説明

近赤外線遮蔽フィルム

層間の密着性が高く、実質的に透明であり、近赤外線領域を幅広い領域に亘って高度に遮蔽することができ、かつ電磁波障害が発生することのない近赤外線遮蔽フィルムを提供する。この近赤外線遮蔽フィルムは第1積層フィルム部分と第2積層フィルム部分からなる多層積層フィルムであり、これらの積層フィルム部分はいずれも第1層と第2層とが交互に積層されてなるが、第2積層フィルム部分を構成する全層の平均厚みが第1積層フィルム部分を構成する全層の平均厚みの1.05〜1.6倍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、近赤外線遮蔽フィルムに関する。さらに詳しくは、屈折率の低い層と屈折率の高い層とを交互に積層してなり、層間の屈折率差および各層の厚みによって近赤外線波長帯の光を選択的に反射しそして可視光線に対し実質的に透明な近赤外線遮蔽フィルムに関する。
【背景技術】
自動車や電車などの乗り物および建築物の窓に用いるガラスとして、熱線を遮蔽する機能を有する合わせガラスが検討されており、一部は既に実用化されている。このような合わせガラスは熱線の入射を防ぐので省エネルギーの観点から近年注目を集めている。
この合わせガラスは、全光線のうち可視光線は透過し、熱線を選択的に反射または吸収する。例えばこれを窓ガラスとして用いると、太陽光の強い時期には熱線の入射による室内の温度上昇を抑え、他方太陽光が弱く暖房を使用する時期には室内から屋外への熱の逃避を抑えることができる。そのため、この合わせガラスを用いることによってエネルギーの利用効率を大幅に向上させることができ、省エネルギーに役立たせることができる。
この合わせガラスは熱線遮蔽フィルムをガラスに積層することにより得ることができる。特開平4−295804号公報には、光学的厚さが0.09〜0.45μmである、第1ポリマー層と光学的厚さが0.09μm以下又は0.45μm以上である、第2ポリマー層からなり、そして上記両層のポリマーの屈折率が少なくとも約0.03異なる、反射性ポリマー物質が開示されている。第1ポリマー層と第2ポリマー層の組合せとして、具体的に、それぞれがポリカーボネートと、ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートのブレンド物の組合せ、ポリスチレンと、エチレンと不飽和モノカルボン酸とのコポリマーの組合せ、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートの組合せ、およびポリカーボネートとポリメチルメタクリレートの組合せが開示されている。
特開平4−313704号公報には、いずれの層も光学的厚さが0.09〜0.45μmの範囲にある少なくとも3層からなる多種交互層からなり、そして第2の層のポリマーの屈折率が第1の層のポリマーの屈折率と第3の層のポリマーの屈折率の中間にある、赤外線を反射し、可視光線を透過する光学干渉フィルムが開示されている。3層の具体的組合せとして、ポリスチレン(第1層)、スチレンとメチルメタクリレートのコポリマー(第2層)およびポリメチルメタクリレート(第3層)の組合せが開示されている。また、3層のうちの1層がポリエチレン−2,6−ナフタレートであってもよいことも開示されている。
特開平5−193040号公報には、個々の層の実質的に大部分が0.09μm以下又は0.45μm以上の光学的厚さを有し且つ少なくとも1つの層が0.45μm以上の光学的厚さを有する、第1ポリマー層と第2ポリマー層の交互層からなりそして両層のポリマーの屈折率の差が少なくとも0.1である、反射ポリマー物体が開示されている。両層のポリマーの具体例として、ビスフェノールAと4,4’−チオジフェノールとのコポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートとポリフッ化ビニリデンとのブレンド物が開示されている。
WO95/1703号公開パンフレットには、結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルの層と、これよりも屈折率の低い他のポリマー層との相互層からなる多層フィルムが開示されている。
WO97/01778号公開パンフレットには、複数の層を含むポリマーフィルムと、金属または金属化合物を含有する少なくとも1つの層を有する透明導電体からなる、赤外線を反射しそして可視光線を透過する透明多層デバイスが開示されている。
特開2003−320632号公報には、いずれの層もエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位としてなるポリエステルからなり且つ厚みが0.05〜0.5μmの範囲にある、第1層と第2層とが交互に11層以上積層された二軸延伸多層フィルムが開示されている。
特開2004−74764号公報には、いずれの層もエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰返し単位としてなるポリエステルからなり且つ厚みが0.05〜0.5μmの範囲にある、第1層と第2層とが交互に11層以上積層された二軸延伸多層フィルムが開示されている。
しかしながら、上述の熱線遮蔽フィルムでは、層間の屈折率差を大きくするためには、組成の大きく異なる樹脂を組み合わせる必要があり、そうすると各層の間の密着性が弱く、層間剥離現象が発生しがちであった。この層間剥離現象が発生すると、ガラスに積層する工程において合わせガラスに端部のバリが発生したり、合わせガラスに、しわ、ギラツキが発生する原因となる。また、従来の技術では近赤外線領域を広帯域に亘って高度に遮蔽することはできなかった。
【発明の開示】
本発明の課題は、層間の密着性が高く、実質的に透明であり、近赤外線領域を幅広い領域に亘って高度に遮蔽することができ、かつ電磁波障害が発生することのない近赤外線遮蔽フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、本発明の近赤外線遮蔽フィルムを用いた合せガラスを提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
