説明

送気減圧弁、その製造方法及び血圧計

【課題】製造原価のコストダウンを図ることができ、さらに、歩留りを向上させることができる送気減圧弁、その製造方法及び血圧計の提供を目的とする。
【解決手段】送気球10に取り付けられる送気減圧弁1であり、樹脂製のハウジング蓋体2及びハウジング基体3と、微少排気するための、ハウジング蓋体2と一体成形されたスリット23とを備えた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送気減圧弁、その製造方法、及び、送気減圧弁付き送気球を備えた血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧計は、病院等に限らず、健康管理を目的として、一般家庭にも広く普及してきた。これら一般家庭用の血圧計は、通常、操作が簡単な自動血圧計である。
上記自動血圧計は、様々な測定方式や構成のものが開発されているが、空気袋に空気を送気する送気手段によって、二つに分類される。一つは、電動式のポンプによって、空気袋に空気を送気するものと、もう一つは、ゴム製の送気球を手動操作することにより、空気袋に空気を送気するものである。
上記送気球などに関して、様々な技術が研究開発されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、吸気逆止弁と送気逆止弁が設けられ、さらに、カフが減圧され球体が排出状態において移動当接される部位に、オリフィスを形成した血圧計用送気球が開示されている。
この技術の目的は、送気逆止弁と吸気逆止弁の両方の弁を介して行われる、カフ減圧時の排気速度を一定に設定できるようにすることにある。
【0004】
また、実用新案文献1には、排気のための先弁と吸気のための尻弁を、加圧球(送気球)の両端にそれぞれ螺着した血圧計の給排気装置の技術が開示されている。
この技術は、先弁(排気弁)及び尻弁(吸気弁)が抜け落ちるのを未然に防止することを目的としている。
【0005】
さらに、実用新案文献2には、合成樹脂によって一体成型される尻弁本体と、係止棒と、この係止棒が挿入される穴を備えた送気球の尻弁の技術が開示されている。
この技術は、尻弁を合成樹脂として加工精度を向上させるとともに、金属球との「なじみ」を良くし、あわせて安価な送気球の尻弁を提供することを目的としている。
次に、従来の送気減圧弁及び送気減圧弁付き送気球について、図面を参照して説明する。
【0006】
図6は、従来の送気減圧弁を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)はB−B断面図を示しており、(c)は背面図を示している。
図6において、送気減圧弁101は、円筒部材120、球体4、金網105を備えている。
【0007】
円筒部材120は、全体的にほぼ円筒状であり、通常、切削性に優れた真鍮が使用される。
円筒部材120は、中心軸と同心となるように、背面側から正面側に向かって順に、球体収納孔121、当接面122、吸気孔123が形成されている。
【0008】
球体収納孔121は、球体4を収納する孔である。球体収納孔121内にて、球体4は、中心軸方向に移動可能である。また、球体収納孔121と球体4の間には、所定の隙間が設けてあり、この隙間を介して空気が移動する。
当接面122は、截頭円錐の曲面であり、正面側方向に移動した球体4と当接し、シール領域を形成する。
吸気孔123は、球体4の直径より小さな直径を有しており、外気を送気球110内に吸気する。
また、球体収納孔121の背面側には、背面側方向から段付き部125が形成されており、この段付き部125の外縁部には、半円状の9枚の折り曲げ板126が背面側方向に立設されている。
【0009】
円筒部材120は、外周面の背面側に、送気球110の吸気口11への装入性を向上させるためのガイド面131が形成されている。
さらに、外周面のほぼ中央部に、吸気口11からの抜けを防止するための、段付き部132及び環状突起部133が形成されている。
また、外周面の正面側には、環状板134が形成されている。この環状板134は、正面側に、手が触れた際の感触を和らげる面取り面136が形成され、さらに、背面側に、吸気口11の端面と当接し、送気減圧弁101の装入位置を位置決めする位置決め面135が形成されている。
この円筒部材120は、上記の切削加工が施された後に、ニッケルメッキ処理が施される。
【0010】
続いて、円筒部材120は、当接面122にスリット124が形成される。このスリット124は、小刀状のポンチ(図示せず)を背面側から当接面122に打ち込むことによって、形成される。
次に、球体収納孔121に球体4が収められ、さらに、段付き部125に円形の金網105が載置される。続いて、折り曲げ板126が、折り曲げ方向にかしめられ、金網105が段付き部125に固定される。
