説明

逆止弁

【課題】付勢手段によって弁座に付勢される弁体を弾性材料から形成した場合でもシール性が高い逆止弁を提供すること。
【解決手段】逆止弁14は、上端開口225bが設けられた弁座111と、弁座111に当接して上端開口225bを塞ぐ弁体112と、弁体112を弁座111に付勢する圧縮コイルバネ113を備える。弁体112は、閉鎖部114と、上端開口225bの周りに当接する円環状突部115を備える。円環状突部115は、三角形状の径方向断面を有しており、弁座111と内周側傾斜面115bとが成す内周側当接角αが、弁座111と外周側傾斜面115cとが成す外周側当接角βよりも小さくなっている。この結果、弁体112が弁座111に付勢される際に、円環状突部115の変形を、頂部115aが外周側にずれる方向に変形するように規定できるので、弁体112によるシール性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置などの流路の途中に配置され、流体の流出口が設けられた弁座に流体の流出方向の下流側から弁体が当接して流出口を塞ぐ逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流出口が設けられた弁座に流体の流出方向の下流側から弁体が当接して流出口を塞ぐ逆止弁は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1では、弁体は、弁座に対向する閉鎖部と、閉鎖部から弁座に向けて突出して流出口の周りに当接する環状突部とを備えており、付勢手段によって弁座に付勢されている。弁座は弾性変形可能となっており、弁体が流出口を封鎖している状態では、環状突部が弁座を変形させて、弁体と弁座とを密着させている。同文献の逆止弁では、付勢手段による付勢力で流出口を塞ぐので、弁体を弁座に付勢する荷重(付勢力)を設定することが容易である。また、環状突部によって流出口の周囲を囲んだ状態で流出口を塞ぐことができるので、弁体による流出口のシール性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、弁座を弾性変形可能に構成するために、弁座が弁体と対向する面に弾性変形可能なシートを備えており、弁座の構成が複雑なものとなっている。
【0005】
ここで、弁座に設けられたシートを省略することができれば、弁座の構成が簡易なものとなるので、流路に逆止弁を設けることが容易になる。この場合に、弁体の側を弾性変形可能に形成することによって弁座からシートを省略することが考えられるが、弁体を弾性材料から構成すれば、付勢手段によって弁体が弁座に付勢される際に、付勢力によって圧縮変形させられる環状突部の形状が定まらないので、そのシール性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、付勢手段によって弁座に付勢される弁体を弾性材料から形成した場合でもシール性が高い逆止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の逆止弁は、
流体の流出口が設けられた弁座と、
前記弁座に流体の流出方向の下流側から当接して前記流出口を塞いでいる弾性材料からなる弁体と、
流体の流出方向において前記弁体の下流側から当該弁体に当接して、前記弁体を所定の付勢力で前記弁座に付勢する付勢手段とを有し、
前記弁体は、前記弁座に対向する閉鎖部と、この閉鎖部から前記弁座に向けて突出して前記流出口の周りに当接する環状突部とを備え、
前記環状突部は、頂部に対して径方向内側に連続する内周側傾斜面、および、前記頂部に対して径方向外側に連続する外周側傾斜面が全周にわたって形成されており、
前記弁座と前記内周側傾斜面とが成す内周側当接角が、前記弁座と前記外周側傾斜面とが成す外周側当接角よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、逆止弁は、弾性材料からなる弁体自体の弾性力と付勢手段による付勢力で流出口を塞ぐので、弁体による流出口のシール性が高い。また、付勢手段による付勢力を利用して流出口を塞いでいるので、弁体自体の弾性力のみによって流出口を塞ぐ場合と比較して、弁体の形状のばらつきによって流出口の開閉動作が受ける影響を低減できる。さらに、付勢手段によって弁体を弁座に付勢するので、弁体に所定の荷重(付勢力)を付与することが容易となる。また、環状突部によって流出口の周囲を囲んだ状態で流出口を塞ぐことができるので、弁体による流出口のシール性が高い。
【0009】
さらに、本発明によれば、環状突部は、頂部に対して内周側傾斜面および外周側傾斜面が形成されており、弁座と内周側傾斜面とが成す内周側当接角が、弁座と外周側傾斜面とが成す外周側当接角よりも小さく形成されている。この結果、付勢手段によって弁体が弁座に付勢される際に、付勢力によって圧縮変形させられる環状突部の変形を、頂部が外周側にずれる方向に変形するように規定できる。従って、付勢力によって圧縮変形させられる環状突部の形状が定まらない場合と比較して、弁体による流出口のシール性が向上する。また、弁座と内周側傾斜面とが成す内周側当接角が、弁座と外周側傾斜面とが成す外周側当接角よりも小さいので、付勢力によって流出口の閉鎖状態を確実なものとすることができ、弁体を開放しようとする流体の圧力に対しては、弁体をスムーズに移動させることができる。
【0010】
この場合において、前記内周側当接角は、45°未満とすることが望ましい。このようにすれば、流体の圧力が、環状突部を外側に変形させる方向に働くことを抑制できるので、流出口の閉鎖状態を確実なものとすることができる。
【0011】
本発明において、前記弁体は、前記閉鎖部の前記弁座とは反対側に位置する面に、前記付勢手段の当接位置を位置決めするための位置決め部を備えていることが望ましい。このようにすれば、付勢手段により閉鎖部に付与される荷重(付勢力)の位置や方向を規定できる。また、弁体が付勢手段による付勢方向から外れた方向にふらつくことを抑制できるので、シール性を向上させることができる。
【0012】
この場合において、前記付勢手段は、前記流出口の開口よりも大径のコイルバネであり、前記コイルバネは、前記環状突部と同軸上に配置されていることが望ましい。このようにすれば、コイルバネによって、弁体において弁座と当接する部分に均一に荷重を付与することができるので、シール性が向上する。
【0013】
また、この場合において、前記コイルバネの一方の円形端部は、前記閉鎖部の前記弁座とは反対側に位置する面において、前記環状突部と対応する位置に当接していることが望ましい。このようにすれば、コイルバネによって、閉鎖部において環状突部が形成されている部分に荷重を付与することができるので、シール性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、逆止弁は、弾性材料からなる弁体自体の弾性力と付勢手段による付勢力で流出口を塞ぐので、弁体による流出口のシール性が高い。また、付勢手段による付勢力を利用して流出口を塞いでいるので、弁体自体の弾性力のみによって流出口を塞ぐ場合と比較して、弁体の形状のばらつきによって流出口の開閉動作が受ける影響を低減できる。さらに、付勢手段によって弁体を弁座に付勢するので、弁体に所定の荷重(付勢力)を付与することが容易となる。また、環状突部によって流出口の周囲を囲んだ状態で流出口を塞ぐことができるので、弁体による流出口のシール性が高い。
【0015】
さらに、本発明によれば、環状突部は、頂部に対して内周側傾斜面および外周側傾斜面が形成されており、弁座と内周側傾斜面とが成す内周側当接角が、弁座と外周側傾斜面とが成す外周側当接角よりも小さく形成されている。この結果、付勢手段によって弁体が弁座に付勢される際に、付勢力によって圧縮変形させられる環状突部の変形を、頂部が外周側にずれる方向に変形するように規定できる。従って、付勢力によって圧縮変形させられる環状突部の形状が定まらない場合と比較して、弁体による流出口のシール性が向上する。また、弁座と内周側傾斜面とが成す内周側当接角が、弁座と外周側傾斜面とが成す外周側当接角よりも小さいので、付勢力によって流出口の閉鎖状態を確実なものとすることができ、弁体を開放しようとする流体の圧力に対しては、弁体をスムーズに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した容積型ポンプの外観斜視図である。
【図2】図1の容積型ポンプの縦断面図である。
【図3】図1の容積型ポンプの分解斜視図である。
【図4】移動体が上昇位置にある状態の電磁式アクチュエータ周辺の部分断面図である。
【図5】図4のA−A´線における電磁式アクチュエータの断面図である。
