説明

近赤外反射フィルム及び近赤外反射体

【課題】水系の屈折率形成用塗布液を用い、製造コストが安く、大面積化が可能であり、近赤外反射率及び可視光透過率が高く、耐久性に優れた近赤外反射フィルム及び近赤外反射フィルムを設けた近赤外反射体を提供する。
【解決手段】基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有する近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子と、リチウム化合物と、水溶性高分子とを含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外反射性、可視光透過性及び耐久性に優れた近赤外反射フィルムと、近赤外反射フィルムを設けた近赤外反射体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心の高まりから、冷房設備にかかる負荷を減らす観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する近赤外反射フィルムの要望が高まってきている。
【0003】
近赤外反射フィルムの形成方法としては、主には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法などのドライ製膜法を用いて形成する方法が提案されている。しかし、ドライ製膜法は、形成に用いる真空装置等が大型になり、製造コストが高く、大面積化が困難であり、しかも、基材として耐熱性素材に限定される等の課題を抱えている。
【0004】
上記のような課題を有しているドライ製膜法に代えて、湿式塗布法を用いて近赤外反射フィルムを形成する方法が知られている。
【0005】
例えば、金属酸化物や金属化合物微粒子を含む熱硬化型シリコーン樹脂や紫外線硬化型アクリル樹脂を有機溶媒中に分散させた屈折率層塗布液を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)や、ルチル型の酸化チタン、複素環系窒素化合物(例えば、ピリジン)、紫外線硬化型バインダー及び有機溶剤から構成される屈折率塗膜形成用組成物を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−110401号公報
【特許文献2】特開2004−123766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2で開示されている方法では、屈折率層形成用塗布液は、主には、有機溶剤を主媒体として調製されているため、屈折率層塗布液調製時、塗布時及び乾燥時に、多量の有機溶剤を飛散させることになり、環境上、安全上の課題を抱えている。
【0008】
有機溶剤を含む塗布液が抱えている上記環境問題に対しては、水系の屈折率層塗布液を適用する方法が考えられるが、水系塗布液では使用する金属酸化物粒子、例えば、酸化チタン粒子を水溶性ポリマー中に安定して分散させることが非常に難しくなる。上記特許文献2に記載の発明では、酸化チタンの粒子表面を複素環系窒素化合物で修飾させることにより、分散性を向上させるとされているが、この方法だけでは、金属酸化物粒子の水系塗布液中での安定性としては十分ではなく、屈折率層を形成した際には、金属酸化物粒子に層内での不均一を生じ、長期間にわたり太陽光に晒されると、失透(ヘイズ、濁り)を起こし、着色を生じるという新たな課題を抱えている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、水系の屈折率形成用塗布液を用い、製造コストが安く、大面積化が可能であり、近赤外反射率及び可視光透過率が高く、耐久性に優れた近赤外反射フィルム及び近赤外反射フィルムを設けた近赤外反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有する近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子と、リチウム化合物と、水溶性高分子とを含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
【0012】
2.前記高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、下記化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aを含有することを特徴とする前記1に記載の近赤外反射フィルム。
【0013】
化合物群:アミノカルボン酸類、アミノポリカルボン酸、脂肪族カルボン酸類(モノ、ジ、トリ、テトラカルボン酸類)、芳香族カルボン酸類及びその誘導体、ピリジン誘導体、ヒドロキサム酸類。
【0014】
3.前記水溶性高分子として、増粘多糖類を含有することを特徴とする前記1または2に記載の近赤外反射フィルム。
【0015】
4.基体の少なくとも一方の面側に、前記1から3のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムを有することを特徴とする近赤外反射体。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、水系の屈折率形成用塗布液を用い、製造コストが安く、大面積化が可能であり、近赤外反射率及び可視光透過率が高く、耐久性に優れた近赤外反射フィルム及び近赤外反射フィルムを設けた近赤外反射体を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有する近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子と、リチウム化合物と、水溶性高分子とを含有することを特徴とする近赤外反射フィルムにより、水系の屈折率形成用塗布液を用い、製造コストが安く、大面積化が可能であり、近赤外反射率及び可視光透過率が高く、耐久性に優れた近赤外反射フィルムを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0019】
すなわち、本発明者らは鋭意検討を進めた結果、水系の屈折率形成用塗布液に、金属酸化物粒子及び水溶性高分子と共に、リチウム化合物を用いることにより、金属酸化物粒子の表面保護性が高まり、水溶性の塗布液においても、金属酸化物粒子が凝集を起こすことなく、金属酸化物粒子が均質に存在している屈折率層を形成することができ、その結果、それを用いて作製した近赤外反射フィルムを太陽光下で長期間にわたり保存した際でも、ヘイズ(濁り)や着色を生じることが無く、耐久性に優れた近赤外反射フィルムを得ることができた。
