説明

送風装置及び空気調和機

【課題】筒体内に軸流ファンを配してある送風装置の吹出し効率を高めることができるようにすることにあり、また、送風装置及びイオン発生部又は薬剤放出部を有する空気調和機が吹出すイオン又は揮発性薬剤の濃度を高めることができ、全体を小型化することができるようにすることにある。
【解決手段】円筒形をなす筒体1内の一端部に軸流ファン2を配し、筒体1内の他端側を、軸流ファン2により該軸流ファン2の回転軸方向へ送出される空気を前記回転軸方向へ通風させる通風路4とし、該通風路4を、軸流ファン2及び通風路4出口間に亘って中央部4aと周縁部4bとに仕切る仕切壁5を設け、周縁部4bを通風して出口1bから外部へ吹出された空気の気流が通風路4の中央部4aへ逆流するのを抑制し、また、仕切壁5内にイオン発生部6を収容し、全体を小型にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンを備える送風装置、及び該送風装置とイオン発生部又は薬剤放出部とを備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中で放電して荷電粒子を空気中に放出するイオン発生部を備える空気調和機が広く販売されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。一般に、イオン発生部を備える空気調和機には、イオンが発生する放電電極及び該放電電極と対向して設置され放電を安定的に行わせる対向電極を有しており、放電電極及び対向電極の間に高圧電気を印加することによってイオンが生成される。放電電極で発生するイオンには、正の電荷を有する正イオンと負の電荷を有する負イオンとが存在し、印加される電圧によって様々な種類のイオンが生成される。
生成されたイオンを効率よく外部へ送出するために、イオン発生部に気流を当てることが一般的に行われており、様々な形式の送風装置が使用される。
【0003】
送風装置は、各々の形式によって送出する気流に特徴があり、また、イオン発生部の設置方法においても使用する送風装置に適した方法が存在する。
【0004】
特許文献1には、軸流ファンを有する軸流式の送風装置を用い、軸流ファンにより該軸流ファンの回転軸方向へ送出される空気を前記回転軸方向へ通風させる通風筒内の軸流ファン側で、通風筒の中央部にイオン発生部を配し、通風筒の出口が絞られている空気調和機(美容装置)が開示されている。
【0005】
特許文献2には、シロッコファンを有する遠心式の送風装置を用い、シロッコファンにより該シロッコファンの接線方向へ送出される空気を前記接線方向へ通風させる通風路の途中で、通風路の一側壁部にイオン発生部を配した空気調和機が開示されている。
【0006】
特許文献3には、軸流ファンを有する軸流式の送風装置、又はターボファンを有する遠心式の送風装置を用い、軸流ファン又はターボファンにより送出される空気を螺旋状に通風させる通風筒内の途中で、通風筒の一側壁部にイオン発生部を配し、通風筒内に螺旋気流を発生させることで、通風筒に送出されるイオンの濃度を高めることができるようにした空気調和機が開示されている。
【0007】
図8Aは本発明の出願人が先に開発した空気調和機の構成を示す模式的縦断正面図、図8Bは模式的縦断側面図である。この空気調和機は、上下に貫通する筒状内壁部90a及び該筒状内壁部90aの上端に拡径段部90bを経て連なる筒状外壁部90cを有する筐体90内の下部に軸流ファン91を有する送風装置が収納され、その中央部に吸込口92aを有する底板92により筐体90の底部が閉塞されている。筐体90は筒状内壁部90a内の送風装置と拡径段部90bとの間が円筒状の通風路93になっており、通風路93の出口93aから吹出される空気の向きを整える格子状の整風体94が拡径段部90bに配されている。通風路93の通風方向途中で、筒状内壁部90aの一側部には孔90dが開設され、該孔90dにイオン発生部95を保持してある。
【0008】
