土地が、それら各道路と同じ方向に延びる第1境界線によって一方の道路側と他方の道路側とに区分され、該区分された各敷地に建物が建てられるとともに、それら各建物が近接配置されてなる近接配置建物において、前記第1境界線側で対向し合う各建物にはその対向側にそれぞれ入隅部が設けられ、各々の入隅部によって形成されたスペースを合わせて、前記各建物の利用者によって共同使用される屋外共同スペースが設けられている。
【0009】
この第1の発明によれば、第1境界線側で相対向し合う各建物は、その対向側に入隅部が設けられているため、当該対向側には、その第1境界線に迫るまで利用可能な部分と、第1境界線から一定程度離されて奥まった部分とが形成される。そして、対向し合う各建物同士で、その奥まったスペースが合わさってなる屋外共同スペースが存在することにより、その対向し合う側でも採光や通風が確保される。このため、複数の建物が近接配置されていても、第1境界線に迫るまで利用可能な部分の存在を確保しながら、その対向し合う側で採用や通風も併せて確保することができる。
【0010】
また、各建物の利用者によって共同使用される屋外共同スペースは、利用者同士での様々な利用法が考えられる。例えば、利用者同士でバーベキューをしたり、ペットを飼ったり、家庭菜園を作ったり、井戸端会議を楽しんだり、公園的空間としたりすることが考えられる。
【0011】
ちなみに、前記入隅部について、具体的には、建物の外壁部が入隅形状に形成されることにより設けられる場合はもとより、第1境界線側で他方の建物と対向する外壁部と、敷地に設置された壁体とで入隅形状に形成される場合も含まれる。ただ、前者のように、建物の外壁部そのものが入隅形状に形成されて入隅部が設けられた構成であれば、第1境界線側で対向し合う建物同士は、第1境界線に迫るまで屋内空間を設けて敷地の有効利用を図れる。そのため、敷地の有効利用という観点から近接配置されながら、一部で建物間にスペースを設けて採光や通風も確保できることの意義は高まる。加えて、各敷地が狭小敷地であったり、道路に面して車両の駐車スペースが設けられたりする場合には、敷地の有効利用という観点から、第1境界線側で建物同士を近接させる要請がより高まる。このため、第1の発明が有する効果はより一層顕著なものとなる。
【0012】
また、各建物が複数階建てである場合に、前記入隅部が下階部分に形成された場合には、その入隅部は下階部分から上階部分にわたる高さ方向全域に形成されていることが好ましい。下階部分に形成された屋外共同スペースが上階部分の張り出しによって覆われてしまうと、採光や通風を確保することができなくなってしまうからである。
【0013】
第2の発明では、前記土地は、さらに前記各道路に交差する方向に延びる第2境界線によって前記各道路に沿って複数に区分され、前記第1境界線及び前記第2境界線による区分により設けられた少なくとも4つの敷地にそれぞれ建物が建てられるとともに、それら各建物が密集配置されてなり、前記各建物には、前記土地の中心部分に前記屋外共同スペースが設けられるように、前記入隅部が形成されている。
【0014】
この第2の発明によれば、土地の中心部分に屋外共同スペースが設けられるため、その屋外共同スペースは4つの建物の外側から見え難い位置に配置される。これにより、4つの建物の利用者以外の者に対してプライバシーを確保できる。
【0015】
第3の発明では、前記各建物は、その屋内空間がパブリックゾーンとプライベートゾーンとに区分されるとともに、各ゾーンはそれぞれが前記第1境界線側の対向し合う側に外壁部を有するように配置され、前記入隅部は前記パブリックゾーンの前記外壁部を用いて形成され、該外壁部に前記各建物と前記屋外共同スペースとの間を出入りするための出入口が設けられている。
【0016】
この第3の発明によれば、各建物の屋内空間を2つのゾーンに区分し、そのうち、パブリックゾーンに面して屋外共同スペースが配置される。そして、各建物へはそのパブリックゾーンの外壁部に設けられた出入口を通じてのみ出入りが可能とされる。このため、個々の建物において、その利用者のプライバシーを確保することができる。なお、この場合、パブリックゾーンの外壁部を、プライベートゾーンの外壁部よりも道路側に後退させることで前記入隅部が形成される。
【0017】
第4の発明では、前記第1境界線側で対向し合う建物の少なくとも一方は、前記各ゾーンの前記外壁部の外壁面が同一平面をなすとともに、両者の境界部から他方の建物に向かって延びる壁体が敷地に設置されて、該壁体と前記パブリックゾーンの道路反対側外壁部とで入隅形状として前記入隅部を形成し、前記壁体は、前記プライベートゾーン側への視角を遮る遮蔽手段を兼用している。
【0018】
この第4の発明によれば、プライベートゾーンの外壁部に面して専用の庭スペースを設けた場合に、その庭スペースと屋外共同スペースとが壁体によって仕切られる。この壁体は遮蔽手段を兼ねており、屋外共同スペースから、専用の庭スペースを含めたプライベート側への視角が遮られる。これにより、個々の建物において、その利用者のプライバシーを確保することができる。
【0019】
第5の発明では、前記各建物は、前記屋外共同スペースから前記パブリックゾーンへ立ち入るための開閉体と、前記屋外共同スペースにおける前記開閉体近辺の検出領域で、人情報を検出する人情報取得手段と、前記開閉体に設けられた施錠装置の施開錠を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記人情報取得手段によって当該建物の利用者情報を取得した場合に前記施錠装置を開錠状態とし、他人情報を取得した場合に施錠状態とするように制御するようにした。
【0020】
この第5の発明によれば、開閉体近辺の検出領域で、建物の利用者情報を取得した場合は、開閉体の施錠装置が開錠状態とされるため、建物利用者は屋外共同スペースから建物のパブリックゾーンへ自由に立ち入ることができる。その一方で、他人情報を取得した場合は、開閉体の施錠装置が施錠状態とされるため、建物の非利用者が勝手にパブリックゾーンに侵入することを防止できる。これにより、屋外共同スペースが設けられた場合でも防犯性を確保することができる。