【0020】
以下、本発明の近赤外反射フィルムの構成要素、及び本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
【0021】
《近赤外反射フィルム》
本発明の近赤外反射フィルムは、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有し、該高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子と、リチウム化合物と、水溶性高分子とを含有することを特徴とする近赤外反射フィルムであるが、近赤外反射フィルムの基本特性としては、該高屈折率層と該低屈折率層との屈折率差としては0.1以上であることが好ましい。また、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては、50%以上で、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0022】
一般に、近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差は大きいほど、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つが、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、更に好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.4以上である。
【0023】
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、100層を越える層数が必要となり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
【0024】
次いで、本発明の近赤外反射フィルムにおける高屈折率層と低屈折率層の基本的な構成概要について説明する。
【0025】
本発明の近赤外反射フィルムにおいては、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ積層した構成であればよいが、好ましい高屈折率層と低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。
【0026】
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0027】
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子を含有することが必須の要件であるが、金属酸化物を高屈折率層と低屈折率層の両層に添加することがより好ましい。
【0028】
本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
【0029】
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
【0030】
以下、本発明の近赤外反射フィルムにおける構成要件の詳細について説明する。
【0031】
本発明においては、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有し、高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子と、リチウム化合物と、水溶性高分子とを含有することを特徴とする。
【0032】
〔基材〕
本発明の近赤外反射フィルムに適用する基材としては、フィルム支持体であることが好ましく、フィルム支持体は、透明であっても不透明であってもよく、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0033】
本発明に係るフィルム支持体の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。また、本発明のフィルム支持体は、2枚を重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
【0034】
〔金属酸化物粒子〕
本発明に係る高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子を含有することを特徴とするが、好ましくは、高屈折層及び低屈折率層の全ての層が金属酸化物を含有することが好ましい態様である。
【0035】
本発明に係る金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができる。
【0036】
金属酸化物の含有量は、含有層毎に50質量%以上、95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。金属酸化物の含有量を50質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、金属酸化物の含有量を95質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、近赤外反射フィルムを形成することの容易となる。
【0037】
本発明の高屈折率層で用いる金属酸化物としては、TiO、ZnO、ZrOが好ましく、高屈折率層を形成するための後述の金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点ではTiO(二酸化チタンゾル)がより好ましい。また、TiOの中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
【0038】
本発明で用いることのできる二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0039】
また、その他の二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0040】
二酸化チタン微粒子の好ましい一次粒子径は、5nm〜15nmであり、より好ましくは6nm〜10nmである。
【0041】
本発明に係る低屈折率層においては、金属酸化物として二酸化ケイ素を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
