説明

逆入力荷重検出装置および逆入力荷重記録装置

【課題】車両の走行中に転舵機構に入力される逆入力荷重を検出することができる逆入力荷重検出装置を提供する。
【解決手段】ラックハウジング18に一体的に形成されたマウントブラケット20に、圧電素子35が内蔵されたマウントブッシュ32が装着されている。ECU40は、圧電素子35から発生した電荷に基づいて転舵機構5に入力された逆入力荷重を検出するための逆入力荷重検出回路43と、不揮発性メモリ45と、逆入力荷重検出回路43によって検出された逆入力荷重を不揮発性メモリ45に記憶するためのマイクロコンピュータ44とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転舵機構にタイヤ側から入力されるラック軸方向の荷重(以下、「逆入力荷重」という)を検出するための逆入力荷重検出装置および逆入力荷重を検出して記録する逆入力荷重情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コラムタイプの電動パワーステアリング装置では、電動モータによって転舵機構に付与されるラック軸力(ラック出力)は、電動モータに流れるモータ電流と、電動モータのトルク定数と、電動モータのトルクをステアリングシャフトに伝達するための減速機構の減速比およびステアリングギヤのストロークレシオから算出することができる。
しかしながら、車両の走行時において、転舵機構にタイヤ側から入力されるラック軸方向の荷重(逆入力荷重)は、実測しない限り、算出または推定できない。このため、逆入力荷重により転舵機構が破損した場合、破損部位の破損面積と材料強度から逆入力荷重を推定するか、逆入力荷重によって生じた圧痕の深さから逆入力荷重を推定する方法しかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−257328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、転舵機構が破損した場合、現品から逆入力荷重を推定できるが、実測した値ではないため、その推測値の信頼性は低い。そのため、エンドユーザの車両運転上の取り扱い(事故など)により製品使用を超えた過大な逆入力荷重が転舵機構に負荷されたために転舵機構が破損したのか、製品仕様内の想定された逆入力荷重が転舵機構に負荷されているにも関らず転舵機構が破損したかを、判別することが困難であった。
【0005】
この発明の目的は、車両の走行中に転舵機構に入力される逆入力荷重を検出することができる逆入力荷重検出装置を提供することである。
また、この発明の目的は、車両の走行中に転舵機構に入力される逆入力荷重を検出して記録することができる逆入力荷重記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、転舵機構(5)に入力する逆入力荷重を検出するための逆入力荷重検出装置であって、前記転舵機構の車体への取付部(20)に装着されるマウントブッシュ(32)に設けられた圧力−電気変換素子(35)と、前記圧力−電気変換素子の出力信号に基づいて、前記逆入力荷重を検出する逆入力荷重検出手段(60)と、を含む逆入力荷重検出装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0007】
この発明によれば、車両の走行中に転舵機構に入力される逆入力荷重を検出することができるようになる。これにより、車両の走行中に転舵機構に入力される逆入力荷重を記録することが可能となる。
請求項2記載の発明は、前記マウントブッシュは、筒状の弾性部材(33)と、前記弾性部材の内側に嵌め込まれた金属管(34)と、前記弾性部材と前記金属管との間に設けられた筒状の圧力−電気変換素子(35)とを含む、請求項1に記載の逆入力荷重検出装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の逆入力荷重検出装置と、前記逆入力荷重検出装置によって検出された逆入力荷重を記憶装置(45)に記憶する記憶手段(44)とを含む、逆入力荷重記録装置である。
この発明によれば、車両の走行中に転舵機構に入力される逆入力荷重を検出して記録することができる。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記逆入力荷重検出装置によって検出された逆入力荷重が所定値以上であるか否かを判定する判定手段(70)をさらに備え、前記記憶手段は、前記判定手段によって、前記入力荷重検出手段によって検出された逆入力荷重が所定値以上であると判定されたときにのみ、前記入力荷重検出手段によって検出された逆入力荷重を記憶装置に記憶させるように構成されている、請求項3に記載の逆入力荷重記録装置である。
【0010】