融点が250〜260℃の範囲にあり且つ主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートからなる第1芳香族ポリエステルからなる、厚み0.1〜0.2μmの範囲の第1の層および
融点が200〜245℃の範囲にあり且つ主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートからなる第2芳香族ポリエステルからなる、厚み0.09〜0.22μmの範囲の第2の層とが交互に積層されて合計101層以上からなり、ここで第2芳香族ポリエステルの融点は第1芳香族ポリエステルの融点よりも15〜60℃低く且つ隣接する第1の層と第2の層の組合せにおいて第2の層の厚みが第1の層の厚み0.9から1.1倍の範囲にある組合せが70%以上ある、第1積層フィルム部分並びに
第1積層フィルム部分における第1の層と第2の層の平均厚みの1.05〜1.6倍の範囲にある、第1の層と第2の層の平均厚みを有し、その他の構成は第1フィルム部分を特定する上記構成と同一である第2積層フィルム部分からなる、ことを特徴とする近赤外線遮蔽フィルムによって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
2枚のガラスの間に、ポリビニルブチラールシートを介して本発明の近赤外線遮蔽フィルムを挟持してなることを特徴とする合せガラスによって達成される。
発明の好ましい実施形態
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、上記の如く、第1積層フィルム部分と第2積層フィルム部分とを有する多層積層フィルムである。第1積層フィルム部分の第1積層フィルムおよび第2積層フィルム部分の第2積層フィルムは、第2積層フィルムを構成する全層(第1の層と第2の層)の平均厚みが第1層積層フィルムを構成する全層(第1の層と第2の層)の平均厚みの1.05〜1.6倍の範囲にあることを除いて、それぞれを特定する構成要件は同じであると理解されるべきである。
それ故、以下の説明は特にことわりのない限り、第1積層フィルム部分の第1積層フィルムと第2積層フィルム部分の第2積層フィルムに共通する説明と理解されるべきである。
これらの積層フィルムは第1の層と第2の層が交互に積層されてなる。
第1の層
本発明における積層フィルムの第1の層は、融点が250〜260℃の第1芳香族ポリエステルからなる。第1芳香族ポリエステルの融点が250℃未満であると、第2の層の第2芳香族ポリエステルの融点との差が小さくなり、結果として、得られる多層積層フィルムに十分な屈折率差を付与することが困難になる。第1芳香族ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを好ましく用いることができる。なお、ポリエチレンテレフタレートは、共重合成分を含有しない場合の融点が通常256℃である。
本発明において、第1芳香族ポリエステルは、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレート成分からなるポリエステルである。好ましくは、後述の第2芳香族ポリエステルよりも融点を高度に維持できることから、ホモポリエチレンテレフタレートまたは繰返し単位の95モル%以上がエチレンテレフタレート成分からなる共重合ポリエチレンテレフタレートである。エチレンテレフタレート成分のモル数が繰返し単位の95モル%未満であると、融点が低下し、後述の第2芳香族ポリエステルとの融点差が得られがたく、結果として、延伸積層フィルムに十分な屈折率差を付与しがたい。これらの中でも、融点を高度に維持できることから、ホモポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリエステルが共重合成分を含有する場合、共重合成分としては、例えばイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸といったジカルボン酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオールの如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールといったジオール成分を用いることができる。
この第1の層の厚みは、層間の光干渉によって選択的に近赤外光を反射する効果を得るために0.1〜0.2μmであることが必要である。この範囲で層の厚みを設定することにより、近赤外領域の光を選択的に反射し、遮蔽することができる。第1の層の厚みが0.1μm未満であると、反射光は可視光線の領域となりフィルムが着色してしまい視認性が低下する。0.2μmを超えると層間の光干渉によって3次ピーク(主反射ピークの1/3)が可視光域に生じるために着色してしまい透明性が損なわれる。
第2の層
第2の層は、融点が200〜245℃の第2芳香族ポリエステルからなる。そして、第2芳香族ポリエステルの融点は、第1芳香族ポリエステルの融点より15〜60℃低い。融点がこの範囲より高いと、第1芳香族ポリエステルとの融点差が小さくなり、結果として、得られる延伸積層フィルムに十分な屈折率差を付与することが困難になる。また、第2芳香族ポリエステルの融点をこの範囲より低くすると、必然的に第1芳香族ポリエステルとは構造が大きく異なるポリエステルを用いることになり、第1の層と第2の層の間の密着性が不足する。
