説明

逆流防止装置

【課題】 逆流防止装置を小型で低コストに製造できるようにし、ダイヤフラムからの気密漏れを防止できるようにする。
【解決手段】 本発明に係る逆流防止装置においては、ダイヤフラム18とピストン6とがボルト及びナットやリテーナなどの別部品を介在させることなく、密着した状態で一体的に動作する。このため、別部品が設けられない分、部品点数が削減されてコストを低減できるとともに、逆流防止装置全体をコンパクトに構成することができる。さらに、ダイヤフラム18に固定用の孔部を設ける必要がないため、気密漏れを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆流防止装置に関し、特に給水源配管と給水先配管との間に配置され、給水先配管を流れてきた逆流水を外部に排水することにより給水源配管への逆流を防止する逆流防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給湯システムにおいては、給湯装置から給湯用の蛇口に接続されている給湯管を分岐して、湯水が浴槽に供給されるよう配管されている。その配管の途中には、一般に、浴槽への湯量を検出する流量センサと、浴槽への温水供給を制御する電磁弁と、浴槽から逆流してきた汚水を大気に放出する逆流防止装置と、浴槽からの汚水の逆流を阻止する逆止弁とが配置されている。
【0003】
ところで、高層の集合住宅はもちろん、戸建ての住宅においても、浴槽が給湯装置よりも高い位置に設置される場合が多くなってきている。このため、断水あるいは停電による給水加圧ポンプの停止などにより、給水側の水圧が低下して負圧になったときには、その負圧が浴槽への配管内の水を吸引しようとする。そのときに、万が一弁部に異物が挟まるなどして逆止弁が正常に機能しなくなっていると、高い位置に設置されている浴槽からその故障した逆止弁を介して逆流してきた浴槽内の汚水をも吸引してしまうことになる。このような場合に備え、逆止弁を介して逆流してきた浴槽の汚水が電磁弁及び流量センサを介して給湯用の配管まで吸い込まれることなく、電磁弁及びフローセンサの手前でトラップして大気に流す逆流防止装置が設けられている。
【0004】
このような逆流防止装置としては、ダイヤフラムからなる受圧部の一方の面に給水源側の一次圧力を受け、他方の面に浴槽側の二次圧力を受けて、一次圧力が低下した場合に受圧部が弁体を駆動して開弁し、二次側の汚水を大気に逃がす構成を有するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図8は、このような給湯システムの構成例を示す図である。
給湯システムにおいて、上水道の給水管101は、フローセンサ102を介して熱交換器103及び水バイパス弁104の上流側に接続されており、熱交換器103及び水バイパス弁104の下流側で合流した後、水比例弁105に接続されている。この水比例弁105の下流側は、例えば台所の蛇口などへ出湯する給湯管106に接続されている。これらフローセンサ102、熱交換器103、水バイパス弁104及び水比例弁105が、給湯装置を構成している。
【0006】
また、水比例弁105の下流側は、フローセンサ107、電磁弁108、及び直列に2つ配置した逆止弁109,110を介して風呂の浴槽111に配管されており、逆止弁109,110の間の配管には逆流防止装置112が配置されている。
【0007】
逆流防止装置112は、逆止弁109,110の間の配管に接続される接続部113及び大気に開放される排水口114を一体に備えたボディ115を有している。接続部113の開口中心と同軸上に、ピストン116が軸線方向に進退自在に配置され、その進退移動によってピストン116に嵌着された環状の弁パッキン117がピストン116の接続部113側の空間と排水口114との間の通路を開閉するよう構成されている。ピストン116の接続部113側と反対側には、ダイヤフラム118の中央部がリテーナ119及びねじ120によって固定されている。このダイヤフラム118の外周部は、ボディ121,122によって挾持固定されている。ボディ122には、検圧管123を介して給水管101に接続される接続部124を有し、ダイヤフラム118とボディ122とによって形成される空間は、給水管101の元圧を受けるための部屋を構成している。また、ピストン116は、スプリング125によって、接続部113と排水口114との間の通路を開く方向に付勢されており、その開く方向のストロークは、中間のボディ121への当接によって規制されている。
【0008】
