説明

送風装置用フィルタ

【課題】使用中にファン駆動部に扇風機周囲の埃などが直接吸い込まれるようなことがなくメンテナンス性とデザイン性に優れた送風装置用フィルタを提供する。
【解決手段】浮遊物や有害成分を除去するフィルタ部材11を備えた送風装置用フィルタ10であって、扇風機20の支柱部23周囲に配置される切込み状の支柱取付部12を備え、その袋状の開口縁がファンガード21の外周縁にフィルタ係止部材13を介して背面側から係止され、ファンガード21の背面側に膨出してファン駆動部22を含む所定容積の清浄空間を形成させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇風機などの送風装置に装着される送風装置用フィルタに関し、詳しくは扇風機などの送風ファンを被うファンガードの背面部に着脱自在に取り付けられ、送風装置の背面側から吸い込まれる空気中の微細なごみやほこりなどを捕集するための送風装置用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用の扇風機のファンガードなどに装着して空気浄化を行なう集塵フィルタが公知である。
例えば特許文献1(特開2005−240697号公報)には、扇風機背面側に取り付けるタイプの集塵フィルタとして、扇風機の回転羽根をガードする羽根ガードの背面部を被覆可能な環状のフィルタ材とフレームとを備え、前記フィルタ材及びフレームが周方向に向かって複数の部分に分割される構成のものが開示されている。ここでは、扇風機に風が入ってくる保護ガードの後側部分にフィルタを取り付けることにより、埃やごみを吸収し補足して、そのフィルタを外すことによって汚れを除去できるようにしている。
【0003】
また、特許文献2(特開2007−239701号公報)には、扇風機前面側に取り付ける集塵フィルタとして、略円筒状の周壁部と底部から成る袋状のフィルタ本体を備え、そのフィルタ本体の開口縁に沿って設けた複数の係止部材を介して扇風機の前面に取り付けるフィルタが呈示されている。この集塵フィルタは扇風機の送風作用によって袋状のフィルタ本体が風下側に膨出し、空気がフィルタ本体を通過する際に空気中から浮遊塵埃を捕集する。こうして、送風ファンの風下側にフィルタを設けることで涼感を損なうことのない扇風機が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−240697号公報
【特許文献2】特開2007−239701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の扇風機などの送風装置では、その稼働中に埃などを含んだ気流が直接的又は間接的に送風ファンを回転駆動させるモータなどのファン駆動部側に吹き込まれて動作不良などの要因となるという問題があった。
特に特許文献1のフィルタでは、そのファンガード後側にフィルタを取り付けるに際して、フィルタを保護ガードの直径に合わせて装着できるように縫製するので、埃が取れにくいという問題があった。
また、特許文献2のものでは、膨出状のフィルタをファンガード前面に設けているため、見栄えが悪くデザイン性に欠けるとともに、ファンの裏側部などにも埃やごみが付着堆積して、それを防止するために頻繁なメンテナンス作業が必要になるという問題があった。
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたものであって、ファンガードのサイズなどの条件にかかわらず高い集塵効果が得られるとともに、その使用中にファン駆動部に送風装置周囲の埃などが直接吸い込まれるようなことがなくメンテナンス性に優れ、しかも、その取り付けが容易でデザイン性にも優れた送風装置用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記従来の課題を解決するためになされた本発明は、網状や格子状に形成されたファンガード内で回転する送風ファンを直結支持するファン駆動部と、前記ファン駆動部を支持する支柱部とを有した扇風機などの送風装置に取り付けられ、前記ファンガードの背面側から取り込まれてその前方側に送風される空気中の浮遊物や有害成分を除去するフィルタ部材を備えた送風装置用フィルタであって、前記フィルタ部材が不織布や織布により略袋状に形成されるとともに前記送風装置の支柱部周囲に配置される切込み状の支柱取付部を備え、その袋状の開口縁が前記ファンガードの外周縁にフィルタ係止部材を介して背面側から係止され、前記ファンガードの背面側に膨出して前記ファン駆動部を含む所定の清浄空間を形成させるように構成される。
【0007】
(2)本発明は(1)記載の送風装置用フィルタにおいて、前記フィルタ部材と前記ファンガード背面との面積比を4〜11として前記清浄空間が形成されていることを特徴とする。