【0021】
第6の発明では、前記各建物は、前記パブリックゾーンが少なくとも2つに区分され、そのうち第1パブリックゾーンに面して前記屋外共同スペースが配置されており、前記屋外共同スペースから第1パブリックゾーンへ立ち入るための第1開閉体と、前記第1パブリックゾーンから第2パブリックゾーンへ立ち入るための第2開閉体と、前記第2パブリックゾーンからプライベートゾーンへ立ち入るための第3開閉体と、前記屋外共同スペースにおける前記第1開閉体近辺、前記第1パブリックゾーンにおける前記第2開閉体近辺、及び前記第2パブリックゾーンにおける前記第3開閉体近辺の各検出領域で人情報を取得する人情報取得手段と、前記第1パブリックゾーン、第2パブリックゾーン及びプライベートゾーンへの立ち入りが許可される者を設定する設定手段と、前記各開閉体に設けられた施錠装置の施開錠を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記人情報取得手段によって取得した人情報と、各ゾーンの性質とに応じて、前記各開閉体に設けられた前記施錠装置の施錠状態又は開錠状態を制御するようにした。
【0022】
この第6の発明によれば、各開閉体近辺の検出領域で、そこに存在する人の情報と、建物の屋内空間に設定されたゾーンの性質に応じて、開閉体の施錠装置が開錠又は施錠される。これにより、防犯性やプライバシーの確保を考慮しながら、ゾーンの性質によってそのゾーンへの立ち入りを許容する人を任意に設定できる点で好適となる。
【0023】
この場合、次のような制御が例として考えられる。すなわち、前記第1開閉体近辺で各建物の利用者情報を取得した場合には開錠状態とし、前記第2開閉体近辺で当該建物の利用者及びその利用者による許可者の情報を取得した場合には開錠状態とし、前記第3開閉体近辺で当該建物の利用者情報を取得した場合には開錠状態とし、いずれにおいても他の場合は施錠状態とする。これにより、複数建物を構成する各建物の利用者は、屋外共同スペースから各建物の第1パブリックゾーンへ自由に立ち入ることができる。また、個々の建物の利用者及びその利用者による許可者は、第1パブリックゾーンから第2パブリックゾーンに自由に立ち入ることができる。さらに、個々の建物の利用者だけが、第2パブリックゾーンからプライベートゾーンへ自由に立ち入ることができる。
【0024】
第7の発明では、前記人情報取得手段は、各建物の利用者がそれぞれ有するID端末より人情報を取得するようにし、かつ前記ID端末は建物利用者間で共同使用される車両の車両キーである。
【0025】
この第7の発明によれば、ID端末より人情報を取得するようにすることで、取得した人情報の認識の正確性を確保できる。また、そのID端末として、建物利用者間で共同使用される車両の車両キーを用いていることにより、カーシェアリングシステムを利用する場合に好適となる。
【0026】
第8の発明として、前記建物は複数階建てであり、前記入隅部は建物の上階部分に形成され、その入隅部の床部分と、それら各床部分を架け渡す屋外床部とで前記屋外共同スペースが形成されている。
【0027】
この第8の発明によれば、屋外共同スペースが上階部分に設けられていることにより、より採光を確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態として、分譲地及び各敷地に建てられた住宅を示す平面図。
【図2】第2実施形態として、分譲地及び各敷地に建てられた住宅を示す平面図。
【図3】第3実施形態として、分譲地及び各敷地に建てられた住宅を示す平面図。
【図4】第4実施形態として、分譲地及び各敷地に建てられた住宅を示す平面図。
【図5】2ゾーンの場合における、立入制御システムの電気的構成を示すブロック図。
【図6】3ゾーンの場合における、立入制御システムの電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
この実施の形態では、複数の敷地に区画された所定の分譲地において、それぞれ個々に戸建住宅が建てられ、かつそれらが近接(密集)配置されている形態を想定している。そして、この近接配置住宅(密集住宅)は、各住人に共同使用される屋外共同スペースと、個々の住宅に設けられ、前記屋外共同スペースから屋内空間へ住人でない者(非住人)の立ち入りを制御する立入制御システムと、を備えている。はじめに、屋外共同スペースを設ける場合の態様を説明し、その後、非住人の立入制御システムに関して説明する。
【0031】
[屋外共同スペースの設置に関する実施形態]
屋外共同スペースの実施態様を、第1乃至第4に分けて以下に説明する。
【0032】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態として、分譲地及び各敷地に建てられた住宅を示す平面図である。この図1に示されているように、東西方向に延びて互いに平行をなす一対の道路R1,R2間には、分譲地11が存在している。この分譲地11は、4つの敷地12a,12b,13a,13bに区画されている。それら各敷地12a,12b,13a,13bは、一対の道路R1,R2と平行に東西方向へ延びる第1境界線L1と、道路R1,R2に交差するように南北方向に延びる第2境界線L2とで区画されている。
【0033】
具体的には、第1境界線L1により、分譲地11は、南側道路R1に面する南側敷地12と、北側道路R2に面する北側敷地13とに区分されている。また、第2境界線L2により、南側道路R1及び北側道路R2のそれぞれに沿って2つの敷地に区分されている。したがって、分譲地11は、全体として、4つの敷地12a,12b,13a,13bに区画されている。
【0034】