このような給湯システムにおいて、給水管101から給水された上水は、フローセンサ102を通り、一部が熱交換器103にて加熱されて湯になり、一部は水バイパス弁104を通って熱交換器103から出てきた湯と混合される。このとき、水バイパス弁104により熱交換器103をバイパスする流量を制御することにより、湯水の混合比が変えられて出湯温度が制御される。所望の温度に制御された湯は、さらに、水比例弁105により出湯流量が制御されて給湯管106より給湯される。
【0009】
また、浴槽111に湯張りを行う時には、電磁弁108を開けることにより、水比例弁105を出た湯がフローセンサ107、電磁弁108及び逆止弁109,110を介して風呂の浴槽111へ供給される。
【0010】
このとき、逆流防止装置112には、検圧管123を介して上水道の元圧(一次圧P1)が導入されている。この一次圧は、逆止弁109,110を通過する配管内の通水圧(二次圧P2)より大きいため、ピストン116は押されて弁パッキン117が接続部113を閉じた状態にする。
【0011】
そして、停電により上水を汲み上げている給水加圧ポンプが停止したり、断水が発生するなどして給水管101内に負圧が発生した場合には、一次圧P1の低下を感知したダイヤフラム118がピストン116を開弁方向に付勢し、逆止弁109,110の間の配管を排水口114と連通させて、配管内の水を大気に放出する。
【0012】
このとき、もし、逆止弁110が異物の噛み込みなどにより水密不良となっていた場合には、高所にある浴槽111に残っている汚水がその水頭圧により逆止弁110を介して逆流してくるが、その汚水は逆流防止装置112により大気に放出されるため、浴槽111内の汚水が給湯管106の方まで逆流することはない。
【特許文献1】特許第3408806号公報(段落〔0010〕〜〔0011〕,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように、従来の逆流防止装置は、ピストンとダイヤフラムとを固定するためにボディ内にリテーナとねじを配置している。あるいは、その代替手段として、平ワッシャ及びナットとねじによる固定や、リベットによる加締め接合などが提案されている。
【0014】
しかしながら、このような固定手段によると部品点数が多くなってコストが嵩む。また、取り付けスペースを要するため、逆流防止装置のコンパクト化を妨げる要因になる。さらに、ダイヤフラムの中央にねじやリベットを通すための孔を設ける必要があるため、固定手段による組み付け工程において何らかのミスや異常が発生すると、その孔から気密漏れが発生する可能性がある。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、小型で低コストに製造できるとともに、ダイヤフラムからの気密漏れを防止できる逆流防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では上記問題を解決するために、給水源配管と給水先配管との間に配置されて、前記給水源配管の一次圧と前記給水先配管の二次圧とを受けて開閉し、前記給水先配管を流れてきた逆流水を外部に排水することで、前記給水源配管への逆流を防止する逆流防止装置であって、前記給水先配管につながる第1接続部と、前記給水源配管につながる第2接続部と、前記第1接続部から導入された前記逆流水を外部に排出する排水口とを有するボディと、前記ボディの内部に往復移動可能に配置された弁体と、前記第1接続部と前記排水口とを連通する連通路に設けられた弁座と、前記弁体に一体的に設けられ、前記排水口に連通する空間内で前記弁座に対して接離することにより前記連通路を開閉する弁形成部と、前記ボディの内部における前記第1接続部と前記第2接続部との間の空間を仕切るとともに、前記第1接続部側の空間部に配置された前記弁体の端部に当接して配置され、前記第1接続部側の面に前記二次圧を受け、前記第2接続部側の面に前記一次圧を受けて前記弁体と一体に動作するダイヤフラムと、を備えたことを特徴とする逆流防止装置が提供される。
【0017】
このような逆流防止装置においては、ダイヤフラムと弁体とが当接して配置されている。このダイヤフラムは、通常時は弁体と反対側の面に一次圧を受けているため、弁体側に付勢されている。このとき、弁部は閉弁状態になっており、弁形成部が弁座に当接することで弁体の移動が阻止されているため、ダイヤフラムと弁体とはほぼ密着状態となる。一方、一次圧が低くなって逆流水が導入された際には、一次圧と二次圧との差圧によって弁部が開弁してその逆流水を排水口から外部に排出する。そして、この逆流水の排出により二次圧が低くなるため、一次圧と二次圧との差圧によって弁部は再び閉弁状態に戻る。すなわち、逆流時においても、弁体とダイヤフラムは一次圧と二次圧との差圧によりほぼ密着して一体的に動作する。このため、本構成では、弁体とダイヤフラムとを固定するためのボルト及びナットやリテーナなどの別部品を設けておらず、その結果、部品点数が削減される。