【0008】
(3)本発明は(1)又は(2)の送風装置用フィルタにおいて、前記フィルタ部材が、含浸硬化された樹脂材からなり、前記ファン駆動部の駆動状態においてその袋状形態が維持されるように構成されていることにも特徴を有している。
【0009】
(4)本発明は(1)又は(2)記載の送風装置用フィルタにおいて、前記フィルタ部材が、形状記憶合金やアルミ合金材、竹材などからなるフレーム部を備え、
前記ファン駆動部の駆動状態においてその袋状形態が維持されるように、
前記略袋状形態の不織布や織布がそのフレーム部に被せられて構成されていることにも特徴を有している。
【0010】
(5)本発明は(1)〜(4)記載の送風装置用フィルタにおいて、前記フィルタ部材には、芳香剤成分や抗菌剤成分、イオン発生成分、殺虫剤成分を含む機能性樹脂材が含浸もしくは添着されていることにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィルタ部材が不織布や織布により略袋状に形成され、ファンガード及びファン駆動部の背面側に膨出して所定の清浄空間を形成させているので、ファンガードのサイズにかかわらず高い集塵効果が得られるとともに、扇風機の使用中にファン駆動部に埃などが直接吸い込まれることがなく、メンテナンス性に優れた送風装置用フィルタを提供できる。さらに、その取り付けが容易で使用中の外観も良好な送風装置用フィルタとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の送風装置用フィルタの扇風機への装着状態を示す斜視図である。
【図2】同送風装置用フィルタの使用形態を示す説明図である。
【図3】同送風装置用フィルタのフィルタ効果の原理説明図である。
【図4】従来例におけるフィルタ厚み効果の説明図である。
【図5】室内における空気清浄化効果の説明図である。
【図6】同送風装置用フィルタにおける風速測定方法の説明図である。
【図7】同送風装置用フィルタのフィルタ面積と風速との測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例3における送風装置用フィルタの斜視図である。
【図9】実施例4における送風装置用フィルタの説明図である。
【図10】全体が円柱状に形成される清浄空間の円面積Sと長さLを設定した場合の倍率との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る送風装置用フィルタは、網状や格子状に形成されたファンガード内で回転する送風ファンを直結支持するファン駆動部と、前記ファン駆動部を支持する支柱部とを有した扇風機などの送風装置に取り付けられ、前記ファンガードの背面側から取り込まれてその前方側に送風される空気中の浮遊物や有害成分を除去するフィルタ部材を備えた送風装置用フィルタであって、前記フィルタ部材が不織布や織布により略袋状に形成されるとともに前記扇風機の支柱部周囲に配置される切込み状の支柱取付部を備え、その袋状の開口縁が前記ファンガードの外周縁にフィルタ係止部材を介して背面側から係止され、前記ファンガードの背面側に膨出して前記ファン駆動部を含む所定の清浄空間を形成させるように構成される。これによって、扇風機の使用中にファン駆動部に埃などが直接吸い込まれるようなことがなくメンテナンス性に優れるとともに、取り付けが容易でデザイン性や製造のコスト性にも優れた送風装置用フィルタを既存の扇風機などの送風装置を改造することなく適用できる。
【0014】
フィルタ部材は、不織布や織布により略袋状に形成される。この素材としては例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエステル、ウレタン、セルロース、ナイロンポリオレフィン類などからなる不織布や織布で構成される。そして、これらを不織布や織布を外層としてその内層部分には抗菌剤などを含む機能性樹脂などを配置した二層構造とすることができる。例えば、抗菌性の作用を有する素材として、銀,銅などの金属イオンを溶出する無機化合物や、銀,銅などの金属微粒子、酵素製剤、カテキン類などの天然成分抽出物などが適用できる。また、これらの素材から選択したものが不織布などのフィルタ層を支持するようにフレーム状に構成することもできる。
【0015】
フィルタ本体の集塵性能はそのフィルタ素材の種類や、厚みなどにより左右される。一般にフィルタ性能を高くすると空気抵抗が増加するが、フィルタ面積を増加させる事によって埃の除去効率を高める効果が期待でき、不織布などのフィルタ素材により、粒径5μm程度までの綿埃の除去ができる。ファンガードへの取り付け時には邪魔にならない程度の大きさに設定して、扇風機の機能を損なうことなく綿ホコリを効率的に除去できるようにフィルタ素材を選択する。