図9はイオン発生部95の構成を示す斜視図である。イオン発生部95は、正イオン発生部として針状電極95a及び対向電極95bを有し、負イオン発生部として針状電極95c及び対向電極95dを有しており、各々の針状電極95a,95c及び対向電極95b,95dの間に高圧電気が印加されて、各々正イオンH+ (H2 O)m(mは任意の自然数)と負イオンO2-(H2 O)n(nは任意の自然数)を発生する。正イオンH+ (H2 O)mと負イオンO2-(H2 O)nを空気中に放出すると、空気中に浮遊する細菌やウイルスの表面に取り付いて化学反応を起こし、そのときに発生する水酸基ラジカル・OHや過酸化水素H2 2 が細菌を殺菌し、ウイルスを失活させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−002210号公報
【特許文献2】特開2010−080425号公報
【特許文献3】特開2006−000183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のように出口が絞られている通風筒内の軸流ファン側で、中央部にイオン発生部を配してある空気調和機(美容装置)、及び図8A,図8Bのように軸流ファン91の回転軸方向へ通風させる通風路93の一側壁部にイオン発生部95を配してある空気調和機にあっては、通風路93の出口93aから外部へ吹出された空気の気流の一部が前記出口93aから前記通風路93の中央部へ逆流し、逆流した空気が再び周縁部に巻込まれて再び前記出口93aから外部へ吹出されることになるため、吹出し効率が低下し、一定の吹出量を得るには空気調和機が大型になるという問題があった。
【0011】
ところで、特許文献1では、通風筒の出口を絞ることにより、出口から外部へ吹出された空気の気流の一部が通風筒内へ逆流するのを抑制するようになしてあるが、通風筒の出口が絞られることにより、出口から吹出される風量が減少し、また、吹出し抵抗が増して音鳴りが生じ易くなるため、出口は絞らないのが好ましい。
【0012】
軸流ファンを備える空気調和機において、出口から外部へ吹出された空気の気流の一部が通風筒内へ逆流するのは、軸流ファンが有するプロペラの特性上である。しかし、プロペラはその特性上、比較的多い風量を簡単に得ることができるので、通風筒内の圧力損失が少ない機器ではよく使用されている。また、プロペラが送出する空気の気流は螺旋状になり、イオン発生部で発生したイオンを螺旋状に吹出し、イオンの濃度を高めることができるので、イオン発生部を備える空気調和機に使用するのは好ましい。
【0013】
図10Aは送風装置が備えるプロペラ100の構成を示す平面図、図10Bは送風装置が備えるプロペラ100の構成を示す正面図である。プロペラ100は、ボス部101の周面に等配された複数のプロペラ羽根102を有し、矢印の方向に回転する。プロペラ羽根102は、翼面が回転方向に向かって先端102aが送出方向と反対側へ下がる形状であるため、送出空気は、プロペラ羽根102によって上方へ押し上げられるとともに、プロペラ100の回転方向にも押しやられ、さらに空気の粘性によって、プロペラ100とともに回転することにより遠心力を受けるため回転軸方向から見て外側方向に力を受ける。このことにより、プロペラ100が送出する空気の気流は、プロペラ100の回転方向に向かって螺旋状に形成されるとともに、前記回転軸方向の外側に広がる気流となる。
【0014】
また、プロペラ羽根102の基端が固定されているボス部101は、概ね円柱形をなし、ボス部101が回転軸方向へ空気を送出する力を発生させないのでボス部101の延長領域(ボス部の風下側)には気流が発生しない。
【0015】
軸流ファン91が有するプロペラ100は上述の特性を有するため、この軸流ファン91を備える図8A、図8Bの空気調和機において、筐体90内の下部に配された送風装置は、通風方向に向かって広がりながら通風する螺旋状の気流を送出する。広がりながら通風する螺旋状の気流は通風路93の路壁93bに当たり、路壁93bに沿って上方の出口93aへ通風し、通風の途中に配してあるイオン発生部95で発生したイオンを巻き込んで出口93aの整風体94から外部に吹出される。
【0016】