【0018】
また、ダイヤフラムは弁体と当接状態にあるが、固定のための孔部を設けないため、ダイヤフラムからの気密漏れの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の逆流防止装置によれば、弁体とダイヤフラムとを固定するための別部品を設けることなく、両者の当接状態を保持することができる。このため、別部品が設けられない分、部品点数が削減されてコストを低減できるとともに、逆流防止装置全体をコンパクトに構成することができる。さらに、ダイヤフラムに固定用の孔部を設ける必要がないため、気密漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
本実施の形態は、本発明の逆流防止装置を風呂の給湯システム用に構成したものである。図1及び図2は、第1の実施の形態に係る逆流防止装置の構成を表す中央縦断面図である。図1は逆流防止装置の閉弁状態を表し、図2は逆流防止装置の開弁状態を表している。なお、給湯システム全体の構成については図8に示したものとほぼ同様であるため、その説明については省略する。
【0021】
図1に示すように、この逆流防止装置は、第1ボディ1,第2ボディ2,及び両ボディ間に介装された中継ボディ3を備えている。各ボディは、圧入により互いに接合されている。
【0022】
第1ボディ1には、給湯システムの浴槽の手前に配置された2つの逆止弁の間の配管(「給水先配管」に該当する)に接続して二次圧P2を受ける接続部4(「第1接続部」に該当する)と、大気に開放される排水口5が一体に設けられている。また、接続部4の開口中心と同軸上に、ピストン6(「弁体」に該当する)が往復移動可能に配置されている。このピストン6は、有底円筒状の本体7に有底円筒状のガイド部材8を内挿した二重構造を有する。本体7の開口端部には環状の弁パッキン9(「弁形成部」に該当する)が嵌着され、接続部4の内部通路10の内側開口端部により形成される弁座11に着脱可能になっている。これら弁パッキン9と弁座11により構成される弁部が開閉されることにより、接続部4と排水口5とをつなぐ連通路が開放又は閉塞される。また、本体7の開口端部から外側に延出したフランジ部12と第1ボディ1の内壁との間には、ピストン6を接続部4から離間する方向に付勢するスプリング13(「付勢手段」に該当する)が介装されている。
【0023】
ガイド部材8は、その底部がねじ14により本体7に固定されている。ガイド部材8の開口端には外側にやや延出するフランジ部15が設けられ、このフランジ部15により弁パッキン9が脱落するのを阻止できるようになっている。また、ガイド部材8の開口端には、接続部4の内部通路10に沿って延びる3つのガイド部16(同図には2つのみ表示されている)が設けられ、このガイド部16がその内部通路10に沿って摺動しつつガイドされることにより、ピストン6がその軸線方向に安定に往復移動できるようになっている。
【0024】
第2ボディ2には、検圧管を介して給水管(「給水源配管」に該当する)からの一次圧P1を受ける接続部17(「第2接続部」に該当する)が一体に設けられている。この第2ボディ2と中継ボディ3との間に挟持されるようにダイヤフラム18が配置され、一次圧P1を受ける接続部17と二次圧を受ける接続部4との間の空間を仕切っている。このダイヤフラム18は、周端部近傍が折り返されてカップ状に形成された本体を有し、その本体の形状に沿ってピストン6の接続部4と反対側の端部が当接して収容されるように構成されている。ダイヤフラム18は、その接続部4側の面に二次圧を受け、接続部17側の面に一次圧を受けて作動するが、その深い折り返し部により、有効受圧面積を一定に保ちながら長いストロークを作動できるようになっている。
【0025】
中継ボディ3は、軸線方向の長さが短い段付円筒状の本体を有し、その第1ボディ1に内挿された部分の端面によってピストン6のフランジ部12に当接してこれを係止するストッパ部19が構成されている。つまり、ピストン6の開弁方向のストロークは、中継ボディ3への当接によって規制されている。さらに、逆流水の大気開放中における気密漏れを防止するために、第1ボディ1と中継ボディ3との間にOリング20が配置されている。
【0026】
このようにして構成された逆流防止装置において、通常の使用状態では、図1に示すように、接続部17に検圧管を介して給水管からの元圧(一次圧P1)を受け、接続部4には逆止弁を通過する配管内の通水圧(二次圧P2)を受けている。一次圧P1は、二次圧P2よりも高いため、ダイヤフラム18がそれらの差圧を感知してピストン6を閉弁方向に駆動して弁パッキン9をその弁座11に着座させる。これにより、接続部4と排水口5とをつなぐ連通路が閉塞される。
【0027】