本発明において、第2芳香族ポリエステルは、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレート成分からなるポリエステルである。特に二軸延伸における製膜性の観点から、結晶性ポリエステルであることが好ましい。また、前述の第1芳香族ポリエステルよりも融点を低くできることから、繰返し単位の75〜97モル%がエチレンテレフタレート成分からなり、3〜25モル%がそれ以外の共重合成分からなる共重合ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。エチレンテレフタレート成分のモル数が繰返し単位の75モル%未満であるか共重合成分のモル数が25モル%を超えると、実質的にポリマーが非晶性を示し、二軸延伸での製膜性が低下し、さらに、第1芳香族ポリエステルとはポリマーの構造が大きく異なり、層間の密着性が低下しやすい。他方、エチレンテレフタレート成分のモル数が繰返し単位の97モル%を超えるか共重合成分のモル数が3モル%未満だと、前述の第1芳香族ポリエステルとの融点差が小さくなり、結果として、延伸積層フィルムに十分な反射率を付与することが困難となる。
共重合成分としては、例えばイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸といったジカルボン酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオールの如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールといったジオール成分を挙げることができる。これらの中でも、比較的、延伸性を維持しながら融点を低下させやすいことから、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはイソフタル酸が好ましい。
この第2の層の厚みは、層間の光干渉によって選択的に近赤外光を反射する効果を得るために0.09〜0.22μm、好ましくは0.1〜0.2μm、であることが必要である。この範囲で層の厚みを設定することにより、近赤外領域の光を選択的に反射し、遮蔽することができる。第1の層の厚みが0.09μm未満であると、反射光は可視光線の領域となりフィルムが着色してしまい視認性が低下する。0.22μmを超えると層間の光干渉によって3次ピークが可視光域に生じるために着色してしまい透明性が損なわれる。
そして、第2の層の厚みは、第1の層の厚みの0.9〜1.1倍の範囲であることが必要である。これは、第1の層の厚み1に対して、これに隣接する第2の層の厚みが0.9〜1.1の範囲であることを意味する。この関係は積層フィルムの層の大部分について成立していればよく、積層フィルムの総層数の、例えば70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上について成立していればよい。
ラドフォードらの「Reflectivity of Iridescent Coextruded Multilayered Plastic Films」やPolymer Engineering and Science、Vol.13、No.3、1973年5月号にあるように、四分の一波長による多層干渉フィルムにおける1つの問題は、高次反射を除くための適切な補正がなければ、可視色を示すことである。多層干渉フィルムにおいては、主反射ピークのA層の光学厚みに対するB層の光学厚みの比が1.0の場合には、高次のピークのうち、2次(主反射ピークの1/2波長)、4次(主反射ピークの1/4波長)は、除去することができる。したがって、本発明の赤外線遮蔽フィルムでは、積層フィルムの層の屈折率を考慮した上で、隣接する第1の層の厚みに対する第2の層の厚みを厚み比で0.9〜1.1の範囲に収めることが必要である。厚み比が0.9より小さくなるか1.1より大きくなると反射ピークの1/2波長に相当する2次ピークが可視光域に生じるために着色してしまい透明性が損なわれる。
積層フィルム
本発明における積層フィルムは、上述の第1の層と第2の層を交互に合計101層以上含んでなる。総層数の上限は、例えば1001層、10001層といった層数であってもよいが、積層数の上限は、生産性の観点から高々501層であることが好ましい。すなわち、多層積層フィルムの総層数は101層以上、好ましくは101〜501層である。101層未満であると、多重干渉による選択反射が小さく十分な反射率が得られない。
この積層フィルムは、十分な機械的強度を付与するために二軸延伸されていることが好ましい。
本発明における積層フィルムは、特定の波長帯の光を効率的に選択的に反射する観点から、各層の厚み分布が均一であることが好ましい。このためには、第1の層を構成する各層を構成する単一層の厚みが均一であり、同時に第2の層を構成する各層の厚みが均一であるのが好ましい。第1の層を構成する単一層と第2の層を構成する単一層の厚みは異なっていてもよい。
本発明における積層フィルムは、下記式で示される厚み変動幅が、好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、特に好ましくは、3%未満である。フィルム厚み変動幅が10%を超えると反射する近赤外光の波長が変化してしまい性能が安定しない。
厚みの変動率=((Tmax−Tmin)/Tave)x100
上記式中、Taveは平均厚み、Tmaxは最大厚み、Tminは最小厚みである。
近赤外線遮蔽フィルム
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは上述の積層フィルムを少なくとも2枚、好ましくは3枚以上、さらに好ましくは4枚以上積層した多層積層フィルムからなる近赤外線遮蔽フィルムである。
本発明の赤外線遮蔽フィルムは、広い帯域の近赤外線を遮蔽するために、一つの積層フィルムの第1の層と第2の層の平均厚みが他の積層フィルムの第1の層と第2の層の平均厚みの1.05〜1.6倍であることが必要である。1.05倍未満であると近赤外領域での反射ピークの隙間の狭く、広い帯域の近赤外線を遮蔽するためには非常に多くの多層積層フィルムを貼り合わせて用いる必要があり、数枚から十数枚程度の積層フィルムを貼り合わせるにとどまる場合に、十分な近赤外線遮蔽性を得ることができない。1.6を超えると可視光にピークが生じ着色が生じることになる。