【0011】
上記のように製造された送気減圧弁101は、スリット124の性能検査が行われる。すなわち、スリット124は、所定の圧力まで加圧された空気袋から空気を外部に漏らすことにより、所定の時間で大気圧まで減圧することが要求されている。
上記性能検査に合格した送気減圧弁101は、送気球110の吸気口11に取り付けられる。
【0012】
次に、上記構成の送気減圧弁101の動作について、図面を参照して説明する。
図7は、従来の送気減圧弁及び送気球の動作を説明するための概略断面図であり、(a)は停止時の状態を示しており、(b)は送気時の状態を示しており、(c)は吸気時の状態を示しており、(d)は減圧時の状態を示している。
図7において、送気球110は、通常、ゴム製であり、手のひらに収まりやすい形状(断面がほぼ楕円の形状)としてある。また、正面側に吸気口11が形成され、背面側に送気口12が形成されている。吸気口11には、送気減圧弁101が装入され、また、送気口12は、図示してないが、チューブを介して空気袋と連通している。
【0013】
図7(a)に示すように、送気球110は、停止時において、内部圧力が大気圧であり、球体4の位置は、特に限定されるものではない。
【0014】
空気袋に送気するには、まず、図7(b)に示すように、送気球110が手で握りつぶされる。このとき、送気球110が変形しはじめると、球体4は、正面側に移動し当接面122と当接し、シール領域を形成する。したがって、送気球110内の空気は、ほぼ送気口12から空気袋に送気される。なお、シール領域を形成しても、スリット124から微少の排気が行なわれる。
【0015】
次に、送気球110を握りつぶした後、手の力を抜くと、図7(c)に示すように、送気球110は、復元力により元の形状に復帰する。このとき、送気球110が復帰しはじめると、球体4は、背面側に移動し金網105と当接する。そして、送気球110は、送気減圧弁101を介して外気を吸い込むとともに、空気袋に送り込んだ空気が、送気口12から逆流する。なお、チューブの配管抵抗などにより、逆流する空気量より多い外気が、送気球110に吸い込まれる。この際、金網105は、フィルタとして機能し、外気中の異物の侵入を防止する。
上記送気球110の握りつぶしとこの復帰が連続的に複数回繰り返されると、空気袋内の圧力が、加圧適正値まで加圧される。
【0016】
次に、送気減圧弁101は、図7(d)に示すように、微少排気を行う。このとき、送気球110は、加圧適正値まで加圧されており、球体4は、正面側に移動し当接面122と当接し、シール領域を形成する。ただし、シール領域を形成しても、スリット124から微少の排気が行なわれるので、空気袋内の圧力を、徐々に減圧する。
【0017】
なお、血圧計が、オシロメトリック式電子血圧計(図示せず)である場合には、加圧適正値まで加圧され、その後徐々に減圧される過程で、収縮期血圧(最高血圧)及び拡張期血圧(最低血圧)、脈波包絡線などを測定し、情報処理装置が血圧を算出する。
【特許文献1】特開平3−45240号公報
【特許文献2】実開昭63−20802号公報
【特許文献3】実開昭57−169302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記の送気減圧弁101は、真鍮にメッキ処理を施した円筒部材120を用いている。このため、円筒部材120の材料費及び加工費などが高額であるといった問題があった。
また、折り曲げ板126を折り曲げ方向にかしめる際、メッキの剥がれによる金属屑が発生する。このため、この金属屑を除去し、さらに、除去されたことを検査する必要があった。すなわち、除去作業及び検査のためのコストが発生し、コストダウンを図ることができないといった問題があった。
さらに、円筒部材120にニッケルメッキ処理を施した後に、ポンチによりスリット124を形成するので、スリット124の加工精度の管理が難しく、歩留りが悪いといった問題があった。
【0019】
本発明は、上記課題を解決すべく、製造原価のコストダウンを図ることができ、さらに、歩留りを向上させることができる送気減圧弁、その製造方法及び血圧計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の送気減圧弁は、送気球に取り付けられる送気減圧弁であり、ハウジングとフィルタとを樹脂材料で一体に形成してある。
【0021】
また、本発明は、送気減圧弁の製造方法の発明としても有効であり、本発明の送気減圧弁の製造方法は、送気球に取り付けられる、樹脂製のハウジング基体及びハウジング蓋体を有する送気減圧弁の製造方法である。この製造方法は、球体を収納する球体収納部とフィルタとを有するハウジング基体を一体成形するハウジング基体成形工程と、球体が当接すると、シール領域を形成する当接面を有するハウジング蓋体を一体成形するハウジング蓋体成形工程と、球体を球体収納部内に収め、ハウジング蓋体をハウジング基体に取り付ける球体収納工程と、ハウジング蓋体とハウジング基体を接合する接合工程とを有する。
