説明

追尾装置及び追尾方法

【課題】例えば特殊な画像処理を行う場合等の、追尾性能の劣化が生じ得る場合であっても、適切な追尾処理を行うことができる追尾装置及び追尾方法を提供すること。
【解決手段】撮影して得た画像データである第1の画像データを生成する第1の画像生成モードと、前記第1の画像データを生成すると共に前記第1の画像データに所定の処理を施した第2の画像データを生成する第2の画像生成モードと、のうち何れかの画像生成モードに設定し、画像データについて特徴情報を検出し且つ被写体の顔部位を検出するシステムコントローラ130を追尾装置に具備させる。前記システムコントローラ130は、画像データから検出した特徴情報または顔部位に基づいて、追尾対象の移動位置を演算する。前記システムコントローラ130は、第2の画像生成モードを設定した場合には、第1の画像生成モードを設定した場合に実行する演算とは異なる演算に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を追尾する追尾装置及び追尾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動体を撮影する際や動画像を撮影する際に、特定の被写体に追従するように自動合焦制御(AF)や自動露光制御(AE)を行う技術が知られている。このような特定の被写体を追従するために追尾処理が用いられている。追尾処理には、輝度情報を利用するものや、色情報を利用するもの、顏検出を利用するもの等、種々のものがある。特許文献1には、撮像手段より出力された撮像信号に基づいて、被写体像に対する追尾動作を行う自動追尾装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている自動追尾装置では、被写体の特徴を表わすパラメータ(例えば被写体及び背景の色等)を、予め設定された追尾視野について抽出し、この抽出した特徴と、新たに抽出した被写体の特徴とに基づいて、被写体の移動の有無、及び被写体が移動した場合にはその移動方向又は移動位置を検出する。そして、追尾視野を、被写体の移動に追尾して移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2605004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、1種類のみの追尾処理を用いた場合、追尾処理に失敗してしまうと、それ以降は正しい追尾処理が不能となる可能性がある。このような事情を鑑みて、複数種類の追尾処理を行う技術が提案されているが、これには下記のような課題が存在する。
例えば、特殊な画像処理(例えば、複数枚の画像を合成して1枚の画像を生成する処理)を行う場合には、画像処理の負荷が増大する。このとき、当該画像処理を一部に含む追尾処理にも当然に影響が生じ、通常の追尾処理では生じなかった追尾性能の劣化をきたすことがある。
【0006】
さらには、例えば複数の特徴を組み合わせて追尾処理をする際には、追尾処理に用いる入力画像データが特徴毎に異なり(例えばRAWデータとYCデータ等)、それぞれの入力画像データの生成フレームレートに差がある場合には、例えば“第1の特徴”についてはn-1フレーム目の追尾処理が完了しているときに“第2の特徴”についてはn-4フレーム目までしか追尾処理が完了していないという現象が起きうる。
【0007】
このとき、第1の特徴と第2の特徴とで同期をとろうとしても、n-4フレーム同士では現在の被写体からのずれが生じており、またn-1フレームとn-4フレームとではそもそもフレームが異なるため同期しても正しい追尾結果は得られない。つまり、何れにしても追尾性能の劣化が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、例えば特殊な画像処理を行う場合等の、追尾性能の劣化が生じ得る場合であっても、適切な追尾処理を行うことができる追尾装置及び追尾方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様の追尾装置は、
撮影して得た画像データである第1の画像データを生成する第1の画像生成モードと、前記第1の画像データを生成すると共に前記第1の画像データに所定の処理を施した第2の画像データを生成する第2の画像生成モードと、のうち何れかの画像生成モードを設定する作画モード設定部と、
当該追尾装置に入力された画像データを、前記作画モード設定部の設定に応じて処理する画像処理部と、
前記画像処理部により処理された画像データについて特徴情報を検出し、且つ、被写体の顔部位を検出する追尾検出部と、
前記特徴情報または前記顔部位に基づいて、追尾対象の移動位置を演算する追尾演算部と、
前記第2の画像生成モードが設定された場合には、前記追尾演算部による演算を、前記第1の画像生成モードが設定された場合に実行する演算とは異なる演算に切り換える演算切換部と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の第2の態様の追尾方法は、
撮影して得た画像データである第1の画像データを生成する第1の画像生成モードと、前記第1の画像データを生成すると共に前記第1の画像データに所定の処理を施した第2の画像データを生成する第2の画像生成モードと、のうち何れかの画像生成モードを設定し、
入力された画像データを、前記作画モード設定部の設定に応じて処理し、
前記処理された画像データについて特徴情報を検出し、且つ、被写体の顔部位を検出し、
前記特徴情報または前記顔部位に基づいて、追尾対象の移動位置を演算し、
前記第2の画像生成モードが設定された場合には、前記追尾演算部による演算を、前記第1の画像生成モードが設定された場合に実行する演算とは異なる演算に切り換える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば特殊な画像処理を行う場合等の、追尾性能の劣化が生じ得る場合であっても、適切な追尾処理を行うことができる追尾装置及び追尾方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る追尾装置を備えた撮像装置の一例としての構成を示す図である。
【図2】図2は、輝度情報を用いた追尾処理について説明するための図である。
【図3】図3は、色情報を用いた追尾処理について説明するための図である。
【図4】図4は、顏検出処理について説明するための図である。