【図6】電磁式アクチュエータの駆動制御および動作を説明するための説明図である。
【図7】移動体が下降位置にある状態の電磁式アクチュエータ周辺の部分断面図である。
【図8】電磁式アクチュエータへの励磁電流の電流値を示すタイムチャートである。
【図9】移動体の位置と推力との関係を検証したグラフである。
【図10】ダイヤフラムの反力を考慮した状態における移動体の位置と推力との関係を検証したグラフである。
【図11】弁室周辺の部分断面図である。
【図12】流入側流路を閉じている状態のアクティブバルブ周辺の部分断面図である。
【図13】アクティブバルブの弁体に働く力を説明するための説明図である。
【図14】流入側流路を開いている状態のアクティブバルブ周辺の部分断面図である。
【図15】変形例の逆止弁の弁体と付勢手段を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照しながら、本発明に係る逆止弁を適用した容積型ポンプを説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した容積型ポンプの外観斜視図である。図2は図1の容積型ポンプの縦断面図である。容積型ポンプ1は、ポンプユニット2と、このポンプユニット2の下方に並列に配置された電磁式アクチュエータ3およびアクティブバルブ4を備えている。なお、以下の説明では、電磁式アクチュエータ3およびアクティブバルブ4が並んでいる方向を装置幅方向(図1では左右方向として示す)とし、この装置幅方向および上下方向と直交する方向を装置前後方向とする。電磁式アクチュエータ3は装置幅方向の左側に配置されており、アクティブバルブ4は装置幅方向の右側に配置されている。
【0019】
ポンプユニット2の左側部分には上方に突出する流出管5が設けられており、流出管5の上端開口は流体出口5aとなっている。アクティブバルブ4の下方には、流入管6が設けられており、流入管6の下端開口は流体入口6aとなっている。
【0020】
図2に示すように、ポンプユニット2の内部にはポンプ室8が形成されている。流体入口6aとポンプ室8の間には流入側流路(上流側流路)9が形成されており、流入側流路9には、この流入側流路9を開閉するアクティブバルブ4が配置されている。ポンプ室8と流体出口5aの間には流出側流路(下流側流路)10が形成されている。流出側流路10には流体の逆流を防止するための逆止弁11が配置されている。なお、本実施形態では、逆止弁11はアクティブバルブ4に対してパッシブバルブとして機能している。
【0021】
ポンプ室8の底面はダイヤフラム(可動体)12によって規定されており、電磁式アクチュエータ3によってダイヤフラム12を往復動させることによりポンプ室8の容積が変化する。すなわち、容積型ポンプ1は、アクティブバルブ4を開けてポンプ室8の容積を拡大することによって流体入口6aからポンプ室8に流体を吸引し、アクティブバルブ4を閉めてポンプ室8の容積を縮小することによってポンプ室8に吸引した流体を流体出口5aから吐出する。
【0022】
(ポンプユニット)
図3は容積型ポンプ1の分解斜視図である。図2、図3を参照して、ポンプユニット2を説明する。ポンプユニット2は、上側ハウジング21と、上側ハウジング21の下方に配置された下側ハウジング22を有している。
【0023】
上側ハウジング21は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂から形成されている。流出管5は、上側ハウジング21の上端面の左側部分から上方に突出している。上側ハウジング21の下端面の左側部分には、図2に示すように、上方に窪む円形の第1凹部211が設けられている。第1凹部211の天井面の中央部分には流出管5に連通する第1流路212の下端開口212aが露出している。
【0024】
下側ハウジング22は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂から形成されている。上端面の左側部分には上側ハウジング21の第1凹部211と嵌合する円形の上側突出部221が形成されている。上側突出部221の中央部分には、下方に窪む円形の第2凹部222が形成されている。上側突出部221は第1凹部211に嵌め込まれており、上側ハウジング21の第1凹部211と下側ハウジング22の第2凹部222によって流出管5と同軸に弁室13が形成されている。上側突出部221の外周面と第1凹部211の内周面との間にはOリング14が配置されている。弁室13内には逆止弁(パッシブバルブ)11が構成されている。
【0025】
下側ハウジング22の左側部分の下面には、円形の下側突出部223が形成されている。下側突出部223の中心には、上方に窪む円形の第3凹部224が設けられている。第3凹部224の天井面224aは中心部分に向かって上方に傾斜するテーパー面となっており、中心部分には、弁室13に連通している第2流路225の下端開口225aが露出している。第2流路225の上端開口225(流出口)bは弁室13の円形底面13aの中央部分に露出している。第3凹部224の天井面224aおよび内周側面は、ポンプ室8の天井面および内周面を規定している。ポンプ室8、第2流路225、弁室13、第1流路212、および流出管5は同軸上に形成されており、第2流路225、弁室13、第1流路212、流出管5によって流出側流路10が構成されている。
【0026】
下側突出部223の下方にはポンプ室8の底面を規定するダイヤフラム12が配置されている。ダイヤフラム12は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などからなるゴム製の弾性体であり、上方から見たときに円形の平面形状を備えている。ダイヤフラム12は、中央部分と外周縁部分が厚肉に形成されており、中央部分と外周縁部分との間には、上方に膨らむように湾曲する一定厚さの連結膜部分を備えている。ダイヤフラム12の中央部分の下側部分には、電磁式アクチュエータ3を接続する接続部12aが設けられている。
【0027】
電磁式アクチュエータ3は、下側突出部223の外周側を利用して下側ハウジング22に取り付けられている。電磁式アクチュエータ3が取り付けられると、ダイヤフラム12は、その外周縁部分が、下側突出部223の円環状下端面と、電磁式アクチュエータ3との間に挟まれた状態となり、固定される。
【0028】
下側ハウジング22の右側部分の下面には、上方に窪む円形の第4凹部226が形成されている。第4凹部226は下側から、扁平な大径部226aと、大径部分よりも小径の小径部226bを備えている。第4凹部226にはアクティブバルブ4の上端側部分がOリング15を介して挿入されている。
【0029】
アクティブバルブ4を第4凹部226に挿入した状態では小径部226bの上端部分226cには空間が形成されるようになっており、この上端部分226cとポンプ室8の間には、これらの間を連通させる第3流路227が形成されている。第3流路227の右端開口は小径部226bの上端部分226cの内周側面に露出しており、第3流路227の左端開口は、ポンプ室8の天井面および第2流路225の下端部分に露出している。
【0030】
(電磁式アクチュエータ)
図3〜図5を参照して電磁式アクチュエータ3を説明する。図4は移動体33が上昇位置にある状態の電磁式アクチュエータ3の周辺の部分断面図である。図5は図4のA−A´線における電磁式アクチュエータ3の断面図である。
【0031】
電磁式アクチュエータ3は、下端が開口となっている箱型の上側ケース31と、上側ケース31の下端の開口を閉鎖するように取り付けられている下側ケース32を有している。上側ケース31および下側ケース32の内部には、上下方向に直動可能な移動体33と、この移動体33を移動させるための固定体34が配置されている。移動体33はその上端部分がダイヤフラム12の接続部12aに固定されており、移動体33が上下方向に往復移動すると、ダイヤフラム12は上下方向に往復動してポンプ室8の容積を変化させる。固定体34は、装置幅方向において移動体33の左側に配置されている第1固定体35と、右側に配置されている第2固定体36を備えている。
【0032】
移動体33は、図3に示すように、側面がこの移動体33の移動方向と平行になるように配置された直方体形状のマグネット331を備えている。マグネット331は2極着磁されており、装置幅方向を向いている左右の側面が異なる極に着磁された磁極面331a、331bとなっている。本実施形態では、磁極面331aがS極に着磁され、磁極面331bがN極に着磁されている(図6参照)。また、移動体33は、マグネット331の磁極面331a、331bを除く外周面部分を保持しているマグネットホルダ332を備えている。
