説明

透明なバリアラミネート

電子的装置、特に光電子的装置をカプセル化するための新規の透明で基材を有さない浸透バリアフィルムが、第1のポリマー層(10)と、第1の無機バリア層(20)と、少なくとも1つの少なくとも部分的に有機の均し層(30)と、少なくとも1つのさらなる無機バリア層(21)と、少なくとも1つのさらなるポリマー層(11)とから成り、ポリマー層どうし、および無機バリア層どうしが、それぞれ同じ材料から成っていても異なる材料から成っていてもよく、無機バリア層は2〜1000nmの間の厚さを有し、ポリマー層および少なくとも部分的に有機の均し層は5μm未満、好ましくは0.5〜4μmの間の厚さを有する。フィルムは、片面または両面に、再剥離可能な接着剤により取り付けられた補助支持体を備えることができる。さらなる少なくとも部分的に有機の均し層を用い、複数のフィルムを相互に重ねてラミネートすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明な浸透バリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような透明な浸透バリアフィルムは、無機および/または有機の(光)エレクトロニクスにおいて、特に水蒸気および酸素の影響を受けやすい電子的装置を保護するために使用される。
【0003】
そのような電子的装置、特に光電子的装置は、市場の製品においてますます頻繁に使用されており、または市場への導入間近にある。このような装置には、無機電子構造または有機電子構造、例えば有機半導体、有機金属半導体、またはポリマー半導体が含まれ、またはそれらの組合せも含まれる。これらの装置および製品は、所望の用途に応じて硬く、または柔軟に形成されるが、柔軟な装置に対する需要が次第に増している。このような装置の製造は、例えば凸版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、平版印刷のような印刷方法によって、または熱転写印刷、インクジェット印刷、もしくはデジタル印刷などのいわゆる「ノンインパクトプリンティング」のような印刷法によっても行われる。しかし例えば化学蒸着(Chemical Vapor Deposition−CVD)、物理蒸着(Physical Vapor Deposition−PVD)、プラズマ促進化学もしくは物理蒸着(plasma enhanced chemical or physical vapour deposition−PECVD)、スパッタリング、(プラズマ)エッチング、または蒸着(Bedampfung)のような真空方法もよく使用されており、その際、構造化は一般的にマスクによって行われる。
【0004】
既に市販されている、またはその市場可能性が注目されている電子的用途、特に光電子的用途に関する例としては、ここでは電気泳動またはエレクトロクロミックを用いた構成物もしくはディスプレイ、表示装置およびディスプレイ装置における有機発光ダイオードもしくはポリマー発光ダイオード(OLEDまたはPLED)、または照明として挙げればエレクトロルミネセンスランプ、発光電気化学セル(LLED)、有機太陽電池、好ましくは色素太陽電池もしくはポリマー太陽電池、無機太陽電池、好ましくは特にケイ素、ゲルマニウム、銅、インジウム、およびセレンをベースとする薄層太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機スイッチング素子、有機光増幅器、有機レーザダイオード、有機センサもしくは無機センサ、または有機もしくは無機ベースのRFIDトランスポンダが挙げられる。
【0005】
無機および/または有機の(光)電子機器の分野、とりわけ有機(光)電子機器の分野における(光)電子的装置の十分な耐用期間および機能を実現するために特に重要なことは、その中に設けられたコンポーネントを浸透物から保護することと考えられる。浸透物とは、多種の低分子有機化合物または低分子無機化合物であり得るが、重大なのは特に水蒸気および酸素である。
【0006】
無機および/または有機の(光)電子機器の分野における、とりわけ有機原料を使用する場合の多くの(光)電子的装置は、水蒸気にも酸素にも弱く、その際、多くの装置に関して水蒸気の侵入がより大きな問題として格付けられる。したがって電子的装置の耐用期間中は装置のカプセル化による保護が不可欠であり、というのもそうしなければ、使用期間中にわたり性能が低下していくからである。つまり例えば構成要素の酸化により、エレクトロルミネセンスランプ(ELランプ)または有機発光ダイオード(OLED)など発光装置の場合には光力が、電気泳動ディスプレイ(EPディスプレイ)の場合にはコントラストが、または太陽電池の場合には効率が、非常に短い期間内に著しく低下する可能性がある。