【図5】図5は、撮像装置の撮影動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る追尾方法としての追尾処理について示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る追尾方法としての追尾処理について示すタイミングチャートである。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る追尾方法としての追尾処理について示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る追尾装置を備えた撮像装置の一例としての構成を示す図である。図1に示す撮像装置100は、撮影光学系102と、焦点調整機構104と、絞り106と、絞り駆動機構108と、シャッタ110と、シャッタ駆動機構112と、撮像素子114と、撮像素子インターフェイス(IF)回路116と、RAM118と、表示素子120と、表示素子駆動回路122と、タッチパネル124と、タッチパネル駆動回路126と、記録メディア128と、システムコントローラ130と、操作部132と、ROM134と、を有している。
【0014】
撮影光学系102は、図示しない被写体からの光束Fを、撮像素子114の受光面上に集光するための光学系である。この撮影光学系102は、フォーカスレンズ等の複数のレンズを有している。焦点調整機構104は、モータ及びその駆動回路等を有している。この焦点調整機構104は、システムコントローラ130内のCPU1301の制御に従って、撮影光学系102内のフォーカスレンズをその光軸方向(図示一点鎖線方向)に駆動させる。
【0015】
絞り106は、開閉自在に構成され、撮影光学系102を介して撮像素子114に入射する光束Fの量を調整する。絞り駆動機構108は、絞り106を駆動するための駆動機構を有している。この絞り駆動機構108は、システムコントローラ130内のCPU1301の制御に従って、絞り106を駆動させる。
【0016】
シャッタ110は、撮像素子114の受光面を遮光状態又は露光状態とするように構成されている。このシャッタ110により、撮像素子114の露光時間が調整される。シャッタ駆動機構112は、シャッタ110を駆動させるための駆動機構を有し、システムコントローラ130内のCPU1301の制御に従って、シャッタ110を駆動させる。
【0017】
撮像素子114は、撮影光学系102を介して集光された被写体からの光束Fが結像される受光面を有している。撮像素子114の受光面は、複数の画素が2次元状に配置されて構成されており、また、受光面の光入射側には、カラーフィルタが設けられている。このような撮像素子114は、受光面に結像された光束Fに対応した像(被写体像)を、その光量に応じた電気信号(以下、画像信号という)に変換する。ここで、撮像素子114は、CCD方式やCMOS方式等の種々の構成の撮像素子が知られている。また、カラーフィルタの色配列もベイヤ配列等の種々の配列が知られている。本実施形態は、撮像素子114の構成が特定の構成に限定されるものではなく、種々の構成の撮像素子を用いることが可能である。この撮像素子114は、CPU1301によって生成された垂直同期信号VDのパルスの立ち上がりタイミング(立ち下がりタイミングでもよい)で、1フレームを撮像する露光動作を開始する。
【0018】
撮像素子IF回路116は、システムコントローラ130内のCPU1301の制御に従って、撮像素子114を駆動させる。また、撮像素子IF回路116は、システムコントローラ130内のCPU1301の制御に従って、撮像素子114で得られた画像信号を読み出し、読み出した画像信号に対してCDS(相関二重サンプリング)処理やAGC(自動利得制御)処理等のアナログ処理を施す。さらに、撮像素子IF回路116は、アナログ処理した画像信号をデジタル信号に変換し、画像データ(RAWデータ)を生成する。
【0019】
RAM118は、例えばSDRAMであり、ワークエリア、評価画像エリア、参照画像エリア、追尾位置ログエリア、追尾色領域ログエリア、を記憶エリアとして有している。
ワークエリアは、撮像素子IF回路116で得られた画像データ(RAWデータ)等の、撮像装置100の各部で発生したデータを一時記憶しておくためにRAM118に設けられた記憶エリアである。
【0020】
評価画像エリアは、評価画像データを一時記憶しておくためにRAM118に設けられた記憶エリアである。評価画像データは、後述する追尾処理における追尾対象の被写体を含むフレームの画像データである。追尾処理においては、この追尾対象を追尾するように処理が行われる。
【0021】
参照画像エリアは、参照画像データを一時記憶しておくためにRAM118に設けられた記憶エリアである。参照画像データは、後述する追尾処理において、追尾対象の探索の対象となるフレームの画像データである。追尾処理においては、参照画像データ中で探索が行われる。
【0022】
追尾位置ログエリアは、追尾位置ログを一時記憶しておくためにRAM118に設けられた記憶エリアである。追尾位置ログは、追尾処理の結果として得られた追尾位置を記録したログである。本実施形態では、複数の追尾処理を併用して追尾対象を追尾する。したがって、追尾位置ログには、それぞれの追尾処理によって得られた追尾位置(候補追尾位置)を過去10フレーム分個別に記録する。また、追尾位置ログには、後述の優先追尾位置判定処理によって採用された最終的な追尾位置も記録する。
【0023】
追尾色領域ログエリアは、追尾色領域ログを一時記憶しておくためにRAM118に設けられた記憶エリアである。追尾色領域ログは、追尾処理によって得られた追尾色領域を記録したログである。本実施形態では、追尾色領域を過去10フレーム分記録する。追尾色領域の詳細については後述する。
【0024】
表示素子120は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)であり、ライブビュー用の画像及び記録メディア128に記録された画像等の各種の画像を表示する。表示素子駆動回路122は、システムコントローラ130のCPU1301から入力された画像データに基づいて表示素子120を駆動させ、表示素子120に画像を表示させる。
【0025】
タッチパネル124は、表示素子120の表示画面上に一体的に形成されており、表示画面上へのユーザの指等の接触位置等を検出する。タッチパネル駆動回路126は、タッチパネル124を駆動するとともに、タッチパネル124からの接触検出信号をシステムコントローラ130のCPU1301に出力する。CPU1301は、接触検出信号から、ユーザの表示画面上への接触操作を検出し、その接触操作に応じた処理を実行する。
