説明

逆浸透膜モジュールおよびこれを組み込んだ浄水システム

【課題】逆浸透膜が微生物によって閉塞されるのを抑制することのできる逆浸透膜モジュールを得るとともに常時使用することのできる浄水システムを得る。
【解決手段】逆浸透膜モジュール1は、袋状に形成された逆浸透膜11と、当該逆浸透膜11の内側に配置される透過水側スペーサ12と、逆浸透膜11の外側に配置される給水側スペーサ13と、を有しており、この逆浸透膜モジュール1の給水側スペーサ13に抗菌・抗カビ剤を配合することで、蛇口7を閉じたときに、給水側スペーサ13に配合した抗菌・抗カビ剤が給水側スペーサ13の配置内に残存した水に溶出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜モジュールおよびこれを組み込んだ浄水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水システムとして、原水タンクから送られる原水中の残留塩素を活性炭フィルタで除去した後、軟水化手段によって軟水化し、軟水化した原水を逆浸透膜モジュールで濾過して精製水を作り出し、作り出された精製水を精製水タンクに一旦貯留して、精製水タンクから取り出して使用するようにしたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、浄水システムに、逆浸透膜モジュールおよび精製水タンクを洗浄・消毒する薬液タンクを設け、薬液により逆浸透膜モジュールを洗浄・消毒することで微生物を殺菌し、逆浸透膜が微生物によって閉塞されてしまうのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−8958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の浄水システムにあっては、薬液を使用した後に配管内を洗浄する必要があり、洗浄作業に多くの手間が掛かってしまう。また、薬液の使用時および使用後の洗浄時には浄水システムを休止する必要があるため、常時使用することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、逆浸透膜が微生物によって閉塞されるのを容易に抑制することのできる逆浸透膜モジュールを得るとともに常時使用することのできる浄水システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明にあっては、袋状に形成された逆浸透膜と、当該逆浸透膜の内側に配置される透過水側スペーサと、前記逆浸透膜の外側に配置される給水側スペーサと、を有し、給水側スペーサに導入された供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールであって、前記給水側スペーサに、抗菌・抗カビ剤を配合したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明にあっては、袋状に形成された逆浸透膜と、当該逆浸透膜の内側に配置される透過水側スペーサと、前記逆浸透膜の外側に配置される給水側スペーサと、を有し、給水側スペーサに導入された供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールであって、前記給水側スペーサを透光性部材で形成するとともに、当該給水側スペーサに紫外線を照射するUVランプを設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明にあっては、請求項2に記載の逆浸透膜モジュールにおいて、前記透光性部材として光ファイバーを用いたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明にあっては、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の逆浸透膜モジュールにおいて、前記逆浸透膜モジュールは、前記逆浸透膜の内側に前記透過水側スペーサを配置するとともに当該逆浸透膜の外側に前記給水側スペーサを配置し、袋状となった逆浸透膜の開放側端部を集水管の内部と連通するように固定した状態で当該集水管の周りに巻き付けるとともに、最外周を防水性の膜によって水密に被覆し、前記集水管の一端側に、供給口を形成した第1の蓋体を取り付けるとともに、他端に、透過水吐出口および濃縮水吐出口を形成した第2の蓋体を取り付けることで形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明にあっては、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の逆浸透膜モジュールを浄水システムに組み込んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、袋状となった逆浸透膜の外側に配置される給水側スペーサに抗菌・抗カビ剤を配合したので、逆浸透膜モジュール内で水が停滞した状態では、給水側スペーサに配合した抗菌・抗カビ剤が給水側スペーサの配置内に残存した水に溶出される。そして、溶出した抗菌・抗カビ剤によって給水側スペーサで微生物が繁殖するのが抑制されるとともに、給水側スペーサで繁殖した微生物を静菌できるようになる。そのため、逆浸透膜が微生物により閉塞されてしまうのを容易に抑制することができるようになる。
