説明

送りねじ装置

【課題】必要なストロークを確保しつつ、小型化が可能な送りねじ装置を提供する。
【解決手段】大径ナット140が回転駆動されると、大径ナット140が螺合する大径ねじ軸130及び大径ねじ軸130と一体をなす小径ナット120に回転力が作用することとなり、更に、小径ナット120が螺合する小径ねじ軸110にも回転力が作用することとなる。一方、小径ねじ軸110は、ねじ軸を中心とした回転方向の動きが拘束されており、回転することはない。そのため、大径ナット140が回転駆動されると、小径ねじ軸110に対して小径ナット120が回転すると共に、大径ねじ軸130に対して大径ナット140が回転することとなる。そうすると、小径ねじ軸110と大径ねじ軸130とで、ねじの方向が同じなので、大径ナット140の回転に伴って大径ねじ軸130が直線運動を行うと共に、小径ナット120の回転に伴って小径ねじ軸110が、大径ねじ軸130と同一方向に直線運動を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ等の送りねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械、半導体製造装置、産業用ロボット等の各種装置で、ボールねじ等の送りねじが利用されている。送りねじを利用することで、モータ等の回転運動を直線運動に変換して、物体位置を直線的に変化させることが可能になる。
【0003】
しかしながら、従来の送りねじでは、直線運動のストロークが、ねじ軸の長さに制限されるため、ストロークを大きくしようとすると、その分、ねじ軸を長くする必要があり、その結果、送りねじ自体が大型化してしまい、ひいては、装置全体の大型化にも繋がってしまう。
【0004】
なお、実開平3−29748号公報には、長いストロークを必要とする送り機構において、スライダーの上部に同様な送り機構を取り付けて段重ねにし、下の送り機構の駆動を上の送り機構に伝達し、上下の送り機構のスライダーを同時に移動させるように構成して、据え付け面積を小さくできるようにしたものが開示されている。
【特許文献1】実開平3−29748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、必要なストロークを確保しつつ、小型化が可能な送りねじ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る送りねじ装置は、第一のねじ軸と、前記第一のねじ軸に螺合する第一のナットと、前記第一のねじ軸を軸方向に収容するための孔が形成された第二のねじ軸と、前記第二のねじ軸に螺合する第二のナットとを備え、前記第一のナットと、前記第二のねじ軸とは一体をなすよう構成され、前記第一のねじ軸と、前記第二のねじ軸とに、同じ方向のねじが形成されていることを特徴とする。
【0007】
この場合において、前記第一のねじ軸及び前記第二のねじ軸のリードが同一であるようにしてもよい。また、前記第一のねじ軸及び前記第一のナット並びに前記第二のねじ軸及び前記第二のナットによって構成される2段ねじ構成が、3段以上の多段構成になっているようにしてもよい。
【0008】
また、前記第一のねじ軸及び前記第二のナットのいずれか一方が回転駆動され、他方が直線移動するようにしてもよい。この場合、前記第二のナットに、筒状駆動部材が連結され、当該筒状駆動部材が回転駆動されるようにしてもよい。
【0009】
また、以上の場合において、前記第一のねじ軸及び前記第二のねじ軸の少なくとも一方の端部に抜け止め部(例えば、後述するストッパ)を設けるようにしてもよい。また、前記第一のねじ軸及び前記第一のナット並びに前記第二のねじ軸及び前記第二のナットは、それぞれ、ボールを介して螺合しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、必要なストロークを確保しつつ、小型化が可能な送りねじ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、各図における左側を後部側又は後端側といい、右側を前部側又は先端側という。
【0012】
