説明

送信装置、送信制御装置およびプログラム

【課題】データ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能な送信装置等を提供する。
【解決手段】3つの通信帯域の料金テーブル情報及び未送信量情報を基に、未送信データ量Dが30秒当たりに送信される通信帯域bのデータ量Vよりも小さいか否かを判定し(S201)、小さければC/Vの値を1、rの値を1と仮定し(S202)、そうでなければ仮定しない。その後、30秒の倍数秒で送信可能なデータ量に単位データ量当たりの料金を乗じて得た値のうち最小のものを計算式で求める(S203)。計算式で求めた通信帯域bである通信帯域bとその場合のデータ量Dとを保存し(S204)、rが0であるか否かの判定を行う(S205)。0であれば処理を終了して通信帯域変更規則を決定し、0でなければDにrの値を代入し(S206)、S201に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、送信制御装置およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、帯域予約が可能で、帯域予約したセッションの優先度に応じてネットワーク利用料金が異なるネットワークを経由してマルチメディアデータを送信するデータ送信装置であって、優先度を異にするn個(nは2以上の整数)のセッションを確立するn個のセッション送信部と、送信すべきマルチメディアデータを符号化して符号化データを生成するエンコーダと、ネットワーク利用料金を指定するネットワーク利用料金指定部と、ネットワーク利用料金指定部で指定されたネットワーク利用料金に応じて、エンコーダで生成された符号化データを、n個のセッションから選択した一つまたは複数のセッションの送信データとして振り分ける送信データ配分部とを備えるデータ送信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−206944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、使用する通信帯域に応じて一定時間変わらず、より大きな通信帯域で送信するとより高額の料金になる利用料金体系の場合に、送信者は、受信側で受信するデータ品質を落とすことなく通信費用をより低額にしたいと希望する場合がある。
【0005】
本発明は、データ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能な送信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、複数の通信帯域の各々について単位時間当たりに送信できる送信量の情報と単位時間の経過に応じて課金される料金の情報とを格納する格納手段と、送信内容を特定する情報を受け付ける受け付け手段と、前記格納手段に格納される前記情報を基に、前記受け付け手段により前記特定する情報が受け付けられた前記送信内容を送信する送信条件として、前記複数の通信帯域のうち使用する複数の通信帯域と通信帯域を変更することになる契機とを決定する決定手段と、前記決定手段により決定される前記送信条件に従って送信を行う送信手段と、を含む送信装置である。
請求項2に記載の発明は、前記決定手段は、前記送信条件の決定後に前記送信内容に変更が生じると、前記格納手段に格納される前記情報を基に、現に使用している通信帯域から変更する他の通信帯域と当該他の通信帯域に変更することになる契機とを有する送信条件を決定することを特徴とする請求項1に記載の送信装置である。
請求項3に記載の発明は、前記受け付け手段により受け付けられる前記送信内容を特定する情報は、用紙枚数の情報であることを特徴とする請求項1に記載の送信装置である。
請求項4に記載の発明は、前記送信手段による送信に伴って課金される送信費用を低減させるか否かについてのユーザの指示が入力される入力手段をさらに含み、前記送信手段は、前記入力手段に入力されるユーザの指示が送信費用を低減させるものであるときに前記決定手段による送信条件に従って送信を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の送信装置である。
【0007】
請求項5に記載の発明は、複数の通信帯域の各々について単位時間当たりに送信できる送信量の情報と単位時間の経過に応じて課金される料金の情報とを格納する格納手段と、送信内容を特定する情報を受け付ける受け付け手段と、前記格納手段に格納される前記情報を基に、前記受け付け手段により前記特定する情報が受け付けられた前記送信内容を送信する送信条件として、前記複数の通信帯域のうち使用する複数の通信帯域と通信帯域を変更することになる契機とを決定する決定手段と、前記決定手段により決定される前記送信条件に従って送信を制御する送信制御手段と、を含む送信制御装置である。
請求項6に記載の発明は、前記決定手段は、前記送信条件の決定後に前記送信内容に変更が生じると、前記格納手段に格納される前記情報を基に、現に使用している通信帯域から変更する他の通信帯域と当該他の通信帯域に変更することになる契機とを有する送信条件を決定することを特徴とする請求項5に記載の送信制御装置である。
請求項7に記載の発明は、前記受け付け手段により受け付けられる前記送信内容を特定する情報は、用紙枚数の情報であることを特徴とする請求項5に記載の送信制御装置である。
請求項8に記載の発明は、前記送信制御手段による送信に伴って課金される送信費用を低減させるか否かについてのユーザの指示が入力される入力手段をさらに含み、前記送信制御手段は、前記入力手段に入力されるユーザの指示が送信費用を低減させるものであるときに前記決定手段による送信条件に従って送信を制御することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の送信制御装置である。
【0008】