【0007】
したがって、無機および/または有機の(光)電子機器の場合、特に有機(光)電子機器では、電子的コンポーネントを保護し、かつ酸素および/または水蒸気のような浸透物に対する浸透バリアとなる柔軟な基材に対する特別な需要がある。保護またはカプセル化の品質に関する尺度は、酸素透過率(Oxygen Transmission Rate−OTR)および水蒸気透過率(Water Vapor Transmission Rate−WVTR)である。それぞれの率は、温度および相対湿度ならびに分圧の特定条件下で酸素もしくは水蒸気がフィルムを通り抜ける流量を示す。これらの値が低ければ低いほど、それぞれの材料はカプセル化により良く適している。浸透バリアに対する要求は、包装分野での要求よりも明らかに高い。必要とされるのは、WVTR<10−3g/(md)およびOTR<10−3cm/(md bar)である。
【0008】
それだけでなく、多くの場合、例えば太陽電池または屋外ディスプレイの場合、バリアフィルムの材料は、少なくとも電子セルの片面では、紫外線を受けたり気候にさらされたりしても長期にわたって光学的に高透明である必要がある。
【0009】
包装分野から既知のポリマー多層ラミネートまたは同時押出フィルムは、所定の層厚では必要な値を達成しない。層厚は、例えば層厚が増加するにつれてラミネートの柔軟性が減っていき、したがって柔軟なラミネートは特定の層厚しか有することができないという意味において制限されている。有機または無機のコーティングまたは層と組み合わせた包装フィルムも従来技術である。このようなコーティングは、例えば塗装、印刷、蒸着、スパッタリング、同時押出、またはラミネート加工のような通常の方法によって行うことができる。コーティング材料としては、ここでは金属、金属酸化物、例えばケイ素およびアルミニウムの酸化物もしくは窒化物、または酸化インジウムスズ(ITO)、または例えばゾル−ゲルコーティングで使用される有機金属化合物が例として挙げられ、しかしこれらに限定されない。このような解決策の例は、欧州特許出願公開第1785269A1号(特許文献1)およびドイツ特許出願公開第19623751A1号(特許文献2)で開示されている。
【0010】
包装フィルム分野での、特に薄いフィルムに関する従来技術は、BMBFプロジェクトの最終報告書「Verbundvorhaben: Umweltentlastung in der Produktion und Nutzung von Verpackungen aus Verbundfolien durch Halbierung des Materialeinsatzes」(2003年3月1日〜2006年5月31日)(非特許文献1)に包括的に示されている。従来技術に関するさらなる情報は、「Barrier Polymers」(Encyclopedia of Polymer Science and Technology、John Wiley & Sons、第3版、Vol. 5、198〜263頁)(非特許文献2)にある。
【0011】
このような包装フィルムは、やはり知られているように、上述のようにコーティングされた2枚のフィルムから成るラミネートとして使用したとしても、上述の要求を達成しない。ラミネート工程をさらに追加することは、ポリエステルフィルム(PET)で現在一般的に使用されている約12μmのフィルム厚の場合、材料消費量が上昇し、したがって包装材がより高価になるので不利である。廃棄物処理に関わる放出量も多くなる。それだけでなく柔軟性が低下する点でも不利である。さらに、従来使用されている二重ラミネートは、透明性の低下および光散乱(ヘイズ)の増大を示すことが望ましくなく、これは、ラミネート用接着剤中で発生する気泡が原因である。
【0012】
柔軟な(光)電子構成物で使用するため、包装分野から既知のフィルムに様々な改変が施される。この改変としては、例えば撥水性の層による被覆(米国特許第7306852B2号(特許文献3)、特開第2003238911A号(特許文献4))、特殊なラミネート用接着剤の使用(国際公開第2003040250A1号(特許文献5)、国際公開第2004094549A1号(特許文献6)、ドイツ特許出願公開第10138423A1号(特許文献7)、国際公開第2006/015659A2号(特許文献8))、ガラス状のコーティング(米国特許出願公開第5925428A号(特許文献9))、ポリマーフィルム中への層状ケイ酸塩またはその他のナノ材料の埋め込みまたはそのような種類のコーティング(国際公開第2007130417A2号(特許文献10)、国際公開第2004024989A2号(特許文献11))、ガラス転移温度が非常に高いポリマーフィルムの使用、金属酸化物でコーティングされたフィルムの熱処理(米国特許出願公開第7192625A号(特許文献12))、ならびに浸透物を吸着または吸収する材料(ゲッター、スカベンジャー)のフィルム内でのまたはコーティングとしての使用(国際公開第2006/036393A2号(特許文献13))がある。