図1〜図6は、本発明による送りねじ装置の構造を説明するための図である。図1は、縮めた状態の送りねじ装置を示しており、同図(a)は平面図を示し、同図(b)は正面図を示している。また、図2は、伸ばした状態の送りねじ装置の前部側を示しており、同図(a)は平面図を示し、同図(b)は正面図を示している。同様に、図3は、伸ばした状態の送りねじ装置の後部側を示しており、同図(a)は平面図を示し、同図(b)は正面図を示している。また、図4〜図6は、伸ばした状態の送りねじ装置の部分拡大図を示しており、図4は、小径ナット(後述)付近の拡大平面図を示し、図5は、大径ナット(後述)付近の拡大平面図を示し、図6は、後端部付近の拡大正面図を示している。
【0013】
図1〜図3に示すように、本発明による送りねじ装置100は、第一のねじ軸である小径ねじ軸110と、第一のナットである小径ナット120と、第二のねじ軸である大径ねじ軸130と、第二のナットである大径ナット140と、前部カバー150と、中間カバー160と、後部カバー170と、先端側取付部材111と、後端側取付部材180と、減速機付きサーボモータ190とを備える。小径ねじ軸110と、小径ナット120と、大径ねじ軸130と、大径ナット140と、前部カバー150と、中間カバー160と、後部カバー170とは、同一軸線上に配置される。そして、小径ねじ軸110に、小径ナット120が螺合され、大径ねじ軸130に、大径ナット140が螺合されている。本実施形態では、小径ねじ軸110及び小径ナット120並びに大径ねじ軸130及び大径ナット140は、それぞれ、多数のボール(玉)を介して螺合しており、小径ねじ軸110及び小径ナット120で、第一のボールねじ(小径ボールねじ)を形成し、大径ねじ軸130及び大径ナット140で、第二のボールねじ(大径ボールねじ)を形成している。
【0014】
小径ねじ軸110は、小径ナット120を回転させると、直線運動する部材であって、一方(図1における右側)の端部が、先端側取付部材111に固定される。また、図4に示すように、他方の端部には、抜け止め用のストッパ112が取り付けられている。ストッパ112は、小径ねじ軸110の端部に取り付けられて、半径方向に鍔状に張り出す部材であって、張り出し部の小径ナット120に対向する面が、小径ナット120の端面と当接することで、小径ねじ軸110が小径ナット120から抜けるのを防止するものである。なお、実際は、ストッパ112と小径ナット120とは、直接当接するのではなく、適当な緩衝部材を介して当接することになる。
【0015】
小径ナット120は、小径ねじ軸110にねじ込まれる部材であって、図4に示すように、連結部材131を介して、大径ねじ軸130と連結され、大径ねじ軸130と一体をなす。すなわち、小径ナット120は、大径ねじ軸130を回転させると、大径ねじ軸130と一体となって回転する。
【0016】
大径ねじ軸130は、大径ナット140を回転させると、直線運動する部材であって、前述したように、一方(図1における右側)の端部が、小径ナット120に固定される。また、図5に示すように、他方の端部には、抜け止め用のストッパ132が取り付けられている。ストッパ132は、大径ねじ軸130の端部に取り付けられて、半径方向に鍔状に張り出す部材であって、張り出し部の大径ナット140に対向する面が、大径ナット140の端面と当接することで、大径ねじ軸130が大径ナット140から抜けるのを防止するものである。なお、実際は、ストッパ132と大径ナット140とは、直接当接するのではなく、適当な緩衝部材を介して当接することになる。
【0017】
また、大径ねじ軸130に形成されるねじ(溝)の方向は、小径ねじ軸110に形成されるねじ(溝)の方向と同一にされる。すなわち、小径ねじ軸110(及び小径ナット120)が右ねじの場合は、大径ねじ軸130(及び大径ナット140)も右ねじとなり、小径ねじ軸110(及び小径ナット120)が左ねじの場合は、大径ねじ軸130(及び大径ナット140)も左ねじとなる。本実施形態では、小径ねじ軸110及び大径ねじ軸130は共に右ねじであるとする。更に、本実施形態では、小径ねじ軸110と大径ねじ軸130とに形成されるねじは、そのリード(ねじを一回転させたときに進む距離、一条ねじの場合はピッチと一致)が同一になるように形成される。また、図4及び図5に示すように、大径ねじ軸130は、その中心に、軸方向に延びる貫通孔133が形成されていて、中空状になっている。送りねじ装置100を縮めた状態では、当該貫通孔133に、小径ねじ軸110が同軸状に収容されることとなる。
【0018】
大径ナット140は、大径ねじ軸130にねじ込まれる部材であって、後部カバー170と連結されて、後部カバー170と一体をなす。すなわち、大径ナット140は、後部カバー170を回転させると、後部カバー170と一体となって回転する。
