送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号の合成方法、および同方法の実施装置
【課題】ウルトラワイドバンド(UWB)インパルス無線の受信機において、ハードウエア量が少ない、送受信間のクロックドリフト補正方式を提供する。
【解決手段】第1ステップ100において、送信機と受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定し、初期設定を行なう。反復ループを実行し、ステップ102において、プライマリ信号を受信し、ステップ106でΔDHi、ステップ104でこの値を所定の値だけ減らした値、ステップ108で所定値だけ増やした値を推定し、ステップ110において、これらの値を使用して、少なくとも1つの第1の合成を行い、それぞれ所定の値だけ増加および減少した値を使用して少なくとも1つの第2の合成および少なくとも1つの第3の合成を行い、少なくとも3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、クロックドリフトを選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させる。
【解決手段】第1ステップ100において、送信機と受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定し、初期設定を行なう。反復ループを実行し、ステップ102において、プライマリ信号を受信し、ステップ106でΔDHi、ステップ104でこの値を所定の値だけ減らした値、ステップ108で所定値だけ増やした値を推定し、ステップ110において、これらの値を使用して、少なくとも1つの第1の合成を行い、それぞれ所定の値だけ増加および減少した値を使用して少なくとも1つの第2の合成および少なくとも1つの第3の合成を行い、少なくとも3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、クロックドリフトを選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号の合成方法、および同方法の実施装置に関する。
【0002】
本発明は、ウルトラワイドバンド(UWB)インパルス無線技術、すなわち、10dB帯域幅と中心周波数との比が25%を上回る信号を使用する無線技術分野に属し、より詳細には、合成中における送信機とUWB受信機との間のクロックドリフトの補正に関する。
【背景技術】
【0003】
この無線技術は、IEEE標準802.15.4aの主題となっている。
【0004】
この技術は、パーソナルネットワーク、および低速ローカルワイヤレスネットワークの種類、すなわち通信タグ、センサネットワーク、アドホックネットワーク(すなわち、予め確立されたインフラストラクチャがなくても自己組織化できるネットワーク)、位置測定、セキュリティ等に適用できるものである。
【0005】
インパルス方式ウルトラワイドバンド通信システムにおいて、送信機と受信機との間で送信されるデータは、振幅、位相、または位置で符号化された電磁パルスである(非特許文献1参照)。送信機と受信機との間の通信プロセスの重要なステップは、データパケットの受信時において、これらのデータパケットの受信機レベルへの到達時点を決定するときに生じる。この場合、受信信号と受信機との同期が必要である。この同期は、通信媒体に支障がある(マルチパスが出現する)とき、ますます実行が難しくなる。
【0006】
低速パーソナル無線ネットワーク用のウルトラワイドバンド方式の物理層を提案しているIEEE標準802.15.4aは、回路の複雑さに関して新しい制約を付している。さらにこの標準は、クロックの不完全さに関して特に強い制約をもたらす、比較的長い継続期間を有するデータパケットの使用について提案している。これらの2つの特徴は、ともに、クロックの不完全性の検出および補正のために、ロバストなスキームを考案することを要求している。受信機とデータパケットの同期を可能にする多くの解決手段が、現在既に存在している。頻繁に使用されている技術は、受信信号を様々な時点における波形と相関させるものである(特許文献1〜7:WO1996−041432、WO2001−073712、WO2001−093442、WO2001−093444、WO2001−093446、US2005−0089083、US2006−0018369参照)。
【0007】
提案されているアーキテクチャは、非常に高速な同期を可能にするが、しかし回路が非常に複雑になるという代償を払うことになる(使用される無線周波数コンポーネントは、ミキサ、積分器、局部発振器等である)。
【0008】
しかし、この複雑さおよびコストの上乗せは、例えば煙が充満した環境にいる消防士または雪崩の犠牲者の探索などの特に位置測定用途などの、ある種の用途では許容できない(例えば、特許文献8:WO2006/003294参照)。従って、送信機と受信機との間のクロックのドリフトについての問題が生じる。この問題について、以下で詳細に説明する。
【0009】
実際のところ、第2の送信機/受信機に対する第1の送信機/受信機の位置を決めるために、一般に、非常に継続期間の短い電磁パルスの到達所要時間または到達所要時間に関係する量の測定が使用されている。
【0010】
この原理は、「双方向測距」(TWR)とも呼ばれており、この原理について、図1および図2に示してある。
【0011】
図1は、第1の送信機/受信機1および第2の送信機/受信機2を示し、それぞれが、自装置のクロックH1およびH2をそれぞれ有している。これらのクロックは同期していない。
【0012】
図2は、第1の送信機/受信機1と第2の送信機/受信機2との間で交換される信号の送受信のタイムチャートを示す。
【0013】
この信号の交換において、送信機/受信機1は、時点t0に電磁パルスを送信する。光の伝播速度cと関係して、このパルスは、時刻t=t0+d/cに送信機/受信機2に到達することになる。ここで、dは、送信機1と受信機2との間の距離を表す。
【0014】
この時点で、装置2は、正確な送信時刻t0が分かっていれば、距離dを測定することができるが、2つの装置は、それらのクロックのドリフトのせいで、正確には同期していないから、そうはならない。
【0015】
従って、既知の期間ΔT後に、今度は送信機/受信機2がパルスを送信し、このパルスが、時刻t=t0+2d/c+ΔTに装置1に到達する。
【0016】
送信機/受信機2とは対照的に、送信機/受信機1は、時点t0およびシステムの定数である期間ΔTを知っているので、実際に距離を求めることができる。
【0017】
到着時刻、ひいては測定される距離の正確さは、パルスの継続期間に直接関連している。通常、これらのパルスの継続期間は、ナノ秒程度(1ナノ秒間に、パルスは30cm進む)である。さらに、時間領域で非常に狭いパルスは、周波数領域で非常に広いことが知られている。このため、短いパルスを使用する無線システムは、そのスペクトルの広さに関連して、ウルトラワイドバンド(UWB)無線と呼ばれている。
【0018】
そのスペクトル拡散が大きい(数百メガヘルツ)ため、これらのシステムは、送信レベルが非常に弱いという特徴もある。実際のところ、UWBシステム専用に割り当てられている周波数帯はない。それ故、UWBシステムは、他の「従来の」無線システムのために確保されている周波数帯を、それらの無線システムを妨害することなく使用しなければならない。
【0019】
従って、立法者は、UWBシステムから、「従来の」無線システムへのあらゆる妨害を未然に防ぐために、極小送信電力(例えば、3〜5GHz間で−41.3dBm/MHz)に関する基準を決定した。反対に、UWBシステムは、従来の無線システムからの送信をまともに受ける。
【0020】
一方では送信電力が小さく、他方では大きな妨害が存在することから、UWBシステムは、狭い範囲(通常、2、3メートル)の用途に限定されている。測定によると、3V振幅の500MHz〜1GHz帯のパルスの範囲は、(等方向性アンテナで)約3mであった。
【0021】
しかし、ある種の適用シナリオ、特に位置測定のシナリオでは、例えば数十m程度のはるかに広い範囲を必要としている。
【0022】
放射電力を増大しないという課題に対応して、範囲の拡大は、平均化メカニズムと全て同種のデジタル処理操作だけで達成しうる。
【0023】
実際のところ、信号を検出できるためには、その振幅は、ノイズの振幅より大きくなければならない。実際には、信号の振幅は、ノイズの標準偏差より少なくとも3倍大きくあるべきである。すなわち、信号対雑音比は、少なくとも約10dBであるべきである。
【0024】
ノイズを減少できる最も効果的な技術は、原理的には、送信機で同じパルスを数回送信し、受信機で受信した信号の平均(または合計)を計算することである。
【0025】
パルス4が繰り返される周期Tは、PRP(パルス繰り返し周期)と呼ばれている。受信機は、その後、この同じ周期に従って受信した信号を「チョッピング」し、それから図3に示すように合計する。このメカニズムは、「合成」とも呼ばれている。この合成信号5について、図3に概略的に示す。
【0026】
合成メカニズムの基礎となる原理は、「信号」は、「ノイズ」よりよく合計されるということである。この原理を理解するためには、受信機によってデジタル化されたサンプルr(t)を、「有用な信号」(パルス)s(t)とノイズb(t)の和として表すことがまず必要である。
r(t)=s(t)+b(t) (1)
【0027】
ノイズはランダムな変量であり、その振幅は、標準偏差σで特徴付けられ、このσは、その分散の平方根としても定義されている。
サンプルr(t)の信号対ノイズ比は、次式で与えられる。
【数1】
(2)
【0028】
合成信号rm(t)は、次のように表される。
【数2】
(3)
【0029】
自明なように、同一の信号がn回一緒に加えられると、その振幅はn倍される。
sm(t)=s(t)+s(t+T)+s(t+2T)+…s(t+(n−1)T)=n・s(t) (4)
【0030】
他方、ランダムな変量のn回の加算は、その分散のn倍になり、従ってその標準偏差は、
【数3】
倍になる。
【数4】
(5)
【0031】
従って、
【数5】
(6)
【0032】
従って、合成信号の信号対雑音比は、非合成信号の信号対雑音比に対して、10・log(n)倍に改善している。
【数6】
(7)
送信スペクトルを拡散して情報項目を伝達するために、あるいはパルスを識別するために、送信信号は単に周期的というだけでなく、特定の符号化に従って変調される。例えば、図4に示すように、ウィンドウ番号iのパルスの位置τ(i)を変更することができる。
【0033】
この場合、前述のチョッピングおよび平均化メカニズムは、パルスが、常にはPRPのウィンドウの「同じ位置」にないので、うまく機能することはできない。より一般的には、受信信号は、次のように書くことができる。
【数7】
(8)
上式で、
・[τ0…τn-1]:0<τi<Tである符号位置
・[A0…An-1]:Ai=+/−1である極性符号
・p(t):受信基本パルスを表す信号
・b(t):ホワイトノイズ
である
【0034】
符号化信号を受信するために、受信信号は、予想シーケンスα(t)と相関される。
【数8】
(9)
この視点から、図3に示す単純な合計は、くし型関数の相関の特定の場合と解釈されてもよい。発明者たちは、次の合成信号を得ている。
【数9】
(10)
具体的には、次のようになる。
【数10】
(11)
合成信号の信号対雑音比は、本質的に、合成信号の期待値と標準偏差との比である。
【数11】
(12)
同じ合成利得が、単純平均の場合にも見られる。要約すると、合成利得の視点からは、周期信号の平均の計算と相関により符号化された信号の受信との間に、基本的な差はない。以下の説明は、全て、周期信号の合成という特定の場合に限定することとするが、相関により符号化される信号の受信というより一般的な場合にも、同じ原理が当てはまることに留意されたい。
【0035】
図5を参照する。受信信号は、N個のPRP(Nは自然数)の連続または列から成り、PRPのそれぞれは、K個のサンプル(Kは自然数)を備えている。従って、xnkは、この場合、PRP番号nのサンプル番号k(フェーズとも呼ばれている)に相当する。ここで、kは、0とK−1との間にあり、nは、0とN−1との間にある。サンプルxnkの時点は、簡単に次のようになる。
【数12】
(13)
【0036】
以下に示すN個のPRPの列の合成信号であって、PRPに等しい継続期間Tを有する合成信号は、0からK−1までの番号が付けられたK個のサンプルを備えている。従って、合成信号のサンプルykは、簡単に次のようになる。
【数13】
(14)
【0037】
上式は、合成によって得られる処理利得が10・log(N)形式の法則に従って増加することを示している。ここで、Nは合成する数である。従って、UWB装置の範囲を拡大するためには、合成する数すなわち送信パルス数を増加することが適している。正確には、α倍に範囲を拡大するためには、パルス数をα2倍にしなければならないことを示している。実際のところ、大きな範囲を得るためには、合成するパルス数は、直ぐに非常に大きくなる。例えば、システムの種々のロスおよび到達範囲(約100m)を考慮すると、合成するパルス数は65000に達すると思われる。
【0038】
非常に多くのパルスの合成中に生じる問題は、効果的であるためには、合成メカニズムが、パルスの位相をそろえて加えなければならないということである。これが意味することを理解するために、図6に示すデジタル信号について、検討してみる。PRPの連続である受信信号は、例えば1μsの周期(送信機のクロック)を有しており、受信機が同じ周期でチョッピングする場合、下に示すサンプルは、同じ位相を有しており、そろっている。この場合、合計は、完ぺきに行われることになる。
【0039】
他方、パルス数が増加すると、合成期間が長くなり、送信機と受信機との間のクロックドリフトが非常に注意を払うべきパラメータになる。例えば、PRPが1μsの継続期間を有する場合、65000個のパルスの合成には、それ故65000×1μs=65msが必要である。サンプルのレベル(すなわち500ps内)で位置合わせを維持するためには、クロックドリフトは、次の値より小さくなければならない。
【数14】
(15)
【0040】
ところで、市販されている最高の水晶振動子は、1ppm程度のドリフトを有する。具体的には、このドリフトは、例えば、特に電源オン時の温度の変化、水晶の老朽化、水晶に加えられた機械的衝撃、あるいは水晶の供給電圧の変動などから生じる。
【0041】
図7は、クロックドリフトの存在時における合成への影響について示している。この場合、合成信号は広がっており、合成利得は最早最適ではない。
【0042】
それ故、UWBシステムの範囲を拡大できるためには、送信機と受信機との間のクロックドリフトについての知識が重要である。
【0043】
トレリスアプローチに基づいてUWBシステムの2つのクロック間のドリフトを推定し、その後受信する多様なサンプルのコヒーレント合成を可能にする方法が、特許文献9(EP1,903,702A1)により公知である。このアプローチによると、部分的な合計を求め、合計の全てをメモリに格納する必要がある。次に、マルチパスベースの合成プロセス(本明細書の図11参照)によって、多くの合計を行い、その後、相互に比較し、最善のものを、例えばエネルギー判定基準などによって選択する。しかし、トレリスの使用は、かなりのハードウェアリソースと、無視できない量の事後処理とを必要とする。実際のところ、例えば、PRPの中の2048の地点と、65535個のPRPに対する+/−128サンプルの最大シフト(すなわち、128の異なるセグメント)を使用する場合、処理動作は、次のものから構成される。