請求項9に記載の発明は、複数の通信帯域の各々について単位時間当たりに送信できる送信量の情報と単位時間の経過に応じて課金される料金の情報とを格納する格納部を備えるコンピュータに、送信内容を特定する情報を取得する取得機能と、前記格納部に格納される前記情報を基に、前記取得機能により前記特定する情報が取得された前記送信内容を送信する送信条件として、前記複数の通信帯域のうち使用する複数の通信帯域と通信帯域を変更することになる契機とを決定する決定機能と、前記決定機能により決定される前記送信条件に従って送信を制御する送信制御機能と、を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によれば、本発明を採用しない場合に比べて、データ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能になる。
請求項2によれば、本発明を採用しない場合に比べて、送信条件の決定後に送信内容に変更が生じてもデータ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能になる。
請求項3によれば、本発明を採用しない場合に比べて、送信内容が用紙枚数により特定される場合にもデータ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能になる。
請求項4によれば、本発明を採用しない場合に比べて、送信者の意向に沿う形で送信を行うことが可能になる。
請求項5によれば、本発明を採用しない場合に比べて、データ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能になる。
請求項6によれば、本発明を採用しない場合に比べて、送信条件の決定後に送信内容に変更が生じてもデータ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能になる。
請求項7によれば、本発明を採用しない場合に比べて、送信内容が用紙枚数により特定される場合にもデータ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能になる。
請求項8によれば、本発明を採用しない場合に比べて、送信者の意向に沿う形で送信を行うことが可能になる。
請求項9によれば、本発明を採用しない場合に比べて、データ品質を落とさずにデータ送信に伴う通信費用を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態が適用される通信システムの構成例を示した図である。
【図2】第1の通信装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図3】料金テーブル例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態による送信制御を適用した場合に複数の通信帯域ごとに送信されるデータ量と送信に要する時間との関係を示すグラフである。
【図5】第1の実施の形態による送信制御を適用しない場合の比較例を説明するグラフである。
【図6】通信帯域変更規則の決定プロセスを説明するフローチャートである。
【図7】演算処理を説明するフローチャートである。
【図8】第1の通信装置が第2の通信装置に対してデータ送信する場合の通信シーケンスの例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態における演算処理を説明するフローチャートである。
【図10】データ送信開始後に送信データ量が減少した場合に第3の実施の形態による送信制御を適用することで複数の通信帯域ごとに送信されるデータ量と送信に要する時間との関係を示すグラフである。
【図11】データ送信開始後に送信データ量が増加した場合に第3の実施の形態による送信制御を適用することで複数の通信帯域ごとに送信されるデータ量と送信に要する時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される通信システムの構成例を示した図である。
同図に示すように、この通信システムは、第1の通信装置10と第2の通信装置20とが、ネットワーク80を介して互いに接続されることにより構成されている。
本実施の形態では、第1の通信装置10として、セッション開始プロトコル(Session Initiation Protocol:SIP)に対応したIP−FAX機能を有する画像形成装置を用いる。また、第2の通信装置20は、画像形成装置であっても単なるファクシミリ装置であってもよいが、本実施の形態では、第1の通信装置10と同様にIP−FAX機能を有する通信装置を用いる。
ネットワーク80としては、NGN(Next Generation Network)網を用いている。ネットワーク80としてNGN網を用いることで、音声通信の音声品質や映像通信の映像品質といった通信の品質レベルを定義し、保証できるようになる。このNGN網は、セッションの利用帯域に応じた料金が一定時間ごとに課金されていく利用料金体系のIP(Internet Protocol)ネットワークである。
【0012】
まず、第1の通信装置10のハードウェア構成について詳細に説明する。
図1に示すように、第1の通信装置10は、演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)11と、CPU11の作業用メモリ等として用いられるRAM(Random Access Memory)12と、を備えている。また、第1の通信装置10は、CPU11が実行する各種プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)13と、第1の通信装置10の動作に必要な各種の設定情報等を記憶する不揮発性メモリ14と、を備えている。
CPU11は、ROM13および不揮発性メモリ14に記憶された各種のプログラムやデータ等をRAM12にロードして実行することにより、各種の機能を実現する。
【0013】
また、第1の通信装置10は、入力インタフェース15、画像読取部16、画像形成部17およびネットワークインタフェース18を含んで構成されている。
入力インタフェース15は、利用者に知らせる情報を操作パネル(不図示)等に表示し、操作パネル等を介して利用者の入力操作を受け付ける。
【0014】