出口93aの整風体94から吹出される空気の螺旋状の気流は、出口93aの周縁部に集まる傾向となり、プロペラ100のボス部101の真上に当たる出口93aの中央部には、気流があまり存在しない状態が生じる。さらに甚だしいときには出口93aの中央部で気流が逆流することも起きる。そのため結果的に、出口93aから外部へ吹出される風量が減少し、吹出し効率が低下する。
【0017】
図11は先に開発された空気調和機において、吹出し風量が減少する状況を示す模式図である。軸流ファン91のプロペラ100によって送出された空気の気流は通風路93を上方の出口93aに向かって通風し、出口93aの周縁部では吹出し気流Aが存在する。吹出し気流Aは流速があるため、吹出し気流A部分の近傍はベルヌーイの法則によって気圧が低下する。一方プロペラ100のボス部101の延長領域93cはほぼ大気圧であるため、気圧は低下していない。このような気圧の差によって、ボス部101の延長領域93cから通風路93の周縁部に向かう気流Bが発生する。吹出す気流の流速が速いほど圧力差が大きくなり逆流する気流Bの流速も速くなる。
【0018】
また、特許文献2、3、及び図8A、図8Bに示すように、通風路93の途中で、通風路93の一側壁部にイオン発生部95を配してある空気調和機にあっては、通風路93の寸法にイオン発生部95の寸法が加算された外形になるため、空気調和機の小型化に設計上の制約があった。
【0019】
本発明は斯る事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的は、軸流ファン及び通風筒を有する送風装置の吹出し効率を高めることができるようにすることにあり、また、他の目的は、送風装置及びイオン発生部又は薬剤放出部を有する空気調和機が吹出すイオン又は揮発性薬剤の濃度を高めることができ、全体を小型化することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る送風装置は、軸流ファンから該軸流ファンの回転軸方向へ送出される空気を前記回転軸方向へ通風させる通風筒を備え、前記空気を前記通風筒の出口から外部へ吹出す送風装置において、前記通風筒内を前記軸流ファン及び前記出口間に亘って中央部と周縁部とに仕切る仕切壁を備えることを特徴とする。
【0021】
この発明にあっては、軸流ファンが送出する空気を、通風筒内の仕切壁に沿って周縁部を通風させ、中央部を通風させないため、吹出し気流の流速に関係なく、吹出し気流の一部が通風筒内へ逆流するのを抑制することができる。
【0022】
また、本発明に係る送風装置は、前記軸流ファンは、ボス部の周面に複数のプロペラ羽根が等配されているプロペラを有し、前記仕切壁は、前記ボス部及び前記出口間の長さとほぼ等しい長さを有する構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、ボス部及び出口間の通風筒内を、中央部と周縁部とに仕切っており、通風筒内の中央部を通風させないため、吹出し気流の一部が通風筒内へ逆流するのを抑制することができる。
【0023】
また、本発明に係る送風装置は、前記通風筒及び仕切壁は略円筒形をなす構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、軸流ファンが有するプロペラにより送出される螺旋状の気流をスムーズに通風させることができるとともに、比較的大径で、且つ軽量の仕切壁を通風筒内に簡易に配することができ、仕切壁を有する割に軽量化することができ、コストを低減することができる。
【0024】
また、本発明に係る送風装置は、前記ボス部は略円柱形をなし、前記仕切壁は前記ボス部の直径以上の外径を有する構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、吹出し気流の一部が逆流する領域を縮小することができるため、吹出し気流の逆流をより一層抑制することができる。
【0025】
また、本発明に係る送風装置は、前記出口から外部へ吹出される空気の向きを整える整風体を有し、前記仕切壁が前記整風体に近接している構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、整風体の中央部から逆流するのを防ぐことができるため、整風体を備える送風装置において、吹出し気流の一部が通風筒内へ逆流するのをより一層抑制することができる。