【0026】
記録メディア128は、例えばメモリカードであり、撮影動作によって得られた画像ファイルが記録される。画像ファイルは、画像データに所定のヘッダを付与して構成されるファイルである。ヘッダには、撮影条件を示すデータ及び追尾位置を示すデータ等が、タグデータとして記録される。
【0027】
システムコントローラ130は、撮像装置100の動作を制御するための制御回路として、CPU1301と、AF制御回路1302と、AE制御回路1303と、画像処理回路1304と、追尾処理回路1305、1306と、顏検出回路1307と、色情報取得回路1308と、メモリ制御回路1309と、を有している。
【0028】
CPU1301は、焦点調整機構104、絞り駆動機構108、シャッタ駆動機構112、表示素子駆動回路122、タッチパネル駆動回路126等のシステムコントローラ130の外部の各ブロック、及びシステムコントローラ130の内部の各制御回路の動作を制御する。このCPU1301は、制御部としての機能も有し、後述の優先追尾判定処理において最終的な追尾位置を決定することも行う。また、CPU1301は、撮像素子114を制御する垂直同期信号VDを生成する。さらに、CPU1301は、当該撮像装置100を、後述する画像処理回路1304による“特殊な画像処理(処理時間が所定の閾値以上の画像処理)”を実行しない“第1の画像生成モード”、または“特殊な画像処理”を実行する“第2の画像生成モード”に設定する。この設定は、例えばユーザによる操作部132やタッチパネル124の操作に基づいて行われる。これらの各“画像生成モード”の設定は、それぞれ対応する“画像生成処理”を当該撮像装置に実行させる為の操作が為されたことを意味する。
【0029】
AF制御回路1302は、コントラストAF処理を制御する。具体的には、AF制御回路1302は、撮像素子IF回路116で得られた画像データ(RAWデータ)の高周波成分を抽出し、この抽出した高周波成分を積算することにより、AF用の合焦評価値を取得する。CPU1301は、この合焦評価値に従って画像データのコントラストを評価しつつ、焦点調整機構104を制御してフォーカスレンズを合焦状態とする。
【0030】
AE制御回路1303は、AE動作を制御する。具体的には、AE制御回路1303は、撮像素子IF回路116で得られた画像データ(RAWデータ)を用いて被写体輝度を算出する。CPU1301は、この被写体輝度に従って、露光時の絞り106の開口量(絞り値)、シャッタ110の開放時間(シャッタ速度値)、撮像素子感度やISO感度等を算出する。
【0031】
画像処理回路1304は、画像データに対する各種の画像処理を行う。この画像処理としては、圧縮処理、RAWデータからYCデータ(輝度信号と色差信号からなる画像データ)への変換処理、複数フレームの画像データを合成して1つのフレームの画像データを生成する処理、1フレームの画像データに対して行う光学的処理または現像に類する処理、及び1フレームの画像データの一部を切り出して複数の画像データを生成する処理等が含まれる。なお、画像処理回路1304は、圧縮された画像データに対する伸張処理も施す。
【0032】
第1の追尾位置検出部としての追尾処理回路1305は、第1の特徴情報としての画像データの輝度情報を用いた追尾処理を行う。この輝度情報を用いた追尾処理について簡単に説明する。輝度情報を用いた追尾処理では、例えば、図2(a)に示す(N−1)フレームにおいて追尾対象が設定された場合、この(N−1)フレームの画像データを、評価画像データとしてRAM118の評価画像エリアに記憶する。この評価画像データの追尾対象を含む所定範囲202の画像データを、基準画像データに設定する。この後の追尾処理では、参照画像データの基準画像データ202と対応する部分を探索する。
Nフレームの追尾処理を例に示すと、まず、Nフレームの画像データを、参照画像データとしてRAM118の参照画像エリアに記憶する。この参照画像データのうちの所定の探索範囲204の画像データと基準画像データ202との相関量を求めることにより、参照画像データの基準画像データ202と対応する部分を探索する。相関量は、例えば基準画像データと参照画像データとの差分絶対値和(画素毎に輝度差の絶対値を求めてそれを積算したもの)から判定する。例えば、図2(b)に示す参照画像データの領域206の参照画像データと基準画像データ202との差分絶対値和を求めたとすると、参照画像データの領域206と基準画像データ202とは明らかに異なる画像データであり、差分絶対値和が大きくなる。これに対し、参照画像データの領域208と基準画像データ202との差分絶対値和を求めたとすると、差分絶対値和が小さくなる。このように、基準画像データ202との相関量が大きくなるに従って差分絶対値和が小さくなる。輝度情報を用いた追尾処理では、相関量が最大の、即ち差分絶対値和が最小の領域を参照画像データから探索する。図2(b)の例では、領域208となる。なお、追尾位置ログエリアには、領域208の中で最も一致度の高い位置を追尾位置として記録する。なお、このような位置が複数ある場合には、例えば、領域208の中心に近い位置を追尾位置とする。次回の追尾処理時には、この追尾位置を追尾処理の開始位置とすることが望ましい。これにより、追尾処理にかかる時間を軽減することが可能である。
【0033】
第2の追尾位置検出部としての追尾処理回路1306は、第2の特徴情報としての画像データの色情報を用いた追尾処理を行う。この色情報を用いた追尾処理について簡単に説明する。色情報を用いた追尾処理では、評価画像データ内で設定された色と同色であると判定できる領域である追尾色領域を探索する。図3(a)に示すように、(N−1)フレームにおいて、被写体のある位置302が指定された場合、評価画像データ中の位置302の色情報を取得する。そして、位置302を追尾処理の開始位置として、位置302と同じ色情報を有する領域を探索する。具体的には、位置302を開始位置から周辺に向かうように順次色情報を取得し、取得した色情報が位置302の色情報と同一であると判定できる場合には領域に含め、取得した色情報が位置302の色情報と同一であると判定できない場合には領域に含めない。このようにして追尾色領域を探索すると、例えば、図3(a)に示すような単色の被写体の場合、被写体に内接する矩形領域304が追尾色領域となる。また、追尾位置ログエリアに記録する追尾位置は、例えば追尾色領域304の重心位置(図3(a)の例では、位置302と同じ)とする。次回の追尾処理においては、この追尾位置を追尾処理の開始位置とする。