画像読取部16は、紙等の記録媒体に記録された画像を読み取る。ここで、画像読取部16は、例えばスキャナであり、光源から原稿に照射した光に対する反射光をレンズで縮小してCCD(Charge Coupled Devices)で受光するCCD方式や、LED光源から原稿に順に照射した光に対する反射光をCIS(Contact Image Sensor)で受光するCIS方式のものを用いるとよい。
画像形成部17は、紙等の記録媒体に画像を形成する。ここで、画像形成部17は、例えばプリンタであり、感光体に付着させたトナーを記録媒体に転写して像を形成する電子写真方式や、インクを記録媒体上に吐出して像を形成するインクジェット方式のものを用いるとよい。
ネットワークインタフェース18は、ネットワーク80を介して、不揮発性メモリ14に蓄積された情報や画像読取部16が読み取った画像のデータを第2の通信装置20へ送信したり、第2の通信装置20から画像のデータ等を受信したりする。ここで、ネットワークインタフェース18は、例えばネットワークインタフェースカード(NIC)により実現される。本実施の形態では、通信制御装置が備える通信手段及び通信装置が備える通信手段の一例としてネットワークインタフェース18を設けている。
【0015】
ところで、NGN網を経由する従来のIP−FAX通信では、通信接続開始時ないし通信接続開始前に決定した通信帯域でドキュメントデータを送信して送信完了する。このNGN網では、利用する通信帯域ごとに一定時間(例えば30秒間)同じ金額で設定される通信料金テーブルを持つ。かかるNGN網の通信料金テーブルは、大きい通信帯域では通信料金が高く設定され、小さい通信帯域では安く設定される。したがって、データ量の少ないドキュメントデータをIP−FAXで送信する場合には、大きな通信帯域でネゴシエーションするよりも、多少は時間がかかるものの小さな通信帯域を利用した方が通信の費用が安くなる場合がある。しかしながら、一定時間は通信料金が変わらないという通信料金テーブルに鑑みれば、大きなデータ量のときに小さな通信帯域ではなく大きな通信帯域を利用することで通信の費用が安くなるとは必ずしも限らない。送信者が同じドキュメントデータを複数の送信先に一斉に送信するFAX同報送信を行うときには、送信者としては、通信の費用をより低減させたいという要望がある。
そこで、本実施の形態では、セッションの利用帯域に応じて一定時間(例えば30秒間)変わらない利用料金体系の網を経由する場合に、品質を落とさずに通信の費用をさらに安く抑えることを可能ならしめるべく、データ送信の制御を行う通信制御装置50を第1の通信装置10に設けている。
【0016】
以下では、本実施の形態における第1の通信装置10及び通信制御装置50の機能構成について詳細に説明する。
図2は、第1の通信装置10の機能構成例を示すブロック図である。通信制御装置50は、CPU11(図1参照)がROM13(同図参照)等に記憶されたプログラムをRAM12(同図参照)に読み込んで実行することにより、第1の通信装置10内に仮想的に実現される。なお、図2では、通信制御装置50は第1の通信装置10に内蔵されているが、通信制御装置50は第1の通信装置10とは独立した装置であってもよい。
【0017】
まず、第1の通信装置10の機能構成について説明する。図示するように、第1の通信装置10は、通信制御装置50および通信部60を備えている。
通信制御装置50は、第2の通信装置20との間の通信を制御する。より具体的には、本実施の形態における通信制御装置50は、第2の通信装置20との間の通信に用いる通信帯域を変更するタイミングを規定する通信帯域変更規則(通信帯域変更ルール)を決定し、決定した通信帯域変更規則に従って通信の制御を行う。より詳細には、通信制御装置50は、第2の通信装置20に対しRE−INVITEを送信するタイミングを制御する。なお、通信制御装置50による通信帯域変更規則の決定は、通信開始前またはSIPのネゴシエーション時に実施することが考えられる。
通信部60は、ネットワークインタフェース18(図1参照)を介して第2の通信装置20(同図参照)との間で通信を行う。
なお、通信帯域変更規則を以下、送信条件と呼ぶことがある。
【0018】
次に、通信制御装置50の機能構成について説明する。
図示するように、本実施の形態における通信制御装置50は、ユーザから送信指示を受け付ける受け付け手段の一例としての送信指示受付部51と、送信条件を決定する決定手段の一例としての決定部52と、決定部52による送信条件の決定の際に用いられるデータ等を記憶する格納手段ないし格納部の一例としての記憶部53と、を備えている。また、通信制御装置50は、ユーザからモード選択が入力される入力手段の一例としてのモード選択入力部54と、決定部52にて決定された送信条件により通信を制御する送信制御手段の一例としての通信制御部55と、を備えている。
なお、送信指示受付部51、決定部52、モード選択入力部54および通信制御部55の各機能は、CPU11がROM13等に記憶されたプログラムをRAM12に読み込んで実行することにより、実現される。また、記憶部53は、例えばEEPROM(電気的に書き換え可能な読み出し専用メモリ)などの不揮発性メモリ14により実現される。付言すると、送信指示受付部51およびモード選択入力部54は、入力インタフェース15によっても実現される。
【0019】
送信指示受付部51は、送信指示をユーザから受け付けると、その内容を決定部52に出力する。送信指示受付部51が受け付ける送信指示には、実際に送信すべきデータのほかに、送信すべきデータ量の情報(例えば4Mbyte)ないし枚数の情報(例えばA4用紙を6枚)が含まれる。実際に送信すべきデータは送信内容の一例であり、また、送信すべきデータ量の情報ないし枚数の情報は、送信内容を特定する情報の一例である。
また、送信指示受付部51が受け付ける送信指示には、送信先の情報が含まれる。本実施の形態では、送信先は第2の通信装置20である。
【0020】
記憶部53は、決定部52からの要求に応じて、記憶しているデータを決定部52に出力する。記憶部53が記憶するデータには、通信により課金される料金を示す料金テーブルが含まれる。ここにいう料金テーブルは、複数の通信帯域の情報の一例である。この料金テーブルの一例については後述する。
なお、記憶部53は、決定部52や通信制御部55等に読み込まれて実行されるプログラムを記憶している。
【0021】