各敷地12a,12b,13a,13bには、戸建住宅22a,22b,23a,23bが建てられている。それら住宅22,23は、それぞれの一階部分における屋内空間が、大きくパブリックゾーン26とプライベートゾーン27とに区分されている。パブリックゾーン26とは、訪問者等の非住人が一時的に滞在することを許容する屋内空間のことをいう。例えば、リビング、ダイニング、玄関ホール、土間等がこのパブリックゾーン26に含まれる。また、プライベートゾーン27とは、当該住宅の住人のみの滞在を許容する屋内空間のことをいう。例えば、寝室や書斎等の個室、浴室等がこのプライベートゾーン27に含まれる。
【0035】
住宅22,23の一階部分では、個々の屋内空間部がいずれかのゾーンに振り分けられ、ゾーン26,27ごとにまとめられている。そして、パブリックゾーン26とプライベートゾーン27とが東西に並んで配置されている。その場合、道路R1,R2に沿って隣り合う2戸の住宅(22a,22b又は23a,23b)で、互いに隣り合う側にパブリックゾーン26が配置されている。
【0036】
各敷地12a,12b,13a,13bの前記住宅22,23の建築スペースを除く部分には、アプローチ31、駐車スペース32、庭スペース33、共同使用スペース34が設けられている。そのうち、道路R1,R2に面するアプローチ31は、道路R1,R2との境界部分に設置された門扉等から住宅22,23の玄関ドア28に至る通路スペースであり、住人や訪問者が行き来する際に主として利用される。なお、玄関ドア28は、住宅22,23のパブリックゾーン26に通ずる位置に設けられている。
【0037】
同じく道路R1,R2に面する駐車スペース32は、車両Sを駐車するためのスペースであり、少なくとも1台(本実施の形態では2台)の車両Sが駐車可能となるだけのスペースが確保されている。これらのスペース31,32が道路側に設けられているため、住宅22,23は道路R1,R2から奥まった位置に配置されている。
【0038】
庭スペース33は、住宅22a,22b,23a,23bごとで、個々の住人に利用されるプライベートなスペースである。日当たりを得ながら、プライベート領域をまとめて配置するため、庭スペース33は住宅22,23のプライベートゾーン27南側(南側住宅22では道路側、北側住宅23では道路反対側)に設けられている。かかるスペースを確保すべく、南側住宅22のプライベートゾーン27部分は、その道路反対側の外壁部27aが第1境界線L1に迫る位置に存在する程度まで、道路反対側に奥まって配置されている。一方、北側住宅23のプライベートゾーン27部分は、その道路反対側の外壁部27aが、第1境界線L1よりも少なくとも2メートル程度離間するように配置されている。なお、道路反対側とは第1境界線L1側でもある。
【0039】
ちなみに、南側住宅22の庭スペース33では、平面視でL字形状をなす壁体35が設けられている。この壁体35により外からの視線が遮られ、庭スペース33を含むプライベート側のプライバシーが確保されている。また、同様に、北側住宅23の庭スペース33にも壁体35が設けられ、そのプライベート性が確保されている。北側住宅23では、仕切りとなるこの壁体35が第1境界線L1に沿って設けられているために、第1境界線Lに迫る外壁部27aを有する南側住宅22との間で近接配置されることになる。
【0040】
共同使用スペース34は、4戸の住宅22a,22b,23a,23bに居住する住人の全員が利用を許容されるスペースである。個々のプライベート領域(住宅22,23のプライベートゾーン27や庭スペース33)とは区画しながら、分譲地11の外からの視線も避けるため、各共同使用スペース34は、パブリックゾーン26の道路反対側に設けられている。各外壁部26aには共同使用スペース34に通ずる掃き出し窓部29が設けられ、この掃き出し窓部29を通じて共同使用スペース34とパブリックゾーン26との間を行き来することができる。なお、掃き出し窓部29は建物出入口に相当する。
【0041】
南側住宅22のパブリックゾーン26部分は、その道路反対側の外壁部26aがプライベートゾーン27のそれよりも道路側に後退して配置され、当該第1境界線L1よりも少なくとも2メートル程度離間している(図1のD1)。このため、南側住宅22では、パブリックゾーン26の道路反対側外壁部26aと、該外壁部26aが後退したことにより形成されたプライベートゾーン27の内側壁部27bと、で入隅部が形成されている。
【0042】
一方、北側住宅23でも、パブリックゾーン26部分を形成する道路反対側の外壁部26aが、第1境界線L1よりも少なくとも2メートル程度離間している(図1のD2)。北側住宅23では、前記庭スペース33も住宅23の道路反対側に設けられるため、共同使用スペース34は庭スペース33と隣接して設けられている。そのため、両スペース33,34の境界部には、ルーバー等を有する仕切り壁体36が設けられることで、庭スペース33のプライバシーが確保されている。北側住宅23では、この仕切り壁体36と、パブリックゾーン26の道路反対側外壁部26aとで入隅部が形成されている。また、この仕切り壁体36が、壁体及び遮蔽手段に相当する。
【0043】
このように各共同使用スペース34は、第1境界線L1と第2境界線L2との交差部分を中心とする周囲に配置されている。これら4つの共同使用スペース34がまとまって、一つの屋外共同スペースAが形成されている。各共同使用スペース34として提供される敷地面積は、各敷地12a,12b,13a,13bで平等となるように同一とされている。このため、分譲地11が均等に4つに区画されているこの実施形態では、屋外共同スペースAは分譲地11の中央部に設けられている。屋外共同スペースAの中央部には、例えば樹木37等が設けられている。
【0044】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態として、分譲地及び各敷地に建てられた住宅を示す平面図である。ここでは、南側住宅22及び北側住宅23はいずれも複数階建てのものとし、その上階部分を示している。以下では、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0045】