【0034】
Nフレームの追尾処理を例に示すと、図3(b)に示す参照画像データとして記憶したNフレームの画像データの所定の探索範囲の中で、(N−1)フレームの追尾位置302を追尾処理の開始位置とし、追尾位置302の周辺から順次、追尾色領域304の色と同色であると判定できる領域を追尾色領域として探索する。図3(b)の例では、領域306が追尾色領域となる。また、図3(b)の例では、重心位置308を追尾位置とし、この追尾位置308を、追尾位置ログエリアに記録する。また、追尾色領域ログエリアには、追尾色領域306の範囲を示す情報(例えば、四隅の位置)を記録する。
【0035】
顏検出回路1307は、画像データにおける被写体(人物)の顏を検出する。ここで、顏検出処理について簡単に説明する。顏検出処理においては、各フレームで得られる画像データと、図4(a)に示すような顔パーツ402、404、406との相関量を求める。顔パーツ402は、人物の鼻部周辺の陰影のパターンに対応した画像データであり、顔パーツ404は、人物の目部周辺の陰影のパターンに対応した画像データであり、顔パーツ406は、人物の口部周辺の陰影のパターンに対応した画像データである。画像処理データと顏パーツ402、404、406との相関量は、図4(b)に示すような、人物の顔を示す所定の配置となったときに最大となる。このとき、顏パーツ402、404、406を含む領域408に顏が存在しているとする。なお、顔パーツ402、404、406は予め設定した検索顔の大きさに応じて、大きさを変えても良い。ここで、図4(b)では、顏領域を矩形領域としているが、円形領域としても良い。
【0036】
特徴情報取得部の一例としての色情報取得回路1308は、追尾処理回路1305で得られた追尾位置の色情報を取得する。
メモリ制御回路1309は、CPU1301等が、RAM118、記録メディア128、ROM134にアクセスするための制御を行うインターフェイスである。
【0037】
操作部132は、ユーザによって操作される各種の操作部材である。操作部132としては、例えば、レリーズ釦、動画釦、モードダイヤル、選択キー、電源釦等が含まれる。
レリーズボタン釦は、1stレリーズスイッチと、2ndレリーズスイッチと、を有している。1stレリーズスイッチは、ユーザがレリーズ釦を半押しするとオンするスイッチである。1stレリーズスイッチがオンすることにより、AF処理等の撮影準備動作が行われる。また、2ndレリーズスイッチは、ユーザがレリーズ釦を全押しするとオンするスイッチである。2ndレリーズスイッチがオンすることにより、静止画撮影用の露光動作が行われる。
動画釦は、動画撮影の開始又は終了を指示するための操作部材である。ユーザによって動画釦が押されると動画撮影処理が開始される。また、動画撮影処理の実行中に動画釦が押されると、動画撮影処理が終了される。
モードダイヤルは、撮像装置の撮影設定を選択するための操作部材である。本実施形態では、撮像装置の撮影設定として、例えば、静止画撮影モードと動画撮影モードを選択できる。静止画撮影モードは、静止画像を撮影するための撮影設定である。また、動画撮影モードは、動画像を撮影するための撮影設定である。
選択キーは、例えばメニュー画面上での項目の選択や決定をするための操作部材である。ユーザによって選択キーが操作されるとメニュー画面上での項目の選択や決定が行われる。
電源釦は、撮像装置の電源をオン又はオフするための操作部材である。ユーザによって電源釦が操作されると、撮像装置100が起動して動作可能な状態となる。撮像装置が起動している間に電源釦が操作されると、撮像装置100が省電力待機状態となる。
【0038】
ROM134は、CPU1301が種々の処理を実行するためのプログラムコードを記憶している。また、ROM134は、撮影光学系102、絞り106、及び撮像素子114等の動作に必要な制御パラメータ、並びに画像処理回路1304での画像処理に必要な制御パラメータ等の、各種の制御パラメータを記憶している。さらには、ROM134は、顏検出回路1307における顏検出に用いられる顏パーツのデータや追尾枠を表示するためのデータ等も記憶している。
【0039】
次に、本実施形態に係る撮像装置の動作について説明する。図5は、撮像装置100の撮影動作を示すフローチャートである。CPU1301は、ROM134から必要なプログラムコードを読み込んで図5の動作を制御する。
S100において、CPU1301は、現在の撮像装置100の撮影設定が静止画撮影モードであるかを判定する。前述したように、撮影設定は、モードダイヤルによって設定される。
【0040】
S100において、撮影設定が静止画撮影モードであると判定した場合に、S102において、CPU1301は、ライブビュー動作を開始させる。ライブビュー動作として、CPU1301は、シャッタ駆動機構112を制御してシャッタ110を開放した後、CPU1301は、撮像素子IF回路116を制御して撮像素子114による撮像を開始させる。その後、CPU1301は、撮像素子114による撮像の結果としてRAM118のワークエリアに記憶された画像データを画像処理回路1304に入力してライブビュー表示用の画像処理を施す。続いて、CPU1301は、ライブビュー表示用の画像処理がされた画像データを表示素子駆動回路122に入力し、表示素子120に画像を表示させる。このような表示動作を繰り返し実行することにより、被写体の画像を動画表示する。この動画表示により、ユーザは、被写体を観察することが可能である。
【0041】
S104において、CPU1301は、1stレリーズスイッチがオンされたかを判定する。S104において、1stレリーズスイッチがオンされたと判定するまでは、CPU1301は、ライブビュー動作を継続する。
また、S104において、1stレリーズスイッチがオンされたと判定した場合に、S106において、CPU1301は、レリーズAF処理を行う。レリーズAFにおいては、スキャン駆動によって、フォーカスレンズを合焦位置まで駆動させる。スキャン駆動では、CPU1301は、焦点調整機構104を制御して、フォーカスレンズを所定のスキャン範囲内で一方向に駆動させつつ、AF制御回路1302で順次算出される合焦評価値を評価する。そして、CPU1301は、合焦評価値の評価の結果、コントラストが最大となるレンズ位置において、フォーカスレンズの駆動を停止させる。このようなスキャン駆動は、AF前のフォーカスレンズの位置と合焦位置との差が大きい場合に行われる。