モード選択入力部54は、モード選択(状態選択)が入力されると、その内容を通信制御部55に出力する。ここにいうモード選択としては、例えば通信コスト重視のモードと通信時間重視のモードとをユーザに選択してもらうことが考えられる。すなわち、通信時間よりも通信コストを考慮してより安価に通信を完了させるモードと、通信コストよりも通信時間を考慮してより短時間に通信を完了させるモードと、をユーザが選択可能に構成するものである。モード選択は、送信に伴って課金される送信費用に関するユーザの指示の一例である。
なお、本実施の形態に係る通信制御装置50では、モード選択入力部54の出力先が通信制御部55であるが、通信制御部55の代わりに決定部52を出力先とする変形例も考えられる。このような変形例の場合には、決定部52による送信条件の決定が、モード選択を基に行われる。その一例を説明すると、ユーザが選択できるモードとして、通信コスト重視のモードと通信時間重視のモードとがある場合に、前者が選択されると、通信帯域変更を行うことで通信コストが安価になる送信条件を決定し、また、後者が選択されると、最も速い通信帯域を使用してデータ送信を行う送信条件を決定する。
【0022】
決定部52は、送信指示受付部51により受け付けられる送信指示と記憶部53により記憶されるデータとを取得し、これら送信指示およびデータを基に送信条件の決定を行い、決定した送信条件を通信制御部55に出力する。
なお、決定手段52は、送信指示およびデータのほかに、通信制御部55から取得した情報を基に、送信条件の決定を行うことも考えられる。この場合の通信制御部55から取得した情報としては、第2の通信装置20との通信が開始された後に取得する各種の情報を挙げることができる。より具体的に説明すると、第1の通信装置10が送信しようとしていた画像解像度(例えば600dpi)、画像ファイル形式(例えばjpeg形式)または画像色(例えばカラー画像)では、受信側である第2の通信装置20が対応できないという情報である。
決定部52による送信条件の決定プロセスについては、後述する。
【0023】
通信制御部55は、決定部52から出力された送信条件の情報を取得し、送信条件に従ってデータ送信を制御する。また、通信制御部55は、モード選択入力部54から出力されたモード選択の情報を取得し、モード選択に従ってデータ送信を制御する。その一例を説明すると、ユーザが選択できるモードとして、通信コスト重視のモードと通信時間重視のモードとがある場合に、前者が選択されると送信条件に従ってデータ送信を制御し、また、後者が選択されると送信条件を用いずに、最も速い通信帯域を使用してデータ送信を制御する。
また、通信制御部55は、第2の通信装置20との通信が開始された後に、通信開始前に決定部52により決定された送信条件では送信できないという情報を取得すると、その情報を決定部52に出力する。
【0024】
ここで、記憶部53により記憶される料金テーブル例について説明する。
図3は、料金テーブル例を示す図である。同図に示すように、料金テーブルは、時間、料金および通信帯域から構成されている。より具体的には、同図に示す料金テーブルの一例では、複数の通信帯域と通信帯域の各々についての30秒当たりの料金とを含んで構成されている。
すなわち、図3に示すように、通信帯域として、1Mbps(bit per second)、512Kbpsおよび64Kbpsがある。そして、30秒当たりの料金については、1Mbpsの場合が2円、512Kbpsの場合が1.5円、64Kbpsの場合が1円である。言い換えると、通信開始から30秒当たりの料金が課金され、通信開始時から30秒が経過すると更に30秒当たりの料金が課金される。
このように、ある通信帯域において一定時間ごとに料金が加算される料金体系であり、そして、通信帯域が大きければ大きいほど30秒当たりの料金が高い。このような状況において、任意のデータを送信するとした場合に、例えば、データ量が比較的大きいのであれば一定時間はより大きな通信帯域で送信し、残りのデータ量をより小さな通信帯域で送信することにより、通信コストが安くなる場合が考えられる。以下具体的に説明する。
【0025】
〔第1の実施の形態〕
以下では、任意のデータ量を送信する場合に通信コストをより安価にするための第1の実施の形態に係る第1の通信装置10ないし通信制御装置50の送信制御例について詳細に説明する。第1の実施の形態は、送信開始前に送信するデータ量が確定される場合であり、かつ、送信開始前に決定部52による送信条件の決定が行われる場合である。
図4は、第1の実施の形態による送信制御を適用した場合に複数の通信帯域ごとに送信されるデータ量と送信に要する時間との関係を示すグラフであり、図5は、第1の実施の形態による送信制御を適用しない場合の比較例を説明するグラフである。図5において(a)は1Mbpsの通信帯域だけのとき、(b)は512Kbpsの通信帯域だけのとき、(c)は64Kbpsの通信帯域だけのときである。図4および図5の各々における縦軸は通信帯域(bps)、横軸は通信時間(秒)である。各図面においてハッチングで示す矩形の面積は、送信データ量に相当するものである。
図4および図5のいずれの場合も、4Mbyteのデータを送信するものである。
【0026】
図4に示すグラフでは、通信開始から30秒間だけ1Mbpsの通信帯域を使用した上で、その後には、1Mbpsの通信帯域から512Kbpsの通信帯域に変更してデータ送信を継続している。言い換えると、送信すべきデータ量4Mbyteのうち3.66Mbyteを1Mbpsの通信帯域をまず使用して送信し、次に512Kbpsの通信帯域を使用して残りの0.34Mbyteを送信している。
付言すると、通信開始前に決定される送信条件を基に、送信すべきデータ量4Mbyteを、3.66Mbyteと0.34Mbyteに予めデータ分割し、各々にヘッダが付加される。このヘッダは、例えば発信元と送信先のアドレスなどの情報を含むデータであり、その他に、使用する通信帯域を特定する情報を含ませることができる。なお、4Mbyteのデータを2つに分割することで送信データ量はヘッダ分だけ増えるものの、実質的に影響がない。
