説明

近赤外化学発光性アクリジニウム化合物およびその使用。

【課題】アクリジニウム化合物からの長波長発光を観察するために必要かつ十分な2つのセットの基準を同定すること。
【解決手段】本発明者らは、このように、アクリジニウム化合物からの長波長発光を観察するために必要かつ十分な2つのセットの基準を同定する:セットA:(a)適切な官能基をアクリジニウム核上に付加することによる拡張共役系の創製(電子的要件)。(b)付加した官能基とアクリドン部分が発光の間、同一平面上にあること(幾何学的要件)。(c)上記官能基は少なくとも1つの芳香環と、ヘテロ原子が直接付加し、あるいは組み入れられる拡張されたπ系中に容易に非局在化し得る余分の電子対を有する1つの電子供与性原子または基とから構成されなければならず、そして発光性アクリドンの電子吸引性カルボニル部分との安定な拡張された共鳴を樹立しなければならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は米国特許法第119条(e)の下、仮特許出願番号06/096,073(1998年8月11日出願)に基づく優先権を主張する。この開示は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は新規な化学発光アクリジニウム化合物に関し、これは近赤外(NIR)領域(>590nm)の近く、あるいはその領域内に発光極大を有する。このような長波長発光のアクリジニウム化合物についての構造の必要条件が本明細書に開示される。これらの新規アクリジニウム化合物は短波長発光アクリジニウムエステル(発光極大が450nmより下)と組み合わせて用いた場合、異なる標識間でのスペクトルの重なりが非常に小さいか、あるいは無視できるため、イムノアッセイまたは核酸アッセイにおいて、複数の標的分析物の同時検出のための非常に有用な標識であるはずである。異なる分析物に関連する2つ以上の特定のシグナルの正しくかつ有効な光学的分離は、光学フィルタを、任意の低レベルのクロストークの些細な補正のための単純なアルゴリズム操作と組み合わせて使用することによって容易に達成され得る。実際的な見地からは、スペクトルの重なりが最小限であることは、このように、異なる分析物の同時かつ正確な測定のために必要な鍵となる因子である。本明細書に記載に化合物のさらなる適用は、短波長(500nm未満)において生物学的試料からの光学干渉がある状況においてである。これらの条件下では、これらの新規アクリジニウム化合物は有用な代替の標識であるはずであり、非標識関連発光を結合複合体から生じる特定の化学発光シグナルから光学的に分離することを可能とする。最後に、CCDカメラのような検出器と組み合わせて用いられる長波長アクリジニウム化合物は改良されたアッセイ感度の可能性を提供する。なぜなら、これらの検出器は長波長シグナルの読みとりにおいて顕著に有効だからである。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アクリジニウムエステル(AE)は非常に感度の高い検出方法を提供し、そして有用な化学発光シグナル分子であり、これは、標識として広くイムノアッセイおよび核酸アッセイに用いられている。米国特許第4,745,181号;4,918,192号;5,110,932号は最初に、加水分解に対して安定な多置換アリールアクリジニウムエステル(PAAE)を記載しており、これらは分析的測定に有用であり、そしてその顕著な安定性ゆえ、リガンド結合アッセイを商業化に要求される厳密な条件に適合させることを可能とする最初の化学発光アクリジニウム化合物となった。次に、米国特許第5,241,070号;5,538,901号:および5,663,074号は求核官能基を欠く多様な有機分子の直接標識化のために有用な求核PAAEを記載した。PAAEの有用性は官能化親水性PAAEの出現(米国特許第5,656,426号)によりさらに高められた。これはPAAEの量子収率を高め、そしてPAAE標識された結合パートナーの性能を、観察されるシグナル対ノイズ比および種々の結合アッセイの感度に関して向上させた。これは第一にアクリジニウム核における親水性基の導入に起因する。これは化合物の水溶性を高め、そしてまた予期し得ぬことに光の生成の量子収率を高めた。さらに、イオン化可能基をフェノキシ部分に導入することで親水性PAAEの他のサブクラスが生成され(米国特許第5,227,489号;5,449,556号;および5,595,875号)、これは生体分子で官能化されたリポソーム内に多数被包され得、長期の貯蔵にわたって漏れが非常に少なかった。最後の適用はさらにPAAEの有用性を高めた。
【0004】
M.Kawaguichiら(Bioluminescence and Chemiluminescence、第9回国際シンポジウム1996の会報、Hastings, KrickaおよびStanley編、John Wiley & Sons、1997、480−484頁)は化学発光イムノアッセイのための安定化されたフェニルアクリジニウムエステルを記載している。さらなるメチル置換基をC−1に有する(これはアクリジニウム核のC−3で任意であり、フェノキシ部分のオルト位での一つまたは二つのメチル置換に適合する)AE誘導体は水溶液中で優れた安定性を有することを示した。
【0005】
EP 0324,202 A1およびそれに続くEP 0609,885 A1は両方とも、アクリジニウム核の窒素原子を置換する官能基を有するアクリジニウムエステルを記載する。後者の出願はさらに、フェニル基に対する可能な代替として、ビフェニルまたはナフチル部分のような別の置換基を記載する。これらのタイプのアクリジニウム化合物は420nmに発光極大を有することが報告されている。
【0006】
Mattinglyら(米国特許第5,468,646号および5,543,524号)は化学発光性アクリジニウム塩、その調製方法、その抗体結合体、およびイムノアッセイにおけるその応用を記載する。これらのアクリジニウム塩はアクリジニウムスルホニルアミド(あるいはN−スルホニルアクリジニウムカルボキサミド)と称される別のクラスの化合物に属する。アクリジニウムスルホニルアミド(AS)は、PAAEと適合可能な水性安定性を有する。ここで記載されるASに関して発光極大が報告されていない。しかし、これらの両クラスの化合物からはその過酸化アルカリとの反応の間に同じアクリドン種が発生するため、アクリジニウムスルホニルアミドの発光極大は青色領域にあると予想される。
【0007】
Mattinglyらはさらに、同様の化学発光性フェナントリジニウム塩、その調製方法、その抗体結合体、およびイムノアッセイにおけるその応用を、米国特許第5,545,739号;5,565,570号;および5,669,819号に記載する。さらに、これらの特許において、アクリジニウムスルホニルアミドの一般構造が記載され、これはアクリジニウム核における可能な置換基のマーカッシュ群を示している。置換基に関する特定の利点は言及されていなかった。一般構造で示されるAS誘導体はいずれも、本発明で記載される教示に適合しない。最後に、上記特許はアクリジニウムスルホニルアミドの発光の波長を延ばすための試みを記載せず、またこれがどのように達成され得るのかに関する構造活性原理を概論もしていない。
【0008】
上記特許および文献に記載されているような従来のアクリジニウム化合物は、強アルカリ溶液中で過酸化水素と反応すると約428nmに極大を有する光を発する。発光極大波長が500nmを越えるアクリジニウム化合物もまた、先行技術に記載されている。Lawらによる米国特許第5,395,752号;5,702,887号および5,879,894号は新規な長発光(long−emission)アクリジニウムエステル(LEAE)を記載し、ここでは縮合したベンズアクリジニウム系を使用してアクリジニウムエステルの発光波長を延ばしている。Jiangらの同時係属中のPCT出願PCT/IB98/00831では、エネルギー移動の原理を用いることによりPAAE発光極大をうまく600〜700nmの領域までさらに延ばしている。これは発光体をアクリジニウムエステルに共有結合することを包含する。これらの結合体の化学発光反応が過酸化アルカリによる処理によって開始されると、長波長で発光が観察され、ここで極大波長は発光体の構造に依存する。
【0009】
BatmanghelichらのEP 0 478 626 B1および米国特許第5,656,207号は、長波長発光アクリジニウムエステルと称されるものの構造の概略を示し、ここで置換されたカルボキシブタジエニル基をアクリジニウムエステルに付加することによって拡張された(extended)共役系が得られる。しかし、米国特許出願番号08/308,772号で既に指摘されているように、Batmanghelichの特許においては、このアクリジニウムエステルの合成もその発光特性も、特許請求された極大発光500〜700nmを可能とし、かつ具体化できるように記載されていない。
【0010】
安定な1,2−ジオキセタンに関連する、他の非アクリジニウムエステルベースの長発光化学発光性化合物はBronsteinらによって米国特許第4,931,223号に記載されている。この特許は化学発光性1,2−ジオキセタンを開示し、これは酵素で切断可能な官能基と、異なる発光波長を有する発光性発蛍光団とから構成される。特に好適な実施態様は、アセトキシベンゾピラン置換された安定なジオキセタン(A)、ホスホリルオキシ−ベンゾピラン置換された安定なジオキセタン(B)、およびβ−ガラクトシルオキシ−ベンゾチアゾリル−ベンゾピラン置換された安定なジオキセタン(C)を包含する。ジオキセタンAのアセトキシ基がエステラーゼで切断される場合、ジオキセタンAは極大波長450nmの光を発光する。ジオキセタンBのホスホリルオキシ基がホスファターゼで切断される場合、ジオキセタンBは極大波長480nmの光を発光し、他方ジオキセタンCは酵素β−ガラクトシダーゼで処理すると極大波長515nmの光を発光する。この特許は核酸プローブ同時アッセイにおけるHSV、CMV、およびHPVの同時検出のための3チャンネル分析の例を提供し、これは3つの狭帯域の光学フィルタを用いて上記ジオキセタンからの異なる色の発光を区別する。試料中に存在するHSV、CMV、およびHPVのレベルは対応の画像輝度に相関する。3つの発光極大が互いに非常に近いので、各発光スペクトルからの広がりのほとんどは狭帯域フィルタでカットオフされなければならず、重複する領域からのシグナルは除去される。この結果、各アッセイ成分についてのシグナルのうち使用できるのは非常に少量であり、アッセイの感度、そしておそらくは精度は大幅に制限される。
【0011】
Edwardsら[J.Biolumin.&Chemilumin.,5,1(1990)]は別の化学発光ジオキセタン、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(7’’−アセトキシ)ナフト−2’−イル−1,2−ジオキセタンを報告している。これは緑色光(極大550nm)を発光し、その6’’−アセトキシ置換異性体と比べて90nmの深色シフトである。これは、ジオキセタンの分解の引き金となる原因であるオキシドアニオン置換基を生じる酵素で切断可能なアセトキシ置換基の位置が異なることに帰せられる。いくつかの分析物の同時検出のための2つの異性体ジオキセタン化合物の同様の適用がこの論文において示唆された。
【0012】
本発明において、本発明者らは新規アクリジニウム化合物の設計および合成を記載し、これは過酸化水素と反応すると極大波長>590nmで発光する。これらのアクリジニウム化合物は、長波長発光の観察にたいして不可欠な、いくつかの鍵となる構造の特徴を含む。これらの結果は、米国特許第5,395,752号に記載の本発明者らの初期の観察と共に、長波長発光アクリジニウム化合物の設計および合成についての堅固かつ実験的に証明されたルールを提供する。
【0013】
NIR化学発光シグナルの改良された測定のために、本発明者らはまた本発明において改変された半自動化ルミネセンス分析器を開示し、ここで赤色非感受性光電子増倍管が、光子計数モードで用いられる最新式の低ノイズ冷却CCD検出器で置き換えられる。オリジナルの分析器および改変された分析器で得られる定量シグナルを比較することによって、本発明者らは、NIRアクリジニウム化合物の特異的活性が約40倍向上することを証明した。冷却CCDカメラシステムを、1,2−ジオキセタン化合物から生じる短波長領域における化学発光シグナルのイメージングに用いることは、MartinらがJ.Biolumin.Chemilumin.9(3),145,1994に記載された。このイメージング法に適合されるといわれる応用は、種々の核酸および免疫ブロッティング、ELISA法およびDNA配列決定システムを包含した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、アクリジニウム化合物からの長波長発光を観察するために必要かつ十分な2つのセットの基準を同定する:
セットA:
(a)適切な官能基をアクリジニウム核上に付加することによる拡張共役系の創製(電子的要件)。
(b)付加した官能基とアクリドン部分とが、発光の間、同一平面上にあること(幾何学的要件)。
(c)上記官能基は、少なくとも1つの芳香環と、ヘテロ原子が直接付加されるか、あるいは組み入れられる拡張されたπ系中に容易に非局在化し得る余分の電子対を有する1つの電子供与性原子または基とから構成されなければならず、そして発光性アクリドンの電子吸引性カルボニル部分との安定な拡張された共鳴を樹立しなければならない。アニオンの形態で存在するこのような電子供与性原子または基は、発光波長の深色シフトを促進する特に強力な効果を有する。
セットB:
(a)アクリジニウム核のC−2、C−4、C−5、またはC−7の1つ以上の位置への余分な電子対(単数または複数)を有する電子供与性原子または基の直接的付加。電子供与体は1つより多くの電子供与体が使用される場合には、同じであってもよく、異なっていてもよい。アニオンの形態で存在するこのような電子供与性原子または基は、発光波長の深色シフトを促進する特に強力な効果を有する。
【0015】
上記の基準に適合する分子、例えばLEAE、3−HS−DMAE、および2−ヒドロキシ−DMAEについて、500nmを越えてNIR領域に達する長波長発光が期待され、観察される。
【0016】
好ましくは、従来のアクリジニウム化合物と匹敵するNIR−ACの量子収率の有用性は、良好〜優秀な検出効率のルミネセンス検出器の使用と相並ぶものである。効率的なNIRシグナル検出を達成し、そして診断的アッセイの実行を促進するために、本発明のさらなる目的は、最新式の電荷結合素子(CCD)検出器を従来の全自動または半自動化分析器(例えば、Chiron Diagnositics、Walpole、MAのMLA−II)における赤色非感受性の光電子増倍管(PMT)の代わりに用いる概念および具現化を進めることである。
【0017】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 590nmより長波長の波長極大を有する光を発光するアクリジニウム化合物であって、該化合物はアクリジニウム核上に官能基を付加することによって形成された拡張された同一平面上の共役系を含み、該系は発光の間同一平面性を維持し、該官能基は少なくとも1つの芳香環および少なくとも1つの電子供与性原子または基を含む、化合物。
(項目2) 前記官能基がアクリジニウム核のC−3またはC−1位に付加する、項目1に記載の化合物。
(項目3) C−3位に付加した前記官能基を有する項目2に記載の化合物であって、該化合物が以下の構造を有し:
【0018】
【化1】

【0019】
ここで、
1は、必要に応じて20個までのヘテロ原子を含む、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアラルキルであり;好ましくは、R1はメチルまたはスルホニル基であり;
2およびR3は同一または異なり、水素、R、置換または非置換のアリール(ArRまたはAr)、ハライド、アミノ、ヒドロキシル、ニトロ、スルホネート、−CN、−COOH、−SCN、−OR、−SR、−SSR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NHR、または−NHC(O)Rから選択され;
Rは、必要に応じて20個までのヘテロ原子を含む、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択され;
あるいは、R2およびR3は架橋して、付加したアクリジニウム核に縮合したさらなる環を形成し得;
該アクリジニウム核のC2、C4、C5ペリ位は必要に応じて置換され;
n=1〜4であり、好ましくはn=1であり;
Wは電子供与性基、好ましくは電子対を供与し得るイオン化可能な基、例えば、OH、SH、NR’R’’、−CH(EWG)mであり、ここでm=1または2であり、そしてEWGは電子吸引性基であり、これには、−NO2、−NO、−CN、−CHO、−C(O)R、+NR’R’’R’’’、−COOR、−COOH、−S(O)R、−SO2R、−SO2OR、−SO2NHR、−SO2NR’R’’、−SO2OHまたはFが挙げられるが、これらに限定されず;R’、R’’およびR’’’は水素または低級アルキルであり、そして全て同一であるか、または異なり得;
好ましくは、W=OH、SH、−NR’R’’であり;
11、R12、R13およびR14はR2またはR3と同一であり得;あるいは、R11およびR12、またはR13およびR14のいずれかは連結して、先にR2およびR3で既に例示したように、付加したフェニル環に縮合したさらなる芳香族および/または複素環式環を形成し得;
-は対イオンであり、これは合成の間のアルキル化剤の使用によるアクリジン環窒素の四級化、R1の修飾、または反応混合物の後処理、および過剰量の他のアニオンを含む溶液または流体中の所望の化合物の精製の間に起こる、続く交換機構のいずれかの結果として生じる、該アクリジニウム核の四級窒素と対形成し、該イオンの例には、CH3SO4-、FSO3-、CF3SO4-、C49SO4-、CH364SO3-、ハライド、CF3COO-、CH3COO-、およびNO3-が挙げられ;
Xは窒素、酸素または硫黄であり;
Xが酸素または硫黄である場合、Zは省略され、そしてYは次式の多置換アリール部分であり:
【0020】
【化2】