この構成では、前記逆入力荷重検出装置によって検出された逆入力荷重のうち、所定値以上の逆入力荷重のみを、記憶装置に記憶させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係る逆入力荷重検出装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1のII-II線に沿う断面を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図3】図3は、ECUの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】図4は、逆入力荷重検出回路の構成を示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る逆入力荷重検出装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2が連結されたステアリングシャフト3と、ステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪(タイヤ)4を転舵する転舵機構5と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構6とを備えている。
【0013】
ステアリングシャフト3は、直線状に延びている。ステアリングシャフト3は、第1の自在継手7を介して中間軸8に連結されている。中間軸8は、第2の自在継手9を介して転舵機構5(具体的には、後述するピニオン軸12)に連結されている。したがって、ステアリングホイール2は、ステアリングシャフト3、第1の自在継手7、中間軸8および第2の自在継手9を介して、転舵機構5に機械的に連結されている。
【0014】
ステアリングシャフト3は、ステアリングホイール2に連結された入力軸3aと、中間軸8に連結された出力軸3bとを含む。入力軸3aと出力軸3bとは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。すなわち、ステアリングホイール2が回転されると、入力軸3aおよび出力軸3bは、互いに相対回転しつつ同一方向に回転するようになっている。
【0015】
ステアリングシャフト3の周囲には、トルクセンサ11が配置されている。トルクセンサ11は、入力軸3aおよび出力軸3bの相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクを検出する。トルクセンサ11の出力信号は、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)40に入力される。
転舵機構5は、ピニオン軸12と、転舵軸としてのラック軸13とを含む。ラック軸13は、車両の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸13は、車体に固定されるラックハウジング18内に図示しない複数の軸受を介して軸方向に直線往復移動可能に支持されている。ラック軸13の各端部は、それぞれ、ラックハウジング18の対応する端部から突出している。ラック軸13の各端部は、それぞれ、ボールジョイント14を介して、タイロッド15の一方の端部と連結されている。各タイロッド15の他方の端部は、それぞれ、ナックルアーム16を介して、転舵輪3に連結されている。
【0016】
各ボールジョイント14は、それぞれ、筒状のベローズ17内に収容されている。各ベローズ17は、それぞれ、ラックハウジング18の端部からタイロッド15まで延びている。各ベローズ17の一端部および他端部は、それぞれ、ラックハウジング18の端部およびタイロッド15に取り付けられている。
ピニオン軸12は、第2の自在継手9を介して中間軸8に連結されている。ピニオン軸12の先端部には、ピニオン12aが連結されている。ラック軸13の軸方向の中間部には、ピニオン12aに噛み合うラック13aが形成されている。このラック13aとピニオン12aとからからなるラックアンドピニオン機構によって、ステアリングギヤが構成されている。このステアリングギヤによって、ピニオン軸12の回転がラック軸13の軸方向移動に変換される。ラック軸13を軸方向に移動させることによって、転舵輪4を転舵することができる。
【0017】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト3および中間軸8を介して、ピニオン軸12に伝達される。そして、ピニオン軸12の回転は、ステアリングギヤ12a,13aによって、ラック軸13の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪4が転舵される。
操舵補助機構6は、操舵補助用の電動モータ21と、電動モータ21の出力トルクを転舵機構5に伝達するための減速機構22とを含む。電動モータ21は、この実施形態では、三相ブラシレスモータからなる。減速機構22は、ウォーム軸23と、このウォーム軸23に噛み合うウォームホイール24とを含むウォームギヤ機構からなる。ウォーム軸23は電動モータ21によって回転駆動される。また、ウォームホイール24は、ステアリングシャフト3とは同方向に回転可能に連結されている。
【0018】
電動モータ21によってウォーム軸23が回転駆動されると、ウォームホイール24が回転駆動され、ステアリングシャフト3が回転する。そして、ステアリングシャフト3の回転は、中間軸8を介してピニオン軸12に伝達される。ピニオン軸12の回転は、ラック軸13の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪4が転舵される。すなわち、電動モータ21によって、ウォーム軸23を回転駆動することによって、転舵輪4が転舵されるようになっている。