図2に示されているように、上階部分においても、第1実施形態と同様、屋内空間がパブリックゾーン26とプライベートゾーン27とに区分されている。プライベートゾーン27の道路反対側には、前記庭スペース33に代わる部分として、専用バルコニー43が設けられている。北側住宅23では、専用バルコニー43のバルコニー腰壁43aが第1境界線L1に迫る位置に設けられている。一方、南側住宅22では、プライベートゾーン27部分の道路反対側となる外壁部27aが第1境界線L1に迫る位置に設けられている。このため、バルコニー腰壁43aと道路反対側外壁部27aとは、互いに近接した状態となり、上階部分ではそこで南側住宅22と北側住宅23とが近接配置されている。
【0046】
パブリックゾーン26の道路反対側には、共同使用スペース34に代わる部分として共同使用バルコニー44が設けられている。各道路反対側外壁部26aには共同使用バルコニー44に通ずる掃き出し窓部29が設けられ、この掃き出し窓部29を通じて、共同使用バルコニー44とパブリックゾーン26との間を行き来することができる。
【0047】
南側住宅22のパブリックゾーン26部分は、その道路反対側の外壁部26aがプライベートゾーン27のそれよりも道路側に後退して配置されている。このため、南側住宅22では、パブリックゾーン26の道路反対側外壁部26aと、該外壁部26aが後退したことにより形成されたプライベートゾーン27の内側壁部27bと、で入隅部が形成されている。
【0048】
一方、北側住宅23でも、パブリックゾーン26部分を形成する道路反対側の外壁部26aが、バルコニー腰壁43aよりも道路側に後退して配置されている。また、北側住宅23では、専用バルコニー43が共同使用バルコニー44に隣接して設けられているため、両バルコニー43,44の境界部には、ルーバー等を有する仕切り壁体45が設けられている。これにより、北側住宅23が有する専用バルコニー43のプライベート性が確保されている。北側住宅23では、この仕切り壁体45と、パブリックゾーン26の道路反対側外壁部26aとで入隅部が形成されている。
【0049】
各共同使用バルコニー44の間、つまり、住宅22,23同士の間が同一高さの屋外床部46(図2の略十字状をなす部分)によって架け渡され、全体として一つの屋外共同バルコニーBが形成されている。ここでは、この屋外共同バルコニーBが屋外共同スペースに相当する。屋外共同バルコニーBも、屋外共同スペースAと同様に、分譲地11の中央部に設けられている。
【0050】
南側住宅22同士の間及び北側住宅23同士の間において、屋外床部46の縁部には手摺体47が設けられている。前記仕切り壁体45は、バルコニー間の境界部より、南側住宅22の道路反対側外壁部27aまで延長され、北側住宅23が有する専用バルコニー43のプライベート性がより高められている。
【0051】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態として、分譲地及び各敷地に建てられた住宅を示す平面図である。ここでは、前記第1実施形態と同様、住宅22,23は一階建てでも複数階建てでもよく、その一階部分の平面図を示している。以下では、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0052】
まず、屋内空間の構成が異なっている。図3に示されているように、分譲地11の各住宅22,23では、そのパブリックゾーン26が第1パブリックゾーン26−1と、第2パブリックゾーン26−2とに区分されている。第1パブリックゾーン26−1とは、非住人であっても、分譲地11に建てられた各住宅22,23の住人であれば一時的な滞在が予め許容される屋内空間のことをいう。例えば、土間等がこの第1パブリックゾーン26−1に含まれる。第2パブリックゾーン26−2とは、すべての非住人に対して、住人の許可がある限りで一時的な滞在が許容される屋内空間のことをいう。例えば、リビング、ダイニング、玄関ホール等がこの第2パブリックゾーン26−2に含まれる。
【0053】
パブリックゾーン26に含まれる屋内空間が、その2つのゾーンのいずれかに振り分けられ、ゾーン26−1,26−2ごとにまとめられている。そして、第1パブリックゾーン26−1と第2パブリックゾーン26−2とは、第1パブリックゾーン26−1が道路反対側となるように南北に並んで配置されている。このため、第1パブリックゾーン26−1の道路反対側に共同使用スペース34が設けられている。前記玄関ドア28は、共同使用スペース34から第1パブリックゾーン26−1に通ずるよう、パブリックゾーン26の道路反対側外壁部26aに設けられている。また、その外壁部26aには、前記掃き出し窓部29の代わりに腰窓部51が設けられ、採光を確保している。
【0054】
このように、各住宅22,23では、その屋内空間が3つのゾーン26−1,26−2,27に分けられている。各ゾーン26−1,26−2,27間は、屋内出入口52,53を通じて行き来できるようになっている。屋内出入口52,53は、第1パブリックゾーン26−1と第2パブリックゾーン26−2との間、及び第2パブリックゾーン26−2とプライベートゾーン27との間にそれぞれ設けられている。それら各屋内出入口52,53には、扉等の開閉体54がそれぞれ設けられている。なお、第1パブリックゾーン26−1とプライベートゾーン27との間には屋内出入口が設けられておらず、出入不能となっている。
【0055】
次に、各敷地12,13に設けられたスペースの配置が異なっている。第1パブリックゾーン26−1及び第2パブリックゾーン26−2それぞれの空間領域を確保するため、パブリックゾーン26全体としては、第1実施形態よりも道路側に張り出した状態となっている。また、前述したように、玄関ドア28は屋外共同スペースAに面して設けられている。これにより、アプローチ31の代わりに、道路R1,R2に沿って隣り合う住宅22,23同士の間に、共通アプローチ55が設けられている。また、駐車スペース32はその形成領域が狭くなり、道路R1,R2に沿った向きで1台の車両Sが駐車可能となるスペースが確保されているだけとなる。
【0056】