−部分和の算出:2048×65535=134百万回の加算
−部分和の記憶:2048×128=262000メモリワード
−トレリスのスキャン:2048×128×256=67百万回の加算
−スキャン結果の記憶:256×2048=524000ワード
−最善のスキャンの探索:524000ワードの処理
さらに、トレリスのスキャンの動作および最善のスキャン探索の動作は、信号の受信の完了後に行われ、これは、リアルタイム処理にとって問題である。
【0044】
最後に、必要なハードウェアリソースを限定するために、ドリフトの探索は、フェーズkの全セットに対して行われず、それらの中の限られた数に対してだけ行われる。前述の文献に提案されているこの選択肢は、それにもかかわらず、送信機と受信機が前もって同期されていると想定している。すなわち、受信機がPRPのどの部分にパルスがあるかを「知っている」と想定している。ところで、このアプローチは、ドリフトの推定後にだけ同期を行うことができるので、信号対雑音比が非常に小さいシステムでは使用できない。信号が正しく合成されない(信号対雑音比が小さい)場合、信号の同期ができない、また、送信機と受信機との間のクロックドリフトが分からない場合、信号を正しく合成することはできない。
【0045】
また、パルスが入る瞬間だけ受信機をオンにして、エネルギー消費を減らすことができるようになっている方法が、非特許文献2から公知である。この方法は、パルスの処理とその受信との同期を必要とする。しかし、方法の開始時に同期が完全な場合でさえ、クロックドリフトによって、時が経つにつれて、パルスの受信と処理との間に脱同期化が生じる。
【0046】
この脱同期化を軽減するために、受信機は、パルスがPRPのどの部分にあるかを見つけようとする。このために、方法は、同期の3つの時点を同時に検討するアーキテクチャを使用している。
【0047】
信号対雑音比、およびこのアプローチの性能を向上するために、この方法は、「パイロットパルス」のPRPへの挿入を必要とする。パイロットパルスは、同期の3時点においてサンプリングされる。方法では、その後、同期の3時点におけるパイロットパルスが有するエネルギーを比較する。パルスの処理のために選択する同期の時点は、最大のエネルギーを有している時点である。
【0048】
しかし、パイロットパルスの挿入は、必要な演算数を増加させ、方法を複雑にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】国際公開第1996−041432号
【特許文献2】国際公開第2001−073712号
【特許文献3】国際公開第2001−093442号
【特許文献4】国際公開第2001−093444号
【特許文献5】国際公開第2001−093446号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005−0089083号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006−0018369号明細書
【特許文献8】国際公開第2006/003294号
【特許文献9】欧州特許第1,903,702A1号明細書
【非特許文献】
【0050】
【非特許文献1】M.Z.Win、R.A.Scholtz共著「インパルス無線の動作」、IEEE Comm.Letters、vol2 No.2、p36−38、1998年2月
【非特許文献2】Li Huang外「インパルス無線(IR)方式ウルトラワイドバンド(UWB)システム用のタイミング追跡アルゴリズム(Timing tracking algorithms for impulse radio (IR) based ultra wideband (UWB) systems)」、無線通信、ネットワーキング、およびモバイルコンピューティングに関する2007年第3回国際会議−WiCOM‘07 2007年9月21〜25日、中国、上海、ページ570-573、XP002662469、無線通信、ネットワーキング、およびモバイルコンピューティングに関する2007年第3回国際会議、WiCOM‘07 IEEE、米国、ニュージャージー州、ピスカタウェイ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0051】
本発明は、上述の欠点の少なくとも一部を軽減することを目的としており、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号の合成方法であって、受信機が少しのハードウェアリソースしか必要としない方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0052】
このため、本発明は、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド受信機へ送信された信号の合成方法を提案するもので、この方法は、
−送信機と受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を事前に初期設定し、
−反復ループを行い、この反復ループの実行中に、
・少なくとも2つのサンプルから成る少なくとも1つの受信プライマリ信号を合成するステップを行い、このステップの実行中に、推定クロックドリフトを使用して、少なくとも1つの第1の合成を行い、それぞれ所定の値だけ増加および減少して、少なくとも1つの第2の合成および少なくとも1つの第3の合成を行い、
・前述の少なくとも3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、クロックドリフトを、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させることを特徴としている。
【0053】
個別にまたは組み合わせて設けられる、変換回路の1つ以上の特徴は、次の通りである。
【0054】
合成ステップ中に、1つの受信プライマリ信号に対する例えば少なくとも3つの合成を、推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とをそれぞれ使用して行い、3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、クロックドリフトΔDHi+1を、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させる。ここで、ΔDHiは、ループiのクロックドリフトであり、iは自然数であり、δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0055】
一態様においては、初期設定ステップ中に、
−送信機が送信する少なくとも1つのプライマリ信号を受信し、
−このプライマリ信号に対して、クロックドリフトΔDHj=ΔDH+j×δの離散範囲内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にするクロックドリフトを、初期クロックドリフトΔDHinitとして選択する。ここで、ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、jは整数であり、δは、所定の基本クロックドリフトに相当する。
別の態様においては、初期設定ステップ中に、
−送信機および受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、送信機が送信する第1のプライマリ信号を受信機が受信し、この第1のプライマリ信号に対して合成を行い、その到着時刻を測定し、
−期間θ後に、送信機および受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、受信機が第2のプライマリ信号を受信し、この第2のプライマリ信号に対して合成を行い、その到着時刻を測定する。
−到着時刻間の差を利用して、初期クロックドリフトΔDHinitの推定を行う。
また別の態様においては、初期設定ステップ中に、
−送信機および受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第1のプライマリ信号を送信し、
−この第1のプライマリ信号を受信し、この第1のプライマリ信号に対して合成を行い、
−期間θ後に、送信機および受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第2のプライマリ信号を送信し、この第2のプライマリ信号を受信し、この第2のプライマリ信号に対して合成を行い、
−初期クロックドリフト間隔ΔDHjは、第1のサンプルと第2のサンプルの合成によって決定し、
−送信機が送信する少なくとも1つの第3のプライマリ信号を受信し、
−決定した間隔ΔDHj=ΔDH+j×δ内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、この第3の信号に対してj+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にするクロックドリフトを、初期クロックドリフトΔDHinitとして選択する。ここで、ΔDHは所定のクロックドリフト値、jは自然数、δは所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0056】
変形形態において、所定の基本クロックドリフトは等しい。
【0057】
合成期間Tintegrationにおけるサンプルの移動techに対する規定が、例えば、2つの所定の基本クロックドリフトの少なくとも1つに関して策定されるのがよい。
【0058】
一実施形態における合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプルの値を合計することによって行われ、クロックドリフトの補正は、メモリのアドレスポインタを移動することによって行われる。
【0059】
別の実施形態における合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプルの値を相関させることによって行われ、クロックドリフトの補正は、メモリのアドレスポインタを移動することによって行われる。
【0060】
一態様における合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプルの値を合計することによって行われ、クロックドリフトの補正は、送信機のクロックを移動することによって行われる。
【0061】
一実施形態における、受信プライマリ信号の前述の少なくとも3つの合成は、推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とをそれぞれ使用して、並行して行われる。
【0062】
代替例では、連続して受信した3つのプライマリ信号の少なくとも3つの合成は、推定クロックドリフトと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加および減少した値とをそれぞれ使用することによって、連続的に行われる。
【0063】
品質判定基準は、例えば、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギーまたは電力のグループの中から選択される1つの評価基準、または評価基準の組み合わせなどに相当する。
【0064】
また、本発明の主題は、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド受信機に送信された信号を合成する装置にも関し、この装置は、
−送信機と受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を初期設定し、
−反復ループを行い、この反復ループの実行中に、
・少なくとも2つのサンプルから成る少なくとも1つのプライマリ信号を合成するステップを行い、このステップの実行中に、推定クロックドリフトを使用して、少なくとも1つの第1の合成を行い、それぞれ所定の値だけ増加および減少して、少なくとも1つの第2の合成および少なくとも1つの第3の合成を行い、
前述の少なくとも3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させるように構成された手段を備えていることを特徴としている。
【0065】
個別にまたは組み合わせて備えられる、電子システムの1つ以上の特徴は、以下の通りである。
【0066】
この装置は、例えば、次のように構成された手段を備えている。
・推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とをそれぞれ使用して、受信プライマリ信号に対して少なくとも3つの合成を行い、
・3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させるようにクロックドリフトΔDHi+1を選択する。ここで、ΔDHiはループiのクロックドリフトであり、iは自然数であり、δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0067】
これらの手段は、さらに次のように構成されているのがよい。
−送信機から送信された少なくとも1つのプライマリ信号を受信し、
−このプライマリ信号に対し、クロックドリフトΔDHj=ΔDH+j×δの離散範囲内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−初期クロックドリフトΔDHinitとして、品質判定基準を最大にするクロックドリフトを選択する。ここで、ΔDHは所定のクロックドリフト値であり、jは整数であり、δは所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0068】
別の態様における装置は、少なくとも1つのメモリを備え、割り当てられたメモリスロット内のサンプルの値を合計して合成を行い、メモリのアドレスポインタを移動することによって、クロックドリフトの補正を行うように構成されている。
【0069】
他の利点および特徴は、以下の図面と一緒に本発明の説明を読むことにより明白になると思う。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】同期していないクロックを有する送信機およびUWB受信機の説明図である。
【図2】距離測定を示す概略タイムチャートである。
【図3】受信機での信号合成のメカニズムを示す簡略化した図である。
【図4】信号の例示的位置符号化を示す概略タイムチャートである。
【図5】PRPから成る受信プライマリ信号および合成信号の例示的図である。
【図6】送信機と受信機との間にクロックドリフトなしに受信されたPRPから成るプライマリ信号の例示的合成を示す一例の図である。
【図7】送信機と受信機との間にクロックドリフトを有して受信されたPRPから成るプライマリ信号の例示的合成を示す一例の図である。
【図8】本発明による一般的方法のステップを示すフロー図である。
【図9】PRPから成るプライマリ信号の合成を実行可能な実施形態を示す概略図である。