【0042】
S108において、CPU1301は、表示素子駆動回路122を制御して、表示素子120に追尾枠を表示させる。ここで、追尾枠は、表示素子120の画面上の追尾対象の位置に表示させる。例えば、レリーズAFで合焦した被写体を追尾対象とし、その被写体に追尾枠を表示させるようにしても良いし、顏検出回路1307によって顏が検出された場合には、その顔に追尾枠を表示させるようにしても良い。さらに、タッチパネル124により、表示素子120の画面上に表示された被写体が指定された場合には、その被写体上に追尾枠を表示させるようにしても良い。このように、本実施形態においては、CPU1301、AF制御回路1302、顏検出回路1307、タッチパネル124等が追尾対象設定部の一例として機能する。
【0043】
S110において、CPU1301は、追尾処理を行う。この追尾処理の詳細については後述する。
S112において、CPU1301は、追尾位置の被写体に合焦するようにAF処理を行うとともに、追尾位置の被写体の露光が適正となるようにAE処理を行う。
追尾処理後のAF処理においては、スキャン駆動、またはウォブリング駆動によって、フォーカスレンズを合焦位置まで駆動させる。ウォブリング駆動では、CPU1301は、フォーカスレンズを駆動したときにAF制御回路1302で算出された合焦評価値が、前回のレンズ位置での合焦評価値に対して増加したかを判定する。そして、CPU1301は、合焦評価値が増加した場合には前回と同方向にフォーカスレンズを微小駆動させ、合焦評価値が減少した場合には前回と逆方向にフォーカスレンズを微小駆動させる。このような動作を高速で繰り返してフォーカスレンズを徐々に合焦位置まで駆動させる。
【0044】
また、AE処理において、CPU1301は、AE制御回路1303で算出された追尾位置の被写体の輝度を予め定められた適正な量(適正露光量)とする、本露光時の絞り106の開口量(絞り値)、シャッタ110の開放時間(シャッタ速度値)を算出する。
【0045】
S114において、CPU1301は、2ndレリーズスイッチがオンされたかを判定する。S114において、2ndレリーズスイッチがオンされていないと判定した場合に、CPU1301は、S110の追尾処理以後の処理を実行する。このように、静止画撮影モード時には、2ndレリーズスイッチがオンされるまでは、追尾処理が継続される。
【0046】
また、S114において、2ndレリーズスイッチがオンされたと判定した場合に、S116において、CPU1301は、表示素子駆動回路122を制御して、追尾枠を非表示とする。
S118において、CPU1301は、静止画像データを記録メディア128に記録する処理を行う。この際、CPU1301は、シャッタ駆動機構112を制御して、シャッタ110を閉じる。その後、CPU1301は、絞り駆動機構108を制御して、絞り106を先に算出した絞り値まで絞り込む。続いて、CPU1301は、シャッタ駆動機構112を制御して、シャッタ110を先に算出した開放時間だけ開放しつつ、撮像素子114による撮像(露光)を行う。その後、CPU1301は、撮像素子114を介して得られた静止画像データを画像処理回路1304において処理する。そして、CPU1301は、画像処理回路1304において処理された静止画像データにヘッダを付与して静止画像ファイルを生成し、生成した静止画像ファイルを記録メディア128に記録する。
S120において、CPU1301は、S110の追尾処理の結果として得られた追尾位置を示すデータを、先に記録メディア128に記録した静止画像ファイルに追記する。その後に、CPU1301は、図5に示す動作を終了させる。
【0047】
また、S100において、撮影設定が動画撮影モードであると判定した場合に、S122において、CPU1301は、ライブビュー動作を開始させる。
S124において、CPU1301は、動画釦がオンされたかを判定する。S124において、動画釦がオンされたと判定するまでは、CPU1301は、ライブビュー動作を継続する。
【0048】
また、S124において、動画釦がオンされたと判定した場合に、S126において、CPU1301は、表示素子駆動回路122を制御して、表示素子120に追尾枠を表示させる。
S128において、CPU1301は、追尾処理を行う。この追尾処理の詳細については、後述する。
【0049】
S130において、CPU1301は、追尾位置の被写体に合焦するようにAF処理を行うともに、追尾位置の被写体の露光が適正となるようにAE処理を行う。S130におけるAF処理おいては、ウォブリング駆動によって、フォーカスレンズを合焦位置まで駆動させる。
【0050】
S132において、CPU1301は、動画像データを記録メディア128に記録する処理を行う。この際、CPU1301は、絞り駆動機構108を制御して、絞り106をAE処理において算出した絞り値まで絞り込む。続いて、CPU1301は、AE処理において算出したシャッタ速度値に対応した時間だけ撮像素子114による撮像(露光)を実行させる。露光の終了後、CPU1301は、動画像ファイルを生成して記録メディア128に記録する。また、CPU1301は、撮像素子114を介して得られた動画像データを画像処理回路1304において処理し、画像処理回路1304において処理された動画像データを動画像ファイルに記録する。
【0051】
S134において、CPU1301は、S128の追尾処理の結果として得られた追尾位置を示すデータを、先に記録メディア128に記録した動画像ファイルと同時記録する。
S136において、CPU1301は、動画釦がオフされたかを判定する。S136において、動画釦がオフされていないと判定した場合に、CPU1301は、S128の追尾処理以後の処理を実行する。このように、動画撮影モード時では、動画釦がオフされるまでは、追尾処理と動画像データの記録が継続される。
【0052】
また、S136において、動画釦がオフされたと判定した場合に、S138において、CPU1301は、表示素子駆動回路122を制御して、追尾枠を非表示とする。その後、CPU1301は、図5に示す動作を終了させる。
以下、本一実施形態に係る追尾方法としての追尾処理について図6乃至図8を参照して説明する。本実施形態においては、複数の追尾処理を併用して追尾対象の追尾を行う。図6は、本発明の一実施形態に係る追尾方法としての追尾処理について示すフローチャートである。図7及び図8は、本発明の一実施形態に係る追尾方法としての追尾処理について示すタイミングチャートである。
