説明

逆流防止装置

【課題】 水分放出や透過リーク等の問題を生じることなく、高純度ガスや有害ガス、パージガス等を取り扱うガスラインの他のガスラインからのガスの逆流を瞬時に検知してガスの逆流を防止できるようにする。
【解決手段】 高純度ガスや有害ガス、パージガスが流れるガスラインLに介設した流体駆動型開閉バルブ2の二次側に設置され、他のガスラインL′からのガスが流体駆動型開閉バルブ2の二次側へ逆流したときにこれを検知して流体駆動型開閉バルブ2を閉止するようにした逆流防止装置1であって、前記逆流防止装置1は、逆流と判断する流体駆動型開閉バルブ2の二次側の圧力を検知する圧力スイッチ3と、流体駆動型開閉バルブ2の駆動部2bへ作動流体Aを供給して流体駆動型開閉バルブ2を制御する電磁バルブ4と、圧力スイッチ3からの検出信号に基づいて作動し、流体駆動型開閉バルブ2を閉止するように前記電磁バルブ4を制御するリレー5とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体製造設備等に於いて使用する高純度ガスや有害ガス(腐食性ガスや毒性ガス)等を取り扱うガスラインや窒素ガス等の不活性ガスを取り扱うパージガスライン等のガスラインに組み込んで使用するものであり、特に、ガスラインに介設した流体駆動型開閉バルブの二次側に設置され、他のガスラインからのガスが流体駆動型開閉バルブの二次側へ逆流した際に、逆流したガスの圧力を瞬時に検知すると同時に流体駆動型開閉バルブを強制的に閉止させるようにした逆流防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造設備等に於いては、夫々異なる種類のガスを流す各ガスラインにマスフローコントローラ(又は圧力式流量制御装置)及び開閉バルブ等を夫々介設し、制御装置からの信号によりマスフローコントローラ(又は圧力式流量制御装置)及び開閉バルブ等を制御することによって、複数の異なる種類のガスを混合して又は順次切り換えながらプロセスチャンバーへ供給するようになっている。
又、ガスラインに違う種類のガスを流す場合やガスライン内のガスを抜き出したりする場合には、ガスラインに分岐状に接続したパージガスラインからガスラインへ窒素ガス等のパージガスを供給し、ガスラインをパージするようにしている。
【0003】
ところで、HCl、Cl2 、HBr等のガスを流すガスラインに於いては、他のガスラインに介設したバルブやコントローラ等の誤動作により他のガスラインからガスが流れ込むと云う問題がしばしば発生している。現実にシランガスのガスラインにパージガスラインからパージガスが逆流する問題が発生する可能性が考えられる。
又、バルブ等の誤動作がなくても、半導体製造装置に於いては、大流量のガスを流すガスラインのガスが小流量のガスを流すガスラインへ逆流すると云う問題が発生する可能性が考えられる。
【0004】
このように、他のガスラインからのガスの逆流があると、ガスラインの上流側配管及びガスの供給源であるガスボンベにまでガスが流れ込み、ガスボンベに接続されている全ての配管や機器等を汚染することになる。特に、シランガスのように反応性に富んだガスを使用している場合には、他のガスラインからのガスの逆流によってガスライン内に反応生成物が起生し、これが原因でガスラインのバルブに漏洩が生じたり、或いはガスラインのマスフローコントローラ等に詰まりが生じると云う問題が発生する。
又、逆流するガスが不活性ガス等の反応性のないガスであっても、プロセス中にガスの逆流が発生すると、プロセスに必要なガス流量、ガス混合比を確保することができず、多数の不良製品を製作してしまうことになる。例えば、半導体製造設備に於いて、シランガスが流れるガスラインに窒素ガスが逆流してシランガスに窒素ガスが混じった場合には、膜厚が確保できなくなり、ウエハーの成膜処理を行えないと云う問題が発生する。
【0005】
従来、ガスラインに於けるガスの逆流を防止するには、通常、逆止弁(チャッキ弁)が使用されている。
この種の逆止弁としては、図示していないが、弁本体内に流入通路及び流出通路が開口する弁室を設け、該弁室内に流入通路の開口部に形成した弁座に当離座すべく摺動する弁体を設け、該弁体をコイルスプリングにより弁座に押圧附勢させたものが良く知られている。
【0006】