【0019】
前部カバー150は、送りねじ装置100が縮んだ際には、その内部に、中間カバー160を収容し、送りねじ装置100が伸びた際には、図2に示すように、小径ねじ軸110の部分を覆う円筒(パイプ)状の部材であって、その一方(図1における右側)の端部が先端側取付部材111に固定されて、先端側取付部材111(及び小径ねじ軸110)と共に移動する。前部カバー160は、送りねじ装置100が縮んだ際に、中間カバー160を収容できるよう、中間カバー160の外径より大きい内径を有するように構成される。
【0020】
中間カバー160は、送りねじ装置100が縮んだ際には、その内部に、後部カバー170を収容し、送りねじ装置100が伸びた際には、図2及び図3に示すように、大径ねじ軸130の部分を覆う円筒(パイプ)状の部材であって、その一方(図1における右側)の端部が連結部材131に固定されて、小径ナット120と一体をなし、小径ナット120(及び大径ねじ軸130)と共に移動する。中間カバー160は、送りねじ装置100が縮んだ際に、後部カバー170を収容できるよう、後部カバー170の外径より大きい内径を有するように構成される。
【0021】
後部カバー170は、大径ナット140を回転駆動すると共に、送りねじ装置100が縮んだ際には、その内部に、大径ねじ軸130を収容する円筒(パイプ)状の部材であって、前述したように、一方(図1における右側)の端部が、大径ナット140に固定される。また、図6に示すように、他方の端部には、平歯車171と、2つのアンギュラベアリング172,173とが取り付けられている。
【0022】
平歯車171は、後部カバー170を回転させるための歯車であって、後部カバー170の端部に固定されている。また、2つのアンギュラベアリング172,173は、後部カバー170を回転可能に支持する軸受であって、平歯車1を挟むように配置される。2つのアンギュラベアリング172,173はそれぞれ、その内輪が後部カバー170に固定され、その外輪が後端側取付部材180に固定される。
【0023】
平歯車192は、平歯車171とかみ合って、後部カバー170を回転駆動するための歯車であって、減速機付きサーボモータ190の回転軸(出力シャフト)191に固定される。減速機付きサーボモータ190は、平歯車192、171を介して、後部カバー170を回転駆動するものである。減速機付きサーボモータ190を、ある一方方向に回転させると、送りねじ装置100が伸び、逆方向に回転させると、送りねじ装置100が縮むことになる。
【0024】
先端側取付部材111及び後端側取付部材180は、それぞれ、送りねじ装置100を他の部材に取り付けるための部材である。例えば、後述するように、後端側取付部材180は、静止している部材に取り付けられ、先端側取付部材111は、静止している部材に対して移動する部材に取り付けられる。図2及び図3に示すように、先端側取付部材111及び後端側取付部材180は、それぞれ、ねじ軸110,130とは垂直な方向に延びる孔113,181が形成されている。当該孔113,181に挿入される軸(シャフト)を介して、先端側取付部材111及び後端側取付部材180は、他の部材に取り付けられる。その結果、先端側取付部材111及び後端側取付部材180はそれぞれ、その孔113,181に挿入された軸を中心には回転できるが、送りねじ装置100のねじ軸110,130を中心には回転できないようになる。
【0025】
次に、以上のような構造を有する送りねじ装置100の動作について説明する。
【0026】
図7は、送りねじ装置100の動作を説明するための図である。同図(a)は、送りねじ装置100が縮んだ状態を示し、同図(b)〜(e)は、送りねじ装置100が伸びる様子を示している。なお、同図では、わかりやすくするため、ねじ軸110,130及びナット120,140の部分のみを簡略化して示している。
【0027】
同図(a)に示した状態で、後部カバー170が、減速機付きサーボモータ190によって回転駆動されて、後端側から見て左回り(反時計回り)に回転をし始めると、後部カバー170と一体をなす大径ナット140も左回りに回転し始める。そうすると、大径ナット140が螺合する大径ねじ軸130にも左回りの力が作用することになる。そうすると、大径ねじ軸130と一体をなす小径ナット120にも左回りの力が作用することとなり、更に、小径ナット120が螺合する小径ねじ軸110にも左回りの力が作用することとなる。しかしながら、本実施形態では、小径ねじ軸110は、先端側取付部材111に固定されており、ねじ軸を中心とした回転方向の動きが拘束されているので、回転することはない。