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、少なくとも2枚の積層フィルムを積層したものであり、この積層は、例えば(i)接着剤の層を一つの積層フィルムのうえに設けて他の積層フィルムと貼り合わせる方法、(ii)ヒートシール層を積層フィルムの最外層上に設けて他の積層フィルムと熱により貼り合せる方法および(iii)溶触成形した積層フィルム2枚を未だ溶触時に貼り合せる方法等により行うことができる。積層フィルムを3枚以上積層して本発明の近赤外線遮蔽フィルムとする場合、例えば3枚積層する場合について説明すると、これを構成する積層フィルムを第1の積層フィルム、第2の積層フィルム、第3の積層フィルムとして、第1の積層フィルムの第1の層と第2の層の平均厚みが第2の積層フィルムの第1の層と第2の層の平均厚みの1.05〜1.6倍であるとともに、第2の積層フィルムの第1の層と第2の層の平均厚みが第3の積層フィルムの第1の層と第2の層の平均厚みの1.05〜1.6倍であることが好ましい。第2の積層フィルムと第3の積層フィルムは相互に入れ替わっていてもよい。
粘着剤としては、コストや、保護フィルムを剥がす必要がある場合を考慮すると、アクリル系あるいはシリコーン系の粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤が特に好ましい。粘着剤には、添加剤として、例えば安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤等を含有させてもよい。特に紫外線による劣化を抑制するためにも、紫外線吸収剤の添加は有効である。粘着剤層の厚みは10〜15μmが好ましい。
近赤外線遮断フィルムの物性
反射率曲線
本発明の赤外線遮蔽フィルムは、例えば建物窓や自動車窓用の熱線反射フィルム、プラズマディスプレイ用近赤外線遮蔽フィルムとして好適に使用するために、波長800〜1100nmの光の平均反射率が好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。
可視光線透過率
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、建物窓や自動車窓に使用して高い視認性と高度の透明性を得るために、好ましくはJIS−R3106に規定される可視光線透過率が80%以上、さらに好ましくは、85%以上である。
日照透過率
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、建物窓や自動車窓に使用して高度な近赤外線遮蔽性を得るために、好ましくはJIS−R3106に規定される太陽光の日射透過率が75%以下さらに好ましくは、70%以下である。
ヘーズ
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、良好な視認性を得るために、ヘーズが好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
熱収縮率
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、ガラスに貼り付けた後にガラスとフィルム間での剥がれやクラックが生じることを防ぐ観点から、フィルムの製膜方向と幅方向の150℃、30分処理での収縮率がともに2%以下であることが好ましく、フィルムの変形によりガラス貼り合せ後にしわが発生することを防ぐ観点から、フィルムの製膜方向と幅方向の150℃、30分処理での収縮率差が0.5%以下であることが好ましい。
DSCピーク
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、層間の高い密着性を得るとともに、二軸延伸加工の製膜性を確保する観点から、第1の層、第2の層ともに結晶性を有するポリエステルであり、かつ第2の層のポリエステルは、延伸および熱処理後に、少なくとも部分的に配向が解消されていることが好ましい。本発明では、第1の層は延伸により配向させることで面内の屈折率を高くしたまま、第2の層のみを少なくとも部分的に結晶化を解消することで配向を緩和することで、面内の屈折率を低下させ、層間の屈折率差を発現させることができる。
このような近赤外線遮蔽フィルムは、DSC(示差走査熱量計、昇温速度20℃/min)で測定される融点が通常2つ以上存在し、かつそれらの融点が15℃以上異なることになる。ここで、測定される融点は、高融点側が高屈折率を示す第1の層であり、低融点側は、低屈折率を示す第2の層に対応する。
延伸および熱処理後の第2の層は、少なくとも部分的に結晶化を解消すべく溶融されているために、DSCで測定される結晶化ピークが好ましくは100℃〜190℃の範囲に存在することになる。結晶化ピークが100℃以下であると、フィルムの延伸時に一方の層が急激に結晶化し、製膜時の製膜性が低下しやすく、かつ、膜質の均質性が低下しやすく、結果として、色相の斑などが発生することがあり好ましくない。結晶化ピークが190℃以上であると、熱固定処理で第2の層を融解するときに、結晶化が同時に起こり、十分な屈折率差を発現させ難くなり好ましくない。
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、ともに結晶性を示す第1の層のポリエステルと第2の層のポリエステルを延伸することによって、均質な膜質のフィルムが得られ、かつ延伸工程の後に第2の層のポリエステルを融解することで、層間密着性を向上させることと同時に反射性能を向上させることができる。
従って、本発明の近赤外線遮蔽フィルムでは、DSCによる結晶ピークが100℃〜190℃に存在し、融点差が15℃以上異なる2つ以上の融解ピークが観測される二軸延伸近赤外線遮蔽フィルムであることが好ましい。
破断強度