ここで、停電による給水加圧ポンプの停止、断水などが発生して給水管内に負圧が発生したときには、一次圧P1が二次圧P2よりも低くなるため、図2に示すように、ダイヤフラム18がその一次圧P1の低下を感知し、ピストン6が開弁方向へ移動するのを許容する。このため、ピストン6は、一次圧P1と二次圧P2との差圧とスプリング13の付勢力によって開弁方向へ移動する。このとき、弁パッキン9は弁座11からリフトするが、フランジ部12がストッパ部19に当接したときの全開位置に保持される。これにより、接続部4と排水口5との間の連通路が開放され、直列に配置された2つの逆止弁の間の配管を大気に開放する。
【0028】
このとき、もし、浴槽が給湯装置よりも高い位置に設置されていて、浴槽の手前に配置された逆止弁が異物の噛み込みなどにより水密不良となっていた場合には、浴槽内の汚水がその水頭圧により逆止弁を介して逆流防止装置まで逆流してくるが、その汚水は逆流防止装置によって大気に放出されるため、浴槽内の汚水が給湯管の方まで逆流することはない。これにより、汚水が上水側へ逆流することをこの逆流防止装置によって完全に防止することができる。
【0029】
以上に説明したように、本実施の形態の逆流防止装置においては、ダイヤフラム18とピストン6とがボルト及びナットやリテーナなどの別部品を介在させることなく、密着した状態で一体的に動作する。このため、別部品が設けられない分、部品点数が削減されてコストを低減できるとともに、逆流防止装置全体をコンパクトに構成することができる。さらに、ダイヤフラム18に固定用の孔部を設ける必要がないため、気密漏れを確実に防止することができる。
【0030】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態に係る逆流防止装置は、ピストンとダイヤフラムの各構造及び組み付け構造が異なる以外は上記第1の実施の形態の構成と同様であるため、同様の構成部分については同一の符号を付す等してその説明を省略する。図3及び図4は、第2の実施の形態に係る逆流防止装置の構成を表す中央縦断面図である。図3は逆流防止装置の閉弁状態を表し、図4は逆流防止装置の開弁状態を表している。
【0031】
図3に示すように、この逆流防止装置においては、ピストン206(「弁体」に該当する)が有底円筒状の本体207を有するが、二重構造にはなっていない。本体207の底部中央には、これを軸線方向に貫通する嵌合孔208が形成されている。
【0032】
一方、ダイヤフラム218は、ピストン206側の面に突設されて嵌合孔208に挿通される断面T字状の嵌合部219が一体成形されている。この嵌合部219の頭部が嵌合孔208に挿通された後に弾性復帰して嵌合孔208に嵌着されることにより、ダイヤフラム218とピストン206とが固定される。
【0033】
このような構成の逆流防止装置の動作は、第1の実施の形態に係る逆流防止装置とほぼ同じであり、通常は図3に示すように、二次圧P2よりも高い一次圧P1によってダイヤフラム218が弁パッキン9をその弁座11に押し付けることにより、接続部4と排水口5との間の連通路を遮断する。そして、停電又は断水などにより給水管内に負圧が発生して一次圧P1が二次圧P2よりも低くなったときには、図4に示すように、弁部が全開して、接続部4を排水口5を介して大気に連通させ、直列に配置された2つの逆止弁の間の配管を大気に開放する。このとき、たとえ、浴槽内の汚水が機能不良に陥った逆止弁を介して逆流してきたとしても、その汚水は逆流防止装置を介して大気に放出されるため、汚水が給湯装置まで逆流してしまうことを完全に防止することができる。
【0034】
以上に説明したように、本実施の形態の逆流防止装置においても、ダイヤフラム218とピストン206とがボルト及びナットやリテーナなどの別部品を介在させることなく、密着した状態で一体的に動作する。このため、別部品が設けられない分、部品点数が削減されてコストを低減できるとともに、逆流防止装置全体をコンパクトに構成することができる。
【0035】
また、ダイヤフラム218にピストン206に固定するための嵌合部219が一体成形されたため、ダイヤフラム218とピストン206とが安定して一体動作することができる。この場合も、ダイヤフラム218に固定用の孔部を設ける必要がなく、気密漏れを確実に防止することができる。
【0036】
[第3の実施の形態]
図5は、第3の実施の形態に係る逆流防止装置の構成を表す中央縦断面図である。図6は、その逆流防止装置の左側面図である。さらに、図7は、その逆流防止装置の底面図である。なお、給湯システム全体の構成については図8に示したものとほぼ同様であるため、その説明については省略する。
【0037】
図5〜図7に示すように、この逆流防止装置は、第1ボディ301と、これに圧入により嵌合された第2ボディ302とを備える。