【0028】
ここで、説明を簡単にするため、大径ナット140に比べて小径ナット120の方が回りやすい(大径ねじ軸130と大径ナット140との間の摩擦に比べて、小径ねじ軸110と小径ナット120との間の摩擦の方が小さい)と仮定すると、小径ナット120に左回りの力が作用することにより、小径ねじ軸110に対して、小径ナット120が左回りに回転し始めることとなり、小径ねじ軸110の先端(同図における右端)と、小径ナット120とが互いに離れる方向に移動し始めることになる。すなわち、小径ねじ軸110の部分が(同図において、右方向に)伸び始めることになる。そして、小径ねじ軸110の後端部に取り付けられたストッパ112が、小径ナット120に当接するようになるまで、伸び続ける。なお、このとき、大径ナット140及び大径ねじ軸130は、一体となって回転している。
【0029】
そして、同図(b)に示すように、小径ねじ軸110のストッパ112が、小径ナット120に当接すると、小径ナット120はそれ以上回転できなくなるので、小径ナット120と一体をなす大径ねじ軸130も回転できなくなり、その結果、大径ねじ軸130に対して、大径ナット140が左回りに回転し始めることになる。そうすると、大径ねじ軸130の先端(同図における右端)と、大径ナット140とが互いに離れる方向に移動し始めることになる。すなわち、大径ねじ軸130の部分が(同図において、右方向に)伸び始めることになる。そして、大径ねじ軸130の後端部に取り付けられたストッパ132が、大径ナット140に当接するようになるまで、伸び続ける。但し、実際は、減速機付きサーボモータ190の回転量を制御することによって、ストッパ132が、大径ナット140に当接する前に、伸長動作は停止される。なお、同図(c)に示すように、両方のストッパ112,132が、対応するナット120,140に当接するようになった状態が、送りねじ装置100が最大に伸びた状態である。
【0030】
なお、ここでは、大径ナット140に比べて、小径ナット120の方が回りやすいと仮定して説明をしたが、逆に、小径ナット120に比べて、大径ナット140の方が回りやすい(小径ねじ軸110と小径ナット120との間の摩擦に比べて、大径ねじ軸130と大径ナット140との間の摩擦の方が小さい)場合は、後部カバー170が左回りに回転し始めると、まず、(大径ねじ軸130に対して)大径ナット140が回転し始めることとなり、その結果、まず、大径ねじ軸130の部分が(同図において、右方向に)伸び始めることになる。そして、大径ねじ軸130の後端部に取り付けられたストッパ132が、大径ナット140に当接するようになるまで、伸び続ける。そして、同図(d)に示すように、大径ねじ軸130のストッパ132が、大径ナット140に当接すると、今度は、(小径ねじ軸110に対して)小径ナット120が回転し始めることになり、小径ねじ軸110の部分が(同図において、右方向に)伸び始めることになる。そして、小径ねじ軸110の後端部に取り付けられたストッパ112が、小径ナット120に当接するようになるまで、伸び続ける。なお、前述したように、実際は、減速機付きサーボモータ190の回転量を制御することによって、ストッパ112が、小径ナット120に当接する前に、伸長動作は停止される。
【0031】
また、実装条件によっては、小径ナット120及び大径ナット140が一つずつ順番に回転するのではなく、同図(e)に示すように、両方が同時に回転する場合も考えられる。この場合、必ずしも小径ナット120及び大径ナット140の両方が同じ量だけ回転するとはかぎらないが、両方の回転量の合計は、後部カバー170の回転量に一致することとなる。例えば、後部カバー170を一回転(360度)回転させた場合、大径ねじ軸130に対する大径ナット140の回転量(回転角度)と、小径ねじ軸110に対する小径ナット120の回転量(回転角度)との合計は、必ず一回転分(360度)となる。更に、前述したように、本実施形態では、小径ねじ軸110と大径ねじ軸130とでねじのリードを一致させている。その結果、どちらのナット120,140がどの程度回転したかに関係なく、後部カバー170を一回転させると、送りねじ装置100全体では、1リード分だけ伸びたり縮んだりすることとなる。すなわち、小径ねじ軸110と大径ねじ軸130とでねじのリードを一致させてさえいれば、小径ナット120と大径ナット140のどちらが先に回転し始めるかや、どちらがどれだけ回転するか等を考慮することなく、減速機付きサーボモータ190の回転量を制御するだけで、送りねじ装置100の伸縮量の制御が行えるようになる。