【0016】
フィルタ係止部は、袋状に形成されたフィルタ本体の開口部に設けられ、ファンガードの背面側の周縁にフィルタ本体を着脱自在に係止する機能を備えている。このようなフィルタ係止部としては、例えば面状ファスナや、ゴムバンド、フック、磁石体などが適用できる。
【0017】
支柱取付部は、フィルタ本体の袋開口部側に設けられた切込み状や一部切断された孔状などの部分であり、扇風機の支柱部周囲を囲むように配置され、ゴムバンド状のギャザや面状ファスナなどを介してその支柱部に密着して取り付けられるようになっている。
【0018】
本実施形態の送風装置用フィルタは、前記フィルタ部材と前記ファンガード背面との面積比を4〜11として前記清浄空間を形成することもできる。これによって、フィルタ面積を広くすることで、扇風機に取り込まれる気流中の綿ほこりなどの浮遊物の除去効果を高めることができる
ここで、フィルタ部材の面積S1とファンガード背面側の面積S2との面積比(S1/S2)が4より少ないと、ファンガード背面側に適正容積の清浄空間を確保することができず、綿埃などの補集効率が極端に低下する傾向が生じる。逆にこの面積比が11を超えて大きくしても、綿埃などの浮遊物の補集効率は大きく変化せず消費電力など増大するような傾向が生じるので好ましくない。
【0019】
本実施形態の送風装置用フィルタは、前記ファン駆動部の駆動状態において前記フィルタ部材が、膨出状(袋状形態)に維持されるように、含浸硬化された樹脂材からなることにも特徴を有している。これによって、扇風機の使用中でもフィルタ部材をその風上側に膨出状に維持することができる。例えば、膨出状にしたフィルタ部材に液状の樹脂材を塗布又はスプレーすることなどにより硬化させ、所定容積を有してファン駆動部を含む清浄空間をファンガードの背面側に確保することができる。
【0020】
なお、フィルタ部材自体を硬質としたり、接着剤などを用いたりすることによって硬化させて膨出部を自立保持できるようにしてもよい。例えば、フィルタ部材を熱可塑性長繊維により構成して、可塑性長繊維相互間を熱架橋型接着剤で結合することにより水平方向に膨出する立体型とすることができる。このような熱可塑性長繊維を用いることにより、加熱によりフィルタ部材を容易に膨出状に成形することができるとともに、成型保持性に優れたものとすることができる。熱可塑性長繊維としては、例えばポリエステル系長繊維を用いるのが好ましい。長繊維は短繊維不織布などに比べて、引張強度等の物理的特性の点で優れており、成型保持性に優れるからである。長繊維は成型性の観点からは剛性の小さいものが好ましい。このような熱可塑性長繊維不織布はスパンボンド法で容易に得ることができる。
【0021】
本実施形態の送風装置用フィルタは、前記フィルタ部材の支持構造が形状記憶合金やアルミ合金材、竹材などからなるフレーム部を備え、前記ファン駆動部の駆動状態においてその袋状形態が維持されるように、前記略袋状形態の不織布や織布がそのフレーム部に被せられて構成されていることにも特徴を有している。これによって、フィルタ部材をその風上側に膨出状に維持するための支持構造を確実に設定することができる。
【0022】
本実施形態の送風装置用フィルタは、前記フィルタ部材に芳香剤成分や抗菌剤成分、イオン発生成分、殺虫剤成分を含む機能性樹脂材が含浸もしくは添着されるようにしてもよい。これら機能性樹脂材をフィルタ部材に付着させることによって、空気中の埃やごみに含まれる有害成分の活性を抑えることができ、優れた空気浄化作用を有する送風装置用フィルタとすることができる。さらにフィルタ部材に機能性樹脂材を介して芳香成分を添着させることによって、フィルタ部材を介して扇風機前方に送風された空気から芳香成分や消臭成分などが拡散し、室内を消臭するとともに快適環境を維持させることができる。ここで消臭性成分としては、例えば活性炭などが挙げられる。さらに、抗菌性成分としては、例えば酸化チタンなどを挙げることができる。これらは、あらかじめフィルタ材の繊維中にこれらの有効成分を含めてもよいし、フィルタ材の製造後、スプレーなどによる塗布法によりフィルタ繊維に含浸付着させてもよい。
【0023】
以下、本発明を実施するための実施例1〜4について図面を参照しながら詳述する。
【実施例1】
【0024】
図1は実施例1の送風装置用フィルタを送風装置である扇風機に装着した斜視図であり、図2はその使用形態を示す説明図である。
実施例1の送風装置用フィルタ10は図示するように、その厚さが約1〜3mmのポリエステルなどの不織布や織布により略袋状に縫製されたフィルタ部材11と、扇風機の支柱部周囲に配置される切込み状に形成された支柱取付部12と、そのフィルタ部材11の袋状の開口縁をファンガード背面側の外周縁に係止させるための帯ベルトや面状ファスナなどからなるフィルタ係止部材13とを備えて構成されている。