【0033】
マグネットホルダ332は、マグネット331の前後の側面を装置前後方向から保持している前後の縦枠部332aと、前後の縦枠部332aの上端部を連結している上側枠部332bと、前後の縦枠部332aの下端部を連結している下側枠部332cを備えている。前後の縦枠部332aには、それぞれ、磁極面331a、331bと平行に突出するガイド突部333、333が設けられている。各ガイド突部333は直方体形状をしており、上下方向に所定の長さ寸法を備えている。上側枠部332bには、ダイヤフラム12との接続部334が上方に突出するように設けられている。下側枠部332cには、下方に突出するガイド軸335が設けられている。
【0034】
第1固定体35および第2固定体36は、それぞれ、ヨーク37、37およびヨーク37、37に巻き回されている駆動コイル38、38を備えている。図5に示すように、第1固定体35は、その駆動コイル38が移動体33の磁極面331aと一定のギャップを開けて対向するように配置されており、第2固定体36は、その駆動コイル38が磁極面331bと一定のギャップを開けて対向するように配置されている。
【0035】
図4に示すように、各ヨーク37、37は、それぞれ、上下方向に延びる軸部371と、軸部371の上端部分から内側に突出している第1突部372、372、および、軸部371の下端部分から内側に突出している第2突部373、373を備えている。
【0036】
各駆動コイル38、38は、ヨーク37、37における第1突部372、372と第2突部373、373との間の部位に、移動体33の移動方向(上下方向)と直交する方向に巻き回されている。図5に示すように、各駆動コイル38、38は、移動体33の移動方向と直交する平面による断面形状が長方形となっており、断面形状の一方の長辺となっている外周面部分38a、38aがマグネット331の各磁極面331a、331bと対向している。
【0037】
ここで、移動体33のマグネット331の装置前後方向の幅寸法は、外周面部分38a、38aの装置前後方向の幅寸法よりも短く設定されている。また、移動体33のマグネット331の上下方向の長さ寸法aは、各ヨーク37、37における第1突部372、372と第2突部373、373との間の長さ寸法bよりも短い長さ寸法とされている(図4参照)。マグネット331の長さ寸法aは、上下方向において所定の移動範囲を移動体33が移動した際、マグネット331と第1突部372、372、第2突部373、373との間で磁気的な吸引力が働かない、または磁気的な吸引力の影響が小さい領域を有するようになっている。具体的には、図9に示すほぼ直線の範囲(変位量が−0.3mm〜0.2mmあたり)である。
【0038】
さらに、図3に示すように、各ヨーク37、37の下端部分は下側ケース32によって保持されており、各ヨーク37、37の上端部分は枠状のスペーサ39によって支持されている。これにより、第1固定体35の駆動コイル38と第2固定体36の駆動コイル38は、移動体33の移動方向に沿って一定の間隔で維持されている。また、ヨーク37、37において、第1突部372、372および第2突部373、373の移動体33側の端は、駆動コイル38、38の外周面部分38a、38aよりも移動体33の側に位置しており、軸部371、371から移動体33の側に突出する第1突部372、372の突出量と第2突部373、373の突出量は同一になっている。
【0039】
下側ケース32は、扁平な直方体形状をしており、上端面にヨーク37、37の保持部となる一対の凹部322、322が形成されている。装置幅方向における一対の凹部322、322の間には装置前後方向に延びる溝323が形成されており、溝323の中央部分には円形の貫通孔324が形成されている。貫通孔324にはマグネットホルダ332のガイド軸335が挿入されている。装置幅方向における一対の凹部322、322の外側には上方に突出する一対の係合突起325、325が形成されている。
【0040】
上側ケース31は、図3に示すように、矩形の上板311と、上板311の四方の縁から下方に延びる4枚の側板312〜315を備えている。上板311には、その上端面から上方の突出する矩形の接続部316が設けられている。接続部316の中央部分には貫通孔316aが形成されており、この貫通孔316aの上端部分には外側に広がる段部316bが設けられている。下側ハウジング22に電磁式アクチュエータ3が取り付けられた状態では、図4に示すように、段部316bの内側に下側ハウジング22の下側突出部223が挿入され、下側突出部223の円環状下端面と段部316bの円環状端面との間にダイヤフラム12の周縁部分が挟み込まれた状態となる。
【0041】
装置幅方向で平行に延びている2枚の側板312、314には、上下方向に延びる係合凹部317、317が形成されている。上側ケース31が下側ケース32に被せられると、一対の係合突起325、325が側板312、314の係合凹部317、317と係合して上側ケース31を下側ケース32に固定する。
【0042】
装置前後方向で平行に延びている2枚の側板313、315には、装置幅方向の中央部分の下端縁から一定の幅で上方に延びるガイド溝318、318が形成されている。ガイド溝318、318は、装置幅方向において第1固定体35と第2固定体36の中央に位置している。上側ケース31が下側ケース32に被せられる際には、図1に示すように、上側ケース31の前後のガイド溝318、318に、移動体33の前後のガイド突部333、333が挿入される。ここで、ガイド突部333、333およびガイド溝318、318は、移動体33を、各磁極面331a、331bと各駆動コイル38、38の間のギャップを一定に維持した状態で上下方向に案内するガイド機構40、40を構成しており、移動体33は、ガイド機構40、40によって、ポンプ室8、第2流路225、弁室13、第1流路212および流出管5の軸線上を案内される。
【0043】
各ガイド溝318、318の上端縁318a、318aは、移動体33の移動範囲の上限を規定している。すなわち、移動体33が図4に示す上昇位置(第1位置)33Aよりも上方に移動しようとすると、各ガイド溝318、318の上端縁318a、318aに各ガイド突部333、333が当接して、その移動を阻止する。上昇位置33Aでは、移動体33のマグネット331の上端面331cは、各ヨーク37、37の第1突部372、372の上端面よりも下方に位置している。また、移動体33が上昇位置33Aに位置した状態では、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を最小の第1容積としている。なお、移動体33の各ガイド突部333、333が上側ケース31のガイド溝318、318の上端縁318a、318aに当接することにより、移動体33が上昇位置33Aに位置決めされるように構成することもできる。すなわち、上端縁318a、318aを、移動体33の移動範囲の上限を規定する移動体位置決め部としての機能を備えるようにしてもよい。
【0044】
また、下側ケース32の上端面32a、32aは、移動体33の移動範囲の下限を規定している。すなわち、移動体33は下降位置(第2位置)33B(図7参照)よりも下方に移動しようとすると、各ガイド突部333、333が下側ケース32の上端面32a、32aに当接して、その移動を阻止する。下降位置33Bでは、移動体33のマグネット331の下端面331dは、各ヨーク37、37の第2突部373、373の下端面よりも上方に位置している。また、移動体33が下降位置33Bに位置した状態では、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を最大の第2容積に拡大させている。なお、移動体33の各ガイド突部333、333が下側ケース32の上端面32a、32aに当接することにより、移動体33が下降位置33Bに位置決めされるように構成することもできる。すなわち、上端面32a、32aは、上述した上端縁318a、318aと対をなし、移動体33の移動範囲の下限を規定する移動体位置決め部としての機能を備えるようにしてもよい。
【0045】
また、移動体33が上昇位置33Aと下降位置33Bとの間を移動する間、マグネットホルダ332から下方に延びているガイド軸335が貫通孔324に挿入された状態が維持される。これにより、移動体33は移動方向に対して傾斜することなく、その姿勢が維持された状態で直動する。
【0046】
(電磁式アクチュエータの駆動制御および動作)