図4の場合には、通信時間は35.41秒であり、通信コストは3.5円である。通信コストの内訳について説明すると、1Mbpsの通信帯域で30秒間に送信した3.66Mbyteについての料金が2円である。また、512Kbpsの通信帯域で5.41秒間に送信した0.34Mbyteについての料金は1.5円である。なお、512Kbpsの通信帯域の使用時間は30秒以内であるが、上述したように、30秒が経過するまでは定額料金であるので、わずか5.41秒の送信だけであっても1.5円の料金になる。しかしながら、後述するように、第1の実施の形態による送信制御を適用すると、適用しない場合に比べて通信コストが安価になる。
図4の場合には、2つに分割した例を示しているが、時間、通信帯域および料金いかんによっては、例えば3つに分割することで通信コストが最も安くなる場合も考えられる。
【0027】
図5の(a)〜(c)の各々に示す比較例のグラフでは、通信開始時の通信帯域を変更することなく、4Mbpsのデータを送信する場合を示している。図5の(a)に示すように、1Mbpsの通信帯域だけを使用すると、通信時間が32.77秒であり、図4の場合よりも2.64秒の短縮が実現される。しかしながら、図5の(a)の場合の通信コストは4円であり、図4の場合よりも0.5円のコスト高になる。
同様に、図5の(b)の場合には、通信時間が64秒で、通信コストが4.5円であり、図4の場合よりも1円のコスト高である。また、図5の(c)の場合には、通信時間が512秒で、通信コストが18円であり、図4の場合よりも14.5円のコスト高である。
図5の(a)〜(c)の場合のコスト高は、例えばFAX同報送信を行うときには、ユーザの大きな関心事である。さらに説明すると、料金テーブルの内容と送信データ量によっては、途中で通信帯域を変更することで通信コストを安価にすることが可能になる。実際に、図4に示すように、上述した料金テーブルの下、4Mbpsのデータを送信する場合には、第1の実施の形態による送信制御を適用することで、非適用時に比べて通信コストを安く抑えることができる。
【0028】
次に、第1の実施の形態による送信制御に用いる通信帯域変更規則の決定プロセスについて詳細に説明する。なお、かかる決定プロセスは、通信制御装置50の決定部52により行われるものである。
図6は、通信帯域変更規則の決定プロセスを説明するフローチャートである。
同図に示すフローチャートでは、決定部52は、送信指示受付部51が送信指示を受け付けたことの情報を取得すると、記憶部53から料金テーブル情報を取得する(ステップ101)。この場合の料金テーブル情報としては、図3に示す料金テーブル例である。
そして、決定部52は、送信指示のあった送信量ないし未送信量を特定する情報(未送信量情報)を送信指示受付部51から取得し(ステップ102)、これら取得した料金テーブル情報および未送信量情報を基に、予め定められる演算処理を行って(ステップ103)、通信帯域変更規則を決定する(ステップ104)。決定部52は、通信帯域変更規則を決定すると、その通信帯域変更規則を通信制御部55に出力する。
【0029】
図7は、演算処理(図6のステップ103参照)を説明するフローチャートである。なお、図7において、T秒ごとにかかる料金をC(円)、T秒当たりに送信される通信帯域b(bps)のデータ量をV(bit)、未送信データの量をD(bit)とする。Vは、T(秒)にb(bps)を乗じて得た値である(V=T×b)。Dに代入される値の一例としては、32×10(=4Mbyte)である。また、Tに代入される値の一例としては、30(秒)である。
同図に示すフローチャートでは、送信すべきデータ量である未送信データの量Dが、T秒当たりに送信される通信帯域bのデータ量Vよりも小さいか否かの判定を行う(ステップ201)。すなわち、決定部52が取得した料金テーブル情報(図6のステップ101参照)における通信帯域が1Mbps、512Kbpsおよび64Kbpsの各々について、判定を行う。より具体的に説明すると、決定部52は、未送信データの量Dが1Mbpsの場合のデータ量V1Mよりも小さいか否かの判定(D<V1M)、未送信データの量Dが512Kbpsの場合のデータ量V512Kよりも小さいか否かの判定(D<V512K)、未送信データの量Dが64Kbpsの場合のデータ量V64Kよりも小さいか否かの判定(D<V64K)を行う。
【0030】
これら3つの通信帯域の各々の判定のうち、いずれか一つでも肯定の場合には(ステップ201でYes)、C/Vの値を1と仮定すると共にrの値を1と仮定した後に(ステップ202)、ステップ203に進む。
また、3つの通信帯域の各々の判定のいずれも否定の場合には(ステップ201でNo)、ステップ203に進む。したがって、ステップ201でNoの場合には、C/Vの値およびrの値は、計算により求めることになる。
【0031】
そして、決定部52は、3つの通信帯域の中で計算式に当てはまる通信帯域を見つける。ここにいう計算式としては、Tの倍数秒で送信可能なデータ量に単位データ量当たりの料金を乗じて得た値のうち最小のものを求めるものである。より具体的には、min((D−r)×C/V,b=b,b,…b)の第1の計算式と、r=DmodVという第2の計算式を用いて行う。
ここで、第1の計算式における「b,b,…b」は、1Mbps、512Kbpsおよび64Kbpsとなる。また、第1の計算式における「min」は、数式比較関数であり、1Mbpsの場合、512Kbpsの場合および64Kbpsの場合のいずれが最も小さい値となるかを求めるためのものである。したがって、第1の計算式では、min((D−r1M)×C1M/V1M)、min((D−r512K)×C512K/V512K)およびmin((D−r64K)×C64K/V64K)についての計算を行い、最も小さい値を算出することになる。
また、第2の計算式における「mod」は、剰余の計算を行うための演算子の一つであり、この場合には、DをVで除したときの余りの値がrとして得られる。したがって、第2の計算式では、r1M=DmodV1M、r512K=DmodV512K、r64K=DmodV64Kについての計算を行うことになる。
【0032】
決定部52は、3つの通信帯域の中で計算式により求めた通信帯域bである通信帯域b(bps)とその場合のデータ量D(bit)とを一時的に保存する(ステップ204)。ここにいうデータ量Dは、未送信データの量Dからrを減じて得た値である(D=D−r)。