【0013】
請求項2の発明によれば、袋状となった逆浸透膜の外側に配置される給水側スペーサを透光性部材で形成するとともに、当該給水側スペーサに紫外線を照射するUVランプを設けたため、UVランプから照射された紫外線が給水側スペーサの透光性部材を通って給水側スペーサの広範囲に行き渡ることになる。その結果、給水側スペーサで繁殖した微生物を紫外線によって静菌でき、袋状となった逆浸透膜の外側に形成される給水側スペーサにおける微生物の繁殖を抑制することができる。そのため、逆浸透膜が微生物により閉塞されてしまうのを容易に抑制することができるようになる。
【0014】
請求項3の発明によれば、透光性部材として光ファイバーを用いることで、UVランプから照射された紫外線の透過率を高めることができるため、紫外線を給水側スペーサのより広範囲に行き渡らせることができ、給水側スペーサの静菌効率をより一層高めることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、逆浸透膜の内側に透過水側スペーサを配置するとともに当該逆浸透膜の外側に給水側スペーサを配置し、袋状となった逆浸透膜の開放側端部を集水管の内部と連通するように固定した状態で当該集水管の周りに巻き付けるとともに、最外周を防水性の膜によって水密に被覆し、集水管の一端側に、供給口を形成した第1の蓋体を取り付けるとともに、他端に、透過水吐出口および濃縮水吐出口を形成した第2の蓋体を取り付けることで逆浸透膜モジュールを形成することで、逆浸透膜モジュールを浄水システムに容易に組み込むことができるようになる。
【0016】
請求項5の発明によれば、常時使用することのできる浄水システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかる逆浸透膜モジュールの一部を破断して展開した斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す逆浸透膜モジュールの要部の組み立て手順を(a)〜(c)に順を追って示す斜視図である。
【図3】図3は、逆浸透膜モジュールが組み込まれる浄水システムの一例を示す全体構成図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態にかかる逆浸透膜モジュールの一部を破断して展開した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0019】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる逆浸透膜モジュール1は、図3に示すように、原水から浄水を作り出す浄水システムPに組み込まれている。
【0020】
具体的には、本実施形態で用いる浄水システムPは、主として家庭用の飲料水を浄化する装置として用いられるものであり、第1のプレフィルタ2A、第1の活性炭フィルタ2Bおよび第2のプレフィルタ2Cからなる前処理装置2と、第1のプレフィルタ2Aと第1の活性炭フィルタ2Bとの間に配置されるポンプ3と、前記逆浸透膜モジュール1と、浄水タンク4と、第2の活性炭フィルタ5と、を備えている。
【0021】
そして、配管Paを介して浄水システムPに導入される水道水(原水)は、第1のプレフィルタ2A(約5um)で粗ゴミが除去された後、ポンプ3で加圧されて第1の活性炭フィルタ2Bに送られ、ここで残留塩素が除去されるとともに、次の第2のプレフィルタ2C(約1um)で微粒子が除去されて原水の前処理が行われる。
【0022】
前処理が完了した供給水は、開閉弁6の一次側流路6aから逆浸透膜モジュール1の給水口1aに供給され、逆浸透膜モジュール1で濾過された透過水(浄水)は透過水吐出口1bから開閉弁6の二次側流路6bを介して配管Pbに送給される。配管Pbは、浄水タンク4に通ずる経路と、第2の活性炭フィルタ5および蛇口7に通ずる経路と、に分岐しており、逆浸透膜モジュール1で処理された浄水は、浄水タンク4に給水されるとともに第2の活性炭フィルタ5を通過して蛇口7から給水されるようになっている。一方、逆浸透膜モジュール1で濾過されなかった濃縮水は、濃縮水吐出口1cから配管Pcを介して排出される。
【0023】
また、配管Pbには圧力スイッチ8が設けられると共に、開閉弁6の二次側流路6bに逆止弁9が設けられており、配管Pcには絞り弁10が設けられている。
【0024】
そして、かかる構成とすることで浄水システムPは以下のように動作する。
【0025】
まず、蛇口7を閉めると、配管Pb内の浄水が浄水タンク4に給水されると同時に経路内の水圧が上昇し、一定の水圧に達すると圧力スイッチ8が検知してポンプ3が停止する。このようにポンプ3が停止すると、開閉弁6の二次側流路6bは逆止弁9により高圧が保持されるが、一次側流路6aの水圧は濃縮水を排出する配管Pcへと排出されるため水圧が徐々に低下する。そして、開閉弁6の二次側流路6bと一次側流路6aとの圧力差が所定値に達すると、開閉弁6の内部に設けられた弁が二次側流路6bの圧力で押されて一次側流路6aを遮断する。