【0021】
ここでR4およびR8はアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ(−OR)、アルキルチオール(−SR)、または該アクリジニウム核と該Y部分との間の−COX−結合を立体効果および/または電子的効果を通じて安定化させる働きをする置換アミノ基であり;好ましくはR4およびR8は低級アルキルであり、より好ましくはメチル基であり、あるいはこれらのうちの少なくとも1つは定義した通りであり、他方は水素であり、該アクリジニウム核のC1位またはC8位が低級アルキル基で置換されている場合、好ましくはまたメチルであり;
5およびR7は上記で定義のR2およびR3のいずれかであり;
6=−R9−R10であり、これは目的の生物学的分子に結合するために必要な官能基を含む重要な置換基であり;
ここでR9は必須ではないが、任意の分枝鎖または直鎖のアルキル、置換または非置換のアリールまたはアラルキルであり得、必要に応じて20個のまでのヘテロ原子を含み、そしてR10は脱離基、または脱離基に付加した求電子官能基であり、これには以下が挙げられるが、これらに限定されず:
【0022】
【化3】

【0023】
10はまた−Q−R−Nu、−Q−R−(I)nNu−、−Q−Nu、−R−Nu、または−Nuであり得、ここでnは少なくとも1の数であり、Nuは求核基であり、Qは機能的結合であり、Iはイオン性またはイオン化可能な基であり;
5およびR6、ならびにR6およびR7は相互交換可能であり;そして
Xが窒素の場合、Zは−SO2−Y’であり、Y’は上記のYと同じ定義を有し、そして両方とも同じ、または異なり得、加えて、Y自体は、必要に応じて20個までの炭素原子を含む、分枝鎖または直鎖のアルキル、ハロゲン化もしくは非ハロゲン化、または置換アリール、あるいは複素環式環系であり得る、
化合物。
(項目4) 590nmより長波長の波長極大を有する光を発光するアクリジニウム化合物であって、該化合物がアクリジニウム核に直接付加した1つ以上の電子供与性原子または基を含む、化合物。
(項目5) 電子供与性原子または基がアクリジニウム核のC−2、C−4、C−5、またはC−7位置の1つ以上に付加し、1つより多くの該電子供与体が用いられる場合、該電子供与性原子または基が同じかまたは異なる、項目4に記載の化合物。
(項目6) C−2位に付加した前記電子供与性原子または基を有する項目5に記載の化合物であって、該化合物が以下の構造を有し:
【0024】
【化4】

【0025】
ここで
1は、必要に応じて20個までのヘテロ原子を含む、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアラルキルであり;好ましくは、R1はメチルまたはスルホアルキル基であり;
2およびR3は同一または異なり、水素、R、置換または非置換のアリール(ArRまたはAr)、ハライド、アミノ、ヒドロキシル、ニトロ、スルホネート、−CN、−COOH、−SCN、−OR、−SR、−SSR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NHR、または−NHC(O)Rから選択され;
Rは、必要に応じて20個までのヘテロ原子を含む、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択され;
あるいは、R2およびR3は架橋して、付加したアクリジニウム核に縮合したさらなる環を形成し得;
該アクリジニウム核のC2、C4、C5ペリ位は必要に応じて置換され;
Wは電子供与性基、好ましくは電子対を供与し得るイオン化可能な基、例えば、OH、SH、NR’R’’、−CH(EWG)mであり、ここでm=1または2であり、そしてEWGは電子吸引性基であり、これには−NO2、−NO、−CN、−CHO、−C(O)R、+NR’R’’R’’’、−COOR、−COOH、−S(O)R、−SO2R、−SO2OR、−SO2NHR、−SO2NRR’’、−SO2OHまたはFが挙げられるが、これらに限定されず;R’、R’’およびR’’’は水素または低級アルキルであり、そして全て同一または異なり得;
好ましくは、W=OH、SH、−NR’R’’であり;
3はまたWと同一であり得、この場合該アクリジニウムエステルは1つではなく2つの電子供与性基を有し;
-は対イオンであり、これは合成の間のアルキル化剤の使用によるアクリジン環窒素の四級化、R1の修飾、または反応混合物の後処理および過剰量の他のアニオンを含む溶液または流体中での所望の化合物の精製の間に起こる、続く交換機構のいずれかの結果として生じる、該アクリジニウム核の四級窒素と対形成し、該対イオンの例には、CH3SO4-、FSO3-、CF3SO4-、C49SO4-、CH364SO3-、ハライド、CF3COO-、CH3COO-、およびNO3-が挙げられ;
Xは窒素、酸素または硫黄であり;
Xが酸素または硫黄である場合、Zは省略され、そしてYは次式の多置換アリール部分であり:
【0026】
【化5】

【0027】
ここでR4およびR8はアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ(−OR)、アルキルチオール(−SR)、または該アクリジニウム核と該Y部分との間の−COX−結合を立体効果および/または電子的効果を通じて安定化させる働きをする置換アミノ基であり;好ましくはR4およびR8は低級アルキルであり、より好ましくはメチル基であり、あるいはこれらのうちの少なくとも1つは定義した通りであり、他方は水素であり、該アクリジニウム核のC1位またはC8位が低級アルキル基で置換されている場合、好ましくはまたメチルであり;
5およびR7は上記で定義のR2およびR3のいずれかであり;
6=−R9−R10であり、これは目的の生物学的分子に結合するために必要な官能基を含む重要な置換基であり;
ここでR9は必須ではないが、必要に応じて分枝鎖または直鎖のアルキル、置換または非置換のアリールまたはアラルキルであり得、必要に応じて20個のまでのヘテロ原子を含み、そしてR10は脱離基、または脱離基に付加した求電子官能基であり、これには以下が挙げられるが、これらに限定されず:
【0028】
【化6】

【0029】
10はまた、−Q−R−Nu、−Q−R−(I)nNu−、−Q−Nu、−R−Nu、または−Nuであり得、ここでnは少なくとも1の数であり、Nuは求核基であり、Qは機能的結合であり、Iはイオン性またはイオン化可能な基であり:
5およびR6、ならびにR6およびR7は相互交換可能であり;そして
Xが窒素の場合、Zは−SO2−Y’であり、Y’は上記のYと同じ定義を有し、そして両方とも同一または異なり得、加えて、Y自体は、必要に応じて20個までの炭素原子を含む、分枝鎖または直鎖のアルキル、ハロゲン化もしくは非ハロゲン化、または置換アリール、あるいは複素環式環系であり得る、
化合物。
(項目7) 前記光が、過酸化水素、過酸化ナトリウム、または2価の過酸化物塩との反応で発光する、項目1に記載の化合物。
(項目8) 前記光が、過酸化水素、過酸化ナトリウム、または2価の過酸化物塩との反応で発光する、項目4に記載の化合物。
(項目9) 前記化合物が、3−HS−DMAE、NSB−3−HS−DMAE、NSP−3−HS−DMAE、ならびにこれらの対応のエステル、アミド、ハロゲン化カルボニル、および遊離カルボキシル基の無水物誘導体からなる群から選択される、項目3に記載の化合物。
(項目10) 前記化合物が、2−ヒドロキシ−DMAE、NSB−2−ヒドロキシ−DMAE、NSP−2−ヒドロキシ−DMAE、2−ヒドロキシ−7−メトキシ−DMAE、NSB−2−ヒドロキシ−7−メトキシ−DMAE、およびNSP−2−ヒドロキシ−7−メトキシ−DMAE、ならびにこれらの対応のエステル、アミド、ハロゲン化カルボニル、および遊離カルボキシル基の無水物誘導体からなる群から選択される、項目6に記載の化合物。
(項目11) 小有機生体分子、巨大分子、ウイルス粒子、細胞下成分、または全細胞に結合した、項目1に記載のアクリジニウム化合物であって、該結合が、該アクリジニウム化合物と該小有機生体分子、巨大分子、ウイルス粒子、全細胞、または細胞下成分との間の直接的共有結合によるもの、あるいはスペーサーを通じての間接的共有結合によるもののいずれかである、化合物。
(項目12) 小有機生体分子、巨大分子、ウイルス粒子、細胞下成分、または全細胞に結合した、項目4に記載のアクリジニウム化合物であって、該結合が、該アクリジニウム化合物と該小有機生体分子、巨大分子、ウイルス粒子、全細胞、または細胞下成分との間の直接的共有結合によるもの、あるいはスペーサーを通じての間接的共有結合によるもののいずれかである、化合物。
(項目13) 前記結合がスペーサを通じ、そして該スペーサーが二官能性架橋剤により提供される、項目11に記載のアクリジニウム化合物。
(項目14) 前記結合がスペーサを通じ、そして該スペーサーが二官能性架橋剤により提供される、項目12に記載のアクリジニウム化合物。
(項目15) 前記巨大分子がタンパク質、ペプチド、不活性化タンパク質、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、多糖、オリゴ糖、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、レクチン、リポタンパク質、リポ多糖、ホルモン、トキシン、およびサイトカインからなる群から選択される、項目11に記載のアクリジニウム化合物。
(項目16) 前記巨大分子がタンパク質、ペプチド、不活性化タンパク質、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、多糖、オリゴ糖、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、レクチン、リポタンパク質、リポ多糖、ホルモン、トキシン、およびサイトカインからなる群から選択される、項目12に記載のアクリジニウム化合物。
(項目17) 前記タンパク質が、抗体、抗体フラグメント、アビジン、ストレプトアビジン、アレルゲン、レセプタータンパク質、DNA結合タンパク質、ウイルス抗原、細菌抗原、真核生物抗原、免疫グロブリン結合タンパク質、および酵素からなる群から選択される、項目15に記載のアクリジニウム化合物。
(項目18) 前記巨大分子がタンパク質、ペプチド、不活性化タンパク質、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、多糖、オリゴ糖、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、レクチン、リポタンパク質、リポ多糖、ホルモン、トキシン、およびサイトカインからなる群から選択される、項目16に記載のアクリジニウム化合物。
(項目19) 前記細胞下成分がリボソームであり、前記全細胞が、細菌および真核生物の細胞からなる群から選択される、項目11に記載のアクリジニウム化合物。
(項目20) 前記細胞下成分がリボソームであり、前記全細胞が、細菌および真核生物の細胞からなる群から選択される、項目12に記載のアクリジニウム化合物。
(項目21) 前記小有機生体分子が、ハプテン、リガンド、または生物学的活性分子である、項目11に記載のアクリジニウム化合物。
(項目22) 前記小有機生体分子が、ハプテン、リガンド、または生物学的活性分子である、項目12に記載のアクリジニウム化合物。
(項目23) 前記ハプテンが、甲状腺ホルモン、ステロイド、ビタミン、抗生物質、酵素補因子、治療薬、代謝産物、脂質、神経伝達物質、または制御された化学物質である、項目21に記載のアクリジニウム化合物。
(項目24) 前記ハプテンが、甲状腺ホルモン、ステロイド、ビタミン、抗生物質、酵素補因子、治療薬、代謝産物、脂質、神経伝達物質、または制御された化学物質である、項目22に記載のアクリジニウム化合物。
(項目25) 分析物の検出または定量化のためのアッセイであって、該アッセイが、項目1から10に記載の化合物からなる群から選択される化合物ならびに項目11から24に記載の結合生物学的分子の使用を包含する、アッセイ。
(項目26) 複数の分析物の同時検出のためのアッセイであって、該アッセイが項目1から10に記載のアクリジニウム化合物からなる群から選択される化合物ならびに項目11から24に記載の結合生物学的分子の使用を包含する、アッセイ。
(項目27) 2つ以上の前記化合物が用いられ、そしてここで該化合物がそれらの波長または大きさ(magnitude)の識別を可能とし、そしてここで該大きさの違いが存在する種々の該分析物の量に相関し得る、項目26に記載のアッセイ。
(項目28) 2つの分析物を測定するための、項目26に記載のアッセイであって、ここで、2つ以上の前記化合物が用いられ、そしてここで該化合物が2つの異なる波長極大で発光し、これがそれらのシグナルおよび大きさの識別を可能とし、これが存在する該2つの分析物の量に相関し得る、アッセイ。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】図1Aは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1B】図1Bは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1C】図1Cは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1D】図1Dは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1E】図1Eは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1F】図1Fは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)図1Fの目盛りは少し異なって標識されるが、なお同じように解釈されるべきである。
【図1G】図1Gは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1H】図1Hは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1I】図1Iは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1J】図1Jは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1K】図1Kは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1L】図1Lは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1M】図1Mは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1N】図1Nは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1O】図1Oは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1P】図1Pは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1Q】図1Qは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図1R】図1Rは、評価された種々の化合物のういちのいくつかについて、規格化された発光強度(ここで各スペクトルについての極大応答を100%として表す)を波長(nm)の関数として表す。(注:各分析において評価された化合物の量は約10から100μgの範囲である。発光強度は存在する化合物の量の関数であり、これは調査された波長範囲におけるピークでの極大強度が100となるように規格化された。)
【図2】図2は、本特許において言及される選択された化合物の構造を示す。
【図3】図3は、実施例14で論じられるTSHアッセイの結果を示す。
【図4】図4は、実施例16で記載されデュアル分析物プローブアッセイの模式図を示す。
【図5】図5は、実施例16で論じられるバンコマイシンA耐性遺伝子のハイブリダイゼーションアッセイの結果を示す。
【図6】図6は、実施例16で論じられるバンコマイシンB耐性遺伝子のハイブリダイゼーションアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
PAAEの化学発光反応は強アルカリ溶液中の過酸化水素が引き金となる(以下の図を参照のこと)。発光種はアクリドンであり、これはアクリジニウムエステルが、推定される高度に変形した不安定なジオキセタノン中間体を介して化学的に(ペルオキシド媒介で)分解する間に、電子的励起状態で形成される。(二価のペルオキシドを放出する任意の化学物質が用いられ得ることに留意のこと。例えば、過酸化ナトリウムまたは任意の二価過酸化物塩)。
【0032】
発光は励起したアクリドンがその基底状態に復帰するときに生じる。発生する光のエネルギー(波長)は第一励起状態と基底状態との間のエネルギーの差に依存し、このエネルギー差は順に種々の官能基Tを有するアクリドンの特定の構造によって決定される。
【0033】
【化7】