しかし、前記逆止弁に於いては、弁体が摺動するため、コイルスプリングを使用していることとも相俟って、摩耗粉が発生し易く、又、ガス溜まり等の流体滞留部が発生し易くなっている。その結果、高クリーン度が要求される半導体、医薬品等の製造装置に於ける流体輸送ラインや真空機器に於ける真空ラインには適さないと云う問題があった。
更に、この逆止弁は、内部のシール部(弁座)にゴム部材が組み込まれているため、このゴム部材から水分が放出されたり、ガスの透過によるリークが発生したりすることがあり、腐食性のある実ガスと反応して配管の汚染に繋がると云う問題があった。
【0007】
一方、摩耗粉やガス溜まり等の問題を解決する逆止弁として、金属製のダイヤフラムを用いた逆止弁が開発され、実用に供されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3等参照)。
前記逆止弁は、金属製のダイヤフラムを流体通路の途中に形成した弁座へ当座させて流体通路を閉塞するようにしているため、摩耗粉が発生せず、且つガス溜まり等の流体滞留部が殆ど生じず、高クリーン度が要求される半導体等の製造装置に於ける流体輸送ラインや真空機器に於ける真空ラインにも好適に使用できる等、優れた利点がある。
【0008】
しかし、この逆止弁に於いても、上述した逆止弁と同様に内部のシール部(弁座)にゴム部材が組み込まれているため、このゴム部材から水分が放出されたり、ガスの透過によるリークが発生したりすると云う問題があった。
【0009】
そのため、高純度ガスや有害ガス等を取り扱う半導体製造設備等のガスラインに於いては、逆止弁の設置は不活性ガス等の腐食性のないガスを流すガスラインへの設置に限定されており、腐食性のあるガスを流すガスラインの配管には、逆止弁が使用されることはなかった。又、腐食性のないガスが流れるガスラインに於いても、逆止弁は水分の放出があるために使用されていなかった(但し、パージガスラインには、逆止弁が使用されていた)。
従って、半導体製造設備等の分野に於いては、今まで高純度ガスや腐食性ガス等のガスが流れるガスラインにガスの逆流を防止する逆止弁等の機器や装置が設置されておらず、上述のような問題が発生することのない新たな逆流防止装置の開発が要望されている。
【特許文献1】特開平5−332463号公報
【特許文献2】特開平6−235469号公報
【特許文献3】特開平6−265035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、水分放出や透過リーク等の問題を生じることなく、高純度ガスや有害ガス、パージガス等を取り扱うガスラインの他のガスラインからのガスの逆流を瞬時に検知してガスの逆流を防止できるようにした逆流防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、高純度ガスや有害ガス、パージガスが流れるガスラインに介設した流体駆動型開閉バルブの二次側に設置され、他のガスラインからのガスが流体駆動型開閉バルブの二次側へ逆流したときにこれを検知して流体駆動型開閉バルブを閉止するようにした逆流防止装置であって、前記逆流防止装置は、逆流と判断する流体駆動型開閉バルブの二次側の圧力を検知する圧力スイッチと、流体駆動型開閉バルブの駆動部へ作動流体を供給して流体駆動型開閉バルブを制御する電磁バルブと、圧力スイッチからの検出信号に基づいて作動し、流体駆動型開閉バルブを閉止するように前記電磁バルブを制御するリレーとから構成されていることに特徴がある。
【0012】
又、本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、圧力スイッチが、逆流と判断する流体駆動型開閉バルブの二次側の設定圧力を表示する圧力表示部と、流体駆動型開閉バルブを閉止させるための二次側の設定圧力を自由に調整できる操作部とを備えていることに特徴がある。
【0013】