【0026】
次に、蛇口7を開けると、浄水タンク4内に溜められた水が供給されることにより、開閉弁6の二次側流路6bおよび配管Pb内の水圧が下降し、その圧力が一定の水圧よりも下がると圧力スイッチ8がこれを検知してポンプ3が作動する。また、二次側流路6bの圧力が低下することにより、開閉弁6が一側流路6aを開き、前処理装置2を経由した供給水が逆浸透膜モジュール1の給水口1aに供給され、透過水吐出口1bから吐出される浄水が二次側流路6bおよび配管Pbを介して蛇口7から給水される。このように、蛇口7を開・閉することでポンプ3が作動・停止するように浄水システムPを構成することで、浄水システムPが常に浄水供給可能な態勢となるようにしている。
【0027】
ここで、逆浸透膜モジュール1は、図1に示すように構成されている。すなわち、逆浸透膜モジュール1は、逆浸透膜11によって水を濾過するようになっており、この逆浸透膜11としては、一般に知られるRO膜(Reverse Osmosis Menbrane)やナノフィルターと称されるNF膜(Nanofiltration Membrane)などを用いることができる。なお、逆浸透膜11は、水を透過しイオンや塩類などの水以外の不純物を透過しない性質を有する膜であればよく、RO膜、NF膜に限られるものではない。
【0028】
本実施形態では、逆浸透膜モジュール1は、逆浸透膜11を巻回した状態で用いられるようになっている。具体的には、逆浸透膜11は、巻回される中心側のみが開放される袋状に形成されており、袋状となった逆浸透膜11の内側に網状の透過水側スペーサ12が配置されるとともに、袋状となった逆浸透膜11の外側に網状の給水側スペーサ13が配置されている。そして、逆浸透膜11は、当該逆浸透膜11の開放側端部が中心に配置した集水管14の内部と連通するように、当該集水管14に接着固定されている。このとき、図1に示すように、逆浸透膜11、透過水側スペーサ12および給水側スペーサ13は、それらが交互に積層されるようになっている。
【0029】
そして、透過水側スペーサ12および給水側スペーサ13を配置した逆浸透膜11を集水管14に巻き付けた全体の最外周を防水性の膜15によって水密に被覆している。
【0030】
ここで、図2に基づいて、逆浸透膜モジュール1の製造方法の概略を説明する。図2(a)〜(c)は、逆浸透膜11、透過水側スペーサ12および給水側スペーサ13を集水管14の周りに巻き付ける工程を示している。
【0031】
まず、図2(a)に示すように、帯状に形成した2枚の逆浸透膜11の間に透過水側スペーサ12を挟んだ状態で、2枚の逆浸透膜11の集水管14側を除いた3辺の周縁部どうしを接着剤Aで袋状に貼り合わせ、図2(b)に示すように、2枚の逆浸透膜11および透過水側スペーサ12をプレスする。
【0032】
一方、図2(a)に示すように、集水管14の外周には、袋状に形成した逆浸透膜11の開放側を挿入するスリット14aを集水管14の軸方向に形成しておき、図2(b)に示すように、スリット14aにプレスした逆浸透膜11および透過水側スペーサ12の開放側端部を嵌め込んで接着する。
【0033】
そして、図2(c)に示すように、袋状となった逆浸透膜11の外側に給水側スペーサ13を添えて、これらを集水管14の周りに巻き付ける。その後、上述した防水性の膜15(図1参照)で最外周を水密に被覆する。なお、図2では、1組の逆浸透膜11、透過水側スペーサ12および給水側スペーサ13を示したが、図1に示すように、それらを複数組設けて巻き付けるようにしてもよい。
【0034】
このように、逆浸透膜11、透過水側スペーサ12および給水側スペーサ13を巻回して防水性の膜15で被覆することで、逆浸透膜モジュール1は、図1に示すように、全体として集水管14を中心とする円柱状に形成される。
【0035】
そして、集水管14の一端(図1中手前側)には、供給口1aを形成した第1の蓋体16が取り付けられるとともに、他端(図1中奥側)には、透過水吐出口1bおよび濃縮水吐出口1cを形成した第2の蓋体17が取り付けられる。
【0036】
第1の蓋体16は、中心部に集水管14の一端を閉塞する閉塞部16aが形成されるとともに、供給口1aが閉塞部16aを中心として放射状に形成されている。このように、供給口1aを放射状に形成することで、給水側スペーサ13の一端側の全周が供給口1aに連通されるようにしている。
【0037】
第2の蓋体17は、中心部に集水管14の他端に連通する透過水吐出口1bが形成されるとともに、その透過水吐出口1bを中心として濃縮水吐出口1cが放射状に形成されている。このように、濃縮水吐出口1cを放射状に形成することで、給水側スペーサ13の他端側の全周が濃縮水吐出口1cに連通されるようにしている。
【0038】
かかる構成とした逆浸透膜モジュール1の機能は、以下のとおりである。
【0039】