【0042】
本発明に係る二酸化ケイ素は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0043】
本発明に係る金属酸化物の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて直接観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd、d・・・d・・・dの粒径を持つ粒子がそれぞれn、n・・・n・・・n個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をvとした場合に、体積平均粒径m={Σ(v・d)}/{Σ(v)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0044】
〔リチウム化合物〕
本発明においては、高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物粒子及び水溶性高分子と共に、リチウム化合物を含有することを特徴とする。
【0045】
本発明に適用可能なリチウム化合物としては、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等が挙げられ、その中でも水酸化リチウムが、本願発明の効果を十分に発揮できる観点から好ましい。
【0046】
本発明において、リチウム化合物の添加量としては、屈折率層に存在する金属酸化物粒子1g当たり、0.005〜0.05gの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜0.03gである。
【0047】
〔水溶性高分子〕
本発明においては、高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物粒子及びリチウム化合物と共に、水溶性高分子を含有することを特徴とする。
【0048】
〈反応性官能基を有するポリマー〉
本発明に係る水溶性高分子の1つとしては、反応性官能基を有するポリマーを用いることが好ましい。
【0049】
本発明に適用可能な水溶性高分子としては反応性官能基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
【0050】
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。
【0051】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0052】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0053】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0054】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0055】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0056】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0057】
本発明においては、反応性官能基を有するポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
【0058】
〈増粘多糖類〉
本発明においては、水溶性高分子として、増粘多糖類を用いることが好ましい。
【0059】
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
【0060】
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり、低温時の粘度と高温時との粘度差を助長する特性を備えている。さらに、本発明に係る増粘多糖類を、金属酸化物微粒子を含む塗布液に添加することにより、粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加により15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
【0061】
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
【0062】
本発明においては、更には、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
【0063】
増粘多糖類の含有量としては、5質量%以上、50質量%以下が好ましく、10質量%以上、40質量%以下がより好ましい。但し、その他の水溶性高分子やエマルジョン樹脂等と併用する場合には、3質量%以上含有すればよい。増粘多糖類が少ないと塗膜乾燥時に膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
【0064】
〈無機ポリマー〉
本発明に係る各屈折率層では、水溶性高分子の1つとして、ジルコニウム原子含有化合物あるいはアルミニウム原子含有化合物等の無機ポリマーを用いることができる。
【0065】
本発明に適用可能なジルコニウム原子を含む化合物は、酸化ジルコニウムを除くものであるが、その具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウム等が挙げられる。
【0066】
これらの化合物の中でも、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、ステアリン酸ジルコニルが好ましく、更に好ましくは、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニルであり、特に好ましくは、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルである。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZA−20(酢酸ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
【0067】
上記ジルコニル原子を含む無機ポリマーの内の代表的な化合物の構造式を下記に示す。
【0068】
【化1】

【0069】
ただし、s、tは1以上の整数を表す。
【0070】