【0034】
アクリジニウムエステルおよび誘導体(例えばアクリジニウムスルホニルアミド)からの長波長発光を観察するためには、対応のアクリドンの励起状態と基底状態との間のエネルギーギャップを小さくしなければならないのは明らかである。通常、拡張共役系は問題の分子のエネルギーギャップを減少させる。従って、アクリジニウム化合物の場合、これは適切な官能基をアクリジニウム核の重要な環位置に付加して、拡張共役系を創製することを必要とする。これは対応するアクリドンの発光特性を長波長側にシフトさせる結果となると予想される。
【0035】
第2に、等しく重要な要件は、コンホメーション(ジオメトリ)に関連し、これは拡張共役系が常にアクリドンπ系と同一平面上になければならないということであり、その結果、発光種の全体としての平面構造が実際にこの分子の唯一の最もエネルギー的に有利なコンホメーションであるようにする。もしこのようなジオメトリがエネルギー的に不利であるか、あるいは分子が他の非平面のコンホメーションをも同様にとると仮定し得るならば、長波長発光は不可能であるか、あるいは得られる発光スペクトルは非常に広い範囲をカバーするので、この化合物の同時複数分析物アッセイにおける標識としての有用性は疑わしい。
【0036】
アクリジニウム化合物の修飾のための最も便利であり、かつ重要な位置は、C−2(C−7)およびC−3(C−6)である。LEAEにおいて、長波長発光の原因となる付加官能基は線状にC−2およびC−3の両方に縮合する芳香環である。そうすることによって、拡張π系の完全な平面性が保証され、そして分子は永続的に最低のエネルギーの平面コンホメーションに固定される。結果として、LEAEは過酸化水素との化学発光反応において520nmで発光し、これは従来のアクリジニウム化合物の発光極大から92nm延長している。対照的に、カルボキシブタジエニル置換AEはBatmanghelichらが特許請求するように510nmの発光極大を達成しない。これは明らかにこの分子がπ系全体にわたる有効な電子非局在化のための同一平面ルールを満たさないからである。その結果、3−カルボキシブタジエニルAEは464nmに発光極大を示すのみであり、米国特許5,879,894号で示されるように、元のアクリジニウムエステルの発光極大からわずかに36nm延長しただけである。延長した発光スペクトルの重なりは3−カルボキシブタジエニルAEと元のAEと間にあるままである。
【0037】
芳香族の環縮合アクリジニウムエステル系の場合、本発明者らはまた、発光極大の効果的な拡張のためにπ系全体の水平軸に沿う直線性の重要性を強調したい。ある角度をもってアクリジニウム核のC−1(C−8)およびC−2(C−7)位に縮合した芳香環は、例えば、発光極大を最小限、428nmから440nmまで延長するに過ぎず(米国特許第5,395,752号参照)、そのため角度をもつ芳香族環縮合PAAEと親PAAEとの間の発光スペクトルの差を認識することは、これらの化学発光が同じ管中で起こる場合、非常に困難である。
【0038】
【化8】

【0039】
本発明の拡張共役系を創製する代替の様式は、必須の官能基(T)がアクリジニウム核のペリ位(peri−positions)(C1−C4)のうちの1つに単一点で付加することを伴う。この官能基は、余分な電子対を有する少なくとも1つの電子供与性原子または基を有さなければならず、この電子対は電子供与性原子または基が直接付加する、または組み入れられるAE核の拡張共役系に容易に非局在化し得る。電子供与性原子は、通常、遭遇する(encountered)酸素、硫黄、および窒素を含むような構造配置を伴い、これは例えば、スチレニルオキシド、チオフェノキシド、ナフトキシド、インドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、および多数の、他の芳香族、複素環式系中に見いだされる。拡張された共役系における電子対の関与を示すためにいくつかの共鳴構造を以下に示す。
【0040】
【化9】

【0041】
C−2またはC−3のいずれかへのTの単一点での付加が用いられる態様の場合、LEAEの場合とは異なり、ここで、アクリドンに結合する結合の周囲での分子の回転が起こり得る。その結果、対応のアクリドンからの発光の波長は、アクリドンとRとが同一平面上にあるか否かに依存する。
【0042】
【化10】

【0043】
このような官能基をアクリジニウム核のペリ位(C1−C4)に付加することが長波長発光アクリジニウムエステルの創製のための現実性のあるアプローチであるかどうか決定するために、本発明らはC−2およびC−3の両方に4−ヒドロキシスチレニル(4−HS−)および4−メトキシスチレニル(4−MS−)基を含むアクリジニウムエステルを合成し、その発光特性を評価した(スキーム1および2)。C−3位はC−1およびC−3位の代表として選択した。これらの位置は両方ともTの電子供与性原子または基がアクリドンのカルボニル部分との長距離共鳴に関与することを可能とする。同様に、C−2位はC−2およびC−4位の代表であり、これらの位置は両方ともこのことを可能としない。
【0044】
【化11】

【0045】
これらの官能基は両方ともスチレニル部分の拡張共役系を含み、酸素原子が芳香環のパラ位に結合している。しかし、これらの2つの官能基は、酸素からスチレニルπ系に電子対が非局在化することを可能とする容易さが異なる。アルカリ性媒体中で、4−HS−基は、脱プロトン化の後、フェノキシドアニオンを形成し、これは強力に電子供与性であり、そしてその余分な電子対を、それに付加しているπ系中に容易に非局在化させ得る。4−MS−基の場合、エーテル酸素は脱プロトン化され得ないので、このような電子供与の機構は可能ではない。4−MS−基中のエーテル酸素でさえ、付加したπ系にn−電子対を供与する共鳴構造を描くことは可能であるが、これはエーテル酸素上に正の電荷を創出することを必然的に伴う。それゆえ、この共鳴の寄与は高エネルギーのものであることが予期され、従って、π系全体の電子的特性に対してはおそらく最小の寄与しか成さない。続いての研究の結果が、報告された3−カルボキシブタジエニルアクリジニウムエステルの発光特性に対して直接の関連をもつように、ならびにどんな必須の構造特徴が実際に500〜700nm領域中にアクリジニウムエステルの発光極大を延長する原因となるのかに関する明白なプロトコルを提供するように、予想される。
【0046】
C−2置換アナログの合成をスキーム2に示す。イサチンを2−(4−ブロモフェニル)−1,3−ジオキサランで米国特許出願第08/308,772号に開示されるようにN−アルキル化した。N−アルキル化イサチンを、10%KOH中で還流することによって対応のアクリジン誘導体に転位させた[Zomerら、「アクリジニウムエステル標識化合物の合成、化学発光、および安定性」、Pract.Spectrosc.1991,12(Lumin.Tech.Chem. Biochem.Anal.),505−21]。ジオキサランの加水分解によって2−カルボキシアルデヒドが与えられ、これが4−ベンジルオキシベンジルホスホニウムクロリドまたは4−メトキシベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドのいずれか由来のイリドと縮合した。どちらの場合でも、ウィッティッヒ(Wittig)反応がEおよびZオレフィンの混合物を与える。Eオレフィンは各場合においてより安定であることが観察され、クロマトグラフィーの後、純粋なものとして単離され得た。しかし、純粋なZ異性体は単離され得なかった。なぜなら、各場合において、化合物は精製の間に一部から全部が異性体化されたからである。その結果、各場合においてE異性体のみがさらに合成された。アクリジン窒素はメチルトリフルオロメタンスルホネート(4−ヒドロキシフェニルアナログ)または1,4−ブタンスルトン(4−メトキシフェニルアナログ)のいずれかによってアルキル化された。ベンジルエステルを除去して遊離酸を放出し、これを次にジシクロヘキシルカルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを用いてN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに転換した。
【0047】
2−(3−ブロモフェニル)−1,3−ジオキサランをイサチンのアルキル化に用いたことを除いては、3−置換アナログの合成は同様のやり方(スキーム1)で達成された。これにより、カルボキシアルデヒドがアクリジン核のC−3に導入されることを確実にした。
【0048】
アクリジニウムエステルのタンパク質結合体もまた実施例8〜13に記載のようにして調製した。
【0049】
合成したアクリジニウムエステルおよびタンパク質結合体の化学発光スペクトルをスペクトラスキャン(Spectrascan)カメラを用いて記録した。結果を図1に示す。これは規格化された発光強度を、評価した種々の化合物について、波長の関数で示す。
【0050】
図1の結果は、種々の化合物について発光波長の劇的な差異を示す。3−HS−DMAEは3−(4−ヒドロキシスチレニル)部分を含み、これは約690nmに極大中心を有する長波長発光を示す。この分子がBSAと結合すると、その発光極大は約610nmまでシフトする。この発光極大の浅色シフトは溶媒効果に起因され得る。なぜなら遊離化合物の発光スペクトルは完全な溶解度を確保するため約42%の有機溶媒を含む媒体中で測定されたが、タンパク質結合体はタンパク質と有機溶媒が相溶性ではないので完全に水性の媒体中で測定された。同様に、NSB−3−MS−DMAEは、そのスペクトルを水中で記録した場合、DMFまたはアセトニトリルのいずれかとは反対に約66nmの浅色シフトを示した。同じ青色に発光するN−メチルアクリドンを生じるアクリジニウム化合物の発光極大の、用いた溶媒混合物の関数としての変化もまた記録された。McCapraら[Tetrahedron Letters No.43,3167,(1964)およびPhtochem.&Photobiology,4,1111,(1965)]は、80%水性アルコール中で多数のアクリジニウム塩について発光極大442nmを報告し、他方、本発明者らは依然、DMAEについて42%DMF中で426〜430nmの発光極大を観察した。溶媒によって影響される浅色シフトの他の例は、遊離N−スルホプロピル−DMAE(これは42%DMF中424nmで発光する)対N−スルホプロピル−DMAE−BSA結合体(これは完全水性媒体中で420nmに極大発光を示す)の間で観察された。一般に、アクリジニウムエステル標識は、有機溶媒リッチな媒体を除去すると、水リッチ媒体または完全水性環境中よりもより長波長の発光極大を与える。観察される極大の差は短波長発光AEの場合の約4〜12nmから、提示したNIR−AEの場合で示されるように約80nmまで変化し、これは溶媒効果に対してより鋭敏であると思われる。BSAとNIR−AEの親水性バージョン(NSB−3−HS−DMAEと名付ける)との同様の結合体はメチル基の代わりにN−スルホブチル置換基をアクリジニウム核の環窒素に有する。この結合体もまた620nmで長波長発光を示す。結合アッセイにおける実際的な(pratical)有用性のためには、唯一関連の発光極大は完全水性環境中で得られるものであることに留意のこと。
【0051】
上記化合物および結合体とは明確に対照的に、NSB−3−MS−DMAEと名付けられたアクリジニウムエステル(これは3−(4−メトキシスチレニル)部分を含む)は、遊離標識またはタンパク質と結合した場合のいずれでも、より短波長(455〜460nm)の発光を示す。
【0052】
アクリジニウムエステルNSB−2−MS−DMAEもまた3−アナログと同様に比較的短波長の発光を454nmに示す。アクリジニウムエステル2−HS−DMAEは3−異性体とは異なり、450〜700nmの広範囲にわたる光を発することが見いだされた。この化合物をBSAと結合した場合、その発光は比較的短波長(482nm)であった。
【0053】
スチレニル置換アクリジニウム化合物に加えて、本発明者らは4−ヒドロキシフェニル部分がアクリジニウム核のC−3に直接付加したアクリジニウムエステルを調製した(スキーム3)。この化合物は3−ヒドロキシフェニル−DMAE(3−HP−DMAE)と名付けられ、これは594nmに発光極大を有することが見いだされた。しかし、3−HP−DMAEの発光スペクトルは複数の極大を有し、約420nmから780nmの広範囲をカバーすることが観察された。
【0054】
図1の発光スペクトルは、アクリジニウムエステルのC−2またはC−3に適切な官能基を結合させることによって拡張共役系が創製されていることを明らかに示しており、これは、本来、長波長発光を得るために必要ではあるが十分な条件ではない。3−カルボキシブタジエニル−AE、およびMS−DMAE誘導体の発光スペクトルで観察される比較的短波長は、2つのπ系(アクリドンおよび4−メトキシスチレニル)が同一平面上にないことを強力に示唆する。同様に、2−HS−DMAEは、遊離標識が低エネルギーコンホメーションの範囲からの発光を示すように思われるが、タンパク質に結合したときのその発光スペクトルは2つのπ系が同一平面からかなり逸脱していることを示唆する。
【0055】
【化12】

【0056】
3−HS−DMAE誘導体のみが長波長での発光を示した。この化合物でも2つのπ系をつなぐ結合の周囲での回転は可能であるが、強アルカリpHにおいて、アクリドンの電子吸引性カルボニル部分へのフェノキシド負電荷の共鳴非局在化が、この化合物が発光の間、同一平面のままであることの強力な誘因を与える。結果として、拡張共役系が維持され、そして長波長発光が観察される。同様の機構はまた、3−HP−DMAEについても働くが、ここではヒドロキシフェニル置換基がアクリジニウム核に対して同一平面にあるための立体的な要件は完全には満たされず、そのためこの化合物の発光は広範囲の波長で生じる。
【0057】
【化13】

【0058】
C−3官能化アクリジニウム化合物について拡張π系のエネルギーの低下における余分の電子対の劇的な効果を観察したので、本発明者らは次に、電子供与性原子または基の代表としてヒドロキシル基のアクリジニウム核に対する直接的付加によるその発光特性に対する効果を試験した。アクリジニウム核のペリ位の2つの代替セットの中から、本発明者らは、再びC−2およびC−3での付加をグループA(C−2、C−4、C−5、およびC−7)およびグループB(C−1、C−3、C−6、およびC−8)の位置の代表として各々、選択した。各グループのメンバーは同様の発光特性を有することが期待される。なぜなら、これらはアクリジニウム核上の代替位置に付加したヒドロキシル基を有する異性体だからである。予期せぬことに、本発明者らは3−ヒドロキシ−DMAEではなく2−ヒドロキシ−DMAEがまた、ヒドロキシ置換基とアクリジニウム核との間に拡張共役系が存在しないにもかかわらず、長波長発光(発光極大604nm)が可能であることを見いだした。
【0059】
強アルカリ溶液中で、このヒドロキシル基は脱プロトン化することが予想される。それゆえ、この酸素に関連する負電荷が対応のアクリドンの基底状態と電子励起状態との間のエネルギーギャップを低減し、そして長波長の発光をもたらす。本発明者らは、それゆえ、NIR領域で発光するアクリジニウムエステルの創製のための他の新規方法を開示する。2−ヒドロキシ−DMAEの構造は、加水分解に対して安定な化学発光PAAEの1つとして、米国特許第4,918,192号および5,110,932号で特許請求される物質に包含される。2−ヒドロキシ−DMAEの合成は本出願の実施例の節で示す。
【0060】
(好適な実施態様)
A.化学発光性近赤外アクリジニウム化合物(NIR−AC)の構造
本発明のセットAの化学発光性NIRアクリジニウム化合物の一般構造は模式的に以下のように表され得る:
【0061】
【化14】

【0062】
ここで、
1はアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアラルキルであり、任意に20個までのヘテロ原子を含む。好ましくはR1はメチルまたはスルホアルキル基である。
【0063】
2およびR3は同一または異なり、水素、R、置換または非置換のアリール(ArRまたはAr)、ハライド、アミノ、ヒドロキシル、ニトロ、スルホネート、−CN、−COOH、−SCN、−OR、−SR、−SSR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NHR、または−NHC(O)Rから選択される;
本出願を通じて、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択され、任意に20個までのヘテロ原子を含む;
あるいは、R2およびR3は連結していてもよく、あるいはこれらは以下の構造で例示されるように架橋していてもよく、付加したアクリジニウム核に縮合するさらなる芳香族または非芳香族環を形成する。(例えば、第2列の最初の構造を参照。このsp2炭素(=C−)がR2およびR3に結合するならば、5員の非芳香環が得られる。)環は複素環式または非複素環式のいずれであってもよく、従って、これらの得られる構造のうちのいくつかは環内ヘテロ原子(すなわち、環構造自体の一部であるヘテロ原子)を含むことに留意すべきである。
【0064】
【化15】