【0019】
電動モータ21のロータの回転角(ロータ回転角)は、レゾルバ等の回転角センサ25によって検出される。回転角センサ25の出力信号は、ECU40に入力される。ECU40には、車速センサ26の出力信号も入力される。電動モータ21は、ECU40によって制御される。ECU40は、トルクセンサ11の出力信号に基づいて演算される操舵トルク、車速センサ26によって検出される車速、回転角センサ25によって検出されるロータ回転角等に基づいて、電動モータ21を制御する。
【0020】
ラックハウジング18には、ラックハウジング18を車体に取り付けるための左右一対のマウントブラケット19、20(転舵機構5の車体への取付部)が一体的に形成されている。各マウントブラケット19、20は、円筒状である。一方のマウントブラケット19には、円筒状の通常のマウントブッシュ31が圧入された状態で装着されている。図1には図示していないが、マウントブッシュ31に上方から挿通されたボルトが、車体フレームにねじ込まれることにより、マウントブラケット19が車体フレームにボルト止めされている。
【0021】
他方のマウントブラケット20には、図2に示すように、圧電素子35が内蔵されたマウントブッシュ32が装着されている。具体的には、マウントブッシュ32をマウントブラケット20に圧入することにより、マウントブッシュ32がマウントブラケット20に取り付けられている。そして、マウントブッシュ32に上方から挿通されたボルト39が、車体フレーム(図示略)にねじ込まれることにより、マウントブラケット20が車体フレームにボルト止めされている。
【0022】
マウントブッシュ32は、円筒状の弾性部材33と、弾性部材33の内側に嵌め込まれた金属管34と、弾性部材33と金属管34の間にそれらに挟まれた状態で設けられた円筒状の圧電素子35とを含んでいる。弾性部材33は、例えばゴム製であり、筒状部と、筒状部の上下端部に設けられたフランジ部とからなる。弾性部材33の筒状部の内周面の上下方向の長さ中間部には、凹部33aが全周にわたって形成されている。
【0023】
圧電素子35は、弾性部材33の凹部33a内に嵌め込まれた状態で、弾性部材33に固定されている。金属管34は、弾性部材33のフランジ部および圧電素子35の内側に嵌め込まれた状態で、弾性部材33および圧電素子35に固定されている。
圧電素子35は、一対の電極35a,35bを有している。各電極35a,35bに接続されたリード線36、37は、弾性部材33の内部を通って、弾性部材33のフランジ部から引き出されている。リード線36、37は、ECU40に接続されている。
【0024】
圧電素子35は、それに加えられた圧力に応じた電荷を発生するものであり、転舵機構5にタイヤ側から入力されるラック軸方向の荷重(逆入力荷重)を検出するために設けられている。つまり、逆入力荷重が転舵機構5に入力されると、ラック軸位置がストロークエンドにある場合には、その逆入力荷重がラックハウジング18の端面からラックハウジング18に伝わる。一方、ラック軸位置がストロークエンド以外にある場合には、転舵機構5に入力された逆入力荷重は、ステアリングギヤを支持するベアリングからラックハウジング18に伝わる。したがって、転舵機構5に入力された逆入力荷重は、最終的には、ラックハウジング18を車体に取り付けるためのマウントブラケット19に圧入されたマウントブッシュ32に伝えられる。マウントブッシュ32に伝えられた逆入力荷重は、マウントブッシュ32に内蔵された圧電素子35に伝わる。
【0025】
逆入力荷重が転舵機構5に入力された場合には、圧電素子35はその逆入力荷重の大きさに応じた電荷を発生する。この電荷がリード線36,37を介してECU40に入力される。ECU40は、入力された電荷に基づいて、転舵機構5に入力された逆入力荷重を検出し、検出した逆入力荷重が所定値以上であるときに、その逆入力荷重を不揮発性メモリに記憶する。
【0026】
図3は、ECUの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
ECU40は、電動モータ21を制御するためのマイクロコンピュータ(モータ制御用マイクロコンピュータ)41と、マイクロコンピュータ41によって制御され、電動モータ21に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)42と、圧電素子35から発生した電荷に基づいて転舵機構5に入力された逆入力荷重を検出するための逆入力荷重検出回路43と、不揮発性メモリ45と、逆入力荷重検出回路43によって検出された逆入力荷重を不揮発性メモリ45に記憶するためのマイクロコンピュータ(逆入力荷重記録用マイクロコンピュータ)44とを備えている。なお、駆動回路42から電動モータ21に電力を供給する電力供給線には、電動モータ21に流れる電流を検出するための電流検出器27が設けられている。
【0027】