【0026】
また、本発明に係る送風装置は、前記仕切壁は、前記出口側の部分を、前記軸流ファン側の部分よりも大径にしてある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、吹出し気流の一部が逆流する領域をより一層縮小することができるため、吹出し気流の逆流をより一層抑制することができる。
【0027】
また、本発明に係る空気調和機は、前述した発明の送風装置と、前記仕切壁に配され、イオンを発生させるイオン発生部とを備えることを特徴とする。
この発明にあっては、仕切壁が仕切る通風筒内の中央部の領域にイオン発生部を配してあるため、軸流ファン及びイオン発生部を有し、吹出し気流の逆流を防ぐことができる空気調和機を小型化することができる。
【0028】
また、本発明に係る空気調和機は、前述した発明の送風装置と、前記仕切壁に配され、揮発性薬剤を放出する薬剤放出部とを備えることを特徴とする。
この発明にあっては、仕切壁が仕切る通風筒内の中央部の領域に薬剤放出部を配してあるため、軸流ファン及び薬剤放出部を有し、吹出し気流の逆流を防ぐことができる空気調和機を小型化することができる。
【0029】
また、本発明に係る空気調和機は、前記仕切壁は略円筒形をなし、該仕切壁内に前記イオン発生部又は薬剤放出部を配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、通風筒内を中央部と周縁部とに仕切る仕切壁内にイオン発生部又は薬剤放出部を設けてあるため、軸流ファン及びイオン発生部又は薬剤放出部を有し、吹出し気流の逆流を防ぐことができる空気調和機をより一層小型化することができる。
【0030】
また、本発明に係る空気調和機は、前記仕切壁は、前記イオン発生部又は薬剤放出部と対向する位置から径方向へ貫通する孔を有し、該孔から前記イオン発生部又は薬剤放出部が前記通風筒内に露出している構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、イオン発生部が発生するイオン、又は薬剤放出部が放出する揮発性薬剤を、仕切壁の孔から通風筒内の周縁部へ放出することができ、螺旋状の気流を通風筒内でスムーズに通風させることができる。
【0031】
また、本発明に係る空気調和機は、前記イオン発生部は、前記軸流ファンの回転軸方向に離隔して複数配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、軸流ファンのプロペラが有する複数のプロペラ羽根夫々によって送出される空気の螺旋状の気流が、イオン発生部の夫々が発生するイオンを送出時期をずらせて送出することができるため、正イオンを発生するイオン発生部と、負イオンを発生するイオン発生部とが離隔して配されることにより、正イオン及び負イオンが互いに混合することが避けられる状態で外部へ吹出すことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、通風筒内を中央部と周縁部とに仕切る仕切壁が、軸流ファンのプロペラが送出する螺旋状の気流を、前記中央部に通風させることなく前記周縁部に通風させることができるため、通風筒の出口から吹出された空気の気流の一部が通風筒内へ逆流するのを抑制することができ、送風装置の吹出し効率の低下を防ぐことができる。
【0033】
また、本発明によれば、通風筒内を中央部と周縁部とに仕切る仕切壁にイオン発生部又は薬剤放出部を配してあるため、軸流ファン及びイオン発生部又は薬剤放出部を備える空気調和機を、空気調和機能を低下させることなく小型化することができる。
【0034】
また、本発明によれば、軸流ファンのプロペラが送出する螺旋状の気流が、イオン発生部が発生するイオン、又は薬剤放出部が放出する揮発性薬剤を通風させ、通風筒の出口から吹出されたイオン、又は薬剤が通風筒内の中央部へ逆流するのを抑制して、実質的に送出するイオン濃度又は揮発性薬剤濃度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る空気調和機の構成を示す模式的縦断正面図である。