【0025】
このような送風装置用フィルタ10が装着される扇風機20は、上部に設けられた軸流式の送風ファンの前後周囲に覆設される略円盤格子状のファンガード21と、このファンガード21の背面に連設され送風ファンを軸支持して駆動させるための駆動モータからなるファン駆動部22と、ファン駆動部22下部に連設されて全体を回動自在に支持する支柱部23と、支柱部23が立設されるスタンド底盤24などを有している。スタンド底盤24には図示しない送風ファンのオン・オフスイッチや、ファン駆動部22の回転速度(風速)、向き(首振り)などを制御するための操作部が備えられている。
【0026】
なお、フィルタ部材11には、扇風機20に取り付けた時にその風上側に膨出した袋状形態を維持させるために、縫製したフィルタ素材の面に部分的に糊剤や樹脂剤を含浸硬化させることによりその形状が形成されるようにしている。扇風機20の支柱部23に取り付けられるフィルタ部材11の支柱取付部12は、フィルタ部材11の袋状開口縁側から所定長さ分切り込んで形成した部分であり、その切り込んだ両辺部分に面状ファスナを配置して、支柱部23への着脱ができるようになっている。
またフィルタ部材11は、そのフィルタ素材として用いるフィルタ素材の種類や厚み、密度、多層構造などの条件を捕捉する浮遊物の粒子径や適用する扇風機の風量などに応じて選択することで適正化することができる。
【0027】
通常サイズの扇風機20における送風装置用フィルタ10はファンガード21の直径(例えば35cm程度)に略等しいサイズを有するもので、その袋状の開口縁はファンガード21の形状に合わせた円形であることが好ましい。フィルタ部材開口縁の下部側には、ファン駆動部22を支持する支柱部23が挿入される支柱取付部12が設けられている(斜め前方向から見た図2(b)を参照)。この支柱取付部12は、袋状開口縁が円形である送風装置用フィルタ10が支柱部23に当たらないように設けられる。
【0028】
フィルタ部材11は、塵埃類を吸着濾過するためのフィルタ素材、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエステル、ウレタン、ナイロン、ポリオレフィン類などの不織布層やスポンジ状の多孔質層などで構成される。なお、これらの空気中の浮遊物質や有害成分を吸着除去するフィルタ層に、芳香成分や、抗菌成分、殺虫成分を含む機能性樹脂剤を添加又は貼着することによって、送風装置用フィルタに所定の芳香効果や殺虫効果などを必要に応じて付加することも可能にしている。
【0029】
なお、上述した機能性樹脂には、例えば、レモン油、ペパーミント油などの芳香成分や、さらには植物性精油など種々の香料成分を含むものが適用でき、これらを溶剤を介して樹脂材に混合して添着してもよい。そして、このように構成された送風装置用フィルタを用いることで、送風ファンの回転によりファンガード21の背面から吸引された空気に芳香成分などを混入させ、室内を香りよくするとともに、空気中に悪臭成分が含まれる場合にはこの悪臭成分を芳香成分により消臭することもできる。
【0030】
また、送風装置用フィルタ10におけるフィルタ部材11の内層又は外層には、上述した抗菌成分や芳香成分に加えて、例えば、光触媒成分や吸着剤、活性炭などを配置させることで、悪臭成分やシックハウス起因物質であるアセトアルデヒドなどを吸着、酸化して無害化させることもできる。
【0031】
そして、送風装置用フィルタ108に埃やごみが吸着され、目詰まりが生じ、送風や浄化機能が低下したときには、ファンガード21の外縁およびファン駆動部22を支持する支柱部23周囲から支柱取付部12の両面状ファスナなどをはがして、フィルタ係止部材13を介して係止された送風装置用フィルタ10をファンガード21の背面から取り外して容易に交換可能とすることができる。
【0032】
図3は、送風装置用フィルタ10を扇風機20に装着して室内の空気中に浮遊する綿埃などを除去する際の原理説明図である。図3に示すように、厚手のフィルタ素材からなるフィルタ部材の面積を増やした場合、綿埃はフィルタ部材で吸着されるが、必要な所定風量を確保することができる。
これに対して、ファンガード背面にフィルタ部材を密着配置した従来の送風装置用フィルタ40では、図4(a)に示すようにフィルタ部材を厚手にした場合、室内に浮遊する綿埃はフィルタ面を通らないが風も透過しない。また、図4(b)に示すようにフィルタ部材を薄手にした場合は、風はフィルタ面を通るが綿埃も同時に透過してしまう。
したがって、扇風機では風量を確保できるがその風力は少ないため、フィルタの面積を増やすことによって、扇風機本来の機能を極力損なうことなく綿埃を除去できる。また、少ない面積のフィルタで強制的に綿埃を除去しようとすると風量以外に風力も必要になるため、騒音や熱が発生してしまい実用性が低下するという欠点もある。