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、延伸処理された方向の破断強度が、好ましくはそれぞれ50MPa以上、さらに好ましくは80MPa以上、特に好ましくは100MPa以上である。破断強度が50MPa未満であると多層積層フィルムの加工時における取り扱い性が低下したり、製品にしたときの耐久性が低下したりして好ましくなく、破断強度が50MPa以上であるとフィルムの腰が強くなり巻取り性が向上するという利点もある。延伸処理された2つの方向すなわち縦方向と横方向の強度比は、十分な耐引裂き性を付与する観点から、好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。破断強度の上限は、特に限定はされないが、延伸工程の安定性を維持する観点から、通常は高々500MPaである。
滑剤
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、高い透明性を維持する観点から、フィルム中には不活性粒子を含まないことが好ましい。しかし、製造工程での微小なキズ防止や、フィルムの巻取り性を向上させるため不活性微粒子を含有させることも許容される。この場合、第1の層、第2の層のいずれかに含有させてもよく、両方に含有させてもよい。不活性微粒子は、例えば平均粒径0.01μm〜2μm、さらには0.05〜1μm、特に0.1〜0.3μmのものを用いるとよい。積層フィルムの重量を基準として、例えば0.001重量%〜0.01重量%配合することができる。
不活性粒子を配合する場合、不活性粒子の平均粒径が下限よりも小さいか、含有量が下限よりも少ないと、多層積層フィルムの巻取り性を向上させる効果が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の含有量が上限を超えるか、平均粒径が上限を超えると、粒子による多層積層フィルムの光学特性の悪化が顕著になる。
不活性粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子を挙げることができる。
これらの不活性粒子は、その長径と短径の比が1.2以下、さらには1.1以下である球状粒子(以下、真球状粒子ということがある)であることが、フィルムの滑り性と光学特性をできるかぎり維持するために好ましい。また、これらの不活性粒子は、粒度分布がシャープであることが好ましく、例えば相対標準偏差が0.3未満、さらには0.2未満のものが好ましい。相対標準偏差が大きい粒子を使用すると、粗大粒子の頻度が多くなり、光学的な欠陥を生ずる場合がある。ここで、不活性粒子の平均粒径、粒径比及び相対標準偏差は、まず粒子表面に導電性付与のための金属を極く薄くスパッターし、電子顕微鏡にて、1万〜3万倍に拡大した像から、長径、短径および面積円相当径を求め、次いでこれらを次式に当てはめることで算出される。
平均粒径=測定粒子の面積円相当径の総和/測定粒子数
粒径比=粒子の平均長径/該粒子の平均短径
製造方法
本発明における積層フィルムは、第1の層と第2の層は面内において十分な屈折率の差を有する。本発明ではこの屈折率の差は、層を構成するポリマーの配向の程度の相違に起因する差であり、これは樹脂自体の屈折率の差とは異なる。
本発明では、樹脂自体の屈折率の差に頼らずに、配向の程度の差により、層の間に屈折率の差を発生させ、近赤外線遮断性を付与している。積層フィルムを構成する第1の層と第2の層に十分な屈折率差を付与するには、例えば、未延伸状態の積層フィルムを延伸しその後第2の層の融点に近い温度で熱処理を行えばよい。この熱処理は延伸により配向結晶化している融点の低いほうのポリエステルを非晶の状態に戻すために行なう。この温度については後に説明する。
つぎに、本発明における積層フィルムは、例えば次の方法で製造することができる。
本発明における積層フィルムは、第1の層のポリエステルと第2の層のポリエステルをそれぞれ溶融し、溶融状態のポリエステルを交互に少なくとも101層重ね合わせて押出し、多層未延伸フィルムとする。この多層未延伸フィルムを、製膜方向とそれに直交する幅方向の二軸方向(フィルム面に沿った方向)に延伸する。延伸温度は、第1の層のポリエステルのガラス転移点の温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲が好ましい。延伸の面積倍率は5〜50倍であることが好ましい。延伸倍率が大きい程、第1の層および第2の層の個々の層における面方向のバラツキがすくなくなり、多層延伸フィルムの光干渉が面方向に均一になるので、面積倍率は大きいほどよい。延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれも適用することができ、組み合わせて用いてもよい。
次に、この多層延伸フィルムを、第2の層のポリエステルの融点よりも10℃低い温度から、第1の層のポリエステルの融点よりも15℃低い温度の範囲で熱処理する。この熱処理により、第2の層におけるポリエステル分子鎖の配向を緩和させ、第2の層の屈折率を低下させ、第1の層と第2の層の屈折率を異なるものとすることができる。熱処理の温度が、第2の層のポリエステルの融点よりも10℃を超えて低いと、第2の層内の分子鎖の配向を緩和させて屈折率を低下させる効果が不十分となり、得られる多層延伸フィルムに十分な屈折率差を付与できないことから好ましくない。他方、熱処理の温度が、第1の層のポリエステルの融点よりも10℃以上低い温度でないと、第1の層内の分子鎖の配向も緩和されて屈折率が低下し、得られる多層延伸フィルムに十分な屈折率差を付与できないので好ましくない。
好ましい熱処理の温度は、第2の層のポリエステルの融点よりも6℃低い温度から、第1の層のポリエステルの融点よりも16℃低い温度、さらには第2の層のポリエステルの融点よりも2℃低い温度から、第1の層のポリエステルの融点よりも18℃低い温度である。なお、熱処理の時間は、1〜60秒が好ましい。