【図10】本発明の方法による例示的合成を示す説明図である。
【図11】第1の実施形態による本発明の方法の幾つかのステップを示すフロー図である。
【図12】PRPから成るプライマリ信号の到達時刻測定によって、送信機と受信機との間のクロックドリフトの推定を示す例示的タイムチャートである。
【図13】第2の実施形態による本発明の方法の幾つかのステップを示すフロー図である。
【図14】本発明の方法を実施する合成装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
全ての図において、同じ要素には、同じ符号を付してある。
【0072】
図8は、本発明による一般的方法のステップを示すフロー図である。
【0073】
送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する方法は、基本的に2つの主要段階50および52から構成されている。第1は初期設定段階50であり、この段階中に、送信機と受信機との間のクロックドリフトの値に関する調査を行う。第2の段階は追跡段階52であり、この段階中に、クロックドリフトの値、より正確にはクロックドリフトの変動を追跡して、プライマリ信号の合成、好ましくはコヒーレントな合成を勘案して、クロックドリフトをリアルタイムに補正する。
【0074】
プライマリ信号は、それぞれがK個のサンプルを備えるN個のPRPから形成されている。従って、プライマリ信号のサンプルには、
【数14】
のように添え字を振ってもよい。ここで、
・0≦n≦N−1
・0≦k≦K−1
である。
【0075】
合成信号は、例えばN個のPRPにわたる信号の平均、またはN個のPRPにわたる信号の相関などに相当し、プライマリ信号のN個のPRPの合成を行うことによって得られ、K個のサンプルを備えている。
【0076】
より詳細には、第1のステップ100中に、送信機と受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を初期設定する。
【0077】
後で分かるよう、この初期クロックドリフトΔDHinitの推定は、様々なやり方で行いうる。
【0078】
次の第2の段階52は、幾つかのステップを有する反復ループを実現することから成っている。
【0079】
ステップ102中に、K個のサンプルから成るPRPをN個有するプライマリ信号が受信される。ここで、Kは1以上の自然数である。
【0080】
受信機は、永続的にオンにされており、それによって、プライマリ信号は継続的に合成される。これにより、一方では、プライマリ信号の受信とその処理との間の脱同期化を避けることができ、他方では、プライマリ信号全体を処理することができる。
【0081】
次にステップ104、106、108中に、受信プライマリ信号の少なくとも3つの合成、好ましくはコヒーレント合成を行うが、ステップ106に関しては、推定クロックドリフトΔDHiを使用して、ステップ104に関しては、この推定クロックドリフトを所定の値だけ減少した値ΔDHi−δ2を使用して、ステップ108に関しては、所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1を使用してそれぞれ行う。合成のそれぞれに関して、プライマリ信号全体を使用することができる。代替として、位相をそろえないでこれらの合成を行うこともできる。
【0082】
ΔDHiは、ループiのクロックドリフトである。もちろん、i=0に関しては、ΔDH0=ΔDHinitであり、iは自然数である。
【0083】
δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0084】
一実施形態においては、所定の基本クロックドリフトδ1およびδ2は、基本クロックドリフトδに等しい。
【0085】
δは、例えば、合成期間Tintegrationにおけるサンプルの移動techを生じるドリフト値などに相当する。
δ=tech/Tintegration
【0086】
図8に示すように、前述の少なくとも3つのコヒーレント合成104、106、108は、並行して同時に行われる。
【0087】
変形形態においては、これらのステップ104、106、108を順次行うこともできる。それによって、同じ電子コンポーネントで合成を行うことができ、それ故、図8に対してより少ないリソースしか必要としないという利点が得られる。
【0088】
また別の変形形態においては、受信および合成される3つのプライマリ信号に関するステップ104、106、108を順次行うことができる。すなわち、連続的に受信した3つのプライマリ信号の少なくとも3つの合成を、推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1と、所定の値だけ減少した値ΔDHi−δ2とをそれぞれ使用して、連続的に行うことができる。
【0089】
この変形形態もまた、同じ電子コンポーネントで合成を行うことができ、それ故、図8に対して、より少ないリソースしか必要としないという利点がある。
【0090】
追跡段階52に関して、3つの合成ステップ104、106、108について、図8に示してある。しかし、例えば、クロックパラメータに応じて、さらには方法が実施される環境に応じて、合成数を、例えばクロックドリフトΔDHi+2δ、ΔDHi+δ、ΔDHi、ΔDHi−δ、ΔDHi−2δを使用する合成数5に増加させることが必要かもしれない。
【0091】
次にステップ110中に、3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択する。この品質判定基準は、例えば、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギー、および/または電力あるいはこれらの種々のパラメータの組み合わせなどに相当する。例えば、最大のエネルギーを有する合成を選択し、適切な場合、クロックドリフトΔDHi+1を、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させる。
【0092】
ループiにおいて、ΔDHi−δを使用するステップ104の合成が、合成106および108に対して、例えば品質判定基準として最大エネルギーを有する合成を与えていると想定する。この場合、次のループi+1に関して、ΔDHi+1=ΔDHi−δを選択して、ループi+1の合成を適合されたクロックドリフトで行う。すなわちステップ104に関して、ΔDHi+1−δ=ΔDHi−2δ、ステップ106に関して、ΔDHi+1=ΔDHi−δ、およびステップ108に関して、ΔDHi+1+δ=ΔDHiで行う。
【0093】
上記から、送信機と受信機との間のクロックドリフトを考慮しつつも、わずかなリソースを使用して、合成をリアルタイムに行いうることがわかる。
【0094】
これについて、図9に示してある。図9は、上述の方法による合成装置の一部の例示的実施形態を示す。
【0095】
図が簡潔に示していることは、信号PRPnのサンプルkであり、それ故、上述の定義によれば、サンプル(n,k)である。
【0096】
このサンプル(n,k)は、合成信号ykを有するメモリ22を指すポインタ20によって指示される。より具体的には、アドレスkによって指示される。
【0097】
図から分かるように、提案の解決手段においては、プライマリ信号が部分和および後処理ステップを含むことなく、完全に合成されており、受信信号は、部分和(合成)として格納され、その後に後処理されて(トレリスのスキャン)、最終の合成信号になるようには構成されていない。
【0098】
メモリ22は、合成信号の結果を有し、アドレスポインタ20が、更新されるサンプルを指定する。
【0099】
クロックのドリフトがないと、アドレスポインタ20は、それぞれの新しいサンプル(n,k)にインクリメントされる。
【0100】
送信機と受信機との間にクロックドリフトが存在すると、一定の期間Tdraftの後、図10に示すように、ドリフトの符号に応じて、サンプル(n,k)からサンプル(n,k+1)または(n,k−1)にパルスが「スライド」する。
【0101】
クロックドリフトを補償するメカニズムは、ある値だけ、信号メモリアドレスポインタを単に移動して、ポインタを、認識されたドリフトの変動に従って、サンプル(n,k)からメモリ22のアドレスk+1またはk−1に向けるものである。
【0102】
従って、合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を合計することによって行われ、クロックドリフトの補正は、メモリのアドレスポインタを単に移動することによって行われる。
【0103】
クロックのドリフトが大きい場合、新しい期間Tdriftの後に、別の移動が生じて、信号メモリ22のアドレスポインタ20が2値だけ移動される等である。
【0104】
従って、この方法によると、少ないハードウェアリソースを使用して有効な合成を行うことができ、それによって、少ない費用で合成装置の使用範囲をかなり拡大できることが理解しうる。
【0105】
別の変形形態においては、受信機のポインタ20を移動する代わりに、送信機1のクロックH1をクロックドリフト値だけ送信機1自体に移動させる制御信号を送信機1に送信することが想定される。従って、ポインタ20を強制的に移動させることなく、割り当てられたメモリスロット内のサンプルkの値を合計することで合成を行うことができる。
【0106】
初期設定段階50について、第1の実施形態を示す図11を参照して、詳しく述べる。
【0107】
この第1の実施形態においては、初期設定段階は、2つのサブ段階50Aおよび50Bに分けられる。その一方の50Aは、2つのプライマリ信号のパルスの到着時刻TOAの測定に基づく、クロックドリフトの計算に相当しており、クロックドリフトの粗い推定を得られる。他方は、粗い推定の周りの限られた区域における種々のクロックドリフトを、好ましくはコヒーレントに合成したプライマリ信号の精細な分析に相当する。
【0108】
より詳細には、ステップ200中に、送信機と受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第1のプライマリ信号が送信される。実際のところ、この条件によって、第1のプライマリ信号の送信中のクロックドリフトを無視できる、またはゼロであると見なすことさえできる。
【0109】
次のステップ202中に、このプライマリ信号は受信され、好ましくはコヒーレントに合成され、その到着時刻が測定される。
【0110】
送信機と受信機が知っている期間θ後、ステップ204中に、送信機と受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第2のプライマリ信号が送信される。
【0111】
その後、ステップ206中に、この第2のプライマリ信号は受信され、好ましくはコヒーレントに合成され、その到着時刻が測定される。
【0112】
ステップ208中に、初期クロックドリフト間隔ΔDHjが、これらのTOAの測定値間の差を利用して決定される。
【0113】
実際のところ、図12に見られるように、このアプローチは、送信機1の2つの連続する送信の到着時刻TOA1とTOA2を利用し、受信機2がこれら2つの送信間の「公称」期間θを知っていると想定している。このアプローチはまた、送信機が受信機から遠すぎないで、精度の低いクロックドリフト値を使用する場合でさえ、やはり合成信号を検出できるとも想定している。実施した結果は、この後の方の想定が一般によく満たされていることを示している。この場合、2つの連続する到着時刻TOA1とTOA2の測定によって、クロックドリフト値、または少なくとも初期クロックドリフト間隔ΔDHjの直接計算ができるようになる。
【0114】
これを理解するために、2つの送信間の期間がθに等しく、送信機1と受信機2との間の伝播時間がtpに等しく、送信機に対する受信機のクロックドリフトがΔDHinitに等しいと想定する。図12に示すように、送信機のクロックが測定した到着時刻TOA1およびTOA2は、時間差θだけ離れている。他方、クロックドリフトによって、受信機のクロックがそれらを測定するとき、2つの到着時刻の間の認識される時間は「拡張」され、θ(1+ΔDHinit)に等しくなる。受信機が値θを知っているので、受信機は、その値からドリフト値ΔDHinitを推測することができる。
【0115】
特に受信信号の品質、およびクロックドリフトΔDHinitの大きさに応じて、ΔDHinitを、十分な精度で直接決定することもある。また単に、初期クロックドリフト間隔ΔDHj、従ってクロックドリフトのやや粗い推定の列に終わることもある。
【0116】
後の場合、初期クロックドリフト間隔ΔDHj内のクロックドリフトΔDHinitの精細な推定を行うことが興味深いことが分かる。
【0117】
それに応じて、ステップ210中に、送信機が送信した第3のプライマリ信号が受信される。
【0118】
次のステップ212中に、決定した間隔ΔDHj=ΔDH+j×δ内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、この第3のプライマリ信号に対してj+1回の異なる合成が行われる。ここで、jは整数であり、δは所定の基本クロックドリフトに相当する。ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、正確な場合、例えば初期クロックドリフト間隔ΔDHjの中の最小の値である。
【0119】
最後のステップ214中に、品質判定基準を最大にするプライマリ信号の合成に相当するΔDHj値の中の1つを、初期クロックドリフトΔDHinitとして選択する。この品質判定基準は、例えば、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギーおよび/または電力あるいはこれらの種々のパラメータの組み合わせに相当する。
【0120】
続いて、上述の追跡段階52に移動する。
【0121】
第1の変形形態においては、サブ段階50Aのステップが、サブ段階50Bを含むことなく、直接ΔDHinitの値を得られるように実行される、それ故、2つのプライマリ信号の測定だけを必要とし、非常に速く行えることが想定される。
【0122】
図12に線図的に示す第2の変形形態においては、より広いクロックドリフト間隔においてサブ段階50Bを行う網羅的な探索が、可能な/ありうるドリフト値ΔDHinitに対して行われる。この場合、ΔDHは、例えばゼロに等しいなどの任意に選ばれたクロックドリフト値である。
【0123】
実際のところ、クロック信号を生成する働きをする水晶について、取得した水晶の個別の性質および公差を考慮すると、観測可能なドリフトの起こりうる数は有限である。例えば、出願人がテストしたシステムでは、この数は256であった。網羅的な探索は、全ての可能なクロックドリフト値を順にテストするものであり、測定基準値が最大になる値、すなわち品質判定基準を最大にする値を保持するものである。この品質判定基準は、例えば、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギー、および/または電力、あるいはこれらの種々のパラメータの組み合わせに相当する。例えば、合成信号の最大エネルギーをもたらすドリフト値を選択することができる。この方法は、スペクトル分析と類似しており、テストされた各ドリフト値は異なる反復頻度に相当する。それ故、全ての値を完全に掃引すると、信号のスペクトルを描くことになる。