【0032】
次に、送りねじ装置100の利用例について説明する。ここでは、本願出願人と同一の出願人による特開2008−53567号公報に記載されている基板移載装置に送りねじ装置100を利用する場合を考える。
【0033】
図8は、送りねじ装置100を前記基板移載装置に利用した例を説明するための図である。同図(a)は、送りねじ装置100が縮んだ状態を示しており、同図(b)は、送りねじ装置100が伸びた状態を示している。
【0034】
同図に示すように、基板移載装置を構成するチルトベース部810とチルト部820とは、下端部において、水平連結軸830によって連結されており、チルト部820は、チルトベース部810に対して、水平連結軸830を中心に回転することで、前傾できるように構成されている。そして、チルト部820のチルト動作(前傾動及び前傾状態から元の垂直状態に復帰する動き)を実現するため、チルトベース部810とチルト部820とは、送りねじ装置100によって連結されている。より具体的には、チルトベース部810と、送りねじ装置100の後端側取付部材180とが、水平連結軸830と平行な第一連結軸840を介して連結されており、チルト部820と、送りねじ装置100の先端側取付部材111とが、水平連結軸830と平行な第二連結軸850を介して連結されている。その結果、送りねじ装置100の後端側取付部材180及び先端側取付部材111はそれぞれ、第一連結軸840及び第二連結軸850を中心には回転できるが、送りねじ装置100のねじ軸を中心には回転することができないことになる。このようにして、チルトベース部810とチルト部820とを、送りねじ装置100で連結することにより、送りねじ装置100を伸ばすことで、同図(b)に示すように、チルト部820を前傾させ、送りねじ装置100を縮めることで、同図(a)に示すように、チルト部820を元の垂直状態に復帰させることが可能となる。
【0035】
そして、本発明による送りねじ装置100を利用することにより、同図(a)に示した状態でのチルトベース部810とチルト部820との間隔Lを変えることなく(すなわち、装置のサイズを大きくすることなく)、従来よりも、チルト部820の前傾量を大きくすることが可能となる。逆に、従来と同じ前傾量を確保しつつ、従来より間隔Lを短くすることができ、装置のサイズを小さくすることが可能となる。
【0036】
以上、説明したように、上述した実施形態によれば、小径ねじ軸110を大径ねじ軸130内に収容できるようにするとともに、小径ナット120と大径ねじ軸130とを一体に構成し、更に、小径ねじ軸110と大径ねじ軸130とでねじの方向を一致させることにより、大径ナット140を一方方向に回転させると、大径ナット140の回転に伴って大径ねじ軸130が直線運動を行うと共に、大径ねじ軸130及び大径ねじ軸130と一体をなす小径ナット120の回転に伴って小径ねじ軸110が、大径ねじ軸130と同一方向に直線運動を行うようになるので、必要なストロークを確保しつつ、縮んだ状態での送りねじ装置100の軸方向の長さを短くすることが可能となる。
【0037】
更に、小径ねじ軸110及び大径ねじ軸130のねじのリードを一致させるようにすれば、送りねじ装置100の伸縮量が、後部カバー170(減速機付きサーボモータ190)の回転量に比例するようになるので、後部カバー170(減速機付きサーボモータ190)の回転量を制御するだけで、送りねじ装置100の伸縮量の制御が行えるようになる。
【0038】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。上述した実施形態では、送りねじ装置100を、小径ボールねじと大径ボールねじの2つのボールねじで構成(2段ねじ構成)していたが、3以上のボールねじで構成するようにすることもできる。
【0039】
図9は、送りねじ装置を3つのボールねじで構成(3段ねじ構成)した例を示す図である。同図では、わかりやすくするために、図7と同様に、ボールねじの部分のみを簡略化して示している。