この熱処理の温度や時間を変化させることにより、第1の層と第2の層に相互に類似する性質のポリエステルを用いて層の密着性を確保しながら、第1の層と第2の層の屈折率の差を十分に大きく調整することができる。
上記の如くして得られた積層フィルム同志を、例えば前記した(i)および(ii)の方法により積層して本発明の近赤外線遮蔽フィルムとすることができる。なお、上記(iii)の方法による場合には、得られた積層フィルムについて上記延伸を施すことにより本発明の近赤外線遮蔽フィルムが得られる。
合わせガラス
本発明の合わせガラスは、2枚目のガラス板の間にポリビニルブチラール樹脂層を有する、それ自体公知の合せガラスを製造する要領で、2枚のガラス板の間に、ポリビニルブチラールシートを介して本発明の近赤外線遮蔽フィルムを挟持することにより製造することができる。
【実施例】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性や特性は下記の方法によって測定または評価した。
(1)ポリエステルの融点およびガラス転移点(Tg)
ポリエステルの試料を10mgサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/min.の昇温速度で融点を測定した。
(2)各層の厚み
フィルムの試料を三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUTS、製造元:ライヘルト社)で製膜方向と厚み方向に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察および撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
(3)フィルムのDSCによる融点、結晶化ピークの測定
フィルムの試料10mgを、TAインスツルメンツ製DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)にて、20℃/min.の昇温速度で、結晶化温度および融点を測定した。
(4)反射率、反射波長
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長700nmから1,300nmの範囲で測定した。測定された反射率の中で最大のものを、最大反射率としその波長を反射波長とした。
(5)可視光線透過率、日射透過率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、各波長での硫酸バリウム積分球に対する相対分光透過率を波長300nmから2,100nmの範囲で測定した。得られた透過率曲線から、JIS R 3106:1998に準じて、可視光透過率および日射透過率を算出した。
(6)平均反射率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長800nmから1,100nmの範囲で測定した。測定された反射率曲線から波長800nm〜1,100nmの光の平均反射率を算出した。
(7)全光線透過率及びヘーズ
JIS K 7361−1:1997に準じて、ヘーズ測定機(日本電色工業(株)製、NDH−20)を使用して全光線透過率T(%)と散乱光透過率T(%)とを測定し、下記式からヘーズ(%)を算出した。
ヘーズ(%)=(T/T)×100
(8)破断強度
製膜方向の破断強度は、フィルムを試料幅(幅方向)10mm、長さ(製膜方向)150mmに切り出した試料を、チャック間100mm、引っ張り速度100mm/minで、チャート速度500m/minの条件でインストロンタイプの万能引っ張り試験装置にてサンプルを引っ張り、得られた荷重−伸び曲線から破断強度を測定した。
また、幅方向の破断強度は、フィルムを試料幅(製膜方向)10mm、長さ(幅方向)150mmに切り出した試料を用いた以外は、製膜方向の破断強度の測定と同様に測定した。
(9)熱収縮率、熱収縮率差
150℃で30分間処理したときの熱収縮率は、150℃に温度設定されたオーブンの中に無緊張状態で30分間フィルム試料を保持し、加熱処理前後での寸法変化を熱収縮率として下記式により算出した。
熱収縮率%=((L0−L)/L0)×100
L0:熱処理前の標点間距離
L :熱処理後の漂点間距離
なお、熱収縮率差は、製膜方向の熱収縮率から幅方向の熱収縮率を除した値である。
(10)厚み変動率
製膜方向および幅方向にそれぞれ1m×1mとなるように切り出したフィルムの試料を、縦方向および幅方向に沿ってそれぞれ2cm幅で25本に切り出し、各資料の厚みを電子マイクロメータおよびレコーダー(K−312A,K310B、安立電気(株)製)を使用して連続的に測定した。全測定値から平均厚みを算出し、さらに測定値を200mmごとに細分化し、その中での最大値と最小値を読み取り、下記式により平均厚みに対する厚み変動率を算出した。
厚みの変動率=((Tmax−Tmin)/Tave)x100
ここで、上記式中のTmaxは厚みの最大値、Tminは厚みの最小値である。
(11)色相ずれ
標準光Cに対する供試フィルムの透過スペクトルからJIS規格Z8729に準じてL表色系におけるL、aおよびbを求め、下記式より求められるabクロマ(Cab)を算出した。
ab=((a+(b
得られたCabより、以下の基準で無彩色との彩度のずれを評価した。
◎:Cabが10未満
○:Cabが10以上20未満
×:Cabが20以上
(12)層間の密着性
フィルムの試料(200mmx200mm)上にクロスカット試験機にてカッターの仰角30度、加重200gにて5mm角の碁盤目(25マス)に切り込みを入れ、サンプルフィルムを固定し、クロスカット状の切り込み上に80mmの布テープを貼り付け、90度の剥離角度ではがした後、25マス中で層間剥離の生じた箇所を算出し、計3回の平均値を算出した。
(13)合わせガラスの外観評価
実施例および比較例で得られた500mmx400mの合わせガラスにおいて、目視にて次のとおり外観評価を実施した。