【0013】
これまでの工業的解決策は薄いガラス(約30〜50μm厚)の使用である。ただしこのガラスは、取扱いが非常に困難であり、特殊な方法でしか仕上げることができず、ガラス面が破損する危険性が高い。このため大抵は薄いガラスにポリマーフィルムをラミネートするか、またはポリマーでコーティングする。この従来技術は、国際公開第2000041978号(特許文献14)で詳細に説明されている。そこに記載された方法の特徴は、平面的なガラス−ポリマー複合体を製造するために多数の製造ステップを必要とすることである。このような薄いガラスの供給業者は、例えばSchott社(Mainz)およびCorning社(米国)である。
【0014】
支持フィルム上での無機層および有機層の多層構成(しばしば10層超)もまたバリア特性の面での要求を達成する。これに関し、無機層は一般的に真空中で堆積される。従来技術からの例は、国際公開第00/36665A1号(特許文献15)、国際公開第01/81649A1号(特許文献16)、国際公開第2004/089620A2号(特許文献17)、国際公開第03/094256A2号(特許文献18)、および国際公開第2008/057045A1号(特許文献19)に記載されている。有機層としては、しばしばアクリレートベースの塗料が用いられる。この技術は、目下のところVitex Systems社(米国San Jose)およびIRME研究所(シンガポール)により商用化されている。すべての前述の系は、少なくとも10μmの、さらには明らかにそれ以上のサイズの基材を必要とする。
【0015】
無機層および有機層の他に、有機改変セラミックのようなハイブリッド材料も、積層体における多重層として用いられる。その際、ゾル−ゲルテクノロジーが使用される。これらの材料は目下のところ、フラウンホーファーIVV(プロセス技術・パッケージング研究所)で、フラウンホーファーISC(ケイ酸塩研究所)との共同研究において開発されている(ドイツ特許第19650286号(特許文献20)およびVasko K.:Schichtsysteme fuer Verpackungsfolien mit hohen Barriereeigenschaften、ミュンヘン工科大学での学位論文、2006年(非特許文献3)を参照)。
【0016】
柔軟な浸透バリアのための従来の工業的解決策は、そのバリア作用が十分でないか、または浸透バリアの構成が非常に複雑であり、設備技術(特に真空法用)での大きな投資を必要とすることが多い。これは目標とする安価な解決策の妨げになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1785269A1号
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第号19623751A1
【特許文献3】米国特許第7306852B2号
【特許文献4】特開第2003238911A号
【特許文献5】国際公開第2003040250A1号
【特許文献6】国際公開第2004094549A1号
【特許文献7】ドイツ特許出願公開第10138423A1号
【特許文献8】国際公開第2006/015659A2号
【特許文献9】米国特許出願公開第5925428A号
【特許文献10】国際公開第2007130417A2号
【特許文献11】国際公開第2004024989A2号
【特許文献12】米国特許出願公開第7192625A号
【特許文献13】国際公開第2006/036393A2号
【特許文献14】国際公開第2000041978号
【特許文献15】国際公開第00/36665A1号
【特許文献16】国際公開第01/81649A1号
【特許文献17】国際公開第2004/089620A2号
【特許文献18】国際公開第03/094256A2号
【特許文献19】国際公開第2008/057045A1号
【特許文献20】ドイツ特許第19650286号
【特許文献21】欧州特許第EP0193844号
【特許文献22】ドイツ特許第102008047964号
【特許文献23】ドイツ特許第102008060113号