【0065】
アクリジニウム核のC2、C4、C5ペリ位置は任意に置換される。
【0066】
n=1〜4であり、好ましくはn=1である;
Wは電子供与性基、好ましくは電子対を供与し得るイオン化可能な基、例えば、OH、SH、NR’R’’、−CH(EWG)mであり、ここでm=1または2であり、そしてEWGは電子吸引性基であり、これは限定されないが−NO2、−NO、−CN、−CHO、−C(O)R、+NR’R’’R’’’、−COOR、−COOH、−S(O)R、−SO2R、−SO2OR、−SO2NHR、−SO2NRR’’、−SO2OHまたはFを包含する。R’、R’’およびR’’’は水素または低級アルキルであり、そして全て同一であるか、または異なり得る;
好ましくは、W=OH、SH、−NR’R’’である;
11、R12、R13およびR14はR2またはR3と同一であり得る;あるいは、R11およびR12、またはR13およびR14のいずれかは連結して、先にR2およびR3で既に例示したように、付加したフェニル環に縮合したさらなる芳香族および/または複素環式環を形成し得る。
【0067】
-は対イオンであり、これは合成の間のアルキル化剤の使用によるアクリジン環窒素の四級化、R1の修飾、または反応混合物のワークアップと過剰量の他のアニオンを含む溶液または流体中での所望の化合物の精製との間に起こる交換機構の引き続く結果のいずれかとして導入されて、アクリジニウム核の四級窒素と対形成する。対イオンの例は、CH3SO4-、FSO3-、CF3SO4-、C49SO4-、CH364SO3-、ハライド、CF3COO-、CH3COO-、およびNO3-を包含する;
Xは窒素、酸素または硫黄である;
Xが酸素または硫黄である場合、Zは省略され、そしてYは次式の多置換アリール部分:
【0068】
【化16】

【0069】
であり、
ここでR4およびR8はアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ(−OR)、アルキルチオール(−SR)、またはアクリジニウム核とY部分との間の−COX−結合を立体効果および/または電子的効果を通じて安定化させる働きをする置換アミノ基である;好ましくはR4およびR8は低級アルキルであり、より好ましくはメチル基であり、あるいはこれらのうちの少なくとも1つは定義した通りであり、他方は水素であり、アクリジニウム核のC1位またはC8位が低級アルキル基で置換される場合、好ましくはまたメチルである;
5およびR7は上記で定義のR2およびR3のいずれかであり;
6=−R9−R10であり、これは目的の生物学的分子に結合するために必要な官能基を含む重要な置換基であり、
ここでR9は必須ではないが、任意に分枝または直鎖のアルキル、置換または非置換のアリールまたはアラルキルであり得、任意に20個のまでのヘテロ原子を含み、そしてR10は脱離基、あるいは脱離基に結合した求電子官能基であり、限定されないが:
【0070】
【化17】

【0071】
を包含する。R10はまた−Q−R−Nu、−Q−R−(I)nNu−、−Q−Nu、−R−Nu、または−Nuであり得、ここでnは少なくとも1の数であり、Nuは求核基であり、Qは機能的結合であり、Iはイオン性またはイオン化可能な基である。Nu、Q、およびIの詳細な定義は米国特許第5,241,070号、第3欄、第45行から第3欄、第16行に見いだされ得る。Nuに対して意図される反応もまた同特許、第3欄、第48行から第4欄、第18行に記載された。
【0072】
5およびR6、ならびにR6およびR7は相互交換可能である;そして
Xが窒素の場合、Zは−SO2−Y’であり、Y’は上記のYと同じ定義を有し、そして両方とも同じ、または相異なり得る。加えて、Y自体は分枝または直鎖のアルキルであり得、任意に20個までの炭素原子を含み、ハロゲン化または非ハロゲン化され、あるいは置換アリール、あるいは複素環式環系であり得る。
【0073】
本発明のセットBの化学発光NIRアクリジニウム化合物の一般構造は模式的に以下のように表され得る:
【0074】
【化18】

【0075】
1、R2、R3、A−、W、X、Y、およびZの定義はセットAのNIR−AC一般構造におけるのと同様である。残りのC3、C4、C5のアクリジニウム核のペリ位置は任意に置換される。R3はまたWと同じであり得、この場合アクリジニウムエステルは1つではなく2つの電子供与性基を有する。二置換化合物は一置換の対応化合物に比べてその発光極大においてさらに深色シフトを示すことが予想される。
【0076】
B.NIR−ACで標識された生物学的分子
先に述べた化学的に反応性の官能基で官能化されたNIR−ACおよびその自明な誘導体は、直接的または間接的に、インビトロまたはインビボで、スペーサーまたは架橋剤(先に米国特許第5,656,426号に記載され、本明細書中に参考として援用されるように)を介して:
(a)小さい有機生体分子、ハプテンまたはリガンド、例えば甲状腺ホルモン、ステロイド、ビタミン、抗生物質、酵素補因子、治療薬、代謝物、脂質、神経伝達物質、または制御された化学物質、
(b)巨大分子、例えば、生物活性タンパク質(アビジン、抗体、DNA結合タンパク質、酵素、ヒストンなどを包含する)、多糖、オリゴ糖、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、レクチン、リポタンパク質、リポ多糖、単離されたまたはインタクトなRNA、DNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、不活性化タンパク質、ホルモン、ウイルス性抗原、細菌性抗原、真核抗原、免疫グロブリン結合タンパク質、トキシン、サイトカイン、抗体フラグメント、またはレセプタータンパク質、
(c)高次の生物学的実体、例えば、ウイルス、細菌、真核細胞、およびリボソームのような非細胞成分、
と共有結合し得る。
【0077】
得られる共有結合、例えば、アミド、ウレア、およびチオエーテルは当業者に最も普通に予期されるほんのわずかの例である。有機媒体中で形成され得る他の種類の可能な結合(例えば、エーテル、ケトン、エステル、アゾなど)または水性媒体中で形成され得る他の種類の可能な結合(例えば、ジスルフィド)、ならびに文献に詳細に記録されているものは、予期せぬ利点を実証することなく、自明であると考えられるべきである。
【0078】
核酸、タンパク質、リガンドまたはハプテンのような生物学的分子がどのようにNIR−ACに結合して、レセプター結合において、ならびに免疫および核酸診断試験のための有用なトレーサーを形成し得るかを例示するために、遊離NIR−ACのNIR発光特性がトレーサー中で保持され得ることの証拠を提供することが必要であった。この目的のために、抗−TSH−3−HS−DMAE結合体、ならびに相補的な、2−OH−DMAEに結合するバンコマイシンAオリゴヌクレオチドプローブの合成が実施例セクションで記載される。核酸という用語は、インビトロで標準的な化学を用いて典型的に合成されるオリゴヌクレオチドを表し、そして天然に存在し得(例えばDNAまたはRNA)、あるいは当該分野で公知の、合成アナログであり得る。このようなアナログはプローブとして使用するのに好適であり得る。なぜならアッセイ条件下で優れた安定性を有するからである。天然構造の修飾(骨格、糖または複素環式塩基における改変を含む)により、細胞内の安定性および結合親和性の向上が示された。骨格の化学における有用な変化は、とりわけ、ホスホロチオエート;ホスホロジチオエート(ここで非結合酸素は両方とも硫黄で置換される);ホスホルアミダイト(phosphoramidite);アルキルホスホトリエステルおよびボラノホスフェート(boranophosphate)である。アキラルなホスフェート誘導体は3’−O’−5’−S−ホスホロチオエート、3’−S−5’−O−ホスホロチオエート、3’−CH2−5’−O−ホスホネートおよび3’−NH−5’−O−ホスホルアミダイト(phosphoroamidite)を含む。ペプチド核酸は、リボースホスホジエステル骨格全体をペプチド結合で置き換える。糖の修飾もまた、安定性および親和性を高めるために用いられる。デオキシリボースのa−アノマーが用いられ得、ここで塩基が天然のb−アノマーに関して逆転している。リボース糖の2’−OHは改変されて、2’−O−メチルまたは2’−O−アリル糖を形成し得、これが親和性を犠牲にすることなく分解に対する耐性を提供する。複素環式塩基の修飾は適切な塩基対形成を保持しなければならない。いくつかの有用な置換には、デオキシウリジンをジオキシチミジンの代わりに;5−メチル−2’−デオキシシチジンおよび5−ブロモ−2’−デオキシシチジンをデオキシシチジンの代わりに用いることが包含される。5−プロピニル−2’−デオキシウリジンおよび5−プロピニル−2’−デオキシシチジンは各々、デオキシチミジンおよびデオキシシチジンを置き換えた場合に、親和性および生物学的活性の向上を示した。
【0079】
C.NIR−ACの応用
NIR−ACの応用および利点は多数である。最も広範囲な意味では、1つより多くの化学発光化合物の遊離分子として(例えば、AEカプセル化リポソーム技術、米国特許第5,227,489号;同第5,449,556号;同第5,595,875号参照)、あるいはシグナリング目的のための結合標識としての(先に米国特許第5,395,752号;同第5,702,887号、同時係属中の米国特許第5,879,894号およびPCT出願番号PCT/IB98/00831に記載され、そして本明細書中に参考として援用されるように)意図される同時使用を包含し得るがこれらに限定されない任意の応用的診断アッセイが、本発明から利益を得ることができる。ここで記載される化合物は、以前に記載されたLEAEおよびETCに比べて、その発光極大の識別性が高いこと、およびETCに比べて設計が単純であることにより、従来のAEに関してさらに改良される。ETCは同時係属中のPCT出願番号PCT/IB98/00831に記載されているように、発蛍光団に共有結合したアクリジニウムエステルから構成される。これらの結合体は構造的に複雑であり、合成が難しい。さらに、生体分子との結合方法が常に明らかではない。本発明のNIR−ACはETCよりも設計により構造的に単純であり、従って、同時多数分析物アッセイのために従来にアクリジニウム化合物(青色発光)およびLEAE(緑色発光)と共に使用するための、ETCの有効な代替物を提供する。それゆえ、NIR−ACの発明はアクリジニウム化合物のファミリーに、より長波長の発光極大で特徴づけられる識別可能な他の一連のメンバーを付け加えた。さらに、本発明者らの以前の研究と組み合わせて、本発明は同時複数分析物診断試験をまず可能にし、そして次にその品質を向上させるための広範囲な概念を提供した。
【0080】
光物理学における近年の進歩によって、NIR−ACは、電荷結合素子(CCD)のような改良された光検出器と組み合わせて使用され得、これらの化合物の固有の高い量子収量が利用され得る。例えば、1340×700ピクセルの背面光式薄型(backed−illuminated thinned)CCD(これは種々の方法で冷却され得る)が現在市販されている(Princeton
Instruments, Trenton, NJ)。このCCDはダークカウント(dark count)およびリードアウトノイズ(read out noise)が非常に低い一方で、400−800nmの発光領域にわたって80−90%以上の高い検出効率を維持する。リードアウトノイズを低レベルに維持し、かつ同時に宇宙線に起因する問題を避けるために、いわゆるCCDのビニング(binning)を適切に選択することが非常に重要である。ビニングはCCDチップ上のピクセルの総数を細分化し、多くのピクセルを単一光子センシング/検出およびシグナルエクスポーティングユニット(スーパーピクセルとも呼ばれる)に、電子的接続およびソフトウエアプログラミングを通じて、グループ分けすることと定義される。従って、ビニングの結果、シグナルエクスポーティングユニットの数の大幅な減少(すなわち、ピクセル対スーパーピクセル)によって、リードアウトノイズが顕著に減少する。スーパーピクセルは一方で、遍在し、かつ低い秒数(low number of seconds)の周波数で生じる宇宙線の激しい干渉に対向するために、十分な数で維持されるべきである。影響を受けたスーパーピクセルからのシグナルは、全シグナル出力の精度を大きく歪曲させないために、適切なソフトウエアプログラミングによって犠牲にされる。従って、十分な数のスーパーピクセルを維持することによって低レベルのリードアウトノイズを許容する、相殺する必要性があることが明らかである。精度をさらに高め、そして宇宙線に影響されたスーパーピクセル(単数または複数)の予想される実際のシグナルの損失を埋め合わせるために、測定下の発光試料に源を発する光子の数(これは該当の影響されたスーパーピクセル(単数または複数)にぶつかった)、従って該影響を受けたスーパーピクセルからの実際の発光のリードアウトは、宇宙線による影響を受けていない周囲のスーパーピクセルのリードアウトから誘導あるいは補外することによって再構成され得る。本発明者らの理論的計算ならびに実験結果は、1340×700=938,000ピクセルを16のスーパーピクセルにビニングすることが最適であることを示した。現在入手可能な光電子増倍管(PMT)に基づく検出器は、500−650nmの範囲においては検出効率の急激な低下(15%から<1%まで)を示し、あるいはこの領域でこれらがより高感度であるように設計される場合(検出効率50−10%)には非常にノイズが高いことに留意のこと。CCDの性能の改良はアッセイの感度を、主として、NIR−ACの検出性が同時増強される同じ長波長領域における試料/バッファーマトリックスが寄与するバックグラウンドシグナルの大幅な低下によって増強することが期待される。その結果、先例のないアッセイ性能を有する診断の分野が提供される。CCD用途の1つの実施態様は、現存する半自動化ルミノメーター(例えばChiron DiagnosticsのMLA−II)をPMTアセンブリをCCDカメラで置き換えることによって改変することである。概念的には、CCDは試料チャンバの開口部に向かって配向し得、そして最も近い可能な近傍に導かれ得、アルカリ性過酸化水素によって化学発光が引き起こされたときに発生する光を検出する。光収集効率を向上させるために、高い透過効率(95%プラス)の適切な形状の光パイプが、チャンバ開口部とCCD検出ウインドウの間に取り付けられ得る。試作品のルミノメーターを改良するために、MLA−IIおよびCCDシステムのインターフェースに対する一般的な機械的または電気的接続を使用または改変することは、光物理学および電気工学の当業者には自明である。本発明の別の目的は、従って、現在の光電子増倍管(PMT)に基づく検出器をCCDで置き換えてNIR−AEの検出性を増強する方法を示すことにより、診断アッセイの感度を高めることである。
【0081】
D.発光スペクトル
NIR−ACおよびそれより短い発光波長のアクリジニウムエステルの発光スペクトルは、Burbank,Calif.,U.S.A.のPhoto Research(Kollmorgen Corp の一部門)のFast Spectral Scaninng System(FSSS)によって測定された。実験は暗室で行った。各化合物をアセトニトリルまたはN,N−ジメチルホルムアミドに溶解したが、ただしタンパク質標識結合体および親水性AE誘導体は溶解度のため、水溶液を用いた。得られた濃縮物を同じ溶媒で希釈して、作業溶液を形成し、これがアルカリ性過酸化水素と反応すると適切な強度の光を発した。典型的な実験では、10〜100μgの試料を13×100mmホウケイ酸の試験管に入れた500μlの溶媒中で使用した。試験管は適切な高さに立ち上げた試験管立てに置いた。アルミニウム箔片を試験管の背面において、発光の検出性を高めた。FSSS光学ヘッドを、適切な距離130mmで管の前に置き、そのレンズを管中の液体に焦点を合わせた。試料溶液を最初に、0.1NのHNO3と0.1%のH22を含む、0.35mlのフラッシング試薬#1(Chiron Diagnostics)で処理した。次に部屋を暗くし、そして0.25NのNaOHおよび0.2%のARQUADを含む0.35mlのフラッシング試薬#2(Chiron Diagnostics)を反応混合物に即時に加えた。(米国特許第4,927,769号参照。これは同一出願人に譲渡され、本明細書中に参考として援用される。)試薬#2を加えた瞬間に発生した光をFSSSで試薬#2を添加する約1秒前から始めて5秒間記録した。FSSS上で決定される種々の発光スペクトルを図1に示し、また表1にまとめる。
【0082】
【表1】

