近赤外線吸収粘着剤組成物
【課題】近赤外線吸収能の持続性及び可視領域での透明性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、ジイモニウム色素を溶剤(D)を含む組成物中に分散させた分散体(A)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有する組成物である。この組成物は、更に、希釈溶剤(E)で希釈されていてもよい。また、この組成物には、ジイモニウム色素以外の色素が含まれていても良い。樹脂(B)の酸価は、0以上300以下が好ましい。樹脂(B)の計算溶解性パラメータは10.2以下が好ましい。この近赤外線吸収粘着剤組成物は、薄型ディスプレー用光学フィルター、光半導体素子用光学フィルター、薄型ディスプレー等に好適に用いられうる。
【解決手段】本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、ジイモニウム色素を溶剤(D)を含む組成物中に分散させた分散体(A)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有する組成物である。この組成物は、更に、希釈溶剤(E)で希釈されていてもよい。また、この組成物には、ジイモニウム色素以外の色素が含まれていても良い。樹脂(B)の酸価は、0以上300以下が好ましい。樹脂(B)の計算溶解性パラメータは10.2以下が好ましい。この近赤外線吸収粘着剤組成物は、薄型ディスプレー用光学フィルター、光半導体素子用光学フィルター、薄型ディスプレー等に好適に用いられうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収粘着剤組成物、該近赤外線吸収粘着剤組成物を含有する近赤外線吸収材、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルターなどに関する。特に、本発明は、可視領域の透明性と赤外線吸収能の持続性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物、該近赤外線吸収粘着剤組成物を含有する近赤外線吸収材、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる光半導体素子用光学フィルター、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルターなどに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型で大画面に適用できる液晶ディスプレーやPDP(Plasma Display Panel)等の薄型ディスプレーが注目されている。薄型ディスプレーは波長が800nm〜1100nmの近赤外線を発生させる。この近赤外線が家電用リモコンの誤作動を誘発することが問題となっている。また、CCDカメラ等に使用される光半導体素子も近赤外線領域の感度が高いため、近赤外線の除去が必要である。そこで、近赤外線の吸収能が高く、可視領域の透明性が高い近赤外線吸収材料が求められている。
【0003】
近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素としては、従来、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素または無機酸化物粒子が使用されている。中でもジイモニウム系色素は近赤外線の吸収能が高く、可視光領域での透明性が高いことから多用されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
【0004】
また、PDPは、パネル内部に封入された希ガス、特にネオンを主体としたガス中で放電を発生させ、その際に発生する真空紫外線により、パネル内部のセルに設けられたR、G、Bの蛍光体を発光させる。よって、この発光過程でPDPの作動に不必要な電磁波も同時に放出される。この電磁波も遮蔽されることが必要である。また、反射光を抑えるために反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム(アンチグレアフィルム)も必要である。このため、プラズマディスプレー用光学フィルターは、近赤外線吸収フィルム、電磁波遮蔽フィルム及び反射防止フィルムを、支持体であるガラスや衝撃吸収材の上に積層して作製されることが一般的である。このようなプラズマディスプレー用光学フィルターは、PDPの前面側に載置される。このようなプラズマディスプレー用光学フィルターは、接着剤や粘着剤を用いて、支持体であるガラスや衝撃吸収材の上に直接貼合わされて使用される場合もある。
【0005】
近年、光学フィルターの薄層化や、光学フィルターの製造工程の簡略化を目的として、粘着剤に近赤外線吸収色素を含有させて近赤外線吸収フィルムと粘着剤層とを一体化させる試みがなされている(特許文献4及び特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−96040号公報
【特許文献2】特開2000−80071号公報
【特許文献3】特開2005−325292号公報
【特許文献4】特許第3621322号
【特許文献5】国際公開WO2008/026786公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジイモニウム系色素は耐久性が劣る場合があり、近赤外線の吸収能の低下や着色は、光半導体素子やディスプレー用途で使用する際の重大な問題となりうる。特に、粘着剤樹脂のようなガラス転移点(Tg)の低い樹脂中では色素の劣化が激しい。
【0008】
特開2005−325292号公報にはジイモニウムカチオンのアルキル基にハロゲン原子を導入することにより耐久性を向上させたジイモニウム色素が開示されている。確かにこのジイモニウム色素と高Tgバインダー樹脂を用いた近赤外線遮断フィルターでは、従来のジイモニウム色素と比較して耐久性の向上が見られる。しかし、劣化の激しい低Tgの粘着剤樹脂との組み合わせでは、その耐久性は不十分となりやすい。国際公開WO2008/026786公報では、ジイモニウム色素を適切に限定することにより、粘着剤組成物中における色素の耐久性が向上させている。本発明では、国際公開WO2008/026786公報の発明とは異なる観点から、粘着剤樹脂中におけるジイモニウム色素の耐久性を向上させうる技術を見いだした。
【0009】
本発明は、可視領域の透明性と近赤外線吸収能の持続性が高い近赤外線吸収材を作製するのに有用な、近赤外線吸収粘着剤組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、該組成物を使用した近赤外線吸収材、光半導体素子用光学フィルター、薄型ディスプレー用光学フィルター、および薄型ディスプレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、粘着剤樹脂中におけるジイモニウム色素の耐久性の向上について鋭意検討を行なった。その結果、ジイモニウム色素を分散させた分散体を用いることにより、色素の耐久性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物が得られることを見出した。また、ジイモニウム色素の会合体を用いることにより、色素の耐久性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物が得られることを見出した。
【0011】
組成物に係る本発明は、ジイモニウム色素を溶剤(D)を含む組成物中に分散させた分散体(A)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有している近赤外線吸収粘着剤組成物である。
【0012】
好ましくは、上記分散体(A)中において、上記ジイモニウム色素が会合状態である。
【0013】
組成物に係る他の発明は、ジイモニウム色素の会合体(X)と、溶剤(D)と、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収粘着剤組成物。
【0014】
組成物に係る更に他の発明は、粒子状のジイモニウム色素と溶剤(D)とを含む液体(C)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有する近赤外線吸収粘着剤組成物であって、上記溶剤(D)における上記ジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である近赤外線吸収粘着剤組成物である。
【0015】
好ましくは、上記ジイモニウム色素が、後述の下記式(1)で示されるジイモニウムカチオンを有する化合物である。
【0016】
好ましくは、上記ジイモニウム色素のジイモニウムアニオンが、ヘキサフルオロリン酸イオンである。
【0017】
好ましくは、後述の式(1)において、R1からR8のうちの少なくとも一つが、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖又は分岐状の炭素数1から10のアルキル基、炭素数が3から12のシクロアルキル基、又はシクロアルキル環が置換されていてもよい[C3−12シクロアルキル−C1−10アルキル基]である。
【0018】
好ましくは、上記R1からR8の少なくとも1つが、後述の式(2)で示される有機基である。
【0019】
好ましくは、上記式(2)で示される有機基が、シクロヘキシルメチル基である。
【0020】
好ましくは、上記R1からR8の全てがシクロヘキシルメチル基である。
【0021】
好ましくは、上記R1からR8の少なくとも1つが、後述の式(3)で示される有機基である。
【0022】
好ましくは、上記式(3)で示される有機基が、3−フルオロプロピル基である。
【0023】
好ましくは、上記R1からR8の全てが3−フルオロプロピル基である。
【0024】
好ましくは、上記R1からR8の少なくとも1つが、炭素数が3以上12以下の分岐状アルキル基である。
【0025】
好ましくは、上記分岐状アルキル基がイソブチル基である。
【0026】
好ましくは、前記樹脂(B)の酸価が0以上300以下である。
【0027】
好ましくは、前記樹脂(B)の計算溶解性パラメータが10.2以下である。
【0028】
好ましくは、前記樹脂(B)が、下記単量体(1a)から(3a)を下記の比率で共重合してなるポリマーである。
(1a)炭素数が1以上12以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル:60質量%以上99.9質量%以下
(2a)官能基含有モノマー:0.1質量%以上20質量%以下
(3a)その他共重合可能な単量体:0質量%以上30質量%以下
【0029】
上記近赤外線吸収粘着剤組成物は、さらに、フタロシアニン系色素を含んでいてもよい。
【0030】
好ましくは、上記近赤外線吸収粘着剤組成物は、上記ジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である希釈溶剤(E)により希釈されてなる。
【0031】
本発明に係る近赤外線吸収材は、上記いずれかの近赤外線吸収粘着剤組成物を含む。
【0032】
好ましくは、、近赤外線吸収材は、上記いずれかの近赤外線吸収粘着剤組成物が透明基材に積層されてなる。
【0033】
好ましくは、前記透明基材は、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムである。
【0034】
本発明に係る薄型ディスプレー用光学フィルターは、上記いずれかの近赤外線吸収材を用いてなる。
【0035】
本発明に係る光半導体素子用光学フィルターは、上記いずれかの近赤外線吸収材を用いてなる。
【0036】
本発明に係る薄型ディスプレーは、上記いずれかの近赤外線吸収粘着剤組成物、上記いずれかの近赤外線吸収材または上記の光学フィルターを用いてなる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用した近赤外線吸収材料は、色素の近赤外線吸収能が長期間に渡って維持されうる。よって、この近赤外線吸収粘着剤組成物を、光半導体素子や薄型ディスプレー用の光学フィルターの作製に使用すると、光学フィルターの薄層化や、光学フィルターの製造工程の簡略化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、IRG−022粒子を含む分散体の透過スペクトルである。
【図2】図2は、IRG−022のMEK溶液の透過スペクトルである。
【図3】図3は、IRG−023粒子を含む分散体の透過スペクトルである。
【図4】図4は、IRG−023のMEK溶液の透過スペクトルである。
【図5】図5は、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後における実施例1の透過スペクトルである。
【図6】図6は、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後における実施例2の透過スペクトルである。
【図7】図7は、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後における比較例1の透過スペクトルである。
【図8】図8は、分散体(a)を酢酸エチルで希釈したときの各濃度におけるモル吸光係数を示すグラフである。
【図9】図9は、分散体(b)をトルエンで希釈したときの各濃度におけるモル吸光係数を示すグラフである。
【図10】図10は、分散体(c)をトルエンで希釈したときの各濃度におけるモル吸光係数を示すグラフである。
【図11】図11は、ジイモニウム塩(c)を塩化メチレンにて10mg/Lの濃度に希釈した液体のモル吸光係数を示すグラフである。
【図12】図12は、分散体(d)をトルエンで希釈したときの各濃度におけるモル吸光係数を示すグラフである。
【図13】図13は、実験例1に係る近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1の透過スペクトルである。
【図14】図14は、実験例1に係る試験体Z1の透過スペクトルである。
【図15】図15は、実験例2に係る近赤外線吸収粘着剤組成物Az2の透過スペクトルである。
【図16】図16は、実験例2に係る試験体Z2の透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
1.ジイモニウム色素(ジイモニウム塩)
本発明では、後述される分散体(A)が用いられる。分散体(A)が用いられることにより、ジイモニウム塩の耐久性が向上する。好ましくは、分散体(A)において、ジイモニウム色素は、会合状態にある。即ち、好ましくは、ジイモニウム色素は、会合体(X)で分散している。この会合体(X)の詳細については、後述される。後述するように、会合体(X)を形成したジイモニウム塩は、耐久性に優れる。
【0040】
この分散体(A)を用いた近赤外線吸収粘着剤組成物は、粘着剤樹脂(B)中に存在しているにも関わらず、耐久性に優れることが判明した。さらに、分散体(A)中のジイモニウム塩が会合体(X)とされることにより、より一層耐久性が向上しうることが判明した。
【0041】
このような良好な結果が得られたことに鑑みれば、ジイモニウム色素の少なくとも一部は、近赤外線吸収粘着剤組成物中においても、分散体(A)中と同様の分散状態にあるといえる。更に、この良好な結果が得られたことに鑑みれば、ジイモニウム色素の少なくとも一部は、近赤外線吸収粘着剤組成物中においても、会合状態にあるといえる。
【0042】
本発明に用いられるジイモニウム色素は、溶剤(D)を含む組成物中に分散させた分散体(A)とされて用いられるのが好ましい。分散体(A)は、会合体(X)の形成に役立つ。
【0043】
分散体(A)は、例えば、ジイモニウム色素を溶媒(D)中に分散させた分散液である。分散体(A)は、溶媒(D)の他に、樹脂や分散剤等の他成分を含んでいてもよい。分散体(A)において、ジイモニウム色素は、溶媒(D)中に分散していてもよいし、樹脂等の溶媒(D)以外の成分中に分散していてもよい。分散安定性の観点から、分散体(A)において、ジイモニウム色素は、溶剤(D)中に分散しているのが好ましい。分散体(A)において、ジイモニウム色素は、溶剤(D)を含む組成物に溶解することなく、分散している。即ち、分散体(A)は、ジイモニウム色素を分散させた分散体である。分散が可能となるように、ジイモニウム色素及び溶剤(D)が選択されるのが好ましい。好ましくは、このジイモニウム色素は、近赤外線吸収粘着剤組成物中において分散している。好ましくは、ジイモニウム塩は、分散体(A)中において、会合状態で分散している。より好ましくは、ジイモニウム塩は、近赤外線吸収粘着剤組成物中において、会合状態で分散している。
【0044】
本願にいう「分散」は、「会合」を含む概念である。即ち、本願にいう「分散」は、会合状態(会合体(X))での分散を含む。
【0045】
ジイモニウム色素の具体的な構造としては、下記式(1)で示されるジイモニウムカチオンを有するジイモニウム色素が例示される。
【0046】
【化1】
【0047】
好ましいジイモニウム色素は、下記式(1S)で表されるように、上記式(1)で示されるジイモニウムカチオンと、ジイモニウムアニオンZ−とからなる。
【0048】
【化2】
【0049】
R1からR8は、それぞれ同一でもよく異なっていてもよい原子又は基を表す。式(1)中のR1からR8は、会合体(X)を形成しうるものであれば特に限定されない。例えば、R1からR8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜22のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜22のアルキル基であってもよい。会合状態の形成の観点から、好ましくは、上記R1からR8の全ては、同一でもよいし異なっていてもよい有機基とされる。
【0050】
会合状態の形成の観点から、より好ましくは、上記R1からR8のうちの少なくとも一つが、以下の(1x)、(2x)又は(3x)とされる。
(1x)ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖又は分岐状の炭素数1から10のアルキル基。
(2x)炭素数が3から12のシクロアルキル基。
(3x)シクロアルキル環が置換されていてもよい[C3−12シクロアルキル−C1−10アルキル基]。
【0051】
カチオン構造が対称となり、会合状態が得られやすい観点から、上記R1からR8は、全て同じであるのが好ましい。会合状態が得られやすい観点から、上記R1からR8は、全て同一であり、且つ、上記(1x)、(2x)又は(3x)であるのが好ましい。
【0052】
上記(1x)における、炭素数1から10のアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、iso−アミル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基等が例示される。これらのうち、iso−プロピル基、iso−ブチル基、iso−アミル基等の、分岐状で且つ炭素数が3から6のアルキル基が、会合体形成に必要な分子配列を得る点で好ましい。
【0053】
上記(2x)における、炭素数が3から12のシクロアルキル基として、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0054】
上記(3x)における、シクロアルキル環を置換する置換基として、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル、ハロゲン原子等が例示される。好ましくは、上記(3x)における、シクロアルキル環は置換されていないのがよい。
【0055】
会合体形成に必要な分子配列を容易とする観点から、より好ましくは、上記(3x)における[C3−12シクロアルキル−C1−10アルキル基]は、下記式(2)で示される有機基とされる。
【0056】
【化3】
【0057】
ただし、式(2)中、R9は、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、mは3以上12以下の整数を示す。
【0058】
前述の通り、カチオン構造が対称となり、会合状態が得られやすい観点から、上記R1からR8は、全て同じであるのが好ましい。
【0059】
上記式(2)において、R9の炭素数は1以上4以下であるのがより好ましい。上記式(2)において、mは5以上8以下が好ましく、5以上6以下がより好ましい。このような炭素数の範囲は、会合に必要な分子間相互作用の増大に寄与する。具体的には、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロペンチルプロピル基、3−シクロペンチルプロピル基、4−シクロペンチルブチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロヘキシルプロピル基、3−シクロヘキシルプロピル基、4−シクロヘキシルブチル基等が例示される。これらの中でも、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルプロピル基、3−シクロヘキシルプロピル基及び4−シクロヘキシルブチル基が好ましく、より好ましくは、シクロペンチルメチル基及びシクロヘキシルメチル基であり、特にシクロヘキシルメチル基が好ましい。
【0060】
上記式(2)におけるシクロアルキル環は、置換基を有していなくてもよいし、有していてもよい。この置換基として、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。より好ましくは、上記式(2)におけるシクロアルキル環は、置換基を有していないのがよい。
【0061】
会合状態の形成及びジイモニウム色素の耐久性の観点から、R1からR8の全てがシクロヘキシルメチル基であるのが特に好ましい。即ち、下記式(2S)で示されるジイモニウム塩が特に好ましい。
【0062】
【化4】
【0063】
上記(1x)のうち、ハロゲン原子で置換された直鎖又は分岐状の炭素数1から10のアルキル基として、2−ハロゲノエチル基、2,2−ジハロゲノエチル基、2,2,2−トリハロゲノエチル基、3−ハロゲノプロピル基、3,3−ジハロゲノプロピル基、3,3,3−トリハロゲノプロピル基、4−ハロゲノブチル基、4,4−ジハロゲノブチル基、4,4,4−トリハロゲノブチル基、5−ハロゲノペンチル基、5,5−ジハロゲノペンチル基、5,5,5−トリハロゲノペンチル基等のハロゲン化アルキルが例示される。中でも、下記一般式(3)で示されるモノハロゲン化アルキル基が好ましい。
【0064】
【化5】
【0065】
ただし、式(3)中、nは1以上9以下の整数を示し、Xはハロゲン原子を示す。
【0066】
上記式(3)において、nは1以上4以下であるのがより好ましい。上記式(3)において、Xはフッ素原子であるのがより好ましい。この範囲とされることにより、会合に必要な分子間相互作用が増大する。好ましい具体例として、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、4−フルオロブチル基及び5−フルオロペンチル基が挙げられ、特に3−フルオロプロピル基が好ましい。
【0067】
会合状態の形成及びジイモニウム色素の耐久性の観点から、R1からR8の全てが3−フルオロプロピル基であるのが特に好ましい。即ち、下記式(3S)で示されるジイモニウム塩が特に好ましい。
【0068】
【化6】
【0069】
上記した一般式(2S)で示されるジイモニウム塩化合物及び一般式(3S)で示されるジイモニウム塩化合物は、いずれも新規な化合物である。これらのジイモニウム塩化合物は、会合体(X)を形成し、粘着剤組成物中における耐熱性及び耐湿性に優れ、且つ、高い近赤外線吸収能を有している。
【0070】
R1からR8を構成するハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0071】
他のR1からR8として、炭素数が1から10の直鎖、分岐状及び脂環式アルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。他の好ましいR1からR8として、4,4,4−トリフルオロブチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基及びペルフルオロブチル基が挙げられる。R1からR8は全て同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。これらの中では、前述の分岐状アルキル基がより好ましい。
【0072】
R1からR8は、炭素数が3から5の直鎖又は分岐状のアルキル基であってもよい。例えば、R1からR8は、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−アミル基又はイソアミル基であってもよい。これらの中では、前述の分岐状アルキル基が特に好ましい。
【0073】
また、R1からR8のアルキル基に結合しうる置換基としては、シアノ基;ヒドロキシル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、メトキシブトキシ基、エトキシブトキシ基等の炭素数2〜8のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基等がある。
【0074】
ジイモニウム色素におけるアニオンの種類は特に限定されない。このジイモニウムアニオンは、上記一般式(1)で示されるジイモニウムカチオンを中和させるのに必要である。このジイモニウムアニオンとして、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオン;過ヨウ素酸イオン;テトラフルオロホウ酸イオン;ヘキサフルオロリン酸イオン;ヘキサフルオロアンチモン酸イオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン;トルエンスルホン酸イオン;ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン;トリス(トリフルオロメタンスルホン)メチドイオン等が好ましく、中でもフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオン;過ヨウ素酸イオン;テトラフルオロホウ酸イオン;ヘキサフルオロリン酸イオン;ヘキサフルオロアンチモン酸イオンなどの無機アニオンは、ジイモニウム塩の溶解度を低下させるという観点から好ましい。会合体(X)の形成に必要な分子配列を容易とする観点から、ヘキサフルオロリン酸イオンが好ましい。
【0075】
本発明のジイモニウム色素は、ジイモニウムカチオン1個に対して、2個のアニオンが結合する形態であるのが好ましい。上記好ましいジイモニウムカチオンと、上記好ましいジイモニウムアニオンとの塩が、ジイモニウム色素として好ましく用いられる。
【0076】
本発明に係るジイモニウム塩は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である樹脂(B)との組み合わせにおいて、耐熱性、耐湿熱性及び耐光性に優れ、しかも、良好なヘイズを有しうる。
【0077】
上記ジイモニウム塩の製造方法の一例は、以下の通りである。
【0078】
この製造方法の一例では、先ず、ウルマン反応及び還元反応により、下記式(4)で示されるアミノ体を得る。このアミノ体に、NMP、DMF等の極性溶剤中で、上記R1からR8に対応するヨウ化物と、脱ヨウ素剤としてのアルカリ金属の炭酸塩とを加え、30℃以上150℃以下、好ましくは70℃以上120℃以下で反応させて、下記式(5)で示されるアルキル置換体を得る。例えば、上記R1からR8が全てシクロヘキシルアルキル基である場合、対応するヨウ化物としてヨウ化シクロヘキシルアルカンが用いられる。具体的には、上記R1からR8が全てシクロヘキシルメチル基である場合、対応するヨウ化物としてシクロヘキシルメチルヨーダイドが用いられる。また、上記R1からR8が全てフルオロアルキル基である場合、対応するヨウ化物としてヨウ化フルオロアルカンが用いられる。具体的には、例えば、上記R1からR8が全て3−フルオロプロピル基である場合、対応するヨウ化物として、1−ヨード−3−フルオロプロパンが用いられる。
【0079】
なお、本願において、「NMP」はN−メチル−2−ピロリドンを意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味する。
【0080】
【化7】
【0081】
【化8】
【0082】
一方、R1からR8が2種以上の異なる置換基である場合、それぞれの有機基の数に対応するモル数のヨウ化物を順次反応させるか、又は、これらを同時に添加して反応させる。例えば、R1からR8がシクロヘキシルメチル基及びその他の有機基である場合、置換基の数に対応するモル数のヨウ化シクロヘキシルアルカン(シクロヘキシルメチルヨーダイド)を添加して反応させ、この反応の後に、順次対応するモル数のヨウ化物(例えば、ヨウ化フルオロアルカン;ヨードアルカン;アルコキシヨード;ヨウ化ベンゼン;ヨウ化ベンジル、ヨウ化フェネチル等のフェニル−1−ヨードアルカン等)を加えて反応させるか、あるいは、これらの異種のヨウ化物を同時に加えて反応させる。
【0083】
次に、上記式(5)で示されるアルキル置換体と対応するアニオンZ−の銀塩を、NMP、DMF、アセトニトリル等の有機溶剤中、30℃以上150℃以下、好ましくは40℃以上80℃以下の温度で反応させ、析出した銀を濾別した後、水、酢酸エチル、ヘキサン等の溶媒を加え、生じた沈殿を濾過して、上記式(1S)に示されるジイモニウム塩を得る。
【0084】
なお式(5)中のR1からR8は、前述した通りの意味である。
【0085】
2.会合体(X)
本発明に係るジイモニウム色素は、上記式(1S)で示される分子が複数会合した会合体(X)を形成する。この会合体(X)は、数個から数十個程度の分子により形成される分子集合体であると考えられる。この会合体(X)は、トルエンで100mg/Lに希釈された場合、750nm以上1300nm以下の波長領域において吸収を示し、且つ、1110nm以上1250nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する。
【0086】
会合体(X)を形成した場合の極大吸収波長は、溶解状態の場合とは異なる吸収スペクトルを有することが知られている(例えば、Photographic Science and Engineering,Vol.18,No.323−335(1974)参照)。一般に、会合状態における吸収バンドは、溶解状態よりも長波長側に移動する。ジイモニウム塩化合物は、一般的に溶解状態において1050nm以上1095nm以下の間に極大吸収波長を示すが、会合体(X)を形成している場合、極大吸収波長が15nm〜200nm長波長側にシフトする。よって、会合体(X)は、トルエンで100mg/Lに希釈された場合、1110nm以上1250nm以下の範囲に極大吸収波長を示す。なお、シフトによる変化量が大きすぎる場合、900nm以上1100nm以下付近の近赤外線吸収が不足してしまう場合がある。この観点から、トルエンで100mg/Lに希釈されて測定される場合のλmaxのシフトの変化量は、15nm以上100nm以下が好ましい。このシフトの変化量を測定する場合の測定条件は、例えば、会合体(X)の場合が下記[測定法1]とされ、溶解状態の場合は下記[測定法2]とされる。
【0087】
本発明に係るジイモニウム色素の会合体(X)の吸収波長領域及び極大吸収波長は、例えば、次の[測定法1]により測定されうる。
【0088】
[測定法1]
ジイモニウム塩化合物を、分散媒中において、少なくとも50mg/L以上の濃度で、0.001μm以上10μm以下の粒子として、浮遊あるいは懸濁している状態(分散状態)において測定された吸光度に基づいて求める。この粒子径は、マイクロトラック粒度分析計によって測定される。具体的には、ジイモニウム塩化合物0.5質量部、トルエン9.5質量部及び粒子径0.3mmのジルコニアビーズ70質量部を50mlのガラス容器に入れ、ペイントシェーカーで2時間振とうした後に、ジルコニアビーズを濾別して、液体L1を得る。この液体L1を、ジイモニウム塩化合物の濃度が100mg/Lとなるようにトルエンで希釈して、ジイモニウム塩分散液L2が得られる。この分散液L2の吸光度が、分光光度計により測定される。この分光光度計として、UV−3100(島津製作所製)が用いられうる。なお、ジイモニウム塩が溶解状態とならない限りにおいて、上記希釈濃度(100mg/L)は適宜変更されてもよい。
【0089】
一方、溶解状態にあるジイモニウム塩化合物の極大吸収波長は、例えば、次の[測定法2]により測定されうる。
【0090】
[測定法2]
上記の[測定法1]で得られた分散液L2をトルエンによって更に希釈し、溶解状態となった時点の溶液が用いられる。溶解状態か否かの確認は、λmaxが短波長側にシフトすること、あるいは、半値幅が狭くなること等により、総合的に判断することができる。トルエンで5mg/L程度まで希釈しても溶解状態とならない場合、トルエンに代えて塩化メチレンで希釈する。この溶液の測定には、分光光度計により測定される。この分光光度計として、UV−3100(島津製作所製)が用いられうる。
【0091】
なお、測定法1及び測定法2において、分散媒は、トルエン以外でもよい。この分散媒として、酢酸エチル、酢酸ブチル及びメチルシクロヘキサンが例示される。
【0092】
ジイモニウム塩化合物は、会合体としてではなく、結晶として分散状態にある場合がある。会合分散状態では、結晶分散状態よりも半値幅が小さい急峻な吸収バンドを示す。半値幅とは、極大吸収波長における吸光度の半分の吸光度を示す波長領域の幅である。結晶分散状態では、溶解状態に対する極大吸収波長の変化量が大きい。結晶分散状態において、トルエンで100mg/Lに希釈された条件下でのλmaxは、1250nmよりも長波長側にシフトする。また結晶分散状態では、極大吸収波長におけるモル吸光係数が40,000mol−1・L・cm−1未満となる。なお、モル吸光係数(mol−1・L・cm−1)とは、濃度が1mol/Lであり且つ光路長が1cmである場合における吸光係数である。一方、溶媒がトルエンである場合、会合状態(会合分散状態)では、この極大吸収波長におけるモル吸光係数が70000mol−1・L・cm−1以上となる。このように、結晶分散状態では、モル吸光係数が低いため、会合状態と比較して、近赤外線吸収能力が劣る。
【0093】
このように、ジイモニウム塩化合物が会合状態であるか又は溶解状態であるかの判別は、分散液(分散状態)で測定された吸収スペクトルと、溶解状態で測定された吸収スペクトルとを比較して、それぞれの極大吸収波長及び極大吸収波長のシフト量に基づき行うことができる。一方、ジイモニウム塩化合物が会合状態であるか又は結晶分散状態であるかの判別は、分散状態において測定された吸収スペクトルの極大吸収波長及びそのモル吸光係数を比較することによりなされる。
【0094】
好ましいジイモニウム色素は、例えば上記製造方法により得られうる。また、市販されているジイモニウム色素としては、日本カーリット社製の商品名「CIR−1085」、日本カーリット社製の商品名「CIR−1085F」、日本化薬社製の商品名「KAYASORB IRG−022」、日本化薬社製の商品名「KAYASORB IRG−023」等が挙げられる。以下、「KAYASORB IRG−022」及び「KAYASORB IRG−023」は、それぞれ単に、「IRG−022」及び「IRG−023」とも称される。
【0095】
ジイモニウム色素は、溶剤(D)中に分散しやすい形態とされるのが好ましい。好ましくは、ジイモニウム色素は、粉砕等により微細化されているのが好ましい。この微細化の方式としては、湿式及び乾式のいずれもが採用されうる。湿式の微細化手法としては、ビーズミルやボールミルの他、液流による微細化、あるいはレーザーや超音波を用いた微細化が採用されうる。乾式の微細化手法としては、ボールミル、アトライターの他、ロールミルや気流による微細化が採用されうる。より好ましくは、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ等の粒子を用いてジイモニウム色素を粉砕する方法が採用されうる。例えば、ジルコニア粒子を用いた粉砕方法として、ジイモニウム色素と、このジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である溶剤(D)と、ジルコニアビーズとを混合した液体を作製し、この液体を容器内で振とうした後、ジルコニアビーズを分離する方法が例示される。
【0096】
3.溶剤(D)
本発明では、ジイモニウム色素を溶剤(D)を含む組成物中に分散させて用いる。好ましくは、本発明では、ジイモニウム色素を溶剤(D)に分散させて用いる。ジイモニウム色素を分散させやすくする観点から、上記溶剤(D)としては、用いられるジイモニウム色素に対する貧溶媒が好ましい。具体的には、用いられるジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である溶剤が好ましい。この溶解度の測定方法は、後述される。
【0097】
具体的な溶剤(D)としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルシクロヘキサン等が好ましく、トルエン及び酢酸エチルが特に好ましい。
【0098】
4.分散体(A)
分散体(A)は、上記溶剤(D)を含む組成物中に上記ジイモニウム色素が分散している液体である。分散体(A)は、ジイモニウム色素と分散媒とを混合してなる。分散媒として、溶剤(D)の他、樹脂が例示される。分散媒は、溶剤(D)と他の化合物との混合物であってもよい。好ましくは、この分散媒は、溶剤(D)を含む。分散体(A)において、ジイモニウム色素は、実質的に溶剤(D)に溶解していない。本願において分散とは、0.001μm以上10μm以下(10−9m〜10−5m)程度の粒子が、溶剤(D)を含む組成物中に浮遊あるいは懸濁している状態を意味する。
【0099】
好ましくは、分散体(A)において、ジイモニウム色素は、会合状態にある。即ち、分散体(A)において、ジイモニウム色素は、上記会合体(X)とされているのが好ましい。
【0100】
ジイモニウム色素が会合状態にある分散体(A)として、後述の合成例で得られる分散体(a)、分散体(b)、分散体(c)及び分散体(d)が例示される。
【0101】
分散装置として、ビーズミル、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル及びローラミルが挙げられ、ビーズミルが好ましい。本発明で利用可能な分散装置は、例えば、特開昭52−92716号公報及び国際公開88/074794号パンフレットに記載されているものが挙げられる。これらの中でも、縦型又は横型の媒体分散装置が好ましい。ジイモニウム塩化合物の分散では、分散媒が用いられなくてもよいが、分散媒の存在下で実施されるのが好ましい。この分散媒として、水及び各種有機溶剤が挙げられ、樹脂(B)との混合の観点から、好ましくは有機溶媒であり、特に好ましくはトルエン、酢酸エチル等である。また、分散媒として界面活性剤が用いられても良い。この界面活性剤として、アニオン界面活性剤、アニオン性ポリマー、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤が挙げられる。このようにして、分散体(A)が得られうる。
【0102】
本願における上記液体(C)は、上記分散体(A)を含む概念である。例えば、液体(C)は、粒子状のジイモニウム色素と、そのジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である溶剤(D)とを混合して得られる。液体(C)には、溶剤(D)及びジイモニウム色素以外の成分(第三の成分)が含まれていてもよい。このように、溶剤(D)の溶解度が小さくされることにより、ジイモニウム色素が分散しやすくなる。この溶解度の測定方法は、後述の通りである。なお、後述するように、この溶剤(D)とは別に、希釈溶剤(E)が用いられてもよい。
【0103】
上記分散体(A)、上記液体(C)又は樹脂(B)には、その性能を損なわない範囲で、種々の添加剤を加えることができる。例えば、ジイモニウム色素分散体の分散性を向上させる目的で、分散剤が添加されうる。この分散剤として、アニオン性、カチオン性又はノニオン性の界面活性剤や高分子系分散剤などが挙げられる。
【0104】
上記分散体(A)又は液体(C)においては、ジイモニウム塩の濃度等によっては、その全てが会合体(X)を形成している場合もあれば、その一部が会合体(X)を形成している場合もある。ジイモニウム塩の一部が会合体(X)である場合、その他のジイモニウム塩は溶解状態及び/又は結晶分散状態である場合がある。いずれにしても、トルエンで100mg/Lに希釈された条件において、極大吸収波長が1110nm以上1250nm以下であり、且つ、極大吸収波長におけるモル吸光係数が70000mol−1・L・cm−1以上であれば、ジイモニウム塩が会合体(X)であると判断することができる。
【0105】
また、分散媒による希釈濃度が高いほど、ジイモニウム塩は分散媒に溶解しにくい。換言すれば、分散媒による希釈濃度が高いほど、ジイモニウム塩の会合体が形成されやすい。トルエンで100mg/Lに希釈された場合に会合体であるジイモニウム塩は、トルエンで100mg/Lよりも高い濃度に希釈された場合も会合体であると考えられる。また一般に、特定の分散媒Sで濃度がB(mg/L)に希釈された場合に会合体であるジイモニウム塩は、この分散媒SでB(mg/L)よりも高い濃度に希釈された場合も会合体であると考えられる。ジイモニウム塩の耐久性の観点から、溶媒S1を分散媒とする分散体(A)又は液体(C)のλmaxは、上記溶媒S1を更に加えて上記分散体(A)又は液体(C)を更に希釈した希釈体のλmaxよりも大きい(長波長である)のが好ましい。この場合、希釈体においてジイモニウム塩が溶解した為、λmaxがシフトしたと考えられる。この溶媒S1として、上記溶剤(D)と同じものが例示される。
【0106】