【図2】本発明に係る空気調和機の構成を示す模式的縦断側面図である。
【図3】本発明に係る空気調和機の出口から外部へ吹出される状態を示す模式的説明図である。
【図4】本発明に係る空気調和機の他の構成を示す模式的縦断正面図である。
【図5】本発明に係る空気調和機の他の構成を示す模式的縦断正面図である。
【図6】本発明に係る空気調和機が備える薬剤放出部の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る空気調和機が備える薬剤放出部の構成を示す模式的断面図である。
【図8】Aは先に開発された空気調和機の構成を示す模式的縦断正面図、Bは先に開発された空気調和機の構成を示す模式的縦断側面図である。
【図9】イオン発生部の構成を示す斜視図である。
【図10】Aは送風装置が備える軸流ファンのプロペラの構成を示す正面図、Bは送風装置が備える軸流ファンのプロペラの構成を示す側面図である。
【図11】先に開発された空気調和機において、吹出し風量が減少する状況を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施の形態1
図1は本発明に係る空気調和機の構成を示す模式的縦断正面図、図2は空気調和機の構成を示す模式的縦断側面図である。この空気調和機は、上下に貫通する円筒形をなし、下端に入口1a、上端に出口1bを夫々有する筒体1と、該筒体1内の下部に回転自在に配されている軸流ファン2と、該軸流ファン2を回転自在に支持してあるファンケース3と、筒体1内の軸流ファン2及び出口1b間に亘って形成される通風路4を、中央部4aと周縁部4bとに仕切る円筒形をなす仕切壁5と、該仕切壁5内に収容保持されたイオン発生部6とを備え、軸流ファン2の回転により筒体1の入口1aから筒体1内に吸込まれた空気が通風路4を通風し、イオン発生部6で発生したイオンを巻き込んで出口1bから外部へ吹出されるように構成されている。筒体1、軸流ファン2及びファンケース3は送風装置を構成する。
【0037】
筒体1の下端には入口1aを有する内向きの鍔部1cが設けられており、筒体1の上端には出口1bから外部へ吹出される空気の向きを整える整風体7が装着されている。整風体7は円環部7a内に格子状の仕切部7bが設けられている。
【0038】
軸流ファン2は、図10A,図10Bに示すものと同じであり、略円柱形をなすボス部21の周面に3枚のプロペラ羽根22が等配されているプロペラ20を有し、矢印の方向に回転する。プロペラ羽根22は、翼面が回転方向に向かって先端が下がる形状をなしており、送出する空気は、上方(回転軸方向)へ押し上げられるとともに、プロペラ20の回転方向にも押しやられ、さらに空気の粘性によってプロペラ20とともに回転することにより遠心力を受け、回転軸方向から見て外側方向に力を受けるため、プロペラ20が送出する空気の気流は、プロペラ20の回転方向に向かって螺旋状になるとともに、通風方向の外側に広がる気流となる。筒体1内の通風路4の螺旋状の気流は、通風路4の周面に当り、仕切壁5の外周面に沿って出口1bへ通風され、通風路4の途中に配されているイオン発生部6で発生したイオンを巻き込んで出口1bの整風体7から外部に吹出される。
【0039】
螺旋状の気流は、図1、図2に模式的に「ア」、「イ」、「ウ」で示すようにプロペラ羽根22ごとに発生するため、プロペラ羽根22の枚数に対応する数の螺旋状の気流が通風路4を並列に移動する。つまり、夫々の螺旋状の気流が積み重なって層状となり、出口1bに向かって移動する。
【0040】
ボス部21は略円柱形をなし、該ボス部21が回転軸方向へ空気を送出する力を発生させないため、筒体1内の通風路4のボス部21と対向する中央部4a(ボス部21の風下側)には気流が発生しない。
【0041】
ファンケース3は、軸流ファン2の回転軸と同軸に配され、軸流ファン2の外周りを覆う円筒形をなし、筒体1の鍔部1cに支持されている。
【0042】
通風路4は、筒体1内における軸流ファン2のボス部21及び出口1b間に亘って形成され、軸流ファン2から送出される空気を該軸流ファン2の回転軸方向へ通風させるようになしてある。
【0043】