【0033】
そして、決定部52は、rが0であるか否かの判定(r=0)を行い(ステップ205)、rが0であると判定すると(ステップ205でYes)、一連の演算処理を終了する。また、決定部52は、rが0ではないと判定すると(ステップ205でNo)、未送信データの量Dにrの値を代入し(ステップ206)、ステップ201に戻る。
【0034】
このような演算処理を行うことで、3つの通信帯域のうちで使用する通信帯域と、その通信帯域を使用して送信するデータ量と、が求められ、その内容が通信帯域変更規則となる。すなわち、通信帯域変更規則は、送信すべきデータ量を分割する内容と、分割された内容の各々について使用する通信帯域と、の組み合わせで成り立つものである。
説明が重複するが、その具体例を改めて示す。決定部52が取得した料金テーブル情報が図3に示す料金テーブル例で、決定部52が取得した送信すべきデータ量の情報が4Mbyteである場合には、図4に示すように、通信開始時には1Mbpsの通信帯域を30秒間使用して3.66Mbyteを送信した後に、512Kbpsの通信帯域に変更して残りの0.34Mbyteを送信する。これにより、通信時間は35.41秒であるものの、通信コストは3.5円になり、安価である。
【0035】
以下では、第1の実施の形態による送信制御の適用例について詳細に説明する。
図8は、第1の通信装置10が第2の通信装置20に対してデータ送信する場合の通信シーケンスの例を示す図である。
まず第1の通信装置10は、第2の通信装置20に対してINVITEメッセージを送信する(P01)。このINVITEメッセージには、マルチメディアセッション制御であることを示す「SDP(Session Description Protocol)」および通信帯域が1Mbpsであることを示す「b=CT:1000」が含まれる。
すると、第2の通信装置20は、第1の通信装置10に対して“100Trying”の処理中レスポンスを返信し(P02)、“200 OK”の応答メッセージを返信する(P03)。これにより、第1の通信装置10と第2の通信装置20との間でIP−FAX通信が開始される。すなわち、第1の通信装置10は、応答メッセージを受けると、1Mbpsの通信帯域を使用して3.66Mbyte分のデータ送信を行う(P04)。
【0036】
第1の通信装置10は、1Mbpsの通信帯域による3.66Mbyte分のデータ送信を終えると、残りの0.34Mbyteを送信する512Kbpsの通信帯域に変更する。具体的には、第1の通信装置10は、第2の通信装置20に対してRE−INVITEメッセージを送信する(P05)。このRE−INVITEメッセージには、通信帯域が512Kbpsであることを示す「b=CT:512」が含まれる。
第2の通信装置20は、処理中レスポンスを返信し(P06)、応答メッセージを返信する(P07)。
その後に、第1の通信装置10は、512Kbpsの通信帯域を使用して0.34Mbyte分のデータ送信を行う(P08)。
そして、第1の通信装置10は、BYEメッセージを通知し(P09)、これに対して第2の通信装置20が“200 OK”の応答メッセージを返信すると(P10)、両者の通信装置の間でIP−FAX通信は終了する。
なお、図8に示す適用例では、RE−INVITEメッセージの送信を1回行っているが、これに限るものではなく、時間、通信帯域および料金いかんによっては通信コストが最も安くなる通信帯域変更規則に沿ってRE−INVITEメッセージの送信(セッションの制御)が行われる。
【0037】
〔第2の実施の形態〕
次に、ドキュメントを送信する場合に通信コストをより安価にするための第2の実施の形態について詳細に説明する。すなわち、第2の実施の形態では、ドキュメントの枚数とう概念を用いて通信制御している。
なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と共通する構成・機能を有することから、共通する構成には、同じ符号を用い、また、共通する構成・機能の説明および図示を省略することがある。
【0038】
図9は、第2の実施の形態における演算処理を説明するフローチャートである。同図は、第1の実施の形態における図7に対応するものであり、より具体的には、第1の実施の形態における図6のステップ103の演算処理の詳細について説明するものである。
図9に示す演算処理例における未送信データ量D(bit)についてまず説明する。m枚の文書をデータ送信する場合に、m枚目のデータ量をD(bit)とすると、未送信データ量Dは、1枚目からm枚目までの各々のデータ量の総和である(D=D+D+…+D)。
【0039】
図9に示すフローチャートのステップ301〜306の各々は、図7のステップ201〜206に対応するものであり、共通する内容のものについては、説明を省略することがある。なお、図9に示す処理手順は、決定部52(図2参照)により行われる。
図9に示すフローチャートでは、ステップ301にて未送信データの量D(bit)とT秒当たりに送信される通信帯域bのデータ量V(bit)との大小関係を判定する。未送信データの量Dが小さいときには(ステップ301でYes)、ステップ302およびステップ303へと進み、そうでないときには(ステップ301でNo)、ステップ303に進む。
【0040】
ステップ303では、Tの倍数秒で送信可能なデータ量に単位データ量当たりの料金を乗じて得た値のうち最小のものを求め、ステップ304では、1Mbps、512Kbpsおよび64Kbpsの通信帯域の中で計算で求めた通信帯域bである通信帯域b(bps)を一時的に保存する。また、計算で求めた通信帯域bの場合のデータ量D(bit)がP枚目のデータ量の場合には、P−1枚目までのデータ量Dpもまた一時的に保存する。より詳細に説明すると、P枚目ではなくP−1枚目とするのは、例えば1枚のドキュメントを送信している最中にデータ送信を中止して通信帯域を変更する処理を行うことができないことによるものである。なお、ここにいうPは、上述したmの値以下の値であり、また、ここにいうデータ量Dは、未送信データの量Dからrを減じて得た値である(D=D−r)。