従来、ジイモニウム塩がPDPフィルター用等の近赤外線吸収組成物として用いる場合、ヘイズ等の観点から、ジイモニウム塩が溶解状態となるように置換基が工夫されている場合が多い。しかしこの場合、近赤外線吸収組成物中におけるジイモニウム色素の耐久性が低下しやすい。特に、粘着剤樹脂(B)中においては、ジイモニウム色素の耐久性の低下が大きい。また、ジイモニウム色素が結晶分散状態で使用された場合、分散安定性が悪く、結晶が粗大となる。この場合、半値幅が大きく且つ極大吸収波長における吸光係数が低い。このため、十分な近赤外線吸収能が得られず、且つ、結晶の粗大さに起因して光が散乱し、白濁が生じやすい。
【0107】
ジイモニウム色素が会合体(X)とされた場合、いわゆる会合体バンドが形成され、半値幅が小さい急峻な吸収バンドが得られる。会合体(X)は、極大吸収波長における吸光係数が高く、優れた近赤外線吸収能を有する。この会合体(X)は、数個から数十個程度の分子によって形成された集合体(分子集合体)であると考えられる。よって、光の散乱が強くなく、透明性に優れる。また、ジイモニウム塩が分解すると、アミニウム塩化合物が生成するが、このアミニウム塩化合物は、可視光線領域(480nm付近)に吸収を有し、黄色を呈するため、近赤外線吸収材の外観を低下させる。会合体(X)は、分子集合体であるため、分子間の相互作用により安定化されており、アミニウム塩化合物が生成しにくい。これに対して、溶解状態は、単分子で分散した状態であるため、分子間の相互作用による安定化がなされない。よって、溶解状態は、会合体(X)と比較して、ジイモニウム色素が分解しやすく、アミニウム塩化合物が生じやすい。このような理由で、会合体(X)は、粘着剤樹脂(B)中においても、耐熱性、耐湿性及び耐光性に優れると考えられる。
【0108】
5.樹脂(B)
本発明に係る樹脂(B)は、ガラス転移温度が0℃以下のものであれば特に限定されない。本発明に係る樹脂(B)は、粘着性を有している。この粘着性は、近赤外線吸収粘着剤組成物と被着体との直接的な接着を可能とする。接着剤を介在させることなく、近赤外線吸収粘着剤組成物と被着体とが接着されうる。以下において、この樹脂(B)を粘着剤樹脂(B)ともいう。
【0109】
5−1.ガラス転移温度
被着体への粘着性を付与する観点から、粘着剤樹脂(B)のガラス転移温度は、0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましく、−20℃以下がより好ましく、さらに好ましくは−30℃以下である。0℃よりも高い場合、粘着性が不足することがある。ガラス転移温度は示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)や動的粘弾性測定により損失正接(tanδ)の極大値温度を求めることでも得られるが、本願にいうガラス転移温度は、下記のFoxの式により求められる計算ガラス転移温度を意味する。樹脂(B)の重合に使用される単量体は、下記式で表されるFoxの式を用いて計算された計算ガラス転移温度Tgが所定の値を満足していれば特に限定されない。
1/(Tg+273)=Σ[Wi/(Tgi+273)] : Foxの式
Tg(℃) : 計算ガラス転移温度
Wi : 各単量体の重量分率
Tgi(℃) : 各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度
【0110】
5−2.酸価
粘着剤樹脂(B)には、被着体との密着性向上および粘着力アップを目的として、アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体が共重合されるのが一般的である。樹脂(B)の酸価が高すぎる場合、ジイモニウム塩の溶解度が増加し、ジイモニウム塩の耐久性(特に耐熱性)が低下しうる。特に耐熱性の観点からは、樹脂(B)の酸価は、300以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。耐湿熱性の観点からは、粘着剤樹脂(B)の酸価は、0以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。「酸価」とは、粘着剤樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg量を言う。
【0111】
例えば、後述される透明基材がガラスである場合、ガラス表面(ガラスと近赤外線吸収粘着剤組成物層との界面)では、次の(反応1)が起こっていると推測されている。ガラス中のNa+イオンは拡散によってガラス表面に出てくると考えられている。このNa+イオンは、近赤外線吸収粘着剤組成物中に存在するH2O(又は粘着剤組成物の塗布前にガラス表面に付着していたH2O)と反応し、NaOHが生成すると考えられる。
(反応1)Na+ + H2O → NaOH + H+(ガラス内部へ)
【0112】
このNaOHは、ジイモニウム塩を劣化させる。樹脂(B)にカルボキシル基が存在する場合、このカルボキシル基がNa+をトラップする。このトラップにより、NaOHの生成が抑制され、ジイモニウム塩の劣化が抑制されると考えられる。特に、耐湿熱性の評価では、H2Oが多く存在するため、上記反応1が起こりやすい。よって、特に耐湿熱性の観点からは、上記酸価は大きいほうが好ましく、具体的には、前述のように、0以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。
【0113】
一方、樹脂(B)の酸価が過度に高い場合、樹脂(B)に対するジイモニウム塩の溶解度が増加し、会合体(X)が減少しやすい。よって、特に高温での耐久性を評価する耐熱性の観点からは、上記酸価は小さいほうが好ましく、具体的には、前述のように、300以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。
【0114】
5−3.計算溶解性パラメータ
粘着剤樹脂(B)の計算溶解性パラメータが高い場合にはジイモニウム色素の耐久性が劣る場合があるため、溶解性パラメータは10.2以下が好ましい。計算溶解性パラメータは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE」(1974年、Vol.14、No.2)の147ページから154ページ記載の方法によって計算される値である。以下にその方法を概説する。
【0115】
単独重合体の溶解性パラメータ(δ)は、該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー(△ei)及びモル体積(△vi)に基づいて、下式の計算法により算出される。
δ=(Σ△ei/Σ△vi)1/2
△ei: i成分の原子または原子団の蒸発エネルギー
△vi: i成分の原子または原子団のモル体積
【0116】
共重合体の溶解性パラメータは、その共重合体を構成する各構成単量体の蒸発エネルギーにモル分率を乗じて合算したもの(Σ△Ei)を、各構成単量体のモル体積にモル分率を乗じて合算したもの(Σ△Vi)で割り、1/2乗をとることで算出される。
【0117】
5−4.共重合体組成
粘着剤樹脂(B)は、共重合体でもよい。粘着剤樹脂(B)は、官能基を含有するモノマーと他の化合物との共重合体であるのが好ましい。更には、ジイモニウム色素の耐久性の観点から、粘着剤樹脂(B)は、脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが5〜40質量%共重合された共重合体であるのが好ましい。ジイモニウム色素の耐久性が向上する理由は不明であるが、これら脂環式、多環性脂環式、芳香環式、多環性芳香環式のアルキル基部分とジイモニウム色素がスタッキング構造を採ることにより、耐熱性や耐湿熱性を向上させるものと考えられる。
【0118】
好ましくは、前記樹脂(B)が、下記単量体(p1)から(p3)を共重合してなる樹脂である。
(p1)炭素数が1以上12以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル
(p2)官能基含有モノマー
(p3)その他共重合可能な単量体
【0119】
単量体の好ましい比率は、(p1)の(メタ)アクリル酸エステルが60質量%以上99.9質量%以下であり、(p2)の官能基含有モノマーが0.1質量%以上20質量%以下であり、(p3)の他の共重合可能な単量体が0質量%以上30質量%以下である。より好ましくは、(p2)の官能基含有モノマーの比率は、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0120】
ジイモニウム色素の耐久性の観点から、より好ましくは、上記単量体(p1)におけるアルキル基は、直鎖型、分岐型及び脂環式のアルキル基である。
【0121】
上記(p1)の(メタ)アクリル酸エステルの例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0122】
上記(p2)の官能基含有モノマーとして、水酸基もしくはカルボキシル基含有モノマーが好ましく、水酸基もしくはカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーがより好ましい。ジイモニウム色素の耐久性の観点から、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが好ましい。カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーのカルボキシル基は架橋点となる。よって、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーの配合量により、粘着性の調整が可能である。また、別の理由により、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーのカルボキシル基は、耐久性の向上に寄与していると考えられる。この理由の詳細は、前述の通りである。
【0123】
カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーとして、アクリル酸及びメタクリル酸が好適に用いられる。
【0124】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの例として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの水酸基は、架橋点となりうる。よって、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、粘着物性の調整に寄与する。上記(p2)が水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの場合、この水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの比率は、モノマー全量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0125】
上記(p3)の、他の共重合可能な単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。他に、上記(p3)の例として、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンなどに代表されるスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどに代表されるビニルエーテル系単量体;フマル酸;フマル酸のモノアルキルエステル;フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸;マレイン酸のモノアルキルエステル;マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸;イタコン酸のモノアルキルエステル;イタコン酸のジアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルケトン;ビニルピリジン;ビニルカルバゾールなどを挙げることができる。また、カルボキシル基、オキサゾリニル基、ピロリドニル基、フルオロアルキル基等の官能基を有する単量体も、本発明の目的を損なわない範囲で共重合してもよい。
【0126】
より好ましい粘着剤樹脂(B)は、下記(m1)から(m4)を共重合してなる樹脂である。
(m1)脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル。
(m2)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル。ただし、このアルキル基は、直鎖型または分岐型であり、このアルキル基の炭素数は1以上10以下である。
(m3)官能基含有モノマー
(m4)その他共重合可能な単量体。
【0127】
共重合体の樹脂(B)において、単量体の好ましい比率は、(m1)の(メタ)アクリル酸エステルが5質量%以上40質量%以下であり、(m2)の(メタ)アクリル酸エステルが60質量%以上95質量%以下であり、(m3)の官能基含有モノマーが0.1質量%以上20質量%以下であり、(m4)のその他の単量体が0質量%以上20質量%以下である。
【0128】
上記(m1)の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0129】
上記(m2)の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0130】
上記(m3)の単量体の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0131】
上記(m4)の単量体の例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンなどに代表されるスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどに代表されるビニルエーテル系単量体;フマル酸;フマル酸のモノアルキルエステル;フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸;マレイン酸のモノアルキルエステル;マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸;イタコン酸のモノアルキルエステル;イタコン酸のジアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルケトン;ビニルピリジン;ビニルカルバゾールなどを挙げることができる。また、カルボキシル基、オキサゾリニル基、ピロリドニル基、フルオロアルキル基等の官能基を有する単量体も、本発明の目的を損なわない範囲で共重合してもよい。
【0132】
粘着剤樹脂(B)の重合に使用される開始剤として、過酸化物系、アゾ系等、市販のものが使用できる。過酸化物系の開始剤としては、パーブチルO、パーヘキシルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシエステル系;パーロイルL、パーロイルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシジカーボネート系;ナイパーBW、ナイパーBMT(いずれも日本油脂製)などのジアシルパーオキサイド系;パーヘキサ3M、パーヘキサMC(いずれも日本油脂製)などのパーオキシケタール系;パーブチルP、パークミルD(いずれも日本油脂製)などのジアルキルパーオキサイド系;パークミルP、パーメンタH(いずれも日本油脂製)などのハイドロパーオキサイド系等が挙げられる。アゾ系の開始剤としてはABN−E、ABN−R、ABN−V(いずれも日本ヒドラジン工業製)等が挙げられる。
【0133】
粘着剤樹脂(B)の重合の際には必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤は特に制約されず、ノルマルドデシルメルカプタン、ジチオグリコール、チオグリコール酸オクチル、メルカプトエタノール等のチオール化合物等が使用できる。
【0134】
また、粘着剤樹脂(B)の重合は無溶剤で行ってもよいし、有機溶剤中で行ってもよい。有機溶剤中で重合する際には、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;その他の公知の有機溶剤が使用できる。使用する有機溶剤の種類は得られる樹脂の溶解性、重合温度を考慮して決められるが、乾燥時の残存溶剤の残りにくさの点からトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の沸点が120℃以下の有機溶剤が好ましい。また、分散体の安定性の観点から、ジイモニウム色素の溶解性が5質量%以下の有機溶剤が好ましい。
【0135】
また、粘着剤樹脂(B)は単一の組成からなるものでもよいし、異なる組成のポリマーを複合化したポリマーアロイやポリマーブレンドであってもよい。
【0136】
分岐型の樹脂を得るためにはマクロモノマー、多官能モノマー、多官能開始剤、多官能連鎖移動剤が使用できる。マクロモノマーとしては、AA−6、AA−2、AS−6、AB−6、AK−5(いずれも東亜合成製)等が使用できる。多官能モノマーとしては、ライトエスエルEG、ライトエスエル1,4BG、ライトエステルNP、ライトエステルTMP(いずれも共栄社化学製)等が挙げられる。多官能開始剤としては、パーテトラA、BTTB−50(いずれも日本油脂製)、トリゴノックス17−40MB、パーカドックス12−XL25(いずれも火薬アクゾ製)等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としてはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が使用できる。
【0137】
6.近赤外線吸収粘着剤組成物
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、ジイモニウム色素を分散させて用いているため、近赤外線吸収能の持続性に優れる。また、この近赤外線吸収粘着剤組成物は、可視領域の透明性に優れる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、粘着性を有する樹脂を含有するので、被着体に対して容易に接着されうる。
【0138】
この近赤外線吸収粘着剤組成物は、ジイモニウム色素が顔料分散系であるにも関わらず、ヘイズに優れうる。好ましくは、この近赤外線吸収粘着剤組成物のヘイズは、5以下であり、より好ましくは3以下である。このヘイズは、後述の実施例で示される方法により測定される。
【0139】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には、他の近赤外線吸収色素が添加されてもよい。併用されうる他の近赤外線吸収色素としては、公知のシアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子等が挙げられる。
【0140】
好ましい他の色素(ジイモニウム色素以外の色素)は、上記ジイモニウム色素に対してクエンチャー効果を奏しうる色素である。クエンチャー効果とは、励起状態にある活性分子を脱励起させる効果である。本発明の場合、ジイモニウム色素分子、ジイモニウムアニオン又はジイモニウムカチオンを脱励起して安定化させる効果を有する他の色素が好ましい。クエンチャー効果の観点から、この他の色素として、フタロシアニン系色素が好ましい。
【0141】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を薄型ディスプレイ用光学フィルターとして使用する場合には、上記のジイモニウム色素とともに最大吸収波長が800〜950nmのフタロシアニン系色素、最大吸収波長が800〜950nmのシアニン系色素または最大吸収波長が800〜950nmの金属ジチオール錯体系色素が併用されるのが好ましい。この併用により、800〜1100nmの近赤外線が効果的に吸収されうる。耐久性の良好な近赤外線吸収粘着剤組成物を得る観点から、フタロシアニン色素が併用されるのが特に好ましい。
【0142】
本発明で使用できるフタロシアニン系化合物としては、近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されず、公知のフタロシアニン系化合物が使用できる。好ましいフタロシアニン系化合物として、下記式(ア)で表される化合物、または下記式(イ)で表される化合物が挙げられる。
【0143】
[式(ア)で示されるフタロシアニン系化合物]
【化9】
【0144】
上記式(ア)において、A1からA16は官能基を表す。上記式(ア)において、A1からA16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアラルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基または置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。A1からA16の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。M1は2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子またはオキシ金属を表す。なお、本明細書において、「アシル基」とは、日刊工業新聞社発行の第三版科学技術用語大辞典の17頁に記載される定義と同様であり、具体的には、有機酸からヒドロキシル基が除去された基であり、式:RCO−(Rは、脂肪基、脂環基または芳香族基である)で表される基である。
【0145】
(末端がアミノ基以外の官能基の場合)
上記式(ア)において、官能基A1からA16のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていても良い炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフチルカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
また、上記式(ア)において、官能基A1からA16のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基または複素環基が置換されている場合、これらの官能基A1からA16に存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0147】
(末端がアミノ基である官能基の場合)
上記式(ア)において、官能基A1からA16の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は0個、1個または2個存在していてもよく、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0148】
上記置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基または置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0149】
また、金属M1としての2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C6H5、Al−C6H4(CH3)、In−C6H5、In−C6H4(CH3)、In−C6H5、Mn(OH)、Mn(OC6H5)、Mn〔OSi(CH3)3〕、Ru−Cl等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。4価の置換金属原子の例としては、CrCl2、SiF2、SiCl2、SiBr2、SiI2、ZrCl2、GeF2、GeCl2、GeBr2、GeI2、SnF2、SnCl2、SnBr2、TiF2、TiCl2、TiBr2、Ge(OH)2、Mn(OH)2、Si(OH)2、Sn(OH)2、Zr(OH)2、Cr(R1)2、Ge(R1)2、Si(R1)2、Sn(R1)2、Ti(R1)2{R1は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}Cr(OR2)2、Ge(OR2)2、Si(OR2)2、Sn(OR2)2、Ti(OR2)2、{R2は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基またはそれらの誘導体を表す}、Sn(SR3)2、Ge(SR3)2{R3は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0150】
[式(イ)で示されるフタロシアニン系化合物]
【化10】
【0151】
上記式(イ)において、B1からB24は官能基を表す。B1からB24のそれぞれは、上記式(ア)においてA1からA16で示された官能基のいずれかである。B1からB24の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。
【0152】
上記式(イ)において、M2は2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子またはオキシ金属を表す。M2の例は、上記式(ア)におけるM1の例と同じであるが、これらに限定されない。
【0153】
具体的なフタロシアニン系化合物として、商品名イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−14、イーエクスカラーIR−906、イーエクスカラーIR−910、TX−EX−820及びTX−EX−915(いずれも日本触媒製)が挙げられる。
【0154】
また、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には近赤外線吸収色素としてシアニン系色素が併用されてもよい。シアニン系色素は近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されないが、インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンと、対アニオンからなる塩が好ましく使用できる。インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンとしては、上記式(a)から(i)で示されるカチオンが好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
【化11】
【0156】
【化12】
【0157】
【化13】
【0158】
【化14】
【0159】
【化15】
【0160】
【化16】
【0161】
【化17】
【0162】
【化18】
【0163】
【化19】
【0164】
インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンの対アニオンは、特に制限されず、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、硫酸イオン、バナジン酸イオン、ホウ酸イオンなどが使用できる。
【0165】
より具体的には、上記一般式(a)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS812MI(対アニオンはヨウ化物イオン);上記一般式(b)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0712(対アニオンはヘキサフルオロリン酸イオン);上記一般式(c)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0726(対アニオンは塩化物イオン);上記一般式(d)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS780MT(対アニオンはp−トルエンスルホン酸イオン);上記一般式(e)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0006(対アニオンは過塩素酸イオン);上記一般式(f)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0081(対アニオンは過塩素酸イオン);上記一般式(g)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0773(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン);上記一般式(h)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0772(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン);上記一般式(i)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0734(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン)等の市販されているものを用いることができる。シアニン系色素を使用することにより可視領域の透明性が高い近赤外線吸収粘着剤組成物が得られる。
【0166】
本発明のジイモニウム色素の配合量、または本発明のジイモニウム色素とその他の近赤外線吸収色素とを合計した配合量は、色素の種類と用途によって適宜選択することが出来る。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を10〜30μmの薄膜として使用する場合、配合量は、樹脂の固形分に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。例えば、ジイモニウム色素とフタロシアニン系色素とを併用する場合、これらの色素を合計した配合量は、樹脂の固形分に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。配合量が0.01質量%未満であると、十分な近赤外線吸収能が達成できなくなる可能性がある。逆に10質量%を超えると、添加に見合う効果が得られず経済的でない上、逆に可視領域での透明性が損なわれる可能性がある。
【0167】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は可視領域の透明性、近赤外線吸収能の持続性、良好な粘着性を特徴とする。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には、必要に応じて可視光を吸収する色素が添加されてもよい。可視光を吸収する色素としては、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ポルフィリン系、テトラアザポルフィリン系、金属ジチオール錯体系、スクアリリウム系、アズレニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯体系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系、ジケトピロロピロール系等、従来公知の色素を広く使用することができる。
【0168】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物をPDP用の光学フィルターとして使用する場合は、不要なネオン発光を吸収するために最大吸収波長が550〜650nmの可視吸収色素を併用するのが好ましい。ネオン発光を吸収する色素の種類は特に限定されないが、シアニン色素、テトラアザポルフィリン色素が使用できる。具体的にはアデカアークルズTY−102(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−14(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−15(旭電化工業社製)、TAP−2(山田化学工業製)、TAP−18(山田化学工業製)、TAP−45(山田化学工業製)、商品名NK−5451(林原生物化学研究所製)、NK−5532(林原生物化学研究所製)、NK−5450(林原生物化学研究所製)等が挙げられる。ネオン発光を吸収するための色素の添加量は、色素の種類によって異なるが、最大吸収波長での透過率が20〜80%程度になるように添加するのが好ましい。
【0169】
また、近赤外線吸収粘着剤組成物からなる薄膜の色調を調整するために、調色用の可視光吸収色素を添加してもよい。調色用の色素の種類は特に限定されないが、1:2クロム錯体、1:2コバルト錯体、銅フタロシアニン、アントラキノン、ジケトピロロピロール等が使用できる。具体的には、オラゾールブルーGN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールブルーBL(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールレッド2B(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールレッドG(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールブラックCN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールイエロー2GLN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールイエロー2RLN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、マイクロリスDPPレッドB−K(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、等が挙げられる。
【0170】
更に、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、必要に応じて、その性能を失わない範囲で希釈溶剤(E)や添加剤、硬化剤を1種または2種以上含んでいてもよい。希釈溶剤(E)により、近赤外線吸収粘着剤組成物のコーティングが容易とされうる。
【0171】
近赤外線吸収粘着剤組成物に含まれうる希釈溶剤(E)は限定されず、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系;トルエン、キシレンなどの芳香族系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;アセトニトリル等のニトリル系;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系等が使用できる。これらの溶剤は、単独で使用されてもよいし、混合して使用されてもよい。ただし、好ましくは、使用されるジイモニウム色素についての溶解度が5質量%以下の溶剤が好ましい。ジイモニウム色素の溶解度が5質量%を超える溶剤を用いた場合、ジイモニウム分散体が溶解してしまう場合がある。
【0172】
なお、本願において、このジイモニウム色素の溶解度は、次の方法により測定される。先ず、ジイモニウム色素の含有割合が0.01質量%、0.1質量%、1.0質量%、2.0質量%及び5.0質量%である5種類のサンプルを調整して、それぞれ超音波攪拌する。次に、各サンプルのそれぞれについて、残渣があるか否かを確認する。残渣は、ろ過後のろ紙上に残渣があるか否かを目視で観察することにより確認する。残渣の有無によって、溶解度が決定される。5.0質量%のサンプル(及び他のサンプル)に残渣が確認されなかった場合、「溶解度が5質量%以上である」と判断される。5.0質量%のサンプル)に残渣が確認された場合、「溶解度が5質量%以下である」と判断される。0.01質量%のサンプル(及び他のサンプル)に残渣が確認された場合、「溶解度が0.01質量%以下である」と判断される。この溶解度は、25℃において測定される。
【0173】
なお、ジイモニウム色素の耐久性の観点からは、希釈溶剤(E)として、酢酸エチル等の沸点が100℃以下の溶剤が好適である。また、コーティング時の塗膜外観を向上させる観点からは、希釈溶剤(E)として、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等の沸点が100〜150℃の溶剤が好適である。塗膜の耐クラック性を向上させる観点からは、希釈溶剤(E)として、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の沸点が150〜200℃の溶剤が好適である。
【0174】
希釈溶剤(E)として、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル及びメチルシクロヘキサンが例示される。ジイモニウム色素の耐久性の観点から、希釈溶剤(E)は、上記溶剤(D)と同じであるのが好ましい。 この観点から、希釈溶剤(E)として、トルエン及び酢酸エチルが特に好ましい。
【0175】
塗工時において、近赤外線吸収粘着剤組成物の粘度は、塗工機の種類によって適宜選択されるが、マイクログラビアコーター等のような小径グラビアキスリバース方式で塗工する場合は1〜1000mPa・s、ダイコーター等押し出し方式で塗工する場合は100〜10000mPa・sが一般的である。近赤外線吸収粘着剤組成物の固形分は塗料粘度に合わせて調整される。
【0176】
また、近赤外線吸収粘着剤組成物が含有しうる添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に使用される従来公知の添加剤が用いられうる。この添加剤として、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収材、光安定化剤、消光剤、硬化剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。なお、硬化剤としてはイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等を使用することができる。
【0177】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、光学用、農業用、建築用または車両用の近赤外線吸収材料、感光紙などの画像記録材料、光ディスク用などの情報記録用材料、色素増感型太陽電池などの太陽電池、半導体レーザー光などを光源とする感光材料、眼精疲労防止材に使用されうる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、特にフィルムやシート状での使用が好ましい。
【0178】
7.近赤外線吸収材
本発明に係る近赤外線吸収材は、前記近赤外線吸収粘着剤組成物を含む。本発明の近赤外線吸収材は、前記近赤外線吸収粘着剤組成物をフィルム状に成形したものであってもよいし、透明基材上に前記近赤外線吸収粘着剤組成物を含む塗膜を積層したものであってもよい。
【0179】
透明基材としては、一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としてはガラス;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のメタクリル系ポリマー;酢酸ビニルやハロゲン化ビニル等のビニル系ポリマー;PET等のポリエステル;ポリカーボネート、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂;ラクトン環含有樹脂フィルム等が挙げられる。更に、該透明基材には、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングが施されてもよい。また、上記透明基材を構成する基材樹脂には、公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等の配合が可能である。上記透明基材は、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法などを用い、フィルムまたはシート状に成形される。かかる透明基材を構成する基材は、未延伸でも延伸されていてもよく、また他の基材と積層されていてもよい。
【0180】
コーティング法で近赤外線吸収フィルムを得る場合の透明基材としてはPETフィルムが好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが好適である。具体的にはコスモシャインA4300(東洋紡績製)、ルミラーU34(東レ製)、メリネックス705(帝人デュポン製)等が挙げられる。また、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム、衝撃吸収フィルム、電磁波シールドフィルム、紫外線吸収フィルムなどの機能性フィルムも透明基材として使用できる。これにより、簡便に薄型ディスプレー用や光半導体素子用の光学フィルターを作製することができる。透明基材は、フィルムであることが好ましい。
【0181】
これらのうち、ガラス、PETフィルム、ラクトン環含有樹脂フィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルム及び電磁波シールドフィルムが透明基材として好ましく使用される。透明基材として、ガラス等の無機基材を使用する場合には、アルカリ成分が少ないものが近赤外線吸収色素の耐久性の観点から好ましい。
【0182】
本発明の近赤外線吸収材の厚みは、一般に0.1μmから10mm程度とされるが、目的に応じて適宜決定される。また近赤外線吸収材に含まれる近赤外線吸収色素の含有量も目的に応じて、適宜決定される。
【0183】
本発明の近赤外線吸収材を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次の方法が利用できる。例えば、(I)樹脂と本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とを混練し、加熱成形して樹脂板又はフィルムを作製する方法;(II)本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とモノマー又はオリゴマーを重合触媒の存在下にキャスト重合し、樹脂板又はフィルムを作製する方法;(III)本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物を上記の透明基材上にコーティングする方法等である。