【0022】
さらに、本発明は、血圧計の発明としても有効であり、本発明の血圧計は、手動操作により送気するとともに、送気後は、微少排気する送気減圧弁付き送気球を備えており、この送気減圧弁付き送気球が、上記請求項1〜4のいずれか一項に記載の送気減圧弁を備えている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の送気減圧弁、その製造方法及び血圧計によれば、製造原価のコストダウンを図ることができ、さらに、歩留りを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[送気減圧弁の一実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は側面図を示しており、(c)は背面図を示しており、(d)はA−A断面図を示している。
図1において、本実施形態の送気減圧弁1は、ハウジング蓋体2、ハウジング基体3、球体4を備えている。
ハウジング蓋体2及びハウジング基体3の材料は、樹脂であり、それぞれ射出成形によって一体成形される。これにより、材料費及び加工費などのコストダウンを図ることができる。また、球体4の材料は、鉄などの金属である。なお、球体4の材料は、金属に限定されるものではなく、たとえば、樹脂やセラミックなどを使用してもよい。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁の、ハウジング蓋体を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は一部に断面図を含む側面図を示しており、(c)は背面図を示している。
図2において、ハウジング蓋体2は、円板21と、円板21の背面側に形成された環状突起部22とからなっている。
円板21は、中央に吸気孔211が形成されている。この吸気孔211は、球体4の直径より小さな直径を有しており、外気を送気球10内に吸気する。
また、外縁部の正面側に、面取り面212が形成されている。この面取り面212により、手が触れた際の感触を和らげる。さらに、外縁部の背面側に、位置決め面214が形成されている。この位置決め面214は、送気球10の吸気口11の端面と当接し、送気減圧弁1の装入位置を位置決めする。
さらに、位置決め面214より中央側に、円環状の溶着用凹部213が形成されている。これにより、溶着時に溶融した樹脂の流出を抑制する。
【0026】
環状突起部22は、外側に嵌合面221を有し、内側に当接面222を有している。
嵌合面221は、円筒の側面とほぼ同じ形状である。この嵌合面221は、ハウジング基体3の嵌合面314に嵌入され、ハウジング蓋体2の中心軸とハウジング基体3の中心軸とを一致させるための位置決め手段として機能する。
当接面222は、截頭円錐の曲面とほぼ同じ形状である。この当接面222は、正面側方向に移動した球体4と当接し、ほぼ円環状のシール領域を形成する。
【0027】
また、当接面222には、微少排気流路として、半径方向に一本のスリット23が形成されている。このスリット23は、所定の幅及び深さを有する断面がほぼ矩形状の溝である。スリット23は、形状が単純化されているので、歩留りを向上させる上で有利である。
【0028】
また、上述したように、オシロメトリック式などの血圧計においては、空気袋が加圧適正値まで加圧され、その後徐々に減圧される過程で、収縮期血圧(最高血圧)及び拡張期血圧(最低血圧)、脈波包絡線などを測定し、情報処理装置が血圧を算出する。このため、徐々に減圧する性能は、重要であり、スリット23の性能検査が行われる。本実施形態のハウジング蓋体2は、スリット23の寸法精度を極めて高いレベルまで向上させることができ、かつ、その精度を安定して維持できる構造(ほぼ円板状の構造)としてある。この技術的効果により、送気減圧弁1は、上記の送気減圧弁101と比べて、大幅に歩留りを向上させることができる。
なお、スリット23の形状や本数は、上記に限定されるものではない。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁の、ハウジング基体を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は一部に断面図を含む側面図を示しており、(c)は背面図を示している。
図3において、ハウジング基体3は、円筒部31と、円筒部31の背面側に一体成形されたフィルタ32とからなっている。
【0030】