ジルコニル原子を含む無機ポリマーは、単独で用いても良いし、異なる2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0071】
ジルコニウム原子を含む化合物は、単独で用いても良いし、異なる2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0072】
また、本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には、酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0073】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。上記化合物の具体的商品名としては、多木化学製のポリ塩化アルミニウム(PAC)であるタキバイン#1500、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられ、各種グレードのものが入手することができる。
【0074】
下記に、タキバイン#1500の構造式を示す。
【0075】
【化2】

【0076】
ただし、s、t、uは1以上の整数を表す。
【0077】
前記無機ポリマーの添加量は、無機酸化物粒子100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部が更に好ましい。
【0078】
〈ゼラチン〉
本発明に係る各屈折率層においては、ゼラチンを含有することもできる。
【0079】
ゼラチンとしては、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを併用してもよく、さらにゼラチンの加水分解物、ゼラチンの酵素分解物を用いることもできる。これらの水膨潤性高分子は、単独で用いても複数の種類を用いても良い。
【0080】
〈硬化剤〉
本発明においては、バインダーである水溶性高分子を硬化させるため、硬化剤を使用することが好ましい。
【0081】
本発明に適用可能なる硬化剤としては、水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性高分子と反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性高分子が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性高分子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0082】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0083】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0084】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
【0085】
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性高分子1g当たり1〜600mgが好ましい。また、請求項3に対応する供給量としては、上記水溶性高分子1g当たり100〜600mgが好ましい。
【0086】
〔化合物A〕
本発明においては、高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、下記化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aを含有することが好ましい。
【0087】
化合物群:アミノカルボン酸類、アミノポリカルボン酸、脂肪族カルボン酸類(モノ、ジ、トリ、テトラカルボン酸類)、芳香族カルボン酸類及びその誘導体、ピリジン誘導体、ヒドロキサム酸類。
【0088】
また、本発明に係る化合物Aは、上記化合物群を構成単位とする重合体であってもよい。
【0089】
本発明においては、本発明に係る化合物Aが、下記一般式(1)または(2)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましい。
【0090】
【化3】

【0091】
更には、本発明に係る化合物Aが、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0092】
【化4】

【0093】
上記一般式(3)において、Zは炭素原子、炭素原子と共に5員環または6員環を形成するのに必要な原子群を表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表す。nは0〜4の整数を表す。
【0094】
以下に、本発明に係る化合物(A)の代表的な化合物の具体例を示す。
【0095】
【化5】

【0096】
【化6】

【0097】
また、上記例示した化合物の他に、3−(4−ビニルベンジルオキシ)ピコリン酸を含む共重合物またはグラフト重合物を挙げることができる。
【0098】
本発明においては、上記例示した化合物の中でも、LI−22(ピコリン酸)が特に好ましい。
【0099】
これらの化合物Aは、試薬品として購入、あるいはバイルシュタイン・ハンドブーフ・デァ・オーガニッシェン・ヘミー(Beilstein Handbuch der Organischen Chemie)、アンナーレン・デァ・ヘミー(Ann.Chem.)、ケミカル・アブストラクツ(Chem.Abstr.)、ジャーナル・オフケ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J.Am.Chem.Soc.)、モナッシェフテ・ヒュール・ヘミー(Monatsh.Chem.)、ジュルナール・デァ・ルッシシェン・フィジカリッシュ−ヘミッシェン・ゲゼルシャフト(Journal der Russischen Physikalish−Chemischen Gesellschaft)等の抄録誌、報文献に数多く報告されており、これらに記載された方法に従って合成することができる。
【0100】
本発明に係る化合物Aの各屈折率層における添加量としては、金属酸化物粒子1.0gに対し、0.2〜1.0gの範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.7gの範囲である。
【0101】
〔その他の添加剤〕
次いで、各屈折率層に適用可能なその他の添加剤について説明する。
【0102】
(アミノ酸)
本発明においては、更に、アミノ酸を添加することができる。