本実施例では、図5(a)に示すように扇風機の風量によって、室内の空気を全体的大きく循環させることができるとともに、騒音や熱の発生も少なくできる。こうして、図5(b)に示すような従来の空気清浄機41などを使用する場合に較べて綿埃の除去範囲を大きくして、室内の空気中から綿埃などの浮遊物や有害成分を効果的に除去することを可能としている。
【実施例2】
【0033】
図6は、送風装置用フィルタが装着された扇風機において、そのフィルタ面積Sと風力Vとの関係を測定した試験方法の模式説明図であり、図7は、フィルタ面積Sと風速Vの測定結果データを示すグラフである。
図6に示すように、実施例2の送風装置用フィルタにおいては、フィルタ面積Sがそれぞれ異なる袋状のフィルタ部材を扇風機のファンガード背面に取り付けるとともに、扇風機の前方中央20cmから高さ5cmの位置に風速計を配置して風速Vを測定した。
なお、使用した扇風機はYUASA製(型番:YT−31V)であり、風速計はMotherTool製(型番:AM−4203)を用いた。
フィルタは、三菱アルミニウム製(レンジフード厚手フィルタ兼用型)を素材として、フィルタ厚み約1mm、ファンガードへの取り付け外径約40cmとなるように、略円筒袋状に縫製したフィルタ部材により測定実験を行った。
【0034】
ここで、フィルタなしの場合、扇風機を弱モードで運転したときの風速は2.0m/s、中モードでは3.3m/s、強モードでは4.2m/sであった。こうして、フィルタ部材を扇風機に取り付けたフィルタ有りの場合、このフィルタ部材のフィルタ面積倍率に対して風速計により測定された風速(弱運転モード).風速(中運転モード)、風速(強運転モード)における風速値が表1及び図7に示される。
【0035】
【表1】

表1及び図7から明らかなように、送風ファンの羽根部面積の約4倍程度の面積でフィルタ部材を設定することによって、フィルタなしの場合の80%以上の風速が得られることがわかる。
【0036】
【表2】

表2は、送風機用フィルタの設計における参照データの例を示すものであり、全体が円柱状に形成される清浄空間の円面積Sと長さLを設定した場合の倍率との関係が示されている(図10参照)。
【実施例3】
【0037】
図8は、膨出状形状を維持する支持構造を備えた実施例3の送風装置用フィルタの斜視図である。(a)は送風装置用フィルタを扇風機に装着した斜視図であり、(b)はその使用形態を示す説明図である。
実施例3の送風装置用フィルタ30は図示するように、袋状に縫製されたフィルタ部材31と、フィルタ部材31を膨出状もしくは円筒状に型崩れすることなく維持するための支持構造を構成するフレーム部32と、扇風機20の支柱部23周囲に配置される切込み状に形成された支柱取付部33と、フィルタ部材31の袋状の開口縁をファンガード21の外周縁に係止させるためのフィルタ係止部材34と、を備えて構成されている。
【0038】
フレーム部32は、例えば、傘骨状や格子状などに形成された形状記憶合金からなる線材で構成され、扇風機20への取り付け時などにフィルタ部材31が変形しても使用状態にはその風上側に膨出した記憶状態に復元して、ファン駆動部22を含み浮遊物の除去された清浄空間をファンガード21の背面側に確保することを可能にしている。
また、傘骨状などに形成されるフレーム部を硬質の樹脂材やアルミ合金、竹材などの線材を組み合わせて構成して、この線材に殺菌性や芳香性を備えた機能性樹脂材を取り付けるようにしてもよい。
このようなフレーム部32は、フィルタ部材の有効面積に応じて、適正な寸法やサイズのものが設定される。例えば、使用する扇風機の送風ファンの面積に対して、約4倍程度の面積比となるように略円筒状となるフレーム部を設定することが望ましい。
【0039】
フィルタ係止部材33は、例えば、その両端に面状ファスナが設けらており、この両端を接合してリング状に形成可能なゴム製の弾力バンドなどであって、形状サイズの異なる既存の扇風機のファンガードにも容易に着脱することができる。これによって、浮遊物が付着して透過風量の減退した場合における送風装置用フィルタ30の交換作業などを容易に行なうことができるようになっている。
【実施例4】
【0040】
図9は、イオン発生機や空気清浄機、冷暖房機などの取り込んだ空気を処理して室内に放出させるための送風装置に取り付けられる実施例4の送風装置用フィルタの説明図である。
実施例4の送風装置用フィルタ40は、略箱型状に形成された送風装置41における空気取り入れ側に取り付けられる除塵用の直方体状フィルタである。送風装置用フィルタ40は図9(a)に示すように、そのフィルタ部材42は、略角形袋状に形成されるとともに送風装置41のファン駆動部43に連結されたファンの周囲に配置され、角形ケース外周縁にフィルタ係止部材を介して背面側から係止され、ファン駆動部43を含む所定の清浄空間を形成させるように構成されている。