まず、前処理装置2で前処理された供給水が供給口1aから導入されると、当該供給水は一定の圧力をもって給水側スペーサ13の一端側全周に供給された後、給水側スペーサ13を伝って濃縮水吐出口1c方向へと移動する。この給水側スペーサ13を伝って供給水が移動する間に、供給水中の不純物を除く水が逆浸透膜11を透過する。すると、逆浸透膜11を透過した透過水(浄水)は袋状となった逆浸透膜11内の透過水側スペーサ12を伝って集水管14内に集められ、集水管14の内側を移動して透過水吐出口1bから吐出される。一方、逆浸透膜11を透過しなかった不純物を含む濃縮水は、給水側スペーサ13を伝って濃縮水吐出口1cから排出される。なお、透過水側スペーサ12および給水側スペーサ13は、巻回された逆浸透膜11間に隙間を形成して流路を確保するために設けるものである。
【0040】
ここで、本実施形態では、供給口1aから供給水が導入される給水側スペーサ13に、抗菌・抗カビ剤を配合している。具体的には、給水側スペーサ13は、銀や銅などの抗菌性金属、または、抗カビ剤(TBZ)を練り込んだポリエステル、ポリプロピレンなどの材料を用いて、網状に形成されている。一方、透水側スペーサ12は、抗菌・抗カビ剤を含有しないポリエステルなどの材料で網状に形成されている。
【0041】
このように、給水側スペーサ13に、抗菌・抗カビ剤を配合することで、蛇口7を閉めて浄水システムPの経路内の水の流れが停滞した状態のときに、給水側スペーサ13に練り込んだ抗菌・抗カビ剤が、給水側スペーサ13の配置内に残存した水に溶出することになる。
【0042】
以上、説明したように、本実施形態の逆浸透膜モジュール1によれば、袋状となった逆浸透膜11の外側に配置される網状の給水側スペーサ13に抗菌・抗カビ剤を配合したため、逆浸透膜モジュール1内で水が停滞した状態、つまり、蛇口7を閉じた状態では、給水側スペーサ13に配合した抗菌・抗カビ剤が給水側スペーサ13の配置内に残存した水に溶出される。そして、溶出した抗菌・抗カビ剤によって給水側スペーサ13で微生物が繁殖するのが抑制されるとともに、給水側スペーサ13で繁殖した微生物を静菌できるようになる。そのため、逆浸透膜11が微生物により閉塞されてしまうのを容易に抑制することができるようになる。
【0043】
また、抗菌・抗カビ剤は逆浸透膜11を透過しないため、抗菌・抗カビ剤が浄水に混入されるのを避けることができ、給水直後であっても捨て水をすること無く直ちに使用できるため、水が無駄になるのを防止することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、逆浸透膜11の内側に透過水側スペーサ12を配置するとともに当該逆浸透膜11の外側に給水側スペーサ13を配置し、袋状となった逆浸透膜11の開放側端部を集水管14の内部と連通するように固定した状態で当該集水管14の周りに巻き付けるとともに、最外周を防水性の膜15によって水密に被覆し、集水管14の一端側に、供給口1aを形成した第1の蓋体16を取り付けるとともに、他端に、透過水吐出口1bおよび濃縮水吐出口1cを形成した第2の蓋体17を取り付けることで逆浸透膜モジュール1を形成しているため、逆浸透膜モジュール1を円柱状にすることができ、浄水システムPに容易に組み込むことができるようになる。
【0045】
また、本実施形態にかかる逆浸透膜モジュール1を浄水システムPに組み込めば、薬液等を用いて逆浸透膜モジュール1を洗浄する必要がなくなり、常時使用することのできる浄水システムPを得ることができる。
【0046】
ところで、従来では給水側のスペーサに抗菌剤が使用されていないが、その主な理由としては、逆浸透膜の材料として一般には合成膜の芳香族ポリアミドが用いられていることがあげられる。この芳香族ポリアミドは高濃度の塩素化合物や酸化剤に弱く材料劣化する虞があるためである。また、逆浸透膜は一般的に産業用で使用されることが多いため、スペーサに抗菌剤を配合するコストよりも定期的に洗浄する方が安いということも一因としてあげることができる。
【0047】
なお、抗菌・抗カビ剤としては、非酸化系で比較的低濃度で作用する銀系抗菌剤および抗カビ剤(TBZ)を用いることが好ましく、それらを給水側スペーサ13に含有させることにより、薬剤洗浄のメンテナンスを不要としつつ細菌繁殖による逆浸透膜11の閉塞による性能低下を抑制することができる。また、浄水システムは、家庭用の浄水システムPとしてだけでなく、工業用の浄水システムとしても用いることができる。
【0048】
(第2実施形態)
本実施形態にかかる逆浸透膜モジュール1Aは、図4に示すように、基本的に上記第1実施形態の逆浸透膜モジュール1と同様に、袋状に形成されて巻回される逆浸透膜11と、袋状となった逆浸透膜11の内側に配置される網状の透過水側スペーサ12と、袋状となった逆浸透膜11の外側に配置される網状の給水側スペーサ13と、を有している。そして、給水側スペーサ13から供給される供給水が逆浸透膜11を透過することで生成される透過水は、透過水側スペーサ12を伝って透過水吐出口1bへと導かれる一方、逆浸透膜11を透過しない供給水は、濃縮水となって濃縮水吐出口1cへと導かれる。
【0049】
ここで、本実施形態が上記第1実施形態と主に異なる点は、給水側スペーサ13を透光性部材で形成するとともに、その給水側スペーサ13に紫外線を照射するUVランプ20を設けたことにある。さらに、本実施形態では、透光性部材として光ファイバーを用いている。