【特許文献24】ドイツ特許第102008062130号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「Verbundvorhaben: Umweltentlastung in der Produktion und Nutzung von Verpackungen aus Verbundfolien durch Halbierung des Materialeinsatzes」(2003年3月1日〜2006年5月31日)
【非特許文献2】「Barrier Polymers」(Encyclopedia of Polymer Science and Technology、John Wiley & Sons、第3版、Vol. 5、198〜263頁)
【非特許文献3】Vasko K.:Schichtsysteme fuer Verpackungsfolien mit hohen Barriereeigenschaften、ミュンヘン工科大学での学位論文、2006年
【非特許文献4】Simone Angiolini、Mauro Avidano:「P-27: Polyarylate Films for Optical Applications with Improved UV-Resistance」(SID 01 DIGEST、651〜653頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって本発明の課題は、透明性が高く、厚さが小さく、したがって柔軟性が高く、かつ(光)電子部品のカプセル化に十分なバリア作用、特に水蒸気と酸素に対するバリア作用を有するバリアフィルム、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題は、
第1のポリマー層と、
第1の無機バリア層と、
少なくとも1つの少なくとも部分的に有機の均し層と、
少なくとも1つのさらなる無機バリア層と、
少なくとも1つのさらなるポリマー層と
から成る、透明で基材を有さない浸透バリアフィルムであって、
ポリマー層どうし、および無機バリア層どうしが、それぞれ同じ材料から成っていても異なる材料から成っていてもよく、無機バリア層が2〜1000nmの間、好ましくは10〜500nmの間、特に好ましくは20〜100nmの間の厚さを有し、ポリマー層および少なくとも部分的に有機の均し層が5μm未満、好ましくは0.5〜4μmの間の厚さを有する浸透バリアフィルムによって解決される。
【0021】
本発明による浸透バリアフィルムまたはバリア複合フィルムの利点は、柔軟性を低下させる厚い基材を使用しないことである。このような基材は、従来技術では一般的に少なくとも10μmの厚さがあり、したがってこのような基材上に製造される系は、柔軟性を必要とする用途ためには、たとえあったとしてもかなり制限される。これに対し、意外にも、本発明により、無機バリア層を非常に薄いポリマー層上でも、熱的または機械的な損傷なく堆積させることに成功し、したがって全体として薄いフィルムを製造することができ、電子的用途のための柔軟な保護材として提供することができる。
【0022】
ここで、本発明の意味において基材を有さないとは、厚さが10μm超の基材または支持体、特に厚さが5μm超の基材または支持体がフィルムの永続的な構成要素ではなく、フィルムが、特に使用の際には基材なしで用いられることを意味している。
【0023】
ポリマー層、特に熱可塑性ポリマー層は、機械的特性を改善するために配向または延伸配向させることができる。特に、ポリマー層は特に2軸配向され、その際、ポリマーの分子鎖は2つの優先方向への延伸により方向付けられる。ポリマー層またはフィルムの配向状態は、2軸配向されたフィルムまたは層の配向複屈折(Δn)によって測定され、すなわちΔn=nMD−nTDであり、ここでnMDは縦方向、つまり長手方向における光屈折率、nTDは横方向、つまり短手方向における光屈折率である。延伸が、一般的には互いに垂直に延びる2つの延伸方向で、つまり2軸で、ほぼ同じ係数(程度)で行われる場合、これを「等方性の」または「バランスド」フィルムと言い、nMDとnTDに関してほぼ同じ値が測定される。この場合、差Δnはほぼ0であり、nMDおよびnTDはそれぞれ未延伸状態での屈折率とは異なっている。異方性フィルムは、1つの優先方向で特に高い機械的特性を有する。このようなフィルムは一方の方向に(1軸で)特に強く延伸されており、この方向では、それに垂直な他方の方向に比べて光屈折率も明らかに高くなっている。この場合、差Δnは有意な値をとる。これに関する従来技術は欧州特許第0193844号(特許文献21)に記載されている。
【0024】