【0041】
フィルタ部材42は、その角形の各辺に、骨格となる金属線材や合成樹脂棒材などのフレーム部が配されて、全体が直方体状に保持されるようになっているとともに、このようなフィルタ部材42によって、送風装置41から綺麗な空気が排出される全面積を、送風装置41へ汚れた空気を取り入れる全面積に対して、例えば、1/4〜1/10の範囲に設定することによって、送風装置用フィルタ40による除塵効果を最適化するようにしている。
こうして、送風装置用フィルタ40が装着された送風装置41を、図9(b)に示すように、室内に取り付けてファン駆動部43を駆動させることによって、空気中に浮遊する埃などを送風装置用フィルタ40に効果的に吸着除去できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、扇風機などの送風装置のファンガード及びファン駆動部の背面側に膨出して所定容積の清浄空間を形成させることを要旨とするものであり、これによって高い集塵効果が得られるとともに、送風装置使用中にファン駆動部に綿埃などが直接吸い込まれることがなく、メンテナンス性に優れた送風装置用フィルタを提供できる。こうして、空気抵抗が少なく空気中の浮遊物や有害物質を吸着捕捉できる清浄化機能を既存の扇風機や空気清浄機、冷暖房機、イオン発生機などの送風装置に付加して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 実施例1の送風装置用フィルタ
11 フィルタ部材
12 支柱取付部
13 フィルタ係止部材
20 扇風機(送風装置)
21 ファンガード
22 ファン駆動部
23 支柱部
24 スタンド底盤
30 実施例3の送風装置用フィルタ
31 フィルタ部材
32 フレーム部
33 支柱取付部
34 フィルタ係止部
40 実施例4の送風装置用フィルタ
41 送風装置
42 フィルタ部材
43 ファン駆動部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状や格子状に形成されたファンガード内で回転する送風ファンを直結支持するファン駆動部と、前記ファン駆動部を支持する支柱部とを有した扇風機などの送風装置に取り付けられ、前記ファンガードの背面側から取り込まれてその前方側に送風される空気中の浮遊物や有害成分を除去するフィルタ部材を備えた送風装置用フィルタであって、
前記フィルタ部材が不織布や織布により略袋状に形成されるとともに前記送風装置の支柱部周囲に配置される切込み状の支柱取付部を備え、その袋状の開口縁が前記ファンガードの外周縁にフィルタ係止部材を介して背面側から係止され、前記ファンガードの背面側に膨出して前記ファン駆動部を含む所定の清浄空間を形成させたことを特徴とする送風装置用フィルタ。
【請求項2】
前記フィルタ部材と前記ファンガード背面との面積比を4〜11として前記清浄空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の送風装置用フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ部材が、含浸硬化された樹脂材からなり、前記ファン駆動部の駆動状態においてその袋状形態が維持されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の送風装置用フィルタ。
【請求項4】
前記フィルタ部材が、形状記憶合金やアルミ合金材、竹材などからなるフレーム部を備え、
前記ファン駆動部の駆動状態においてその袋状形態が維持されるように、
前記略袋状形態の不織布や織布がそのフレーム部に被せられて構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の送風装置用フィルタ。
【請求項5】
前記フィルタ部材には、芳香剤成分や抗菌剤成分、イオン発生成分、殺虫剤成分を含む機能性樹脂材が含浸もしくは添着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の送風装置用フィルタ。

【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−64117(P2011−64117A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215076(P2009−215076)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(509260961)株式会社コム・バリュー (1)
【Fターム(参考)】