【0124】
しかし、このアプローチは、テストされる値の数に応じて、比較的長い時間を要することがある。他方、受信装置が幾つかの合成ブロックを備える場合、幾つかの値は、各受信信号に関して同時にテストされてもよい。
【0125】
この場合、プライマリ信号が256msごとに送信され、受信機が3つの合成ブロックを備えているとすると、網羅的探索に必要な時間は、256値/3ブロック×256ms=21.8秒である。
【0126】
図14は、上述の方法を実施するために、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置の例示的実施形態の概略図を示す。
【0127】
受信機は、種々のブロックを備えている。
【0128】
プライマリ信号が受信され、次いで、例えば1ビットでデジタル化される。これらの信号は、2つのバッファメモリ300および302に交互にロードされ、例えば、一方のバッファメモリ300がデジタル化された信号を受信するとき、他方のメモリが3つのアドレス310、312、314にアンロードできて、それによって高速処理を保証する。各バッファメモリ300、302は、デジタル化された信号のサンプルxnkを有し、ブロックを形成できるのに十分なサンプルを収集する働きをする。
【0129】
これらのメモリ300、302の役割は、PRPについて並行して操作を行うことを視野に、幾つかのPRP(バッファメモリに格納されたPRPの数をmで表す)を利用可能にするのに十分なサンプルを蓄積することである。
【0130】
サンプルのブロックは、その後、バッファメモリ300または302から取り出され、3つのアドレス310、312、314にロードされる。
【0131】
ブロックkは、バッファメモリに格納されたm個のPRPのサンプルkの全て
【数15】
、すなわち、m個のサンプルを有している。これは、合計に関して、加算器に並列にロードされるm個の連続するブロックkである。加算器はこれらの値は格納しないが、サンプルxNkがアドレス310、312、314にロードされるので、各ブロックkの部分和Skを計算する。3つのアドレス310、312、314は、方法の追跡段階52のフレームワーク内で、推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δおよび減少した値ΔDHi−δとを、それぞれ適用することによって区別される。
【0132】
並行して、m個のブロックのkに相当するm個の連続するサンプルykは、アドレス310、312、314にそれぞれ関係する信号メモリ320、322または324の中にロードされる。各信号メモリ320、322または324は、合成信号の結果を有し、再帰的に更新される。
【0133】
さらに、装置は、信号処理ユニット(英語で「デジタル信号処理(Digital Signal Processing)」表す「DSP」)DSP1、DSP2、DSP3を備えている。
【0134】
DSP1、DSP2、DSP3は、合成が終了すると、合成信号を処理する機能のセットを実行する。これらのブロックは、出力として、パルスの到着時刻(TOA)、合成信号のSNR、そのエネルギーなどのような合成信号に関する役立つデータを提供する。これらのデータは、その後、種々のビーコンの位置を計算するマイクロプロセッサ(図示せず)によって利用される。
【0135】
最後に、シーケンサ340は、種々のブロックを制御し、特にバッファメモリおよび信号メモリのアドレスを生成する。
【0136】
それ故、この装置は、上述の方法の種々のステップを実行するように構成されているものである。
【0137】
本発明による方法および装置によると、最適な処理利得を得ることができ、それによって、わずかの出費で、装置の使用範囲を拡大できる。
【0138】
処理の核心は、リアルタイムに行われ、それによって、非常に高速で結果を入手することができるようになる。
【符号の説明】
【0139】
1 第1の送信機/受信機
2 第2の送信機/受信機
4 パルス
5 合成信号
20 ポインタ
22 メモリ
50 初期設定段階
50A、50B 初期設定段階のサブステップ
52 追跡段階
100〜110、200〜214 ステップ
300、302 バッファメモリ
310、312、314 アドレス
320、322、324 信号メモリ
340 シーケンサ
H1、H2 クロック
PRP パルス繰り返し周期
T パルス繰り返し周期
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号の合成方法、および同方法の実施装置に関する。
【0002】
本発明は、ウルトラワイドバンド(UWB)インパルス無線技術、すなわち、10dB帯域幅と中心周波数との比が25%を上回る信号を使用する無線技術分野に属し、より詳細には、合成中における送信機とUWB受信機との間のクロックドリフトの補正に関する。
【背景技術】
【0003】
この無線技術は、IEEE標準802.15.4aの主題となっている。
【0004】
この技術は、パーソナルネットワーク、および低速ローカルワイヤレスネットワークの種類、すなわち通信タグ、センサネットワーク、アドホックネットワーク(すなわち、予め確立されたインフラストラクチャがなくても自己組織化できるネットワーク)、位置測定、セキュリティ等に適用できるものである。
【0005】
インパルス方式ウルトラワイドバンド通信システムにおいて、送信機と受信機との間で送信されるデータは、振幅、位相、または位置で符号化された電磁パルスである(非特許文献1参照)。送信機と受信機との間の通信プロセスの重要なステップは、データパケットの受信時において、これらのデータパケットの受信機レベルへの到達時点を決定するときに生じる。この場合、受信信号と受信機との同期が必要である。この同期は、通信媒体に支障がある(マルチパスが出現する)とき、ますます実行が難しくなる。
【0006】
低速パーソナル無線ネットワーク用のウルトラワイドバンド方式の物理層を提案しているIEEE標準802.15.4aは、回路の複雑さに関して新しい制約を付している。さらにこの標準は、クロックの不完全さに関して特に強い制約をもたらす、比較的長い継続期間を有するデータパケットの使用について提案している。これらの2つの特徴は、ともに、クロックの不完全性の検出および補正のために、ロバストなスキームを考案することを要求している。受信機とデータパケットの同期を可能にする多くの解決手段が、現在既に存在している。頻繁に使用されている技術は、受信信号を様々な時点における波形と相関させるものである(特許文献1〜7:WO1996−041432、WO2001−073712、WO2001−093442、WO2001−093444、WO2001−093446、US2005−0089083、US2006−0018369参照)。
【0007】
提案されているアーキテクチャは、非常に高速な同期を可能にするが、しかし回路が非常に複雑になるという代償を払うことになる(使用される無線周波数コンポーネントは、ミキサ、積分器、局部発振器等である)。
【0008】
しかし、この複雑さおよびコストの上乗せは、例えば煙が充満した環境にいる消防士または雪崩の犠牲者の探索などの特に位置測定用途などの、ある種の用途では許容できない(例えば、特許文献8:WO2006/003294参照)。従って、送信機と受信機との間のクロックのドリフトについての問題が生じる。この問題について、以下で詳細に説明する。
【0009】
実際のところ、第2の送信機/受信機に対する第1の送信機/受信機の位置を決めるために、一般に、非常に継続期間の短い電磁パルスの到達所要時間または到達所要時間に関係する量の測定が使用されている。
【0010】
この原理は、「双方向測距」(TWR)とも呼ばれており、この原理について、図1および図2に示してある。
【0011】
図1は、第1の送信機/受信機1および第2の送信機/受信機2を示し、それぞれが、自装置のクロックH1およびH2をそれぞれ有している。これらのクロックは同期していない。
【0012】
図2は、第1の送信機/受信機1と第2の送信機/受信機2との間で交換される信号の送受信のタイムチャートを示す。
【0013】
この信号の交換において、送信機/受信機1は、時点t0に電磁パルスを送信する。光の伝播速度cと関係して、このパルスは、時刻t=t0+d/cに送信機/受信機2に到達することになる。ここで、dは、送信機1と受信機2との間の距離を表す。
【0014】
この時点で、装置2は、正確な送信時刻t0が分かっていれば、距離dを測定することができるが、2つの装置は、それらのクロックのドリフトのせいで、正確には同期していないから、そうはならない。
【0015】
従って、既知の期間ΔT後に、今度は送信機/受信機2がパルスを送信し、このパルスが、時刻t=t0+2d/c+ΔTに装置1に到達する。
【0016】
送信機/受信機2とは対照的に、送信機/受信機1は、時点t0およびシステムの定数である期間ΔTを知っているので、実際に距離を求めることができる。
【0017】
到着時刻、ひいては測定される距離の正確さは、パルスの継続期間に直接関連している。通常、これらのパルスの継続期間は、ナノ秒程度(1ナノ秒間に、パルスは30cm進む)である。さらに、時間領域で非常に狭いパルスは、周波数領域で非常に広いことが知られている。このため、短いパルスを使用する無線システムは、そのスペクトルの広さに関連して、ウルトラワイドバンド(UWB)無線と呼ばれている。
【0018】
そのスペクトル拡散が大きい(数百メガヘルツ)ため、これらのシステムは、送信レベルが非常に弱いという特徴もある。実際のところ、UWBシステム専用に割り当てられている周波数帯はない。それ故、UWBシステムは、他の「従来の」無線システムのために確保されている周波数帯を、それらの無線システムを妨害することなく使用しなければならない。
【0019】
従って、立法者は、UWBシステムから、「従来の」無線システムへのあらゆる妨害を未然に防ぐために、極小送信電力(例えば、3〜5GHz間で−41.3dBm/MHz)に関する基準を決定した。反対に、UWBシステムは、従来の無線システムからの送信をまともに受ける。
【0020】
一方では送信電力が小さく、他方では大きな妨害が存在することから、UWBシステムは、狭い範囲(通常、2、3メートル)の用途に限定されている。測定によると、3V振幅の500MHz〜1GHz帯のパルスの範囲は、(等方向性アンテナで)約3mであった。
【0021】
しかし、ある種の適用シナリオ、特に位置測定のシナリオでは、例えば数十m程度のはるかに広い範囲を必要としている。
【0022】
放射電力を増大しないという課題に対応して、範囲の拡大は、平均化メカニズムと全て同種のデジタル処理操作だけで達成しうる。
【0023】
実際のところ、信号を検出できるためには、その振幅は、ノイズの振幅より大きくなければならない。実際には、信号の振幅は、ノイズの標準偏差より少なくとも3倍大きくあるべきである。すなわち、信号対雑音比は、少なくとも約10dBであるべきである。
【0024】
ノイズを減少できる最も効果的な技術は、原理的には、送信機で同じパルスを数回送信し、受信機で受信した信号の平均(または合計)を計算することである。
【0025】
パルス4が繰り返される周期Tは、PRP(パルス繰り返し周期)と呼ばれている。受信機は、その後、この同じ周期に従って受信した信号を「チョッピング」し、それから図3に示すように合計する。このメカニズムは、「合成」とも呼ばれている。この合成信号5について、図3に概略的に示す。
【0026】
合成メカニズムの基礎となる原理は、「信号」は、「ノイズ」よりよく合計されるということである。この原理を理解するためには、受信機によってデジタル化されたサンプルr(t)を、「有用な信号」(パルス)s(t)とノイズb(t)の和として表すことがまず必要である。
r(t)=s(t)+b(t) (1)
【0027】
ノイズはランダムな変量であり、その振幅は、標準偏差σで特徴付けられ、このσは、その分散の平方根としても定義されている。
サンプルr(t)の信号対ノイズ比は、次式で与えられる。
【数1】
(2)
【0028】
合成信号rm(t)は、次のように表される。
【数2】
(3)
【0029】
自明なように、同一の信号がn回一緒に加えられると、その振幅はn倍される。
sm(t)=s(t)+s(t+T)+s(t+2T)+…s(t+(n−1)T)=n・s(t) (4)
【0030】
他方、ランダムな変量のn回の加算は、その分散のn倍になり、従ってその標準偏差は、
【数3】
倍になる。
【数4】
(5)
【0031】
従って、
【数5】
(6)
【0032】
従って、合成信号の信号対雑音比は、非合成信号の信号対雑音比に対して、10・log(n)倍に改善している。
【数6】
(7)
送信スペクトルを拡散して情報項目を伝達するために、あるいはパルスを識別するために、送信信号は単に周期的というだけでなく、特定の符号化に従って変調される。例えば、図4に示すように、ウィンドウ番号iのパルスの位置τ(i)を変更することができる。
【0033】
この場合、前述のチョッピングおよび平均化メカニズムは、パルスが、常にはPRPのウィンドウの「同じ位置」にないので、うまく機能することはできない。より一般的には、受信信号は、次のように書くことができる。
【数7】
(8)
上式で、
・[τ0…τn-1]:0<τi<Tである符号位置
・[A0…An-1]:Ai=+/−1である極性符号
・p(t):受信基本パルスを表す信号
・b(t):ホワイトノイズ
である
【0034】
符号化信号を受信するために、受信信号は、予想シーケンスα(t)と相関される。
【数8】
(9)
この視点から、図3に示す単純な合計は、くし型関数の相関の特定の場合と解釈されてもよい。発明者たちは、次の合成信号を得ている。
【数9】
(10)
具体的には、次のようになる。
【数10】
(11)
合成信号の信号対雑音比は、本質的に、合成信号の期待値と標準偏差との比である。
【数11】
(12)
同じ合成利得が、単純平均の場合にも見られる。要約すると、合成利得の視点からは、周期信号の平均の計算と相関により符号化された信号の受信との間に、基本的な差はない。以下の説明は、全て、周期信号の合成という特定の場合に限定することとするが、相関により符号化される信号の受信というより一般的な場合にも、同じ原理が当てはまることに留意されたい。
【0035】
図5を参照する。受信信号は、N個のPRP(Nは自然数)の連続または列から成り、PRPのそれぞれは、K個のサンプル(Kは自然数)を備えている。従って、xnkは、この場合、PRP番号nのサンプル番号k(フェーズとも呼ばれている)に相当する。ここで、kは、0とK−1との間にあり、nは、0とN−1との間にある。サンプルxnkの時点は、簡単に次のようになる。
【数12】
(13)
【0036】
以下に示すN個のPRPの列の合成信号であって、PRPに等しい継続期間Tを有する合成信号は、0からK−1までの番号が付けられたK個のサンプルを備えている。従って、合成信号のサンプルykは、簡単に次のようになる。
【数13】
(14)
【0037】
上式は、合成によって得られる処理利得が10・log(N)形式の法則に従って増加することを示している。ここで、Nは合成する数である。従って、UWB装置の範囲を拡大するためには、合成する数すなわち送信パルス数を増加することが適している。正確には、α倍に範囲を拡大するためには、パルス数をα2倍にしなければならないことを示している。実際のところ、大きな範囲を得るためには、合成するパルス数は、直ぐに非常に大きくなる。例えば、システムの種々のロスおよび到達範囲(約100m)を考慮すると、合成するパルス数は65000に達すると思われる。