更に、本発明の請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明に於いて、圧力スイッチ、電磁バルブ及びリレーを一つのパッケージにまとめて収容し、当該パッケージをガスラインに介設した流体駆動型開閉バルブの二次側に設置するようにしたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の逆流防止装置は、ガスラインに介設した流体駆動型開閉バルブの二次側の圧力を検知する圧力スイッチと、流体駆動型開閉バルブを制御する電磁バルブと、圧力スイッチからの検出信号に基づいて作動し、流体駆動型開閉バルブを閉止するように電磁バルブを制御するリレーとから構成されているため、他のガスラインのガスが流体駆動型開閉バルブ側へ逆流して圧力が上昇したときに、圧力スイッチにより逆流と判断する流体駆動型開閉バルブの二次側の圧力を瞬時に検知すると同時にリレーにより電磁バルブを流体駆動型開閉バルブが閉止するように制御することができる。その結果、本発明の逆流防止装置は、水分放出や透過リーク等の問題を生じることなく、他のガスラインからのガスの逆流を防止することができ、高純度ガスや有害ガス等のガスを取り扱うガスラインのガスの逆流による危険な状態を確実に回避することができる。
又、本発明の逆流防止装置は、圧力スイッチが、逆流と判断する流体駆動型開閉バルブの二次側の設定圧力を表示する圧力表示部と、前記設定圧力を自由に調整できる操作部とを備えているため、逆流と判断する圧力閾値を自在に調整することが可能となり、設置する各ガスラインの圧力が異なっても、逆流防止装置を各ガスラインに確実に設置することができる。然も、設定圧力を表示する圧力表示部を備えているため、設定圧力の設定調整も簡単且つ正確に行うことができる。
更に、本発明の逆流防止装置は、圧力スイッチと、電磁バルブと、リレーとから構成されているため、既設のガスラインに設置する際には必要最小限の加工で済み、既設のガスラインにも簡単且つ容易に設置することができる。然も、圧力スイッチ、電磁バルブ及びリレーを一つのパッケージにまとめて収容した場合には、既設のガスラインへより一層簡単且つ容易に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る逆流防止装置1を設置したガスラインLの概略系統図を示し、当該逆流防止装置1は、半導体製造設備等に於いて使用する高純度ガスや有害ガス(腐食性ガスや毒性ガス)等を取り扱うガスラインや窒素ガス等の不活性ガスを取り扱うパージガスライン等のガスラインLに組み込んで使用するものであり、ガスラインLに介設した流体駆動型開閉バルブ2の二次側に設置され、他のガスラインL′からのガスが流体駆動型開閉バルブ2の二次側へ逆流した際に、逆流したガスの圧力を瞬時に検知すると同時に流体駆動型開閉バルブ2を強制的に閉止させるようにしたものである。
【0016】
尚、ガスラインLに介設した流体駆動型開閉バルブ2には、発塵が少なくて耐食性及びガス置換性等に優れた所謂ダイレクトタッチ式のメタルダイヤフラムバルブが使用されている。この実施の形態に於いては、流体駆動型開閉バルブ2には、ダイレクトタッチ式のノーマルオープン型のメタルダイヤフラムバルブや同じくダイレクトタッチ式のノーマルクローズ型のメタルダイヤフラムバルブが使用されている。これら両メタルダイヤフラムバルブ(流体駆動型開閉バルブ2)は、流体通路、弁室及び弁座を形成したボディ2aと、弁室内に配設されて弁座へ当離座するメタル製のダイヤフラム(図示省略)と、ボディ2aに設けられてダイヤフラムを操作する駆動部2b(エアーシリンダ)等から構成されている。
【0017】
本発明の実施の形態に係る逆流防止装置1は、図1に示す如く、逆流と判断する流体駆動型開閉バルブ2の二次側の圧力を検知する圧力スイッチ3と、流体駆動型開閉バルブ2の駆動部2bへ作動流体Aであるエアーを供給して流体駆動型開閉バルブ2を制御する電磁バルブ4と、圧力スイッチ3からの検出信号に基づいて作動し、流体駆動型開閉バルブ2を閉止するように前記電磁バルブ4を制御するリレー5とから構成されている。
又、逆流防止装置1を構成する圧力スイッチ3、電磁バルブ4及びリレー5は、一つのパッケージ6にまとめて収納された状態で流体駆動型開閉バルブ2の二次側に設置されており、配線7及びコネクタ8を介して警報器(図示省略)を備えた制御装置9に接続されている。
【0018】
前記圧力スイッチ3は、流体駆動型開閉バルブ2の二次側の圧力が逆流と判断する設定圧力になったときにこの設定圧力を検知して制御装置9へ検出信号やアラーム信号等の出力信号を出すものであり、当該圧力スイッチ3には、センサーチップ(感圧素子)を利用したメタルダイヤフラム型の圧力スイッチ3が利用されている。