【0184】
(I)の作製方法としては、用いる樹脂によって加工温度、フィルム化(樹脂板化)条件等が多少異なるが、通常、本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物を樹脂の粉体又はペレットに添加し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、成形して樹脂板を作製する方法、押し出し機によりフィルム化(樹脂板化)する方法等が挙げられる。
【0185】
(II)の作製方法としては、本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とモノマー又はオリゴマーとを重合触媒の存在下にキャスト重合し、それらの混合物を型内に注入し、反応させて硬化させるか、又は金型に流し込んで型内で硬い製品となるまで固化させて成形する方法が挙げられる。多くの樹脂がこの過程で成形可能である。その様な樹脂の具体例としてアクリル樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂、等が挙げられる。その中でも、硬度、耐熱性、耐薬品性に優れたアクリルシートが得られるメタクリル酸メチルの塊状重合によるキャスティング法が好ましい。
【0186】
重合触媒としては公知のラジカル熱重合開始剤が利用でき、例えばベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用量は混合物の総量に対して、一般的に0.01〜5質量%である。熱重合における加熱温度は、一般的に40〜200℃であり、重合時間は一般的に30分〜8時間程度である。また熱重合以外に、光重合開始剤や増感剤を添加して光重合する方法も利用できる。
【0187】
(III)の方法としては、本発明の近赤外吸収材料を透明基材上にコーティングする方法、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を微粒子に固定化し、該微粒子を分散させた塗料を透明基材上にコーティングする方法等がある。
【0188】
基材に近赤外線吸収粘着剤組成物を塗布する際には公知の塗工機が使用できる。例えばコンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。乾燥・硬化方法としては、熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥・硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
【0189】
乾燥方法は特に限定されないが、熱風乾燥や遠赤外線乾燥を用いることができる。乾燥温度は乾燥ラインの長さ、ライン速度、塗布量、残存溶剤量、基材の種類等を考慮して決めればよい。基材がPETフィルムであれば、一般的な乾燥温度は50〜150℃である。1ラインに複数の乾燥機がある場合は、それぞれの乾燥機を異なる温度、風速に設定してもよい。塗工外観の良好な塗膜を得るためには、入り口側の乾燥条件をマイルドにするのが好ましい。
【0190】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、可視領域の透明性及び近赤外線の吸収能が高い優れた光学フィルターの構成材料となりうる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、従来の近赤外線吸収材料と比べて耐久性、特に耐熱性及び耐光性が高いため、長期間の保管や使用でも外観と近赤外線吸収能が維持される。さらに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、シートやフィルム状にするのが容易なため、薄型ディスプレー用や光半導体素子用に有効である。そのほかに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、赤外線をカットする必要があるフィルターやフィルム、例えば農業用フィルム、断熱フィルム、サングラス、光記録材料等にも使用することができる。
【0191】
8.光学フィルター
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は光学フィルターに好適である。この光学フィルターは、前記近赤外線吸収材を用いてなる。この光学フィルターは、光半導体素子用光学フィルターまたは薄型ディスプレー用光学フィルターとして好適である。このような光学フィルターは、可視領域の全光線透過率が40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、波長800〜1100nmの近赤外線の透過率が30%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0192】
本発明の光学フィルターには、上記の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層のほかに、電磁波遮蔽層、反射防止層、ぎらつき防止(アンチグレア)層、傷付き防止層、色調整層、ガラス等の支持体などが設けられていてもよい。
【0193】
光学フィルターの各層の構成は任意に選択すればよい。例えば、好ましくは反射防止層とぎらつき防止層のうち少なくともどちらか一層と、近赤外線吸収層の少なくとも2層を組み合わせた光学フィルターが好適であり、より好ましくは更に電磁波遮蔽層を組み合わせた少なくとも3層を有する光学フィルターである。
【0194】
反射防止層、またはぎらつき防止層が人側の最表層とされるのが好ましい。近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層相互間の積層順序は任意である。また、3層の間には傷付き防止層、色調整層、衝撃吸収層、支持体、透明基材等の他の層が挿入されていてもよい。
【0195】
各層を張り合わせる際にはコロナ処理、プラズマ処理等の物理的な処理をしてもよいし、ポリエチレンイミン、オキサゾリン系ポリマー、ポリエステル、セルロース等の公知の高極性ポリマーをアンカーコート剤として使用してもよい。
【0196】
薄型ディスプレー用光学フィルターには、画面を見やすくするために、反射防止層またはぎらつき防止層を人側の最表層に設けることが好ましい。
【0197】
反射防止層は、表面の反射を抑えて、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止するためのものである。反射防止層は、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがあり、前者の場合の製造方法として、蒸着やスパッタリング法を用いて単層あるいは多層の形態で、透明基材上に反射防止コーティングを形成させる方法がある。また、後者の場合の製造方法として、透明フィルム上に、コンマコーター等のナイフコーター、スロットコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターを用いて透明基材の表面に反射防止コーティングを塗布する方法がある。
【0198】
ぎらつき防止層は、シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粉体をインキ化し、従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に塗布し、熱或いは光硬化させることにより形成される。また、アンチグレア処理したフィルムを該フィルター上に貼りつけてもよい。
【0199】
また、傷付き防止層は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、多官能アクリレート等のアクリレートと光重合開始剤を有機溶剤に溶解或いは分散させた塗布液を従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に、塗布し、乾燥させ、光硬化させることにより形成される。
【0200】
反射防止層またはぎらつき防止層と近赤外線吸収層とを有する光学フィルターは、反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物又は近赤外線吸収材からなる層を積層させることで得られる。積層させる方法としては、フィルム状にした本発明に係る近赤外線吸収層と反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムとを直接張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に直接塗布してもよい。反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に近赤外線吸収層を設ける場合には、紫外線による色素の劣化を抑えるために、透明基材として紫外線吸収フィルムを使用するのが好ましい。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は粘着性を有している。よって、近赤外線吸収層と、他の層とが接着される場合、粘着剤や接着剤が不要とされうる。近赤外線吸収層は、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を含む層である。
【0201】
プラズマディスプレー用光学フィルターには、パネルから発生する電磁波を除去するために、電磁波遮蔽層を設けることが好ましい。
【0202】
電磁波遮蔽層はエッチング、印刷等の手法で金属のメッシュをフィルム上にパターニングしたものを樹脂で平滑化したフィルムや、繊維メッシュの上に金属を蒸着させたものを樹脂中に抱埋したフィルムが使用される。
【0203】
近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層の2層を有する光学フィルターは電磁波防止材料と近赤外線吸収粘着剤組成物とを複合化することで得られる。複合化させる方法としては、フィルム状にした本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物と電磁波遮蔽フィルムを張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を電磁波遮蔽フィルムに直接塗布してもよい。また、フィルム上の金属のメッシュを平滑化する際に本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用することもできる。また、金属を蒸着した繊維を抱埋する際に、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用することもできる。
【0204】
近赤外線吸収層、反射またはぎらつき防止層および電磁波遮蔽層の3層を有する光学フィルターとしては、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収フィルム、反射またはぎらつき防止フィルム、電磁波遮蔽フィルムの3枚を張り合わせたものが使用できる。好ましくは、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収フィルムが、反射またはぎらつき防止フィルムと、電磁波遮蔽フィルムとで挟まれた構造を有する光学フィルターが好ましい。この光学フィルターは、近赤外線吸収フィルムの粘着性を利用して積層されているため、従来フィルム同士の張り合わせのためだけに設けられていた粘着層を省略して製造されうる。必要に応じてガラス等の支持体や色調整フィルム等の機能性フィルムを張り合わせてもよい。
【0205】
光学フィルターの製造工程やフィルム構成をさらに簡略化するためには、複数の機能を有する複合化フィルムを使用するのが良い。好ましい光学フィルターは、1枚のフィルムに電磁波遮蔽層と反射またはぎらつき防止層とを含む複合化フィルムに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収粘着層を張り合わせた光学フィルターである。
【0206】
本発明の薄型ディスプレー用光学フィルターは表示装置から離して設置してもよいし、表示装置に直接貼り付けてもよい。表示装置から離して設置する場合は支持体としてガラスを使用するのが好ましい。表示装置に直接張り合わせる場合にはガラスを使用しない光学フィルターが好ましい。
【0207】
9.薄型ディスプレー
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を積層した光学フィルターを薄型ディスプレーに搭載すると、長期間にわたり良好な画質が維持される。薄型ディスプレーに係る本発明は、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物、本発明の近赤外線吸収材、または本発明の光学フィルターを用いてなる、薄型ディスプレーである。表示体に直接、光学フィルターを張り合わせた薄型ディスプレーはより鮮明な画質が得られる。光学フィルターを直接張り合わせる場合は表示体のガラスが強化ガラスを使用するか、衝撃吸収層を設けた光学フィルターを使用するのが好ましい。
【0208】
本発明の光学フィルターを表示装置に貼り付ける際の粘着剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等のゴム類やポリアクリル酸メチル、ボリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のポリアクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、さらに粘着付与剤としてピッコライト、ポリベール、ロジンエステル等を添加したものを用いてもよい。また、特開2004−263084号公報で示されているように衝撃吸収能を有する粘着剤を使用することができるが、これに限定されるものではない。粘着剤を用いることなく、近赤外線吸収層の粘着性を利用して、本発明の光学フィルターが表示装置に貼り付けられても良い。
【0209】
この粘着層の厚みは、通常5〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。粘着剤層の表面に剥離フィルムを設け、この剥離フィルムにより、光学フィルターを薄型ディスプレーの表面に張り付けるまでの間、粘着剤層を保護し、粘着剤層にゴミ等が付着しないようにするのもよい。この場合、フィルターの縁綾部の粘着剤層と剥離フィルムとの間に、粘着剤層を設けない部分を形成したり非粘着性のフィルムを挟む等して非粘着部分を形成し、この非粘着部分を剥離開始部とすれば、貼着時の作業がやりやすい。
【0210】
衝撃吸収層は表示装置を外部からの衝撃から保護するためのものである。支持体を使用しない光学フィルターで使用するのが好ましい。衝撃吸収材としては特開2004−246365号公報、特開2004−264416号公報に示されているような、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ウレタン系、シリコン系樹脂等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0211】
以下において、実施例により本発明が具体的に説明される。これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお以下の成分比率において、特に説明されない限り、「%」は質量%を意味し、「部」は質量部を意味するものとする。
【0212】
以下に、第一実験例及び第二実験例を示す。
【0213】
[第一実験例]
【0214】
第一実験例において、近赤外線吸収能、耐熱性、耐光性及び酸価の評価方法は以下の通りである。
【0215】
(1)近赤外線吸収能(近赤外線透過率)の評価
試験体をUV−3700(島津製作所製)を使用して、350〜1500nmの透過スペクトルを測定した。近赤外線吸収能は、波長1000nmでの透過率により評価した。下記の表1において、波長1000nmでの透過率は、「1000nm透過率」と表記されている。
【0216】
(2)耐熱性の評価
試験体を80℃の恒温恒湿器中に500時間静置し、試験前後での350〜1500nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。なお、λmaxは、測定された波長範囲において吸光度が最大となる波長を意味し、極大吸収波長とも称される。する。このλmaxは、試験前の測定結果に基づいて決定される。
【0217】
(3)耐光性の評価
スガ試験機社製の「SX2−75 スーパーキセノンウェザーメーター」にて、63℃で且つ50%RHの環境下、試験片に、300〜400nmにおける照射強度が60W/m2である光を100時間照射した。この試験前後のそれぞれにおいて、350〜1500nmの光の透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。
【0218】
前述したように、耐熱性及び耐光性の評価においては、色素残存率(%)が測定された。試験後のλmaxでの吸光度がA1(%)とされ、試験前のλmaxでの吸光度がB1(%)とされるとき、色素残存率P1(%)は下記の式で計算される。
P1=(A1/B1)×100
なお、吸光度は、透過率をT(%)とするとき、下記式により求められる。
吸光度=−log(T/100)
【0219】
(4)ジイモニウム色素の溶解度
5種類のサンプルを用いた前述の測定方法により測定された。
【0220】
(5)酸価の測定
樹脂0.5gを精秤し、トルエン50gを加えて均一に溶解させた。指示薬としてフェノールフタレイン/アルコール溶液を2〜3滴加え、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、液の赤みが約30秒で消えなくなったときを終点とした。このときの滴定量と樹脂の固形分から酸価を求めた。酸価は、樹脂固形分1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmgで表される。
【0221】
製造例1:
モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート(264.6g)、ブチルアクリレート(150g)、シクロヘキシルメタクリレート(180g)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.4g)を秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(1)を得た。
【0222】
160gの酢酸エチルと、300gの重合性モノマー混合物(1)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器及び滴下ロートを備えたフラスコに入れた。また、上記滴下ロートに、300gの重合性モノマー混合物(1)、16gの酢酸エチル及び0.15gのナイパーBMT−K40(重合開始剤、日本油脂社製)を入れ、良く混合して、滴下用混合物(1)とした。
【0223】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を95℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.15g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から30分後に、滴下ロートからの滴下用混合物(1)の滴下を開始した。滴下用混合物(1)は、90分かけて、均等に滴下された。滴下用混合物(1)の滴下終了後、粘度の上昇に応じて酢酸エチルで希釈を適宜行いながら、還流温度を維持しながら6時間熟成を行った。
【0224】
反応終了後、不揮発分が約45%になるように酢酸エチルで反応液を希釈し、計算ガラス転移温度(Tg)が−35℃、計算溶解性パラメータが8.99である樹脂(1)を得た。この樹脂(1)は、粘着剤樹脂であった。樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は42万であり、樹脂(1)の酸価は0であった。
【0225】
製造例2:
486gのブチルアクリレートと、108.6gのメチルメタクリレートと、5.4gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(2)を得た。上記重合性モノマー混合物(1)に代えて、この重合性モノマー混合物(2)が用いられた他は製造例1と同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(2)を得た。樹脂(2)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−35.6℃であり、計算溶解性パラメータが9.84であり、重量平均分子量(Mw)が64万であり、酸価が0であった。
【0226】
製造例3:
570.6gのブチルアクリレートと、24gのアクリル酸と、5.4gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(3)を得た。上記重合性モノマー混合物(1)に代えて、この重合性モノマー混合物(3)が用いられた他は製造例1と同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(3)を得た。樹脂(3)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−50℃であり、計算溶解性パラメータが9.95であり、重量平均分子量(Mw)が82万であり、酸価が31.2であった。
【0227】
分散体の合成例1:
0.5gのIRG−022(日本化薬社製のジイモニウム色素)、9.5gのトルエン及び25gのジルコニアビーズ(粒子径300μm、ニッカトー社製)を50mlのスクリュー管に入れ、ペイントシェーカーで2時間振とうした後、ジルコニアビーズを濾別し、IRG−022粒子を含む分散体(1)を作製した。0.025mmのフローセル(GLサイエンス社製)に分散体(1)を注入し、これを紫外可視吸収スペクトルにより測定して、分散体(1)の透過スペクトルを得た。スペクトルの測定には、UV−3700(島津製作所製)を用いた。得られたスペクトルが図1に示されている。この図1のスペクトルを、IRG−022のMEK溶液の吸収スペクトルと比較すると、図1のスペクトルは、MEK溶液の吸収スペクトルと比較して、λmaxが長波長側にシフトしており、分散体であることが示されている。
【0228】
IRG−022のMEK溶液の吸収スペクトルが図2に示される。この吸収スペクトルは、IRG−022を所定量のメチルエチルケトンに溶解させ、不溶分がないことを確認した後、吸収スペクトルを測定して得た。スペクトルの測定には、UV−3700(島津製作所製)が用いられ、測定セルとして、光路長10mmの石英製セルが使用された。
【0229】
分散体の合成例2:
IRG−022に代えてIRG−023(日本化薬社製のジイモニウム色素)を用いた他は合成例1と同様にして、分散体(2)を得た。この分散体(2)は、IRG−023粒子を含む液体である。0.025mmのフローセル(GLサイエンス社製)に分散体(2)を注入し、これを紫外可視吸収スペクトルにより測定して、分散体(2)の透過スペクトルを得た。スペクトルの測定には、UV−3700(島津製作所製)が用いられた。得られたスペクトルが図3に示されている。
【0230】
なお、IRG−023のMEK溶液の吸収スペクトルが図4に示される。この吸収スペクトルは、IRG−023を所定量のメチルエチルケトンに溶解させ、不溶分がないことを確認した後、吸収スペクトルを測定して得た。スペクトルの測定には、UV−3700(島津製作所製)が用いられ、測定セルとして、光路長10mmの石英製セルが使用された。
【0231】
分散体の合成例3:
IRG−022に代えてCIR−1085F(日本カーリット社製のジイモニウム色素)を用いた他は合成例1と同様にして、分散体(3)を得た。この分散体(3)は、CIR−1085F粒子を含む液体である。
【0232】
[実施例1]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をトルエンに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズをトルエンに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液1を調整した。製造例1で得られた樹脂(1)、合成例1で得られた分散体(1)、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物A1を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1)/分散体(1)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0233】
近赤外線吸収粘着剤組成物A1をアプリケーターにて、易接着処理PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)上に塗工した。塗工時の厚みは、乾燥後の粘着剤組成物層の厚みが25μmとなるように設定した。次いで、100℃の熱風循環オーブン中にて2分間乾燥させた。この粘着剤組成物A1からなる層に離型フィルム(シリコン処理されたPETフィルム)を張り合わせた後、23℃で7日間養生させて、近赤外線吸収材B1を得た。離型フィルムを剥がした後、この近赤外線吸収材B1をガラス板に貼り付けて、実施例1に係る試験体を得た。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性及び耐光性の評価を行った。この評価結果が下記の表1に示される。
【0234】
[実施例2]
上記分散体(1)に代えて分散体(2)が用いられた他は実施例1と同様にして、実施例2に係る試験体を得た。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性及び耐光性の評価を行った。この評価結果が下記の表1に示される。
【0235】
[実施例3]
上記分散体(1)に代えて分散体(3)が用いられた他は実施例1と同様にして、実施例3に係る試験体を得た。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性及び耐光性の評価を行った。この評価結果が下記の表1に示される。
【0236】
[実施例4]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−10A」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−10A」が5質量%となるようにして、IR−10A溶液を調整した。製造例1で得られた樹脂(1)、合成例1で得られた分散体(1)、上記IR−10A溶液、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1/1/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物A5を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1)/分散体(1)/IR−10A溶液/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物A1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物A5を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0237】
[実施例5]
樹脂(1)に代えて、製造例2で得られた樹脂(2)を用いた他は、実施例1と同様にして、実施例5に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0238】
[実施例6]
樹脂(1)に代えて、製造例3で得られた樹脂(3)を用いた他は、実施例1と同様にして、実施例6に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0239】
[実施例7]
希釈溶剤(E)としてのトルエンがメチルエチルケトンに変更された他は実施例1と同様にして、実施例7に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0240】
[比較例1]
IRG−022(日本化薬社製)をメチルエチルケトンに溶解して、IRG−022を5質量%含むジイモニウム溶液1を調整した。製造例1で得られた樹脂(1)、ジイモニウム溶液1、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物A3を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1)/ジイモニウム溶液1/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物A1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物A3を用いた他は実施例1と同様にして、比較例1に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0241】
[比較例2]
IRG−023(日本化薬社製)をメチルエチルケトンに溶解して、IRG−023を5質量%含むジイモニウム溶液2を調整した。製造例1で得られた樹脂(1)、ジイモニウム溶液2、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物A4を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1)/ジイモニウム溶液2/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物A1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物A4を用いた他は実施例1と同様にして、比較例2に係る試験体Th2を得た。この試験体Th2について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0242】
なお、下記の表1において、メチルエチルケトンが、「MEK」と表記されている。
【0243】
【表1】
【0244】
なお、トルエンにおけるIRG−022の溶解度は0.1質量%以下であり、トルエンにおけるIRG−023の溶解度は0.1質量%以下であり、メチルエチルケトンにおけるIRG−022の溶解度は5質量%以上であり、メチルエチルケトンにおけるIRG−023の溶解度は5質量%以上であり、トルエンにおけるCIR−1085Fの溶解度は0.01質量%以下であった。
【0245】
実施例1の試験体の透過スペクトルが、図5で示される。図5には、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後の透過スペクトルが示されている。実施例2の試験体の透過スペクトルが、図6で示される。図6には、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後の透過スペクトルが示されている。比較例1の試験体の透過スペクトルが、図7で示される。図7には、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後の透過スペクトルが示されている。
【0246】
次に、第二実験例について説明する。
【0247】
[第二実験例]
【0248】
第二実験例における評価方法は以下の通りである。
【0249】
(1)溶解度、計算ガラス転移点Tg、計算溶解性パラメータ及び酸価の評価
前述の通りとされた。
【0250】
(2)ヘイズの評価
ヘイズの測定は、濁度計NDH2000(日本電色工業製)にて行った。試験体の3箇所のヘイズを測定し、それらの平均値を採用した。
【0251】
(3)耐熱試験
試験体を80℃の恒温恒湿器中に1000時間静置し、試験前後での350〜1500nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。また試験後のヘイズから試験前のヘイズを引くことにより、△Hzを算出した。なお、λmaxは、測定された波長範囲において吸光度が最大となる波長を意味する。このλmaxは、試験前の測定結果に基づいて決定される。
【0252】
(4)耐湿熱性の評価
試験体を60℃で且つ90%RHの恒温恒湿器中に1000時間静置し、試験前後での350〜1500nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。また試験後のヘイズから試験前のヘイズを引くことにより、△Hzを算出した。なお、λmaxは、測定された波長範囲において吸光度が最大となる波長を意味する。このλmaxは、試験前の測定結果に基づいて決定される。
【0253】
(5)耐光性の評価
スガ試験機社製の「SX2−75 スーパーキセノンウェザーメーター」にて、63℃で且つ50%RHの環境下、試験片に、300〜400nmにおける照射強度が60W/m2である光を100時間照射した。この試験前後のそれぞれにおいて、350〜1500nmの光の透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。また試験後のヘイズから試験前のヘイズを引くことにより、△Hzを算出した。なお、λmaxは、測定された波長範囲において吸光度が最大となる波長を意味する。このλmaxは、試験前の測定結果に基づいて決定される。
【0254】
前述したように、耐熱性、耐湿熱性及び耐光性の評価においては、色素残存率(%)が測定された。この測定方法は、[第一実験例]と同じである。
【0255】
(6)モル吸光係数
測定された吸光度を、濃度が1g/Lの場合の吸光度に換算して、換算吸光度を得る。この換算吸光度に、測定された化合物(ジイモニウム色素)の分子量をかけた値が、モル吸光係数である。λmaxにおけるモル吸光係数が下記の例で示される。
【0256】
製造例1a:
モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート(360.6g)、ブチルアクリレート(60g)、シクロヘキシルメタクリレート(156g)、アクリル酸(18g)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.4g)を秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(1a)を得た。
【0257】
160gの酢酸エチルと、300gの重合性モノマー混合物(1a)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器及び滴下ロートを備えたフラスコに入れた。また、上記滴下ロートに、300gの重合性モノマー混合物(1a)、16gの酢酸エチル及び0.15gのナイパーBMT−K40(重合開始剤、日本油脂社製)を入れ、良く混合して、滴下用混合物(1a)とした。
【0258】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を95℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.15g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から30分後に、滴下ロートからの滴下用混合物(1a)の滴下を開始した。滴下用混合物(1a)は、90分かけて、均等に滴下された。滴下用混合物(1a)の滴下終了後、粘度の上昇に応じて酢酸エチルで希釈を適宜行いながら、還流温度を維持しながら6時間熟成を行った。
【0259】
反応終了後、不揮発分が約45%になるように酢酸エチルで反応液を希釈し、計算ガラス転移温度(Tg)が−38.5℃、計算溶解性パラメータが9.08である樹脂(1a)を得た。この樹脂(1a)は、粘着剤樹脂であった。樹脂(1a)の重量平均分子量(Mw)は43万であり、樹脂(1a)の酸価は23.4であった。
【0260】
製造例2a:
312gの2−エチルヘキシルアクリレートと、132gのブチルアクリレートと、120gのシクロヘキシルメタクリレートと、36gのアクリル酸とを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(2a)を得た。上記重合性モノマー混合物(1a)に代えて、この重合性モノマー混合物(2a)が用いられた他は製造例1aと同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(2a)を得た。樹脂(2a)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−39.9℃であり、計算溶解性パラメータが9.31であり、重量平均分子量(Mw)が51万であり、酸価が46.8であった。
【0261】
製造例3a:
上記製造例1と同様にして、樹脂(3a)を得た。この樹脂(3a)は、上記樹脂(1)と同じである。
【0262】
製造例4a:
507.6gのブチルアクリレートと、90.6gのメチルメタクリレートと、1.8gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(4a)を得た。上記重合性モノマー混合物(1a)に代えて、この重合性モノマー混合物(4a)が用いられた他は製造例1aと同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(4a)を得た。樹脂(4a)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−40.0℃であり、計算溶解性パラメータが9.80であり、重量平均分子量(Mw)が68万であり、酸価が0であった。
【0263】
製造例5a:
502.9gのブチルアクリレートと、31.1gのメチルメタクリレートと、48gのアクリル酸と、18gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(5a)を得た。上記重合性モノマー混合物(1a)に代えて、この重合性モノマー混合物(5a)が用いられた他は製造例1aと同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(5a)を得た。樹脂(5a)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−40.9℃であり、計算溶解性パラメータが10.19であり、重量平均分子量(Mw)が128万であり、酸価が62.3であった。
【0264】
製造例6a:
495.1gのブチルアクリレートと、74.9gのメチルメタクリレートと、30gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(6a)を得た。上記重合性モノマー混合物(1a)に代えて、この重合性モノマー混合物(6a)が用いられた他は製造例1aと同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(6a)を得た。樹脂(6a)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−40.9℃であり、計算溶解性パラメータが10.00であり、重量平均分子量(Mw)が95万であり、酸価が0であった。
【0265】
製造例1aから6aの配合と評価結果が下記の表2に示される。
【0266】
【表2】
【0267】
合成例1a:
100質量部のDMFに、10質量部のN,N,N’,N’−テトラキス−(p−アミノフェニル)−p−フェニレンジアミン、63質量部のシクロヘキシルメチルヨーダイド及び30質量部の炭酸カリウムを加え、120℃で10時間反応させた。次に、この反応液を500質量部の水に加え、生じた沈殿を濾過し、500質量部のメチルアルコールで洗浄後、100℃で乾燥して、24.1部のN,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンを得た。
【0268】
この24.1部のN,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンに、200質量部のDMFと、7.9質量部のヘキサフルオロリン酸銀を加え、60℃で3時間反応させ、生成した銀を濾別した。次に、得られた濾液に200質量部の水を加え、生成した沈殿を濾過し、乾燥させて、27.0質量部のヘキサフルオロリン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウムを得た。以下、このジイモニウム塩が、ジイモニウム塩(a)とも称される。酢酸エチル中におけるジイモニウム塩(a)の溶解度は、0.01質量%以下であった。
【0269】
0.5質量部のジイモニウム塩(a)、9.5質量部の酢酸エチル及び70質量部のジルコニアビーズ(粒径0.3mm)を50mlのガラス容器に入れ、ペイントシェーカーで2時間振とうした後、ジルコニアビーズを濾別し、色素濃度を2質量%に調整して、液状の分散体(a)を得た。
【0270】
ジイモニウム塩(a)の濃度が100mg/L、50mg/L、10mg/L及び5mg/Lのそれぞれとなるように、分散体(a)を酢酸エチルで希釈した。これらの4種類の希釈液のそれぞれについて、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図8に示される。この100mg/Lの希釈液の極大吸収波長(λmax)は1093nmであった。また、この100mg/Lの希釈液のλmaxにおけるモル吸光係数は、75300(mol−1・L・cm−1)であった。
【0271】