仕切壁5は、ボス部21及び出口1b間の長さとほぼ等しい長さを有し、且つボス部21の直径以上の太さ(外径)を有する円筒形をなし、通風路4の中央側に軸流ファン2の回転軸と同軸に配設され、上端が整風体7の円環部7a下面に接触、換言すると円環部7a下面に近接しており、通風路4における仕切壁5の内側を中央部4aとし、仕切壁5の外周りを周縁部4bとしてある。
【0044】
仕切壁5の長手方向途中には、径方向に貫通する略矩形の孔51が開設され、該孔51の縁部にイオン発生部6が嵌込みにより取付けられている。
【0045】
イオン発生部6は、図9に示すものと同じであり、正イオンを発生させる正イオン発生部61と、該正イオン発生部61と前記回転軸方向へ離隔した位置で負イオンを発生させる負イオン発生部62、正イオン発生部61及び負イオン発生部62を保持する保持体63とを有する。保持体63が孔51の縁部に取付けられ、正イオン発生部61及び負イオン発生部62が前記回転軸方向へ離隔して並置されている。
【0046】
正イオン発生部61及び負イオン発生部62は、孔51から周縁部4bに臨む放電針、該放電針を囲繞する誘導電極環、放電針及び誘導電極環に電圧を印加する電圧印加部とを備え、電圧印加部が放電針及び誘導電極環に電圧を印加することにより、放電針がコロナ放電し、正イオン、負イオンを発生するように構成されている。
【0047】
以上のように構成された空気調和機は、筒体1の入口1aから居住室内の空気を吸込むことができるように架台上に載置される。電動モータ等の駆動手段により軸流ファン2のプロペラ20が図1、図2の矢印方向へ回転し、居住室内の空気が入口1aから筒体1内に吸込まれ、プロペラ20を回転軸方向に通過して通風路4の周縁部4bへ送出される。この際、通風路4におけるプロペラ20のボス部21と回転軸方向に対向する部分の中央部4aには気流が殆どないし、また、周縁部4bへ送出された空気は仕切壁5により中央部4aへの通風が阻止され、周縁部4bに沿って整風体7から外部に吹出される。この吹出された空気の気流は、整風体7の周縁部に集まる傾向となり、整風体7の周縁部では吹出し気流があり、プロペラ20のボス部21と回転軸方向に対向する中央部には吹出し気流があまり存在しない状態になる。
【0048】
図3は空気調和機の出口1bから外部へ吹出される状態を示す模式的説明図である。吹出し気流は流速があるため、整風体7周縁部の吹出し気流領域は気圧が低下する。一方整風体7中央部の吹出し気流がない領域はほぼ大気圧であるため、気圧は低下しない。この吹出し気流領域と吹出し気流がない領域との気圧の差によって、整風体7よりも外側の領域では仕切壁5の延長領域から吹出し気流Aに向かう気流Bが発生する。吹出し気流の流速が速いほど圧力差が大きくなり逆流する気流Bも速くなる。しかし、整風体7よりも内側の通風路4では、該通風路4を中央部4aと周縁部4bとに仕切る円筒形をなす仕切壁5が配設されており、中央部4aと周縁部4bとの間の圧力差は仕切壁5によって維持されるため、逆流する気流Bはない。
【0049】
このように出口1bの整風体7から外部に吹出された空気の気流が通風路4へ逆流するのを防ぐことができるため、吹出し効率の低下を防ぐことができる。
【0050】
図1乃至図3に示す空気調和機は、筒体1内の通風路4を中央部4aと周縁部4bとに仕切る仕切壁5が円筒形をなし、該仕切壁5に開設された孔51にイオン発生部6が収容されているため、軸流ファン2及びイオン発生部6を有する空気調和機を、機能を低下させることなく小型化することができる。
【0051】
イオン発生部6は、正イオン発生部61及び負イオン発生部62が軸流ファン2の回転軸方向に離隔配置されているため、プロペラ20のプロペラ羽根22ごとに発生する螺旋状の気流「ア」、「イ」、「ウ」が通風筒4で積み重なって層状となり、出口1bに向かって移動する際、「ア」の螺旋気流には負イオンが含まれ、「ウ」の螺旋気流には正イオンが含まれるとともに、正イオン及び負イオンが互いに混合することが避けられる状態で出口1bの整風体7から外部に吹出される。また、整風体7から外部に吹出された空気の気流が通風路4へ逆流するのを仕切壁5により防ぐことができるため、通風路4で消滅するイオンの数を減少させることができ、結果的に、空気調和機や送風装置を増強することなく、出口1bの整風体7から外部へ送出するイオンの数を増加することができる。表1は本発明に係る空気調和機と従来の空気調和機とが送出するイオンの数を、出口1bの整風体7部分で測定したものである。