好ましい一実施形態では、ポリマー層がその平面的な広がりにおいて少なくとも1つの方向に(1軸で)配向されており、特に好ましくは配向が2つの方向に(2軸で)方向付けられている。さらに好ましくはこのポリマー層は、フィルムから、特に1軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムから成る。ポリマー分子がこのように配向されることで、ポリマー層の機械的安定性および浸透バリア性が向上する。
【0025】
ポリマーとしては、フィルム製造に適している当業者に既知のすべての透明なポリマーを使用することができ、それは例えばポリオレフィンおよびそのコポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリビニルブチラールであるが、弾性率(E−Modul)の高いフィルムを使用することが好ましく、それは例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フッ素ポリエステル、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリノルボルネン、置換ポリアリレート、特に、例えばSimone Angiolini、Mauro Avidano:「P-27: Polyarylate Films for Optical Applications with Improved UV-Resistance」(SID 01 DIGEST、651〜653頁)(非特許文献4)に記載されているようなFerrania社の置換ポリアリレート、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、またはポリカーボネート(PC)である。このことは、前述のポリマーをベースとするコポリマーにも当てはまり、この「ベースとする」とは、50Mol%超の分率という意味である。特に適しているのは、DIN EN ISO527(被検体タイプ2、23℃、相対湿度50%、引取速度1mm/min)に従い室温で測定してE−Modulが2000MPa超、好ましくは3000MPa超のポリマーまたはコポリマーである。本発明に従って用いられるポリマーは、非常に薄い層またはフィルムとして使用されるので、高い弾性率が利点となる。高い弾性率は製造時のフィルムの望ましくない伸びを防止する。
【0026】
下の表1には、特に適した透明なポリマーをそのE−ModulならびにWVTRおよびOTRと共に挙げている。
【0027】
【表1】

【0028】
とりわけ適しているのは、DIN EN ISO62(方法1)に従い23℃で24時間後に測定して水分吸収率が0.1重量%未満のポリマーである。なぜなら、このポリマーを使用すると、複合体内で気泡が発生する危険性が比較的低いからであり、または特に暖かく湿った環境でこの複合体を使用するとき、気泡が発生する危険性が比較的低いからである。
【0029】
無機バリア層として特によく適しているのは、真空中で(例えば蒸発、CVD、PVD、PECVDにより)または大気圧下で(例えば大気圧プラズマ、反応性コロナ放電、または火炎熱分解により)堆積された金属または特に金属化合物、例えば金属酸化物、金属窒化物、または金属水窒化物(Metallhydronitrid)であり、例えばケイ素、ホウ素、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、もしくはテルルの酸化物または窒化物、または酸化インジウムスズ(ITO)である。さらなる元素でドープされた上述の形態の層も特に適している。特に適したPVD法として高出力インパルスマグネトロンスパッタリングを挙げることができ、この方法を用いると、フィルムの温度負荷が小さい場合に非常に良く浸透を防ぐ層を実現することができる。
【0030】
少なくとも部分的に有機の均し層はラミネート用接着剤であることが好ましい。このようなラミネート用接着剤として適しているのは、原理的には、当業者に既知の透明であり溶剤を含むおよび含まないすべてのラミネート用接着剤であり、例えば単一成分および多成分のポリウレタンをベースとするラミネート用接着剤(例えばHenkel社のLiofolラミネート用接着剤)、アクリレート、エポキシド、天然ゴムもしくは合成ゴム、ケイ酸塩、またはシリコーンをベースとするラミネート用接着剤である。無機/有機ハイブリッド(例えばゾル−ゲルテクノロジー)をベースとするラミネート用接着剤、例えばInomat社(Bexbach)のラミネート用接着剤Inobondも、本発明によるフィルムに特に適している。
【0031】