分散媒が酢酸エチルの場合、ジイモニウム塩が会合体である場合の極大吸収波長(λmax)は、分散媒がトルエンの場合とは相違する。なお、ジイモニウム塩が分散体(a)と同一であり、且つ、分散媒がトルエンである分散体(b)(後述)においてジイモニウム色素が会合状態にあることを考慮すると、分散体(a)においても、ジイモニウム塩(a)は会合体であると考えられる。
【0272】
合成例2a:
分散溶媒が酢酸エチルからトルエンに変更された他は合成例1aと同様にして、液状の分散体(b)を得た。トルエン中におけるジイモニウム塩(a)の溶解度は、0.01質量%以下であった。ジイモニウム塩(a)の濃度が100mg/L、50mg/L、20mg/L及び5mg/Lのそれぞれとなるように、分散体(b)をトルエンで希釈した。これらの4種類の希釈液のそれぞれについて、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図9に示される。この100mg/Lの希釈液の極大吸収波長(λmax)は1119nmであった。また、この100mg/Lの希釈液のλmaxにおけるモル吸光係数は、103634(mol−1・L・cm−1)であり、70000mol−1・L・cm−1以上であった。
【0273】
このように、上記分散体(b)よりも低い濃度(100mg/L)において、ジイモニウム塩(a)が会合状態であることが確認された。よって、トルエンによる希釈濃度がより高い分散体(b)においても、ジイモニウム色素(a)は会合状態にあると考えられる。
【0274】
また、分散体(b)に、更にトルエンを加え、ジイモニウム塩が溶解状態になるまで希釈して、希釈体(b)を得た。この希釈体(b)の極大吸収波長(λmax)は、1094nmであり、1119nmよりも小さい値であった。
【0275】
合成例3a:
合成例1aで用いられた63質量部のシクロヘキシルメチルヨーダイドに代えて、同じモル数の1−ヨード−3−フルオロプロパンを用いた他は合成例1aと同様にして、ヘキサフルオロリン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(3−フルオロプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウムを得た。以下、このジイモニウム塩が、ジイモニウム塩(c)とも称される。このジイモニウム塩(c)を用いた他は、合成例2aと同様にして、液状の分散体(c)を得た。トルエン中におけるジイモニウム塩(c)の溶解度は、0.01質量%以下であった。
【0276】
ジイモニウム塩(c)の濃度が100mg/L、50mg/L、20mg/L及び5mg/Lのそれぞれとなるように、分散体(c)をトルエンで希釈した。これらの4種類の希釈液のそれぞれについて、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図10に示される。この100mg/Lの希釈液の極大吸収波長(λmax)は1120nmであった。また、この100mg/Lの希釈液のλmaxにおけるモル吸光係数は、83775(mol−1・L・cm−1)であり、70000mol−1・L・cm−1以上であった。
【0277】
このように、上記分散体(c)よりも低い濃度(100mg/L)において、ジイモニウム塩(c)が会合状態であることが確認された。よって、トルエンによる希釈濃度がより高い分散体(c)においても、ジイモニウム色素(c)は会合状態にあると考えられる。
【0278】
このジイモニウム塩(c)は、トルエンに対してほどんど不溶であったため、分散媒をトルエンから塩化メチレンに変更し、濃度が10mg/Lとなるように希釈して、ジイモニウム塩(c)が溶解した希釈体(c)を得た。この希釈体(c)について、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図11に示される。この希釈体(c)の極大吸収波長(λmax)は、1050nmであり、1120nmよりも小さい値であった。
【0279】
合成例4a:
合成例1aで用いられた63質量部のシクロヘキシルメチルヨーダイドに代えて、同じモル数のイソブチルヨーダイドを用いた他は合成例1aと同様にして、ヘキサフルオロリン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(イソブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウムを得た。以下、このジイモニウム塩が、ジイモニウム塩(d)とも称される。このジイモニウム塩(d)を用いた他は、合成例2aと同様にして、液状の分散体(d)を得た。トルエン中におけるジイモニウム塩(d)の溶解度は、0.01質量%以下であった。
【0280】
ジイモニウム塩(d)の濃度が100mg/L、50mg/L、20mg/L及び5mg/Lのそれぞれとなるように、分散体(d)をトルエンで希釈した。これらの4種類の希釈液のそれぞれについて、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図12に示される。この100mg/Lの希釈液の極大吸収波長(λmax)は1220nmであった。また、この100mg/Lの希釈液のλmaxにおけるモル吸光係数は、112693(mol−1・L・cm−1)であり、70000mol−1・L・cm−1以上であった。
【0281】
このように、上記分散体(d)よりも低い濃度(100mg/L)において、ジイモニウム塩(d)が会合状態であることが確認された。よって、トルエンによる希釈濃度がより高い分散体(d)においても、ジイモニウム色素(d)は会合状態にあると考えられる。
【0282】
また、分散体(d)に、更にトルエンを加え、ジイモニウム塩が溶解状態になるまで希釈して、希釈体(d)を得た。この希釈体(d)の極大吸収波長(λmax)は、1081nmであり、1220nmよりも小さい値であった。
【0283】
合成例1aから4aで合成されたジイモニウム塩及び分散体の一覧が、下記の表3に示される。
【0284】
【表3】
【0285】
[実施例1a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)を酢酸エチルに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例1aで得られた分散体(a)及び架橋剤溶液1を、固形分重量比で100/1.0/0.5となるように混合し、固形分が25%となるように酢酸エチルで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(a)/架橋剤溶液1)の順で表記されている。
【0286】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1をアプリケーターにて、易接着処理PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)上に塗工した。塗工時の厚みは、乾燥後の粘着剤組成物層の厚みが25μmとなるように設定した。次いで、100℃の熱風循環オーブン中にて2分間乾燥させた。この粘着剤組成物Aa1からなる層に離型フィルム(シリコン処理されたPETフィルム)を張り合わせた後、23℃で7日間養生させて、近赤外線吸収材Ba1を得た。離型フィルムを剥がした後、この近赤外線吸収材Ba1をガラス板に貼り付けて、実施例1aに係る試験体Z1を得た。この試験体Z1について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0287】
[実施例2a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−14」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−14」が5質量%となるようにして、IR−14溶液を調整した。また、フタロシアニン色素である「イーエクスカラーTX−EX−820」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーTX−EX−820」が5質量%となるようにして、TX−EX−820溶液を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例1aで得られた分散体(a)、上記IR−14溶液、上記TX−EX−820溶液及び架橋剤溶液1を固形分重量比で100/1.1/0.35/0.17/0.5となるように混合し、固形分が25%となるように酢酸エチルで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa2を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(a)/IR−14溶液/TX−EX−820溶液/架橋剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Aa2が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例2aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0288】
[実施例3a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−14」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−14」が5質量%となるようにして、IR−14溶液を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例2aで得られた分散体(b)、上記IR−14溶液及び架橋剤溶液1を固形分重量比で100/1.3/0.7/0.25となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa3を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(b)/IR−14溶液/架橋剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Aa3が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例3aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0289】
[実施例4a]
樹脂(1a)に代えて、製造例2aで得られた樹脂(2a)が用いられた他は実施例2aと同様にして、実施例4aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0290】
[実施例5a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)を酢酸エチルに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズを酢酸エチルに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液2を調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例1aで得られた分散体(a)、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液2を、固形分重量比で100/1.0/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるように酢酸エチルで希釈して、実施例5aに係る近赤外線吸収粘着剤組成物Aa5を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(a)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液2)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えてこの近赤外線吸収粘着剤組成物Aa5が用いられた他は実施例1aと同様にして、実施例5aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0291】
[実施例6a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)を酢酸エチルに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズを酢酸エチルに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液2を調整した。製造例4aで得られた樹脂(4a)、合成例1aで得られた分散体(a)、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液2を、固形分重量比で100/1.0/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるように酢酸エチルで希釈して、実施例6aに係る近赤外線吸収粘着剤組成物Aa6を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(4a)/分散体(a)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液2)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えてこの近赤外線吸収粘着剤組成物Aa6が用いられた他は実施例1aと同様にして、実施例6aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0292】
[実施例7a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をトルエンに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例3aで得られた分散体(c)及び架橋剤溶液1を、固形分重量比で100/1.3/0.5となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa7を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(c)/架橋剤溶液1)の順で表記されている。
【0293】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Aa7が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例7aに係る試験体を得た。この試験体について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0294】
[実施例8a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をトルエンに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズをトルエンに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液1を調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例3aで得られた分散体(c)、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1.3/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa8を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(c)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0295】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Aa8が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例8aに係る試験体を得た。この試験体について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0296】
[実施例9a]
樹脂(1a)に代えて、製造例5aで得られた樹脂(5a)が用いられた他は実施例7aと同様にして、実施例9aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0297】
[実施例10a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をトルエンに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズをトルエンに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液1を調整した。製造例6aで得られた樹脂(6a)、合成例3aで得られた分散体(c)、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1.3/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa10を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(6a)/分散体(c)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0298】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Aa10が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例10aに係る試験体を得た。この試験体について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0299】
[実施例11a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−10A」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−10A」が5質量%となるようにして、IR−10A溶液を調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例4aで得られた分散体(d)、上記IR−10A溶液、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/1.0/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa11を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(d)/IR−10A溶液/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Aa11が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例11aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0300】
[実施例12a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−14」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−14」が5質量%となるようにして、IR−14溶液を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例4aで得られた分散体(d)、上記IR−14溶液および架橋剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/1.0/0.25となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa12を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(d)/IR−14溶液/架橋剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Aa12が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例12aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0301】
[実施例13a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−14」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−14」が5質量%となるようにして、IR−14溶液を調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例2で得られた分散体(2)、上記IR−14溶液、上記架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/2.0/0.45/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa13を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(2)/IR−14溶液/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0302】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Aa13が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例13aに係る試験体を得た。この試験体について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表6に示される。
【0303】
[比較例1a]
合成例1aで得られたジイモニウム塩(a)をメチルエチルケトンで希釈して1質量%の濃度とし、ジイモニウム塩(a)が溶解したジイモニウム塩溶液h1aを調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、ジイモニウム塩溶液h1a及び上記架橋剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/0.5となるように混合し、固形分が25%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Ah1aを得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/ジイモニウム塩溶液h1a/架橋剤溶液1)の順で表記されている。
【0304】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Ah1aが用いられた他は、実施例1aと同様にして、比較例1aに係る試験体T1を得た。この試験体T1について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表6に示される。
【0305】
[比較例2a]
合成例4aで得られたジイモニウム塩(d)をメチルエチルケトンで希釈して1質量%の濃度とし、ジイモニウム塩(d)が溶解したジイモニウム塩溶液h2aを調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、ジイモニウム塩溶液h2a、上記架橋剤溶液1及び上記架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Ah2aを得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/ジイモニウム塩溶液h2a/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0306】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Ah2aが用いられた他は、実施例1aと同様にして、比較例2aに係る試験体T2を得た。この試験体T2について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表6に示される。
【0307】
【表4】
【0308】
【表5】
【0309】
【表6】
【0310】
なお、近赤外線吸収粘着剤組成物中におけるジイモニウム塩の状態を確認するため、以下の実験例1及び実験例2を行った。
【0311】
[実験例1]
実施例1aで得られた近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1を内径0.1mmのセルに入れて透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1123nmであった。この組成物Aa1の透過スペクトルが図13に示される。また、上記近赤外線吸収材Ba1をガラス板に貼り付けて得られた上記試験体Z1について、透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1169nmであった。この試験体Z1の透過スペクトルが図14に示される。
【0312】
一方、上記比較例1aで得られた近赤外線吸収粘着剤組成物Ah1aを内径0.1mmのセルに入れて透過スペクトルを測定したところ、λmaxは978nmであった。また、比較例1aに係る上記試験体T1について透過スペクトルを測定したところ、λmaxは959nmであった。このように、分散体(a)を用いた近赤外線吸収粘着剤組成物では、ジイモニウム塩(a)の溶解液を用いた組成物と比較して、λmaxが長波長側にシフトしている。このように、上記実施例の近赤外線吸収粘着剤組成物及び近赤外線吸収材では、ジイモニウム塩が会合状態にあることが示唆される。
【0313】
[実験例2]
製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例4aで得られた分散体(d)、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Az2を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(d)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Az2が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実験例2に係る試験体Z2を得た。
【0314】
この近赤外線吸収粘着剤組成物Az2を内径0.1mmのセルに入れて透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1255nmであった。この組成物Az2の透過スペクトルが、図15に示される。また、上記試験体Z2について、透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1245nmであった。この試験体Z2の透過スペクトルが、図16に示される。
【0315】
一方、上記比較例2aで得られた近赤外線吸収粘着剤組成物Ah2aについて、内径0.1mmのセルに入れて透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1052nmであった。また、上記比較例2aに係る試験体T2の透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1011nmであった。このように、実験例2の結果からも、近赤外線吸収粘着剤組成物中におけるジイモニウム塩のλmaxが長波長側へシフトしていることが確認された。
【0316】
[実施例8]
1.重合性ポリシロキサン(M−1)の合成
攪拌機、温度計および冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコにテトラメトキシシラン144.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6部、水19.0部、メタノール30.0部およびアンバーリスト15(商品名:オルガノ社製の陽イオン交換樹脂)5.0部を入れ、65℃で2時間攪拌し、反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、常圧下でフラスコ内温約80℃まで2時間かけて昇温し、メタノールが流出しなくなるまで同温度で保持した。さらに、2.67×10kPaの圧力下90℃の温度で、メタノールが流出しなくなるまで保持し、反応を更に進行させた。再び、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾過し、数平均分子量が1,800の重合性ポリシロキサン(M−1)を得た。
【0317】
2.有機ポリマー(P−1)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管およびN2ガス導入口を備えた1リットルのフラスコに、有機溶剤として酢酸n−ブチル260部を入れ、N2ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を110℃まで加熱した。ついで重合性ポリシロキサン(M−1)12部、tert−ブチルメタクリレート19部、ブチルアクリレート94部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート67部、パーフルオトオクチルエチルメタクリレート(ライトエステルFM−108、共栄社化学社製)48部および2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)2.5部を混合した溶液が、滴下口より3時間かけて滴下された。滴下後も同温度で1時間攪拌を続けた後、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.1部を30分おきに2回添加し、さらに2時間加熱して共重合を行なった。その結果、数平均分子量が12,000であり重量平均分子量が27,000である有機ポリマー(P−1)が酢酸n−ブチルに溶解した溶液を得た。得られた溶液の固形分は48.2%であった。
【0318】
3.有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)の合成
攪拌機、2つの滴下口(滴下口αと滴下口β)、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、酢酸n−ブチル200部およびメタノール500部を入れておき、内温を40℃に調整した。ついでフラスコ内を攪拌しながら、有機ポリマー(P−1)の酢酸n−ブチル溶液10g、テトラメトキシシラン30部および酢酸n−ブチル5部の混合液(原料液A)を滴下口αから2時間かけて滴下すると同時に、25%アンモニア水5部、脱イオン水10部およびメタノール15部の混合液(原料液B)を滴下口βから2時間かけて滴下した。滴下後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、40kPaの圧力下、フラスコ内温を100℃まで昇温し、アンモニア、メタノールおよび酢酸n−ブチルを固形分が30%となるまで留去して、有機ポリマー複合無機微粒子が酢酸n−ブチルに分散した分散体(S−1)を得た。この分散体(S−1)において、上記有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子と有機ポリマーとの比率は、70/30であった。この比率は、重量比である。得られた有機ポリマー複合無機微粒子の平均粒子径は23.9nmであった。なお、有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子と有機ポリマーの比率は、有機ポリマー複合微粒子分散体を1.33×10kPaの圧力下、130℃で24時間乾燥したものについて元素分析を行ない、灰分を有機ポリマー複合無機微粒子含有量として求めた。また、平均粒子径は、有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)1部を酢酸n−ブチル99部で希釈した溶液を用いて、透過型電子顕微鏡により粒子を撮影し、任意の100個の粒子の直径を読み取り、その平均を平均粒子径として求めた。
【0319】
4.反射防止フィルム
ジぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPE−6A、共栄社化学社製)8部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(PE−3A、共栄社化学社製)2部を混合し、メチルエチルケトン40部に溶解した溶液を作製した。この溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.5部をメチルエチルケトン2部に溶解した溶液を加え、ハードコート層塗布液を調製した。
【0320】
有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)9部、デスモジュールN3200(商品名、住化バイエルウレタン社製のイソシアネート硬化剤)0.3部、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.003部およびメチルイソブチルケトン110部を混合し、低屈折率層塗布液を調製した。
【0321】
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡績社製)に上記ハードコート層塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、塗布層hを得た。この塗布層hを、100℃で15分乾燥した後、高圧水銀灯で200mJ/cm2の紫外線を照射することにより硬化させ、膜厚5μmのハードコート層を形成した。このハードコート層の上に上記低屈折率塗布液をバーコーターを用いて塗布し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に反射防止膜を作成した。
【0322】
フィルムの反射防止膜側とは反対側の面をスチールウールで粗面化した。この粗面化された面に黒インキを塗った。反射防止膜側の面の入射角5°における鏡面反射スペクトルを紫外可視分光光度計(UV−3100、島津製作所製)を用いて測定し、反射率が最小値を示す波長およびその波長における反射率(最小反射率)を求めた。得られた反射防止フィルムにおいて、反射率が最小値を示す波長は波長550nmであり、その波長における反射率(最小反射率)は0.45%であった。
【0323】
5.光学フィルター
上記反射防止フィルムの裏面側に、実施例1で得られた近赤外線吸収粘着剤組成物A1について、実施例1と同様に塗工および乾燥し、光学フィルター1を得た。光学フィルター1の近赤外線透過率、全光線透過率、耐熱性、耐湿熱性、耐光性、耐クラック性および耐溶剤性は良好だった。
【0324】
[実施例9]
上記近赤外線吸収粘着剤組成物A1に代えて、上記実施例7aで得られた近赤外線吸収粘着剤組成物Aa7が用いられた他は実施例8と同様にして、光学フィルター2を得た。光学フィルター2の近赤外線透過率、全光線透過率、耐熱性、耐湿熱性、耐光性、耐クラック性および耐溶剤性は良好だった。
【産業上の利用可能性】
【0325】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、近赤外線吸収能の持続性及び可視領域の透明性が高く、耐熱性、耐湿熱性及び耐光性に優れることから、薄型ディスプレー用の光学フィルターとして有用である。また、光情報記録材料としても使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収粘着剤組成物、該近赤外線吸収粘着剤組成物を含有する近赤外線吸収材、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルターなどに関する。特に、本発明は、可視領域の透明性と赤外線吸収能の持続性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物、該近赤外線吸収粘着剤組成物を含有する近赤外線吸収材、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる光半導体素子用光学フィルター、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルターなどに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型で大画面に適用できる液晶ディスプレーやPDP(Plasma Display Panel)等の薄型ディスプレーが注目されている。薄型ディスプレーは波長が800nm〜1100nmの近赤外線を発生させる。この近赤外線が家電用リモコンの誤作動を誘発することが問題となっている。また、CCDカメラ等に使用される光半導体素子も近赤外線領域の感度が高いため、近赤外線の除去が必要である。そこで、近赤外線の吸収能が高く、可視領域の透明性が高い近赤外線吸収材料が求められている。
【0003】
近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素としては、従来、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素または無機酸化物粒子が使用されている。中でもジイモニウム系色素は近赤外線の吸収能が高く、可視光領域での透明性が高いことから多用されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
【0004】
また、PDPは、パネル内部に封入された希ガス、特にネオンを主体としたガス中で放電を発生させ、その際に発生する真空紫外線により、パネル内部のセルに設けられたR、G、Bの蛍光体を発光させる。よって、この発光過程でPDPの作動に不必要な電磁波も同時に放出される。この電磁波も遮蔽されることが必要である。また、反射光を抑えるために反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム(アンチグレアフィルム)も必要である。このため、プラズマディスプレー用光学フィルターは、近赤外線吸収フィルム、電磁波遮蔽フィルム及び反射防止フィルムを、支持体であるガラスや衝撃吸収材の上に積層して作製されることが一般的である。このようなプラズマディスプレー用光学フィルターは、PDPの前面側に載置される。このようなプラズマディスプレー用光学フィルターは、接着剤や粘着剤を用いて、支持体であるガラスや衝撃吸収材の上に直接貼合わされて使用される場合もある。
【0005】
近年、光学フィルターの薄層化や、光学フィルターの製造工程の簡略化を目的として、粘着剤に近赤外線吸収色素を含有させて近赤外線吸収フィルムと粘着剤層とを一体化させる試みがなされている(特許文献4及び特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−96040号公報
【特許文献2】特開2000−80071号公報
【特許文献3】特開2005−325292号公報
【特許文献4】特許第3621322号
【特許文献5】国際公開WO2008/026786公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジイモニウム系色素は耐久性が劣る場合があり、近赤外線の吸収能の低下や着色は、光半導体素子やディスプレー用途で使用する際の重大な問題となりうる。特に、粘着剤樹脂のようなガラス転移点(Tg)の低い樹脂中では色素の劣化が激しい。
【0008】
特開2005−325292号公報にはジイモニウムカチオンのアルキル基にハロゲン原子を導入することにより耐久性を向上させたジイモニウム色素が開示されている。確かにこのジイモニウム色素と高Tgバインダー樹脂を用いた近赤外線遮断フィルターでは、従来のジイモニウム色素と比較して耐久性の向上が見られる。しかし、劣化の激しい低Tgの粘着剤樹脂との組み合わせでは、その耐久性は不十分となりやすい。国際公開WO2008/026786公報では、ジイモニウム色素を適切に限定することにより、粘着剤組成物中における色素の耐久性が向上させている。本発明では、国際公開WO2008/026786公報の発明とは異なる観点から、粘着剤樹脂中におけるジイモニウム色素の耐久性を向上させうる技術を見いだした。
【0009】
本発明は、可視領域の透明性と近赤外線吸収能の持続性が高い近赤外線吸収材を作製するのに有用な、近赤外線吸収粘着剤組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、該組成物を使用した近赤外線吸収材、光半導体素子用光学フィルター、薄型ディスプレー用光学フィルター、および薄型ディスプレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、粘着剤樹脂中におけるジイモニウム色素の耐久性の向上について鋭意検討を行なった。その結果、ジイモニウム色素を分散させた分散体を用いることにより、色素の耐久性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物が得られることを見出した。また、ジイモニウム色素の会合体を用いることにより、色素の耐久性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物が得られることを見出した。
【0011】
組成物に係る本発明は、ジイモニウム色素を溶剤(D)を含む組成物中に分散させた分散体(A)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有している近赤外線吸収粘着剤組成物である。
【0012】
好ましくは、上記分散体(A)中において、上記ジイモニウム色素が会合状態である。
【0013】