そして、ステップ305でrが0であるか否かの判定を行い、そうであれば(ステップ305でYes)一連の処理を終了し、そうでなければ(ステップ305でNo)ステップ306に進む。
【0041】
〔第3の実施の形態〕
次に、IP−FAXのように、SIPネゴシエーション実施後にFAXプロトコル通信が始まる場合において、FAXプロトコル通信開始後に初めて、送信するデータ量が確定するときがある。例えば、送信機側である第1の通信装置10では600dpi(超高画質)で送信しようとしているものの、受信機側である第2の通信装置20では400dpiまでしか対応していなかったという事態(画像解像度)である。また、第1の通信装置10ではjpeg形式で送信しようとしているものの、第2の通信装置20ではMRやMHのみしか対応していなかったという事態(画像ファイル形式)である。また、第1の通信装置10ではカラー原稿を送信しようとしているものの、第2の通信装置20では白黒しか対応していなかったという事態(画像色)である。
通信開始後に把握したデータ量が通信開始前に把握しているデータ量と違うという事態が生じた場合(送信条件の決定後に送信内容に変更が生じる場合の一例)に、送信側である第1の通信装置10がそのまま送信しても受信側である第2の通信装置20で対応することができないことから、送信側では受信側が対応可能な内容で送信することになる。そのために、データ量の変動があり得る。言い換えると、送信開始前には、データ量が確定していない。データ量が確定するのは、図8にP4として示すデータ送信の際である。
このような事態が生じることで送信開始後にデータ量が確定する頃には、図8にP3として示す“200 OK”の応答メッセージを第1の通信装置10が受信済みであり、既に一定時間毎の課金が始まっている。付言すると、画像解像度の場合および画像色の場合は、データ量が当初よりも少なくなるものであり、また、画像ファイル形式の場合は、データ量が当初よりも多くなるものである。
第3の実施の形態では、かかる事態が生じても、通信コストをより安価にすることが可能な通信制御について詳細に説明する。すなわち、第3の実施の形態は、T秒間は通信帯域bで通信し、その後のデータ送信においては改めて算出し直した通信帯域変更規則を適用する方が通信コストを安く抑え得る場合があることに着目して通信制御を行うものである。
なお、第3の実施の形態は、第1の実施の形態および第2の実施の形態と共通する構成・機能を有することから、共通する構成には、同じ符号を用い、また、共通する構成・機能の説明および図示を省略することがある。
【0042】
図10は、データ送信開始後に送信データ量が減少した場合に第3の実施の形態による送信制御を適用することで複数の通信帯域ごとに送信されるデータ量と送信に要する時間との関係を示すグラフである。縦軸は通信帯域(bps)、横軸は通信時間(秒)である。ハッチングで示す矩形の面積は、送信データ量に相当するものである。
図10に示すグラフでは、データ通信開始前には、データ送信量が8Mbyteという情報を基に、1Mbpsの通信帯域でデータ送信することが決定され、実際に1Mbpsの通信帯域を使用してデータ送信が行われている(図10の(a)参照)。
その後に、データ送信量が4Mbyteで確定した場合には、4Mbyteのデータを通信帯域の変更を行わずに1Mbpsの通信帯域のままで送信するときには、同図の(b)に示すように、32.77秒の通信時間であり、4円の通信コストである。
しかしながら、通信開始後に改めて算出し直した通信帯域変更規則を適用すると、同図の(c)に示すように、1Mbpsの通信帯域を使用して3.66Mbyteを送信し、残りの0.34Mbyteについて512Kbpsの通信帯域を使用することで、35.41秒の通信時間であり、3.5円の通信コストになる。
【0043】
図11は、データ送信開始後に送信データ量が増加した場合に第3の実施の形態による送信制御を適用することで複数の通信帯域ごとに送信されるデータ量と送信に要する時間との関係を示すグラフである。縦軸は通信帯域(bps)、横軸は通信時間(秒)である。ハッチングで示す矩形の面積は、送信データ量に相当するものである。
図11に示すグラフでは、データ通信開始前には、データ送信量が1Mbyteという情報を基に、512Kbpsの通信帯域でデータ送信することが決定され、実際に512Kbpsの通信帯域を使用してデータ送信が行われている(図11の(a)参照)。
その後に、データ送信量が4Mbyteで確定した場合には、4Mbyteのデータを通信帯域の変更を行わずに512Kbpsの通信帯域のままで送信するときには、同図の(b)に示すように、64秒の通信時間であり、4.5円の通信コストである。
しかしながら、通信開始後に改めて算出し直した通信帯域変更規則を適用すると、同図の(c)に示すように、512Kbpsの通信帯域を使用して0.34Mbyteを送信し、残りの3.66Mbyteについて1Mbpsの通信帯域を使用することで、35.41秒の通信時間であり、3.5円の通信コストになる。
【0044】
第3の実施の形態における演算処理は、基本的に第1の実施の形態における図7の内容である。しかしながら、上述したように、第3の実施の形態では、すでにデータ送信を開始している場合に演算処理を行うことから、3つの通信帯域の各々についての処理を行わずに現にデータ送信に使用している通信帯域に固定して処理を行うことがある。
第3の実施の形態では説明の便宜上、図7における「START」直後(ステップ206を経てステップ201に戻る場合を除く意味)のステップ201〜205を、第1回目の処理と呼ぶものとする。また、1回目の処理の後にステップ206を経てステップ201に戻る場合のステップ201〜205を、第2回目の処理と呼ぶものとする。
そして、送信データ量は4Mbyteであるとし、第1回目の処理および第2回目の処理を行うことで、改めて算出し直す通信帯域変更規則が決定できるものとする。
【0045】
第3の実施の形態では、そのような場合に図7の演算処理について、「第1の計算」と「第2の計算」とを行い、両者の計算結果を比較していずれの通信コストが安価であるかを判定し、通信帯域変更規則を決定する。