図2、図6〜図10を参照して、電磁式アクチュエータ3の駆動制御および動作を説明する。図6は電磁式アクチュエータの駆動制御および動作を説明するための説明図であり、移動体33が上昇位置33Aにある状態を示している。図7は移動体33が下降位置33Bにある状態の電磁式アクチュエータ周辺の部分断面図である。図8は電磁式アクチュエータ3へ印加する励磁電流の電流値を示すタイムチャートであり、移動体33を上昇位置33Aと下降位置33Bとの間で往復移動させる間における励磁電流の電流値を示している。図9は移動体33の位置と推力との関係を駆動コイル38、38へ供給する励磁電流の電流値を変えて検証したグラフである。図9には移動体33の位置とダイヤフラム12から移動体33に働く反力との関係を示すグラフも示してある。図10はダイヤフラム12の反力を考慮した状態において移動体33の位置と推力との関係を駆動コイル38、38へ供給する励磁電流の電流値を変えて検証したグラフである。
【0047】
なお、図9および図10における変位量0mmの位置では、移動体33およびダイヤフラム12は図2に示す位置にあり、移動体33の移動方向(上下方向)でマグネット331の中心と駆動コイル38、38の中心とが一致している。変位量0.6mmの位置では移動体33は図6に示す上昇位置33Aに位置しており、変位量−0.6mmの位置では移動体33は図7に示す下降位置33Bに位置している。また、図9において、推力0mN、変位量0mmを通過する右上がりのグラフは駆動コイル38、38への給電が行なわれていない状態で、移動体33の各位置(変位)における推力を測定したものである。図9において、推力0mN、変位量0mmを通過する右下がりグラフは、駆動コイル38、38への給電が行なわれていない状態で、移動体33の各位置(変位)においてダイヤフラム12から移動体33に働く反力を測定したものである。電流値に付与された−の符合は励磁電流を流す方向を示すものであり、図6に示す方向に励磁電流を流すことを意味している。+の符合は図6に示す方向とは反対方向に励磁電流を流すことを意味している。また、推力に付与された符合は推力の働く方向を示すものであり、+の符合は上方を示しており、−の符合は下方を示している。
【0048】
まず、図6に示すように、容積型ポンプ1が作動し、電磁式アクチュエータ3が動作している場合において、駆動コイル38、38への給電が行なわれていないので、移動体33は、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1とダイヤフラム12の反力R1の作用によって、上昇位置33Aで停止する。
【0049】
また、本例では、容積型ポンプ1が作動していない状態では、駆動コイル38、38への給電が行なわれていないので、移動体33は、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1とダイヤフラム12の反力R1の作用によって、上昇位置33Aに保持されている。
【0050】
本例では、移動体33が上昇位置33Aにあるときには、図9の電流値0mAのグラフに示すように、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1によって約200mNの推力が上向きに発生している。一方、移動体33が上昇位置33Aにあるときには、図6に示すように、ダイヤフラム12はポンプ室8の容積を最小の第1容積に縮小しており、その中心部分が外周縁部分に対して上方に変位した状態となっている。従って、ダイヤフラム12は約100mNの反力R1を下向きに発生させている。この結果、図10に示すように、移動体33は、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1からダイヤフラム12の反力R1を差し引いた上向きの力(約100mN)によって、上昇位置33Aで停止する。
【0051】
次に、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる際には、駆動コイル38、38への給電を行なう。本例では、図6に示すように、移動体33のマグネット331は、左側の磁極面331aがS極に着磁されており、右側の磁極面331bがN極に着磁されているので、磁極面331aと対向する左側の駆動コイル38には、磁極面331aと対向している外周面部分38aを構成している巻線部分を流れる励磁電流が装置前方から装置後方に向かう方向に励磁電流が流される。右側の磁極面331bと対向する右側の駆動コイル38には、磁極面331bと対向している巻線部分を流れる励磁電流が装置前方から装置後方に向かう方向に励磁電流が流される。
【0052】
ここで、駆動コイル38、38の外周側には移動体33のマグネット331が位置しているので、給電によって駆動コイル38、38を流れる励磁電流の向きとマグネット331による磁界の向きが直交する。この結果、駆動コイル38、38への給電が行なわれると、フレミングの左手の法則により、駆動コイル38、38とマグネット331の磁界との間に働くローレンツ力が、移動体33を下方に移動させる力F2として働く。
【0053】
また、アンペールの右ネジの法則により、駆動コイル38、38への給電によって、駆動コイル38、38およびヨーク37、37は電磁コイル(電磁石)として機能する。すなわち、移動体33の左側に配置されている第1固定体35は、上側をS極とし、下側をN極とする電磁コイルとして機能する。移動体33の右側に配置されている第2固定体36は、上側をN極とし、下側をS極とする電磁コイルとして機能する。この結果、移動体33のマグネット331と、第1固定体35および第2固定体36の間には、上側において電磁的な反発力が発生し、下側において、電磁的な吸引力が発生する。これら電磁的な反発力および吸引力の合力F3は、移動体33を下方に移動させる力F2とともに、移動体33を下に向かって移動させるための推力となる。
【0054】
移動体33を下方に移動させる力F2および電磁的な反発力および吸引力の合力F3による推力は、図9において電流値0mAのグラフと各電流値のグラフの推力の差として現れている。本例では、駆動コイル38、38へ−10mAの励磁電流を供給した場合には、電流値0mAのグラフと電流値−10mAのグラフの差として現れているように、100mN弱の下向きの推力が得られる。同様に、駆動コイル38、38へ−30mAの励磁電流を供給した場合には、200mNを超える下向きの推力が得られる。駆動コイル38、38へ−50mAの励磁電流を供給した場合には、300mNを超える下向きの推力が得られる。なお、電流値に付与された−の符合は励磁電流を流す方向を示すものであり、図6に示す方向に励磁電流を流すことを意味している。
【0055】
ここで、本例では、移動体33は、上昇位置33Aにおいて約100mNの上向きの力で上昇位置33Aに保持されている。従って、本例では、図10に示すように移動体33が上昇位置33Aから離れる第1区間P1では、図8に示すように駆動コイル38、38へ−30mAの第1励磁電流I1を供給して100mNを超える下向きの推力を発生させる。これにより、移動体33は上昇位置33Aから離れて、下方に向かって移動する。
【0056】
次に、移動体33が上昇位置33Aから離れると、マグネット331が各ヨーク37、37の第1突部372、372から離れるので、図9の電流値0mAのグラフに示すように、これらの間に働いていた磁気的な吸引力F1は距離の二乗に反比例して減少する。そして、移動体33が変位量0.2mm〜−0.2mmの範囲では、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372の間に磁気的な吸引力F1の影響をほとんど受けず、すなわち、磁気的な吸引力F1が実質的に零となる。換言すれば、この範囲では、移動体33の移動は、駆動コイル38、38への供給電流で制御される。
【0057】
また、移動体33が変位量0mmの位置にあるときには、図2に示すように、ダイヤフラム12は上下方向に変位していない。従って、図9のダイヤフラム12からの反力R1(ダイヤフラム12が有する弾性力)のグラフに示すように、ダイヤフラム12から移動体33へ反力R1が働かない状態となる。従って、移動体33が変位量0mmの位置の近傍を通過する第2区間P2では、移動体33に対して僅かな推力を付与するだけで、移動体33を下降させることが可能となる。
【0058】
そこで、本例では、図8、図10に示すように、移動体33が変位量0mmの位置の近傍を通過する第2区間P2では、駆動コイル38、38へ、第1励磁電流I1よりも小さな−10mAの第2励磁電流I2を供給することにより100mN弱の下向きの推力を発生させ、これにより移動体33を下降させる。なお、図4において、マグネット331の上下方向の寸法aを第1突部372、372と第2突部373、373との間の寸法bよりも、さらに短く設定することにより、マグネット331と第1突部372、372および第2突部373、373との間に働く磁気的な吸引力が実質的に零の状態となる第2区間P2を長くすることが可能である。