ただ、この実施形態においては、道路R1,R2に沿って隣り合う住宅22,23の住人間で、車両Saを共同使用するカーシェアリングシステムが採用されている。その共同使用される車両Saを駐車するための車両駐車スペース56が、駐車スペース32間に設けられている。
【0057】
[第4実施形態]
図4は、第4実施形態として、分譲地及び各敷地に建てられた住宅を示す平面図である。ここでは、前記第1実施形態において、北側住宅23の配置構成を異ならせたものである。すなわち、道路R1側に庭スペース33が設けられ、そのスペースを確保すべく、プライベートゾーン27部分は、その道路反対側の外壁部27aが第1境界線L1に迫る位置に存在する程度まで、道路反対側に奥まって配置されている。そして、パブリックゾーン26部分は、その道路反対側の外壁部26aがプライベートゾーン27のそれよりも道路側に後退して配置されている。このため、北側住宅23も、南側住宅22と同様、パブリックゾーン26の道路反対側外壁部26aと、該外壁部26aが後退したことにより形成されたプライベートゾーン27の内側壁部27bと、で入隅部が形成されている。
【0058】
[非住人の立入制御システム]
次に、非住人の立ち入りを制御する立入制御システムの実施形態について、以下に説明する。ここでは、住宅22,23の屋内空間が、上記第1、第2及び第4実施形態のように2ゾーンよりなる場合と、第3実施形態のように3ゾーンよりなる場合とに分けて説明する。
【0059】
[2ゾーンの場合]
図5は、2ゾーンの場合における、住宅の一部概略と、立入制御システムの電気的構成とを合わせて示すブロック図である。ここでは、当該システムが設置された住宅の例として、第1実施形態における、東側に配置された南側住宅22bを用いている。
【0060】
図5に示されているように、立入制御システムでは、当該システムが設置された住宅22bに居住する住人によってID端末61が所持されるようになっている。ID端末61は常時携帯することが可能な小型機器であり、例えば、玄関ドアの開閉に使用される電子キーや、携帯電話、通信機能を有するICカードがID端末61として用いられる。ID端末61のメモリには、それぞれの所持者ごとに異なる固有のIDコードが予め記憶されている。ID端末61は無線通信機能を有しており、外部との間でIDコードの無線通信が行われる。
【0061】
また、立入制御システムは、住宅22bに設置される構成部分を備えている。この構成部分として、立入制御の実行を司るコントローラ62を有している。コントローラ62は、CPUや各種メモリ等を含んで構成される周知のマイクロコンピュータであり、制御手段に相当する。そのメモリには、住宅22bの住人が所持する前記ID端末61のIDコードが、認証IDコードとして予め記憶されている。この認証IDコードを用いて、コントローラ62は受信したIDコードの認証を行う。また、このコントローラ62では、住宅22bの住人だけが、パブリックゾーン26への立ち入り許可されるように設定されている。
【0062】
そして、当該コントローラ62には、人検出部63と、掃き出し窓部29の施錠装置64とがそれぞれ接続されている。人検出部63は、人感センサ機能とID通信機能とを備えており、掃き出し窓部29が設けられた道路反対側外壁部26aに設けられている。掃き出し窓部29の屋外側に存在する共同使用スペース34を検出領域K1とし、その検出領域K1にて人を検知すると検知信号をコントローラ62に出力する。また、その検出領域K1内に存在するID端末61との間の無線通信により、IDコードを取得してコントローラ62に出力する。
【0063】
一方、施錠装置64は施錠と開錠とを電気的に行える電気錠であり、手動でも電気的にも施錠状態又は開錠状態の切換が可能な装置である。例えば、施錠又は開錠を行う駆動部を備えたクレセント錠等が施錠装置64として用いられる。施錠装置64はコントローラ62からの制御信号により、施錠又は開錠が切り替えられるようになっている。
【0064】
なお、ここでは、人検出部63が人情報取得手段に、掃き出し窓部29が開閉体に、検出領域K1が開閉体近辺の検出領域に相当する。
【0065】
上記構成を有する立入制御システムでは、コントローラ62により次のような制御が実行される。
【0066】
すなわち、人検出部63によってその検出領域K1に存在する人が検知されると、その人に対してID認証を行う。この認証処理では、人検出部63よりリクエスト信号を送信し、その応答として住人が所持するID端末61からIDコードを受信したか否かを判別する。その受信があれば、そのIDコードはメモリに記憶された認証IDコードと一致するため、その人が当該住宅22bの住人であると判断する。この場合、掃き出し窓部29の施錠装置64が施錠状態にあれば、その施錠装置64を制御して開錠状態に切り替える。これにより、住人は、掃き出し窓部29を開けて住宅22bに立ち入ることができる。
【0067】
これに対し、認証IDコードを受信しない場合は認証NGとし、その人は当該住宅22bの住人でない非住人であると判断する。その場合、掃き出し窓部29の施錠装置64が開錠状態にあれば、その施錠装置64を制御して施錠状態に切り替える。これにより、非住人が掃き出し窓部29を開けて、勝手に住宅22bに侵入することを防止できる。なお、認証NGであっても、検出領域K1に住宅22bの住人が存在するため、認証OKの判断が同時になされる場合には、認証OKの判断が優先される。
【0068】
[3ゾーンの場合]
図6は、3ゾーンの場合における、住宅の一部概略と、立入制御システムの電気的構成とを合わせて示すブロック図である。ここでも、立入制御システムが設置される住宅の例として、南側住宅22bを用いている。以下では、上記2ゾーンの場合と異なる部分を中心に説明する。
【0069】