円筒部31は、全体的にほぼ円筒状としてある。
この円筒部31は、外周面のほぼ中央部に、正面側方向から段付き部311が形成されている。これにより、送気球10の吸気口11からの抜けを防止する。また、外周面の背面側に、吸気口11への装入性を向上させるためのガイド面316が形成されている。また、正面側の端面は、溶着用凹部213に装入され超音波溶着される溶着面312である。
【0031】
円筒部31は、中心軸と同心となるように、正面側から背面側に向かって順に、ガイド面313、嵌合面314、球体収納穴315が形成されている。
球体収納穴315は、球体4を収納する円形の穴であり、球体収納穴315内にて、球体4は、中心軸方向に移動可能である。この球体収納穴315は、球収納部として機能する。また、球体収納穴315と球体4の間には、所定の隙間が設けてあり、この隙間を介して空気が移動する。
嵌合面314は、球体収納穴315の直径より大きな直径を有しており、嵌合面221と嵌合し、ハウジング蓋体2の中心軸とハウジング基体3の中心軸とを一致させるための位置決め手段として機能する。
ガイド面313は、嵌合面314に嵌合面221を容易に嵌入させるための斜面である。
【0032】
フィルタ32は、球体4を球体収納穴315内に留めるための円板状の形状としてある。このフィルタ32には、複数の通気孔321が形成されている。通気孔321は、フィルタ32の中央の1箇所とその周囲の7箇所(この7箇所は、互いに等間隔である。)に設けられている。
このようにすると、フィルタ32を一体成形することにより、上記の送気減圧弁101のように、金網105を用いる必要がなく、部品点数を削減することができる。さらに、折り曲げ板126をかしめることにより、金網105を取り付ける必要がないので、加工費、組立て費、金属屑の除去作業費及び検査作業費などのコストダウンを図ることができる。すなわち、金網105の代わりに、フィルタ機能を有するフィルタ32を一体成形するといった技術的効果により、大幅な製造原価のコストダウンを図ることができる。
なお、通気孔321の数量、形状などは、上記構成に限定されるものではない。
【0033】
図1(d)に示す送気減圧弁1は、次のようにして組み立てられる。
まず、球体4がハウジング基体3の球体収納穴315に収められ、ハウジング蓋体2がハウジング基体3に被せられる。
続いて、ハウジング基体3の溶着面312が、溶着用凹部213において、ハウジング蓋体2と超音波溶着される。このようにすると、たとえば、スリット23が溶着の影響を受けて変形してしまうといった不具合を防止することができる。
【0034】
次に、上記構成の送気減圧弁1の動作について、図面を参照して説明する。
図4は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁及び送気減圧弁付き送気球の動作を説明するための概略断面図であり、(a)は停止時の状態を示しており、(b)は送気時の状態を示しており、(c)は吸気時の状態を示しており、(d)は減圧時の状態を示している。
図4において、本実施形態の送気減圧弁付き送気球10(適宜、送気球10と略称する。)は、送気減圧弁1が吸気口11に取り付けられている。
なお、送気球10は、上記送気球110と比べると、送気減圧弁101の代わりに、送気減圧弁1が取り付けられている点が相違し、その他の構成は、ほぼ送気球110と同様としてある。
【0035】
図4(a)に示すように、送気球10は、停止時において、内部圧力が大気圧であり、球体4の位置は、特に限定されるものではない。
【0036】
空気袋に送気するには、まず、図4(b)に示すように、送気球10が手で握りつぶされる。このとき、送気球10が変形しはじめると、球体4は、正面側に移動し当接面222と当接し、シール領域を形成する。したがって、送気球10内の空気は、ほぼ送気口12から空気袋(図示せず)に送気される。なお、シール領域を形成しても、スリット23から微少の排気が行なわれる。
【0037】
次に、送気球10を握りつぶした後、手の力を抜くと、図4(c)に示すように、送気球10は、復元力により元の形状に復帰する。このとき、送気球10が復帰しはじめると、球体4は、背面側に移動しフィルタ32と当接する。そして、送気球10は、送気減圧弁1を介して外気を吸い込むとともに、空気袋に送り込んだ空気が、送気口12から逆流する。なお、チューブの配管抵抗などにより、逆流する空気量より多い外気が、送気球10に吸い込まれる。この際、フィルタ32は、外気中の異物の侵入を防止する。
上記送気球10の握りつぶしとこの復帰が連続的に複数回繰り返されると、空気袋内の圧力が、加圧適正値まで加圧される。
【0038】