マイクロコンピュータ41と駆動回路42とによって、モータ制御装置が構成されている。また、圧電素子35と逆入力荷重検出回路43とによって、逆入力荷重検出装置が構成されている。また、逆入力荷重検出装置と、マイクロコンピュータ44と、不揮発性メモリ45とによって、逆入力荷重記録装置が構成されている。各マイクロコンピュータ41,44は、それぞれCPUおよびメモリ(ROM,RAMなど)を備えている。
【0028】
モータ制御装置について説明する。マイクロコンピュータ41には、車速センサ26の出力信号、トルクセンサ11の出力信号、回転角センサ25の出力信号および電流検出器27の出力信号が入力している。マイクロコンピュータ41は、車速センサ26の出力信号に基づいて検出される車速およびトルクセンサ11の出力信号に基づいて検出される操舵トルクに応じたモータトルク(アシストトルク)を電動モータ21から発生させるための目標電流値を設定し、電流検出器27の出力信号に基づいて検出されるモータ電流が目標電流値に等しくなるように、駆動回路42を制御する。これにより、操舵状況および車速に応じた適切な操舵補助が実現される。
【0029】
逆入力荷重記録装置について説明する。
図4は、逆入力荷重検出回路の構成を示す電気回路図である。
逆入力荷重検出回路43は、フィルタ回路50と、増幅回路60と、比較回路70と、論理レベル変換回路80とから構成されている。フィルタ回路50は、圧電素子35の出力信号に含まれているノイズを除去する。増幅回路60は、フィルタ回路50の出力を増幅することにより、圧電素子35が発生した電荷Q(F)(Fは圧電素子35に加えられる荷重F[N]を表す)に応じた電圧V(F)を、逆入力荷重検出信号として出力する。
【0030】
比較回路70は、増幅回路60の出力電圧V(F)を基準電圧V0と比較し、その比較結果に応じたレベルの出力信号を出力する。論理レベル変換回路80は、比較回路70から出力される信号に基づいて、増幅回路60の出力電圧V(F)が基準電圧V0以上であるときに、割り込み信号を出力する。
フィルタ回路50は、圧電素子35の正電極に一端が接続された抵抗51と、この抵抗51の他端と圧電素子35の負電極との間に接続されたコンデンサ52とから構成されている。圧電素子35の負電極は接地されている。
【0031】
増幅回路60は、フィルタ回路50の出力を増幅して、圧電素子35(転舵機構5)に加えられた逆入力荷重に応じた電圧V(F)を出力するオペアンプ61を含んでいる。オペアンプ61の正極入力端子は、フィルタ回路50内のコンデンサ52と抵抗51との接続点に接続されている。オペアンプ61の負極入力端子は、抵抗62を介して接地されている。オペアンプ61の出力端子は、帰還抵抗63を介してオペアンプ61の負極入力端子に接続されている。
【0032】
また、増幅回路60は、オペアンプ61の正極入力端子と接地との間に接続されたツェナーダイオード54aと、オペアンプ61の正極入力端子とオペアンプ61の正側電源端子との間に接続されたツェナーダイオード54bとからなる過電圧防止回路54を含んでいる。この過電圧防止回路54によって、オペアンプ61に過電圧がかかるのを防止している。
【0033】
オペアンプ61の出力電圧V(F)は、逆入力荷重検出信号として、マイクロコンピュータ44に入力する。また、オペアンプ61の出力電圧V(F)は、比較回路70に与えられるとともに、帰還抵抗63を介してオペアンプ61の負極入力端子に帰還される。
比較回路70は、オペアンプ71を含んでいる。オペアンプ71の負極入力端子には、増幅回路60の出力電圧V(F)が入力する。オペアンプ71の正極入力端子には、基準電圧V0が入力する。オペアンプ71は、負極入力端子に入力され電圧V(F)が正極入力端子に入力されている基準電圧V0以上のときにLレベルの出力信号を出力し、電圧V(F)が基準電圧V0より小さいときに、Hレベルの出力信号を出力する。
【0034】
論理レベル変換回路80は、信号反転回路として機能する。論理レベル変換回路80は、スイッチング素子としてのトランジスタ81を含んでいる。トランジスタ81のベースは、比較回路70の出力端子に抵抗82を介して接続されている。また、トランジスタ81のベースは、ツェナーダイオード83を介して接地されている。トランジスタ81のコレクタは、抵抗84を介して直流電源(+V)に接続されている。トランジスタ81のエミッタは、接地されている。
【0035】
トランジスタ81のコレクタと抵抗84との接続点の電圧が、論理レベル変換回路80の出力信号としてマイクロコンピュータ44に入力される。比較回路70の出力信号がLレベルのときには、トランジスタ81がオフとなるため、論理レベル変換回路80の出力信号はHレベルとなる。一方、比較回路70の出力信号がHレベルのときには、トランジスタ81がオフとなるため、論理レベル変換回路80の出力信号はLレベルとなる。
【0036】
したがって、増幅回路60の出力電圧V(F)が基準電圧V0以上となり、比較回路70の出力信号がLレベルになると、論理レベル変換回路80の出力信号はHレベルとなる。このHレベルの出力信号が、割り込み信号として、マイクロコンピュータ44に入力される。