組成物に係る他の発明は、ジイモニウム色素の会合体(X)と、溶剤(D)と、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収粘着剤組成物。
【0014】
組成物に係る更に他の発明は、粒子状のジイモニウム色素と溶剤(D)とを含む液体(C)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有する近赤外線吸収粘着剤組成物であって、上記溶剤(D)における上記ジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である近赤外線吸収粘着剤組成物である。
【0015】
好ましくは、上記ジイモニウム色素が、後述の下記式(1)で示されるジイモニウムカチオンを有する化合物である。
【0016】
好ましくは、上記ジイモニウム色素のジイモニウムアニオンが、ヘキサフルオロリン酸イオンである。
【0017】
好ましくは、後述の式(1)において、R1からR8のうちの少なくとも一つが、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖又は分岐状の炭素数1から10のアルキル基、炭素数が3から12のシクロアルキル基、又はシクロアルキル環が置換されていてもよい[C3−12シクロアルキル−C1−10アルキル基]である。
【0018】
好ましくは、上記R1からR8の少なくとも1つが、後述の式(2)で示される有機基である。
【0019】
好ましくは、上記式(2)で示される有機基が、シクロヘキシルメチル基である。
【0020】
好ましくは、上記R1からR8の全てがシクロヘキシルメチル基である。
【0021】
好ましくは、上記R1からR8の少なくとも1つが、後述の式(3)で示される有機基である。
【0022】
好ましくは、上記式(3)で示される有機基が、3−フルオロプロピル基である。
【0023】
好ましくは、上記R1からR8の全てが3−フルオロプロピル基である。
【0024】
好ましくは、上記R1からR8の少なくとも1つが、炭素数が3以上12以下の分岐状アルキル基である。
【0025】
好ましくは、上記分岐状アルキル基がイソブチル基である。
【0026】
好ましくは、前記樹脂(B)の酸価が0以上300以下である。
【0027】
好ましくは、前記樹脂(B)の計算溶解性パラメータが10.2以下である。
【0028】
好ましくは、前記樹脂(B)が、下記単量体(1a)から(3a)を下記の比率で共重合してなるポリマーである。
(1a)炭素数が1以上12以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル:60質量%以上99.9質量%以下
(2a)官能基含有モノマー:0.1質量%以上20質量%以下
(3a)その他共重合可能な単量体:0質量%以上30質量%以下
【0029】
上記近赤外線吸収粘着剤組成物は、さらに、フタロシアニン系色素を含んでいてもよい。
【0030】
好ましくは、上記近赤外線吸収粘着剤組成物は、上記ジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である希釈溶剤(E)により希釈されてなる。
【0031】
本発明に係る近赤外線吸収材は、上記いずれかの近赤外線吸収粘着剤組成物を含む。
【0032】
好ましくは、、近赤外線吸収材は、上記いずれかの近赤外線吸収粘着剤組成物が透明基材に積層されてなる。
【0033】
好ましくは、前記透明基材は、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムである。
【0034】
本発明に係る薄型ディスプレー用光学フィルターは、上記いずれかの近赤外線吸収材を用いてなる。
【0035】
本発明に係る光半導体素子用光学フィルターは、上記いずれかの近赤外線吸収材を用いてなる。
【0036】
本発明に係る薄型ディスプレーは、上記いずれかの近赤外線吸収粘着剤組成物、上記いずれかの近赤外線吸収材または上記の光学フィルターを用いてなる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用した近赤外線吸収材料は、色素の近赤外線吸収能が長期間に渡って維持されうる。よって、この近赤外線吸収粘着剤組成物を、光半導体素子や薄型ディスプレー用の光学フィルターの作製に使用すると、光学フィルターの薄層化や、光学フィルターの製造工程の簡略化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、IRG−022粒子を含む分散体の透過スペクトルである。
【図2】図2は、IRG−022のMEK溶液の透過スペクトルである。
【図3】図3は、IRG−023粒子を含む分散体の透過スペクトルである。
【図4】図4は、IRG−023のMEK溶液の透過スペクトルである。
【図5】図5は、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後における実施例1の透過スペクトルである。
【図6】図6は、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後における実施例2の透過スペクトルである。
【図7】図7は、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後における比較例1の透過スペクトルである。
【図8】図8は、分散体(a)を酢酸エチルで希釈したときの各濃度におけるモル吸光係数を示すグラフである。
【図9】図9は、分散体(b)をトルエンで希釈したときの各濃度におけるモル吸光係数を示すグラフである。
【図10】図10は、分散体(c)をトルエンで希釈したときの各濃度におけるモル吸光係数を示すグラフである。
【図11】図11は、ジイモニウム塩(c)を塩化メチレンにて10mg/Lの濃度に希釈した液体のモル吸光係数を示すグラフである。
【図12】図12は、分散体(d)をトルエンで希釈したときの各濃度におけるモル吸光係数を示すグラフである。
【図13】図13は、実験例1に係る近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1の透過スペクトルである。
【図14】図14は、実験例1に係る試験体Z1の透過スペクトルである。
【図15】図15は、実験例2に係る近赤外線吸収粘着剤組成物Az2の透過スペクトルである。
【図16】図16は、実験例2に係る試験体Z2の透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
1.ジイモニウム色素(ジイモニウム塩)
本発明では、後述される分散体(A)が用いられる。分散体(A)が用いられることにより、ジイモニウム塩の耐久性が向上する。好ましくは、分散体(A)において、ジイモニウム色素は、会合状態にある。即ち、好ましくは、ジイモニウム色素は、会合体(X)で分散している。この会合体(X)の詳細については、後述される。後述するように、会合体(X)を形成したジイモニウム塩は、耐久性に優れる。
【0040】
この分散体(A)を用いた近赤外線吸収粘着剤組成物は、粘着剤樹脂(B)中に存在しているにも関わらず、耐久性に優れることが判明した。さらに、分散体(A)中のジイモニウム塩が会合体(X)とされることにより、より一層耐久性が向上しうることが判明した。
【0041】
このような良好な結果が得られたことに鑑みれば、ジイモニウム色素の少なくとも一部は、近赤外線吸収粘着剤組成物中においても、分散体(A)中と同様の分散状態にあるといえる。更に、この良好な結果が得られたことに鑑みれば、ジイモニウム色素の少なくとも一部は、近赤外線吸収粘着剤組成物中においても、会合状態にあるといえる。
【0042】
本発明に用いられるジイモニウム色素は、溶剤(D)を含む組成物中に分散させた分散体(A)とされて用いられるのが好ましい。分散体(A)は、会合体(X)の形成に役立つ。
【0043】
分散体(A)は、例えば、ジイモニウム色素を溶媒(D)中に分散させた分散液である。分散体(A)は、溶媒(D)の他に、樹脂や分散剤等の他成分を含んでいてもよい。分散体(A)において、ジイモニウム色素は、溶媒(D)中に分散していてもよいし、樹脂等の溶媒(D)以外の成分中に分散していてもよい。分散安定性の観点から、分散体(A)において、ジイモニウム色素は、溶剤(D)中に分散しているのが好ましい。分散体(A)において、ジイモニウム色素は、溶剤(D)を含む組成物に溶解することなく、分散している。即ち、分散体(A)は、ジイモニウム色素を分散させた分散体である。分散が可能となるように、ジイモニウム色素及び溶剤(D)が選択されるのが好ましい。好ましくは、このジイモニウム色素は、近赤外線吸収粘着剤組成物中において分散している。好ましくは、ジイモニウム塩は、分散体(A)中において、会合状態で分散している。より好ましくは、ジイモニウム塩は、近赤外線吸収粘着剤組成物中において、会合状態で分散している。
【0044】
本願にいう「分散」は、「会合」を含む概念である。即ち、本願にいう「分散」は、会合状態(会合体(X))での分散を含む。
【0045】
ジイモニウム色素の具体的な構造としては、下記式(1)で示されるジイモニウムカチオンを有するジイモニウム色素が例示される。
【0046】
【化1】
【0047】
好ましいジイモニウム色素は、下記式(1S)で表されるように、上記式(1)で示されるジイモニウムカチオンと、ジイモニウムアニオンZ−とからなる。
【0048】
【化2】
【0049】
R1からR8は、それぞれ同一でもよく異なっていてもよい原子又は基を表す。式(1)中のR1からR8は、会合体(X)を形成しうるものであれば特に限定されない。例えば、R1からR8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜22のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜22のアルキル基であってもよい。会合状態の形成の観点から、好ましくは、上記R1からR8の全ては、同一でもよいし異なっていてもよい有機基とされる。
【0050】
会合状態の形成の観点から、より好ましくは、上記R1からR8のうちの少なくとも一つが、以下の(1x)、(2x)又は(3x)とされる。
(1x)ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖又は分岐状の炭素数1から10のアルキル基。
(2x)炭素数が3から12のシクロアルキル基。
(3x)シクロアルキル環が置換されていてもよい[C3−12シクロアルキル−C1−10アルキル基]。
【0051】
カチオン構造が対称となり、会合状態が得られやすい観点から、上記R1からR8は、全て同じであるのが好ましい。会合状態が得られやすい観点から、上記R1からR8は、全て同一であり、且つ、上記(1x)、(2x)又は(3x)であるのが好ましい。
【0052】
上記(1x)における、炭素数1から10のアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、iso−アミル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基等が例示される。これらのうち、iso−プロピル基、iso−ブチル基、iso−アミル基等の、分岐状で且つ炭素数が3から6のアルキル基が、会合体形成に必要な分子配列を得る点で好ましい。
【0053】
上記(2x)における、炭素数が3から12のシクロアルキル基として、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0054】
上記(3x)における、シクロアルキル環を置換する置換基として、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル、ハロゲン原子等が例示される。好ましくは、上記(3x)における、シクロアルキル環は置換されていないのがよい。
【0055】
会合体形成に必要な分子配列を容易とする観点から、より好ましくは、上記(3x)における[C3−12シクロアルキル−C1−10アルキル基]は、下記式(2)で示される有機基とされる。
【0056】
【化3】
【0057】
ただし、式(2)中、R9は、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、mは3以上12以下の整数を示す。
【0058】
前述の通り、カチオン構造が対称となり、会合状態が得られやすい観点から、上記R1からR8は、全て同じであるのが好ましい。
【0059】
上記式(2)において、R9の炭素数は1以上4以下であるのがより好ましい。上記式(2)において、mは5以上8以下が好ましく、5以上6以下がより好ましい。このような炭素数の範囲は、会合に必要な分子間相互作用の増大に寄与する。具体的には、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロペンチルプロピル基、3−シクロペンチルプロピル基、4−シクロペンチルブチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロヘキシルプロピル基、3−シクロヘキシルプロピル基、4−シクロヘキシルブチル基等が例示される。これらの中でも、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルプロピル基、3−シクロヘキシルプロピル基及び4−シクロヘキシルブチル基が好ましく、より好ましくは、シクロペンチルメチル基及びシクロヘキシルメチル基であり、特にシクロヘキシルメチル基が好ましい。
【0060】
上記式(2)におけるシクロアルキル環は、置換基を有していなくてもよいし、有していてもよい。この置換基として、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。より好ましくは、上記式(2)におけるシクロアルキル環は、置換基を有していないのがよい。
【0061】
会合状態の形成及びジイモニウム色素の耐久性の観点から、R1からR8の全てがシクロヘキシルメチル基であるのが特に好ましい。即ち、下記式(2S)で示されるジイモニウム塩が特に好ましい。
【0062】
【化4】
【0063】
上記(1x)のうち、ハロゲン原子で置換された直鎖又は分岐状の炭素数1から10のアルキル基として、2−ハロゲノエチル基、2,2−ジハロゲノエチル基、2,2,2−トリハロゲノエチル基、3−ハロゲノプロピル基、3,3−ジハロゲノプロピル基、3,3,3−トリハロゲノプロピル基、4−ハロゲノブチル基、4,4−ジハロゲノブチル基、4,4,4−トリハロゲノブチル基、5−ハロゲノペンチル基、5,5−ジハロゲノペンチル基、5,5,5−トリハロゲノペンチル基等のハロゲン化アルキルが例示される。中でも、下記一般式(3)で示されるモノハロゲン化アルキル基が好ましい。
【0064】
【化5】
【0065】
ただし、式(3)中、nは1以上9以下の整数を示し、Xはハロゲン原子を示す。
【0066】
上記式(3)において、nは1以上4以下であるのがより好ましい。上記式(3)において、Xはフッ素原子であるのがより好ましい。この範囲とされることにより、会合に必要な分子間相互作用が増大する。好ましい具体例として、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、4−フルオロブチル基及び5−フルオロペンチル基が挙げられ、特に3−フルオロプロピル基が好ましい。
【0067】
会合状態の形成及びジイモニウム色素の耐久性の観点から、R1からR8の全てが3−フルオロプロピル基であるのが特に好ましい。即ち、下記式(3S)で示されるジイモニウム塩が特に好ましい。
【0068】
【化6】
【0069】
上記した一般式(2S)で示されるジイモニウム塩化合物及び一般式(3S)で示されるジイモニウム塩化合物は、いずれも新規な化合物である。これらのジイモニウム塩化合物は、会合体(X)を形成し、粘着剤組成物中における耐熱性及び耐湿性に優れ、且つ、高い近赤外線吸収能を有している。
【0070】
R1からR8を構成するハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0071】
他のR1からR8として、炭素数が1から10の直鎖、分岐状及び脂環式アルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。他の好ましいR1からR8として、4,4,4−トリフルオロブチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基及びペルフルオロブチル基が挙げられる。R1からR8は全て同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。これらの中では、前述の分岐状アルキル基がより好ましい。
【0072】
R1からR8は、炭素数が3から5の直鎖又は分岐状のアルキル基であってもよい。例えば、R1からR8は、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−アミル基又はイソアミル基であってもよい。これらの中では、前述の分岐状アルキル基が特に好ましい。
【0073】
また、R1からR8のアルキル基に結合しうる置換基としては、シアノ基;ヒドロキシル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、メトキシブトキシ基、エトキシブトキシ基等の炭素数2〜8のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基等がある。
【0074】
ジイモニウム色素におけるアニオンの種類は特に限定されない。このジイモニウムアニオンは、上記一般式(1)で示されるジイモニウムカチオンを中和させるのに必要である。このジイモニウムアニオンとして、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオン;過ヨウ素酸イオン;テトラフルオロホウ酸イオン;ヘキサフルオロリン酸イオン;ヘキサフルオロアンチモン酸イオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン;トルエンスルホン酸イオン;ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン;トリス(トリフルオロメタンスルホン)メチドイオン等が好ましく、中でもフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオン;過ヨウ素酸イオン;テトラフルオロホウ酸イオン;ヘキサフルオロリン酸イオン;ヘキサフルオロアンチモン酸イオンなどの無機アニオンは、ジイモニウム塩の溶解度を低下させるという観点から好ましい。会合体(X)の形成に必要な分子配列を容易とする観点から、ヘキサフルオロリン酸イオンが好ましい。
【0075】
本発明のジイモニウム色素は、ジイモニウムカチオン1個に対して、2個のアニオンが結合する形態であるのが好ましい。上記好ましいジイモニウムカチオンと、上記好ましいジイモニウムアニオンとの塩が、ジイモニウム色素として好ましく用いられる。
【0076】
本発明に係るジイモニウム塩は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である樹脂(B)との組み合わせにおいて、耐熱性、耐湿熱性及び耐光性に優れ、しかも、良好なヘイズを有しうる。
【0077】
上記ジイモニウム塩の製造方法の一例は、以下の通りである。
【0078】
この製造方法の一例では、先ず、ウルマン反応及び還元反応により、下記式(4)で示されるアミノ体を得る。このアミノ体に、NMP、DMF等の極性溶剤中で、上記R1からR8に対応するヨウ化物と、脱ヨウ素剤としてのアルカリ金属の炭酸塩とを加え、30℃以上150℃以下、好ましくは70℃以上120℃以下で反応させて、下記式(5)で示されるアルキル置換体を得る。例えば、上記R1からR8が全てシクロヘキシルアルキル基である場合、対応するヨウ化物としてヨウ化シクロヘキシルアルカンが用いられる。具体的には、上記R1からR8が全てシクロヘキシルメチル基である場合、対応するヨウ化物としてシクロヘキシルメチルヨーダイドが用いられる。また、上記R1からR8が全てフルオロアルキル基である場合、対応するヨウ化物としてヨウ化フルオロアルカンが用いられる。具体的には、例えば、上記R1からR8が全て3−フルオロプロピル基である場合、対応するヨウ化物として、1−ヨード−3−フルオロプロパンが用いられる。
【0079】
なお、本願において、「NMP」はN−メチル−2−ピロリドンを意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味する。
【0080】
【化7】
【0081】
【化8】
【0082】
一方、R1からR8が2種以上の異なる置換基である場合、それぞれの有機基の数に対応するモル数のヨウ化物を順次反応させるか、又は、これらを同時に添加して反応させる。例えば、R1からR8がシクロヘキシルメチル基及びその他の有機基である場合、置換基の数に対応するモル数のヨウ化シクロヘキシルアルカン(シクロヘキシルメチルヨーダイド)を添加して反応させ、この反応の後に、順次対応するモル数のヨウ化物(例えば、ヨウ化フルオロアルカン;ヨードアルカン;アルコキシヨード;ヨウ化ベンゼン;ヨウ化ベンジル、ヨウ化フェネチル等のフェニル−1−ヨードアルカン等)を加えて反応させるか、あるいは、これらの異種のヨウ化物を同時に加えて反応させる。
【0083】
次に、上記式(5)で示されるアルキル置換体と対応するアニオンZ−の銀塩を、NMP、DMF、アセトニトリル等の有機溶剤中、30℃以上150℃以下、好ましくは40℃以上80℃以下の温度で反応させ、析出した銀を濾別した後、水、酢酸エチル、ヘキサン等の溶媒を加え、生じた沈殿を濾過して、上記式(1S)に示されるジイモニウム塩を得る。
【0084】
なお式(5)中のR1からR8は、前述した通りの意味である。
【0085】
2.会合体(X)
本発明に係るジイモニウム色素は、上記式(1S)で示される分子が複数会合した会合体(X)を形成する。この会合体(X)は、数個から数十個程度の分子により形成される分子集合体であると考えられる。この会合体(X)は、トルエンで100mg/Lに希釈された場合、750nm以上1300nm以下の波長領域において吸収を示し、且つ、1110nm以上1250nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する。
【0086】
会合体(X)を形成した場合の極大吸収波長は、溶解状態の場合とは異なる吸収スペクトルを有することが知られている(例えば、Photographic Science and Engineering,Vol.18,No.323−335(1974)参照)。一般に、会合状態における吸収バンドは、溶解状態よりも長波長側に移動する。ジイモニウム塩化合物は、一般的に溶解状態において1050nm以上1095nm以下の間に極大吸収波長を示すが、会合体(X)を形成している場合、極大吸収波長が15nm〜200nm長波長側にシフトする。よって、会合体(X)は、トルエンで100mg/Lに希釈された場合、1110nm以上1250nm以下の範囲に極大吸収波長を示す。なお、シフトによる変化量が大きすぎる場合、900nm以上1100nm以下付近の近赤外線吸収が不足してしまう場合がある。この観点から、トルエンで100mg/Lに希釈されて測定される場合のλmaxのシフトの変化量は、15nm以上100nm以下が好ましい。このシフトの変化量を測定する場合の測定条件は、例えば、会合体(X)の場合が下記[測定法1]とされ、溶解状態の場合は下記[測定法2]とされる。
【0087】
本発明に係るジイモニウム色素の会合体(X)の吸収波長領域及び極大吸収波長は、例えば、次の[測定法1]により測定されうる。
【0088】
[測定法1]
ジイモニウム塩化合物を、分散媒中において、少なくとも50mg/L以上の濃度で、0.001μm以上10μm以下の粒子として、浮遊あるいは懸濁している状態(分散状態)において測定された吸光度に基づいて求める。この粒子径は、マイクロトラック粒度分析計によって測定される。具体的には、ジイモニウム塩化合物0.5質量部、トルエン9.5質量部及び粒子径0.3mmのジルコニアビーズ70質量部を50mlのガラス容器に入れ、ペイントシェーカーで2時間振とうした後に、ジルコニアビーズを濾別して、液体L1を得る。この液体L1を、ジイモニウム塩化合物の濃度が100mg/Lとなるようにトルエンで希釈して、ジイモニウム塩分散液L2が得られる。この分散液L2の吸光度が、分光光度計により測定される。この分光光度計として、UV−3100(島津製作所製)が用いられうる。なお、ジイモニウム塩が溶解状態とならない限りにおいて、上記希釈濃度(100mg/L)は適宜変更されてもよい。
【0089】
一方、溶解状態にあるジイモニウム塩化合物の極大吸収波長は、例えば、次の[測定法2]により測定されうる。
【0090】
[測定法2]
上記の[測定法1]で得られた分散液L2をトルエンによって更に希釈し、溶解状態となった時点の溶液が用いられる。溶解状態か否かの確認は、λmaxが短波長側にシフトすること、あるいは、半値幅が狭くなること等により、総合的に判断することができる。トルエンで5mg/L程度まで希釈しても溶解状態とならない場合、トルエンに代えて塩化メチレンで希釈する。この溶液の測定には、分光光度計により測定される。この分光光度計として、UV−3100(島津製作所製)が用いられうる。
【0091】
なお、測定法1及び測定法2において、分散媒は、トルエン以外でもよい。この分散媒として、酢酸エチル、酢酸ブチル及びメチルシクロヘキサンが例示される。
【0092】
ジイモニウム塩化合物は、会合体としてではなく、結晶として分散状態にある場合がある。会合分散状態では、結晶分散状態よりも半値幅が小さい急峻な吸収バンドを示す。半値幅とは、極大吸収波長における吸光度の半分の吸光度を示す波長領域の幅である。結晶分散状態では、溶解状態に対する極大吸収波長の変化量が大きい。結晶分散状態において、トルエンで100mg/Lに希釈された条件下でのλmaxは、1250nmよりも長波長側にシフトする。また結晶分散状態では、極大吸収波長におけるモル吸光係数が40,000mol−1・L・cm−1未満となる。なお、モル吸光係数(mol−1・L・cm−1)とは、濃度が1mol/Lであり且つ光路長が1cmである場合における吸光係数である。一方、溶媒がトルエンである場合、会合状態(会合分散状態)では、この極大吸収波長におけるモル吸光係数が70000mol−1・L・cm−1以上となる。このように、結晶分散状態では、モル吸光係数が低いため、会合状態と比較して、近赤外線吸収能力が劣る。
【0093】
このように、ジイモニウム塩化合物が会合状態であるか又は溶解状態であるかの判別は、分散液(分散状態)で測定された吸収スペクトルと、溶解状態で測定された吸収スペクトルとを比較して、それぞれの極大吸収波長及び極大吸収波長のシフト量に基づき行うことができる。一方、ジイモニウム塩化合物が会合状態であるか又は結晶分散状態であるかの判別は、分散状態において測定された吸収スペクトルの極大吸収波長及びそのモル吸光係数を比較することによりなされる。
【0094】
好ましいジイモニウム色素は、例えば上記製造方法により得られうる。また、市販されているジイモニウム色素としては、日本カーリット社製の商品名「CIR−1085」、日本カーリット社製の商品名「CIR−1085F」、日本化薬社製の商品名「KAYASORB IRG−022」、日本化薬社製の商品名「KAYASORB IRG−023」等が挙げられる。以下、「KAYASORB IRG−022」及び「KAYASORB IRG−023」は、それぞれ単に、「IRG−022」及び「IRG−023」とも称される。
【0095】
ジイモニウム色素は、溶剤(D)中に分散しやすい形態とされるのが好ましい。好ましくは、ジイモニウム色素は、粉砕等により微細化されているのが好ましい。この微細化の方式としては、湿式及び乾式のいずれもが採用されうる。湿式の微細化手法としては、ビーズミルやボールミルの他、液流による微細化、あるいはレーザーや超音波を用いた微細化が採用されうる。乾式の微細化手法としては、ボールミル、アトライターの他、ロールミルや気流による微細化が採用されうる。より好ましくは、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ等の粒子を用いてジイモニウム色素を粉砕する方法が採用されうる。例えば、ジルコニア粒子を用いた粉砕方法として、ジイモニウム色素と、このジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である溶剤(D)と、ジルコニアビーズとを混合した液体を作製し、この液体を容器内で振とうした後、ジルコニアビーズを分離する方法が例示される。
【0096】
3.溶剤(D)
本発明では、ジイモニウム色素を溶剤(D)を含む組成物中に分散させて用いる。好ましくは、本発明では、ジイモニウム色素を溶剤(D)に分散させて用いる。ジイモニウム色素を分散させやすくする観点から、上記溶剤(D)としては、用いられるジイモニウム色素に対する貧溶媒が好ましい。具体的には、用いられるジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である溶剤が好ましい。この溶解度の測定方法は、後述される。
【0097】
具体的な溶剤(D)としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルシクロヘキサン等が好ましく、トルエン及び酢酸エチルが特に好ましい。
【0098】
4.分散体(A)
分散体(A)は、上記溶剤(D)を含む組成物中に上記ジイモニウム色素が分散している液体である。分散体(A)は、ジイモニウム色素と分散媒とを混合してなる。分散媒として、溶剤(D)の他、樹脂が例示される。分散媒は、溶剤(D)と他の化合物との混合物であってもよい。好ましくは、この分散媒は、溶剤(D)を含む。分散体(A)において、ジイモニウム色素は、実質的に溶剤(D)に溶解していない。本願において分散とは、0.001μm以上10μm以下(10−9m〜10−5m)程度の粒子が、溶剤(D)を含む組成物中に浮遊あるいは懸濁している状態を意味する。
【0099】
好ましくは、分散体(A)において、ジイモニウム色素は、会合状態にある。即ち、分散体(A)において、ジイモニウム色素は、上記会合体(X)とされているのが好ましい。
【0100】
ジイモニウム色素が会合状態にある分散体(A)として、後述の合成例で得られる分散体(a)、分散体(b)、分散体(c)及び分散体(d)が例示される。
【0101】
分散装置として、ビーズミル、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル及びローラミルが挙げられ、ビーズミルが好ましい。本発明で利用可能な分散装置は、例えば、特開昭52−92716号公報及び国際公開88/074794号パンフレットに記載されているものが挙げられる。これらの中でも、縦型又は横型の媒体分散装置が好ましい。ジイモニウム塩化合物の分散では、分散媒が用いられなくてもよいが、分散媒の存在下で実施されるのが好ましい。この分散媒として、水及び各種有機溶剤が挙げられ、樹脂(B)との混合の観点から、好ましくは有機溶媒であり、特に好ましくはトルエン、酢酸エチル等である。また、分散媒として界面活性剤が用いられても良い。この界面活性剤として、アニオン界面活性剤、アニオン性ポリマー、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤が挙げられる。このようにして、分散体(A)が得られうる。
【0102】
本願における上記液体(C)は、上記分散体(A)を含む概念である。例えば、液体(C)は、粒子状のジイモニウム色素と、そのジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である溶剤(D)とを混合して得られる。液体(C)には、溶剤(D)及びジイモニウム色素以外の成分(第三の成分)が含まれていてもよい。このように、溶剤(D)の溶解度が小さくされることにより、ジイモニウム色素が分散しやすくなる。この溶解度の測定方法は、後述の通りである。なお、後述するように、この溶剤(D)とは別に、希釈溶剤(E)が用いられてもよい。
【0103】
上記分散体(A)、上記液体(C)又は樹脂(B)には、その性能を損なわない範囲で、種々の添加剤を加えることができる。例えば、ジイモニウム色素分散体の分散性を向上させる目的で、分散剤が添加されうる。この分散剤として、アニオン性、カチオン性又はノニオン性の界面活性剤や高分子系分散剤などが挙げられる。
【0104】
上記分散体(A)又は液体(C)においては、ジイモニウム塩の濃度等によっては、その全てが会合体(X)を形成している場合もあれば、その一部が会合体(X)を形成している場合もある。ジイモニウム塩の一部が会合体(X)である場合、その他のジイモニウム塩は溶解状態及び/又は結晶分散状態である場合がある。いずれにしても、トルエンで100mg/Lに希釈された条件において、極大吸収波長が1110nm以上1250nm以下であり、且つ、極大吸収波長におけるモル吸光係数が70000mol−1・L・cm−1以上であれば、ジイモニウム塩が会合体(X)であると判断することができる。
【0105】
また、分散媒による希釈濃度が高いほど、ジイモニウム塩は分散媒に溶解しにくい。換言すれば、分散媒による希釈濃度が高いほど、ジイモニウム塩の会合体が形成されやすい。トルエンで100mg/Lに希釈された場合に会合体であるジイモニウム塩は、トルエンで100mg/Lよりも高い濃度に希釈された場合も会合体であると考えられる。また一般に、特定の分散媒Sで濃度がB(mg/L)に希釈された場合に会合体であるジイモニウム塩は、この分散媒SでB(mg/L)よりも高い濃度に希釈された場合も会合体であると考えられる。ジイモニウム塩の耐久性の観点から、溶媒S1を分散媒とする分散体(A)又は液体(C)のλmaxは、上記溶媒S1を更に加えて上記分散体(A)又は液体(C)を更に希釈した希釈体のλmaxよりも大きい(長波長である)のが好ましい。この場合、希釈体においてジイモニウム塩が溶解した為、λmaxがシフトしたと考えられる。この溶媒S1として、上記溶剤(D)と同じものが例示される。
【0106】
従来、ジイモニウム塩がPDPフィルター用等の近赤外線吸収組成物として用いる場合、ヘイズ等の観点から、ジイモニウム塩が溶解状態となるように置換基が工夫されている場合が多い。しかしこの場合、近赤外線吸収組成物中におけるジイモニウム色素の耐久性が低下しやすい。特に、粘着剤樹脂(B)中においては、ジイモニウム色素の耐久性の低下が大きい。また、ジイモニウム色素が結晶分散状態で使用された場合、分散安定性が悪く、結晶が粗大となる。この場合、半値幅が大きく且つ極大吸収波長における吸光係数が低い。このため、十分な近赤外線吸収能が得られず、且つ、結晶の粗大さに起因して光が散乱し、白濁が生じやすい。
【0107】
ジイモニウム色素が会合体(X)とされた場合、いわゆる会合体バンドが形成され、半値幅が小さい急峻な吸収バンドが得られる。会合体(X)は、極大吸収波長における吸光係数が高く、優れた近赤外線吸収能を有する。この会合体(X)は、数個から数十個程度の分子によって形成された集合体(分子集合体)であると考えられる。よって、光の散乱が強くなく、透明性に優れる。また、ジイモニウム塩が分解すると、アミニウム塩化合物が生成するが、このアミニウム塩化合物は、可視光線領域(480nm付近)に吸収を有し、黄色を呈するため、近赤外線吸収材の外観を低下させる。会合体(X)は、分子集合体であるため、分子間の相互作用により安定化されており、アミニウム塩化合物が生成しにくい。これに対して、溶解状態は、単分子で分散した状態であるため、分子間の相互作用による安定化がなされない。よって、溶解状態は、会合体(X)と比較して、ジイモニウム色素が分解しやすく、アミニウム塩化合物が生じやすい。このような理由で、会合体(X)は、粘着剤樹脂(B)中においても、耐熱性、耐湿性及び耐光性に優れると考えられる。
【0108】
5.樹脂(B)
本発明に係る樹脂(B)は、ガラス転移温度が0℃以下のものであれば特に限定されない。本発明に係る樹脂(B)は、粘着性を有している。この粘着性は、近赤外線吸収粘着剤組成物と被着体との直接的な接着を可能とする。接着剤を介在させることなく、近赤外線吸収粘着剤組成物と被着体とが接着されうる。以下において、この樹脂(B)を粘着剤樹脂(B)ともいう。
【0109】
5−1.ガラス転移温度
被着体への粘着性を付与する観点から、粘着剤樹脂(B)のガラス転移温度は、0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましく、−20℃以下がより好ましく、さらに好ましくは−30℃以下である。0℃よりも高い場合、粘着性が不足することがある。ガラス転移温度は示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)や動的粘弾性測定により損失正接(tanδ)の極大値温度を求めることでも得られるが、本願にいうガラス転移温度は、下記のFoxの式により求められる計算ガラス転移温度を意味する。樹脂(B)の重合に使用される単量体は、下記式で表されるFoxの式を用いて計算された計算ガラス転移温度Tgが所定の値を満足していれば特に限定されない。
1/(Tg+273)=Σ[Wi/(Tgi+273)] : Foxの式
Tg(℃) : 計算ガラス転移温度
Wi : 各単量体の重量分率
Tgi(℃) : 各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度
【0110】
5−2.酸価
粘着剤樹脂(B)には、被着体との密着性向上および粘着力アップを目的として、アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体が共重合されるのが一般的である。樹脂(B)の酸価が高すぎる場合、ジイモニウム塩の溶解度が増加し、ジイモニウム塩の耐久性(特に耐熱性)が低下しうる。特に耐熱性の観点からは、樹脂(B)の酸価は、300以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。耐湿熱性の観点からは、粘着剤樹脂(B)の酸価は、0以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。「酸価」とは、粘着剤樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg量を言う。
【0111】
例えば、後述される透明基材がガラスである場合、ガラス表面(ガラスと近赤外線吸収粘着剤組成物層との界面)では、次の(反応1)が起こっていると推測されている。ガラス中のNa+イオンは拡散によってガラス表面に出てくると考えられている。このNa+イオンは、近赤外線吸収粘着剤組成物中に存在するH2O(又は粘着剤組成物の塗布前にガラス表面に付着していたH2O)と反応し、NaOHが生成すると考えられる。
(反応1)Na+ + H2O → NaOH + H+(ガラス内部へ)
【0112】
このNaOHは、ジイモニウム塩を劣化させる。樹脂(B)にカルボキシル基が存在する場合、このカルボキシル基がNa+をトラップする。このトラップにより、NaOHの生成が抑制され、ジイモニウム塩の劣化が抑制されると考えられる。特に、耐湿熱性の評価では、H2Oが多く存在するため、上記反応1が起こりやすい。よって、特に耐湿熱性の観点からは、上記酸価は大きいほうが好ましく、具体的には、前述のように、0以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。
【0113】
一方、樹脂(B)の酸価が過度に高い場合、樹脂(B)に対するジイモニウム塩の溶解度が増加し、会合体(X)が減少しやすい。よって、特に高温での耐久性を評価する耐熱性の観点からは、上記酸価は小さいほうが好ましく、具体的には、前述のように、300以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。
【0114】
5−3.計算溶解性パラメータ
粘着剤樹脂(B)の計算溶解性パラメータが高い場合にはジイモニウム色素の耐久性が劣る場合があるため、溶解性パラメータは10.2以下が好ましい。計算溶解性パラメータは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE」(1974年、Vol.14、No.2)の147ページから154ページ記載の方法によって計算される値である。以下にその方法を概説する。
【0115】
単独重合体の溶解性パラメータ(δ)は、該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー(△ei)及びモル体積(△vi)に基づいて、下式の計算法により算出される。
δ=(Σ△ei/Σ△vi)1/2
△ei: i成分の原子または原子団の蒸発エネルギー
△vi: i成分の原子または原子団のモル体積
【0116】
共重合体の溶解性パラメータは、その共重合体を構成する各構成単量体の蒸発エネルギーにモル分率を乗じて合算したもの(Σ△Ei)を、各構成単量体のモル体積にモル分率を乗じて合算したもの(Σ△Vi)で割り、1/2乗をとることで算出される。
【0117】
5−4.共重合体組成
粘着剤樹脂(B)は、共重合体でもよい。粘着剤樹脂(B)は、官能基を含有するモノマーと他の化合物との共重合体であるのが好ましい。更には、ジイモニウム色素の耐久性の観点から、粘着剤樹脂(B)は、脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが5〜40質量%共重合された共重合体であるのが好ましい。ジイモニウム色素の耐久性が向上する理由は不明であるが、これら脂環式、多環性脂環式、芳香環式、多環性芳香環式のアルキル基部分とジイモニウム色素がスタッキング構造を採ることにより、耐熱性や耐湿熱性を向上させるものと考えられる。
【0118】
好ましくは、前記樹脂(B)が、下記単量体(p1)から(p3)を共重合してなる樹脂である。
(p1)炭素数が1以上12以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル
(p2)官能基含有モノマー
(p3)その他共重合可能な単量体