次に、送気減圧弁1は、図4(d)に示すように、微少排気を行う。このとき、送気球10は、加圧適正値まで加圧されており、球体4は、正面側に移動し当接面222と当接し、シール領域を形成する。ただし、シール領域を形成しても、スリット23から微少の排気が行なわれるので、空気袋内の圧力を、徐々に減圧する。
このように、本実施形態の送気球10及び送気減圧弁1は、上記の送気球110及び送気減圧弁101とほぼ同様に動作する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の送気減圧弁1は、材料費及び加工費などのコストダウンを図ることができる。さらに、安定してスリット23を形成することができるので、歩留りを向上させることができる。これにより、大幅な製造原価のコストダウンを図ることができる。
また、本発明は、送気減圧弁付き送気球10を備えた血圧計(図示せず)の発明としても有効であり、送気球10が送気減圧弁1を備えることにより、製造原価のコストダウンを図ることができ、さらに、歩留りを向上させることができる。
【0040】
[送気減圧弁の製造方法の一実施形態]
図5は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁の製造方法を説明するための概略フローチャート図を示している。
本実施形態は、上述した送気減圧弁1の製造方法である。
図5において、まず、樹脂製のハウジング蓋体2及びハウジング基体3を、射出成形によりそれぞれ一体成形する(成形工程:(ステップS1))。
すなわち、ハウジング蓋体2は、ハウジング蓋体成形工程において、一体成形される。ハウジング蓋体2は、球体4が当接すると、シール領域(図示せず)を形成する当接面222、微少排気するためのスリット23、及び、外気を吸い込む吸気孔211を有している。
【0041】
また、ハウジング基体3は、ハウジング基体成形工程において、一体成形される。ハウジング基体3は、球体4を収納する球体収納穴315、及び、球体4を球体収納穴315内に留め、かつ、複数の通気孔321を有するフィルタ32を有している。
【0042】
なお、ハウジング蓋体2とハウジング基体3の成形される順序は、特に重要ではなく自由である。
また、ハウジング蓋体2及びハウジング基体3を一つにまとめ、これらを一体成形することも可能であるが、スリット23の重要性に鑑み、ハウジング蓋体2及びハウジング基体3の二分割構造とし、これに伴うデメリットを、複数の通気孔321を備えたフィルタ32などのメリットにより、カバーしている。
【0043】
次に、球体4を球体収納穴315内に収め、ハウジング蓋体2をハウジング基体3に取り付ける(球収納工程:(ステップS2))。
この際、上述したガイド面313、嵌合面314及び嵌合面221を設けておくとよい。このようにすると、容易に、かつ、精度よくハウジング蓋体2をハウジング基体3に取り付けることができる。
【0044】
続いて、ハウジング基体3の溶着面312を、溶着用凹部213において、ハウジング蓋体2と超音波溶着する(溶着工程:(ステップS3))。
この際、上述したように、ハウジング基体3の溶着面312が、溶着用凹部213において、ハウジング蓋体2と超音波溶着されるとよい。このようにすると、たとえば、スリット23が溶着の影響を受けて変形してしまうといった不具合を防止することができる。
なお、本実施形態では、超音波溶着により接合しているが、これに限定されるものではなく、たとえば、接着などにより接合してもよい。
【0045】
以上説明したように、本発明は、送気減圧弁の製造方法の発明としても有効であり、本実施形態の送気減圧弁の製造方法によれば、製造原価のコストダウンを図ることができ、さらに、歩留りを向上させることができる。
【0046】
以上、本発明の送気減圧弁、その製造方法及び血圧計について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る送気減圧弁、その製造方法及び血圧計は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
たとえば、図示してないが、吸気孔211の代わりに、複数の小径の貫通孔を形成してもよい。このようにすると、外気中の異物が球体収納穴315に侵入することを防止でき、より効果的にフィルタとしての機能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の送気減圧弁は、血圧計に用いられる場合に限定されるものではなく、たとえば、止血帯などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は側面図を示しており、(c)は背面図を示しており、(d)はA−A断面図を示している。