【0040】
図9(a)に示すように、送りねじ装置100aは、小径ねじ軸110と、小径ナット120と、大径ねじ軸130と、大径ナット140と、超大径ねじ軸130aと、超大径ナット140aとを備える。小径ねじ軸110と、小径ナット120と、大径ねじ軸130と、大径ナット140と、超大径ねじ軸130aと、超大径ナット140aとは、同一軸線上に配置される。そして、小径ねじ軸110に、小径ナット120が螺合され、大径ねじ軸130に、大径ナット140が螺合され、超大径ねじ軸130aに、超大径ナット140aが螺合されている。本実施形態では、小径ねじ軸110及び小径ナット120、大径ねじ軸130及び大径ナット140並びに超大径ねじ軸130a及び超大径ナット140aは、それぞれ、多数のボール(玉)を介して螺合しており、小径ねじ軸110及び小径ナット120で、第一のボールねじ(小径ボールねじ)を形成し、大径ねじ軸130及び大径ナット140で、第二のボールねじ(大径ボールねじ)を形成し、超大径ねじ軸130a及び超大径ナット140aで、第三のボールねじ(超大径ボールねじ)を形成している。
【0041】
小径ねじ軸110、小径ナット120、大径ねじ軸130及び大径ナット140の構造は、前述した2段ねじ構成の場合と同様である。但し、本実施形態の場合、大径ナット140に連結されるのは、後部カバー170ではなく、超大径ねじ軸130aである。
【0042】
超大径ねじ軸130aは、超大径ナット140aを回転させると、直線運動する部材であって、前述したように、一方(同図における右側)の端部が、大径ナット140に固定され、大径ナット140と一体をなす。すなわち、超大径ねじ軸130aを回転させると、大径ナット140は、超大径ねじ軸130aと一体となって回転する。また、超大径ねじ軸130aの他方の端部には、大径ねじ軸130と同様に、抜け止め用のストッパ132aが取り付けられている。また、超大径ねじ軸130aに形成されるねじの方向は、小径ねじ軸110及び大径ねじ軸130に形成されるねじの方向と同一にされる。本実施形態では、小径ねじ軸110、大径ねじ軸130及び超大径ねじ軸130aはすべて右ねじであるとする。更に、本実施形態では、各ねじのリードも同一になるように形成される。また、超大径ねじ軸130aは、その中心に、軸方向に延びる貫通孔133aが形成されていて、中空状になっている。送りねじ装置100aを縮めた状態では、当該貫通孔133aに、(小径ねじ軸110を収容した)大径ねじ軸130が同軸状に収容される。
【0043】
超大径ナット140aは、大径ねじ軸130にねじ込まれる部材であって、後部カバー170と連結されて、後部カバー170と一体をなす。すなわち、超大径ナット140aは、後部カバー170を回転させると、後部カバー170と一体となって回転する。
【0044】
次に、図9に示した送りねじ装置100aの動作について説明する。
【0045】
同図(a)に示した状態で、後部カバー170が、減速機付きサーボモータ190によって回転駆動されて、後端側から見て、左回り(反時計回り)に回転をし始めると、後部カバー170と一体をなす超大径ナット140aも左回りに回転し始める。そうすると、超大径ナット140が螺合する超大径ねじ軸130aにも左回りの力が作用することになる。そうすると、超大径ねじ軸130aと一体をなす大径ナット140にも左回りの力が作用することとなり、更に、大径ナット140が螺合する大径ねじ軸130にも左回りの力が作用することとなる。そうすると、大径ねじ軸130と一体をなす小径ナット120にも左回りの力が作用することとなり、更に、小径ナット120が螺合する小径ねじ軸110にも左回りの力が作用することとなる。しかしながら、小径ねじ軸110は、先端側取付部材111に取り付けられており、ねじ軸を中心とした回転方向の動きが拘束されているので、回転することはない。
【0046】
ここで、簡単のため、各ナット120,140,140aの回りやすさに関して、小径ナット120、大径ナット140、超大径ナット140aの順に回りやすいと仮定すると、小径ナット120に左回りの力が作用することにより、小径ねじ軸110に対して、小径ナット120が左回りに回転し始めることとなり、小径ねじ軸110の先端(同図における右端)と、小径ナット120とが互いに離れる方向に移動し始めることになる。すなわち、小径ねじ軸110の部分が(同図において、右方向に)伸び始めることになる。そして、小径ねじ軸110の後端部に取り付けられたストッパ112が、小径ナット120に当接するようになるまで、伸び続ける。このとき、超大径ナット140a及び超大径ねじ軸130a並びに大径ナット140及び大径ねじ軸130は、一体となって回転している。