【0119】
単量体の好ましい比率は、(p1)の(メタ)アクリル酸エステルが60質量%以上99.9質量%以下であり、(p2)の官能基含有モノマーが0.1質量%以上20質量%以下であり、(p3)の他の共重合可能な単量体が0質量%以上30質量%以下である。より好ましくは、(p2)の官能基含有モノマーの比率は、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0120】
ジイモニウム色素の耐久性の観点から、より好ましくは、上記単量体(p1)におけるアルキル基は、直鎖型、分岐型及び脂環式のアルキル基である。
【0121】
上記(p1)の(メタ)アクリル酸エステルの例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0122】
上記(p2)の官能基含有モノマーとして、水酸基もしくはカルボキシル基含有モノマーが好ましく、水酸基もしくはカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーがより好ましい。ジイモニウム色素の耐久性の観点から、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが好ましい。カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーのカルボキシル基は架橋点となる。よって、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーの配合量により、粘着性の調整が可能である。また、別の理由により、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーのカルボキシル基は、耐久性の向上に寄与していると考えられる。この理由の詳細は、前述の通りである。
【0123】
カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーとして、アクリル酸及びメタクリル酸が好適に用いられる。
【0124】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの例として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの水酸基は、架橋点となりうる。よって、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、粘着物性の調整に寄与する。上記(p2)が水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの場合、この水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの比率は、モノマー全量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0125】
上記(p3)の、他の共重合可能な単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。他に、上記(p3)の例として、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンなどに代表されるスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどに代表されるビニルエーテル系単量体;フマル酸;フマル酸のモノアルキルエステル;フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸;マレイン酸のモノアルキルエステル;マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸;イタコン酸のモノアルキルエステル;イタコン酸のジアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルケトン;ビニルピリジン;ビニルカルバゾールなどを挙げることができる。また、カルボキシル基、オキサゾリニル基、ピロリドニル基、フルオロアルキル基等の官能基を有する単量体も、本発明の目的を損なわない範囲で共重合してもよい。
【0126】
より好ましい粘着剤樹脂(B)は、下記(m1)から(m4)を共重合してなる樹脂である。
(m1)脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル。
(m2)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル。ただし、このアルキル基は、直鎖型または分岐型であり、このアルキル基の炭素数は1以上10以下である。
(m3)官能基含有モノマー
(m4)その他共重合可能な単量体。
【0127】
共重合体の樹脂(B)において、単量体の好ましい比率は、(m1)の(メタ)アクリル酸エステルが5質量%以上40質量%以下であり、(m2)の(メタ)アクリル酸エステルが60質量%以上95質量%以下であり、(m3)の官能基含有モノマーが0.1質量%以上20質量%以下であり、(m4)のその他の単量体が0質量%以上20質量%以下である。
【0128】
上記(m1)の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0129】
上記(m2)の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0130】
上記(m3)の単量体の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0131】
上記(m4)の単量体の例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンなどに代表されるスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどに代表されるビニルエーテル系単量体;フマル酸;フマル酸のモノアルキルエステル;フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸;マレイン酸のモノアルキルエステル;マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸;イタコン酸のモノアルキルエステル;イタコン酸のジアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルケトン;ビニルピリジン;ビニルカルバゾールなどを挙げることができる。また、カルボキシル基、オキサゾリニル基、ピロリドニル基、フルオロアルキル基等の官能基を有する単量体も、本発明の目的を損なわない範囲で共重合してもよい。
【0132】
粘着剤樹脂(B)の重合に使用される開始剤として、過酸化物系、アゾ系等、市販のものが使用できる。過酸化物系の開始剤としては、パーブチルO、パーヘキシルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシエステル系;パーロイルL、パーロイルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシジカーボネート系;ナイパーBW、ナイパーBMT(いずれも日本油脂製)などのジアシルパーオキサイド系;パーヘキサ3M、パーヘキサMC(いずれも日本油脂製)などのパーオキシケタール系;パーブチルP、パークミルD(いずれも日本油脂製)などのジアルキルパーオキサイド系;パークミルP、パーメンタH(いずれも日本油脂製)などのハイドロパーオキサイド系等が挙げられる。アゾ系の開始剤としてはABN−E、ABN−R、ABN−V(いずれも日本ヒドラジン工業製)等が挙げられる。
【0133】
粘着剤樹脂(B)の重合の際には必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤は特に制約されず、ノルマルドデシルメルカプタン、ジチオグリコール、チオグリコール酸オクチル、メルカプトエタノール等のチオール化合物等が使用できる。
【0134】
また、粘着剤樹脂(B)の重合は無溶剤で行ってもよいし、有機溶剤中で行ってもよい。有機溶剤中で重合する際には、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;その他の公知の有機溶剤が使用できる。使用する有機溶剤の種類は得られる樹脂の溶解性、重合温度を考慮して決められるが、乾燥時の残存溶剤の残りにくさの点からトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の沸点が120℃以下の有機溶剤が好ましい。また、分散体の安定性の観点から、ジイモニウム色素の溶解性が5質量%以下の有機溶剤が好ましい。
【0135】
また、粘着剤樹脂(B)は単一の組成からなるものでもよいし、異なる組成のポリマーを複合化したポリマーアロイやポリマーブレンドであってもよい。
【0136】
分岐型の樹脂を得るためにはマクロモノマー、多官能モノマー、多官能開始剤、多官能連鎖移動剤が使用できる。マクロモノマーとしては、AA−6、AA−2、AS−6、AB−6、AK−5(いずれも東亜合成製)等が使用できる。多官能モノマーとしては、ライトエスエルEG、ライトエスエル1,4BG、ライトエステルNP、ライトエステルTMP(いずれも共栄社化学製)等が挙げられる。多官能開始剤としては、パーテトラA、BTTB−50(いずれも日本油脂製)、トリゴノックス17−40MB、パーカドックス12−XL25(いずれも火薬アクゾ製)等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としてはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が使用できる。
【0137】
6.近赤外線吸収粘着剤組成物
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、ジイモニウム色素を分散させて用いているため、近赤外線吸収能の持続性に優れる。また、この近赤外線吸収粘着剤組成物は、可視領域の透明性に優れる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、粘着性を有する樹脂を含有するので、被着体に対して容易に接着されうる。
【0138】
この近赤外線吸収粘着剤組成物は、ジイモニウム色素が顔料分散系であるにも関わらず、ヘイズに優れうる。好ましくは、この近赤外線吸収粘着剤組成物のヘイズは、5以下であり、より好ましくは3以下である。このヘイズは、後述の実施例で示される方法により測定される。
【0139】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には、他の近赤外線吸収色素が添加されてもよい。併用されうる他の近赤外線吸収色素としては、公知のシアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子等が挙げられる。
【0140】
好ましい他の色素(ジイモニウム色素以外の色素)は、上記ジイモニウム色素に対してクエンチャー効果を奏しうる色素である。クエンチャー効果とは、励起状態にある活性分子を脱励起させる効果である。本発明の場合、ジイモニウム色素分子、ジイモニウムアニオン又はジイモニウムカチオンを脱励起して安定化させる効果を有する他の色素が好ましい。クエンチャー効果の観点から、この他の色素として、フタロシアニン系色素が好ましい。
【0141】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を薄型ディスプレイ用光学フィルターとして使用する場合には、上記のジイモニウム色素とともに最大吸収波長が800〜950nmのフタロシアニン系色素、最大吸収波長が800〜950nmのシアニン系色素または最大吸収波長が800〜950nmの金属ジチオール錯体系色素が併用されるのが好ましい。この併用により、800〜1100nmの近赤外線が効果的に吸収されうる。耐久性の良好な近赤外線吸収粘着剤組成物を得る観点から、フタロシアニン色素が併用されるのが特に好ましい。
【0142】
本発明で使用できるフタロシアニン系化合物としては、近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されず、公知のフタロシアニン系化合物が使用できる。好ましいフタロシアニン系化合物として、下記式(ア)で表される化合物、または下記式(イ)で表される化合物が挙げられる。
【0143】
[式(ア)で示されるフタロシアニン系化合物]
【化9】
【0144】
上記式(ア)において、A1からA16は官能基を表す。上記式(ア)において、A1からA16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアラルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基または置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。A1からA16の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。M1は2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子またはオキシ金属を表す。なお、本明細書において、「アシル基」とは、日刊工業新聞社発行の第三版科学技術用語大辞典の17頁に記載される定義と同様であり、具体的には、有機酸からヒドロキシル基が除去された基であり、式:RCO−(Rは、脂肪基、脂環基または芳香族基である)で表される基である。
【0145】
(末端がアミノ基以外の官能基の場合)
上記式(ア)において、官能基A1からA16のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていても良い炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフチルカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
また、上記式(ア)において、官能基A1からA16のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基または複素環基が置換されている場合、これらの官能基A1からA16に存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0147】
(末端がアミノ基である官能基の場合)
上記式(ア)において、官能基A1からA16の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は0個、1個または2個存在していてもよく、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0148】
上記置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基または置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0149】
また、金属M1としての2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C6H5、Al−C6H4(CH3)、In−C6H5、In−C6H4(CH3)、In−C6H5、Mn(OH)、Mn(OC6H5)、Mn〔OSi(CH3)3〕、Ru−Cl等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。4価の置換金属原子の例としては、CrCl2、SiF2、SiCl2、SiBr2、SiI2、ZrCl2、GeF2、GeCl2、GeBr2、GeI2、SnF2、SnCl2、SnBr2、TiF2、TiCl2、TiBr2、Ge(OH)2、Mn(OH)2、Si(OH)2、Sn(OH)2、Zr(OH)2、Cr(R1)2、Ge(R1)2、Si(R1)2、Sn(R1)2、Ti(R1)2{R1は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}Cr(OR2)2、Ge(OR2)2、Si(OR2)2、Sn(OR2)2、Ti(OR2)2、{R2は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基またはそれらの誘導体を表す}、Sn(SR3)2、Ge(SR3)2{R3は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0150】
[式(イ)で示されるフタロシアニン系化合物]
【化10】
【0151】
上記式(イ)において、B1からB24は官能基を表す。B1からB24のそれぞれは、上記式(ア)においてA1からA16で示された官能基のいずれかである。B1からB24の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。
【0152】
上記式(イ)において、M2は2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子またはオキシ金属を表す。M2の例は、上記式(ア)におけるM1の例と同じであるが、これらに限定されない。
【0153】
具体的なフタロシアニン系化合物として、商品名イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−14、イーエクスカラーIR−906、イーエクスカラーIR−910、TX−EX−820及びTX−EX−915(いずれも日本触媒製)が挙げられる。
【0154】
また、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には近赤外線吸収色素としてシアニン系色素が併用されてもよい。シアニン系色素は近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されないが、インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンと、対アニオンからなる塩が好ましく使用できる。インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンとしては、上記式(a)から(i)で示されるカチオンが好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
【化11】
【0156】
【化12】
【0157】
【化13】
【0158】
【化14】
【0159】
【化15】
【0160】
【化16】
【0161】
【化17】
【0162】
【化18】
【0163】
【化19】
【0164】
インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンの対アニオンは、特に制限されず、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、硫酸イオン、バナジン酸イオン、ホウ酸イオンなどが使用できる。
【0165】
より具体的には、上記一般式(a)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS812MI(対アニオンはヨウ化物イオン);上記一般式(b)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0712(対アニオンはヘキサフルオロリン酸イオン);上記一般式(c)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0726(対アニオンは塩化物イオン);上記一般式(d)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS780MT(対アニオンはp−トルエンスルホン酸イオン);上記一般式(e)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0006(対アニオンは過塩素酸イオン);上記一般式(f)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0081(対アニオンは過塩素酸イオン);上記一般式(g)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0773(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン);上記一般式(h)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0772(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン);上記一般式(i)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0734(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン)等の市販されているものを用いることができる。シアニン系色素を使用することにより可視領域の透明性が高い近赤外線吸収粘着剤組成物が得られる。
【0166】
本発明のジイモニウム色素の配合量、または本発明のジイモニウム色素とその他の近赤外線吸収色素とを合計した配合量は、色素の種類と用途によって適宜選択することが出来る。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を10〜30μmの薄膜として使用する場合、配合量は、樹脂の固形分に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。例えば、ジイモニウム色素とフタロシアニン系色素とを併用する場合、これらの色素を合計した配合量は、樹脂の固形分に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。配合量が0.01質量%未満であると、十分な近赤外線吸収能が達成できなくなる可能性がある。逆に10質量%を超えると、添加に見合う効果が得られず経済的でない上、逆に可視領域での透明性が損なわれる可能性がある。
【0167】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は可視領域の透明性、近赤外線吸収能の持続性、良好な粘着性を特徴とする。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には、必要に応じて可視光を吸収する色素が添加されてもよい。可視光を吸収する色素としては、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ポルフィリン系、テトラアザポルフィリン系、金属ジチオール錯体系、スクアリリウム系、アズレニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯体系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系、ジケトピロロピロール系等、従来公知の色素を広く使用することができる。
【0168】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物をPDP用の光学フィルターとして使用する場合は、不要なネオン発光を吸収するために最大吸収波長が550〜650nmの可視吸収色素を併用するのが好ましい。ネオン発光を吸収する色素の種類は特に限定されないが、シアニン色素、テトラアザポルフィリン色素が使用できる。具体的にはアデカアークルズTY−102(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−14(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−15(旭電化工業社製)、TAP−2(山田化学工業製)、TAP−18(山田化学工業製)、TAP−45(山田化学工業製)、商品名NK−5451(林原生物化学研究所製)、NK−5532(林原生物化学研究所製)、NK−5450(林原生物化学研究所製)等が挙げられる。ネオン発光を吸収するための色素の添加量は、色素の種類によって異なるが、最大吸収波長での透過率が20〜80%程度になるように添加するのが好ましい。
【0169】
また、近赤外線吸収粘着剤組成物からなる薄膜の色調を調整するために、調色用の可視光吸収色素を添加してもよい。調色用の色素の種類は特に限定されないが、1:2クロム錯体、1:2コバルト錯体、銅フタロシアニン、アントラキノン、ジケトピロロピロール等が使用できる。具体的には、オラゾールブルーGN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールブルーBL(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールレッド2B(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールレッドG(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールブラックCN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールイエロー2GLN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールイエロー2RLN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、マイクロリスDPPレッドB−K(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、等が挙げられる。
【0170】
更に、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、必要に応じて、その性能を失わない範囲で希釈溶剤(E)や添加剤、硬化剤を1種または2種以上含んでいてもよい。希釈溶剤(E)により、近赤外線吸収粘着剤組成物のコーティングが容易とされうる。
【0171】
近赤外線吸収粘着剤組成物に含まれうる希釈溶剤(E)は限定されず、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系;トルエン、キシレンなどの芳香族系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;アセトニトリル等のニトリル系;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系等が使用できる。これらの溶剤は、単独で使用されてもよいし、混合して使用されてもよい。ただし、好ましくは、使用されるジイモニウム色素についての溶解度が5質量%以下の溶剤が好ましい。ジイモニウム色素の溶解度が5質量%を超える溶剤を用いた場合、ジイモニウム分散体が溶解してしまう場合がある。
【0172】
なお、本願において、このジイモニウム色素の溶解度は、次の方法により測定される。先ず、ジイモニウム色素の含有割合が0.01質量%、0.1質量%、1.0質量%、2.0質量%及び5.0質量%である5種類のサンプルを調整して、それぞれ超音波攪拌する。次に、各サンプルのそれぞれについて、残渣があるか否かを確認する。残渣は、ろ過後のろ紙上に残渣があるか否かを目視で観察することにより確認する。残渣の有無によって、溶解度が決定される。5.0質量%のサンプル(及び他のサンプル)に残渣が確認されなかった場合、「溶解度が5質量%以上である」と判断される。5.0質量%のサンプル)に残渣が確認された場合、「溶解度が5質量%以下である」と判断される。0.01質量%のサンプル(及び他のサンプル)に残渣が確認された場合、「溶解度が0.01質量%以下である」と判断される。この溶解度は、25℃において測定される。
【0173】
なお、ジイモニウム色素の耐久性の観点からは、希釈溶剤(E)として、酢酸エチル等の沸点が100℃以下の溶剤が好適である。また、コーティング時の塗膜外観を向上させる観点からは、希釈溶剤(E)として、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等の沸点が100〜150℃の溶剤が好適である。塗膜の耐クラック性を向上させる観点からは、希釈溶剤(E)として、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の沸点が150〜200℃の溶剤が好適である。
【0174】
希釈溶剤(E)として、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル及びメチルシクロヘキサンが例示される。ジイモニウム色素の耐久性の観点から、希釈溶剤(E)は、上記溶剤(D)と同じであるのが好ましい。 この観点から、希釈溶剤(E)として、トルエン及び酢酸エチルが特に好ましい。
【0175】
塗工時において、近赤外線吸収粘着剤組成物の粘度は、塗工機の種類によって適宜選択されるが、マイクログラビアコーター等のような小径グラビアキスリバース方式で塗工する場合は1〜1000mPa・s、ダイコーター等押し出し方式で塗工する場合は100〜10000mPa・sが一般的である。近赤外線吸収粘着剤組成物の固形分は塗料粘度に合わせて調整される。
【0176】
また、近赤外線吸収粘着剤組成物が含有しうる添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に使用される従来公知の添加剤が用いられうる。この添加剤として、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収材、光安定化剤、消光剤、硬化剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。なお、硬化剤としてはイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等を使用することができる。
【0177】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、光学用、農業用、建築用または車両用の近赤外線吸収材料、感光紙などの画像記録材料、光ディスク用などの情報記録用材料、色素増感型太陽電池などの太陽電池、半導体レーザー光などを光源とする感光材料、眼精疲労防止材に使用されうる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、特にフィルムやシート状での使用が好ましい。
【0178】
7.近赤外線吸収材
本発明に係る近赤外線吸収材は、前記近赤外線吸収粘着剤組成物を含む。本発明の近赤外線吸収材は、前記近赤外線吸収粘着剤組成物をフィルム状に成形したものであってもよいし、透明基材上に前記近赤外線吸収粘着剤組成物を含む塗膜を積層したものであってもよい。
【0179】
透明基材としては、一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としてはガラス;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のメタクリル系ポリマー;酢酸ビニルやハロゲン化ビニル等のビニル系ポリマー;PET等のポリエステル;ポリカーボネート、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂;ラクトン環含有樹脂フィルム等が挙げられる。更に、該透明基材には、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングが施されてもよい。また、上記透明基材を構成する基材樹脂には、公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等の配合が可能である。上記透明基材は、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法などを用い、フィルムまたはシート状に成形される。かかる透明基材を構成する基材は、未延伸でも延伸されていてもよく、また他の基材と積層されていてもよい。
【0180】
コーティング法で近赤外線吸収フィルムを得る場合の透明基材としてはPETフィルムが好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが好適である。具体的にはコスモシャインA4300(東洋紡績製)、ルミラーU34(東レ製)、メリネックス705(帝人デュポン製)等が挙げられる。また、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム、衝撃吸収フィルム、電磁波シールドフィルム、紫外線吸収フィルムなどの機能性フィルムも透明基材として使用できる。これにより、簡便に薄型ディスプレー用や光半導体素子用の光学フィルターを作製することができる。透明基材は、フィルムであることが好ましい。
【0181】
これらのうち、ガラス、PETフィルム、ラクトン環含有樹脂フィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルム及び電磁波シールドフィルムが透明基材として好ましく使用される。透明基材として、ガラス等の無機基材を使用する場合には、アルカリ成分が少ないものが近赤外線吸収色素の耐久性の観点から好ましい。
【0182】
本発明の近赤外線吸収材の厚みは、一般に0.1μmから10mm程度とされるが、目的に応じて適宜決定される。また近赤外線吸収材に含まれる近赤外線吸収色素の含有量も目的に応じて、適宜決定される。
【0183】
本発明の近赤外線吸収材を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次の方法が利用できる。例えば、(I)樹脂と本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とを混練し、加熱成形して樹脂板又はフィルムを作製する方法;(II)本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とモノマー又はオリゴマーを重合触媒の存在下にキャスト重合し、樹脂板又はフィルムを作製する方法;(III)本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物を上記の透明基材上にコーティングする方法等である。
【0184】
(I)の作製方法としては、用いる樹脂によって加工温度、フィルム化(樹脂板化)条件等が多少異なるが、通常、本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物を樹脂の粉体又はペレットに添加し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、成形して樹脂板を作製する方法、押し出し機によりフィルム化(樹脂板化)する方法等が挙げられる。
【0185】
(II)の作製方法としては、本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とモノマー又はオリゴマーとを重合触媒の存在下にキャスト重合し、それらの混合物を型内に注入し、反応させて硬化させるか、又は金型に流し込んで型内で硬い製品となるまで固化させて成形する方法が挙げられる。多くの樹脂がこの過程で成形可能である。その様な樹脂の具体例としてアクリル樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂、等が挙げられる。その中でも、硬度、耐熱性、耐薬品性に優れたアクリルシートが得られるメタクリル酸メチルの塊状重合によるキャスティング法が好ましい。
【0186】
重合触媒としては公知のラジカル熱重合開始剤が利用でき、例えばベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用量は混合物の総量に対して、一般的に0.01〜5質量%である。熱重合における加熱温度は、一般的に40〜200℃であり、重合時間は一般的に30分〜8時間程度である。また熱重合以外に、光重合開始剤や増感剤を添加して光重合する方法も利用できる。
【0187】
(III)の方法としては、本発明の近赤外吸収材料を透明基材上にコーティングする方法、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を微粒子に固定化し、該微粒子を分散させた塗料を透明基材上にコーティングする方法等がある。
【0188】
基材に近赤外線吸収粘着剤組成物を塗布する際には公知の塗工機が使用できる。例えばコンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。乾燥・硬化方法としては、熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥・硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
【0189】
乾燥方法は特に限定されないが、熱風乾燥や遠赤外線乾燥を用いることができる。乾燥温度は乾燥ラインの長さ、ライン速度、塗布量、残存溶剤量、基材の種類等を考慮して決めればよい。基材がPETフィルムであれば、一般的な乾燥温度は50〜150℃である。1ラインに複数の乾燥機がある場合は、それぞれの乾燥機を異なる温度、風速に設定してもよい。塗工外観の良好な塗膜を得るためには、入り口側の乾燥条件をマイルドにするのが好ましい。
【0190】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、可視領域の透明性及び近赤外線の吸収能が高い優れた光学フィルターの構成材料となりうる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、従来の近赤外線吸収材料と比べて耐久性、特に耐熱性及び耐光性が高いため、長期間の保管や使用でも外観と近赤外線吸収能が維持される。さらに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、シートやフィルム状にするのが容易なため、薄型ディスプレー用や光半導体素子用に有効である。そのほかに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、赤外線をカットする必要があるフィルターやフィルム、例えば農業用フィルム、断熱フィルム、サングラス、光記録材料等にも使用することができる。
【0191】
8.光学フィルター
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は光学フィルターに好適である。この光学フィルターは、前記近赤外線吸収材を用いてなる。この光学フィルターは、光半導体素子用光学フィルターまたは薄型ディスプレー用光学フィルターとして好適である。このような光学フィルターは、可視領域の全光線透過率が40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、波長800〜1100nmの近赤外線の透過率が30%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0192】
本発明の光学フィルターには、上記の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層のほかに、電磁波遮蔽層、反射防止層、ぎらつき防止(アンチグレア)層、傷付き防止層、色調整層、ガラス等の支持体などが設けられていてもよい。
【0193】
光学フィルターの各層の構成は任意に選択すればよい。例えば、好ましくは反射防止層とぎらつき防止層のうち少なくともどちらか一層と、近赤外線吸収層の少なくとも2層を組み合わせた光学フィルターが好適であり、より好ましくは更に電磁波遮蔽層を組み合わせた少なくとも3層を有する光学フィルターである。
【0194】
反射防止層、またはぎらつき防止層が人側の最表層とされるのが好ましい。近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層相互間の積層順序は任意である。また、3層の間には傷付き防止層、色調整層、衝撃吸収層、支持体、透明基材等の他の層が挿入されていてもよい。
【0195】
各層を張り合わせる際にはコロナ処理、プラズマ処理等の物理的な処理をしてもよいし、ポリエチレンイミン、オキサゾリン系ポリマー、ポリエステル、セルロース等の公知の高極性ポリマーをアンカーコート剤として使用してもよい。
【0196】
薄型ディスプレー用光学フィルターには、画面を見やすくするために、反射防止層またはぎらつき防止層を人側の最表層に設けることが好ましい。
【0197】
反射防止層は、表面の反射を抑えて、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止するためのものである。反射防止層は、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがあり、前者の場合の製造方法として、蒸着やスパッタリング法を用いて単層あるいは多層の形態で、透明基材上に反射防止コーティングを形成させる方法がある。また、後者の場合の製造方法として、透明フィルム上に、コンマコーター等のナイフコーター、スロットコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターを用いて透明基材の表面に反射防止コーティングを塗布する方法がある。
【0198】
ぎらつき防止層は、シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粉体をインキ化し、従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に塗布し、熱或いは光硬化させることにより形成される。また、アンチグレア処理したフィルムを該フィルター上に貼りつけてもよい。
【0199】