【0053】
図7及び図8に記載の“画像データ”は“RAWデータ”を示しており、“画像処理データ”は“RAWデータに対して上述の“特殊な処理”を施して生成したデータ(例えばYCデータや複数フレームを一つのフレームに合成した画像データ)“を示している。また、図7及び図8に示されている各グラフは、それぞれ上から順に“垂直同期信号VDのON/OFF期間”、“撮像素子114の露光期間”、“RAWデータの生成期間”、“画像処理データの生成期間”、“第1の特徴情報(輝度情報)を利用する追尾処理期間”、“第2の特徴情報(色情報)を利用する追尾処理期間”、“被写体の顔部位を利用する追尾処理期間”、“何れの追尾処理を利用するかの判定及び追尾位置の信頼性の判定期間”、“追尾枠の表示位置の更新期間”を示している。
【0054】
図7及び図8に示すように、CPU1301からの垂直同期信号VDに同期して、撮像素子114は露光を開始し、予め設定された期間(1フレーム分)だけ露光する。すなわち、CPU1301は、垂直同期信号VDにより撮像素子IF回路116を制御して撮像素子114による撮像を実行する。そして、CPU1301は、撮像素子114による撮像により、撮像素子IF回路116において得られた画像データをRAM118に取り込む。
【0055】
なお、初回の追尾処理で得られた画像データは、評価画像データとする。このため、CPU1301は、初回の追尾処理で得られた画像データをRAM118の評価画像エリアに取り込む。また、2回目以後の追尾処理で得られた画像データは、参照画像データとする。このため、CPU1301は、2回目以後の追尾処理で得られた画像データをRAM118の参照画像エリアに取り込む。
【0056】
また、初回の追尾処理においては、評価画像データのみが取得された状態であるので、S203乃至S219の処理、及びS222乃至S232の処理は省略される。以後の説明においては、評価画像データと参照画像データの両方が取得されているものとして説明を続ける。
【0057】
S201において、CPU1301は、画像処理回路1304による画像処理に要する時間が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。つまり、“画像処理時間≧閾値”であるか否かを判定する。例えば、当該撮像装置100が“第2の画像生成モード”に設定されている場合であって“特殊な処理”を行う場合等の、追尾性能の劣化が生じる可能性がある場合には“画像処理時間≧閾値”となる。当該撮像装置100が“第1の画像生成モード”に設定されている場合には、画像処理回路1304による“特殊な処理”を行わないため“画像処理時間<閾値”となる。
【0058】
このS201における判定結果に基づいて、以降の追尾処理工程を切り換えることによって、CPU1301は、例えば当該撮像装置100が“第2の画像生成モード”に設定されている場合等の、追尾性能の劣化が生じる可能性がある場合であっても、適切な追尾処理を実行することができる。
【0059】
“画像処理時間≧閾値”の場合には、図8に示すように、顔検出による追尾処理の結果を含めると“追尾結果判断(図6のフローチャートにおける追尾位置設定ステップ)”で決定された当該最終的な追尾位置を、輝度情報/色情報を利用した次回の追尾処理における開始位置とすることができない。このことを鑑み、被写体の顔部位が検出された場合には、S201乃至S206の一連の処理によって顔部位のみを利用した追尾処理を実行し、他方、被写体の顔部位が検出されない場合には、S211乃至S219の一連の処理によって、輝度情報/色情報のみを利用した追尾処理を実行する。以下、詳細に説明する。
【0060】
S201において、画像処理回路1304による画像処理時間が所定の閾値以上であると判定した場合、CPU1301は、S202において“画像処理データ”を取得する。この“画像処理データ”は、当該フレームの直前フレーム生成中に撮像素子114が垂直同期信号VDに同期して露光した信号に基づく画像データ(RAWデータ)に、画像処理回路1304によって所定の画像処理を施して生成した画像データである。
【0061】
S203において、CPU1301は顏検出回路1307によって被写体の顏部位の検出処理を実行し、S204において、顔部位が検出されたか否かを判定する。
S204において、顔部位を検出したと判定した場合、CPU1301はS205において顔部位の中から追尾位置(例えば顔部位領域の重心位置)を演算し、顔部位を用いた追尾処理を行う。顔部位を用いた追尾処理については、前述したので説明を省略する。
【0062】
S206において、CPU1301は、S205で演算した参照画像データの最終的な追尾位置を、RAM118の追尾ログエリアに記録する。
【0063】
S210において、CPU1301は、表示素子駆動回路122を制御して、追尾枠の表示位置をS206で記憶させた追尾位置に対応した位置に更新する。その後、CPU1301は、図6の追尾処理を終了させる。
ところで、S204において顔部位が検出されていないと判定した場合、CPU1301は、S211において“画像データ(RAWデータ)”を取得する。この“画像データ”は、当該フレームの直前フレーム生成中に撮像素子114が垂直同期信号VDに同期して露光した信号に基づく画像データ(RAWデータ)である。
【0064】
S212及びS213において、CPU1301は、追尾処理回路1305により、第1の追尾処理としての輝度情報を用いた追尾処理を行う(輝度情報の検出と追尾位置の演算)。輝度情報を用いた追尾処理については、前述したので説明を省略する。なお、CPU1301は、S212及びS213の処理(輝度情報を用いた追尾処理)の結果として得られた追尾位置を、第1の候補追尾位置としてRAM118の追尾ログエリアに記憶させる。
【0065】
S214において、CPU1301は、S213で得られた追尾位置の信頼性を判断する。例えば参照画像データのコントラストから信頼性を判断する。具体的には、参照画像データにおける追尾対象の領域の隣接画素間の差分和が所定値以下である場合には、信頼性があると判断する。信頼性を判定するための閾値は適宜設定可能である。
【0066】
S215及びS216において、CPU1301は、追尾処理回路1306により、第2の追尾処理としての色情報を用いた追尾処理を行う(色情報の検出と追尾位置の演算)。色情報を用いた追尾処理については、前述したので説明を省略する。なお、CPU1301は、S215及びS216の処理(色情報を用いた追尾処理)の結果として得られた追尾位置を、第2の候補追尾位置としてRAM118の追尾ログエリアに記憶させる。