30W蛍光灯光源のもと、サンプルガラス中にそれぞれの項目(しわ、ギラツキ、エア、バリ)が観察されるものを「有り」、観察されないものを「無し」とした。
参考例1
第1の層のポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレート(融点258℃)を準備し、第2の層のポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65の共重合ポリエチレンテレフタレート(融点223℃)を準備した。
第1の層のポリエステルおよび第2の層のポリエステルのそれぞれを、170℃で3時間乾燥し、押出し機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とした。そして、第1の層のポリエステルを101層、第2の層のポリエステルを100層に分岐させ、多層フィードブロック装置を使用して第1の層と第2の層を交互に積層させ、積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして、第1の層と第2の層の厚みの比が0.95:1.00であり、第1の層と第2の層が交互に積層され、総層数201層の未延伸積層フィルムを作成した。このとき第1の層のポリエステルと第2の層のポリエステルの押出し量を0.95:1.00に調整するとともに、両表層が第1の層になるように積層した。この未延伸フィルムを90℃の温度で製膜方向に3.6倍に延伸し、その後95℃の温度でフィルムを幅方向に3.9倍に延伸し、230℃で3秒間熱固定処理を行い、積層フィルムとした。
この積層フィルムの厚みは、26.0μmであり、第1の層と第2の層の平均厚みはそれぞれ125nm、132nmであった。多層積層フィルムの製造条件を表1に、特性を表2に示した。
参考例2〜4
積層フィルムの厚みをそれぞれ27.5μm、29.0μm、30.5μmとする他は参考例1と同様にして積層フィルムを製造した。この積層フィルムの第1の層と第2の層の平均厚みは表2に示すとおりである。多層積層フィルムの製造条件を表1に、特性を表2に示した。


[実施例1]
参考例1で得た積層フィルムの片面に粘着層(組成は表4に示す。)を形成するための粘着剤をロールコート法でドライ厚みが15μmとなるように塗工し、粘着層付き近赤外線遮蔽フィルムを得た。得られた粘着層付き近赤外線遮蔽フィルムの粘着層の面には、厚み50μmの表面にシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムをセパレータフィルム(剥離フィルム)として貼り合わせた。得られた粘着層付き近赤外線遮蔽フィルムと参考例3で得た積層フィルムを粘着剤層を介して貼り合わせ、近赤外線遮蔽フィルムを得た。得られた近赤外線遮蔽フィルムの物性を表3に示す。


[実施例2]
参考例1〜4で得られた多層積層フィルムをそれぞれ1枚ずつ4枚のフィルムを実施例1と同様にアクリル系粘着剤で貼り合せ、近赤外線遮蔽フィルムを得た。得られた近赤外線遮蔽フィルムの物性を表3に示す。
[実施例3]
実施例2で得られた近赤外線遮蔽フィルムを、ラミネート装置により厚さ0.38mmのポリビニルブチラールシート(PVB、積水化学(株)製、エスレックフィルム(商品名))2枚の間に挟み、さらに厚さ2mm、500mm(曲率150R)×400mm(曲率1500R)のガラス板2枚で挟み、その後、加熱加圧炉に入れ、130℃、13atmで30分間処理後、圧は維持したまま温度だけ40℃まで低下させた後、常圧に戻し、加熱加圧炉から取り出し、ガラス板の周囲にはみでているフィルムを切り放し、合わせガラスを得た。得られた合わせガラスの外観評価(皺の有無、エアーの抱き込み、ギラツキ、バリ)を行ったところ、いずれについても欠点がなく、極めて良好な外観をもつ物が得られた。
参考例5
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)を第1の層用ポリエステルとし、第2の層用ポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65の共重合ポリエチレンテレフタレートを準備し、さらに最外層のヒートシール層用ポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65の共重合ポリエチレンテレフタレートを準備した。そして、第1の層用ポリエステルおよび第2の層用ポリエステルを、それぞれ170℃で3時間乾燥、ヒートシール層用ポリエステルを150℃で3時間乾燥後、押出し機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とし、第1の層用ポリエステルを101層、第2の層用ポリエステルを100層に分岐させた後、第1の層と第2の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したまま、さらにその両側にヒートシール層用ポリエステルを積層して、ダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして第1の層と第2の層の各層の厚みが0.95:1.00になるように第1の層と第2の層を交互に積層した201層の積層体のさらにその最表層に厚みが201層の積層体のそれぞれ15%の厚み比になるように積層した総数203層の未延伸多層積層フィルムを作成した。このとき第1の層と第2の層の押出し量が0.95:1.00になるように調整し、ヒートシール層の押出量は、第1の層と第2の層の押出量の総量の30%になるように調整した。ここで、両端層は、ヒートシール層になるように積層している。この多層未延伸フィルムを90℃の温度で製膜方向に3.6倍延伸し、95℃の温度でフィルムを幅方向に3.9倍に延伸し、230℃で3秒間熱固定処理を行った。
得られた二軸延伸近赤外線遮蔽フィルムの物性を表6に示す。
参考例6〜8