【0052】
【表1】

【0053】
本発明に係る空気調和機にあっては、従来の空気調和機に比べて正イオンが2.5%増加し、負イオンが16%増加した。
【0054】
実施の形態2
図4は本発明に係る空気調和機の他の構成を示す模式的縦断正面図である。この空気調和機は、全長に亘って等径の仕切壁5が筒体1内の通風路4を仕切る構成とする代わりに、出口1b側の部分が軸流ファン2側の部分よりも大径に形成された仕切壁50が筒体1内の通風路4を中央部4aと周縁部4bとに仕切る構成としたものである。
【0055】
仕切壁50は、プロペラ20のボス部21とほぼ等径の小径筒部50aと、該小径筒部50aに連なる拡径筒部50b及び該拡径筒部50bに連なり、出口1bの整風体7から吹出す空気の気流の幅を制限しない程度に大径とした大径筒部50cとを有し、ボス部21及び出口1b間の長さとほぼ等しい長さに形成されている。仕切壁50は通風路4の中央側に軸流ファン2の回転軸と同軸に配設され、大径筒部50cの端末が整風体7の円環部7a下面にほぼ接触している。仕切壁50の長手方向途中には孔51aが開設され、該孔51aにイオン発生部6が収容されている。
【0056】
この構成にあっては、通風路4における周縁部4bの出口1b側断面積が軸流ファン2側断面積よりも狭く、通風筒4を通風する気流の最終流速が速くなる。しかし、プロペラ20が送出する空気の気流は、外側へ広がりながら回転軸方向へ通風される螺旋状であるため、出口1bの整風体7から吹出す気流の幅を制限しない程度に大径にすることは、吹出された気流が通風路4へ逆流する領域を縮小することにつながり、吹出し気流の逆流をより一層なくすることができる。
その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用効果の説明を省略する。
【0057】
実施の形態3
図5は本発明に係る空気調和機の他の構成を示す模式的縦断正面図である。この空気調和機は、筒体1内の通風路4を中央部4aと周縁部4bとに仕切る仕切壁5にイオン発生部6を配設する代わりに、揮発性薬剤を放出する薬剤放出部8を仕切壁5に配設したものである。
【0058】
図6は薬剤放出部8の構成を示す斜視図、図7は薬剤放出部8の構成を模様式的断面図である。薬剤放出部8は、揮発性を有する一般的な殺菌剤、殺虫剤、防かび剤、消臭剤のいずれか一つ又は単に芳香を発する芳香剤が含浸されたペレット81を、放出孔82aを有する容器82内に収納したものであり、仕切壁5に開設された孔51に容器82が嵌込みにより取付けられ、放出孔82aから周縁部4bへ放出される揮発性薬剤を、周縁部4bを通風する空気が巻き込むようになしてある。
【0059】
この構成にあっては、イオン発生部6を備えるものと同様、プロペラ20が送出する空気の螺旋状の気流によって揮発性薬剤が室内に吹出される。
その他の構成及び作用は実施の形態1、2と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用効果の説明を省略する。
また、仕切壁5に代えて、仕切壁50を用いてもよい。
【0060】
尚、以上説明した実施の形態では、上下に貫通する円筒形をなす筒体1内を通風路4とし、空気を上方へ吹き出す構成としたが、その他、例えば鉛直に対して斜めに配される筒体1内を通風路とし、空気を斜め上方へ吹出す構成としてもよいし、また、横方向に配される筒体1内を通風路とし、空気を横方向へ吹出す構成としてよく、空気の吹出し方向は特に制限されない。
【0061】
また、以上説明した実施の形態では、円筒形をなす仕切壁5が筒体1内の通風路4を仕切る構成としたが、その他、例えば円柱形をなす仕切壁、又は一端が閉鎖された有底の円筒形をなす仕切壁が通風路4を仕切る構成としてもよい。円柱形をなす仕切壁の場合、通風路4の中央部4aには空間が存在しなくなるが、軸流ファン2のボス部21と対向する中央部4aの領域はもともと空気の気流があまり存在しないため、中央部4aに空間が存在しなくとも差し支えない。また、円柱形をなす仕切壁の場合、イオン発生部6又は薬剤放出部8を収容する凹部又は径方向に貫通する孔を仕切壁の周面に設ける。また、仕切壁は円形である他、6角形、8角形等の多角形であってもよい。