【0067】
S217において、CPU1301は、S216で得られた追尾位置の信頼性を判断する。例えば参照画像データの彩度から信頼性を判断する。具体的には、参照画像データの追尾位置の彩度が所定値以上である場合には、信頼性があると判断する。信頼性を判定するための閾値は適宜設定可能である。
【0068】
S218において、CPU1301は、追尾位置の判定処理を行う。この追尾位置の判定処理は、輝度情報を用いた追尾処理の結果と色情報を用いた追尾処理の結果との何れを採用するかを判定する処理である。この追尾位置の判定処理は、例えば各特徴情報に基づいて演算した追尾位置の信頼性に基づく判定処理とすればよい。
【0069】
S219において、CPU1301は、S218の判定結果に基づいて採用した最終的な追尾位置のみを、RAM118の追尾ログエリアに記録する。次回の追尾処理においては、輝度情報を用いた追尾処理と色情報を用いた追尾処理の両方で、この最終的な追尾位置を追尾処理の開始位置とする。
【0070】
そして、S210において、CPU1301は、表示素子駆動回路122を制御して、追尾枠の表示位置をS219で記憶させた追尾位置に対応した位置に更新する。その後、CPU1301は、図6の追尾処理を終了させる。
ところで、“画像処理時間<閾値”の場合には、図7に示すように、顔検出による追尾処理の結果を含めても“追尾結果判断(図6のフローチャートにおける追尾位置設定ステップ)”で決定された当該最終的な追尾位置を、輝度情報/色情報を利用した次回の追尾処理における開始位置とすることができる。従って、被写体の顔部位を利用した追尾処理と、輝度情報/色情報を利用した追尾処理との双方を実行する。以下、詳細に説明する。
【0071】
S201において、画像処理回路1304による画像処理時間が所定の閾値以上ではないと判定した場合、CPU1301は、S221において“画像データ(RAWデータ)”を取得する。この“画像データ”は、当該フレームの直前フレーム生成中に撮像素子114が垂直同期信号VDに同期して露光した信号に基づく画像データ(RAWデータ)である。
【0072】
S222及びS223において、CPU1301は、追尾処理回路1305により、第1の追尾処理としての輝度情報を用いた追尾処理を行う(輝度情報の検出と追尾位置の演算)。輝度情報を用いた追尾処理については、前述したので説明を省略する。なお、CPU1301は、S222及びS223の処理(輝度情報を用いた追尾処理)の結果として得られた追尾位置を、第1の候補追尾位置としてRAM118の追尾ログエリアに記憶させる。
【0073】
S224において、CPU1301は、S213で得られた追尾位置の信頼性を判断する。例えば参照画像データのコントラストから信頼性を判断する。具体的な判断方法については、前述したので説明を省略する。
S225及びS226において、CPU1301は、追尾処理回路1306により、第2の追尾処理としての色情報を用いた追尾処理を行う(色情報の検出と追尾位置の演算)。色情報を用いた追尾処理については、前述したので説明を省略する。なお、CPU1301は、S225及びS226の処理(色情報を用いた追尾処理)の結果として得られた追尾位置を、第2の候補追尾位置としてRAM118の追尾ログエリアに記憶させる。
【0074】
S227において、CPU1301は、S216で得られた追尾位置の信頼性を判断する。例えば参照画像データの彩度から信頼性を判断する。具体的な判断方法については、前述したので説明を省略する。
S228において、CPU1301は“画像処理データ”を取得する。この“画像処理データ”は、当該フレームの直前フレーム生成中に撮像素子114が垂直同期信号VDに同期して露光した信号に基づく画像データ(RAWデータ)に、画像処理回路1304によって所定の画像処理を施して生成した画像データである。
【0075】
S229において、CPU1301は顏検出回路1307によって被写体の顏部位の検出処理を実行する。
S230において、CPU1301は顔部位の中から追尾位置(例えば顔部位領域の重心位置)を演算し、顔部位を用いた追尾処理を行う。顔部位を用いた追尾処理については、前述したので説明を省略する。
【0076】
S231において、CPU1301は、追尾位置の判定処理を行う。この追尾位置の判定処理は、輝度情報を用いた追尾処理の結果と、色情報を用いた追尾処理の結果と、顔部位を用いた追尾処理の結果とのうち何れを採用するかを判定する処理である。この追尾位置の判定処理は、例えば各特徴情報に基づいて演算した追尾位置の信頼性に基づく判定処理としたり、条件に応じて顔部位を用いた追尾処理を優先したりすればよい。
【0077】
S232において、CPU1301は、S231の判定結果に基づいて採用した最終的な追尾位置のみを、RAM118の追尾ログエリアに記録する。次回の追尾処理においては、輝度情報を用いた追尾処理と色情報を用いた追尾処理の両方で、この最終的な追尾位置を追尾処理の開始位置とする。
【0078】
以上説明したように、本一実施形態によれば、例えば特殊な画像処理を行う場合等の、追尾性能の劣化が生じ得る場合であっても、適切な追尾処理を行うことができる追尾装置及び追尾方法を提供することができる。
なお、上述の例では、追尾処理に用いる特徴情報として色情報、輝度情報、及び被写体顔部位を挙げているが、その他にも例えば輪郭情報を所謂シルエット検出により検出し、これを用いて追尾処理を行っても勿論よい。
【0079】
ところで、ライブビュー表示における表示フレームレートは、画像処理回路1304による画像処理時間に応じて変化する為、第1の画像生成モードが設定された場合の画像表示に係るフレームレートと、第2の画像生成モードが設定された場合の画像表示に係るフレームレートとを互いに異なるフレームレートとすることが好ましい。
【0080】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。また、前述の動作の説明において、便宜上「まず」、「次に」等を用いて動作を説明しているが、この順で動作を実施することが必須であることを意味するものではない。
以上説明した実施形態においては、画像処理時間と閾値とに応じて処理を切り替えているが、追尾演算の処理を切り替える為の判断基準はこれに限らない。以下、応用例として前記判断基準のバリエーションを説明する。