【0083】
*範囲はシグナル強度がピーク高の約5%のスペクトル領域に設定する。
【0084】
∧FSSSのスキャニング限界(380−780nm)を越える発光スペクトル範囲はカーブの近似トレンドに従って長波長端で補外する。
〜フラッシュ試薬#1および#2を加えた後の最終混合物中の有機溶媒の割合
+表中の略語は化合物を表し、この完全な命名は実施例のセクションに示される。NSP、MeCNおよびDMFはN−スルホプロピル、アセトニトリル、およびジメチルホルムアミドを各々、表す。
【0085】
E.特異的活性
種々の化合物およびその結合体の化学発光特異的活性を表2に示す。これらの値を(a)BG−38フィルタ(Corion,Franklin,MA)(波長透過範囲約320から650nm、透過効率20−97%)を装着した、Bertholdルミノメーター(MLA−I、Chiron Diagnostics);または(b)新規装置の試作品、これは社内の半自動化ルミノメーター(MLA−II)をPrinceton Instrumentsの背面光式薄型液体窒素冷却CCD検出器に組み込んだものから構成される、のいずれかで測定した。従って、特異的活性は用いた検出器および選択したアクセサリによって制限される。
【0086】
典型的には、各試料をアセトニトリルまたはメタノール(標識なし)または水(結合体)中で調製した。これらのストック溶液をさらに10mMホスフェート(pH8)(150mMのNaCl、0.1%BSA、0.05%アジ化ナトリウムを含んでいた)で希釈した。25μLの試料溶液の化学発光は試薬1および2(Chiron Diagnostics)の添加によって開始された。典型的なストック溶液の希釈によって、2秒間の測定時間で0.5−5×106RLUの範囲のRLUが全体として観察された。これらの測定から、標識の特異的活性を計算することができた。タンパク質結合体については、1タンパク質当たり1つより多くの標識を取り込むことが可能なので、各結合体はさらにMALDI−TOF質量分析法で特徴付けされ、標識の取り込みを決定した。これは、非変性タンパク質(underivatized protein)および標識タンパク質の質量を記録することによって容易に達成された。観察された質量の差から、標識の取り込みを計算することができた。これらは実施例9−14に記載される。オリゴヌクレオチド結合体については、出発オリゴヌクレオチドが5’末端でただ1つの反応性アルキルアミノ基(これはNHS化学で標識され得る)で合成されたので、この結合体のMALDI−TOF質量スペクトルは予期される1つの標識の取り込みを示した。
【0087】
タンパク質濃度はマイクロ−ブラッドフォード(Bradford)アッセイ(BioRad)で決定した。タンパク質濃度および1タンパク質当たりの標識の数の知見から、ルミノメーターで測定された標識の濃度が決定され得る。同様に、オリゴヌクレオチド−AE濃度と、それゆえアクリジニウムエステル濃度をUV分光光度計で、260nmにおける結合体の吸収を記録することによって決定した。オリゴヌクレオチドに比してアクリジニウムエステルの260nmにおける吸収帯に対する寄与は無視できる。表2に示す全ての特異的活性は単独の標識のみについてである。
【0088】
2つの化合物、3−HS−DMAEおよび2−OH−DMAE−NHSの化学発光特異的活性を上記の両方のルミノメーターで測定した。観察された特異的活性は、従来の光電子増倍管に基づく検出器(これにMAL−Iを装着した)と反対に、赤色においてCCDの効率が高まったことを明らかに反映する。従って、3−HS−DMAEはCCDで約8倍高く検出され、他方2−OH−DMAE−NHSはCCDカメラを備えたルミノメーターで、検出効率が40倍も高く検出された。改変したルミノメーターの試作品のさらなる改良によって、特異的活性におけるさらなる向上が予期され得る。従って、NIR−ACをCCDに基づく検出器と組み合わせると、アッセイにおける最大限の感度の可能性が提供される。なぜなら通常生物学的試料から赤色領域で観察されるバックグラウンドが無視でき、CCDの検出効率が顕著であり、そして少なくとも2−OH−DMAEのようないくつかの化合物について量子収量が向上するからである。3−HS−DMAEの場合ですら、この化合物がタンパク質に結合すると、その量子効率は20倍より多く増加し、それによりこれもまた非常に有用なNIR−ACとなることに留意すべきである。
【0089】
表2.Hamamatsu R268 PMT、およびCorion BG38光学フィルタを装着したMLA−I、および背面光式薄型液体N2−冷却CCD検出器を装着したMLA−IIで測定したNIR−ACの特異的活性(RLU/mol)
【0090】
【表2】

【0091】
+表中の略語は化合物を表し、この完全な命名は実施例のセクションに示す。
【0092】
*標識の分子量(MW)は対イオンを含めずに計算した。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル3−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−メチルアクリジニウム−9−カルボキシレート(3−HS−DMAE)およびN−スクシンイミジルエステル(3−HS−DMAE−NHS)の合成)
(N−[3−(1,3−ジオキソリル)フェニル]イサチンの合成)
イサチン(3.2g、0.0218mol)を無水DMF(75mL)に溶解し、窒素雰囲気下、氷浴中で冷却した。この冷溶液に、水素化ナトリウム(0.575g、0.0239mol)を加え、そして反応を0℃で1.5時間攪拌した。この溶液を次に2−(3−ブロモフェニル)−1,3−ジオキソラン(5g、1当量)で処理し、次にCuI(8.3g、2当量)で処理した。得られた懸濁液を窒素下、油浴中で130−140℃で16時間加熱した。次にこれを室温に冷却し、そして等量のクロロホルムで希釈した。この懸濁液を濾過し、そして濾液を減圧下濃縮した。粘性の褐色油状物を回収し、これをキシレン(150mL)中で懸濁し、そして蒸発乾固した。残渣をそのまま次の反応に用いた。TLC(クロロホルム中5%メタノール)は完全な転化を示した;Rf(生成物)=0.86。
【0094】
(2−(アクリジン−9−カルボキシル)−1,3−ジオキソランの合成)
上記の粗N−[3−(1,3−ジオキソリル)フェニル]イサチンを10%KOH(150mL)に懸濁し、そして得られた懸濁液を窒素下4.5時間還流した。次に反応を室温に冷却し、濾過した。濾液を氷で希釈し、そして20−30%HClで弱酸性になるまで酸性化した。黄色の沈殿が分離し、これを濾過によって回収して風乾した。収率約5%の黄色の粘着性固体であり、これをそのまま次の反応に用いた。
【0095】
(アクリジン−9−カルボン酸−3−カルボキシアルデヒドの合成)
粗2−(アクリジン−9−カルボキシル)−1,3−ジオキソラン(約5g)を80%水性酢酸(100mL)中で懸濁した。この懸濁液を80℃で窒素下16時間加熱した。黄色の沈殿が反応系中に現れた。反応混合物を次に室温に冷却し、そして無水エーテル(約500mL)で希釈した。沈殿固体を濾過により回収し、エーテルですすぎ、風乾した。これを次に丸底フラスコに移し、トルエン(50mL)中で懸濁し、そして蒸発乾固した。このプロセスをもう一度繰り返した。明るい黄色の固体を回収した。収量=1.72g(全体で31%)。MALDI−TOF MS 252.3実測値(251.24計算値)。
【0096】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニルアクリジン−9−カルボキシレート−3−カルボキシアルデヒドの合成)
ピリジン(50mL)中のアクリジン−9−カルボン酸−3−カルボキシアルデヒド(0.3g、0.0012mol)を窒素下、氷浴中で冷却し、そしてp−トルエンスルホニルクロリド(0.456g、0.00239mol)で処理した。反応を0℃で15分間攪拌し、そして次に2,6−ジメチル−4−ベンジオキシカルボニル(benzyoxycarbonyl)−フェノール(0.306g、1当量)を加えた。反応を室温まで加温し、そして48時間、窒素下で攪拌し、そして次に減圧下濃縮した。残渣をクロロホルムに溶解し、これを次に水性重炭酸塩および水性塩化アンモニウムで洗浄した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下濃縮した。粗残渣(0.6g)をシリカゲルの分取TLCで、クロロホルム中10%酢酸エチルを用いて精製した;Rf(生成物)=0.6。収量=0.24g(41%);明黄色固体。MALDI−TOF MS 490.78実測値(489.53計算値)。;
【0097】
【数1】

【0098】
(4−ベンジルオキシベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドの合成)
無水トルエン(20mL)中の4−ベンジルオキシベンジルクロリド(1g、0.0043mol)およびトリフェニルホスフィン(1.127g、1当量)を窒素下で約8−10時間還流した。白色沈殿が反応混合物中に現れた。反応混合物を室温まで冷却し、そしてエーテル(100mL)を加えた。沈殿したホスホニウム塩を濾過により回収し、エーテルですすぎ、風乾した。収量=0.55g(25%)。MALDI−TOF MS 459.51実測値(459.54計算値)。
【0099】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジオキシカルボニルフェニル3−(4−ベンジルオキシスチレニル)−アクリジン−9−カルボキシレートの合成)
4−ベンジルオキシベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(0.475g、0.00096mol)を無水THF(10mL)中に懸濁し、そして窒素下でアセトン−ドライアイス浴中、−78%に冷却した。n−ブチルリチウム(1.6M溶液0.6mL、1当量)を滴下した。赤みがかった燈色がすぐに現れた。反応を−78℃で1時間攪拌し、そして次に2’,6’−ジメチル−4’−ベンジオキシカルボニルフェニルアクリジン−9−カルボキシレート−3−カルボキシアルデヒド(0.469g、0.00096mol)の溶液を乾燥THF(15mL)中、滴下した。反応を3時間、−78℃で攪拌し、そして次に酢酸エチルおよび水性塩化アンモニウムで希釈した。有機層を分離し、食塩水で一度洗浄した。次にこれを硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下濃縮した。残渣のTLC(45%クロロホルム、50%ヘキサン、5%酢酸エチル)はE異性体とZ異性体の約1:1比の混合物を示した。Rf=0.43および0.31。シリカゲルで、7%酢酸エチル、23%クロロホルム、70%ヘキサンを用いたフラッシュクロマトグラフィーによる精製の結果、ただ一つの異性体(E)への完全な異性化がもたらされた。フラッシュした画分の蒸発により、黄みがかった燈色の固体が得られた。収量=0.25g(39%)。MALDI−TOF MS
671.2実測値(670.78計算値)。;
【0100】
【数2】

【0101】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル3−(4−ベンジルオキシスチレニル)−10−メチルアクリジニウム−9−カルボキシレートトリフルオロメタンスルホネート(3−BS−DMAE−Bz)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル3−(4−ベンジルオキシスチレニル)−アクリジン9−カルボキシレート(50mg、75μmol)のジクロロメタン(5mL)溶液をメチルトリフラート(125μL、15当量)で処理した。反応系を室温で攪拌した。24時間後、C18カラム(3.9×300mm)を用い、10→100%MeCN/水(各々0.05%TFAを含む)の30分グラジエントで、流速1ml/分、260nmでのUV検出を用いたHPLC分析は、Rt(生成物)=29分、Rt(出発物質)=32分(約74%転化)を示した。反応を減圧下濃縮し、そして残渣を酢酸エチル中に懸濁し、そして蒸発乾固して紫色の粘着性固体を得た。この物質をそのまま次の反応に用いた。MALDI−TOF MS 685.1実測値(685.81計算値)。
【0102】
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル3−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(3−HS−DMAE)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル3−(4−ベンジルオキシスチレニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(11mg)をジメチルスルフィド(2mL)および30%HBrの酢酸(1mL)中での混合物中で攪拌した。室温で4時間後、エーテル+ヘキサン(20mL、1:1)を加え、そして沈殿した固体を濾過により回収し、エーテルですすいだ。残渣をメタノールに溶解し、そして減圧下濃縮した。上記のHPLC分析はRt(生成物)=17分を示した。生成物を分取HPLCで20×300mmカラムを用いて単離した。生成物を含むHPLC画分を蒸発乾固して、紫色固体を得た。収量=5mg(63%)。MALDI−TOF MS 504.98実測値(504.56計算値)。
【0103】
(2’,6’−ジメチル−4’−N−スクシンイミジルオキシカルボニルフェニル3−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(3−HS−DMAE−NHS)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル3−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(5mg)のDMF(10mL)溶液をN−ヒドロキシスクシンイミド(8.8mg、10当量)およびジクロロヘキシルカルボジイミド(15.7mg、10当量)で処理した。反応系を室温で16時間攪拌した。上記のHPLC分析は、Rt(生成物)=21分を示した。生成物を分取HPLCで20×300mmカラムを用いて精製し、そして生成物を含むHPLC画分を凍結乾燥した。収量=9.4mg(定量的)。MALDI−TOF MS 601.63実測値(601.64計算値)。
【0104】
(実施例2)
(2’,6’−ジメチル−4’−N−スクシンイミジルオキシカルボニルフェニル3−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−3−HS−DMAE−NHS)の合成)
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル3−(4−ベンジルオキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−3−BS−DMAE−Bz)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−ベンジオキシカルボニルフェニル3−(4−ベンジルオキシスチレニル)−アクリジン−9−カルボキシレート(24mg)および1,4−ブタンスルトン(2mL)を油浴中、約150℃で窒素下、16時間加熱した。これを次に室温に冷却し、そしてエーテル(25mL)を加えて生成物を沈殿させ、これを濾過によって回収して、紫色固体を得た。C18カラム(3.9×300mm)を用い、10→100%MeCN/水(各々0.05%TFAを含む)の30分グラジエントで、流速1ml/分、260nmでのUV検出を用いたHPLC分析は、Rt(生成物)=29分;Rt(出発物質)=32分(40%転化)を示した。粗物質(30−40mg)をそのまま次の反応に用いた。
【0105】
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル3−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−3HS−DMAE)の合成)
粗2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル−3−(4−ベンジルオキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(30−40mg)をジメチルスルフィド(2mL)および酢酸(5mL)中の30%HBrの混合物中で4時間混合した。エーテル(75mL)を加えると、暗紫色固体が分離した。エーテルをデカントし、そして残渣をエーテルですすぎ、風乾した。粗収量=30mg。上記のHPLC分析は、Rt(生成物)=16分を示した。この物質をそのまま次の反応に用いた。MALDI−TOF MS 627.39実測値(625.7計算値)。
【0106】
(2’,6’−ジメチル−4’−N−スクシンイミジルオキシカルボニルフェニル3−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−3−HS−DMAE−NHS)の合成)
粗2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル3−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−スルホブチル−9−アクリジニウムカルボキシレート(約15mg)をMeCN(2mL)とDMF(1mL)との混合物中に溶解した。N−ヒドロキシスクシンイミド(8.5mg、73.9μmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(11mg、53.4μmol)を加え、そして反応を室温で16時間攪拌した。上記のHPLC分はRt(生成物)=19分を示した。生成物を分取HPLCで10×250mmカラムを用いて、溶媒流速4mL/分で精製した。生成物を含むHPLC画分を凍結乾燥して、紫色粉末を得た。収量=5.6mg(全体で42%、3工程)。MALDI−TOF MS 724.66実測値(722.77計算値)。
【0107】
(実施例3)
(2’,6’−ジメチル−4’−N−スクシンイミジルオキシカルボニルフェニル3−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−3−MS−DMAE−NHS)の合成)
(4−メトキシベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドの合成)
4−メトキシベンジルクロリド(1.153g、0.0074mol)の無水トルエン(10mL)溶液をトリフェニルホスフィン(1.93g、1当量)で処理した。得られた溶液を窒素下で還流した。8−10時間後、反応系を室温まで冷却し、そしてエーテルで希釈した。ホスホニウム塩を濾過により回収した。収量=1.5g(53%);MALDI−TOF MS 383.9実測値(383.45計算値)。
【0108】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル3−(4−メトキシスチレニル)−アクリジン−9−カルボキシレートの合成)
4−メトキシベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(0.11g、0.25mmol)の無水THF(5mL)懸濁液を−78℃にアセトン−ドライアイス浴中、窒素下で冷却し、n−ブチルリチウム(1.6Mの0.25mL、1.3当量)で処理した。燈赤色が現れた。反応系を−78℃で0.5時間攪拌し、そして次に無水THF(5mL)中の2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシベンジルフェニルアクリジン−9−カルボキシレート−3−カルボキシアルデヒド(0.1g、0.2mmol)の溶液を滴下した。得られた溶液をアセトン−ドライアイス浴中で0.5時間攪拌し、そして次に0.5時間かけて室温まで加温した。次にこれを酢酸エチル(40mL)で希釈し、得られた溶液を水性塩化アンモニウムで2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。TLC(5:3:2、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル)はEおよびZオレインの混合物を示した;Rf(E異性体)=0.54、Rf(Z異性体)=0.69。生成物をシリカゲルの分取TLCで単離した。Z異性体のE異性体への部分異性化が精製の間に観察された。収量31mg(E)、43mg(E+Z)、総収量=74mg(61%)、MALDI−TOF MS(E異性体)
594.7実測値(594.7計算値);
【0109】
【数3】