第1ボディ301には、給湯システムの浴槽の手前に配置された2つの逆止弁の間の配管(「給水先配管」に該当する)に接続して二次圧P2を受ける接続部303(「第1接続部」に該当する)と、大気に開放される排水口304が一体に設けられている。両ボディにより形成される空間には、接続部303の開口中心と同軸上に、プラグ305(「弁体」に該当する)が軸線方向に往復移動可能に配置されている。
【0038】
ボディ301には、その接続部303の内部通路306に、プラグ305の後述する軸部を支持する軸受部307が設けられている。この軸受部307は、中央に軸受用の孔308を有し、その孔308の周囲に同心円上に配置された3つの連通孔309が設けられている。また、ボディ301の内部には、接続部303から離れる方向に延出する円筒状の弁座形成部310が設けられ、その先端面により弁座311が形成されている。
【0039】
プラグ305は、接続部303側に向かって複数段に縮径化する段付円柱状の本体312を有し、その先端が軸受部307の孔308に挿通されて摺動可能に支持される軸部313となっている。また、本体312の中央付近の外周部に設けられた溝部には、環状の弁パッキン314(「弁形成部」に該当する)が嵌着され、弁座311に着脱可能になっている。これら弁パッキン314と弁座311により構成される弁部が開閉されることにより、接続部303と排水口304とをつなぐ連通路が開放又は閉塞されるようになっている。また、本体312の軸部313と反対側の端面には、凸状の係合部315が突設されている。さらに、本体312と軸受部307との間には、プラグ305を接続部303から離間する方向に付勢するスプリング316(「付勢手段」に該当する)が介装されている。
【0040】
第2ボディ302には、検圧管を介して給水管(「給水源配管」に該当する)からの一次圧P1を受ける接続部317(「第2接続部」に該当する)が一体に設けられている。この接続部317は、接続部303と排水口304とをつなぐ連通路に対して約90度の角度で交わる方向に延びている。そして、第1ボディ301と第2ボディ302との間に挟持されるようにダイヤフラム318が配置され、一次圧P1を受ける接続部317と二次圧を受ける接続部303との間の空間を仕切っている。このダイヤフラム318は、第1の実施の形態のダイヤフラム18と比較して折り返しが浅くて作動ストロークの短いものである。ダイヤフラム318の本体319は厚くなっており、その中央部には、プラグ305の上記係合部315と相補形状の凹部からなる係合部320が形成されている。したがって、プラグ305は、その一端側が軸受部307に支持され、他端側がダイヤフラム318に支持された状態で軸線方向に往復移動する。
【0041】
このような構成の逆流防止装置の動作は、第1の実施の形態に係る逆流防止装置とほぼ同じであり、通常は、二次圧P2よりも高い一次圧P1によってダイヤフラム318が弁パッキン314をその弁座311に押し付けることにより、接続部303と排水口5との間の連通路を遮断する。そして、停電又は断水などにより給水管内に負圧が発生して一次圧P1が二次圧P2よりも低くなったときには、弁部が全開して、接続部303を排水口304を介して大気に連通させ、直列に配置された2つの逆止弁の間の配管を大気に開放する。このとき、たとえ、浴槽内の汚水が機能不良に陥った逆止弁を介して逆流してきたとしても、その汚水は逆流防止装置を介して大気に放出されるため、汚水が給湯装置まで逆流してしまうことを完全に防止することができる。
【0042】
以上に説明したように、本実施の形態の逆流防止装置においても、ダイヤフラム318とプラグ305とがボルト及びナットやリテーナなどの別部品を介在させることなく、密着した状態で一体的に動作する。このため、別部品が設けられない分、部品点数が削減されてコストを低減できるとともに、逆流防止装置全体をコンパクトに構成することができる。
【0043】
また、ダイヤフラム318とプラグ305とが各係合部を介して互いに係合するように構成されているため、ダイヤフラム318とプラグ305とが安定して一体動作することができる。この場合も、ダイヤフラム318に固定用の孔部を設ける必要がないため、気密漏れを防止することができる。
【0044】
なお、上記各実施の形態では、本発明の逆流防止装置を風呂の給湯システム用に構成した例を示したが、逆流が発生する可能性がある様々なシステムに適用可能であることはいうまでもない。
【0045】
また、上記各実施の形態では、ピストン6,206、プラグ305を、それぞれダイヤフラム18,218,318の側に付勢する付勢手段にスプリングを採用したが、ゴムその他の付勢手段を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施の形態に係る逆流防止装置の構成を表す中央縦断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る逆流防止装置の構成を表す中央縦断面図である。