さらに、感圧接着性またはホットメルト接着性の系もラミネート用接着剤として特に適しており、これは例えば、溶融状態で塗布される、またはポリマーフィルムと共に同時押出しされるポリオレフィンまたはそのコポリマーであり、例えばClariant社から商品名Licoceneで提供されている。
【0032】
化学線、特にUV線または電子線により硬化される系を用いることが好ましい。なぜならこの系は特に低い粘度を特色とし、したがって機械的破壊の危険性なく非常に薄いフィルム上に塗布できるからである。さらなる有利な一形態では、一般的に溶剤を含まない接着材料として企図された系に、粘度を低下させるための溶剤を添加することで、接着層の粘度を下げることもできる。
【0033】
低い粘度ゆえ、この接着剤系は、好ましくは非接触方法で、例えばエアロゾル相からの噴霧により、またはカーテンコーティングにより塗布することができる。これらの方法は、薄いポリマーフィルムにかかる機械的負荷が小さいので、十分に低粘度の他の接着系にも好ましい。
【0034】
特に好ましい一実施形態では、ラミネート用接着剤の水蒸気浸透性は10g/md以下であり、かつ/または酸素浸透性は100cm/md bar以下である。なぜならその場合、接着剤自体がフィルム全体のバリアに寄与するからである。
【0035】
ポリマー材料または有機材料に、浸透を阻止するさらなる物質、例えば当業者に既知の、浸透物を吸収もしくは吸着する物質(ゲッター、スカベンジャー)、または例えば層状ケイ酸塩のような浸透経路を延長する物質を、層としてまたはバラで加えることが好ましい。
【0036】
さらに、そのようなフィルムをラミネート用接着剤を用いて気泡なく一緒にラミネートすることに成功した。したがって本発明によるさらなる好ましい一実施形態では、上述の構成が、その構成自体の上に少なくとももう1つラミネートされる。このような構成で、高い光学的透明性(透過性>80%、特に好ましくは>85%;ヘイズ<10%、特に好ましくは<5%)を保つことが可能である。これにより、特に薄いバリアフィルムから成る特殊なフィルムラミネートの形の好ましい構成が生じる。
【0037】
その際、それぞれ個々の層に使用される材料は、同じでも異なっていてもよい。
【0038】
高い透過性を達成するには、ポリマー、無機バリア層、および少なくとも部分的に有機の均し層の屈折率の差が0.3以下、特に0.1以下であると有利である。これは、例えばポリメチルメタクリレートフィルム(n=1.49)と、SiOバリア層(n=1.5)と、アクリレート感圧接着剤(n=1.48)との組合せにより達成することができる。このような構成のさらなる例は、ポリカーボネートフィルム(n=1.585)と、Alバリア層(n=1.63)と、エポキシド均し層(n=1.6)との組合せである。
【0039】
同じまたは類似の構成の多重ラミネート加工の利点は、非常に薄く、高透明で、高いバリア性を備えたカプセル化フィルムを簡単に製造できることである。これは、従来技術のフィルムでは不可能である。なぜなら従来技術では、多層構成自体に既にかなり厚い基材フィルムが用いられ、したがって全体として、例えば十分な柔軟性を依然として保証するには厚さが大きすぎるからである。
【0040】
上述の構成は、さらに少なくとも片面で全面的または部分的に、さらなる機能層または構造化を備えることが好ましい。機能層として適しているのは、例えば特に導電性の層(例えばITOのような透明な導電性酸化物)、熱伝導性の層(例えば好ましくはナノスケールの酸化アルミニウムもしくは窒化ホウ素が富化された層)、保護層、または接着剤層、例えば感圧接着剤もしくはホットメルト接着剤である。保護層は、特に輸送および貯蔵において重要であり、フィルムを損傷から保護し、例えばキズ防御材として使われる。保護層は、例えば機械的負荷からフィルムを保護することにより、フィルムを加工する際にも有利であり得る。さらなる適切な機能層は、反射抑制層または光出射層もしくは光入射層である。これらは、特に自己発光型ディスプレイまたは太陽電池で使用され、収量を上昇させる。この場合、光出射層の使用により、例えば屈折率を適合させることで出射光の収量を高めることができる。このような機能層は、層厚を不必要に大きくしないよう、3μm未満、特に1μm未満の厚さであることが好ましい。構造化は、好ましくはエンボス法により、またはエッチングによりもたらすことができる。様々な層および/または構造化の組合せも有利な一実施形態である。
【0041】
感圧接着剤またはホットメルト接着剤としては、スチレンブロックコポリマー、ポリイソブチレン、ポリイソブチレンブロックコポリマー、またはポリオレフィンをベースとする接着剤が好ましい。なぜならこれらの接着剤自体が、非常に高い浸透バリア性を有するからである。そのような接着剤は、例えばドイツ特許第DE102008047964号(特許文献22)、ドイツ特許第02008060113号(特許文献23)、またはドイツ特許第102008062130号(特許文献24)に記載されている。