即ち、圧力スイッチ3は、図2(A)及び(B)に示す如く、ケース3a内にセンサーチップ、ダイヤフラム、ダイヤフラムベース及び圧力伝達用媒体(何れも省略)等を内蔵すると共に、ケース3aの下面側にガスが導入される継手3bを設けた構造となっており、ケース3aの下面側に設けた継手3bが配管10を介して流体駆動型開閉バルブ2の二次側に連通状に接続されている。
従って、この圧力スイッチ3に於いては、流体駆動型開閉バルブ2の二次側のガスが配管10及び継手3bを介して圧力スイッチ3の内部へ流入し、そのガス圧がダイヤフラム及び圧力伝達用媒体を介してセンサーチップへ加わってガスの圧力が検知されると、その検知信号及びアラーム信号等の出力信号が制御装置9へ出力されるようになっている。
又、圧力スイッチ3は、図2(A)及び(B)に示す如く、逆流と判断する流体駆動型開閉バルブ2の二次側の設定圧力をLED等の発光源を用いて表示するデジタル式の圧力表示部3cと、前記設定圧力を自由に調整することができる複数の操作スイッチを有する操作部3dとを備えている。これら圧力表示部3c及び操作部3dは、何れもケース3aの上面側に設けられており、パッケージ6に形成した開口(図示省略)からパッケージ6の外方へ露出し、圧力表示部3cを視認することができると共に、操作部3dの操作スイッチを操作することができるようになっている。
尚、ガスと接触する圧力スイッチ3のダイヤフラムや継手3b、配管10等は、耐食性等に優れたステンレス材(SUS316L)やステンレス材と同等の金属材により夫々形成されている。
【0019】
前記電磁バルブ4は、ボディに形成した流体通路の入口側がチューブ11を介して作動流体A(エアー)の供給源(図示省略)に接続されていると共に、流体通路の出口側がチューブ11を介して流体駆動型開閉バルブ2の駆動部2b(エアーシリンダ)に接続されており、電磁バルブ4の流体通路が開放されたときに流体駆動型開閉バルブ2の駆動部2b(エアーシリンダ)へ圧力が0.34MPa〜0.49MPaの作動流体A(エアー)を供給できるように構成されている。この実施の形態に於いては、電磁バルブ4には、ノーマルオープン型の電磁バルブ4やノーマルクローズ型の電磁バルブ4が使用されている。
【0020】
前記リレー5は、リレーコイル5a及び常閉型のリレー接点5b(又は常開型のリレー接点5b)から成り、圧力スイッチ3、電磁バルブ4及び制御装置9に配線7等を介して夫々接続され、圧力スイッチ3からの検出信号に基づいて作動し、流体駆動型開閉バルブ2を閉止するように前記電磁バルブ4を制御するものである。
【0021】
而して、上述した逆流防止装置1によれば、HCl、Cl2 、HBr等のガスを流す半導体製造装置等のガスラインLに、他のガスラインL′のバルブVやコントローラ等の誤動作により他のガスラインL′からのガスが流れ込み、ガスラインLに介設した流体駆動型開閉バルブ2の二次側の圧力が上昇すると、圧力スイッチ3が逆流と判断する流体駆動型開閉バルブ2の二次側の圧力を瞬時に検知し、その出力信号(検知信号及びアラーム信号)を制御装置9へ入力する。
圧力スイッチ3からの出力信号が制御装置9へ入力されると、制御装置9に設けた警報器が作動して警報を発すると共に、制御装置9が直ちに圧力スイッチ3に流体駆動型開閉バルブ2の閉止信号を送り、これによりリレー5が作動して電磁バルブ4を流体駆動型開閉バルブ2が閉止するように制御する。その結果、流体駆動型開閉バルブ2は、閉弁状態となり、ガスラインLの逆流が防止されることになる。
【0022】
このように、前記逆流防止装置1は、HCl、Cl2 、HBr等のガスを流すガスラインLに、他のガスラインL′のバルブV等の誤動作により他のガスラインL′からのガスが流れ込んだ際に、圧力スイッチ3により逆流と判断するガスの圧力を瞬時に検知し、制御装置9へ出力信号を出力して警報器により警報を発すると共に、リレー5及び電磁バルブ4により流体駆動型開閉バルブ2を自動的に閉止するようにしているため、半導体製造装置等に於けるプロセス異常及びプロセスによる製品の不具合を未然に防止することができる。
又、この逆流防止装置1は、逆流と判断する設定圧力を表示する圧力表示部3c及び前記設定圧力を自由に調整できる操作部3dを備えた圧力スイッチ3を使用しているため、逆流と判断する圧力閾値を自在に設定調整することができる。その結果、ガスラインLに介設した減圧弁、配管圧損、使用するガスボンベ等の諸条件によって、ガスラインL毎に使用するガスの圧力が異なる場合でも、逆流防止装置1を各ガスラインLに確実に設置することができる。