マイクロコンピュータ44は、逆入力荷重検出回路43内の論理レベル変換回路80から割り込み信号が入力されたときに、逆入力荷重検出回路43内の増幅回路60から入力されている逆入力荷重検出信号V(F)を取り込む。そして、予め設定されている逆入力荷重検出信号値V(F)[V]と逆入力荷重F[N]との関係を表す関数またはマップに基づいて、取り込んだ逆入力荷重検出信号V(F)をそれに対応した逆入力荷重F[N]に変換し、得られた逆入力荷重F[N]を不揮発性メモリ45に記憶する。
【0037】
逆入力荷重検出信号値V(F)[V]と逆入力荷重F[N]との関係は、例えば、圧電素子35に加わる荷重F[N]に対する圧電素子35から発生する電荷Q(N)[pC]の特性と、圧電素子35から発生する電荷Q(N)[pC]と増幅回路60の出力電圧V(F)[v]との関係とに基づいて、求められる。
このようにして、逆入力荷重検出回路43によって検出される逆入力荷重検出信号V(F)に対応する逆入力荷重Fのうち、基準電圧V0以上の逆入力荷重検出信号V(F)に対応する逆入力荷重Fのみが、不揮発メモリ45に記憶されていく。マイクロコンピュータ44は、不揮発メモリ45に逆入力荷重Fを記憶する際には、逆入力荷重Fに関連させて日時データを記憶することが好ましい。
【0038】
なお、マイクロコンピュータ44は、取り込んだ逆入力荷重検出信号値V(F)を逆入力荷重Fに変換することなく、取り込んだ逆入力荷重検出信号値V(F)をそのまま不揮発メモリ45に記憶するようにしてもよい。
不揮発性メモリ45に記憶された逆入力荷重検出信号V(F)またはそれに対応した逆入力荷重Fは、必要なときに、読み出すことが可能となっている。
【0039】
この実施形態によれば、基準電圧V0以上の逆入力荷重検出信号V(F)またはそれに対応した逆入力荷重Fを、逆入力荷重履歴データとして不揮発性メモリ45に記憶していくことができる。つまり、転舵機構5に入力した逆入力荷重のうち、所定値以上の逆入力荷重の実測値を記録していくことができる。このため、転舵機構5が破損した場合に、不揮発性メモリ45から逆入力荷重履歴データを読み出して、転舵機構5が破損した原因の解明のために利用することができる。例えば、不揮発性メモリ45から読み出された逆入力荷重履歴データに基づいて、エンドユーザの車両運転上の取り扱いにより製品使用を超えた過大な逆入力荷重が転舵機構に負荷されたために転舵機構が破損したのか、製品仕様内の想定された逆入力荷重が転舵機構に負荷されているにも関らず転舵機構が破損したかを、正確に判定できるようになる。
【0040】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、逆入力荷重検出回路43によって検出された逆入力荷重を、モータ制御用のマイクロコンピュータ41とは別のマイクロコンピュータ44によって、不揮発性メモリ45に記憶しているが、逆入力荷重検出回路43によって検出された逆入力荷重をモータ制御用のマイクロコンピュータ41によって、不揮発性メモリ45に記憶するようにしてもよい。
【0041】
また、圧電素子35以外の圧力-電気変換素子を、圧電素子35の代わりに用いてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
5…転舵機構、32…マウントブッシュ、33…弾性部材、34…金属管、35…圧電素子、40…ECU、43…逆入力荷重検出回路、44…マイクロコンピュータ、45…不揮発性メモリ、50…フィルタ回路、60…増幅回路、70…比較回路、80…論理レベル変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転舵機構に入力する逆入力荷重を検出するための逆入力荷重検出装置であって、
前記転舵機構の車体への取付部に装着されるマウントブッシュに設けられた圧力−電気変換素子と、
前記圧力−電気変換素子の出力信号に基づいて、前記逆入力荷重を検出する逆入力荷重検出手段と、を含む逆入力荷重検出装置。
【請求項2】
前記マウントブッシュは、筒状の弾性部材と、前記弾性部材の内側に嵌め込まれた金属管と、前記弾性部材と前記金属管との間に設けられた筒状の圧力−電気変換素子とを含む、請求項1に記載の逆入力荷重検出装置。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の逆入力荷重検出装置と、
前記逆入力荷重検出装置によって検出された逆入力荷重を記憶装置に記憶する記憶手段とを含む、逆入力荷重記録装置。
【請求項4】
前記逆入力荷重検出装置によって検出された逆入力荷重が所定値以上であるか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記記憶手段は、前記判定手段によって、前記入力荷重検出手段によって検出された逆入力荷重が所定値以上であると判定されたときにのみ、前記入力荷重検出手段によって検出された逆入力荷重を記憶装置に記憶させるように構成されている、請求項3に記載の逆入力荷重記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50350(P2013−50350A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187701(P2011−187701)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】