【0038】
非常に多くのパルスの合成中に生じる問題は、効果的であるためには、合成メカニズムが、パルスの位相をそろえて加えなければならないということである。これが意味することを理解するために、図6に示すデジタル信号について、検討してみる。PRPの連続である受信信号は、例えば1μsの周期(送信機のクロック)を有しており、受信機が同じ周期でチョッピングする場合、下に示すサンプルは、同じ位相を有しており、そろっている。この場合、合計は、完ぺきに行われることになる。
【0039】
他方、パルス数が増加すると、合成期間が長くなり、送信機と受信機との間のクロックドリフトが非常に注意を払うべきパラメータになる。例えば、PRPが1μsの継続期間を有する場合、65000個のパルスの合成には、それ故65000×1μs=65msが必要である。サンプルのレベル(すなわち500ps内)で位置合わせを維持するためには、クロックドリフトは、次の値より小さくなければならない。
【数14】
(15)
【0040】
ところで、市販されている最高の水晶振動子は、1ppm程度のドリフトを有する。具体的には、このドリフトは、例えば、特に電源オン時の温度の変化、水晶の老朽化、水晶に加えられた機械的衝撃、あるいは水晶の供給電圧の変動などから生じる。
【0041】
図7は、クロックドリフトの存在時における合成への影響について示している。この場合、合成信号は広がっており、合成利得は最早最適ではない。
【0042】
それ故、UWBシステムの範囲を拡大できるためには、送信機と受信機との間のクロックドリフトについての知識が重要である。
【0043】
トレリスアプローチに基づいてUWBシステムの2つのクロック間のドリフトを推定し、その後受信する多様なサンプルのコヒーレント合成を可能にする方法が、特許文献9(EP1,903,702A1)により公知である。このアプローチによると、部分的な合計を求め、合計の全てをメモリに格納する必要がある。次に、マルチパスベースの合成プロセス(本明細書の図11参照)によって、多くの合計を行い、その後、相互に比較し、最善のものを、例えばエネルギー判定基準などによって選択する。しかし、トレリスの使用は、かなりのハードウェアリソースと、無視できない量の事後処理とを必要とする。実際のところ、例えば、PRPの中の2048の地点と、65535個のPRPに対する+/−128サンプルの最大シフト(すなわち、128の異なるセグメント)を使用する場合、処理動作は、次のものから構成される。
−部分和の算出:2048×65535=134百万回の加算
−部分和の記憶:2048×128=262000メモリワード
−トレリスのスキャン:2048×128×256=67百万回の加算
−スキャン結果の記憶:256×2048=524000ワード
−最善のスキャンの探索:524000ワードの処理
さらに、トレリスのスキャンの動作および最善のスキャン探索の動作は、信号の受信の完了後に行われ、これは、リアルタイム処理にとって問題である。
【0044】
最後に、必要なハードウェアリソースを限定するために、ドリフトの探索は、フェーズkの全セットに対して行われず、それらの中の限られた数に対してだけ行われる。前述の文献に提案されているこの選択肢は、それにもかかわらず、送信機と受信機が前もって同期されていると想定している。すなわち、受信機がPRPのどの部分にパルスがあるかを「知っている」と想定している。ところで、このアプローチは、ドリフトの推定後にだけ同期を行うことができるので、信号対雑音比が非常に小さいシステムでは使用できない。信号が正しく合成されない(信号対雑音比が小さい)場合、信号の同期ができない、また、送信機と受信機との間のクロックドリフトが分からない場合、信号を正しく合成することはできない。
【0045】
また、パルスが入る瞬間だけ受信機をオンにして、エネルギー消費を減らすことができるようになっている方法が、非特許文献2から公知である。この方法は、パルスの処理とその受信との同期を必要とする。しかし、方法の開始時に同期が完全な場合でさえ、クロックドリフトによって、時が経つにつれて、パルスの受信と処理との間に脱同期化が生じる。
【0046】
この脱同期化を軽減するために、受信機は、パルスがPRPのどの部分にあるかを見つけようとする。このために、方法は、同期の3つの時点を同時に検討するアーキテクチャを使用している。
【0047】
信号対雑音比、およびこのアプローチの性能を向上するために、この方法は、「パイロットパルス」のPRPへの挿入を必要とする。パイロットパルスは、同期の3時点においてサンプリングされる。方法では、その後、同期の3時点におけるパイロットパルスが有するエネルギーを比較する。パルスの処理のために選択する同期の時点は、最大のエネルギーを有している時点である。
【0048】
しかし、パイロットパルスの挿入は、必要な演算数を増加させ、方法を複雑にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】国際公開第1996−041432号
【特許文献2】国際公開第2001−073712号
【特許文献3】国際公開第2001−093442号
【特許文献4】国際公開第2001−093444号
【特許文献5】国際公開第2001−093446号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005−0089083号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006−0018369号明細書
【特許文献8】国際公開第2006/003294号
【特許文献9】欧州特許第1,903,702A1号明細書
【非特許文献】
【0050】
【非特許文献1】M.Z.Win、R.A.Scholtz共著「インパルス無線の動作」、IEEE Comm.Letters、vol2 No.2、p36−38、1998年2月
【非特許文献2】Li Huang外「インパルス無線(IR)方式ウルトラワイドバンド(UWB)システム用のタイミング追跡アルゴリズム(Timing tracking algorithms for impulse radio (IR) based ultra wideband (UWB) systems)」、無線通信、ネットワーキング、およびモバイルコンピューティングに関する2007年第3回国際会議−WiCOM‘07 2007年9月21〜25日、中国、上海、ページ570-573、XP002662469、無線通信、ネットワーキング、およびモバイルコンピューティングに関する2007年第3回国際会議、WiCOM‘07 IEEE、米国、ニュージャージー州、ピスカタウェイ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0051】
本発明は、上述の欠点の少なくとも一部を軽減することを目的としており、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号の合成方法であって、受信機が少しのハードウェアリソースしか必要としない方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0052】
このため、本発明は、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド受信機へ送信された信号の合成方法を提案するもので、この方法は、
−送信機と受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を事前に初期設定し、
−反復ループを行い、この反復ループの実行中に、
・少なくとも2つのサンプルから成る少なくとも1つの受信プライマリ信号を合成するステップを行い、このステップの実行中に、推定クロックドリフトを使用して、少なくとも1つの第1の合成を行い、それぞれ所定の値だけ増加および減少して、少なくとも1つの第2の合成および少なくとも1つの第3の合成を行い、
・前述の少なくとも3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、クロックドリフトを、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させることを特徴としている。
【0053】
個別にまたは組み合わせて設けられる、変換回路の1つ以上の特徴は、次の通りである。
【0054】
合成ステップ中に、1つの受信プライマリ信号に対する例えば少なくとも3つの合成を、推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とをそれぞれ使用して行い、3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、クロックドリフトΔDHi+1を、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させる。ここで、ΔDHiは、ループiのクロックドリフトであり、iは自然数であり、δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0055】
一態様においては、初期設定ステップ中に、
−送信機が送信する少なくとも1つのプライマリ信号を受信し、
−このプライマリ信号に対して、クロックドリフトΔDHj=ΔDH+j×δの離散範囲内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にするクロックドリフトを、初期クロックドリフトΔDHinitとして選択する。ここで、ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、jは整数であり、δは、所定の基本クロックドリフトに相当する。
別の態様においては、初期設定ステップ中に、
−送信機および受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、送信機が送信する第1のプライマリ信号を受信機が受信し、この第1のプライマリ信号に対して合成を行い、その到着時刻を測定し、
−期間θ後に、送信機および受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、受信機が第2のプライマリ信号を受信し、この第2のプライマリ信号に対して合成を行い、その到着時刻を測定する。
−到着時刻間の差を利用して、初期クロックドリフトΔDHinitの推定を行う。
また別の態様においては、初期設定ステップ中に、
−送信機および受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第1のプライマリ信号を送信し、
−この第1のプライマリ信号を受信し、この第1のプライマリ信号に対して合成を行い、
−期間θ後に、送信機および受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第2のプライマリ信号を送信し、この第2のプライマリ信号を受信し、この第2のプライマリ信号に対して合成を行い、
−初期クロックドリフト間隔ΔDHjは、第1のサンプルと第2のサンプルの合成によって決定し、
−送信機が送信する少なくとも1つの第3のプライマリ信号を受信し、
−決定した間隔ΔDHj=ΔDH+j×δ内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、この第3の信号に対してj+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にするクロックドリフトを、初期クロックドリフトΔDHinitとして選択する。ここで、ΔDHは所定のクロックドリフト値、jは自然数、δは所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0056】
変形形態において、所定の基本クロックドリフトは等しい。
【0057】
合成期間Tintegrationにおけるサンプルの移動techに対する規定が、例えば、2つの所定の基本クロックドリフトの少なくとも1つに関して策定されるのがよい。
【0058】
一実施形態における合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプルの値を合計することによって行われ、クロックドリフトの補正は、メモリのアドレスポインタを移動することによって行われる。
【0059】
別の実施形態における合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプルの値を相関させることによって行われ、クロックドリフトの補正は、メモリのアドレスポインタを移動することによって行われる。
【0060】
一態様における合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプルの値を合計することによって行われ、クロックドリフトの補正は、送信機のクロックを移動することによって行われる。
【0061】
一実施形態における、受信プライマリ信号の前述の少なくとも3つの合成は、推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とをそれぞれ使用して、並行して行われる。
【0062】
代替例では、連続して受信した3つのプライマリ信号の少なくとも3つの合成は、推定クロックドリフトと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加および減少した値とをそれぞれ使用することによって、連続的に行われる。
【0063】
品質判定基準は、例えば、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギーまたは電力のグループの中から選択される1つの評価基準、または評価基準の組み合わせなどに相当する。
【0064】
また、本発明の主題は、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド受信機に送信された信号を合成する装置にも関し、この装置は、
−送信機と受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を初期設定し、
−反復ループを行い、この反復ループの実行中に、
・少なくとも2つのサンプルから成る少なくとも1つのプライマリ信号を合成するステップを行い、このステップの実行中に、推定クロックドリフトを使用して、少なくとも1つの第1の合成を行い、それぞれ所定の値だけ増加および減少して、少なくとも1つの第2の合成および少なくとも1つの第3の合成を行い、
前述の少なくとも3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させるように構成された手段を備えていることを特徴としている。
【0065】
個別にまたは組み合わせて備えられる、電子システムの1つ以上の特徴は、以下の通りである。
【0066】
この装置は、例えば、次のように構成された手段を備えている。
・推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とをそれぞれ使用して、受信プライマリ信号に対して少なくとも3つの合成を行い、