【0103】
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよいが、等電点が6.5以下のアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、等電点が6.5以下のいずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
【0104】
本発明に適用可能なアミノ酸に関する詳しい解説は、化学大辞典1 縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
【0105】
本発明において、好ましいアミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン等を挙げることができ、水溶液として使用するためには、等電点における溶解度が、水100に対し、3g以上が好ましく、たとえば、グリシン、アラニン、セリン、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが好ましく用いられ、金属酸化物粒子が、バインダーと緩やかな水素結合を有する観点から、水酸基を有する、セリン、ヒドロキシプロリンを用いることがさらに好ましい。
【0106】
(エマルジョン樹脂)
本発明においては、本発明に係る高屈折率層または低屈折率層には、エマルジョン樹脂を含有することができる。
【0107】
本発明でいうエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を用いて乳化重合させた樹脂微粒子である。
【0108】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
【0109】
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0110】
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0111】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0112】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0113】
(屈折率層のその他の添加剤)
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0114】
〔近赤外反射フィルムの製造方法〕
本発明の近赤外反射フィルムは、基材上に高屈折率層と低屈折率層から構成されユニットを積層して構成されるが、具体的には水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを交互に湿式塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。
【0115】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0116】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0117】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0118】
塗布および乾燥方法としては、水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0119】
〔近赤外反射フィルムの応用〕
本発明の近赤外反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0120】
特に、本発明に係る近赤外反射フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
【0121】
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、近赤外反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また近赤外反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の近赤外反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0122】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0123】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0124】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0126】
実施例1
《近赤外反射フィルムの作製》
〔試料1の作製〕
(高屈折率層用塗布液1の調製)
純水の76.5部に、増粘多糖類として1.0質量%のタマリンドシードガムを130部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液の1.14部とを、それぞれ添加、混合した後、下記酸化チタン分散液1の14.63部を添加、混合して、最後に純水で222部に仕上げて、高屈折率層用塗布液1を調製した。なお、高屈折率層用塗布液1における酸化チタンに対する水酸化リチウムの添加量は、0.015g/gTiOである。
【0127】
〈酸化チタン分散液1の調製〉
体積平均粒径が35nmのルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾルの12.8部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液の1.83部とを、混合、分散して酸化チタン分散液を調製した。
【0128】
(低屈折率層用塗布液1の調製)
純水46部に、コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOS)の10質量%水溶液を62.8部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液の12.7部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液の1.45部とを、混合、分散し、純水で124部に仕上げて、酸化ケイ素分散液1を調製した。
【0129】