【0059】
その後、移動体33が下降位置33Bに接近すると、マグネット331が第2突部373、373に接近するので、マグネット331と第2突部373、373との間の磁気的な吸引力F4が働き出し、その吸引力F4の大きさは距離の二乗に反比例して増加する。また、吸引力F4は下向きに働く力なので、吸引力F4が移動体33を下に向かって移動させる推力となる。ここで、移動体33が下降位置33Bに接近すると、図7に示すようにダイヤフラム12はその中心部分が外周縁部分に対して下方に変位した状態となるので、図9のダイヤフラム12からの反力R1のグラフに示すように、ダイヤフラム12から移動体33への反力R1は上向きに働く。しかし、図9に示されるように、ダイヤフラム12から移動体33に働く反力R1は、マグネット331と第2突部373、373との間の磁気的な吸引力F4と比較して小さいので、移動体33は吸引力F4によって下降位置33Bまで下降する。
【0060】
すなわち、本例では、移動体33が下降位置33Bに接近した第3区間P3では、吸引力F4のみによって移動体33が下降する。従って、本例では、図8、図10に示すように、移動体33が下降位置33Bに接近した第3区間P3においては、駆動コイル38、38へ供給する第3励磁電流I3を零とし、すなわち、駆動コイル38、38への給電を停止して吸引力F4のみによって移動体33を下降させる。
【0061】
しかる後に、移動体33が図7に示す下降位置33Bに至ると、マグネット331と各ヨーク37、37の第2突部373、373との磁気的な吸引力F4と、移動体33によって下方に変位させられたダイヤフラム12からの反力R1とがバランスして、移動体33が停止する。
【0062】
下降位置33Bでは、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を最大の第2容積に拡大させる。すなわち、下降位置33Bでは、容積型ポンプ1が作動し、電磁式アクチュエータ3が動作している場合において、駆動コイル38、38への給電が行なわれていないので、移動体33のマグネット331と、各ヨーク37、37の第2突部373、373と間に磁気的な吸引力F4とダイヤフラム12からの反力R1とが作用し、移動体33が停止する。また、本例では、容積型ポンプ1が作動していない状態では、駆動コイル38、38への給電が行なわれていないので、移動体33は、マグネット331と各ヨーク37、37の第2突部373、373との磁気的な吸引力F4とダイヤフラム12の反力R1の作用によって、移動体33は下降位置33Bに保持される。
【0063】
移動体33を下降位置33Bから上昇位置33Aへ移動させる際には、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる間とは同様の力が反対方向に働く。従って、図8に示すように、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる場合と反対方向の第1〜第3励磁電流I1〜I3をこの順番で駆動コイル38、38へ供給する。これにより、移動体33は、給電によって発生するローレンツ力および電磁的な吸引力および電磁的な吸引力の合力、および、マグネット331と第1突部372、372との間に磁気的な吸引力F1を推力として上昇し、上昇位置33Aに至る。
【0064】
その後、移動体33が上昇位置33Aに位置すると、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1と、移動体33によって上方に変位させられたダイヤフラム12からの反力R1とがバランスして、移動体33が停止する。また、本例では、容積型ポンプ1が作動していない状態では、駆動コイル38、38への給電が行なわれておらず、上昇位置33Aでは、移動体33のマグネット331と、各ヨーク37、37の第1突部372、372と間に磁気的な吸引力F1が働いているので、移動体33は上昇位置33Aに保持される。
【0065】
ここで、図10に示すように、本例では、移動体33を確実に移動させるために、移動体33が上昇位置33Aから変位量0.2mmの位置へ移動するまでを第1区間P1として−30mAの第1励磁電流I1を供給している。移動体33が変位量0.2mmの位置から変位量−0.4mmの位置へ移動するまでを第2区間P2として−10mAの第2励磁電流I2を供給している。移動体33が変位量−0.4mmを通過して下降位置33Bに至るまでを第3区間P3として給電を停止している。
【0066】
一方、図10への記載は省略するが、移動体33を下降位置33Bから上昇位置33Aへ移動させる際には、移動体33が下降位置33Bから変位量−0.2mmの位置へ移動するまでを第1区間P1として30mAの第1励磁電流I1を供給し、移動体33が変位量−0.2mmの位置から変位量0.4mmの位置へ移動するまでを第2区間P2として10mAの第2励磁電流I2を供給し、移動体33が変位量0.4mmを通過して上昇位置33Aに至るまでを第3区間P3として給電を停止している。ここで、移動体33を下降位置33Bから上昇位置33Aへ移動させる際には、図6に示す方向とは反対方向に励磁電流を流している。
【0067】
なお、本例では、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる際に、移動体33が上昇位置33Aから変位量0.4mmの位置へ移動するまでを第1区間P1として−30mAの第1励磁電流I1を供給し、移動体33が変位量0.4mmの位置から変位量0mmの位置へ移動するまでを第2区間P2として−10mAの第2励磁電流I2を供給し、移動体33が変位量0mmを通過した後に給電を停止してもよい。このようにしても、移動体33を下方に移動させる推力を得ることができるので、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させることができる。また、本例では、第3励磁電流I3を零としてあるが、移動体33を確実に移動させるために、第3励磁電流I3として第2励磁電流I2よりも小さい第3励磁電流I3を駆動コイル38、38へ供給してもよい。
【0068】
(逆止弁)
図11(a)は弁室13の周辺の部分断面図であり、図11(b)は弁体の円環状突部の断面形状を説明するための説明図であり、図11(c)は円環状突部の内側傾斜面に働く流体の力を説明するための説明図である。本実施形態では、逆止弁11はアクティブバルブ4に対してパッシブバルブとして機能している。図11(a)に示すように、逆止弁11は、第2流路225の上端開口225bが形成されている弁座111と、この弁座111に流体の流通方向の下流側から当接して上端開口225bを塞いでいる弁体112と、弁体112と弁室13の円形天井面13bとの間に挿入されており、弁体112に流体の流通方向の下流側から当接して弁体112を所定の付勢力で弁座111に付勢している付勢手段としてのバネ部材を備えている。本実施形態では、付勢手段は圧縮コイルバネ113であり、弁座111は弁室13の円形底面13aである。
【0069】
弁体112は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのゴム製の弾性材料からなり、弁座111に対向している円形の平板形状の閉鎖部114と、この閉鎖部114の下面から下方に向けて突出する円環状突部115とを備えている。円環状突部115は閉鎖部114と同軸上に形成されており、弁座111において、第2流路225の上端開口225bの周りに当接している。
【0070】
図11(b)に示すように、円環状突部115は、三角形状の径方向断面を有しており、頂部115a、この頂部115aに対して径方向内側に連続する内周側傾斜面115b、および頂部115aに対して径方向外側に連続する外周側傾斜面115cを備えている。弁座111と内周側傾斜面115bとが成す内周側当接角αは、弁座111と外周側傾斜面115cとが成す外周側当接角βよりも小さく形成されている。本例では、内周側当接角αは45°未満となっている。
【0071】
なお、円環状突部115の径方向断面は、弁座111と内周側傾斜面115bが成す内周側当接角αが、弁座111と外周側傾斜面115cが成す外周側当接角βよりも小さ
形成されていればよく、三角形状に限定されるものではなく、頂部がある程度の面積をもった形状(台形状)したものでもよい。また、頂部の形状は平面に限定されるものではなく、曲面であってもよい。
【0072】