【0110】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル3−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−3−MS−DMAE−Bz)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル3−(4−メトキシスチレニル)−アクリジン−9−カルボキシレート(10mg、E異性体)を1,4−ブタンスルトン(約1mL)と混合し、この混合物を油浴中140℃で窒素下、16時間加熱した。次に反応系を室温まで冷却し、酢酸エチルを加えた。沈殿した固体を濾過によって回収し、そしてDMF+MeCN中に溶解した。これを減圧下濃縮して、粘着性の固体を得、これをそのまま精製せずに次の反応に用いた。C18カラム(3.9×300mm)を用い、10→100%MeCN/水(各々0.05%TFAを含む)の30分グラジエントで、流速1ml/分、260nmでのUV検出を用いたHPLC分析はRt(生成物)=24.8分を示した。MALDI−TOF MS 731.7実測値(729.9計算値)。
【0111】
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル3−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウムカルボキシレート(NSB−3−MS−DMAE)の合成)
上記の2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル3−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(粗)を、ジメチルスルフィドと酢酸(1.5mL)中の30%HBrとの2:1混合物中で攪拌した。約3時間後、エーテルを加え、沈殿した固体を濾過によって回収し、そしてエーテルですすいだ。残渣をメタノール中に溶解し、そして減圧下濃縮した。上記のプロトコルを用いたHPLC分析はRt(生成物)=17分を示した。収量=5.6mg(64%、2工程);MALDI−TOF MS 641.25実測値(639.7計算値)。
【0112】
(2’,6’−ジメチル−4’−N−スクシンイミジルオキシカルボニルフェニル3−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−3−MS−DMAE−NHS)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル3−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(5.6mg、8.75μmol)をDMF(1mL)中に溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド(5mg、43.5μmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(53.4μmol)で処理した。反応を室温で16時間攪拌した。上記のHPLC分析はRt(生成物)=20分を示した。これを分取HPLCで10×250mmカラムで単離した。生成物を含むHPLC画分を凍結乾燥した。収量=2mg(31%);MALDI−TOF MS 737.8実測値(736.8計算値)。
【0113】
【化19】

【0114】
(実施例4)
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル2−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(2−HS−DMAE)の合成)
(2−(4−ブロモフェニル)−1,3−ジオキソランの合成)
ベンゼン(60mL)中の4−ブロモベンズアルデヒド(3g、0.0162mol)をp−トルエンスルホン酸一水和物(0.15g、0.79mmol)およびエチレングリコール(5mL、0.0896mol)で処理した。反応物を窒素下、水を共沸除去しながら還流した。3時間後、反応物を室温まで冷却し、等量の酢酸エチルで希釈した。この溶液を水性重炭酸塩で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。無色の油状物が回収された。収率=2.83g(92%)、TLC(ヘキサン中の5%酢酸エチル)は純粋な生成物を示した。Rf=0.17。
【0115】
(N−[4−(1,3−ジオキソリル)フェニル]イサチンの合成)
無水DMF(100mL)に入れたイサチン(1.88g、0.0128mol)を氷浴中、窒素下で冷却し、そして水素化ナトリウム(0.3g、1当量)で処理した。反応物を室温まで加温し、1時間攪拌した。次にこれを2−(4−ブロモフェニル)−1,3−ジオキサラン(2.83g、0.0124mol)で処理し、次いでCuI(4.71g、2当量)で処理した。この懸濁液を油浴中、窒素下、135℃で16時間加熱した。次にこれを室温まで冷却し、等量のクロロホルムで希釈した。得られた懸濁液を濾過し、そして濾液を減圧下で濃縮した。残渣をキシレン(100mL)中に懸濁し、そして乾固するまでエバポレートした。濃い粘性の油状物が回収され、これをそのまま次の反応に用いた。TLC(クロロホルム中5%メタノール)は完全な転化を示した。Rf(生成物)=0.91。
【0116】
(2−(アクリジン−9−カルボキシル)−1,3−ジオキソランの合成)
上記の粗生成物、N−[4−(1,3−ジオキソリル)フェニル]イサチンを10%KOH(100mL)中に懸濁し、そして懸濁液を窒素下4〜5時間還流した。次に反応物を室温まで冷却し、濾過した。濾液を氷中で冷やし、そして氷冷濃HClで酸性化した。濃厚な黄色沈殿物が現れ、これを濾過によって収集し、風乾した。収率=2g。この粗生成物をそのまま次の反応に用いた。MALDI−TOF MS 295.31実測値(295.29計算値)。
【0117】
(アクリジン−9−カルボン酸−2−カルボキシアルデヒドの合成)
粗2−(アクリジン−9−カルボキシル)−1,3−ジオキソラン(2g)を80%水性酢酸(100mL)中に懸濁し、そして75〜80℃で油浴中、窒素下、16時間加熱した。次に反応物を室温まで冷却し、そしてエーテル(300mL)中に注いだ。明黄色固体が分離し、これを濾過によって収集し、そしてエーテルですすいだ。生成物を丸底フラスコに移し、そしてトルエン(50mL)中で懸濁し、蒸発乾固して、黄色粉末を得た。収率=1.5g(47%)。MALDI−TOF MS 251.1実測値(251.24計算値)。
【0118】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル−アクリジン−9−カルボキシレート−2−カルボキシアルデヒドの合成)
アクリジン−9−カルボン酸−2−カルボキシアルデヒド(0.3g、0.0012mol)をピリジン(50mL)に入れた溶液を氷浴中、窒素下で冷却し、そしてp−トルエンスルホニルクロリド(0.455g、2当量)で処理した。反応物を0℃で10分間攪拌し、そして次に2,6−ジメチル−4−ベンジルオキシカルボニルフェノール(0.306g、1当量)を加えた。反応物を室温まで加温し、そして48時間攪拌した。次に反応物混合物を減圧下で濃縮し、そして残渣をクロロホルム中に溶解した。クロロホルム溶液を水性重炭酸塩および水性塩化アンモニウムで洗浄した。有機層を次に硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。粗残渣(0.6g)をシリカゲルの分取TLCでクロロホルム中10%酢酸エチルを用いて精製した;Rf(生成物)=0.57。収率=0.24g(41%)。MALDI−TOF MS 489.1実測値(489.53計算値);
【0119】
【数4】

【0120】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル−2−(4−ベンジルオキシスチレニル)−アクリジン−9−カルボキシレートの合成)
無水THF(5mL)中に入れた4−ベンジルオキシホスホニウムクロリド(0.1g、0.2mmol)をアセトン−ドライアイス浴中で窒素下−78℃まで冷却し、そしてn−ブチルリチウム(1.6Mの0.15mL、1.3当量)で処理した。淡燈色が現れた。反応物を−78℃で1時間攪拌し、そして次に2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル アクリジン−9−カルボキシレート−2−カルボキシアルデヒド(90mg、0.9当量)を無水THF(5mL)溶液として滴下した。反応物を−78℃で0.5時間攪拌し、そして次に室温まで0.5時間かけて加温した。次に反応物を酢酸エチル(50mL)および水性塩化アンモニウム(200mL)で希釈した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮により粗生成物(0.17g)が得られ、これはTLC(6:3:1のヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル)によってZ(Rf=0.63)およびE(Rf=0.75)オレフィンの混合物であることが示された。この2つの異性体をシリカゲルの分取TLCで分離した。先に観察されたように、Z異性体からEおよびZ異性体の混合物への部分異性化が観察された。収率=100mg(合わせての収率、81%);E=44mg、E+Z=56mg。MALDI−TOF MS(E−オレフィン) 671.37実測値(670.78計算値);
【0121】
【数5】

【0122】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 2−(4−ベンジルオキシスチレニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(2−BS−DMAE−Bz)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシベンジルフェニル−2−(4−ベンジルオキシフェニル)−アクリジン−9−カルボキシレート(13.5mg、20μmol)のジクロロメタン(1.5mL)溶液をメチルトリフルオロメタンスルホネート(116μL、50当量)で処理した。反応物を室温で16時間攪拌した。C18カラム(3.9×30mm)を用い、10→100%MeCN/水(各々0.05%TFAを含む)の30分グラジエントで、流速1mL/分、260nmでのUV検出を用いたHPLC分析は、Rt(生成物)=24.5分を示した。反応混合物を濃縮し、粗混合物を直接次の反応に用いた。MALDI−TOF MS 685.67実測値(685.81計算値)。
【0123】
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル 2−(4−ヒドロキシスチレニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(2−HS−DMAE)の合成)
上記の粗生成物混合物を酢酸(0.5mL)中の30%HBrとジメチルスルフィド(1mL)との混合物中、室温で攪拌した。4時間後、エーテル(50mL)を加え、そして沈殿した固体を濾過によって収集した。固体をMeOH+MeCN中で溶解し、そして濃縮した。上記のプロトコルを用いたHPLC分析はRt(生成物)=17分を示した。生成物を20×300mmカラムを用いる分取HPLCで精製した。生成物を含むHPLC画分を凍結乾燥して乾固させ、暗紫色固体を得た。収率=7.6mg(76%、2工程);MALDI−TOF MS 504.9実測値(504.6計算値)。
【0124】
(実施例5)
(2’,6’−ジメチル−4’−N−スクシンイミジルオキシカルボニルフェニル 2−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−2−MS−DMAE−NHS)の合成)
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 2−(4−メトキシスチレニル)−アクリジン−9−カルボキシレートの合成)
4−メトキシベンジルトリフェニルアンモニウムクロリド(85mg、0.0002mol)をTHF(5mL)中に懸濁し、アセトン−ドライアイス浴中、窒素下で−78℃まで冷却した。N−ブチルリチウム(1.6Mの0.15mL、1.2当量)を加え、そして反応物を窒素下でさらに30分間−78℃で攪拌した。これに、2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル アクリジン−9−カルボキシレート−2−カルボキシアルデヒド(75mg、0.15mmol)無水THF(5mL)溶液を加えた。反応物を−78℃で30分間攪拌し、そして次に室温まで30分かけて加温した。次に反応物を酢酸エチル(40mL)で希釈し、得られた溶液を水性塩化アンモニウムで2回洗浄した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。次にこれを減圧下で濃縮した。TLC(5:3:2のヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル)はE(Rf=0.59)およびZ(Rf=0.65)オレフィンの混合物を示した。2つの生成物を分取TLCで精製した。合計収率=61mg(67%);E=24mg;E+Z=37mg(ZからEへの異性化が精製の間に観察された)。MALDI−TOF MS(E異性体) 595.6実測値(594.7計算値);
【0125】
【数6】

【0126】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル−2−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−2−MS−DMAE−Bz)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 2−(4−メトキシスチレニル)−アクリジン−9−カルボキシレート(19mg、32μmol)を1,4−ブタンスルトン(3〜4mL)と混合し、この混合物を油浴中、窒素下で16時間、140℃で加熱した。次に反応物を室温まで冷却し、酢酸エチル(40mL)で希釈した。沈殿した固体を濾過によって収集した。これをDMF中に溶解し、そして減圧下で濃縮した。暗紫色固体が回収され、これを直接次に反応に用いた。C18カラムを用い、10→100%MeCN/水(各々0.05%TFAを含む)の30分グラジエントで、1ml/分、260nmでのUV検出を用いたHPLC分析は、Rt(生成物)=25分を示した。MALDI−TOF MS
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル 2−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−2−MS−DMAE)の合成)
上記の粗物質を酢酸(0.5mL)中の30%HBrとジメチルスルフィド(1mL)との混合物中で4時間、室温で攪拌した。エーテル(50mL)を加え、そして沈殿した固体を濾過によって収集した。残渣をDMF中に溶解し、減圧下で濃縮した。回収された残渣をトルエン中に懸濁し、乾固するまでエバポレートした。粗収率=4.5mg(〜22%)。上記プロトコルを用いたHPLC分析はRt(生成物)=15分を示した。MALDI−TOF MS
(2’,6’−ジメチル−4’−N−スクシンイミジルオキシカルボニルフェニル 2−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(NSB−2−MS−DMAE−NFS)の合成)
2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル 2−(4−メトキシスチレニル)−10−スルホブチル−9−アクリジニウム−カルボキシレート(5.6mg)をDMF(1mL)中に溶解し、そしてN−ヒドロキシスクシンイミド(5mg、43.5μmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(10mg、48.5μmol)で処理した。反応物を室温で16時間攪拌した。上記同様のHPLC分析はRt(生成物)=19分を示した。生成物を10×250mmカラムを用いる分取HPLCで単離し、生成物を含むHPLC画分を凍結乾燥し乾固させた。紫色の粉末状固体が回収された。収率=0.6mg(12%);MALDI−TOF MS 738.9実測値(736.8計算値)。
【0127】
【化20】

【0128】
(実施例6)
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル 2−(4−ヒドロキシフェニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(2−HP−DMAE)の合成)
(N−[3−(4−ベンジルオキシフェニル)フェニル]イサチンの合成)
無水DMF(30mL)中のイサチン(0.12g、0.81mmol)を氷浴中、窒素下で冷却し、そして水素化ナトリウム(21mg、1.1当量)で処理した。反応物を氷中で0.5時間攪拌し、そして次に室温まで加温した。この溶液を次に4−(3−ブロモフェニル)フェノールベンジルエーテル(Hajdukら、J.Am.Chem.Soc.1997、119、5818−5827)(0.16g、0.47mmol)で処理し、次いでヨウ化銅(0.32g、1.68mmol)で処理した。反応物を油浴中140℃で加熱した。約16時間の後、反応物を室温まで冷却し、そして減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(〜75mL)中に溶解し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粘着性の褐色固体を得、これをシリカゲルの分取TLCでヘキサン中の25パーセント酢酸エチルを展開溶媒として用いて精製した。Rf(生成物)=0.38。収率=47mg(25%);MALDI−TOF MS 407.02実測値(405.5計算値);
【0129】
【数7】