ここにいう「第1の計算」とは、現にデータ送信に使用している通信帯域(図10の例では1Mbpsの通信帯域。図11の例では512Kbpsの通信帯域)に固定して第1回目の処理を行い、第2回目の処理では、1Mbps、512Kbpsおよび64Kbpsの各々の通信帯域について行う算法をいう。また、ここにいう「第2の計算」とは、1Mbps、512Kbpsおよび64Kbpsの各々の通信帯域について第1回目の処理を行い、第2回目の処理では、現にデータ送信に使用している通信帯域(図10の例では1Mbpsの通信帯域。図11の例では512Kbpsの通信帯域)に固定して行う算法をいう。
より詳細には、図10の例では、「第1の計算」による計算結果の方が「第2の計算」による計算結果よりも安価であった場合である。この場合には、30秒未満で送信できるデータ量(端数分)は、現にデータ送信に使用している通信帯域(1Mbpsの通信帯域)とは異なる他の通信帯域(512Kbpsの通信帯域)を使用して送信される。
また、図11の例では、「第2の計算」による計算結果の方が「第1の計算」による計算結果よりも安価であった場合である。この場合には、30秒未満で送信できるデータ量(端数分)は、現にデータ送信に使用している通信帯域(512Kbpsの通信帯域)を使用して送信される。
【0046】
なお、上述した第1の実施の形態ないし第3の実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…第1の通信装置、20…第2の通信装置、50…通信制御装置、51…送信指示受付部、52…決定部、53…記憶部、54…モード選択入力部、55…通信制御部、60…通信部、80…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信帯域の各々について単位時間当たりに送信できる送信量の情報と単位時間の経過に応じて課金される料金の情報とを格納する格納手段と、
送信内容を特定する情報を受け付ける受け付け手段と、
前記格納手段に格納される前記情報を基に、前記受け付け手段により前記特定する情報が受け付けられた前記送信内容を送信する送信条件として、前記複数の通信帯域のうち使用する複数の通信帯域と通信帯域を変更することになる契機とを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定される前記送信条件に従って送信を行う送信手段と、
を含む送信装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記送信条件の決定後に前記送信内容に変更が生じると、前記格納手段に格納される前記情報を基に、現に使用している通信帯域から変更する他の通信帯域と当該他の通信帯域に変更することになる契機とを有する送信条件を決定することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記受け付け手段により受け付けられる前記送信内容を特定する情報は、用紙枚数の情報であることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記送信手段による送信に伴って課金される送信費用を低減させるか否かについてのユーザの指示が入力される入力手段をさらに含み、
前記送信手段は、前記入力手段に入力されるユーザの指示が送信費用を低減させるものであるときに前記決定手段による送信条件に従って送信を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項5】
複数の通信帯域の各々について単位時間当たりに送信できる送信量の情報と単位時間の経過に応じて課金される料金の情報とを格納する格納手段と、
送信内容を特定する情報を受け付ける受け付け手段と、
前記格納手段に格納される前記情報を基に、前記受け付け手段により前記特定する情報が受け付けられた前記送信内容を送信する送信条件として、前記複数の通信帯域のうち使用する複数の通信帯域と通信帯域を変更することになる契機とを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定される前記送信条件に従って送信を制御する送信制御手段と、
を含む送信制御装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記送信条件の決定後に前記送信内容に変更が生じると、前記格納手段に格納される前記情報を基に、現に使用している通信帯域から変更する他の通信帯域と当該他の通信帯域に変更することになる契機とを有する送信条件を決定することを特徴とする請求項5に記載の送信制御装置。
【請求項7】
前記受け付け手段により受け付けられる前記送信内容を特定する情報は、用紙枚数の情報であることを特徴とする請求項5に記載の送信制御装置。
【請求項8】
前記送信制御手段による送信に伴って課金される送信費用を低減させるか否かについてのユーザの指示が入力される入力手段をさらに含み、
前記送信制御手段は、前記入力手段に入力されるユーザの指示が送信費用を低減させるものであるときに前記決定手段による送信条件に従って送信を制御することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の送信制御装置。
【請求項9】
複数の通信帯域の各々について単位時間当たりに送信できる送信量の情報と単位時間の経過に応じて課金される料金の情報とを格納する格納部を備えるコンピュータに、
送信内容を特定する情報を取得する取得機能と、
前記格納部に格納される前記情報を基に、前記取得機能により前記特定する情報が取得された前記送信内容を送信する送信条件として、前記複数の通信帯域のうち使用する複数の通信帯域と通信帯域を変更することになる契機とを決定する決定機能と、
前記決定機能により決定される前記送信条件に従って送信を制御する送信制御機能と、
を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−100131(P2012−100131A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247080(P2010−247080)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】