また、弁体112は、閉鎖部114の弁座111とは反対側に位置する上面に、圧縮コイルバネ113の当接位置を位置決めするための位置決め部116を備えている。位置決め部116は圧縮コイルバネ113の内径に対応する外径を備える円柱形状の突部であり、円環状突部115と同軸上に形成されている。
【0073】
圧縮コイルバネ113は、筒状であり、その内径は、第2流路225の上端開口225bの開口径よりも大きく、位置決め部116を挿入可能な大きさに設定されている。位置決め部116に圧縮コイルバネ113を挿入した状態で逆止弁11を弁室13内に配置すると、圧縮コイルバネ113は、上端の円形端部が弁室13の円形天井面13bの第1流路212の下端開口212aの周りに当接し、下端の円形端部が、閉鎖部114の上面に当接し、圧縮された状態となる。なお、圧縮コイルバネ113は、下端の円形端部が、閉鎖部114の上面において円環状突部115と対応する位置またはその近傍に当接するように配置することが好ましい。これにより、圧縮コイルバネ113は、弁体112を弁座111に向けて付勢する。
【0074】
ここで、図11(c)に示すように、内周側当接角αを45°未満としておくことにより、上端開口225bから弁室13内に流入する流体の圧力F0が、円環状突部115を外側に変形させる方向に働くことを抑制できる。すなわち、内周側当接角αを小さくすれば、上端開口225bから弁室13内に流入する流体の圧力F0において、円環状突部115の軸線方向と直交する方向の分力F01を小さく押さえることができるので、流体の圧力F0による円環状突部115の外側への変形が抑制され、上端開口225bの閉鎖状態を確実なものとすることができる。
【0075】
逆止弁11は、ポンプ室8の容積がダイヤフラム12によって縮小されることによりポンプ室8が高圧になった場合などに、流出側流路10において圧縮コイルバネ113による所定の付勢力以上の所定圧力が流出方向にかかると、第2流路225の上端開口225bを開き、流出側流路10を開き状態とする。また、流出側流路10に流出方向とは反対方向に圧力がかかると、第2流路225の上端開口225bを閉じ、流出側流路10を閉じ状態とする。
【0076】
(アクティブバルブ)
次に、図2、図3、図12を参照してアクティブバルブ4を詳細に説明する。図12は流入側流路9を閉じている状態のアクティブバルブ4の周辺の部分断面図である。図3に示すように、アクティブバルブ4は、円筒形状の胴部41と、胴部41から上方に同軸で延びているオリフィス構成部42と、胴部41から下方に同軸で延びている流入管6を備えている。
【0077】
オリフィス構成部42は胴部41よりも小径であり、流入管6はオリフィス構成部42よりも小径である。流入管6は容積型ポンプ1の流入管6を兼ねるものであり、下流端が流体入口6aとなっている。図2に示すように、アクティブバルブ4は、オリフィス構成部42が下側ハウジング22の第4凹部226の小径部226bに挿入され、胴部41の上端部分が大径部226aに挿入された状態で下側ハウジング22に取り付けられている。
【0078】
図12に示すように、オリフィス構成部42は、円柱形状部分421と、この円柱形状部分421の下端の外周側に形成された円環状のフランジ部分422を備えている。円柱形状部分421には、その中心軸に沿って上下方向に貫通するオリフィス423が形成されている。オリフィス423の下端開口423aは円柱形状部分421の下端面に露出している。また、円柱形状部分421の下端面には、オリフィス423の下端開口423aの周りに円環状凹部424が形成されており、これにより、オリフィス423の下端開口423aの周縁は環状突部となっている。環状突部はオリフィス423の下端開口423aを開閉する弁体43の弁座44となる。
【0079】
胴部41は、内側に、流入管6とオリフィス423とを連通させる流体流路45を備えている。流体流路45は、オリフィス423および流入管6と同軸上に設けられている。アクティブバルブ4が下側ハウジング22に固定されると、第3流路227、第4凹部226の上端部分226cおよびアクティブバルブ4によって、ポンプ室8から流体入口6aに至る流入側流路9が構成される。流体流路45内には軸線方向に往復移動可能な状態で弁体43が挿入されている。弁体43はオリフィス423の流体流路45の側の下端開口423aを開閉することによって流入側流路9を開閉する。
【0080】
弁体43は、円柱形状をしている。弁体43はステンレス製のパイプ431と、パイプ431の内側に上下方向に配列された円柱状の4つのマグネット432、隣り合うマグネット432との間に各々配置された3枚の円板状の磁性板433、上端および下端にそれぞれ配置された2枚の円盤状の磁性板434、上端の磁性板434の上に配置されたステンレス製の蓋板435、下端の磁性板434の下に配置されたステンレス製の底板436を備えている。なお、パイプ431、蓋板435、底板436として樹脂製のものを用いることもできる。蓋板435の上面には、円形のゴムシート437が接着等の方法で取り付けられている。ここで、隣り合うマグネット432は、互いに同一の極を相手方のマグネットの方に向けている。より詳細には、上端のマグネット432は上がS極、下がN極となるように配置されており、その下方に隣接配置されているマグネット432は上がN極、下がS極となるように配置されており、さらにその下方に配置されているマグネット432は上がS極、下がN極となるように配置されており、下端のマグネット432は上がN極、下がS極となるように配置されている。この結果、弁体43では、磁性板433が位置する個所に磁力線が集中している。
【0081】
流体流路45は、弁体43を駆動するための駆動コイル46を巻き回しているコイルボビン47の内側に形成されている。コイルボビン47の外周側には円筒形のヨーク48が配置されている。
【0082】
コイルボビン47は樹脂製であり、コイルボビン47の上端部分にはオリフィス構成部42を取り付けるための円環状の係合凹部471が形成されている。係合凹部471には、ゴムパッキン49を介してオリフィス構成部42のフランジ部分422が挿入されて固定される。オリフィス構成部42の円柱形状部分421の外周側には円環状の押さえ板50が上方から嵌め込まれており、この押さえ板50がコイルボビン47の上端面およびヨーク48の上端面に固定されることにより、オリフィス構成部42はコイルボビン47およびヨーク48に固定されている。押さえ板50は磁性材料から形成されている。なお、押さえ板50が磁性材料から形成されることで、押さえ板50は、弁体43に搭載されているマグネット432との間で磁気的な吸引力を発生することができるようになっている。すなわち、磁性材料で形成された押さえ板50は、マグネット432と供に弁体43を弁座44に磁気的に付勢している第1の付勢手段51を構成する。
【0083】
また、コイルボビン47は、上下方向に延びる筒状胴部472と、筒状胴部472の外周面で拡径する6つのフランジ部473を備えている。コイルボビン47の筒状胴部472および6つのフランジ部473によって囲まれた5つの空間は、駆動コイル46が巻回される5つの巻線部となっている。本実施形態では、コイルボビン47に巻回された5つの駆動コイル46は、弁体43のマグネット432と共に弁体43を移動させるための駆動機構52を構成する。
【0084】
コイルボビン47に巻回された5つの駆動コイル46は、励磁電流の向きを逆にするために、隣り合う駆動コイル46同士の巻回方向が逆である。また、5つの駆動コイル46は、例えば、直列に電気的に接続される。あるいは、軸線方向の内側に位置する3つの駆動コイル46を並列に電気的に接続し、それらの接続部分に対して、軸線方向の両側の駆動コイル46を直列に電気的に接続した構成を採用することもできる。また、本例では、上端および下端の駆動コイル46の上下方向の寸法は、その間に位置している3つの駆動コイル46の上下方向の寸法の1/2としてある。弁体43において、上端および下端のマグネット432の上下方向の寸法は、その間の2つのマグネット432の上下方向の寸法の1/2としてある。この結果、弁体43が弁座44に当接して、オリフィス423の下端開口423aを閉鎖している状態では、磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置している。
【0085】
ここで、弁体43の外径寸法は、コイルボビン47の筒状胴部472の内径寸法よりもわずかだけ小さく、弁体43がコイルボビン47の筒状胴部472の内側の空間内に挿入された状態では、弁体43の外周側面とコイルボビン47の筒状胴部472の内周面との間を流体が流れる。
【0086】
(アクティブバルブの動作)