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁の、ハウジング蓋体を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は一部に断面図を含む側面図を示しており、(c)は背面図を示している。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁の、ハウジング基体を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)は一部に断面図を含む側面図を示しており、(c)は背面図を示している。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁及び送気減圧弁付き送気球の動作を説明するための概略断面図であり、(a)は停止時の状態を示しており、(b)は送気時の状態を示しており、(c)は吸気時の状態を示しており、(d)は減圧時の状態を示している。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる送気減圧弁の製造方法を説明するための概略フローチャート図を示している。
【図6】図6は、従来の送気減圧弁を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を示しており、(b)はB−B断面図を示しており、(c)は背面図を示している。
【図7】図7は、従来の送気減圧弁及び送気球の動作を説明するための概略断面図であり、(a)は停止時の状態を示しており、(b)は送気時の状態を示しており、(c)は吸気時の状態を示しており、(d)は減圧時の状態を示している。
【符号の説明】
【0049】
1 送気減圧弁
2 ハウジング蓋体
3 ハウジング基体
4 球体
10 送気球
11 吸気口
12 送気口
21 円板
22 環状突起部
23 スリット
31 円筒部
32 フィルタ
211 吸気孔
212 面取り面
213 溶着用凹部
214 位置決め面
221 嵌合面
222 当接面
311 段付き部
312 溶着面
313 ガイド面
314 嵌合面
315 球体収納穴
316 ガイド面
321 通気孔
101 送気減圧弁
105 金網
110 送気球
120 円筒部材
121 球体収納孔
122 当接面
123 吸気孔
124 スリット
125 段付き部
126 折り曲げ板
131 ガイド面
132 段付き部
133 環状突起部
134 環状板
135 位置決め面
136 面取り面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送気球に取り付けられる送気減圧弁において、
ハウジングとフィルタとを樹脂材料で一体に形成したことを特徴とする送気減圧弁。
【請求項2】
前記ハウジングは、ハウジング基体とハウジング蓋体とからなり、
前記ハウジング基体の前記フィルタと反対側に、前記ハウジング蓋体が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の送気減圧弁。
【請求項3】
前記ハウジング基体、前記フィルタ及び前記ハウジング蓋体によって囲まれる領域に、球体が収納されることを特徴とする請求項2に記載の送気減圧弁。
【請求項4】
前記ハウジング基体と前記ハウジング蓋体が、嵌合部を有し、前記ハウジング基体と前記ハウジング蓋体とが前記嵌合部で接合されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の送気減圧弁。
【請求項5】
送気球に取り付けられる、樹脂製のハウジング基体及びハウジング蓋体を有する送気減圧弁の製造方法であって、
球体を収納する球体収納部とフィルタとを有する前記ハウジング基体を一体成形するハウジング基体成形工程と、
前記球体が当接すると、シール領域を形成する当接面を有する前記ハウジング蓋体を一体成形するハウジング蓋体成形工程と、
前記球体を前記球体収納部内に収め、前記ハウジング蓋体を前記ハウジング基体に取り付ける球体収納工程と、
前記ハウジング蓋体と前記ハウジング基体を接合する接合工程と
を有することを特徴とする送気減圧弁の製造方法。
【請求項6】
手動操作により送気するとともに、送気後は、微少排気する送気減圧弁付き送気球を備えた血圧計において、
前記送気減圧弁付き送気球が、上記請求項1〜4のいずれか一項に記載の送気減圧弁を備えたことを特徴とする血圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−201933(P2009−201933A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50065(P2008−50065)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】