・3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させるようにクロックドリフトΔDHi+1を選択する。ここで、ΔDHiはループiのクロックドリフトであり、iは自然数であり、δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0067】
これらの手段は、さらに次のように構成されているのがよい。
−送信機から送信された少なくとも1つのプライマリ信号を受信し、
−このプライマリ信号に対し、クロックドリフトΔDHj=ΔDH+j×δの離散範囲内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−初期クロックドリフトΔDHinitとして、品質判定基準を最大にするクロックドリフトを選択する。ここで、ΔDHは所定のクロックドリフト値であり、jは整数であり、δは所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0068】
別の態様における装置は、少なくとも1つのメモリを備え、割り当てられたメモリスロット内のサンプルの値を合計して合成を行い、メモリのアドレスポインタを移動することによって、クロックドリフトの補正を行うように構成されている。
【0069】
他の利点および特徴は、以下の図面と一緒に本発明の説明を読むことにより明白になると思う。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】同期していないクロックを有する送信機およびUWB受信機の説明図である。
【図2】距離測定を示す概略タイムチャートである。
【図3】受信機での信号合成のメカニズムを示す簡略化した図である。
【図4】信号の例示的位置符号化を示す概略タイムチャートである。
【図5】PRPから成る受信プライマリ信号および合成信号の例示的図である。
【図6】送信機と受信機との間にクロックドリフトなしに受信されたPRPから成るプライマリ信号の例示的合成を示す一例の図である。
【図7】送信機と受信機との間にクロックドリフトを有して受信されたPRPから成るプライマリ信号の例示的合成を示す一例の図である。
【図8】本発明による一般的方法のステップを示すフロー図である。
【図9】PRPから成るプライマリ信号の合成を実行可能な実施形態を示す概略図である。
【図10】本発明の方法による例示的合成を示す説明図である。
【図11】第1の実施形態による本発明の方法の幾つかのステップを示すフロー図である。
【図12】PRPから成るプライマリ信号の到達時刻測定によって、送信機と受信機との間のクロックドリフトの推定を示す例示的タイムチャートである。
【図13】第2の実施形態による本発明の方法の幾つかのステップを示すフロー図である。
【図14】本発明の方法を実施する合成装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
全ての図において、同じ要素には、同じ符号を付してある。
【0072】
図8は、本発明による一般的方法のステップを示すフロー図である。
【0073】
送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する方法は、基本的に2つの主要段階50および52から構成されている。第1は初期設定段階50であり、この段階中に、送信機と受信機との間のクロックドリフトの値に関する調査を行う。第2の段階は追跡段階52であり、この段階中に、クロックドリフトの値、より正確にはクロックドリフトの変動を追跡して、プライマリ信号の合成、好ましくはコヒーレントな合成を勘案して、クロックドリフトをリアルタイムに補正する。
【0074】
プライマリ信号は、それぞれがK個のサンプルを備えるN個のPRPから形成されている。従って、プライマリ信号のサンプルには、
【数14】
のように添え字を振ってもよい。ここで、
・0≦n≦N−1
・0≦k≦K−1
である。
【0075】
合成信号は、例えばN個のPRPにわたる信号の平均、またはN個のPRPにわたる信号の相関などに相当し、プライマリ信号のN個のPRPの合成を行うことによって得られ、K個のサンプルを備えている。
【0076】
より詳細には、第1のステップ100中に、送信機と受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を初期設定する。
【0077】
後で分かるよう、この初期クロックドリフトΔDHinitの推定は、様々なやり方で行いうる。
【0078】
次の第2の段階52は、幾つかのステップを有する反復ループを実現することから成っている。
【0079】
ステップ102中に、K個のサンプルから成るPRPをN個有するプライマリ信号が受信される。ここで、Kは1以上の自然数である。
【0080】
受信機は、永続的にオンにされており、それによって、プライマリ信号は継続的に合成される。これにより、一方では、プライマリ信号の受信とその処理との間の脱同期化を避けることができ、他方では、プライマリ信号全体を処理することができる。
【0081】
次にステップ104、106、108中に、受信プライマリ信号の少なくとも3つの合成、好ましくはコヒーレント合成を行うが、ステップ106に関しては、推定クロックドリフトΔDHiを使用して、ステップ104に関しては、この推定クロックドリフトを所定の値だけ減少した値ΔDHi−δ2を使用して、ステップ108に関しては、所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1を使用してそれぞれ行う。合成のそれぞれに関して、プライマリ信号全体を使用することができる。代替として、位相をそろえないでこれらの合成を行うこともできる。
【0082】
ΔDHiは、ループiのクロックドリフトである。もちろん、i=0に関しては、ΔDH0=ΔDHinitであり、iは自然数である。
【0083】
δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当する。
【0084】
一実施形態においては、所定の基本クロックドリフトδ1およびδ2は、基本クロックドリフトδに等しい。
【0085】
δは、例えば、合成期間Tintegrationにおけるサンプルの移動techを生じるドリフト値などに相当する。
δ=tech/Tintegration
【0086】
図8に示すように、前述の少なくとも3つのコヒーレント合成104、106、108は、並行して同時に行われる。
【0087】
変形形態においては、これらのステップ104、106、108を順次行うこともできる。それによって、同じ電子コンポーネントで合成を行うことができ、それ故、図8に対してより少ないリソースしか必要としないという利点が得られる。
【0088】
また別の変形形態においては、受信および合成される3つのプライマリ信号に関するステップ104、106、108を順次行うことができる。すなわち、連続的に受信した3つのプライマリ信号の少なくとも3つの合成を、推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1と、所定の値だけ減少した値ΔDHi−δ2とをそれぞれ使用して、連続的に行うことができる。
【0089】
この変形形態もまた、同じ電子コンポーネントで合成を行うことができ、それ故、図8に対して、より少ないリソースしか必要としないという利点がある。
【0090】
追跡段階52に関して、3つの合成ステップ104、106、108について、図8に示してある。しかし、例えば、クロックパラメータに応じて、さらには方法が実施される環境に応じて、合成数を、例えばクロックドリフトΔDHi+2δ、ΔDHi+δ、ΔDHi、ΔDHi−δ、ΔDHi−2δを使用する合成数5に増加させることが必要かもしれない。
【0091】
次にステップ110中に、3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択する。この品質判定基準は、例えば、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギー、および/または電力あるいはこれらの種々のパラメータの組み合わせなどに相当する。例えば、最大のエネルギーを有する合成を選択し、適切な場合、クロックドリフトΔDHi+1を、選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させる。
【0092】
ループiにおいて、ΔDHi−δを使用するステップ104の合成が、合成106および108に対して、例えば品質判定基準として最大エネルギーを有する合成を与えていると想定する。この場合、次のループi+1に関して、ΔDHi+1=ΔDHi−δを選択して、ループi+1の合成を適合されたクロックドリフトで行う。すなわちステップ104に関して、ΔDHi+1−δ=ΔDHi−2δ、ステップ106に関して、ΔDHi+1=ΔDHi−δ、およびステップ108に関して、ΔDHi+1+δ=ΔDHiで行う。
【0093】
上記から、送信機と受信機との間のクロックドリフトを考慮しつつも、わずかなリソースを使用して、合成をリアルタイムに行いうることがわかる。
【0094】
これについて、図9に示してある。図9は、上述の方法による合成装置の一部の例示的実施形態を示す。
【0095】
図が簡潔に示していることは、信号PRPnのサンプルkであり、それ故、上述の定義によれば、サンプル(n,k)である。
【0096】
このサンプル(n,k)は、合成信号ykを有するメモリ22を指すポインタ20によって指示される。より具体的には、アドレスkによって指示される。
【0097】
図から分かるように、提案の解決手段においては、プライマリ信号が部分和および後処理ステップを含むことなく、完全に合成されており、受信信号は、部分和(合成)として格納され、その後に後処理されて(トレリスのスキャン)、最終の合成信号になるようには構成されていない。
【0098】
メモリ22は、合成信号の結果を有し、アドレスポインタ20が、更新されるサンプルを指定する。
【0099】
クロックのドリフトがないと、アドレスポインタ20は、それぞれの新しいサンプル(n,k)にインクリメントされる。
【0100】
送信機と受信機との間にクロックドリフトが存在すると、一定の期間Tdraftの後、図10に示すように、ドリフトの符号に応じて、サンプル(n,k)からサンプル(n,k+1)または(n,k−1)にパルスが「スライド」する。
【0101】
クロックドリフトを補償するメカニズムは、ある値だけ、信号メモリアドレスポインタを単に移動して、ポインタを、認識されたドリフトの変動に従って、サンプル(n,k)からメモリ22のアドレスk+1またはk−1に向けるものである。
【0102】
従って、合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を合計することによって行われ、クロックドリフトの補正は、メモリのアドレスポインタを単に移動することによって行われる。
【0103】
クロックのドリフトが大きい場合、新しい期間Tdriftの後に、別の移動が生じて、信号メモリ22のアドレスポインタ20が2値だけ移動される等である。
【0104】
従って、この方法によると、少ないハードウェアリソースを使用して有効な合成を行うことができ、それによって、少ない費用で合成装置の使用範囲をかなり拡大できることが理解しうる。
【0105】
別の変形形態においては、受信機のポインタ20を移動する代わりに、送信機1のクロックH1をクロックドリフト値だけ送信機1自体に移動させる制御信号を送信機1に送信することが想定される。従って、ポインタ20を強制的に移動させることなく、割り当てられたメモリスロット内のサンプルkの値を合計することで合成を行うことができる。
【0106】
初期設定段階50について、第1の実施形態を示す図11を参照して、詳しく述べる。
【0107】
この第1の実施形態においては、初期設定段階は、2つのサブ段階50Aおよび50Bに分けられる。その一方の50Aは、2つのプライマリ信号のパルスの到着時刻TOAの測定に基づく、クロックドリフトの計算に相当しており、クロックドリフトの粗い推定を得られる。他方は、粗い推定の周りの限られた区域における種々のクロックドリフトを、好ましくはコヒーレントに合成したプライマリ信号の精細な分析に相当する。
【0108】
より詳細には、ステップ200中に、送信機と受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第1のプライマリ信号が送信される。実際のところ、この条件によって、第1のプライマリ信号の送信中のクロックドリフトを無視できる、またはゼロであると見なすことさえできる。
【0109】
次のステップ202中に、このプライマリ信号は受信され、好ましくはコヒーレントに合成され、その到着時刻が測定される。
【0110】
送信機と受信機が知っている期間θ後、ステップ204中に、送信機と受信機のクロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第2のプライマリ信号が送信される。
【0111】
その後、ステップ206中に、この第2のプライマリ信号は受信され、好ましくはコヒーレントに合成され、その到着時刻が測定される。
【0112】
ステップ208中に、初期クロックドリフト間隔ΔDHjが、これらのTOAの測定値間の差を利用して決定される。
【0113】
実際のところ、図12に見られるように、このアプローチは、送信機1の2つの連続する送信の到着時刻TOA1とTOA2を利用し、受信機2がこれら2つの送信間の「公称」期間θを知っていると想定している。このアプローチはまた、送信機が受信機から遠すぎないで、精度の低いクロックドリフト値を使用する場合でさえ、やはり合成信号を検出できるとも想定している。実施した結果は、この後の方の想定が一般によく満たされていることを示している。この場合、2つの連続する到着時刻TOA1とTOA2の測定によって、クロックドリフト値、または少なくとも初期クロックドリフト間隔ΔDHjの直接計算ができるようになる。
【0114】
これを理解するために、2つの送信間の期間がθに等しく、送信機1と受信機2との間の伝播時間がtpに等しく、送信機に対する受信機のクロックドリフトがΔDHinitに等しいと想定する。図12に示すように、送信機のクロックが測定した到着時刻TOA1およびTOA2は、時間差θだけ離れている。他方、クロックドリフトによって、受信機のクロックがそれらを測定するとき、2つの到着時刻の間の認識される時間は「拡張」され、θ(1+ΔDHinit)に等しくなる。受信機が値θを知っているので、受信機は、その値からドリフト値ΔDHinitを推測することができる。
【0115】
特に受信信号の品質、およびクロックドリフトΔDHinitの大きさに応じて、ΔDHinitを、十分な精度で直接決定することもある。また単に、初期クロックドリフト間隔ΔDHj、従ってクロックドリフトのやや粗い推定の列に終わることもある。
【0116】
後の場合、初期クロックドリフト間隔ΔDHj内のクロックドリフトΔDHinitの精細な推定を行うことが興味深いことが分かる。
【0117】
それに応じて、ステップ210中に、送信機が送信した第3のプライマリ信号が受信される。
【0118】