図12〜図14を参照してアクティブバルブ4の動作を説明する。図13はアクティブバルブ4の弁体43に働く力を説明するための説明図である。図14は流入側流路9を開いている状態のアクティブバルブ4の周辺の部分断面図である。アクティブバルブ4は、不図示の駆動制御機構によって駆動コイル46への給電が制御されることにより、駆動制御される。
【0087】
図13に示すように、駆動コイル46への給電が行なわれていない状態では、弁体43は、弁体43のマグネット432と押さえ板50との磁気的な吸引力F5によって閉鎖位置43Aに保持されている。閉鎖位置43Aでは、弁体43はコイルボビン47の内側の流体流路45を上端まで移動しており、弁体43の上端面にあるゴムシート437が弁座44に当接し、オリフィス423の下端開口423aを塞いでいる。これにより流入側流路9は閉じ状態となる。また、弁体43の磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置している。
【0088】
ここで、弁体43は、オリフィス423の下端開口423aが設けられている弁座44よりも流体の流通方向の上流側に位置しており、オリフィス423と同軸に形成されている流体流路45の中を流体の流通方向に移動するように構成されている。このため、流体入口6aからアクティブバルブ4の中へ流れ込む流体の流体圧(背圧)が弁体43を閉鎖位置43Aに向かって移動させる方向に力F6を働かせている。
【0089】
次に、流入側流路9を開き状態とする際には、駆動コイル46への給電を行なう。アクティブバルブ4では、マグネット432の外周側に筒状に巻き回された駆動コイル46が配置されているので、給電によって駆動コイル46を流れる励磁電流の向きとマグネット432による磁界の向きが直交する。この結果、図14に示すように、駆動コイル46への給電が行なわれると、マグネット432の磁束と駆動コイル46との間に働くローレンツ力が弁体43を閉鎖位置43Aから下方に移動させる力F7として働く。ここで、駆動コイル46への給電の開始時点では、弁体43の磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置しており、駆動コイルと鎖交する磁界を効率よく形成しているので、力F7として大きな推力が発生する。従って、弁体43は、図13に示されている押さえ板50との間の磁気的な吸引力F5および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力F6に抗して下方の開放位置43Bに移動する。
【0090】
弁体43が開放位置43Bに移動すると、弁体43が弁座44から流体の流通方向の上流側に離れ、ゴムシート437がオリフィス423の下端開口423aから離間する。これにより、流入側流路9は開き状態となる。開放位置43Bでは、弁体43は、その下端部がコイルボビン47の内部に形成された突状部474に当接し、あるいは当接せずにバランスして停止した開き位置に至る。開放位置43Bでは、流体入口6aから流入管6を介して流入した流体は、流体流路45の弁体43の外周面とコイルボビン47の筒状胴部472との間に流れ込み、下端開口423aを介して、オリフィス423を通過し、ポンプ室8へ向かう。
【0091】
また、流入側流路9を閉じ状態とする際には、駆動コイル46への給電を停止する。駆動コイル46への給電を停止すると、図13に示されている押さえ板50との間の磁気的な吸引力F5および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力F6により、弁体43は閉鎖位置43Aに移動し、弁体43は弁座44に当接し、上端のゴムシート437でオリフィス423の下端開口423aを塞いだ状態に戻る。従って、流入側流路9は閉じ状態となる。
【0092】
なお、流入側流路9を閉じ状態とする際には、弁体43を閉じ位置から開き位置へ移動させる場合と反対方向の励磁電流を駆動コイル46へ供給するようにしてもよい。このようにすれば、弁体43は、弁体43のマグネット432と駆動コイル46との間に発生するローレンツ力、弁体43と押さえ板50との間の磁気的な吸引力F5および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力F6によって上方に移動する。弁体43が閉じ位置に至った後には、駆動コイル46への給電を停止すれば、弁体43は閉鎖位置43Aに保持される。
【0093】
(容積型ポンプの動作)
次に、容積型ポンプ1の動作を説明する。容積型ポンプ1の電磁式アクチュエータ3とアクティブバルブ4とは、不図示の駆動制御機構によって同期して駆動制御される。
【0094】
電磁式アクチュエータ3の駆動コイル38およびアクティブバルブ4の駆動コイル46に給電されていない状態では、図12に示すように、アクティブバルブ4の弁体43は閉鎖位置43Aに保持されており、アクティブバルブ4は流入側流路9を閉じ状態としている。また、電磁式アクチュエータ3の移動体33は、図4に示すように、上昇位置33Aに保持されており、ダイヤフラム12はポンプ室8の容積を最小の第1容積としている。逆止弁(パッシブバルブ)11は、圧縮コイルバネ113の付勢力によって第2流路225の上端開口225bを塞ぎ、流出側流路10を閉じ状態としている。
【0095】
ポンプ室8内への流体の吸引が行なわれる際には、アクティブバルブ4の駆動コイル46への給電によって弁体43が閉鎖位置43Aから開放位置43Bへ駆動され、流入側流路9が開き状態とされる。すなわち、アクティブバルブ4は図14に示す状態となる。これと並行して、電磁式アクチュエータ3の駆動コイル38、38への給電が行なわれ、これにより、移動体33が上昇位置33Aから下降位置33Bへ駆動される。この結果、図7に示すように、ポンプ室8の容積は最大の第2容積に拡大する。
【0096】
移動体33が下降してダイヤフラム12が下方に変位すると、ポンプ室8には負圧が発生するので、流体はポンプ室8内に吸い込まれる。ポンプ室8内に負圧が発生した状態では逆止弁(パッシブバルブ)11は第2流路225の上端開口225bを閉鎖し、流出側流路10を閉じ状態としている。
【0097】
次に、ポンプ室8からの流体の吐出が行なわれる際には、アクティブバルブ4の駆動コイル46への給電が停止される。この結果、図13に示すように、弁体43は開放位置43Bから閉鎖位置43Aに上昇して、流入側流路9が閉じ状態となる。これと並行して、電磁式アクチュエータ3の駆動コイル38、38への給電が行なわれる。すなわち、流体の吸引時とは逆方向の励磁電流が駆動コイル38、38に供給され、移動体33が下降位置33Bから上昇位置33Aへ駆動される。この結果、図4、図6に示すように、ポンプ室8の容積は最小の第1容積に縮小する。
【0098】
ここで、ポンプ室8の容積が縮小されるとポンプ室8は高圧となるので、流出側流路10では、圧縮コイルバネ113による弁体112の付勢力と対応する所定圧力以上の力が流出方向にかかる。この結果、流体は、弁体112を流出方向に移動させて、第2流路225の上端開口225bから流出し、流体出口5aから吐出される。
【0099】
その後に容積型ポンプ1が待機状態となると、アクティブバルブ4の弁体43は閉鎖位置43Aに保持され、アクティブバルブ4は流入側流路9を閉じ状態とする。また、電磁式アクチュエータ3の移動体33は上昇位置33Aに保持され、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を第1容積とする。逆止弁(パッシブバルブ)11は、圧縮コイルバネ113の付勢力によって第2流路225の上端開口225bを塞ぎ、流出側流路10を閉じ状態とする。
【0100】
(逆止弁による作用効果)
本例によれば、逆止弁11は、弾性材料からなる弁体112自体の弾性力と、圧縮コイルバネ113による付勢力で第2流路225の上端開口225bを塞いでいる。従って、弁体112による上端開口225bのシール性が高い。また、圧縮コイルバネ113による付勢力を利用して上端開口225bを塞いでいるので、弁体112自体の弾性力のみによって上端開口225bを塞ぐ場合と比較して、弁体112の形状のばらつきによって第2流路225の上端開口225bの開閉動作が受ける影響を低減できる。
【0101】
さらに、圧縮コイルバネ113によって弁体112を弁座111に付勢するので、弁体112に所定の荷重(付勢力)を付与することが容易となる。また、弁体112は、閉鎖部114から弁座111に向けて突出して第2流路225の上端開口225bの周りに当接する円環状突部115を備えているので、円環状突部115によって上端開口225bの周囲を囲んだ状態でこの上端開口225bを塞ぐことができる。よって、弁体112による上端開口225bのシール性が高い。
【0102】