前記ID端末61は、分譲地11の住人全員が所持するようになっている。そして、コントローラ62のメモリには、前記認証IDコードの他、分譲地11の他の住人が所持するID端末61のIDコードが許容IDコードとして予め記憶されている。また、コントローラ62は一時的な滞在許可が指令されることで、その許可された者が所持するID端末61のIDコードも一時的に記憶するようになっている。また、コントローラ62では、第1パブリックゾーン26−1への立ち入りは分譲地11の全住人が、第2パブリックゾーン26−2への立ち入りは住宅22bの住人とその住人により許可された者が、プライベートゾーン27への立ち入りは住人だけが許可されるように設定されている。このため、コントローラ62は制御手段だけでなく、設定手段を兼ねている。
【0070】
図6に示されているように、共同使用スペース34を検出領域K1とする人検出部63だけでなく、住宅22bの屋内にも人検出部71,72が設けられている。一つの人検出部71は、第1パブリックゾーン26−1の内壁に設けられ、屋内出入口52の前方領域を検出領域K2としている。他方の人検出部72は、第2パブリックゾーン26−2の内壁に設けられ、屋内出入口53の前方領域を検出領域K3としている。また、玄関ドア28、腰窓部51及び屋内出入口52,53の各開閉体54には、前記施錠装置64と同様に、それぞれ電気錠である施錠装置73〜75が設けられている。
【0071】
なお、ここでは、玄関ドア28が第1開閉体に、屋内出入口52の開閉体54が第2開閉体に、屋内出入口53の開閉体54が第2開閉体に相当する。また、検出領域K1が第1開閉体近辺の検出領域に、検出領域K2が第2開閉体近辺の検出領域に、検出領域K3が第3開閉体近辺の検出領域に相当する。
【0072】
上記構成を有する立入制御システムでは、コントローラ62により次のような制御が実行される。
【0073】
すなわち、人検出部63によって共同使用スペース34に存在する人が検知されると、その人に対してID認証を行う。認証IDコードの受信があれば認証OKとし、玄関ドア28が施錠状態にあれば、その施錠装置74を制御して開錠状態に切り替える。これにより、住人が玄関ドア28を開けて住宅22bに立ち入ることができる。
【0074】
次に、認証IDコードを受信しない場合、分譲地11の他の住人が所持するID端末61からIDコードを受信したか否かを判別する。その受信があれば、そのIDコードはメモリに記憶された許容IDコードと一致するため、その人は分譲地11の他の住人であると判断し、認証OKとする。この場合、玄関ドア28や腰窓部51の施錠装置73,74が施錠状態にあればその状態を維持し、開錠状態である場合でもその状態を維持する。これにより、分譲地11の住人は、玄関ドア28や腰窓部51の施錠装置73,74が開錠状態となっている限りで、住宅22bの第1パブリックゾーン26−1に立ち入ったり、腰窓部51を屋外側から開けることができる。
【0075】
これに対し、認証IDコードも許容IDコードも受信しない場合には認証NGとし、その人は当該住宅22bの住人でない非住人であり、かつ分譲地11の他の住人でもないと判断する。その場合、玄関ドア28や腰窓部51の施錠装置73,74が開錠状態にあれば、その施錠装置73,74を制御して施錠状態に切り替える。これにより、分譲地11の住人でない非住人が住宅22bに侵入することを防止できる。
【0076】
続いて、屋内の人検出部71によって、屋内出入口52の前方に存在する人が検知されると、その人に対してID認証を行う。その人が住宅22bの住人であり認証OKの場合、開閉体54が施錠状態にあれば、その施錠装置75を制御して開錠状態に切り替える。これにより、住人が開閉体54を開けて第2パブリックゾーン26−2に立ち入ることができる。
【0077】
認証により住人でないと判断された場合、その人が所持するID端末61のIDコードについて滞在許可の指令があったか否かを判別する。その許可があれば認証OKとし、開閉体54の施錠装置75が施錠状態にあればその状態を維持し、開錠状態である場合でもその状態を維持する。これにより、住人により立ち入りが許可された者は、開閉体54の施錠装置75が開錠状態とされている限りで、開閉体54を開けて第2パブリックゾーン26−2に立ち入ることができる。
【0078】
これに対し、非住人であり、かつ滞在許可の指令もない場合には認証NGとする。なお、ここでも、検出領域K2に住宅22bの住人が存在して認証OKの判断が同時になされる場合には、認証OKの判断を優先する。認証NGの場合、開閉体54の施錠装置75が開錠状態にあれば、その施錠装置75を制御して施錠状態に切り替える。これにより、滞在許可のない非住人が第2パブリックゾーン26−2に侵入することを防止できる。
【0079】
続いて、人検出部72によって屋内出入口53の前方に存在する人が検知されると、その人に対してID認証を行う。その人が住宅22bの住人であり認証OKの場合は、施錠装置75を制御して開錠状態に切り替える。これにより、住人はプライベートゾーン27に立ち入ることができる。
【0080】
これに対し、住宅22bの住人でない場合は認証NGとする。なお、ここでも、検出領域K3に住宅22bの住人が存在して認証OKの判断が同時になされる場合には、認証OKの判断を優先する。認証NGの場合、開閉体54の施錠装置75を制御して施錠状態に切り替える。これにより、住宅22bの住人だけがプライベートゾーン27に立ち入ることが可能で、非住人が同ゾーン27へ侵入することを防止できる。
【0081】
以上をまとめると、上記実施の形態によれば、以下に示す有利な効果が得られる。
【0082】
(1)第1境界線L1側で対向し合う南側住宅22と北側住宅23とは、その対向側に共同使用スペース34や共同使用バルコニー44が設けられている。これにより、その対向し合う側には、その第1境界線L1に迫るまで利用可能な部分と、第1境界線L1から離れて奥まった部分とが形成される。そして、各共同使用スペース34が合わさってなる屋外共同スペースA、各共同使用バルコニー44が合わさってなる屋外共同バルコニーBが存在することにより、その対向し合う側でも採光や通風が確保される。このため、南側と北側とで住宅22,23が近接配置されていても、第1境界線L1に迫るまで利用可能な部分の存在を確保しながら、その対向し合う側で採用や通風も併せて確保することができる。
【0083】