【0050】
本実施形態では、UVランプ20は、紫外線が光ファイバーで形成された給水側スペーサ13に照射されるように配置されている。たとえば、巻回されたそれぞれの給水側スペーサ13に接するようにUVランプ20を1つまたは複数設け、当該UVランプ20を給水側スペーサ13と一緒に巻き込むことで、紫外線が光ファイバーで形成された給水側スペーサ13に照射されるように配置する。このとき、UVランプ20の端子20a、20bが第1の蓋体16の給水口1aから突出されるようになっており、それら端子20a、20bと各UVランプ20とが電気的に接続されている。
【0051】
このように、UVランプ20を、巻回されたそれぞれの給水側スペーサ13に接するように配置するとともに、給水側スペーサ13を透光性部材である光ファイバーで形成することで、UVランプ20の紫外線を、巻回された給水側スペーサ13の光ファイバーを通って広範囲に行き渡らせることができるようになる。
【0052】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、袋状となった逆浸透膜11の外側に配置される網状の給水側スペーサ13を透光性部材で形成するとともに、給水側スペーサ13に紫外線を照射するUVランプ20を設けたため、UVランプ20から照射された紫外線が給水側スペーサ13の光ファイバー(透光性部材)を通って給水側スペーサ13の広範囲に行き渡ることになる。その結果、給水側スペーサ13で繁殖した微生物を紫外線によって静菌でき、袋状となった逆浸透膜11の外側に形成される給水側スペーサ13における微生物の繁殖を抑制することができる。そのため、逆浸透膜11が微生物により閉塞されてしまうのを容易に抑制することができるようになる。
【0054】
また、本実施形態によれば、透光性部材として光ファイバーを用いることで、UVランプ20から照射された紫外線の透過率を高めることができるため、紫外線を給水側スペーサ13のより広範囲に行き渡らせることができ、給水側スペーサ13の静菌効率をより一層高めることができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。たとえば、上記第1および第2実施形態にかかる逆浸透膜モジュールを、その他の浄水システムに組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、1A 逆浸透膜モジュール
1a 給水口
1b 透過水吐出口
1c 濃縮水吐出口
12 透過水側スペーサ
13 給水側スペーサ
20 UVランプ
P 浄水システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に形成された逆浸透膜と、当該逆浸透膜の内側に配置される透過水側スペーサと、前記逆浸透膜の外側に配置される給水側スペーサと、を有し、給水側スペーサに導入された供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールであって、
前記給水側スペーサに、抗菌・抗カビ剤を配合したことを特徴とする逆浸透膜モジュール。
【請求項2】
袋状に形成された逆浸透膜と、当該逆浸透膜の内側に配置される透過水側スペーサと、前記逆浸透膜の外側に配置される給水側スペーサと、を有し、給水側スペーサに導入された供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールであって、
前記給水側スペーサを透光性部材で形成するとともに、当該給水側スペーサに紫外線を照射するUVランプを設けたことを特徴とする逆浸透膜モジュール。
【請求項3】
前記透光性部材として光ファイバーを用いたことを特徴とする請求項2に記載の逆浸透膜モジュール。
【請求項4】
前記逆浸透膜モジュールは、前記逆浸透膜の内側に前記透過水側スペーサを配置するとともに当該逆浸透膜の外側に前記給水側スペーサを配置し、袋状となった逆浸透膜の開放側端部を集水管の内部と連通するように固定した状態で当該集水管の周りに巻き付けるとともに、最外周を防水性の膜によって水密に被覆し、前記集水管の一端側に、供給口を形成した第1の蓋体を取り付けるとともに、他端に、透過水吐出口および濃縮水吐出口を形成した第2の蓋体を取り付けることで形成されることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の逆浸透膜モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の逆浸透膜モジュールを組み込んだことを特徴とする浄水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−36752(P2011−36752A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184073(P2009−184073)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】