次いで、33部の純水に、1.0質量%のタマリンドシードガム溶液の33.4部と、ポリビニルアルコール(PVA203、クラレ社製)の10.0質量%溶液の1.5部と、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の5.0質量%溶液の4.37部とを、添加、混合した後、上記酸化ケイ素分散液1の124部を添加、混合して、最後に純水で197部に仕上げて、低屈折率層用塗布液1を調製した。なお、低屈折率層用塗布液1における酸化ケイ素に対する水酸化リチウムの添加量は、0.005g/gSiOである。
【0130】
(高屈折率層1の形成)
上記調製した高屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥膜厚が135nmとなる条件で、ワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、高屈折率層1を形成した。
【0131】
(低屈折率層1の形成)
次いで、低屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの高屈折率層1上に、乾燥膜厚が175nmとなる条件で、ワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、低屈折率層1を形成した。
【0132】
(積層体の形成)
低屈折率層1上に、同様にして高屈折率層1/低屈折率層1から構成されるユニットを更に5ユニット積層し、それぞれ6層の高屈折率層及び低屈折率層(合計12層)から構成された近赤外反射フィルムである試料1を作製した。
【0133】
〔試料2、3の作製〕
上記試料1の作製において、高屈折率層用塗布液1に代えて、下記高屈折率層用塗布液2、3を用いた以外は同様にして、試料2、3を作製した。
【0134】
(高屈折率層用塗布液2、3の調製)
上記高屈折率層用塗布液1の調製において、水酸化リチウム(2.1質量%水溶液の1.83部)に代えて、それぞれ同量の炭酸リチウム、臭化リチウムを用いた以外は同様にして高屈折率層用塗布液2、3を調製した。
【0135】
〔試料4の作製〕
上記試料1の作製において、高屈折率層用塗布液1に代えて、下記高屈折率層用塗布液4を用い、低屈折率層用塗布液1に代えて、下記低屈折率層用塗布液2を用いた以外は同様にして、試料4を作製した。
【0136】
(高屈折率層用塗布液4の調製)
上記高屈折率層用塗布液1の調製において、1.0質量%のタマリンドシードガムの130部に代えて、ポリビニルアルコール(PVA203、クラレ社製)の5.0質量%溶液の10.6部と、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の5.0質量%溶液の15.4部とを用い、純水で総量を222部に仕上げた以外は同様にして、高屈折率層用塗布液4を調製した。
【0137】
(低屈折率層用塗布液2の調製)
上記低屈折率層用塗布液1の調製において、1.0質量%のタマリンドシードガム溶液の33.4部に代えて、23.5質量%のポリ塩化アルミニウム(多木化学製、タキバイン#1500)の1.42部を用い、総量を197部に仕上げた以外は同様にして、低屈折率層用塗布液2を調製した。
【0138】
〔試料5の作製〕
上記試料4の作製において、高屈折率層用塗布液4に、14.8質量%のピコリン酸水溶液を2.4部添加し、純水で総量を222部に仕上げた以外は同様にして、高屈折率層用塗布液5を調製し、高屈折率層用塗布液4に代えて、高屈折率層用塗布液5を用いた以外は同様にして、試料5を作製した。
【0139】
〔試料6の作製〕
上記試料1の作製において、高屈折率層用塗布液1に代えて、下記高屈折率層用塗布液6を用いた以外は同様にして、試料6を作製した。
【0140】
(高屈折率層用塗布液6の調製)
純水の76.5部に、増粘多糖類として1.0質量%のタマリンドシードガムを130部と、ポリビニルアルコール(PVA203、クラレ社製)の5.0質量%溶液の2.6部と、14.8質量%のピコリン酸水溶液を7.6部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液の1.14部とを、それぞれ添加、混合した後、下記酸化チタン分散液2の17.03部を添加、混合して、最後に純水で222部に仕上げて、高屈折率層用塗布液6を調製した。なお、高屈折率層用塗布液6における水酸化リチウムの酸化チタンに対する添加量は、0.015g/gTiOである。
【0141】
〈酸化チタン分散液2の調製〉
体積平均粒径が35nmのルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾルの12.8部と、14.8質量%のピコリン酸水溶液を2.4部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液の1.83部とを、混合、分散して酸化チタン分散液2を調製した。
【0142】
〔試料7の作製〕
上記試料1の作製において、高屈折率層用塗布液1に代えて、下記高屈折率層用塗布液7を用いた以外は同様にして、試料7を作製した。
【0143】
(高屈折率層用塗布液7の調製)
上記高屈折率層用塗布液6の調製において、ルチル型酸化チタン微粒子に代えて、同量の酸化ジルコニウム微粒子を用いた以外は同様にして、高屈折率層用塗布液7を調製した。
【0144】
〔試料8の作製〕
上記試料6の作製において、低屈折率層用塗布液1に代えて、下記低屈折率層用塗布液3を用いた以外は同様にして、試料8を作製した。
【0145】
(低屈折率層用塗布液3の調製)
前記低屈折率層用塗布液1の調製において、リチウム化合物として、水酸化リチウムに代えて、同量の炭酸リチウムを用いた以外は同様にして、低屈折率層用塗布液3を調製した。
【0146】
〔試料9の作製〕
上記試料6の作製において、低屈折率層用塗布液1に代えて、下記低屈折率層用塗布液4を用いた以外は同様にして、試料9を作製した。
【0147】
(低屈折率層用塗布液4の調製)
純水46部に、ポリ塩化アルミニウム(多木化学製、タキバイン#1500)の23.5質量%水溶液を1.14部と、コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOS)の10質量%水溶液を62.8部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液の12.7部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液の1.45部とを、混合、分散し、純水で124部に仕上げて、酸化ケイ素分散液1を調製した。