更に、この逆流防止装置1は、圧力スイッチ3と、電磁バルブ4と、リレー5とから構成されているため、逆流防止のために新たに配管等の設備を作り直す必要もなく、既設のガスラインLにも簡単且つ容易に設置することができる。然も、圧力スイッチ3、電磁バルブ4及びリレー5を一つのパッケージ6にまとめて収容しているため、逆流防止装置1を既設のガスラインLへより一層簡単且つ容易に設置することができる。
【0023】
図3は上述した逆流防止装置1を用いてガスの逆流防止試験を行ったガス配管系の概略系統図を示すものであり、当該ガス配管系は、上流側から下流側へ向かって圧力調整器12、上流側圧力スイッチ13、逆流防止装置1及び開閉バルブV1を順次介設したメインガスラインMLと、逆流防止装置1の二次側のメインガスラインMLに分岐状に接続され、圧力調整器14及び開閉バルブV2を介設した下流側加圧ガスラインL″とから構成されている。
尚、この逆流防止試験に用いる逆流防止装置1は、図4及び図5に示す如く、圧力スイッチ3を配管10及びエルボ15を介して流体駆動型開閉バルブ2の二次側通路に連通状に接続すると共に、電磁バルブ4及びリレー5を流体駆動型開閉バルブ2の駆動部2bの上面側に配設した構造となっている。
【0024】
而して、逆流防止装置1を用いたガスの逆流防止試験は、先ず、逆流防止装置1の流体駆動型開閉バルブ2の上流側の圧力を100kPaGに調整すると共に、メインガスラインMLに介設した開閉バルブV1の下流側へN2 ガスが5SLM(5000SCCM)流れる状態にする。次に、下流側加圧ガスラインL″から逆流を想定した圧力を加える。このとき、逆流防止装置1の圧力スイッチ3の逆流と判断する圧力閾値は110kPaGに設定する。又、逆流防止装置1の電磁バルブ4は、Cv値が0.008の電磁バルブ4とCv値が0.075の電磁バルブ4を使用する。
これらの条件で下記の二つのパターンを評価した。
(1)下流側加圧ガスラインL″に介設した開閉バルブV2を開放し、下流側加圧ガスラインL″に介設した圧力調整器14で下流側の圧力(流体駆動型開閉バルブ2の二次側の圧力)を徐々に上昇させる。
(2)下流側加圧ガスラインL″に介設した開閉バルブV2を閉止状態から開放状態にして瞬時に下流側(流体駆動型開閉バルブ2の二次側)に275kPaGの圧力を印加する。
【0025】
図6(A)及び(B)と図7(A)及び(B)は上記の逆流防止試験の結果を示すグラフである。
即ち、図6(A)及び(B)は逆流防止装置1にCv値が0.008の電磁バルブ4を組み込んだ場合の逆流防止装置1の評価結果をグラフ化したものであり、図6(A)は下流側加圧ガスラインL″に介設した開閉バルブV2を開放し、下流側加圧ガスラインL″に介設した圧力調整器14で下流側の圧力を徐々に上昇させた場合を示す。この場合、下流側の圧力上昇による流体駆動型開閉バルブ2の閉止動作にて、上流側の圧力上昇は動圧から静圧への上昇分(25kPa)を含めて35kPaとなる。又、図6(B)は下流側加圧ガスラインLV″に介設した開閉バルブV2を閉止状態から開放状態にして瞬時に下流側に275kPaGの圧力を印加した場合を示す。この場合、下流側の圧力上昇による流体駆動型開閉バルブ2の閉止動作にて、上流側の圧力上昇は動圧から静圧への上昇分(25kPa)を含めて125kPaとなる。又、電磁バルブ4のCv値が0.008と小さいため、電磁バルブ4の閉時間が150msecとなり、上流側の圧力上昇が大きくなっている。
【0026】
一方、図7(A)及び(B)は逆流防止装置1にCv値が0.075の電磁バルブ4を組み込んだ場合の逆流防止装置1の評価結果をグラフ化したものであり、図7(A)は下流側加圧ガスラインL″に介設した開閉バルブV2を開放し、下流側加圧ガスラインL″に介設した圧力調整器14で下流側の圧力を徐々に上昇させた場合を示す。この場合、下流側の圧力上昇による流体駆動型開閉バルブ2の閉止動作にて、上流側の圧力上昇は動圧から静圧への上昇分(25kPa)を含めて35kPaとなる。又、図7(B)は下流側加圧ガスラインL″に介設した開閉バルブV2を閉止状態から開放状態にして瞬時に下流側に275kPaGの圧力を印加した場合を示す。この場合、下流側の圧力上昇による流体駆動型開閉バルブ2の閉止動作にて、上流側の圧力上昇は動圧から静圧への上昇分(25kPa)を含めて50kPaとなる。又、電磁バルブ4のCv値が0.075と大きいため、電磁バルブ4の閉時間が40msecとなり、上流側の圧力上昇が小さくなっている。