次のステップ212中に、決定した間隔ΔDHj=ΔDH+j×δ内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、この第3のプライマリ信号に対してj+1回の異なる合成が行われる。ここで、jは整数であり、δは所定の基本クロックドリフトに相当する。ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、正確な場合、例えば初期クロックドリフト間隔ΔDHjの中の最小の値である。
【0119】
最後のステップ214中に、品質判定基準を最大にするプライマリ信号の合成に相当するΔDHj値の中の1つを、初期クロックドリフトΔDHinitとして選択する。この品質判定基準は、例えば、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギーおよび/または電力あるいはこれらの種々のパラメータの組み合わせに相当する。
【0120】
続いて、上述の追跡段階52に移動する。
【0121】
第1の変形形態においては、サブ段階50Aのステップが、サブ段階50Bを含むことなく、直接ΔDHinitの値を得られるように実行される、それ故、2つのプライマリ信号の測定だけを必要とし、非常に速く行えることが想定される。
【0122】
図12に線図的に示す第2の変形形態においては、より広いクロックドリフト間隔においてサブ段階50Bを行う網羅的な探索が、可能な/ありうるドリフト値ΔDHinitに対して行われる。この場合、ΔDHは、例えばゼロに等しいなどの任意に選ばれたクロックドリフト値である。
【0123】
実際のところ、クロック信号を生成する働きをする水晶について、取得した水晶の個別の性質および公差を考慮すると、観測可能なドリフトの起こりうる数は有限である。例えば、出願人がテストしたシステムでは、この数は256であった。網羅的な探索は、全ての可能なクロックドリフト値を順にテストするものであり、測定基準値が最大になる値、すなわち品質判定基準を最大にする値を保持するものである。この品質判定基準は、例えば、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギー、および/または電力、あるいはこれらの種々のパラメータの組み合わせに相当する。例えば、合成信号の最大エネルギーをもたらすドリフト値を選択することができる。この方法は、スペクトル分析と類似しており、テストされた各ドリフト値は異なる反復頻度に相当する。それ故、全ての値を完全に掃引すると、信号のスペクトルを描くことになる。
【0124】
しかし、このアプローチは、テストされる値の数に応じて、比較的長い時間を要することがある。他方、受信装置が幾つかの合成ブロックを備える場合、幾つかの値は、各受信信号に関して同時にテストされてもよい。
【0125】
この場合、プライマリ信号が256msごとに送信され、受信機が3つの合成ブロックを備えているとすると、網羅的探索に必要な時間は、256値/3ブロック×256ms=21.8秒である。
【0126】
図14は、上述の方法を実施するために、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置の例示的実施形態の概略図を示す。
【0127】
受信機は、種々のブロックを備えている。
【0128】
プライマリ信号が受信され、次いで、例えば1ビットでデジタル化される。これらの信号は、2つのバッファメモリ300および302に交互にロードされ、例えば、一方のバッファメモリ300がデジタル化された信号を受信するとき、他方のメモリが3つのアドレス310、312、314にアンロードできて、それによって高速処理を保証する。各バッファメモリ300、302は、デジタル化された信号のサンプルxnkを有し、ブロックを形成できるのに十分なサンプルを収集する働きをする。
【0129】
これらのメモリ300、302の役割は、PRPについて並行して操作を行うことを視野に、幾つかのPRP(バッファメモリに格納されたPRPの数をmで表す)を利用可能にするのに十分なサンプルを蓄積することである。
【0130】
サンプルのブロックは、その後、バッファメモリ300または302から取り出され、3つのアドレス310、312、314にロードされる。
【0131】
ブロックkは、バッファメモリに格納されたm個のPRPのサンプルkの全て
【数15】
、すなわち、m個のサンプルを有している。これは、合計に関して、加算器に並列にロードされるm個の連続するブロックkである。加算器はこれらの値は格納しないが、サンプルxNkがアドレス310、312、314にロードされるので、各ブロックkの部分和Skを計算する。3つのアドレス310、312、314は、方法の追跡段階52のフレームワーク内で、推定クロックドリフトΔDHiと、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δおよび減少した値ΔDHi−δとを、それぞれ適用することによって区別される。
【0132】
並行して、m個のブロックのkに相当するm個の連続するサンプルykは、アドレス310、312、314にそれぞれ関係する信号メモリ320、322または324の中にロードされる。各信号メモリ320、322または324は、合成信号の結果を有し、再帰的に更新される。
【0133】
さらに、装置は、信号処理ユニット(英語で「デジタル信号処理(Digital Signal Processing)」表す「DSP」)DSP1、DSP2、DSP3を備えている。
【0134】
DSP1、DSP2、DSP3は、合成が終了すると、合成信号を処理する機能のセットを実行する。これらのブロックは、出力として、パルスの到着時刻(TOA)、合成信号のSNR、そのエネルギーなどのような合成信号に関する役立つデータを提供する。これらのデータは、その後、種々のビーコンの位置を計算するマイクロプロセッサ(図示せず)によって利用される。
【0135】
最後に、シーケンサ340は、種々のブロックを制御し、特にバッファメモリおよび信号メモリのアドレスを生成する。
【0136】
それ故、この装置は、上述の方法の種々のステップを実行するように構成されているものである。
【0137】
本発明による方法および装置によると、最適な処理利得を得ることができ、それによって、わずかの出費で、装置の使用範囲を拡大できる。
【0138】
処理の核心は、リアルタイムに行われ、それによって、非常に高速で結果を入手することができるようになる。
【符号の説明】
【0139】
1 第1の送信機/受信機
2 第2の送信機/受信機
4 パルス
5 合成信号
20 ポインタ
22 メモリ
50 初期設定段階
50A、50B 初期設定段階のサブステップ
52 追跡段階
100〜110、200〜214 ステップ
300、302 バッファメモリ
310、312、314 アドレス
320、322、324 信号メモリ
340 シーケンサ
H1、H2 クロック
PRP パルス繰り返し周期
T パルス繰り返し周期
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機(1)から、少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法であって、
−前記送信機(1)と前記受信機(2)との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を事前に初期設定し、
−反復ループを実行し、この反復ループの実行中に、
・少なくとも2つのサンプルから成る少なくとも1つの受信プライマリ信号を合成するステップを行い、このステップの実行中に、前記推定クロックドリフトを使用して、少なくとも1つの第1の合成を行い、前記推定クロックドリフトを所定の値だけ増加した値、および減少した値をそれぞれ使用して、少なくとも1つの第2の合成、および少なくとも1つの第3の合成を行い、
・前記少なくとも3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、前記クロックドリフトを、前記選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させるようになっていることを特徴とする、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項2】
前記合成ステップ中に、1つの受信プライマリ信号に対する少なくとも3つの合成を、前記推定クロックドリフトΔDHiと、前記推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とを、それぞれ使用して行い、前記3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、前記選択した合成に対応するクロックドリフトに、前記クロックドリフトΔDHi+1を適合させようになっており、ΔDHiはループiのクロックドリフトであり、iは自然数であり、δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当することを特徴とする、請求項1に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項3】
前記初期設定ステップ中に、
−前記送信機から送信された少なくとも1つのプライマリ信号を受信し、
−このプライマリ信号に対して、クロックドリフトΔDHj=ΔDH+j×δの離散範囲内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にする前記クロックドリフトを初期クロックドリフトΔDHinitとして選択するようになっており、
ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、jは、整数であり、δは、所定の基本クロックドリフトに相当することを特徴とする、請求項1または2に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項4】
前記初期設定ステップ中に、
−前記送信機と前記受信機の前記クロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、前記送信機から送信された第1のプライマリ信号を前記受信機で受信し、この第1のプライマリ信号に対して合成を行い、その到着時刻を測定し、
−期間θ後に、前記送信機と前記受信機の前記クロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第2のプライマリ信号を前記受信機で受信し、この第2のプライマリ信号に対して合成を行い、その到着時刻を測定し、
−前記到着時刻間の差を利用して、前記初期クロックドリフトΔDHinitの推定を行うようになっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項5】
前記初期設定ステップ中に、
−前記送信機と前記受信機の前記クロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第1のプライマリ信号を送信し、
−この第1のプライマリ信号を受信して、この信号に対して合成を行い、
−期間θ後に、前記送信機と前記受信機の前記クロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第2のプライマリ信号を送信し、この第2のプライマリ信号を受信し、この第2のプライマリ信号に対して合成を行い、
−前記第1のサンプルおよび前記第2のサンプルを合成して、初期クロックドリフト間隔ΔDHjを決定し、
−前記送信機から送信された少なくとも1つの第3のプライマリ信号を受信し、
−この第3の信号に対して、前記決定した間隔ΔDHj=ΔDH+j×δであるクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にする前記クロックドリフトを初期クロックドリフトΔDHinitとして選択するようになっており、
ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、jは、自然数であり、δは、所定の基本クロックドリフトに相当することを特徴とする、請求項1または2に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項6】
前記所定の基本クロックドリフト(δ1、δ2)は等しいようになっていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項7】
前記2つの所定の基本クロックドリフト(δ1、δ2)の少なくとも1つは、合成期間Tintegrationにおけるサンプルの移動techに相当するようになっていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項8】
前記合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を合計することによって行われ、前記クロックドリフトの補正は、メモリのアドレスポインタを移動することによって行われるようになっていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項9】
前記合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を相関させることによって行われ、前記クロックドリフトの補正は、前記メモリのアドレスポインタを移動することによって行われるようになっていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項10】
前記合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を合計することによって行われ、前記クロックドリフトの補正は、前記送信機のクロックを移動することによって行われるようになっていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項11】
前記受信プライマリ信号に対する前記少なくとも3つの合成を、前記推定クロックドリフトΔDHiと、前記推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とを、それぞれ使用して並行して行うようになっていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項12】
連続して受信した3つのプライマリ信号に対する少なくとも3つの合成を、推定クロックドリフト(ΔDHi)と、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値(ΔDHi+1+δ1)および減少した値(ΔDHi+2−δ2)とを、それぞれ使用して順次行うようになっていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項13】
前記品質判定基準は、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギーまたは電力から成るグループから選択される1つの基準または基準の組み合わせに相当するようになっていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項14】
送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置であって、