第1の応用例として、処理に時間がかかる画像処理モードと、時間がかからない画像処理モードとで追尾処理を切替えるといったように、設定されている画像処理モードを追尾演算切換えの判断基準にしてもよい。
第2の応用例として、画像処理を優先する場合には追尾処理を簡略化し、追尾処理を優先する場合には画像処理を簡略化するといったように、処理毎の優先順位を追尾演算切換えの判断基準にしてもよい。
第3の応用例として、例えば輝度で追尾するのに適した被写体の場合には輝度追尾処理を優先して他の追尾処理を簡略化し、色で追尾するのに適した被写体の場合には色追尾処理を優先して他の追尾処理を簡略化するといったように、被写体の特徴を追尾演算切換えの判断基準にしてもよい。
第4の応用例として、例えば連写中に追尾を行う場合、低速度の連写選択時には精度を優先し通常の追尾処理を行い、高速度の連写選択時には速度を優先し追尾処理を簡略化するといったように、カメラの設定を追尾演算切換えの判断基準にしてもよい。
第5の応用例として、撮影レンズの焦点距離が短い(画角が広い)場合には精度を優先し通常の追尾処理を行い、焦点距離が長い(画角が狭い)場合は速度を優先し追尾処理を簡略化するといったように、レンズの焦点距離を追尾演算切換えの判断基準にしてもよい。
【0081】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0082】
100…撮像装置、102…撮影光学系、104…焦点調整機構、106…絞り、108…絞り駆動機構、110…シャッタ、112…シャッタ駆動機構、114…撮像素子、116…撮像素子インターフェイス(IF)回路、118…RAM、120…表示素子、122…表示素子駆動回路、124…タッチパネル、126…タッチパネル駆動回路、128…記録メディア、130…システムコントローラ、132…操作部、134…ROM、1301…CPU、1302…AF制御回路、1303…AE制御回路、1304…画像処理回路、1305,1306…追尾処理回路、1307…顏検出回路、1308…色情報取得回路、1309…メモリ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影して得た画像データである第1の画像データを生成する第1の画像生成モードと、前記第1の画像データを生成すると共に前記第1の画像データに所定の処理を施した第2の画像データを生成する第2の画像生成モードと、のうち何れかの画像生成モードを設定する作画モード設定部と、
当該追尾装置に入力された画像データを、前記作画モード設定部の設定に応じて処理する画像処理部と、
前記画像処理部により処理された画像データについて特徴情報を検出し、且つ、被写体の顔部位を検出する追尾検出部と、
前記特徴情報または前記顔部位に基づいて、追尾対象の移動位置を演算する追尾演算部と、
前記第2の画像生成モードが設定された場合には、前記追尾演算部による演算を、前記第1の画像生成モードが設定された場合に実行する演算とは異なる演算に切り換える演算切換部と、
を具備することを特徴とする追尾装置。
【請求項2】
前記演算切換部は、前記第2の画像生成モードが設定された場合には、前記追尾検出部による前記被写体の顔部位の検出の有無に応じて、前記追尾演算部による演算を切り換える
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項3】
前記演算切換部は、前記追尾検出部により前記被写体の顔部位が検出された場合には、前記追尾演算部による演算を前記被写体の顔部位の検出結果に基づいた演算に切り換え、前記被写体の顔部位が検出されなかった場合には、前記追尾演算部による演算を前記特徴情報に基づいた演算に切り換える
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項4】
前記特徴情報は、色情報、輝度情報、輪郭情報のうち少なくとも何れかひとつの情報である
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項5】
前記所定の処理は、複数フレームの画像データを合成して1つのフレームの前記第2の画像データを生成する処理、1フレームの画像データに対して行う光学的処理または現像に類する処理、及び1フレームの画像データの一部を切り出して複数の前記第2の画像データを生成する処理、のうち少なくとも何れか一つの処理である
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項6】
前記第1の画像生成モードが設定された場合の画像表示に係るフレームレートと、前記第2の画像生成モードが設定された場合の画像表示に係るフレームレートとは異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項7】
前記第2の画像生成モードが設定された場合には、前記所定の画像処理に対して前記追尾演算を優先して処理する
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項8】
前記第2の画像生成モードが設定された場合には、前記追尾演算に対して前記所定の画像処理を優先して処理する場合には、前記追尾演算の処理のうち一部の処理を実行しない
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項9】
撮影して得た画像データである第1の画像データを生成する第1の画像生成モードと、前記第1の画像データを生成すると共に前記第1の画像データに所定の処理を施した第2の画像データを生成する第2の画像生成モードと、のうち何れかの画像生成モードを設定し、
入力された画像データを、前記作画モード設定部の設定に応じて処理し、
前記処理された画像データについて特徴情報を検出し、且つ、被写体の顔部位を検出し、
前記特徴情報または前記顔部位に基づいて、追尾対象の移動位置を演算し、
前記第2の画像生成モードが設定された場合には、前記追尾演算部による演算を、前記第1の画像生成モードが設定された場合に実効する演算とは異なる演算に切り換える、
ことを特徴とする追尾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−12944(P2013−12944A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144775(P2011−144775)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】