【0148】
次いで、33部の純水に、1.0質量%のタマリンドシードガム水溶液の33.4部と、ポリビニルアルコール(PVA203、クラレ社製)の10.0質量%溶液の1.5部と、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の5.0質量%溶液の4.37部と、14.8質量%のピコリン酸水溶液を0.26部とを添加、混合した後、上記酸化ケイ素分散液1の124部を添加、混合して、最後に純水で197部に仕上げて、低屈折率層用塗布液4を調製した。なお、低屈折率層用塗布液4における酸化ケイ素に対する水酸化リチウムの添加量は、0.005g/gSiOである。
【0149】
〔試料10〜12の作製〕
上記試料9の作製において、低屈折率層用塗布液4に代えて、それぞれ下記低屈折率層用塗布液5〜7を用いた以外は同様にして、試料10〜12を作製した。
【0150】
(低屈折率層用塗布液5〜7の調製)
上記低屈折率層用塗布液4の調製において、水酸化リチウムの添加量を、それぞれ0.0008g/gSiO、0.002g/gSiO、0.003g/gSiOに変更した以外は同様にして、低屈折率層用塗布液5〜7を調製した。
【0151】
〔試料13の作製〕
上記試料9の作製において、低屈折率層用塗布液4に代えて、下記低屈折率層用塗布液8を用いた以外は同様にして、試料13を作製した。
【0152】
(低屈折率層用塗布液8の調製)
上記低屈折率層用塗布液4の調製において、水酸化リチウムを除いた以外は同様にして、低屈折率層用塗布液13を調製した。
【0153】
〔試料14の作製〕
上記試料9の作製において、高屈折率層塗布液6に代えて、下記高屈折率層塗布液8を、低屈折率層用塗布液4に代えて、下記低屈折率層用塗布液9を用いた以外は同様にして、試料14を作製した。
【0154】
(高屈折率層用塗布液8の調製)
上記高屈折率層用塗布液6の調製において、水酸化リチウムの添加量を、0.03g/gTiOに変更した以外は同様にして、高屈折率層用塗布液8を調製した。
【0155】
(低屈折率層用塗布液9の調製)
上記低屈折率層用塗布液4の調製において、水酸化リチウムの添加量を、0.01g/gSiOに変更した以外は同様にして、低屈折率層用塗布液9を調製した。
【0156】
〔試料15の作製〕
上記試料14の作製において、高屈折率層塗布液8に代えて、下記高屈折率層塗布液9を用いた以外は同様にして、試料15を作製した。
【0157】
(高屈折率層用塗布液9の調製)
上記高屈折率層用塗布液8の調製において、水酸化リチウムの添加量を、0.035g/gTiOに変更した以外は同様にして、高屈折率層用塗布液9を調製した。
【0158】
〔試料16の作製〕
上記試料14の作製において、高屈折率層塗布液8に代えて、下記高屈折率層塗布液10を用いた以外は同様にして、試料16を作製した。
【0159】
(高屈折率層用塗布液10の調製)
上記高屈折率層用塗布液8の調製において、水酸化リチウムの添加量を、0.055g/gTiOに変更した以外は同様にして、高屈折率層用塗布液10を調製した。
【0160】
〔試料17の作製〕
上記試料13の作製において、高屈折率層塗布液6に代えて、下記高屈折率層塗布液11を用いた以外は同様にして、試料17を作製した。
【0161】
(高屈折率層用塗布液11の調製)
上記高屈折率層用塗布液6の調製において、水酸化リチウムを除いた以外は同様にして、高屈折率層用塗布液11を調製した。
【0162】
〔試料18の作製〕
下記の方法に従って、試料18を作製した。
【0163】
(高屈折率層用塗布液12の調製)
酸化チタン粒子(体積平均粒径:15nm)の40部と、ジオクチルスルホサクネート(界面活性剤)の2部と、トルエンの58部とを混合した後、ボールミルを用いて、48時間分散して、酸化チタンゾルを調製した。
【0164】
次いで、上記調製した酸化チタンゾルに、熱硬化性アクリル樹脂を酸化チタンの1.5倍量添加して、高屈折率層用塗布液12を調製した。
【0165】
(積層体の形成)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、屈折率1.47の熱硬化性アクリル樹脂(低屈折率層塗布液10)を135nmの膜厚で塗布、乾燥、硬化して低屈折率層を形成した後、該低屈折率層上に上記高屈折率層用塗布液12を乾燥膜厚175nmになるように塗布し、90℃で20分間熱硬化させた。高屈折率層上に、同様にして低屈折率層/高屈折率層から構成されるユニットを更に3ユニット積層し、それぞれ4層の高屈折率層及び低屈折率層(合計8層)から構成された近赤外反射フィルムである試料18を作製した。
【0166】
〔試料19の作製〕
(基材)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン製、テイジンテトロンフィルム 高透明グレード)を用いた。表面はスラリーの濡れ性をよくするためにコロナ放電処理を施した。屈折率は1.62であった。
【0167】
(高屈折率層13の形成)
イソプロピルアルコール(和光純薬、試薬特級)を100質量部、ピリジン(和光純薬、試薬特級)を3質量部、エチルシリケート溶液(コルコート社製、HAS−1、有効成分30質量%)を5質量部、ルチル型酸化チタン微粒子(石原産業社製、TTO−55)を10質量部、それぞれ配合した後、ボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で20nmに達したのを確認した後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400、有効成分30質量%)を1.5質量部、触媒(信越化学工業製DX−2400)を0.15質量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で16nmに達したのを確認し、これを高屈折率塗布液13とした。これを厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルムともいう)に、バーコーターNo.08を用いて、乾燥後の膜厚が100nmになるように塗布し、100℃で乾燥した後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm)して硬化させ、高屈折率層13を形成した。高屈折率層13の屈折率は、2.17であった。
【0168】