【図3】第2の実施の形態に係る逆流防止装置の構成を表す中央縦断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る逆流防止装置の構成を表す中央縦断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る逆流防止装置の構成を表す中央縦断面図である。
【図6】第3の実施の形態に係る逆流防止装置の左側面図である。
【図7】第3の実施の形態に係る逆流防止装置の底面図である。
【図8】給湯システムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1,301 第1ボディ
2,302 第2ボディ
3 中継ボディ
4,303 接続部
5,304 排水口
6,206 ピストン
9,314 弁パッキン
11 弁座
13,316 スプリング
17,317 接続部
18,218,318 ダイヤフラム
19 ストッパ部
208 嵌合孔
219 嵌合部
305 プラグ
307 軸受部
311 弁座
313 軸部
315,320 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源配管と給水先配管との間に配置されて、前記給水源配管の一次圧と前記給水先配管の二次圧とを受けて開閉し、前記給水先配管を流れてきた逆流水を外部に排水することで、前記給水源配管への逆流を防止する逆流防止装置であって、
前記給水先配管につながる第1接続部と、前記給水源配管につながる第2接続部と、前記第1接続部から導入された前記逆流水を外部に排出する排水口とを有するボディと、
前記ボディの内部に往復移動可能に配置された弁体と、
前記第1接続部と前記排水口とを連通する連通路に設けられた弁座と、
前記弁体に一体的に設けられ、前記排水口に連通する空間内で前記弁座に対して接離することにより前記連通路を開閉する弁形成部と、
前記ボディの内部における前記第1接続部と前記第2接続部との間の空間を仕切るとともに、前記第1接続部側の空間部に配置された前記弁体の端部に当接して配置され、前記第1接続部側の面に前記二次圧を受け、前記第2接続部側の面に前記一次圧を受けて前記弁体と一体に動作するダイヤフラムと、
を備えたことを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】
前記ダイヤフラムは、前記ボディに固定された周端部近傍が折り返されてカップ状に形成された本体を有し、前記本体に前記弁体の前記端部が部分的に収容されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。
【請求項3】
前記弁体は、有底筒状の本体の底部に穿設された嵌合孔を有し、
前記ダイヤフラムは、前記弁体側の面に突設された嵌合部を有し、前記嵌合部が前記嵌合孔に挿通嵌合されることにより前記弁体に固定されていること、
を特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。
【請求項4】
前記弁体と前記ダイヤフラムとが、それぞれの対向面に形成された相補形状の係合部により互いに係合していることを特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。
【請求項5】
前記弁体に対して前記ダイヤフラム側への付勢力を付与する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。
【請求項6】
前記弁体は、前記端部が前記ダイヤフラムに支持され、前記端部とは反対側に設けられた軸部が、前記ボディに設けられた軸受部に軸線方向に摺動自在に支持されたことを特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。
【請求項7】
前記ボディが、前記第1接続部を形成する第1ボディと前記第2接続部を形成する第2ボディから構成され、
前記ダイヤフラムは、前記第1ボディと前記第2ボディとによって挟持されていること、
を特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−342927(P2006−342927A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170808(P2005−170808)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】