製造条件を表5に示すように変更する以外は、参考例5と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸延伸近赤外線遮蔽フィルムの物性を表6に示す。


[実施例4]
参考例5〜8で得られた二軸延伸近赤外線遮蔽フィルムを加熱ラミネート装置(フジプラ(株)製ラミパッカーLPD280)を用いて、ロール温度170℃で、貼り合せ、二軸延伸近赤外線遮蔽フィルム積層体を得た。得られた二軸延伸近赤外線遮蔽フィルムの物性を表7に示す。
[実施例5]
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)を第1の層用ポリエステルとし、第2の層用ポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65の共重合ポリエチレンテレフタレートを準備した。そして、第1の層用ポリエステルおよび第2の層用ポリエステルを、それぞれ170℃で3時間乾燥後、押出し機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とし、第1の層用ポリエステルを101層、第2の層用ポリエステルを100層に分岐させた後、第1の層と第2の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、201層の積層体とし、さらに、特開平4−278324に示すような境界面形成装置を用いて、この積層体を積層面方向と垂直な方向に、1.00:1.06:1.12:1.17の面積比で4分割し、積層面と平行方向に積層し、層数801層の積層体とし、その積層状態を保持したまま、ダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして各層の厚みが0.95:1.00になるように第1の層と第2の層が交互に積層された総数201層の未延伸多層積層フィルムを作成した。このとき第1の層と第2の層の押出し量が0.95:1.00になるように調整し、かつ、両端層が第1の層になるように積層した。
この多層未延伸フィルムを90℃の温度で製膜方向に3.6倍延伸し、95℃の温度でフィルムを幅方向に3.9倍に延伸し、230℃で3秒間熱固定処理を行った。
得られた二軸延伸近赤外線遮蔽フィルムの物性を表7に示す。

[実施例6および7]
実施例4および5で得られた近赤外線遮蔽フィルムを、実施例3を同様にして、合わせガラスを得た。得られた合わせガラスの外観評価(皺の有無、エアーの抱きこみ、ギラツキ、バリ)を行ったところ、いずれについても欠点がなく、極めて良好な外観をもつ物が得られた。
以上のとおり、本発明によれば、層間の密着性が高く、実質的に透明であり、近赤外線領域を幅広い領域に亘って高度に遮蔽することができ、かつ電磁波障害が発生することのない近赤外線遮蔽フィルムを提供することができる。
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、近赤外線の幅広い領域に亘って高度な遮蔽性を得ることができるため、建物または自動車の窓に積層して用いることで、太陽光の強い時期には熱線の入射による室内の温度上昇を抑え、他方太陽光が弱く暖房を使用する時期には室内から屋外への熱の逃避を抑えることができる。そのため、エネルギーの利用効率を大幅に向上させることができ、省エネルギーに役立たせることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が250〜260℃の範囲にあり且つ主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートからなる第1芳香族ポリエステルからなる、厚み0.1〜0.2μmの範囲の第1の層および
融点が200〜245℃の範囲にあり且つ主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートからなる第2芳香族ポリエステルからなる、厚み0.09〜0.22μmの範囲の第2の層
とが交互に積層されて合計101層以上からなり、ここで第2芳香族ポリエステルの融点は第1芳香族ポリエステルの融点よりも15〜60℃低く且つ隣接する第1の層と第2の層の組合せにおいて第2の層の厚みが第1の層の厚みの0.9〜1.1倍の範囲にある組合せが70%以上ある、第1積層フィルム部分並びに
第1積層フィルム部分における第1の層と第2の層の平均厚みの1.05〜1.6倍の範囲にある、第1の層と第2の層の平均厚みを有し、その他の構成は第1積層フィルム部分を特定する上記構成と同一である第2積層フィルム部分からなる、ことを特徴とする近赤外線遮蔽フィルム。
【請求項2】
第1積層フィルム部分および第2積層フィルム部分の第1の層がいずれも2軸配向しておりそして第2の層がいずれも実質的に無配向である請求項1に記載の近赤外線遮蔽フィルム。
【請求項3】
波長800〜1,100nmの光の平均反射率が50%以上である、請求項1記載の近赤外線遮蔽フィルム。
【請求項4】
可視光線透過率が80%以上、日射透過率が75%以下、ヘーズが1.5%以下である、請求項1記載の近赤外線遮蔽フィルム。
【請求項5】
建物または自動車の窓に積層して用いる請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線遮蔽フィルム。
【請求項6】
2枚のガラス板の間に、ポリビニルブチラールシートを介して請求項1に記載の近赤外線遮蔽フィルムを挟持してなることを特徴とする合わせガラス。

【国際公開番号】WO2005/040868
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515053(P2005−515053)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016194
【国際出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】