また、傷付き防止層は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、多官能アクリレート等のアクリレートと光重合開始剤を有機溶剤に溶解或いは分散させた塗布液を従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に、塗布し、乾燥させ、光硬化させることにより形成される。
【0200】
反射防止層またはぎらつき防止層と近赤外線吸収層とを有する光学フィルターは、反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物又は近赤外線吸収材からなる層を積層させることで得られる。積層させる方法としては、フィルム状にした本発明に係る近赤外線吸収層と反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムとを直接張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に直接塗布してもよい。反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に近赤外線吸収層を設ける場合には、紫外線による色素の劣化を抑えるために、透明基材として紫外線吸収フィルムを使用するのが好ましい。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は粘着性を有している。よって、近赤外線吸収層と、他の層とが接着される場合、粘着剤や接着剤が不要とされうる。近赤外線吸収層は、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を含む層である。
【0201】
プラズマディスプレー用光学フィルターには、パネルから発生する電磁波を除去するために、電磁波遮蔽層を設けることが好ましい。
【0202】
電磁波遮蔽層はエッチング、印刷等の手法で金属のメッシュをフィルム上にパターニングしたものを樹脂で平滑化したフィルムや、繊維メッシュの上に金属を蒸着させたものを樹脂中に抱埋したフィルムが使用される。
【0203】
近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層の2層を有する光学フィルターは電磁波防止材料と近赤外線吸収粘着剤組成物とを複合化することで得られる。複合化させる方法としては、フィルム状にした本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物と電磁波遮蔽フィルムを張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を電磁波遮蔽フィルムに直接塗布してもよい。また、フィルム上の金属のメッシュを平滑化する際に本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用することもできる。また、金属を蒸着した繊維を抱埋する際に、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用することもできる。
【0204】
近赤外線吸収層、反射またはぎらつき防止層および電磁波遮蔽層の3層を有する光学フィルターとしては、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収フィルム、反射またはぎらつき防止フィルム、電磁波遮蔽フィルムの3枚を張り合わせたものが使用できる。好ましくは、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収フィルムが、反射またはぎらつき防止フィルムと、電磁波遮蔽フィルムとで挟まれた構造を有する光学フィルターが好ましい。この光学フィルターは、近赤外線吸収フィルムの粘着性を利用して積層されているため、従来フィルム同士の張り合わせのためだけに設けられていた粘着層を省略して製造されうる。必要に応じてガラス等の支持体や色調整フィルム等の機能性フィルムを張り合わせてもよい。
【0205】
光学フィルターの製造工程やフィルム構成をさらに簡略化するためには、複数の機能を有する複合化フィルムを使用するのが良い。好ましい光学フィルターは、1枚のフィルムに電磁波遮蔽層と反射またはぎらつき防止層とを含む複合化フィルムに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収粘着層を張り合わせた光学フィルターである。
【0206】
本発明の薄型ディスプレー用光学フィルターは表示装置から離して設置してもよいし、表示装置に直接貼り付けてもよい。表示装置から離して設置する場合は支持体としてガラスを使用するのが好ましい。表示装置に直接張り合わせる場合にはガラスを使用しない光学フィルターが好ましい。
【0207】
9.薄型ディスプレー
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を積層した光学フィルターを薄型ディスプレーに搭載すると、長期間にわたり良好な画質が維持される。薄型ディスプレーに係る本発明は、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物、本発明の近赤外線吸収材、または本発明の光学フィルターを用いてなる、薄型ディスプレーである。表示体に直接、光学フィルターを張り合わせた薄型ディスプレーはより鮮明な画質が得られる。光学フィルターを直接張り合わせる場合は表示体のガラスが強化ガラスを使用するか、衝撃吸収層を設けた光学フィルターを使用するのが好ましい。
【0208】
本発明の光学フィルターを表示装置に貼り付ける際の粘着剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等のゴム類やポリアクリル酸メチル、ボリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のポリアクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、さらに粘着付与剤としてピッコライト、ポリベール、ロジンエステル等を添加したものを用いてもよい。また、特開2004−263084号公報で示されているように衝撃吸収能を有する粘着剤を使用することができるが、これに限定されるものではない。粘着剤を用いることなく、近赤外線吸収層の粘着性を利用して、本発明の光学フィルターが表示装置に貼り付けられても良い。
【0209】
この粘着層の厚みは、通常5〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。粘着剤層の表面に剥離フィルムを設け、この剥離フィルムにより、光学フィルターを薄型ディスプレーの表面に張り付けるまでの間、粘着剤層を保護し、粘着剤層にゴミ等が付着しないようにするのもよい。この場合、フィルターの縁綾部の粘着剤層と剥離フィルムとの間に、粘着剤層を設けない部分を形成したり非粘着性のフィルムを挟む等して非粘着部分を形成し、この非粘着部分を剥離開始部とすれば、貼着時の作業がやりやすい。
【0210】
衝撃吸収層は表示装置を外部からの衝撃から保護するためのものである。支持体を使用しない光学フィルターで使用するのが好ましい。衝撃吸収材としては特開2004−246365号公報、特開2004−264416号公報に示されているような、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ウレタン系、シリコン系樹脂等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0211】
以下において、実施例により本発明が具体的に説明される。これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお以下の成分比率において、特に説明されない限り、「%」は質量%を意味し、「部」は質量部を意味するものとする。
【0212】
以下に、第一実験例及び第二実験例を示す。
【0213】
[第一実験例]
【0214】
第一実験例において、近赤外線吸収能、耐熱性、耐光性及び酸価の評価方法は以下の通りである。
【0215】
(1)近赤外線吸収能(近赤外線透過率)の評価
試験体をUV−3700(島津製作所製)を使用して、350〜1500nmの透過スペクトルを測定した。近赤外線吸収能は、波長1000nmでの透過率により評価した。下記の表1において、波長1000nmでの透過率は、「1000nm透過率」と表記されている。
【0216】
(2)耐熱性の評価
試験体を80℃の恒温恒湿器中に500時間静置し、試験前後での350〜1500nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。なお、λmaxは、測定された波長範囲において吸光度が最大となる波長を意味し、極大吸収波長とも称される。する。このλmaxは、試験前の測定結果に基づいて決定される。
【0217】
(3)耐光性の評価
スガ試験機社製の「SX2−75 スーパーキセノンウェザーメーター」にて、63℃で且つ50%RHの環境下、試験片に、300〜400nmにおける照射強度が60W/m2である光を100時間照射した。この試験前後のそれぞれにおいて、350〜1500nmの光の透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。
【0218】
前述したように、耐熱性及び耐光性の評価においては、色素残存率(%)が測定された。試験後のλmaxでの吸光度がA1(%)とされ、試験前のλmaxでの吸光度がB1(%)とされるとき、色素残存率P1(%)は下記の式で計算される。
P1=(A1/B1)×100
なお、吸光度は、透過率をT(%)とするとき、下記式により求められる。
吸光度=−log(T/100)
【0219】
(4)ジイモニウム色素の溶解度
5種類のサンプルを用いた前述の測定方法により測定された。
【0220】
(5)酸価の測定
樹脂0.5gを精秤し、トルエン50gを加えて均一に溶解させた。指示薬としてフェノールフタレイン/アルコール溶液を2〜3滴加え、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、液の赤みが約30秒で消えなくなったときを終点とした。このときの滴定量と樹脂の固形分から酸価を求めた。酸価は、樹脂固形分1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmgで表される。
【0221】
製造例1:
モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート(264.6g)、ブチルアクリレート(150g)、シクロヘキシルメタクリレート(180g)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.4g)を秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(1)を得た。
【0222】
160gの酢酸エチルと、300gの重合性モノマー混合物(1)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器及び滴下ロートを備えたフラスコに入れた。また、上記滴下ロートに、300gの重合性モノマー混合物(1)、16gの酢酸エチル及び0.15gのナイパーBMT−K40(重合開始剤、日本油脂社製)を入れ、良く混合して、滴下用混合物(1)とした。
【0223】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を95℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.15g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から30分後に、滴下ロートからの滴下用混合物(1)の滴下を開始した。滴下用混合物(1)は、90分かけて、均等に滴下された。滴下用混合物(1)の滴下終了後、粘度の上昇に応じて酢酸エチルで希釈を適宜行いながら、還流温度を維持しながら6時間熟成を行った。
【0224】
反応終了後、不揮発分が約45%になるように酢酸エチルで反応液を希釈し、計算ガラス転移温度(Tg)が−35℃、計算溶解性パラメータが8.99である樹脂(1)を得た。この樹脂(1)は、粘着剤樹脂であった。樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は42万であり、樹脂(1)の酸価は0であった。
【0225】
製造例2:
486gのブチルアクリレートと、108.6gのメチルメタクリレートと、5.4gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(2)を得た。上記重合性モノマー混合物(1)に代えて、この重合性モノマー混合物(2)が用いられた他は製造例1と同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(2)を得た。樹脂(2)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−35.6℃であり、計算溶解性パラメータが9.84であり、重量平均分子量(Mw)が64万であり、酸価が0であった。
【0226】
製造例3:
570.6gのブチルアクリレートと、24gのアクリル酸と、5.4gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(3)を得た。上記重合性モノマー混合物(1)に代えて、この重合性モノマー混合物(3)が用いられた他は製造例1と同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(3)を得た。樹脂(3)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−50℃であり、計算溶解性パラメータが9.95であり、重量平均分子量(Mw)が82万であり、酸価が31.2であった。
【0227】
分散体の合成例1:
0.5gのIRG−022(日本化薬社製のジイモニウム色素)、9.5gのトルエン及び25gのジルコニアビーズ(粒子径300μm、ニッカトー社製)を50mlのスクリュー管に入れ、ペイントシェーカーで2時間振とうした後、ジルコニアビーズを濾別し、IRG−022粒子を含む分散体(1)を作製した。0.025mmのフローセル(GLサイエンス社製)に分散体(1)を注入し、これを紫外可視吸収スペクトルにより測定して、分散体(1)の透過スペクトルを得た。スペクトルの測定には、UV−3700(島津製作所製)を用いた。得られたスペクトルが図1に示されている。この図1のスペクトルを、IRG−022のMEK溶液の吸収スペクトルと比較すると、図1のスペクトルは、MEK溶液の吸収スペクトルと比較して、λmaxが長波長側にシフトしており、分散体であることが示されている。
【0228】
IRG−022のMEK溶液の吸収スペクトルが図2に示される。この吸収スペクトルは、IRG−022を所定量のメチルエチルケトンに溶解させ、不溶分がないことを確認した後、吸収スペクトルを測定して得た。スペクトルの測定には、UV−3700(島津製作所製)が用いられ、測定セルとして、光路長10mmの石英製セルが使用された。
【0229】
分散体の合成例2:
IRG−022に代えてIRG−023(日本化薬社製のジイモニウム色素)を用いた他は合成例1と同様にして、分散体(2)を得た。この分散体(2)は、IRG−023粒子を含む液体である。0.025mmのフローセル(GLサイエンス社製)に分散体(2)を注入し、これを紫外可視吸収スペクトルにより測定して、分散体(2)の透過スペクトルを得た。スペクトルの測定には、UV−3700(島津製作所製)が用いられた。得られたスペクトルが図3に示されている。
【0230】
なお、IRG−023のMEK溶液の吸収スペクトルが図4に示される。この吸収スペクトルは、IRG−023を所定量のメチルエチルケトンに溶解させ、不溶分がないことを確認した後、吸収スペクトルを測定して得た。スペクトルの測定には、UV−3700(島津製作所製)が用いられ、測定セルとして、光路長10mmの石英製セルが使用された。
【0231】
分散体の合成例3:
IRG−022に代えてCIR−1085F(日本カーリット社製のジイモニウム色素)を用いた他は合成例1と同様にして、分散体(3)を得た。この分散体(3)は、CIR−1085F粒子を含む液体である。
【0232】
[実施例1]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をトルエンに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズをトルエンに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液1を調整した。製造例1で得られた樹脂(1)、合成例1で得られた分散体(1)、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物A1を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1)/分散体(1)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0233】
近赤外線吸収粘着剤組成物A1をアプリケーターにて、易接着処理PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)上に塗工した。塗工時の厚みは、乾燥後の粘着剤組成物層の厚みが25μmとなるように設定した。次いで、100℃の熱風循環オーブン中にて2分間乾燥させた。この粘着剤組成物A1からなる層に離型フィルム(シリコン処理されたPETフィルム)を張り合わせた後、23℃で7日間養生させて、近赤外線吸収材B1を得た。離型フィルムを剥がした後、この近赤外線吸収材B1をガラス板に貼り付けて、実施例1に係る試験体を得た。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性及び耐光性の評価を行った。この評価結果が下記の表1に示される。
【0234】
[実施例2]
上記分散体(1)に代えて分散体(2)が用いられた他は実施例1と同様にして、実施例2に係る試験体を得た。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性及び耐光性の評価を行った。この評価結果が下記の表1に示される。
【0235】
[実施例3]
上記分散体(1)に代えて分散体(3)が用いられた他は実施例1と同様にして、実施例3に係る試験体を得た。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性及び耐光性の評価を行った。この評価結果が下記の表1に示される。
【0236】
[実施例4]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−10A」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−10A」が5質量%となるようにして、IR−10A溶液を調整した。製造例1で得られた樹脂(1)、合成例1で得られた分散体(1)、上記IR−10A溶液、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1/1/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物A5を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1)/分散体(1)/IR−10A溶液/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物A1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物A5を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0237】
[実施例5]
樹脂(1)に代えて、製造例2で得られた樹脂(2)を用いた他は、実施例1と同様にして、実施例5に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0238】
[実施例6]
樹脂(1)に代えて、製造例3で得られた樹脂(3)を用いた他は、実施例1と同様にして、実施例6に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0239】
[実施例7]
希釈溶剤(E)としてのトルエンがメチルエチルケトンに変更された他は実施例1と同様にして、実施例7に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0240】
[比較例1]
IRG−022(日本化薬社製)をメチルエチルケトンに溶解して、IRG−022を5質量%含むジイモニウム溶液1を調整した。製造例1で得られた樹脂(1)、ジイモニウム溶液1、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物A3を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1)/ジイモニウム溶液1/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物A1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物A3を用いた他は実施例1と同様にして、比較例1に係る試験体を得た。この試験体について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0241】
[比較例2]
IRG−023(日本化薬社製)をメチルエチルケトンに溶解して、IRG−023を5質量%含むジイモニウム溶液2を調整した。製造例1で得られた樹脂(1)、ジイモニウム溶液2、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物A4を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1)/ジイモニウム溶液2/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物A1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物A4を用いた他は実施例1と同様にして、比較例2に係る試験体Th2を得た。この試験体Th2について、実施例1と同様の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0242】
なお、下記の表1において、メチルエチルケトンが、「MEK」と表記されている。
【0243】
【表1】
【0244】
なお、トルエンにおけるIRG−022の溶解度は0.1質量%以下であり、トルエンにおけるIRG−023の溶解度は0.1質量%以下であり、メチルエチルケトンにおけるIRG−022の溶解度は5質量%以上であり、メチルエチルケトンにおけるIRG−023の溶解度は5質量%以上であり、トルエンにおけるCIR−1085Fの溶解度は0.01質量%以下であった。
【0245】
実施例1の試験体の透過スペクトルが、図5で示される。図5には、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後の透過スペクトルが示されている。実施例2の試験体の透過スペクトルが、図6で示される。図6には、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後の透過スペクトルが示されている。比較例1の試験体の透過スペクトルが、図7で示される。図7には、試験前、耐熱性試験後及び耐光性試験後の透過スペクトルが示されている。
【0246】
次に、第二実験例について説明する。
【0247】
[第二実験例]
【0248】
第二実験例における評価方法は以下の通りである。
【0249】
(1)溶解度、計算ガラス転移点Tg、計算溶解性パラメータ及び酸価の評価
前述の通りとされた。
【0250】
(2)ヘイズの評価
ヘイズの測定は、濁度計NDH2000(日本電色工業製)にて行った。試験体の3箇所のヘイズを測定し、それらの平均値を採用した。
【0251】
(3)耐熱試験
試験体を80℃の恒温恒湿器中に1000時間静置し、試験前後での350〜1500nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。また試験後のヘイズから試験前のヘイズを引くことにより、△Hzを算出した。なお、λmaxは、測定された波長範囲において吸光度が最大となる波長を意味する。このλmaxは、試験前の測定結果に基づいて決定される。
【0252】
(4)耐湿熱性の評価
試験体を60℃で且つ90%RHの恒温恒湿器中に1000時間静置し、試験前後での350〜1500nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。また試験後のヘイズから試験前のヘイズを引くことにより、△Hzを算出した。なお、λmaxは、測定された波長範囲において吸光度が最大となる波長を意味する。このλmaxは、試験前の測定結果に基づいて決定される。
【0253】
(5)耐光性の評価
スガ試験機社製の「SX2−75 スーパーキセノンウェザーメーター」にて、63℃で且つ50%RHの環境下、試験片に、300〜400nmにおける照射強度が60W/m2である光を100時間照射した。この試験前後のそれぞれにおいて、350〜1500nmの光の透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、λmaxにおける色素残存率(%)を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。また試験後のヘイズから試験前のヘイズを引くことにより、△Hzを算出した。なお、λmaxは、測定された波長範囲において吸光度が最大となる波長を意味する。このλmaxは、試験前の測定結果に基づいて決定される。
【0254】
前述したように、耐熱性、耐湿熱性及び耐光性の評価においては、色素残存率(%)が測定された。この測定方法は、[第一実験例]と同じである。
【0255】
(6)モル吸光係数
測定された吸光度を、濃度が1g/Lの場合の吸光度に換算して、換算吸光度を得る。この換算吸光度に、測定された化合物(ジイモニウム色素)の分子量をかけた値が、モル吸光係数である。λmaxにおけるモル吸光係数が下記の例で示される。
【0256】
製造例1a:
モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート(360.6g)、ブチルアクリレート(60g)、シクロヘキシルメタクリレート(156g)、アクリル酸(18g)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.4g)を秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(1a)を得た。
【0257】
160gの酢酸エチルと、300gの重合性モノマー混合物(1a)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器及び滴下ロートを備えたフラスコに入れた。また、上記滴下ロートに、300gの重合性モノマー混合物(1a)、16gの酢酸エチル及び0.15gのナイパーBMT−K40(重合開始剤、日本油脂社製)を入れ、良く混合して、滴下用混合物(1a)とした。
【0258】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を95℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.15g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から30分後に、滴下ロートからの滴下用混合物(1a)の滴下を開始した。滴下用混合物(1a)は、90分かけて、均等に滴下された。滴下用混合物(1a)の滴下終了後、粘度の上昇に応じて酢酸エチルで希釈を適宜行いながら、還流温度を維持しながら6時間熟成を行った。
【0259】
反応終了後、不揮発分が約45%になるように酢酸エチルで反応液を希釈し、計算ガラス転移温度(Tg)が−38.5℃、計算溶解性パラメータが9.08である樹脂(1a)を得た。この樹脂(1a)は、粘着剤樹脂であった。樹脂(1a)の重量平均分子量(Mw)は43万であり、樹脂(1a)の酸価は23.4であった。
【0260】
製造例2a:
312gの2−エチルヘキシルアクリレートと、132gのブチルアクリレートと、120gのシクロヘキシルメタクリレートと、36gのアクリル酸とを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(2a)を得た。上記重合性モノマー混合物(1a)に代えて、この重合性モノマー混合物(2a)が用いられた他は製造例1aと同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(2a)を得た。樹脂(2a)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−39.9℃であり、計算溶解性パラメータが9.31であり、重量平均分子量(Mw)が51万であり、酸価が46.8であった。
【0261】
製造例3a:
上記製造例1と同様にして、樹脂(3a)を得た。この樹脂(3a)は、上記樹脂(1)と同じである。
【0262】
製造例4a:
507.6gのブチルアクリレートと、90.6gのメチルメタクリレートと、1.8gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(4a)を得た。上記重合性モノマー混合物(1a)に代えて、この重合性モノマー混合物(4a)が用いられた他は製造例1aと同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(4a)を得た。樹脂(4a)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−40.0℃であり、計算溶解性パラメータが9.80であり、重量平均分子量(Mw)が68万であり、酸価が0であった。
【0263】
製造例5a:
502.9gのブチルアクリレートと、31.1gのメチルメタクリレートと、48gのアクリル酸と、18gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(5a)を得た。上記重合性モノマー混合物(1a)に代えて、この重合性モノマー混合物(5a)が用いられた他は製造例1aと同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(5a)を得た。樹脂(5a)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−40.9℃であり、計算溶解性パラメータが10.19であり、重量平均分子量(Mw)が128万であり、酸価が62.3であった。
【0264】
製造例6a:
495.1gのブチルアクリレートと、74.9gのメチルメタクリレートと、30gの2−ヒドロキシエチルアクリレートとを秤量し、十分に混合して、重合性モノマー混合物(6a)を得た。上記重合性モノマー混合物(1a)に代えて、この重合性モノマー混合物(6a)が用いられた他は製造例1aと同様にして、粘着剤樹脂としての樹脂(6a)を得た。樹脂(6a)は、計算ガラス転移温度(Tg)が−40.9℃であり、計算溶解性パラメータが10.00であり、重量平均分子量(Mw)が95万であり、酸価が0であった。
【0265】
製造例1aから6aの配合と評価結果が下記の表2に示される。
【0266】
【表2】
【0267】
合成例1a:
100質量部のDMFに、10質量部のN,N,N’,N’−テトラキス−(p−アミノフェニル)−p−フェニレンジアミン、63質量部のシクロヘキシルメチルヨーダイド及び30質量部の炭酸カリウムを加え、120℃で10時間反応させた。次に、この反応液を500質量部の水に加え、生じた沈殿を濾過し、500質量部のメチルアルコールで洗浄後、100℃で乾燥して、24.1部のN,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンを得た。
【0268】
この24.1部のN,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンに、200質量部のDMFと、7.9質量部のヘキサフルオロリン酸銀を加え、60℃で3時間反応させ、生成した銀を濾別した。次に、得られた濾液に200質量部の水を加え、生成した沈殿を濾過し、乾燥させて、27.0質量部のヘキサフルオロリン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウムを得た。以下、このジイモニウム塩が、ジイモニウム塩(a)とも称される。酢酸エチル中におけるジイモニウム塩(a)の溶解度は、0.01質量%以下であった。
【0269】
0.5質量部のジイモニウム塩(a)、9.5質量部の酢酸エチル及び70質量部のジルコニアビーズ(粒径0.3mm)を50mlのガラス容器に入れ、ペイントシェーカーで2時間振とうした後、ジルコニアビーズを濾別し、色素濃度を2質量%に調整して、液状の分散体(a)を得た。
【0270】
ジイモニウム塩(a)の濃度が100mg/L、50mg/L、10mg/L及び5mg/Lのそれぞれとなるように、分散体(a)を酢酸エチルで希釈した。これらの4種類の希釈液のそれぞれについて、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図8に示される。この100mg/Lの希釈液の極大吸収波長(λmax)は1093nmであった。また、この100mg/Lの希釈液のλmaxにおけるモル吸光係数は、75300(mol−1・L・cm−1)であった。
【0271】
分散媒が酢酸エチルの場合、ジイモニウム塩が会合体である場合の極大吸収波長(λmax)は、分散媒がトルエンの場合とは相違する。なお、ジイモニウム塩が分散体(a)と同一であり、且つ、分散媒がトルエンである分散体(b)(後述)においてジイモニウム色素が会合状態にあることを考慮すると、分散体(a)においても、ジイモニウム塩(a)は会合体であると考えられる。
【0272】
合成例2a:
分散溶媒が酢酸エチルからトルエンに変更された他は合成例1aと同様にして、液状の分散体(b)を得た。トルエン中におけるジイモニウム塩(a)の溶解度は、0.01質量%以下であった。ジイモニウム塩(a)の濃度が100mg/L、50mg/L、20mg/L及び5mg/Lのそれぞれとなるように、分散体(b)をトルエンで希釈した。これらの4種類の希釈液のそれぞれについて、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図9に示される。この100mg/Lの希釈液の極大吸収波長(λmax)は1119nmであった。また、この100mg/Lの希釈液のλmaxにおけるモル吸光係数は、103634(mol−1・L・cm−1)であり、70000mol−1・L・cm−1以上であった。
【0273】
このように、上記分散体(b)よりも低い濃度(100mg/L)において、ジイモニウム塩(a)が会合状態であることが確認された。よって、トルエンによる希釈濃度がより高い分散体(b)においても、ジイモニウム色素(a)は会合状態にあると考えられる。
【0274】
また、分散体(b)に、更にトルエンを加え、ジイモニウム塩が溶解状態になるまで希釈して、希釈体(b)を得た。この希釈体(b)の極大吸収波長(λmax)は、1094nmであり、1119nmよりも小さい値であった。
【0275】
合成例3a:
合成例1aで用いられた63質量部のシクロヘキシルメチルヨーダイドに代えて、同じモル数の1−ヨード−3−フルオロプロパンを用いた他は合成例1aと同様にして、ヘキサフルオロリン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(3−フルオロプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウムを得た。以下、このジイモニウム塩が、ジイモニウム塩(c)とも称される。このジイモニウム塩(c)を用いた他は、合成例2aと同様にして、液状の分散体(c)を得た。トルエン中におけるジイモニウム塩(c)の溶解度は、0.01質量%以下であった。
【0276】
ジイモニウム塩(c)の濃度が100mg/L、50mg/L、20mg/L及び5mg/Lのそれぞれとなるように、分散体(c)をトルエンで希釈した。これらの4種類の希釈液のそれぞれについて、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図10に示される。この100mg/Lの希釈液の極大吸収波長(λmax)は1120nmであった。また、この100mg/Lの希釈液のλmaxにおけるモル吸光係数は、83775(mol−1・L・cm−1)であり、70000mol−1・L・cm−1以上であった。
【0277】
このように、上記分散体(c)よりも低い濃度(100mg/L)において、ジイモニウム塩(c)が会合状態であることが確認された。よって、トルエンによる希釈濃度がより高い分散体(c)においても、ジイモニウム色素(c)は会合状態にあると考えられる。
【0278】
このジイモニウム塩(c)は、トルエンに対してほどんど不溶であったため、分散媒をトルエンから塩化メチレンに変更し、濃度が10mg/Lとなるように希釈して、ジイモニウム塩(c)が溶解した希釈体(c)を得た。この希釈体(c)について、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図11に示される。この希釈体(c)の極大吸収波長(λmax)は、1050nmであり、1120nmよりも小さい値であった。
【0279】
合成例4a:
合成例1aで用いられた63質量部のシクロヘキシルメチルヨーダイドに代えて、同じモル数のイソブチルヨーダイドを用いた他は合成例1aと同様にして、ヘキサフルオロリン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(イソブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウムを得た。以下、このジイモニウム塩が、ジイモニウム塩(d)とも称される。このジイモニウム塩(d)を用いた他は、合成例2aと同様にして、液状の分散体(d)を得た。トルエン中におけるジイモニウム塩(d)の溶解度は、0.01質量%以下であった。
【0280】
ジイモニウム塩(d)の濃度が100mg/L、50mg/L、20mg/L及び5mg/Lのそれぞれとなるように、分散体(d)をトルエンで希釈した。これらの4種類の希釈液のそれぞれについて、吸光度を測定し、モル吸光係数に変換したスペクトルが、図12に示される。この100mg/Lの希釈液の極大吸収波長(λmax)は1220nmであった。また、この100mg/Lの希釈液のλmaxにおけるモル吸光係数は、112693(mol−1・L・cm−1)であり、70000mol−1・L・cm−1以上であった。
【0281】
このように、上記分散体(d)よりも低い濃度(100mg/L)において、ジイモニウム塩(d)が会合状態であることが確認された。よって、トルエンによる希釈濃度がより高い分散体(d)においても、ジイモニウム色素(d)は会合状態にあると考えられる。
【0282】
また、分散体(d)に、更にトルエンを加え、ジイモニウム塩が溶解状態になるまで希釈して、希釈体(d)を得た。この希釈体(d)の極大吸収波長(λmax)は、1081nmであり、1220nmよりも小さい値であった。
【0283】
合成例1aから4aで合成されたジイモニウム塩及び分散体の一覧が、下記の表3に示される。
【0284】
【表3】
【0285】
[実施例1a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)を酢酸エチルに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例1aで得られた分散体(a)及び架橋剤溶液1を、固形分重量比で100/1.0/0.5となるように混合し、固形分が25%となるように酢酸エチルで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(a)/架橋剤溶液1)の順で表記されている。
【0286】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1をアプリケーターにて、易接着処理PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)上に塗工した。塗工時の厚みは、乾燥後の粘着剤組成物層の厚みが25μmとなるように設定した。次いで、100℃の熱風循環オーブン中にて2分間乾燥させた。この粘着剤組成物Aa1からなる層に離型フィルム(シリコン処理されたPETフィルム)を張り合わせた後、23℃で7日間養生させて、近赤外線吸収材Ba1を得た。離型フィルムを剥がした後、この近赤外線吸収材Ba1をガラス板に貼り付けて、実施例1aに係る試験体Z1を得た。この試験体Z1について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0287】