【0047】
そして、同図(b)に示すように、小径ねじ軸110のストッパ112が、小径ナット120に当接すると、小径ナット120はそれ以上回転できなくなるので、小径ナット120と一体をなす大径ねじ軸130も回転できなくなり、その結果、大径ねじ軸130に対して、大径ナット140が左回りに回転し始めることになる。そうすると、大径ねじ軸130の先端(同図における右端)と、大径ナット140とが互いに離れる方向に移動し始めることになる。すなわち、大径ねじ軸130の部分が(同図において、右方向に)伸び始めることになる。そして、大径ねじ軸130の後端部に取り付けられたストッパ132が、大径ナット140に当接するようになるまで、伸び続ける。このとき、超大径ナット140a及び超大径ねじ軸130aは、一体となって回転している。
【0048】
そして、同図(c)に示すように、大径ねじ軸130のストッパ132が、大径ナット140に当接すると、大径ナット140はそれ以上回転できなくなるので、大径ナット140と一体をなす超大径ねじ軸130aも回転できなくなり、その結果、超大径ねじ軸130aに対して、超大径ナット140aが左回りに回転し始めることになる。そうすると、超大径ねじ軸130aの先端(同図における右端)と、超大径ナット140aとが互いに離れる方向に移動し始めることになる。すなわち、超大径ねじ軸130aの部分が(同図において、右方向に)伸び始めることになる。そして、超大径ねじ軸130aの後端部に取り付けられたストッパ132aが、超大径ナット140aに当接するようになるまで、伸び続ける。但し、実際は、減速機付きサーボモータ190の回転量を制御することによって、ストッパ132aが、超大径ナット140aに当接する前に、伸長動作は停止される。なお、同図(d)に示すように、すべてのストッパ112,132,132aが、対応するナット120,140,140aに当接するようになった状態が、送りねじ装置100aが最大に伸びた状態である。
【0049】
なお、ここでは、簡単のため、各ナット120,140,140aが、小径ナット120、大径ナット、超大径ナット140aの順に回り出すと仮定して説明したが、前述した2段ねじ構成の場合と同様に、各ナット120,140,140aがどのような順番でどの程度回転したかに関わらず、各ナット120,140,140aの回転量の合計は、後部カバー170の回転量に一致することとなる。例えば、後部カバー170を一回転(360度)回転させた場合、超大径ねじ軸130aに対する超大径ナット140aの回転量(回転角度)と、大径ねじ軸130に対する大径ナット140の回転量(回転角度)と、小径ねじ軸110に対する小径ナット120の回転量(回転角度)との合計は、必ず一回転分(360度)となる。そして、前述したように、本実施形態では、各ねじのリードを一致させている。その結果、いずれのナット120,140,140aがどの程度回転したかに関係なく、後部カバー170を一回転させると、送りねじ装置100a全体では、1リード分だけ伸びたり縮んだりすることとなる。すなわち、各ねじのリードを一致させてさえいれば、超大径ナット140aと大径ナット140と小径ナット120のどれが先に回転し始めるかや、どれがどれだけ回転するか等を考慮することなく、減速機付きサーボモータ190の回転量を制御するだけで、送りねじ装置100aの伸縮量の制御が行えるようになる。
【0050】
このように、送りねじ装置を3段ねじ構成にすることにより、前述した2段ねじ構成の場合より、大きなストロークを実現することが可能となる。逆に、2段ねじ構成の場合と同じストロークを確保しつつ、2段ねじ構成の場合より、縮んだ状態での軸方向の長さを短くすることも可能となる。なお、ここでは、送りねじ装置を3つのボールねじで構成した3段ねじ構成の場合について具体的に説明したが、実装条件に応じて、送りねじ装置を、4以上の任意の数のボールねじで構成(多段構成)するようにすることもできる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の実施形態は上記のものに限られない。例えば、上述した実施形態では、大径ナット140や超大径ナット140aを回転駆動することによって、小径ねじ軸110を直線運動させていたが、逆に、小径ねじ軸110を回転駆動することによって、大径ナット140や超大径ナット140aを直線運動させることも考えられる。