【0130】
(3−(4−ベンジルオキシフェニル)−9−カルボキシアクリジンの合成)
上記のアルキル化イサチン(47mg)を25mLの10%KOH中に懸濁し、そして窒素下で3時間還流した。次に反応物を室温まで冷却し、等量の氷水で希釈した。これを約10%HClでpH2まで酸性化した。分離した黄色固体を濾過によって収集し、そして氷水(3×5mL)ですすいだ。よく風乾した後、黄色固体をメタノールに溶解し、そして溶液を乾固するまでエバポレートした。残渣をトルエン中に懸濁し、得られた懸濁液を乾固するまでエバポレートした。収率=44mg(94%)。この物質をそのまま次の反応に用いた。
【0131】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 3−(4−ベンジルオキシフェニル)−アクリジン−9−カルボキシレート(3−BzP−DMAeE−Bz)の合成)
無水ピリジン(20mL)中の3−(4−ベンジルオキシフェニル)−9−カルボキシアクリジン(44mg、0.108mmol)を氷浴中、窒素下で冷却し、そして4−カルボキシベンジル−2,6−ジメチルフェノール(33.3mg、1.2当量)およびp−トルエンスルホニルクロリド(41mg、2当量)で処理した。反応物を室温まで加温し、そして窒素下16時間攪拌した。次にこれを減圧下で濃縮し、そして残渣をトルエン(約25mL)中に懸濁し、乾固するまでエバポレートした。回収された物質をクロロホルム(約2mL)中に溶解し、そして生成物をシリカゲルの分取TLCでヘキサン中の25%酢酸エチルを展開溶媒として用いて単離した。収率=22mg(31%)、MALDI−TOF MS 645.52実測値(645.75計算値)。
【0132】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 3−(4−ベンジルオキシフェニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(3−BzP−DMAE−Bz)の合成)
上記エステル(21mg、0.033mmol)をジクロロメタン(1.5mL)中に溶解し、そしてトリフルオロメタンスルホン酸メチル(100μL、0.88mmol)で処理した。反応物を室温で16時間攪拌した。次に溶媒を減圧下で除去し、そして残渣をMeCN(2mL)中に溶解した。C18カラム(3.9×300mm)を用い、10→100%MeCN/水(各々0.05%TFAを含む)の30分グラジエントで、流速1.0mL/分、260nmでのUV検出を用いたHPLC分析は、20、24、25および29.5分に溶出する生成物を示した。これらを20×300mmカラムを用いる分取HPLCで単離し、そして画分をmALDI−TOF MSで分析した。24分で溶出する主生成物は659.57amu(660.78計算値)で正しい分子イオンを得た。この生成物を含むHPLC画分は暗赤色であり、これを乾固するまでエバポレートした。収率=14mg(65%)。
【0133】
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル 3−(4−ヒドロキシフェニル)−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(3−HP−DMAE)の合成)
上記ベンジル保護アクリジニウムエステル(14mg、0.017mmol)を酢酸中の30%HBrとメチルスルフィドの1:1混合物中、室温で3.5時間攪拌した。次にエーテルを加えて生成物を沈殿させ、これを濾過によって収集し、そしてエーテルですすいだ。赤色生成物をメタノールに溶解した。上記同様のHPLC分析は16分で溶出する純粋生成物を示した。これを分取HPLCで単離し、そしてHPLC画分を乾固するまでエバポレートした。収率=2.6mg(26%);MALDI−TOF MS 479.13実測値(479.52計算値)。
【0134】
【化21】

【0135】
(実施例7)
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル 2−ヒドロキシ−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(2−OH−DMAE)の合成)
(4−メトキシエトキシメトキシ−ヨードベンゼンの合成)
4−ヨードフェノール(10g、45.45mmol)を200mlの無水テトラヒドロフランに入れた溶液を0℃で水素化ナトリウム(2.36g、60%分散体、59.09mmol)で5分間処理した。得られた混合物に5分間かけてメトキシエトキシメチルクロリド(8.3ml、72.73mmol)をゆっくり加えた。混合物を0℃で30分間攪拌し、室温まで加温し、そして窒素下で24時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を500mlのエーテル中に溶解し、200mlの5%水酸化ナトリウム(4×200ml)、水(4×200ml)、飽和塩化ナトリウム(1×200ml)で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下でエバポレートさせて、14.1gの油状生成物を得た。TLC(シリカゲル、エーテル):Rf0.5。
【0136】
(N−(4−メトキシエトキシメトキシ)フェニルイサチン)
200mlの無水N,N−ジメチルホルムアルデヒド中のイサチン(4.0g、27.2mmol)の溶液を室温で水素化ナトリウム(1.036g、60%分散体、32.64mmol)で0.5時間処理し、次いで4−メトキシエトキシメトキシ−ヨードベンゼン(12.57g、40.8mmol)およびヨウ化銅(I)(10.34g、54.4mmol)を加えた。得られた混合物を−160℃で窒素下、17時間攪拌した。これを室温まで冷却し、400mlのクロロホルムで希釈した。得られた混合物を濾過して無機物質を除去した。減圧下で濾液をエバポレートさせて、N−(4−メトキシエトキシメトキシ)フェニルイサチンを含む粗混合物を主生成物として得た。TLC(シリカゲル、エーテル):Rf0.8。
【0137】
(2−メトキシエトキシメトキシ−アクリジン−9−カルボン酸)
上記粗4−メトキシエトキシメトキシフェニルイサチンを精製することなく、120mlの10%水酸化カリウム中に懸濁した。懸濁液を150℃で5時間還流した。室温まで冷却した後、混合物を濾過して有機不純物を除去した。濾液を氷水浴中、濃塩酸でpH2に酸性化した。得られた黄色沈殿を収集し、水(4×50ml)で洗浄し、そして風乾した。乾燥した物質をさらにエーテル(6×50ml)で洗浄して所望の生成物を6.7g得た。TLC(シリカゲル、30%メタノール/クロロホルム):Rf0.5。
【0138】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 2−メトキシエトキシメトキシ−アクリジン−9−カルボキシレート(2−MEM−DMAeE−Bz))
150mlの無水ピリジン中の2−メトキシエトキシメトキシ−アクリジン−9−カルボン酸(3.6g、11mmol)の懸濁液をp−トルエンスルホニルクロリド(4.183g、22mmol)で0℃で5分間処理して、均一な褐色溶液を形成した。次に、ベンジル3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンゾエート(2.818g、11mmol)を加えた。溶液を室温で窒素下、20時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。残渣をヘキサンを充填したシリカフラッシュクロマトグラフィーカラムで分離した。これを50%エーテル/ヘキサン(1L)で溶出し、次いで70%エーテル/ヘキサン(3L)で溶出した。生成物の画分を70%エーテル/ヘキサンの溶出液から得た。溶媒を減圧下でエバポレートさせて、3.74gの所望の生成物を得た。TLC(シリカゲル、エーテル):Rf0.8。
【0139】
(2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 2−ヒドロキシ−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレートトリフルオロメタンスルホネート(2−OH−DMAE−Bz))
20mlの無水塩化メチレン中の2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 2−メトキシエトキシメトキシ−アクリジン−9−カルボキシレート(400mg、0.708mmol)の淡黄色溶液をトリフルオロメタンスルホン酸メチル(0.4ml、3.54mmol)で室温で窒素下、攪拌しながら14時間、処理した。得られた混合物を無水エーテル(20ml)で処理した。沈殿物を収集し、エーテル(4×20ml)で洗浄して、325mgの生成物を得た。
【0140】
【数8】

【0141】
(2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル 2−ヒドロキシ−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレートブロミド(2−OH−DMAE))
2’,6’−ジメチル−4’−ベンジルオキシカルボニルフェニル 2−ヒドロキシ−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレートトリフルオロメタンスルホネート(100mg)を4mlの酢酸中の30%臭化水素に入れた溶液を55℃で窒素下、1時間攪拌し、そして次に10mlの無水エーテルで処理した。得られた沈殿を収集し、そしてエーテル(4×10ml)で洗浄して、80mgの(4−カルボキシル−2,6−ジメチル)フェニル2−ヒドロキシ−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレートブロミドを得た。
【0142】
【数9】

【0143】
【化22】

【0144】
(実施例8)
(NSB−3−HS−DMAE−BSA結合体の合成)
pH9の0.1Mカーボネート(0.9mL)中のBSA(0.5mg、0.0075μmol)をDMF(0.1mL)中のNSB−3−HS−DMAE−NHS(0.25mg、0.35μmol)の溶液で一滴ずつ処理した。透明な溶液が得られ、これを室温で約16時間攪拌した。標識されたタンパク質をSephadex G25のカラムクロマトグラフィーで溶出液として水を用いて単離した。空隙容量で溶出されるタンパク質画分を収集し、アミコン(amicon)フィルタ(MW30,000カットオフ)を用いて濃縮した。結合体のMALDI−TOF分析は質量が1180単位増加したことを示し、これは1個のBSA当たりおよそ2つの標識NSB−3−HS−DMAEを取り込んだことに対応する。
【0145】
(実施例9)
(NSB−3−HS−DMAE−抗TSH結合体の合成)
pH9の0.1Mカーボネート(0.45mL)中のTSH抗体(0.5mg、3.33nmol)をDMF(60μL)中のNSB−3−HS−DMAE−NHS(120μg、50当量)の溶液で処理した。反応物を室温で2時間攪拌し、そして次に標識タンパク質を上記のように単離した。結合体のMALDI−TOFMS分析は質量が1796単位増加したことを示し、これは抗TSHの1分子当たりおよそ3つの標識を取り込んだことに対応する。
【0146】
(実施例10)
(3−HS−DMAE−BSA結合体の合成)
pH9の0.1Mカーボネート(400μL)中のBSA(2mg、0.03μmol)をDMF(100μL)中の3−HS−DMAE−NHS(0.45mg、25当量)の溶液で処理した。反応物はわずかに濁っており、これを4℃で16時間攪拌した。結合体を上記のように単離した。結合体のMALDI−TOFMS分析は質量が415単位増加したことを示し、これは1個のBSA当たりおよそ1つの標識を取り込んだことに対応する。
【0147】
(実施例11)
(NSB−3−MS−DMAE−BSA結合体の合成)
pH9の0.1Mカーボネート(400μL)中のBSA(0.5mg、0.0075μmol)をDMF(140μL)中のNSB−3−MS−DMAE−NHS(140μg、約25当量)の溶液で処理した。反応物を室温で16時間攪拌し、次に結合体を上記のように単離した。結合体のMALDI−TOF MS分析は質量が3250単位増加したことを示し、これは1個のBSA当たりおよそ5個の標識を取り込んだことに対応する。
【0148】
(実施例12)
(NSB−3−MS−DMAE−抗TSH結合体の合成)
pH9の0.1Mカーボネート(400μL)中のTSH抗体(0.5mg、3.33nmol)をDMF(120μL)中のNSB−3−MS−DMAE−NHS(120μg、約50当量)の溶液で処理した。反応物を室温で16時間攪拌し、次に結合体を上記のように単離した。結合体のMALDI−TOF MS分析は質量が6074単位増加したことを示し、これは1個のTSH抗体当たりおよそ10個の標識を取り込んだことに対応する。
【0149】
(実施例13)
(2−HS−DMAE−BSA結合体の合成)
MeCN(0.65mL)+DMF(0.1mL)中の2−HS−DMAE(1.3mg、2μmol)をN−ヒドロキシスクシンイミド(1.4mg、12μmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(3mg、14.6μmol)で処理した。反応物を室温で混合した。2〜3時間後、C18カラム(3.9×300mm)を用い、10→100%MeCN/水(各々0.05%TFAを含む)の30分グラジエントで、1mL/分、260nmでのUV検出を用いたHPLC分析はRt(生成物)=18.2分(>80%)、Rt(sm)=17分を示した。反応物をさらに1時間攪拌し、次にMeCNを減圧下で除去した。残りをpH9の0.1Mカーボネート(0.5mL)に入ったBSAの溶液(5mg、0.075μmol)の溶液に滴下し、次に追加のDMF(0.2mL)を加えた。反応物を1時間室温で攪拌し、そして次に不溶性物質を除去するために遠心分離にかけた。濾液を、Sephadex G25で水を溶出液として用いてカラムクロマトグラフィーによって精製した。空隙容量で溶出した標識化タンパク質を収集し、アミコン濾過(MW30,000カットオフフィルタ)によって濃縮した。結合体のMALDI−TOF MS分析は質量が2822単位増加したことを示し、これは1個のBSA当たりおよそ6個の標識を取り込んだことに対応する。
【0150】
(実施例14)
(トレーサー標識としてのDMAEとNSB−3−HS−DMAEのTSHアッセイ比較)
診断アッセイの適用性についての結合体結合的機能性を、血清中のTSHの臨床的定量のために処方された二価のサンドイッチイムノアッセイを用いて評価した。このアッセイにおいて、NSB−3−HS−DMAE−抗THSH結合体(以下トレーサーと呼ぶ)は、患者のサンプルまたはTSH含有標準(Chiron Diagnostics Corp.,Walpole,MA)の中に存在する選択された分析物であるTSHに対して特異的に結合して、非共有的に結合した抗体−抗原複合体を形成する。得られたトレーサー−分析物複合体は次に、常磁性粒子固相に共有結合した第2のポリクローナルヒツジ抗TSH抗体によって捕捉される。化学発光シグナルは固相に結合した結合体を未結合の結合体から磁気的に分離することによって決定される。トレーサーの適格性は2つの関連する方法によって評価される。すなわち、第一に、問題の結合体およびまた既に有用性が確立されたDMAE−抗TSHトレーサーの両方から生成される規格化標準曲線データの比較である。標準曲線データを用いていくつかのコントロール試料のTSH濃度を計算した。NSB−3−HS−DMAE−抗TSH濃度を、ACSTMTSH3 Lite Reagent Buffer(Chiron Diagnostics Corp.,Walpole,MA)中での2.4μMからChiron Diagnostics THS3アッセイキットで供給される参照のDMAE−抗TSHトレーサーの濃度である2.15nMまで、8.96×10-4倍希釈した。TSHアッセイを、100μLの新規NSB−3−HS−DMAE−抗TSHトレーサーと100μLの参照のDMAE−抗TSHキットトレーサーを別々に、200μLのTSH標準またはコントロールのいずれかと混合して開始した。10個のTSH標準を用い、これはTSHを0.000、0.120、0.740、1.92、3.86、8.99、19.9、49.6、97.1および183μI.U./mL(Chiron Diagnostics Corp.,Walpole,MA)の濃度で含んでいた。6つのコントロールもまたアッセイした。これらはChiron Diagnosticsのリガンド1、2および3(これらはTSHを平均濃度で各々0.600、4.90および17.0μI.U./mL含む)、ならびにBio−Rad LaboratoriesのLyphochek(登録商標)Immunoassay Control Serumus1、2および3(これらはTSHを各々、2.94、11.5、および40.6μI.U./mL含む)であった。混合物を一緒にボルテックスに3回、5秒間、Corning,Inc.4010型Multi−Tube Vortexerの設定No.5でかけた。データ点を三つ組で取得した。アッセイ混合物を次に室温で20分間インキュベートし、その後、200μLのACSTMTSH3 Solid Phase(約67μg)を各アッセイに加えた。アッセイ混合物を上記のように3回ボルテックスにかけ、そして室温で30分間インキュベートした。固相を、Ciba−Corning Magic Lite Assay Rack中で永久磁石のアレイを3分間適用することによって、磁気的に上清から分離した。上清を固相からデカントした。残った上清を3分間ブロッティングで除去し、そして再び1分間ブロッティングで除去した。
【0151】
固相を2回の別々の1.0ml容量のChiron Diagnostics
ACSTM:NG Wash Bufferで洗浄し、そして100μlの試薬グレードの水に懸濁させた。化学発光反応は、各300μLのChiron Diagnostics MLA Reagent 1(0.1NのHNO3、0.5%H22)およびReagent2(0.25NのNaOH、0.05%のCTAC)をCorion BG38光学フィルタを備えたCiba−Corning Diagnostics Magic Lite Analyzer上に系列的に添加することで開始された。化学発光データはMagic Lite
Analyzerで検出される光子として収集され、そして相対光ユニット(RLU)で表された。
【0152】
(サンドイッチアッセイパラメータの計算方法)
特定の分析物濃度(ここでμで表される)の結果得られるRLUの算術平均を3つ組から計算した。非トレーサーアッセイ試薬もまた、小さいけれどもときには有意な数のRLUに寄与する。それゆえ、全てのアッセイ試薬を含むがトレーサーを含まないコントロール反応を平行して行い、非トレーサー試薬バックグラウンド(ここでnで表される)を決定した。算術平均RLU、μ、をトレーサーのみから得られるRTU(ここでBで表される)を表すように補正し、ここでB=μ−nである。分析物濃度が最も高いときに、この点についての、補正された算術平均RLU値はBmaxとして表される。標準中に存在する分析物濃度と検出されるRLUとの間には直接的ではあるが非線形的な相関関係が存在する。その結果、同じ直線的なS字状の相関がまた、分析物濃度を得られた%B/Bmaxに対して関連づけ、そして正確には実験的線形フォームで
【0153】
【数10】