【0027】
図6及び図7のグラフからも明らかなように、電磁バルブ4にはCv値の大きい電磁バルブ4を使用した方が上流側の圧力上昇が少なくて済むことが判る。従って、逆流防止装置1の電磁バルブ4には、Cv値の大きい電磁バルブ4を使用することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る逆流防止装置1は、主として半導体製造設備等のガスラインLに於いて利用されるが、その利用対象は上記半導体製造装置等に限定されるものではなく、化学産業や薬品産業、食品産業等の各種装置に於けるガスラインLに於いても利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る逆流防止装置を設置したガスラインの概略系統図である。
【図2】逆流防止装置に用いる圧力スイッチを示し、(A)は圧力スイッチの平面図、(B)は圧力スイッチの正面図である。
【図3】逆流防止装置を用いてガスの逆流防止試験を行ったガス配管系の概略系統図である。
【図4】ガスの逆流防止試験に用いた逆流防止装置の正面図である。
【図5】同じくガスの逆流防止試験に用いた逆流防止装置の平面図である。
【図6】逆流防止装置を用いた逆流防止試験の結果を示し、逆流防止装置にCv値が0.008の電磁バルブを組み込んだ場合の逆流防止装置の評価結果を示すグラフである。
【図7】逆流防止装置を用いた逆流防止試験の結果を示し、逆流防止装置にCv値が0.075の電磁バルブを組み込んだ場合の逆流防止装置の評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1は逆流防止装置、2は流体駆動型開閉バルブ、2bは流体駆動型開閉バルブの駆動部、3は圧力スイッチ、3cは圧力スイッチの圧力表示部、3dは圧力スイッチの操作部、4は電磁バルブ、5はリレー、6はパッケージ、Aは作動流体、Lは逆流防止装置を設置するガスライン、L′は他のガスライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度ガスや有害ガス、パージガスが流れるガスライン(L)に介設した流体駆動型開閉バルブ(2)の二次側に設置され、他のガスライン(L′)からのガスが流体駆動型開閉バルブ(2)の二次側へ逆流したときにこれを検知して流体駆動型開閉バルブ(2)を閉止するようにした逆流防止装置(1)であって、前記逆流防止装置(1)は、逆流と判断する流体駆動型開閉バルブ(2)の二次側の圧力を検知する圧力スイッチ(3)と、流体駆動型開閉バルブ(2)の駆動部(2b)へ作動流体(A)を供給して流体駆動型開閉バルブ(2)を制御する電磁バルブ(4)と、圧力スイッチ(3)からの検出信号に基づいて作動し、流体駆動型開閉バルブ(2)を閉止するように前記電磁バルブ(4)を制御するリレー(5)とから構成されていることを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】
圧力スイッチ(3)が、逆流と判断する流体駆動型開閉バルブ(2)の二次側の設定圧力を表示する圧力表示部(3c)と、流体駆動型開閉バルブ(2)を閉止させるための二次側の設定圧力を自由に調整できる操作部(3d)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の逆流防止装置。
【請求項3】
圧力スイッチ(3)、電磁バルブ(4)及びリレー(5)を一つのパッケージ(6)にまとめて収容し、当該パッケージ(6)をガスライン(L)に介設した流体駆動型開閉バルブ(2)の二次側に設置するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の逆流防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−205500(P2007−205500A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26454(P2006−26454)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】