特に、第4実施形態のように、住宅22,23の外壁部そのものが入隅形状に形成されて共同使用スペース34が設けられている構成であれば、南北の住宅22,23同士は、第1境界線L1に迫るまで屋内空間を設けて敷地の有効利用を図れる。そのため、敷地12,13の有効利用という観点から近接配置されながら、一部で採光や通風も確保できることの意義は高まる。また、道路R1,R2に面して駐車スペース32が設けられている点でも、第1境界線L1側で住宅22,23同士を近接させる要請が高まっており、上記効果はより一層顕著なものとなる。
【0084】
(2)屋外共同スペースAや屋外共同バルコニーBは、各住宅22,23の住人同士での様々な利用法が考えられる。例えば、住人同士でバーベキューをしたり、ペットを飼ったり、家庭菜園を作ったり、井戸端会議を楽しんだり、公園的空間としたりすることが考えられる。その他、共同の物干しスペースとしたり、ランチパーティの場としたり、日曜大工で作品を作りあったりすることも考えられる。
【0085】
(3)屋外共同スペースAや屋外共同バルコニーBは、分譲地11の中央部分に設けられているため、各住宅22,23の外側から見え難い位置に配置されている。これにより、分譲地11の住人以外の者に対してプライバシーを確保できる。
【0086】
(4)住宅22,23の屋内空間がパブリックゾーン26とプライベートゾーン27の2つに区分され、各ゾーン26,27は東西に並んで配置されている。そして、屋外共同スペースA及び屋外共同バルコニーBは、そのうちパブリックゾーン26に面して設けられるため、個々の住宅22,23において、住人のプライバシーを確保できる。
【0087】
また、第1実施形態では、北側住宅23の道路反対側では、庭スペース33は共同使用スペース34に隣接して設けられているが、両スペース33,34の境界部には仕切り壁体36が設けられている。これにより、庭スペース33を含むプライベート側でのプライバシーを確保できる。
【0088】
(5)第3実施形態のように、パブリックゾーン26を第1ゾーン26−1と第2ゾーン26−2とに区分したことで、屋内の第1パブリックゾーン26−1も住人間の共同使用スペースとして利用するとも可能となり、様々な利用法が考えられる。例えば、各住人の趣味を紹介するスペースとしたり、共同で異なるペットを飼う場合に世話当番制としたり、一時的なごみ置き場として利用することで収集場所までの持ち運びを当番制にしたりすることが考えられる。
【0089】
(6)共同使用スペース34の検出領域K1に存在する人が住人であれば、掃き出し窓部29の施錠装置64が開錠状態とされ、非住人であれば施錠状態とされるため、非住人が勝手にパブリックゾーン26に侵入することを防止できる。これにより、屋外共同スペースAや屋外共同バルコニーBが設けられた場合でも、防犯性を確保することができる。
【0090】
そして、第3実施形態のように、パブリックゾーン26が二つに区分されている場合には、各検出領域K1〜K3で、そこに存在する人の情報と、各ゾーン26−1,26−2,27の性質に応じて、玄関ドア28や開閉体54の施錠装置74,75が開錠又は施錠される。これにより、ゾーン26−1,26−2,27の性質によって立ち入りを許容する人を任意に設定することができ、防犯性やプライバシーの確保にとって好適となる。
【0091】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0092】
(a)上記実施の形態では、分譲地11は、4つの敷地12a,12b,13a,13bが均等な面積となるように、2つの境界線L1,L2によって区画されているが、各敷地12a,12b,13a,13bの面積が互いに相違していてもよい。また、各住宅22a,22b,23a,23bも同じ平面形状をなすものではなく、交互に異なっていてもよい。また、東西方向に延びる道路R1,R2間ではなく、例えば南北等に延びる道路間に設けられた分譲地11であってもよい。
【0093】
(b)上記実施の形態では、住宅22,23に庭スペース33が設けられているが、庭スペース33は必須の構成ではなく、省略してもよい。例えば、都市部における狭小敷地では、庭スペース33まで確保する余裕はないからである。また、住宅22,23の屋内空間を、パブリックゾーン26とプライベートゾーン27とに区分することも必須の構成ではなく、省略してもよい。
【0094】
(c)上記実施の形態では、庭スペース33と共同使用スペース34との境界部、及び専用バルコニー43と共同使用バルコニー44との境界部に、それぞれ仕切り壁体36,45が設けられているが、これをシャッタ装置からなる壁体としてもよい。
【0095】
(d)上記第1、第3及び第4実施形態では、住宅22,23が一階建てであるか、複数階建てであるかを特定していないが、複数階建ての場合は、道路反対側の入隅部分が上階部分にわたる高さ方向全域に形成されていることが好ましい。一階部分に形成された屋外共同スペースAが上階部分の張り出しによって覆われてしまうと、採光や通風を確保することができなくなってしまうからである。
【0096】
(e)上記第2実施形態では、共同使用バルコニー44の下方は住宅22,23の一階部分が形成されているが、その下方が屋外空間であってもよい。その場合、屋外共同バルコニーBをグレーチングバルコニーとすれば、その下方の屋外空間に光を取り込むことが可能となる。
【0097】
(f)上記第3実施形態では、カーシェアリングシステムとして、道路R1,R2に沿って隣り合う住宅22,23の住人同士で車両Saを共同使用するようにしたが、4戸の住宅22,23の住人同士で車両Saを共同使用するようにしてもよい。
【0098】
(g)上記実施の形態では、近接配置建物を構成する建物として戸建住宅22a,22b,23a,23bを例として説明したが、集合住宅でも、店舗等の住宅以外の建物であってもよい。また、戸建住宅の場合でもあっても、各住宅22a,22b,23a,23bは分譲地11に建てられたものでなくてもよい。さらに、4戸でなくても、2戸や3戸、それ以上の戸数の戸建住宅であってもよい。もっとも、屋外共同スペースの存在によって採光と通風を確保する上では、同じ方向に延びる道路間に、一方の道路側の敷地と、他方の道路側の敷地とが隣り合って存在し、それら各敷地に建物が近接配置状態で建てられていることが好ましい。