−前記送信機と前記受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を初期設定し、
−反復ループを実行し、この反復ループ実行中に、
・少なくとも2つのサンプルから成る少なくとも1つの受信プライマリ信号を合成するステップを行い、このステップの実行中に、前記推定クロックドリフトを使用して少なくとも1つの第1の合成を行い、それぞれ所定の値だけ増加および減少して、少なくとも1つの第2の合成および少なくとも1つの第3の合成を行い、
・前記少なくとも3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、前記クロックドリフトを、前記選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させるように構成された手段を備えていることを特徴とする、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置。
【請求項15】
・前記推定クロックドリフトΔDHiと、前記推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とを、それぞれ使用して前記受信プライマリ信号に対する少なくとも3つの合成を行い、
・前記3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、ΔDHi+1を選択して、前記選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させようになっており、
ΔDHiは、ループiの前記クロックドリフトであり、iは、自然数であり、δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当するように構成されている手段を備えていることを特徴とする、請求項14に記載の、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置。
【請求項16】
前記手段は、
−前記送信機から送信された少なくとも1つのプライマリ信号を受信し、
−このプライマリ信号に対して、クロックドリフトΔDHj=ΔDH+j×δの離散範囲内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にするクロックドリフトを初期クロックドリフトΔDHinitとして選択するように構成され、
ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、jは、整数であり、δは、所定の基本クロックドリフトに相当していることを特徴とする、請求項14または15に記載の合成装置。
【請求項17】
少なくとも1つのメモリ(22)を備え、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を合計して前記合成を行い、前記メモリ(k)のアドレスポインタ(20)を移動することによって前記クロックドリフトの補正を行うように構成されていることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置。
【請求項1】
送信機(1)から、少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法であって、
−前記送信機(1)と前記受信機(2)との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を事前に初期設定し、
−反復ループを実行し、この反復ループの実行中に、
・少なくとも2つのサンプルから成る少なくとも1つの受信プライマリ信号を合成するステップを行い、このステップの実行中に、前記推定クロックドリフトを使用して、少なくとも1つの第1の合成を行い、前記推定クロックドリフトを所定の値だけ増加した値、および減少した値をそれぞれ使用して、少なくとも1つの第2の合成、および少なくとも1つの第3の合成を行い、
・前記少なくとも3つの合成の中から、品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、前記クロックドリフトを、前記選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させるようになっていることを特徴とする、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項2】
前記合成ステップ中に、1つの受信プライマリ信号に対する少なくとも3つの合成を、前記推定クロックドリフトΔDHiと、前記推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とを、それぞれ使用して行い、前記3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、前記選択した合成に対応するクロックドリフトに、前記クロックドリフトΔDHi+1を適合させようになっており、ΔDHiはループiのクロックドリフトであり、iは自然数であり、δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当することを特徴とする、請求項1に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項3】
前記初期設定ステップ中に、
−前記送信機から送信された少なくとも1つのプライマリ信号を受信し、
−このプライマリ信号に対して、クロックドリフトΔDHj=ΔDH+j×δの離散範囲内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にする前記クロックドリフトを初期クロックドリフトΔDHinitとして選択するようになっており、
ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、jは、整数であり、δは、所定の基本クロックドリフトに相当することを特徴とする、請求項1または2に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項4】
前記初期設定ステップ中に、
−前記送信機と前記受信機の前記クロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、前記送信機から送信された第1のプライマリ信号を前記受信機で受信し、この第1のプライマリ信号に対して合成を行い、その到着時刻を測定し、
−期間θ後に、前記送信機と前記受信機の前記クロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第2のプライマリ信号を前記受信機で受信し、この第2のプライマリ信号に対して合成を行い、その到着時刻を測定し、
−前記到着時刻間の差を利用して、前記初期クロックドリフトΔDHinitの推定を行うようになっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項5】
前記初期設定ステップ中に、
−前記送信機と前記受信機の前記クロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第1のプライマリ信号を送信し、
−この第1のプライマリ信号を受信して、この信号に対して合成を行い、
−期間θ後に、前記送信機と前記受信機の前記クロックドリフトの時間特性より短い期間にわたって、第2のプライマリ信号を送信し、この第2のプライマリ信号を受信し、この第2のプライマリ信号に対して合成を行い、
−前記第1のサンプルおよび前記第2のサンプルを合成して、初期クロックドリフト間隔ΔDHjを決定し、
−前記送信機から送信された少なくとも1つの第3のプライマリ信号を受信し、
−この第3の信号に対して、前記決定した間隔ΔDHj=ΔDH+j×δであるクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にする前記クロックドリフトを初期クロックドリフトΔDHinitとして選択するようになっており、
ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、jは、自然数であり、δは、所定の基本クロックドリフトに相当することを特徴とする、請求項1または2に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項6】
前記所定の基本クロックドリフト(δ1、δ2)は等しいようになっていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項7】
前記2つの所定の基本クロックドリフト(δ1、δ2)の少なくとも1つは、合成期間Tintegrationにおけるサンプルの移動techに相当するようになっていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項8】
前記合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を合計することによって行われ、前記クロックドリフトの補正は、メモリのアドレスポインタを移動することによって行われるようになっていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項9】
前記合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を相関させることによって行われ、前記クロックドリフトの補正は、前記メモリのアドレスポインタを移動することによって行われるようになっていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項10】
前記合成は、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を合計することによって行われ、前記クロックドリフトの補正は、前記送信機のクロックを移動することによって行われるようになっていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項11】
前記受信プライマリ信号に対する前記少なくとも3つの合成を、前記推定クロックドリフトΔDHiと、前記推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とを、それぞれ使用して並行して行うようになっていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項12】
連続して受信した3つのプライマリ信号に対する少なくとも3つの合成を、推定クロックドリフト(ΔDHi)と、この推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値(ΔDHi+1+δ1)および減少した値(ΔDHi+2−δ2)とを、それぞれ使用して順次行うようになっていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項13】
前記品質判定基準は、信号対雑音比S/N、振幅、エネルギーまたは電力から成るグループから選択される1つの基準または基準の組み合わせに相当するようになっていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の、送信機(1)から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機(2)に送信された信号を合成する方法。
【請求項14】
送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置であって、
−前記送信機と前記受信機との間の初期クロックドリフトΔDHinitを推定して、測定を初期設定し、
−反復ループを実行し、この反復ループ実行中に、
・少なくとも2つのサンプルから成る少なくとも1つの受信プライマリ信号を合成するステップを行い、このステップの実行中に、前記推定クロックドリフトを使用して少なくとも1つの第1の合成を行い、それぞれ所定の値だけ増加および減少して、少なくとも1つの第2の合成および少なくとも1つの第3の合成を行い、
・前記少なくとも3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、前記クロックドリフトを、前記選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させるように構成された手段を備えていることを特徴とする、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置。
【請求項15】
・前記推定クロックドリフトΔDHiと、前記推定クロックドリフトをそれぞれ所定の値だけ増加した値ΔDHi+δ1および減少した値ΔDHi−δ2とを、それぞれ使用して前記受信プライマリ信号に対する少なくとも3つの合成を行い、
・前記3つの合成の中から品質判定基準を最大にする合成を選択し、適切な場合、ΔDHi+1を選択して、前記選択した合成に対応するクロックドリフトに適合させようになっており、
ΔDHiは、ループiの前記クロックドリフトであり、iは、自然数であり、δ1およびδ2は、それぞれ所定の基本クロックドリフトに相当するように構成されている手段を備えていることを特徴とする、請求項14に記載の、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置。
【請求項16】
前記手段は、
−前記送信機から送信された少なくとも1つのプライマリ信号を受信し、
−このプライマリ信号に対して、クロックドリフトΔDHj=ΔDH+j×δの離散範囲内のクロックドリフトΔDHjをそれぞれ使用して、j+1回の異なる合成を行い、
−品質判定基準を最大にするクロックドリフトを初期クロックドリフトΔDHinitとして選択するように構成され、
ΔDHは、所定のクロックドリフト値であり、jは、整数であり、δは、所定の基本クロックドリフトに相当していることを特徴とする、請求項14または15に記載の合成装置。
【請求項17】
少なくとも1つのメモリ(22)を備え、割り当てられたメモリスロット内のサンプル(n,k)の値を合計して前記合成を行い、前記メモリ(k)のアドレスポインタ(20)を移動することによって前記クロックドリフトの補正を行うように構成されていることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の、送信機から少なくとも1つのウルトラワイドバンド(UWB)受信機に送信された信号を合成する装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−217163(P2012−217163A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−75817(P2012−75817)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−75817(P2012−75817)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
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