ここで、円環状突部115は、頂部115a、内周側傾斜面115b、および外周側傾斜面115cが全周にわたって形成された三角形状の径方向断面を有しており、弁座111と内周側傾斜面115bとが成す内周側当接角αが、弁座111と外周側傾斜面115cとが成す外周側当接角βよりも小さくなっている。この結果、圧縮コイルバネ113によって弁体112が弁座111に付勢される際に、円環状突部115の変形を、三角形状の径方向断面の頂部115aが外周側にずれる方向に変形するように規定できる。従って、圧縮コイルバネ113の付勢力によって圧縮変形させられる円環状突部の形状が定まらない場合と比較して、弁体112による上端開口225bのシール性が向上する。また、弁座111と内周側傾斜面115bとが成す内周側当接角αが、弁座111と外周側傾斜面115cとが成す外周側当接角βよりも小さく設定されているので、付勢力によって上端開口225bの閉鎖状態を確実なものとすることができ、弁体112を開放しようとする流体の圧力に対しては、弁体112をスムーズに移動させることができる。
【0103】
また、本例では、弁座111と内周側傾斜面115bとが成す内周側当接角αを45°未満に設定してあるので、流体の圧力が、円環状突部115に変形させる方向に働くことを抑制できる。従って、弁体112による上端開口225bの閉鎖状態を確実なものとすることができる。
【0104】
さらに、弁体112は、閉鎖部114の弁座111とは反対側に位置する面に、圧縮コイルバネ113の当接位置を位置決めするための位置決め部116を備えている。この結果、圧縮コイルバネ113により閉鎖部114に付与される荷重(付勢力)の位置や方向を規定できる。また、弁体112が圧縮コイルバネ113による付勢方向から外れた方向にふらつくことを抑制できるので、シール性が向上する。
【0105】
また、さらに、圧縮コイルバネ113は、第2流路225の上端開口225bの開口よりも大径であり、円環状突部115と同軸上に配置されている。また、圧縮コイルバネ113の下端の円形端部143aは、閉鎖部114の弁座111とは反対側に位置する面において、円環状突部115と対応する位置に当接している。この結果、圧縮コイルバネ113によって、弁体112において弁座111と当接する部分に均一に荷重を付与することができるので、シール性が向上する。
【0106】
(逆止弁の変形例)
図15は変形例の逆止弁の弁体と付勢手段を示す断面図である。図15(a)に示す変形例では、弁体112の円環状突部115の内側に凹部117を設けてある。弁体112が弁室13内に配置された状態では、第2流路225の上端開口225bと凹部117が対向した状態となる。
【0107】
図15(b)に示す変形例では、円環状の突部を位置決め部116Aとしてある。円環状の突部の内径は、圧縮コイルバネ113の外径に対応する寸法とされている。
【0108】
図15(c)、図15(d)の変形例では、付勢手段を圧縮コイルバネ113から変更している。図15(c)の付勢手段の圧縮コイルバネ113Aは、上方に向かって内径の寸法が増加するものである。図15(d)の付勢手段は板バネ113Bである。なお、板バネ113Bを用いる場合でも、閉鎖部114に、板バネが当接する当接位置を規定する位置決め部116を設けておくことができる。ここで、板バネ113Bを位置決めするための位置決め部116の形状は、円柱形状、円環状には限られない。
【0109】
いずれの例においても、円環状突部115は、頂部、内周側傾斜面、および外周側傾斜面が全周にわたって形成された三角形状の径方向断面を有しており、弁座と内周側傾斜面とが成す内周側当接角が、弁座と外周側傾斜面とが成す外周側当接角よりも小さく形成されているので、弁体112による上端開口225bのシール性が高い。また、付勢力によって上端開口225bの閉鎖状態を確実なものとすることができ、弁体112を開放しようとする流体の圧力に対しては、弁体112をスムーズに移動させることができる。
【符号の説明】
【0110】
1・容積型ポンプ、2・ポンプユニット、3・電磁式アクチュエータ、4・アクティブバルブ、5・流出管、5a・流体出口、6・流入管、6a・流体入口、8・ポンプ室、9・流入側流路、10・流出側流路、11・逆止弁、12・ダイヤフラム、12a・接続部、13・弁室、13a・円形底面、13b・円形天井面、14・15・Oリング、21・上側ハウジング、22・下側ハウジング、31・上側ケース、32・下側ケース、32a・上端面、33・移動体、33A・上昇位置、33B・下降位置、34・固定体、35・第1固定体、36・第2固定体、37・ヨーク、38・駆動コイル、38a・外周面部分、39・スペーサ、40・ガイド機構、41・胴部、42・オリフィス構成部、43・弁体、43A・閉鎖位置、43B・開放位置、44・弁座、45・流体流路、46・駆動コイル、47・コイルボビン、48・ヨーク、49・ゴムパッキン、50・押さえ板、51・付勢手段、52・駆動手段、111・弁座、112・弁体、113・113A・圧縮コイルバネ、113B・板バネ、114・閉鎖部、115・円環状突部、115a・頂部、115b・内周側傾斜面、115c・外周側傾斜面、116・116A・位置決め部、211・第1凹部、212・第1流路、212a・下端開口、221・上側突出部、222・第2凹部、223・下側突出部、224・第3凹部、224a・天井面、225・第2流路、225a・下端開口、225b・上端開口(流出口)、226・第4凹部、226a・大径部、226b・小径部、226c・上端部分、227・第3流路、311・上板、312〜315・側板、316・接続部、316a・貫通孔、316b・段部、317・係合凹部、318・ガイド溝、318a・上端縁、322・凹部、323・溝、324・貫通孔、325・係合突起、331、マグネット、331a・331b・磁極面、332・マグネットホルダ、332a・縦枠部、332b・上側枠部、332c・下側枠部、333・ガイド突部、334・接続部、335・ガイド軸、371・軸部、372・第1突部、373・第2突部、421・円柱形状部分、422・フランジ部分、423・オリフィス、423a・下端開口、424・円環状凹部、431・パイプ、432・マグネット、433・磁性板、434・磁性板、435・蓋板、436・底板、437・ゴムシート、471・係合凹部、472・筒状胴部、473・フランジ部、474・突状部、I1〜I3・励磁電流、P1〜P3・区間、α・内側当接角度、β・外側当接角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流出口が設けられた弁座と、
前記弁座に流体の流出方向の下流側から当接して前記流出口を塞いでいる弾性材料からなる弁体と、
流体の流出方向において前記弁体の下流側から当該弁体に当接して、前記弁体を所定の付勢力で前記弁座に付勢する付勢手段とを有し、
前記弁体は、前記弁座に対向する閉鎖部と、この閉鎖部から前記弁座に向けて突出して前記流出口の周りに当接する環状突部とを備え、
前記環状突部は、頂部に対して径方向内側に連続する内周側傾斜面、および、前記頂部に対して径方向外側に連続する外周側傾斜面が全周にわたって形成されており、
前記弁座と前記内周側傾斜面とが成す内周側当接角が、前記弁座と前記外周側傾斜面とが成す外周側当接角よりも小さいことを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
請求項1において、
前記内周側当接角は、45°未満となっていることを特徴とする逆止弁。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記弁体は、前記閉鎖部の前記弁座とは反対側に位置する面に、前記付勢手段の当接位置を位置決めするための位置決め部を備えていることを特徴とする逆止弁。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記付勢手段は、前記流出口の開口よりも大径のコイルバネであり、
前記コイルバネは、前記環状突部と同軸上に配置されていることを特徴とする逆止弁。
【請求項5】
請求項4において、
前記コイルバネの一方の円形端部は、前記閉鎖部の前記弁座とは反対側に位置する面において、前記環状突部と対応する位置に当接していることを特徴とする逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−247411(P2011−247411A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97658(P2011−97658)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】