【0052】
また、上述した実施形態では、送りねじ装置をボールねじで構成していたが、他の送りねじ、例えば、三角ねじや台形ねじ等によるすべりねじで構成することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】縮めた状態の送りねじ装置100を示す図である。
【図2】伸ばした状態の送りねじ装置100の前部側を示す図である。
【図3】伸ばした状態の送りねじ装置100の後部側を示す図である。
【図4】伸ばした状態の送りねじ装置100の小径ナット付近の拡大平面図である。
【図5】伸ばした状態の送りねじ装置100の大径ナット付近の拡大平面図である。
【図6】伸ばした状態の送りねじ装置100の後端部付近の拡大正面図である。
【図7】送りねじ装置100の動作を説明するための図である。
【図8】送りねじ装置100の利用例を説明するための図である。
【図9】3段ねじ構成にした送りねじ装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
100,100a 送りねじ装置
110 小径ねじ軸
111 先端側取付部材
112 ストッパ
113 孔
120 小径ナット
130 大径ねじ軸
130a 超大径ねじ軸
131 連結部材
132,132a ストッパ
133,133a 貫通孔
140 大径ナット
140a 超大径ナット
150 前部カバー
160 中間カバー
170 後部カバー
171,192 平歯車
172,173 アンギュラベアリング
180 後端側取付部材
181 孔
190 減速機付きサーボモータ
191 出力シャフト
810 チルトベース部
820 チルト部
830 水平連結軸
840 第一連結軸
850 第二連結軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のねじ軸と、
前記第一のねじ軸に螺合する第一のナットと、
前記第一のねじ軸を軸方向に収容するための孔が形成された第二のねじ軸と、
前記第二のねじ軸に螺合する第二のナットとを備え、
前記第一のナットと、前記第二のねじ軸とは一体をなすよう構成され、
前記第一のねじ軸と、前記第二のねじ軸とに、同じ方向のねじが形成されている
ことを特徴とする送りねじ装置。
【請求項2】
前記第一のねじ軸及び前記第二のねじ軸のリードが同一である
ことを特徴とする請求項1に記載の送りねじ装置。
【請求項3】
前記第一のねじ軸及び前記第一のナット並びに前記第二のねじ軸及び前記第二のナットによって構成される2段ねじ構成が、3段以上の多段構成になっている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送りねじ装置。
【請求項4】
前記第一のねじ軸及び前記第二のナットのいずれか一方が回転駆動され、他方が直線移動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送りねじ装置。
【請求項5】
前記第二のナットに、筒状駆動部材が連結され、当該筒状駆動部材が回転駆動される
ことを特徴とする請求項4に記載の送りねじ装置。
【請求項6】
前記第一のねじ軸及び前記第二のねじ軸の少なくとも一方の端部に抜け止め部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の送りねじ装置。
【請求項7】
前記第一のねじ軸及び前記第一のナット並びに前記第二のねじ軸及び前記第二のナットは、それぞれ、ボールを介して螺合している
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の送りねじ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−275724(P2009−275724A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124869(P2008−124869)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(398032289)株式会社テックスイージー (20)
【Fターム(参考)】