(低屈折率層11の形成)
粒子径が10〜20nm(平均粒子径15nm)のシリカゾル(日産化学工業製「IPA−ST」)1質量部、溶媒としてイソプロピルアルコール(和光純薬製 試薬特級)を10質量部、バインダーとして紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)を5質量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.6部を配合し、スターラーで攪拌して低屈折率層塗布液11を得た。シリカゾル(屈折率1.45)の一次粒子径はほぼ揃っており、また分散粒子径D50が45nmのスラリーを得た。
【0169】
ついで、PETフィルム上に高屈折率層13を形成した試料の高屈折率層13上に、上記調製した低屈折率層塗布液11をバーコーターNo.08を用いて、乾燥後の膜厚が100nmになるように塗布し、100℃で乾燥した後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm)して硬化させ、低屈折率層11を形成した。形成した低屈折率層11の屈折率は1.35であった。
【0170】
(積層体の形成)
更に、高屈折率層13と低屈折率層11を交互に3層ずつ積層し、合計が8層の試料19を作製した。
【0171】
以上作製した近赤外反射フィルム1〜19の主要構成を、表1に示す。
【0172】
【表1】

【0173】
なお、表1に略称で記載した水溶性高分子の詳細は以下の通りである。
【0174】
PVA203:ポリビニルアルコール、PVA203、クラレ社製
PVA235:ポリビニルアルコール、PVA235、クラレ社製
PVA:PVA203+PVA235
TG:タマリンドシードガム(増粘多糖類)
PAC:ポリ塩化アルミニウム(多木化学製、タキバイン#1500、無機ポリマー)
《近赤外反射フィルムの評価》
上記作製した各近赤外反射フィルムについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。
【0175】
(各層の屈折率の測定)
基材上に屈折率を測定する対象層(高屈折率層、低屈折率層)をそれぞれ単層で塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って、各高屈折率層及び低屈折率層の屈折率を求めた。
【0176】
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
【0177】
(可視光透過率及び近赤外透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各近赤外反射フィルムの300nm〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、近赤外透過率は1200nmにおける透過率の値を用いた。
【0178】
(耐久性の評価)
作製した各近赤外反射フィルムについて、メタルハライドランプ式耐候性試験機(スガ試験機製 M6T)により、放射照度1kW/mの光を100時間照射し、照射前後におけるヘイズ値の変化量と、着色状態を評価した。ヘイズ値は、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)により測定し、着色は目視観察を行い、下記の基準に従って、耐久性を評価した。
【0179】
◎:ヘイズ値の変化量が0.1未満で、かつ着色が認められない
○:ヘイズ値の変化量が0.1以上、1.0未満で、かつ着色の発生が認められない
△:ヘイズ値の変化量が1.0以上、5.0未満で、わずかに着色が認められる
×:ヘイズ値の変化量が5.0以上で、かつ明らかな着色が認められる
以上により得られた測定結果、評価結果を、表2に示す。
【0180】
【表2】

【0181】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の近赤外反射フィルムは、可視光透過率を低下させることなく、近赤外透過率を低下させることが可能であり、かつ耐久性に優れていることが分かる。
【0182】
実施例2
〔近赤外反射体の作製〕
実施例1で作製した試料1〜16の近赤外反射フィルムを用いて近赤外反射体1〜16を作製した。厚さ5mm、20cm×20cmの透明アクリル樹脂板上に、試料1〜16の近赤外反射フィルムをそれぞれアクリル接着剤で接着して、近赤外反射体1〜16を作製した。
【0183】
〔評価〕
上記作製した近赤外反射体1〜16は、近赤外反射体のサイズが大きいにもかかわらず、容易に利用可能であり、また、本発明の近赤外反射フィルムを利用することで、優れた近赤外反射性及び耐久性を確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有する近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子と、リチウム化合物と、水溶性高分子とを含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
【請求項2】
前記高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、下記化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aを含有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外反射フィルム。
化合物群:アミノカルボン酸類、アミノポリカルボン酸、脂肪族カルボン酸類(モノ、ジ、トリ、テトラカルボン酸類)、芳香族カルボン酸類及びその誘導体、ピリジン誘導体、ヒドロキサム酸類。
【請求項3】
前記水溶性高分子として、増粘多糖類を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外反射フィルム。
【請求項4】
基体の少なくとも一方の面側に、請求項1から3のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムを有することを特徴とする近赤外反射体。

【公開番号】特開2012−71446(P2012−71446A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216689(P2010−216689)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】