【0062】
また、以上説明した実施の形態では、ボス部21及び出口1b間の長さとほぼ等しい長さを有する仕切壁5,50を用い、仕切壁5,50の上端が整風体7の円環部7a下面に近接する構成としたが、その他、ボス部21及び出口1b間の長さよりも長い仕切壁を用い、該仕切壁の上端が、円環形をなす整風体の上面に至るか、又は整風体から外部へ突出する構成としてもよい。
【0063】
また、本発明に係る空気調和機は、冷房機能及び暖房機能の少なくとも一つを備える構成であってもよい。
【0064】
本発明によれば、軸流ファン2を使用する空気調和機において吹出口近傍の気流が逆流するのを防いで軸流ファン2の無駄な仕事を減らすことができる。そのことはとりもなおさず省エネルギーに通じるものである。また、軸流ファン2のボス部21の下流側に確保した空間に芳香手段や薬剤拡散手段等の機能手段を収納することができ、機器全体の小型化にも有効である。
【符号の説明】
【0065】
1 筒体
1b 出口
2 軸流ファン
20 プロペラ
21 ボス部
22 プロペラ羽根
4a 中央部
4b 周縁部
5、50 仕切壁
51、51a 孔
6 イオン発生部
7 整風体
8 薬剤放出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流ファンから該軸流ファンの回転軸方向へ送出される空気を前記回転軸方向へ通風させる通風筒を備え、前記空気を前記通風筒の出口から外部へ吹出す送風装置において、前記通風筒内を前記軸流ファン及び前記出口間に亘って中央部と周縁部とに仕切る仕切壁を備えることを特徴とする送風装置。
【請求項2】
前記軸流ファンは、ボス部の周面に複数のプロペラ羽根が等配されているプロペラを有し、前記仕切壁は、前記ボス部及び前記出口間の長さとほぼ等しい長さを有する請求項1記載の送風装置。
【請求項3】
前記通風筒及び仕切壁は略円筒形をなす請求項1又は2記載の送風装置。
【請求項4】
前記ボス部は略円柱形をなし、前記仕切壁は前記ボス部の直径以上の外径を有する請求項3記載の送風装置。
【請求項5】
前記出口から外部へ吹出される空気の向きを整える整風体を有し、前記仕切壁が前記整風体に近接している請求項1から4のいずれか一つに記載の送風装置。
【請求項6】
前記仕切壁は、前記出口側の部分を、前記軸流ファン側の部分よりも大径にしてある請求項3から5のいずれか一つに記載の送風装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の送風装置と、前記仕切壁に配され、イオンを発生させるイオン発生部とを備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一つに記載の送風装置と、前記仕切壁に配され、揮発性薬剤を放出する薬剤放出部とを備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項9】
前記仕切壁は略円筒形をなし、該仕切壁内に前記イオン発生部又は薬剤放出部を配してある請求項7又は8記載の空気調和機。
【請求項10】
前記仕切壁は、前記イオン発生部又は薬剤放出部と対向する位置から径方向へ貫通する孔を有し、該孔から前記イオン発生部又は薬剤放出部が前記通風筒内に露出している請求項9記載の空気調和機。
【請求項11】
前記イオン発生部は、前記軸流ファンの回転軸方向に離隔して複数配してある請求項7、9、10のいずれか一つに記載の空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−2416(P2013−2416A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136663(P2011−136663)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】