【0042】
接着層を備えたこのような構成は、ラベル、平面材、またはロールの形の接着テープとして提供されることが好ましく、接着テープ分野から既知の通常の改変部、例えばカバー、リリースライナー、剥離層、または保護層を備えることができる。
【0043】
さらに本発明は、本発明によるバリアフィルムの製造方法であって、
(a)ポリマーフィルムを用意するステップと、
(b)複合体を製造するためにポリマーフィルムを無機バリア層でコーティングするステップと、
(c)複合体を少なくとも部分的に有機の均し層でコーティングするステップと、
(d)少なくとも部分的に有機の均し層を、ポリマーフィルムおよび無機バリア層から成るさらなる複合体により被覆するステップとを含み、
ステップ(a)ではポリマーフィルムが、またはステップ(b)ではポリマーフィルムおよび無機バリア層から成る複合体が、再剥離可能な接着剤を備えた補助支持体上に供される製造方法に関する。
【0044】
この複合体は、例えばラミネート加工により製造することができるが、当業者に既知の他の方法、例えば同時押出またはコーティングによって製造してもよい。その際、ポリマーフィルムおよび補助支持体は、例えば、当業者に既知のすべての付着メカニズム、例えば接着、静電相互作用、または自着性により結合することができる。特に再剥離可能なそのような付着は、当業者に既知の、特にウエハ・ダイシング加工またはウエハ研削加工の分野から既知のすべての材料および方法により行うことができる。
【0045】
したがって、本方法の一実施形態では、まず最初に再剥離可能な接着剤を備えた補助支持体が用意され、この補助支持体上にポリマーフィルムがラミネートされる。第2の実施形態では、ポリマーフィルムを第1の無機バリア層でコーティングした後に初めて補助支持体を設けることができる。次に、各場合のこれらのベース上にさらなる層が設けられる。発生する機械的負荷および熱的負荷を補助支持体が受け止めることができるので、補助支持体を使用することにより構成物の製造が容易になる。本方法の終了後、補助支持体は再び取り外すことができる。これは、フィルムの完成直後に行うことができる。ただし、補助支持体を引き続き貯蔵および輸送中の表面保護として使えるように、フィルムの引き剥がしは、フィルムを使用する(直)前または後になってから行うこともできる。
【0046】
さらなる代替実施形態では、さらなるポリマー層も補助支持体を備えることができ、このさらなるポリマー層は、選択的に、さらなる無機バリア層を有していることも有していないこともある。この補助支持体も選択的に、製造直後に引き剥がすか、または貯蔵および輸送のために表面保護として使うことができる。
【0047】
ロール・ツー・ロール製造では、ウェブが裂けるのを防止するために、プロセスステップb)〜d)中のウェブ張力が、25MPa、特に10MPaの値を超えないことが有利である。
【0048】
以下に本発明を、添付図面に基づきさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【図2】本発明による浸透バリアフィルム複合体の概略的な構成を示す図である。
【図3】本発明による浸透バリアフィルムのさらなる一実施形態、すなわち補助支持体と結合した実施形態の概略的な構成を示す図である。
【図4】本発明による方法の第1の形態の流れを概略的に示す図である。
【図5A】本発明による方法の第2の形態の流れを概略的に示す図である。
【図5B】本発明による方法の第2の形態の流れを概略的に示す図である。
【図6】機能層を備えた本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【図7】2つの機能層から成る組合せを備えた本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【図8】構造化されたポリマー層を備えた本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【図9】さらなる機能層および構造化層を備えた本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【図10】非常に薄い機能層と組み合わせた構造化ポリマー層を備えた本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【図11】本発明による浸透バリアフィルムならびに感圧接着剤の層、リリースライナー、および反射を抑える機能層を備えた接着テープの概略的な構成を示す図である。