【0154】
として表され得る。ここでxは分析物濃度であり、そしてyは観察されたシグナルであり、%B/BmaxまたはRLUのいずれかで生成する(A、B、C参照)。
【0155】
【数11】

【0156】
さらに、4つのさらなるパラメータがある。すなわち、回帰定数b、回帰係数m、ゼロ用量(分析物濃度)での漸近的非特異的結合(NSB)y0、および無限に高い用量に関する漸近的無限限界応答y∞である。これらのパラメータのうち最後の3つはDOSECALC.EXE Rev.1.73プログラム(Chiron Diagnostics Corp.,Walpole,MA)の反復、加重、4パラメータのロジスティック(4PL−WTD)分析機能を用いて直接計算された。回帰定数bの算術平均は、
【0157】
【数12】

【0158】
として書き直される用量応答式から計算して、分析物濃度の全範囲にわたって決定された。次に未知の分析物濃度は
【0159】
【数13】

【0160】
としてアレンジされる用量応答等式から計算された。
【0161】
(NSB−3−HS−DMAEおよびDMAEをトレーサー標識として用いるTSHアッセイ標準曲線)
%B/Bmax対TSH濃度の両対数プロット(図3参照)は、NSB−3−HS−DMAE−抗TSHおよびDMAE−抗TSH結合体によって生成する規格化標準曲線の形状の密な類似性を例示する。従って、NSB−3−HS−DMAE標識および他の長発光波長アクリジニウムエステル標識は、4桁または5桁のオーダーの大きさの分析物濃度にわたってイムノアッセイトレーサーとして有用性を有することが示される。この場合、TSH濃度をその臨床的に関連性のある範囲全体にわたって決定するのに十分である。
【0162】
(TSH濃度決定におけるアッセイの精度)
TSH濃度をCiba−Corningリガンド1、2および3、ならびにBio−Rad対照血清1、2および3について、加重4PL関数を用いて計算した。計算された値を関連の生成物の文献に記述された、確立された値の範囲と比較した。全ての場合において、NSB−3−HS−DMAEは示した対照中のTSH濃度の正確な決定のためのトレーサー標識としての明白な有用性を示した。結果はDMAE標識に関するものに匹敵した。NIRアクリジニウムエステルはイムノアッセイにおけるトレーサー標識として実用的な有用性を有する。
【0163】
【表3】

【0164】
(実施例15)
(2’,6’−ジメチル−4’−(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)フェニル2−ヒドロキシ−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(2−OH−DMAE−NHS)の合成)
無水DMF(0.5mL)中の2’,6’−ジメチル−4’−カルボキシフェニル2−ヒドロキシ−10−メチル−アクリジニウム−9−カルボキシレート(3.5mg、6.35μモル)の溶液をN−ヒドロキシスクシンイミド(3.7mg、5当量)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(6.5mg、5当量)で処理した。反応系を室温で攪拌した。5−6時間後、C18カラム(3.9×300mm)を用い、10→100%MeCN/水(各々0.05%TFAを含む)の30分勾配で、流速1.0mL/分、260nmでのUV検出を用いたHPLC分析は完全な転化を示した;Rt(生成物)=15分、Rt(出発酸)=14分。生成物を20×300mmカラムを用いる分取用HPLCで単離し、生成物を含むHPLC画分を凍結乾燥した。収量=3mg(75%)。この物質をそのまま次の標識化反応に用いた。
【0165】
(実施例16)
(デュアルアクリジニウムエステル標識ハイブリダイゼーションアッセイ)
A.オリゴヌクレオチド標識化
2−OH−DMAE−VancoAプローブ526.20(配列番号1)
以下のバンコマイシンAプローブ配列5’−XCG CAA GGT TTTTCG CAC ATT(配列番号7)を含む20マーの合成オリゴヌクレオチドを標準のホスホルアミダイト化学を用いて合成した。Clontechの「Unilink」アミノ修飾剤を用いてアミノ基を5’末端に導入した(上記配列におけるX)。0.3mLの0.1M重炭酸ナトリウム(pH8.5)中のこのオリゴヌクレオチド10nモルを氷中で冷却し、そして各70μLの3つの等しい部分の上記NHSエステル(3×500nモル、全部で1mg)のDMF溶液で、処理した。反応系を室温で16時間攪拌し、次に標識されたDNAをSephadex G25カラムでゲル濾過によって遊離標識から分離した。カラムの空隙容量で溶出した標識化DNAを収集し、そしてさらに分取用HPLCによって、C18カラム(3.9×300mm)で、0.1M酢酸トリメチルアンモニウム(pH7.3)中のMeCNの20分間で8→20%の勾配、次いで20分間で20→60%の勾配で精製した。結合体は16分で溶出し、これを収集し、そして凍結乾燥した。収量=1.73nモル(17%)、MALDI−TOF MS 6678.5(実測値)(未修飾オリゴヌクレオチド6292.7)は予想された1つの標識の取り込みを示す。標識の特異的活性は0.45×1019RLU/モルで、遊離標識の場合と変わらないことが見い出された。
DMAE−VancoBプローブ495.23(配列番号2)
アミノ連結Van Bプローブ配列の合成およびDMAE標識化を先の段落と同様の方法で行った。
B.オリゴ−デオキシリボヌクレオチドのアミノPMP上への固定化
全ての反応は他に指示のない限り室温で行われた。アミノエチルアミノプロピルシロキサンポリマーで被覆されたPMP(アミノ−PMP、50.8mg/mLの0.59mL、30mg)を強力な永久磁石を適用して(10分間、Industrial Magnetics,Inc.5C3894型)その貯蔵緩衝液から磁気的に分離した。貯蔵緩衝液を吸引により除去した。アミノ−PMPを4つの個別の容量(10mL)の10mMピリジンで混合(10分間、Corning, Inc.4010型Multi−Tube Vortexerの設定5)により連続的に洗浄し、そして各洗浄サイクルごとに磁気的に分離(10分間)した。グルタルアルデヒド(10mMピリジン中5%(w/v)、10mL)をアミノ−PMP懸濁液と混合(設定3、3時間)した。未反応のグルタルアルデヒドを10mMピリジンの4回の洗浄サイクル(全部で40ml)で除去した。30O.D.の5’−アミノ結合オリゴマーを415μLの10mMピリジン中でカップリングした。反応混合物を倒立型(end−over−end)振盪機(Lab Industries,Inc.400−100型)中で16時間混合した。上清を除去し、そしてオリゴ−PMPを10mLの100mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムで4時間処理した。オリゴ−PMPを1.0mLの水で5回洗浄し、そして次に2.0mLの濃水酸化アンモニウムで55℃で16時間、脱保護した。上清を除去し、そしてオリゴ−PMPを1.0mLの水で洗浄し、そして1.0mLの水中に再懸濁した。(Vanco−A PMPプローブ557.22は配列番号3で示される。VancoB PMP−プローブ496.20は配列番号4で示される)。
C.デュアル分析物プローブアッセイ:
アッセイのセットアップ:
アッセイの準備において、いくつかの緩衝液を調製した:ハイブリダイゼーション緩衝液(0.60M塩化ナトリウム、60mMクエン酸、10mM Tris、1.0mM EDTA、0.10%(w/v)ウシ血清アルブミン、0.020%(v/v)Tween−20、0.020%(w/v)アジ化ナトリウム、1.0%(w/v)硫酸デキストラン、pH8.0)、プローブ希釈剤(50mMリン酸ナトリウム、pH6.0)、洗浄溶液(0.30M塩化ナトリウム、30mMクエン酸、0.10%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム、pH7.7)およびDNase I溶液(10mM Tris、1.0mM EDTA、10mM塩化マグネシウム、3.3μg/mL DNase I、pH8.0)。固相および合成標的をハイブリダイゼーション緩衝液で指示された作用濃度に希釈し、他方、プローブはプローブ希釈剤で希釈した。ハイブリダイゼーション反応混合物をセットアップ(図4参照)し、12.5μLの80nM 2−OH−DMAE−Vanco A−プローブ526.20(1.0pモル)(配列番号1)、12.5μLの1.6nM DMAE−Vanco B−プローブ459.23(0.10pモル)(配列番号2)、100μLの2.0mg/mL Vanco−A PMPプローブ557.22固相(0.20mg)(配列番号3)、100μLの0.20mg/mL VancoB PMP−プローブ496.20(20μg)(配列番号4)、75μLのVanco A526.53(配列番号5)およびVanco B459.57(配列番号6)の両方の合成標的を10-8、5×10-9、10-9、5×10-10、10-10および0Mの濃度で含むようにした。(Vancoはまた本明細書中でVanとも称することに注意。)ここで、各試験の標的の質量は750,375、75、37.5、7.5および0.000fモルのいずれかであり、他に4.5×1011、2.3×1011、4.5×1010、2.3×1010、4.5×109、および0分子とも表される。同時アッセイ反応は上記のように構成されたが、各分析物についての個々のアッセイは相補的プローブのみを含み、他はプローブ希釈剤で置換された。アッセイ混合物を3回、5秒間、Corning,Inc.4010型Multi−Tube Vortexerの設定番号5でボルテックスした。反応混合物を45℃で30分間インキュベートした。固相を、Ciba Corning Magic Lite Assay Rack中で永久磁石のアレイを3分間適用することによって、上清から磁気的に分離した。上清を固相からデカントした。残った上清を吸い取り紙で3分間吸い取り、そして次に再び1分間吸い取って、除去した。固相を2つの別の1.0mL容量の洗浄溶液で洗浄して、未結合のプローブを除去し、次に300μLのDNase I溶液中に懸濁させて、プローブを固相表面から脱離させた。化学発光反応を、デュアルPMTルミノメーターの制御下、連続的に300μLのChiron Diagnostics ACS試薬 1(0.1N硝酸、0.5%(w/v)過酸化水素)、次いで0.1秒後に300μLのACS試薬2(0.25N水酸化ナトリウム、0.5%(w/v)N,N,N,N−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド界面活性剤)を添加することによって開始させた。化学発光データをデュアルPMT固定器(Fixture)によって検出される量子として2.0秒間、試薬2の添加直後に収集し、これを相対光単位(RLU)で表した。(図4に示す標的およびプローブ配列は化合物全体の構造を示さない。詳細には、核酸配列と標識(またはPMP)との間の架橋は省略されている。上記記載は架橋に関する詳細な情報を提供する)。
装置:
デュアル−PMTルミノメータは米国特許第5,395,752号および5,447,687号に記載されている。本出願については、デュアルPMTルミノメータ上の2つの光電子増倍管(PMT)は各々独立した異なる光学フィルタを備えていた。クロストーク値は各プローブ溶液25μlから決定された。5回の相加平均を両PMTから総計した(ここでT=(PMT1からの平均RLU)+(PMT2からの平均RLU))。PMT1上の2−HO−DMAE化学発光のクロストークは(2−HO−DMAE−VanAからのPMT1 RLU)×100/Tとして計算された。PMT2上のDMAE化学発光のクロストークは、(DMAE−VanBからのPMT2 RLU)×100/Tとして計算された。短波長チャンネル(ここではPMT1と称する)にCorion,Inc.BG−12−S−O939−4M229光学フィルタを取り付け、これを通って、350nmから475nmまでの波長が入射光の20%より多く透過する。従って、BG−12−S−O939−4M229フィルタは2−HO−DMAE−VanAプローブによって発せられる光全体の3.5%(クロストーク)のみを透過する。従って、DMAEからの化学発光シグナルはPMT1によって優先的に検出される。長波長チャンネル(ここではPMT2と称する)にCorion,Incc.LL−550−F−950B光学フィルタを取り付け、これは560nm以上の波長の光を入射光のおよそ90%透過する。その結果、LL−550−F−950BフィルタはDMAE−VanVプローブによって発せられる光全体の1.1%(クロストーク)のみを透過する。従って、2−HO−DMAEからの化学発光シグナルはPMT2によって優先的に検出される。低いクロストークのパーセンテージから証明されるように、これらの光学フィルタを備えたデュアルPMTルミノメータはDMAE−および2−HO−DMAE−標識プローブの試料を合わせたものからの別々の化学発光シグナルの良好な識別を提供する。
【0166】
結果:
AE−標識プローブ以外に他のアッセイ試薬もまた、時折ではあるが少数の有意なRLUに寄与する。それゆえ、プローブ以外の全てのアッセイ試薬を含む対照反応を平行して行って、非プローブ試薬のバックグラウンドを決定し、ここでnと表す。3ツ組からの平均RLU、μ、を補正して、プローブのみから得られるRLUを表し、これをここでBで表す。ここでB=μ−nである。結果を表にまとめ以下に示す。両対数プロットを、バックグラウンド補正したRLU対標的数について作製した。以下の2つのグラフ(図5および6参照)に示すように、2−HO−DMAE標識VanAプローブによって発生する化学発光を用いる独立したVanAアッセイと同時VanAおよびBアッセイの両方に関して、標準曲線は同一である。同様に、DMAE標識VanBプローブによって発生する化学発光を用いる独立したVanBアッセイと同時VanAおよびBアッセイの両方に関して、標準曲線はまた同一である。個別およびデュアル分析物アッセイの両方で標準曲線の形が同一であることは、混合DMAE−および2−HO−DMAE−標識プローブが独立してそれぞれの標的配列にハイブリダイズし、非関連のデュアルアッセイ成分の存在によって乱されないことを示す。これらの結果、ならびにデュアルPMTルミノメータ上で短波長と長波長の化学発光シグナルを良好に識別することは、光学的に識別可能な化学発光極大を有する2つのAE−標識プローブを用いて、同じ試料中の2つの異なる分析物を同時定量することの実用性を実証する。
【0167】
【表4】

【0168】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図1N】
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【図1O】
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【図1P】
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【図1Q】
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【図1R】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−215633(P2010−215633A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101534(P2010−101534)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2000−564941(P2000−564941)の分割
【原出願日】平成11年8月10日(1999.8.10)
【出願人】(392010599)バイエル・コーポレーシヨン (12)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CORPORATION
【Fターム(参考)】