[実施例2a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−14」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−14」が5質量%となるようにして、IR−14溶液を調整した。また、フタロシアニン色素である「イーエクスカラーTX−EX−820」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーTX−EX−820」が5質量%となるようにして、TX−EX−820溶液を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例1aで得られた分散体(a)、上記IR−14溶液、上記TX−EX−820溶液及び架橋剤溶液1を固形分重量比で100/1.1/0.35/0.17/0.5となるように混合し、固形分が25%となるように酢酸エチルで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa2を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(a)/IR−14溶液/TX−EX−820溶液/架橋剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Aa2が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例2aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0288】
[実施例3a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−14」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−14」が5質量%となるようにして、IR−14溶液を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例2aで得られた分散体(b)、上記IR−14溶液及び架橋剤溶液1を固形分重量比で100/1.3/0.7/0.25となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa3を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(b)/IR−14溶液/架橋剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Aa3が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例3aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0289】
[実施例4a]
樹脂(1a)に代えて、製造例2aで得られた樹脂(2a)が用いられた他は実施例2aと同様にして、実施例4aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0290】
[実施例5a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)を酢酸エチルに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズを酢酸エチルに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液2を調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例1aで得られた分散体(a)、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液2を、固形分重量比で100/1.0/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるように酢酸エチルで希釈して、実施例5aに係る近赤外線吸収粘着剤組成物Aa5を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(a)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液2)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えてこの近赤外線吸収粘着剤組成物Aa5が用いられた他は実施例1aと同様にして、実施例5aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0291】
[実施例6a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)を酢酸エチルに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズを酢酸エチルに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液2を調整した。製造例4aで得られた樹脂(4a)、合成例1aで得られた分散体(a)、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液2を、固形分重量比で100/1.0/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるように酢酸エチルで希釈して、実施例6aに係る近赤外線吸収粘着剤組成物Aa6を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(4a)/分散体(a)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液2)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えてこの近赤外線吸収粘着剤組成物Aa6が用いられた他は実施例1aと同様にして、実施例6aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0292】
[実施例7a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をトルエンに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例3aで得られた分散体(c)及び架橋剤溶液1を、固形分重量比で100/1.3/0.5となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa7を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(c)/架橋剤溶液1)の順で表記されている。
【0293】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Aa7が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例7aに係る試験体を得た。この試験体について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表4に示される。
【0294】
[実施例8a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をトルエンに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズをトルエンに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液1を調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例3aで得られた分散体(c)、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1.3/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa8を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(c)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0295】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Aa8が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例8aに係る試験体を得た。この試験体について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0296】
[実施例9a]
樹脂(1a)に代えて、製造例5aで得られた樹脂(5a)が用いられた他は実施例7aと同様にして、実施例9aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0297】
[実施例10a]
架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をトルエンに溶解して、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリン酸ジ−n−ブチルスズをトルエンに溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液1を調整した。製造例6aで得られた樹脂(6a)、合成例3aで得られた分散体(c)、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を、固形分重量比で100/1.3/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa10を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(6a)/分散体(c)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0298】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Aa10が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例10aに係る試験体を得た。この試験体について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0299】
[実施例11a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−10A」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−10A」が5質量%となるようにして、IR−10A溶液を調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例4aで得られた分散体(d)、上記IR−10A溶液、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/1.0/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa11を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(d)/IR−10A溶液/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Aa11が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例11aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0300】
[実施例12a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−14」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−14」が5質量%となるようにして、IR−14溶液を調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、合成例4aで得られた分散体(d)、上記IR−14溶液および架橋剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/1.0/0.25となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa12を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/分散体(d)/IR−14溶液/架橋剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Aa12が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例12aに係る試験体を得た。この試験体について、実施例1aと同様の評価を行った。この評価結果が下記の表5に示される。
【0301】
[実施例13a]
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−14」(日本触媒製)にトルエンを加え、「イーエクスカラーIR−14」が5質量%となるようにして、IR−14溶液を調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例2で得られた分散体(2)、上記IR−14溶液、上記架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/2.0/0.45/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Aa13を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(2)/IR−14溶液/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0302】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Aa13が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実施例13aに係る試験体を得た。この試験体について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表6に示される。
【0303】
[比較例1a]
合成例1aで得られたジイモニウム塩(a)をメチルエチルケトンで希釈して1質量%の濃度とし、ジイモニウム塩(a)が溶解したジイモニウム塩溶液h1aを調整した。製造例1aで得られた樹脂(1a)、ジイモニウム塩溶液h1a及び上記架橋剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/0.5となるように混合し、固形分が25%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Ah1aを得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(1a)/ジイモニウム塩溶液h1a/架橋剤溶液1)の順で表記されている。
【0304】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Ah1aが用いられた他は、実施例1aと同様にして、比較例1aに係る試験体T1を得た。この試験体T1について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表6に示される。
【0305】
[比較例2a]
合成例4aで得られたジイモニウム塩(d)をメチルエチルケトンで希釈して1質量%の濃度とし、ジイモニウム塩(d)が溶解したジイモニウム塩溶液h2aを調整した。製造例3aで得られた樹脂(3a)、ジイモニウム塩溶液h2a、上記架橋剤溶液1及び上記架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/0.5/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Ah2aを得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/ジイモニウム塩溶液h2a/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。
【0306】
近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物Ah2aが用いられた他は、実施例1aと同様にして、比較例2aに係る試験体T2を得た。この試験体T2について、耐熱試験、耐湿熱試験及び耐光試験を行った。この評価結果が下記の表6に示される。
【0307】
【表4】
【0308】
【表5】
【0309】
【表6】
【0310】
なお、近赤外線吸収粘着剤組成物中におけるジイモニウム塩の状態を確認するため、以下の実験例1及び実験例2を行った。
【0311】
[実験例1]
実施例1aで得られた近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1を内径0.1mmのセルに入れて透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1123nmであった。この組成物Aa1の透過スペクトルが図13に示される。また、上記近赤外線吸収材Ba1をガラス板に貼り付けて得られた上記試験体Z1について、透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1169nmであった。この試験体Z1の透過スペクトルが図14に示される。
【0312】
一方、上記比較例1aで得られた近赤外線吸収粘着剤組成物Ah1aを内径0.1mmのセルに入れて透過スペクトルを測定したところ、λmaxは978nmであった。また、比較例1aに係る上記試験体T1について透過スペクトルを測定したところ、λmaxは959nmであった。このように、分散体(a)を用いた近赤外線吸収粘着剤組成物では、ジイモニウム塩(a)の溶解液を用いた組成物と比較して、λmaxが長波長側にシフトしている。このように、上記実施例の近赤外線吸収粘着剤組成物及び近赤外線吸収材では、ジイモニウム塩が会合状態にあることが示唆される。
【0313】
[実験例2]
製造例3aで得られた樹脂(3a)、合成例4aで得られた分散体(d)、架橋剤溶液1および架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.0/0.25/0.05となるように混合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して、近赤外線吸収粘着剤組成物Az2を得た。なお、この固形分重量比は、(樹脂(3a)/分散体(d)/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物Aa1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物Az2が用いられた他は、実施例1aと同様にして、実験例2に係る試験体Z2を得た。
【0314】
この近赤外線吸収粘着剤組成物Az2を内径0.1mmのセルに入れて透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1255nmであった。この組成物Az2の透過スペクトルが、図15に示される。また、上記試験体Z2について、透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1245nmであった。この試験体Z2の透過スペクトルが、図16に示される。
【0315】
一方、上記比較例2aで得られた近赤外線吸収粘着剤組成物Ah2aについて、内径0.1mmのセルに入れて透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1052nmであった。また、上記比較例2aに係る試験体T2の透過スペクトルを測定したところ、λmaxは1011nmであった。このように、実験例2の結果からも、近赤外線吸収粘着剤組成物中におけるジイモニウム塩のλmaxが長波長側へシフトしていることが確認された。
【0316】
[実施例8]
1.重合性ポリシロキサン(M−1)の合成
攪拌機、温度計および冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコにテトラメトキシシラン144.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6部、水19.0部、メタノール30.0部およびアンバーリスト15(商品名:オルガノ社製の陽イオン交換樹脂)5.0部を入れ、65℃で2時間攪拌し、反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、常圧下でフラスコ内温約80℃まで2時間かけて昇温し、メタノールが流出しなくなるまで同温度で保持した。さらに、2.67×10kPaの圧力下90℃の温度で、メタノールが流出しなくなるまで保持し、反応を更に進行させた。再び、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾過し、数平均分子量が1,800の重合性ポリシロキサン(M−1)を得た。
【0317】
2.有機ポリマー(P−1)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管およびN2ガス導入口を備えた1リットルのフラスコに、有機溶剤として酢酸n−ブチル260部を入れ、N2ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を110℃まで加熱した。ついで重合性ポリシロキサン(M−1)12部、tert−ブチルメタクリレート19部、ブチルアクリレート94部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート67部、パーフルオトオクチルエチルメタクリレート(ライトエステルFM−108、共栄社化学社製)48部および2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)2.5部を混合した溶液が、滴下口より3時間かけて滴下された。滴下後も同温度で1時間攪拌を続けた後、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.1部を30分おきに2回添加し、さらに2時間加熱して共重合を行なった。その結果、数平均分子量が12,000であり重量平均分子量が27,000である有機ポリマー(P−1)が酢酸n−ブチルに溶解した溶液を得た。得られた溶液の固形分は48.2%であった。
【0318】
3.有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)の合成
攪拌機、2つの滴下口(滴下口αと滴下口β)、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、酢酸n−ブチル200部およびメタノール500部を入れておき、内温を40℃に調整した。ついでフラスコ内を攪拌しながら、有機ポリマー(P−1)の酢酸n−ブチル溶液10g、テトラメトキシシラン30部および酢酸n−ブチル5部の混合液(原料液A)を滴下口αから2時間かけて滴下すると同時に、25%アンモニア水5部、脱イオン水10部およびメタノール15部の混合液(原料液B)を滴下口βから2時間かけて滴下した。滴下後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、40kPaの圧力下、フラスコ内温を100℃まで昇温し、アンモニア、メタノールおよび酢酸n−ブチルを固形分が30%となるまで留去して、有機ポリマー複合無機微粒子が酢酸n−ブチルに分散した分散体(S−1)を得た。この分散体(S−1)において、上記有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子と有機ポリマーとの比率は、70/30であった。この比率は、重量比である。得られた有機ポリマー複合無機微粒子の平均粒子径は23.9nmであった。なお、有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子と有機ポリマーの比率は、有機ポリマー複合微粒子分散体を1.33×10kPaの圧力下、130℃で24時間乾燥したものについて元素分析を行ない、灰分を有機ポリマー複合無機微粒子含有量として求めた。また、平均粒子径は、有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)1部を酢酸n−ブチル99部で希釈した溶液を用いて、透過型電子顕微鏡により粒子を撮影し、任意の100個の粒子の直径を読み取り、その平均を平均粒子径として求めた。
【0319】
4.反射防止フィルム
ジぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPE−6A、共栄社化学社製)8部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(PE−3A、共栄社化学社製)2部を混合し、メチルエチルケトン40部に溶解した溶液を作製した。この溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.5部をメチルエチルケトン2部に溶解した溶液を加え、ハードコート層塗布液を調製した。
【0320】
有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)9部、デスモジュールN3200(商品名、住化バイエルウレタン社製のイソシアネート硬化剤)0.3部、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.003部およびメチルイソブチルケトン110部を混合し、低屈折率層塗布液を調製した。
【0321】
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡績社製)に上記ハードコート層塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、塗布層hを得た。この塗布層hを、100℃で15分乾燥した後、高圧水銀灯で200mJ/cm2の紫外線を照射することにより硬化させ、膜厚5μmのハードコート層を形成した。このハードコート層の上に上記低屈折率塗布液をバーコーターを用いて塗布し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に反射防止膜を作成した。
【0322】
フィルムの反射防止膜側とは反対側の面をスチールウールで粗面化した。この粗面化された面に黒インキを塗った。反射防止膜側の面の入射角5°における鏡面反射スペクトルを紫外可視分光光度計(UV−3100、島津製作所製)を用いて測定し、反射率が最小値を示す波長およびその波長における反射率(最小反射率)を求めた。得られた反射防止フィルムにおいて、反射率が最小値を示す波長は波長550nmであり、その波長における反射率(最小反射率)は0.45%であった。
【0323】
5.光学フィルター
上記反射防止フィルムの裏面側に、実施例1で得られた近赤外線吸収粘着剤組成物A1について、実施例1と同様に塗工および乾燥し、光学フィルター1を得た。光学フィルター1の近赤外線透過率、全光線透過率、耐熱性、耐湿熱性、耐光性、耐クラック性および耐溶剤性は良好だった。
【0324】
[実施例9]
上記近赤外線吸収粘着剤組成物A1に代えて、上記実施例7aで得られた近赤外線吸収粘着剤組成物Aa7が用いられた他は実施例8と同様にして、光学フィルター2を得た。光学フィルター2の近赤外線透過率、全光線透過率、耐熱性、耐湿熱性、耐光性、耐クラック性および耐溶剤性は良好だった。
【産業上の利用可能性】
【0325】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、近赤外線吸収能の持続性及び可視領域の透明性が高く、耐熱性、耐湿熱性及び耐光性に優れることから、薄型ディスプレー用の光学フィルターとして有用である。また、光情報記録材料としても使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジイモニウム色素を溶剤(D)を含む組成物中に分散させた分散体(A)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有している近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項2】
上記分散体(A)中において、上記ジイモニウム色素が会合状態である請求項1に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項3】
ジイモニウム色素の会合体(X)と、溶剤(D)と、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項4】
粒子状のジイモニウム色素と溶剤(D)とを含む液体(C)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有する近赤外線吸収粘着剤組成物であって、
上記溶剤(D)における上記ジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項5】
上記ジイモニウム色素が、下記式(1)で示されるジイモニウムカチオンを有する請求項1から4のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【化20】
ただし、式(1)中、R1からR8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上22以下のアルキル基または置換基を有する炭素数1以上22以下のアルキル基を表わす。
【請求項6】
上記ジイモニウム色素のジイモニウムアニオンが、ヘキサフルオロリン酸イオンである請求項1から5のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項7】
上記R1からR8のうちの少なくとも一つが、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖又は分岐状の炭素数1から10のアルキル基、炭素数が3から12のシクロアルキル基、又はシクロアルキル環が置換されていてもよい[C3−12シクロアルキル−C1−10アルキル基]である請求項5又は6に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項8】
上記R1からR8の少なくとも1つが、下記式(2)で示される有機基である請求項7に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【化21】
ただし、式(2)中、R9は、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、mは3以上12以下の整数を示す。
【請求項9】
上記式(2)で示される有機基が、シクロヘキシルメチル基である請求項8に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項10】
上記R1からR8の全てがシクロヘキシルメチル基である請求項9に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項11】
上記R1からR8の少なくとも1つが、下記式(3)で示される有機基である請求項7に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【化22】
ただし、式(3)中、nは1以上9以下の整数を示し、Xはハロゲン原子を示す。
【請求項12】
上記式(3)で示される有機基が、3−フルオロプロピル基である請求項11に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項13】
上記R1からR8の全てが3−フルオロプロピル基である請求項12に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項14】
上記R1からR8の少なくとも1つが、炭素数が3以上12以下の分岐状アルキル基である請求項7に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項15】
上記分岐状アルキル基がイソブチル基である請求項14に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項16】
前記樹脂(B)の酸価が0以上300以下である請求項1から15のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項17】
前記樹脂(B)の計算溶解性パラメータが10.2以下である請求項1から16のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項18】
前記樹脂(B)が、下記単量体(1a)から(3a)を下記の比率で共重合してなるポリマーである請求項1から17のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
(1a)炭素数が1以上12以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル:60質量%以上99.9質量%以下
(2a)官能基含有モノマー:0.1質量%以上20質量%以下
(3a)その他共重合可能な単量体:0質量%以上30質量%以下
【請求項19】
さらに、フタロシアニン系色素を含む請求項1から18のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項20】
上記ジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である希釈溶剤(E)により希釈されてなる請求項1から19のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物を含む近赤外線吸収材。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物が透明基材に積層されてなる請求項21に記載の近赤外線吸収材。
【請求項23】
前記透明基材は、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムである、請求項22に記載の近赤外線吸収材。
【請求項24】
請求項21から23のいずれかに記載の近赤外線吸収材を用いてなる、薄型ディスプレー用光学フィルター。
【請求項25】
請求項21から23のいずれかに記載の近赤外線吸収材を用いてなる、光半導体素子用光学フィルター。
【請求項26】
請求項1から20のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物、請求項21から23のいずれかに記載の近赤外線吸収材または請求項24に記載の光学フィルターを用いてなる、薄型ディスプレー。
【請求項1】
ジイモニウム色素を溶剤(D)を含む組成物中に分散させた分散体(A)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有している近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項2】
上記分散体(A)中において、上記ジイモニウム色素が会合状態である請求項1に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項3】
ジイモニウム色素の会合体(X)と、溶剤(D)と、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項4】
粒子状のジイモニウム色素と溶剤(D)とを含む液体(C)が混合されており、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂(B)を含有する近赤外線吸収粘着剤組成物であって、
上記溶剤(D)における上記ジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項5】
上記ジイモニウム色素が、下記式(1)で示されるジイモニウムカチオンを有する請求項1から4のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【化20】
ただし、式(1)中、R1からR8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上22以下のアルキル基または置換基を有する炭素数1以上22以下のアルキル基を表わす。
【請求項6】
上記ジイモニウム色素のジイモニウムアニオンが、ヘキサフルオロリン酸イオンである請求項1から5のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項7】
上記R1からR8のうちの少なくとも一つが、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖又は分岐状の炭素数1から10のアルキル基、炭素数が3から12のシクロアルキル基、又はシクロアルキル環が置換されていてもよい[C3−12シクロアルキル−C1−10アルキル基]である請求項5又は6に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項8】
上記R1からR8の少なくとも1つが、下記式(2)で示される有機基である請求項7に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【化21】
ただし、式(2)中、R9は、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、mは3以上12以下の整数を示す。
【請求項9】
上記式(2)で示される有機基が、シクロヘキシルメチル基である請求項8に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項10】
上記R1からR8の全てがシクロヘキシルメチル基である請求項9に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項11】
上記R1からR8の少なくとも1つが、下記式(3)で示される有機基である請求項7に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【化22】
ただし、式(3)中、nは1以上9以下の整数を示し、Xはハロゲン原子を示す。
【請求項12】
上記式(3)で示される有機基が、3−フルオロプロピル基である請求項11に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項13】
上記R1からR8の全てが3−フルオロプロピル基である請求項12に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項14】
上記R1からR8の少なくとも1つが、炭素数が3以上12以下の分岐状アルキル基である請求項7に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項15】
上記分岐状アルキル基がイソブチル基である請求項14に記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項16】
前記樹脂(B)の酸価が0以上300以下である請求項1から15のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項17】
前記樹脂(B)の計算溶解性パラメータが10.2以下である請求項1から16のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項18】
前記樹脂(B)が、下記単量体(1a)から(3a)を下記の比率で共重合してなるポリマーである請求項1から17のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
(1a)炭素数が1以上12以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル:60質量%以上99.9質量%以下
(2a)官能基含有モノマー:0.1質量%以上20質量%以下
(3a)その他共重合可能な単量体:0質量%以上30質量%以下
【請求項19】
さらに、フタロシアニン系色素を含む請求項1から18のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項20】
上記ジイモニウム色素の溶解度が5質量%以下である希釈溶剤(E)により希釈されてなる請求項1から19のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物を含む近赤外線吸収材。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物が透明基材に積層されてなる請求項21に記載の近赤外線吸収材。
【請求項23】
前記透明基材は、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムである、請求項22に記載の近赤外線吸収材。
【請求項24】
請求項21から23のいずれかに記載の近赤外線吸収材を用いてなる、薄型ディスプレー用光学フィルター。
【請求項25】
請求項21から23のいずれかに記載の近赤外線吸収材を用いてなる、光半導体素子用光学フィルター。
【請求項26】
請求項1から20のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物、請求項21から23のいずれかに記載の近赤外線吸収材または請求項24に記載の光学フィルターを用いてなる、薄型ディスプレー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−18773(P2010−18773A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38476(P2009−38476)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
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