【符号の説明】
【0099】
11…分譲地(土地)、12,13…敷地、22…南側住宅(建物)、23…北側住宅(建物)、26…パブリックゾーン、26…道路反対側外壁部(入隅部の構成部分)、26a…道路反対側外壁部、27…プライベートゾーン、27a…道路反対側外壁部、28…玄関ドア(開閉体)、29…掃き出し窓部(建物出入口、開閉体)、32…駐車スペース、37…仕切り壁体(壁体、遮蔽手段)、54…開閉体、61…ID端末、62…コントローラ(制御手段、設定手段)、63,71,72…人検出部(人情報取得手段)、64,74,75…施錠装置、A…屋外共同スペース、B…屋外共同バルコニー(屋外共同スペース)、K…検出領域、R1,R2…道路、S,Sa…車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ方向に延びる道路間に存在する土地が、それら各道路と同じ方向に延びる第1境界線によって一方の道路側と他方の道路側とに区分され、該区分された各敷地に建物が建てられるとともに、それら各建物が近接配置されてなる近接配置建物において、
前記第1境界線側で対向し合う各建物にはその対向側にそれぞれ入隅部が設けられ、各々の入隅部によって形成されたスペースを合わせて、前記各建物の利用者によって共同使用される屋外共同スペースが設けられていることを特徴とする近接配置建物。
【請求項2】
前記土地は、さらに前記各道路に交差する方向に延びる第2境界線によって前記各道路に沿って複数に区分され、前記第1境界線及び前記第2境界線による区分により設けられた少なくとも4つの敷地にそれぞれ建物が建てられるとともに、それら各建物が密集配置されてなり、
前記各建物には、前記土地の中心部分に前記屋外共同スペースが設けられるように、前記入隅部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の近接配置建物。
【請求項3】
前記各建物は、その屋内空間がパブリックゾーンとプライベートゾーンとに区分されるとともに、各ゾーンはそれぞれが前記第1境界線側の対向し合う側に外壁部を有するように配置され、
前記入隅部は前記パブリックゾーンの前記外壁部を用いて形成され、該外壁部に前記各建物と前記屋外共同スペースとの間を出入りするための建物出入口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の近接配置建物。
【請求項4】
前記第1境界線側で対向し合う各建物の少なくとも一方は、前記各ゾーンの対向外壁部の外壁面が同一平面をなすように形成され、両者の境界部から他方の建物に向かって延びる壁体が敷地に設置されて、該壁体と前記パブリックゾーンの対向外壁部とで入隅形状を形成して前記入隅部とし、
前記壁体は、前記プライベートゾーン側への視角を遮る遮蔽手段を兼用していることを特徴とする請求項3に記載の近接配置建物。
【請求項5】
前記各建物は、
前記屋外共同スペースから前記パブリックゾーンへ立ち入るための開閉体と、
前記屋外共同スペースにおける前記開閉体近辺の検出領域で、人情報を検出する人情報取得手段と、
前記開閉体に設けられた施錠装置の施開錠を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記人情報取得手段によって当該建物の利用者情報を取得した場合に前記施錠装置を開錠状態とし、他人情報を取得した場合に施錠状態とするように制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の近接配置建物。
【請求項6】
前記各建物は、
前記パブリックゾーンが少なくとも2つに区分され、そのうち第1パブリックゾーンに面して前記屋外共同スペースが配置されており、
前記屋外共同スペースから第1パブリックゾーンへ立ち入るための第1開閉体と、
前記第1パブリックゾーンから第2パブリックゾーンへ立ち入るための第2開閉体と、
前記第2パブリックゾーンからプライベートゾーンへ立ち入るための第3開閉体と、
前記屋外共同スペースにおける前記第1開閉体近辺、前記第1パブリックゾーンにおける前記第2開閉体近辺、及び前記第2パブリックゾーンにおける前記第3開閉体近辺の各検出領域で人情報を取得する人情報取得手段と、
前記第1パブリックゾーン、第2パブリックゾーン及びプライベートゾーンへの立ち入りが許可される者を設定する設定手段と、
前記各開閉体に設けられた施錠装置の施開錠を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記人情報取得手段によって取得した人情報と、各ゾーンの性質とに応じて、前記各開閉体に設けられた前記施錠装置の施錠状態又は開錠状態を制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の近接配置建物。
【請求項7】
前記人情報取得手段は、各建物の利用者がそれぞれ有するID端末より人情報を取得するようにし、かつ前記ID端末は建物利用者間で共同使用される車両の車両キーであることを特徴とする請求項5又は6に記載の近接配置建物。
【請求項8】
前記建物は複数階建てであり、前記入隅部は建物の上階部分に形成され、その入隅部の床部分と、それら各床部分を架け渡す屋外床部とで前記屋外共同スペースが形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の近接配置建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−220071(P2011−220071A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93314(P2010−93314)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】