【図12】機能層と組み合わせた構造化ポリマー層を備えた本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【図13】機能層を内部に備えた本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【図14】様々な機能層を内部に備えた本発明による浸透バリアフィルムの概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
フィルムまたはフィルム複合体に含まれる様々な層の配置に関し、「上」、「上方」、「上側」、「その上」、または「その上方」、およびこれに類する位置の表記は、必ずしも絶対位置を示すのではなく、層どうしの相対位置を示すことを指摘しておく。さらに、図はフィルムを概略的に示している。これは、特に図示した層厚について当てはまり、この層厚は縮尺通りではない。
【0051】
図1に示すように、本発明による透明な浸透バリアフィルムは、上に第1の無機バリア層20が設けられた第1のポリマー層10から成る。場合によってはあり得る、無機バリア層の穴および/または凹凸もしくは表面粗さを均すため、無機バリア層上に、少なくとも部分的に有機の均し層30が設けられている。この均し層上に、さらなる無機バリア層21およびさらなる有機ポリマー層11が続いている。無機バリア層20、21は、同じ材料から成っていても、異なる材料から成っていてもよい。同じことが有機ポリマー層10、11にも当てはまる。同じ材料を使用すると、プロセス管理が特に簡単である。
【0052】
無機バリア層の層厚はそれぞれ2〜1000nmの間、好ましくは10〜500nmの間、特に好ましくは20〜100nmの間であり、有機ポリマー層の層厚はそれぞれ5μm未満、好ましくは0.5〜4μmの間、特に好ましくは1〜2μmの間である。このようにして、非常に薄い、つまり厚さが数μmしかないにもかかわらず、既に酸素および水蒸気に対する重要な浸透バリアを形成するフィルムを提供することができる。
【0053】
バリア特性をさらに改善するために、図1に示したようなフィルムを複数重ねてラミネートすることができる。図2は、図1に示したようなフィルムを2つ重ねてラミネートすることで形成された複合体を示している。第1のポリマー層10−第1の無機バリア層20−少なくとも部分的に有機の均し層30−第2の無機バリア層21−第2のポリマー層11という順序での積層体による第1のフィルム上に、さらなる少なくとも部分的に有機の均し層32を用いて、第1のポリマー層12−第1の無機バリア層22−少なくとも部分的に有機の均し層31−第2の無機バリア層23−第2のポリマー層13という順序での積層体による第2のフィルムがラミネートされている。使用する材料に応じ、このような構成で10−3g/mdまたはcm/md barの範囲内のWVTRおよびOTRの値を問題なく達成することができ、しかも20μm未満の層厚で達成することができる。従来技術に基づくフィルムでは、フィルムがそれぞれ基材を備えており、複数のフィルムを重ねてラミネートすると、それに対応して複合体内に基材が幾つも含まれ、したがって複合体の厚さがすぐに大きな値になるという問題があり、これは例えば柔軟性に関する問題を引き起こす。
【0054】
さらなる一実施形態が図3に示されている。図3に示したフィルムは、フィルムが再剥離可能な接着剤50により補助支持体40と結合している点で、図1に示したフィルムと異なっている。この補助支持体は、特にフィルムを製造する際に利点がある。なぜなら、発生する機械的負荷および熱的負荷を補助支持体が受け止めることができるからである。とはいえ補助支持体は、フィルムの保護材として、完成したフィルムの貯蔵および輸送のためにも役立つ。図3は、片面に補助支持体を備えたフィルムを示している。補助支持体をフィルムの両面に取り付けることも可能である。
【0055】
図4は、本発明によるフィルム、すなわち両面に補助支持体を備えたフィルムの製造方法を示している。ステップa)では、予め設置されている、再剥離可能な接着剤50を備えた補助支持体40上に、最初にポリマー層11が設けられる様子が示されている。第2のステップb)では、次に無機バリア層21が設けられている。ステップc)は、少なくとも部分的に有機の均し層30を設けるところを図示している。ステップd)では、ステップa)およびb)に従って製造されたさらなるフィルム構成である補助支持体40−再剥離可能な接着剤50−ポリマー層10−無機バリア層20が、ステップc)で得られたフィルム構成の上に、無機バリア層20が少なくとも部分的に有機の均し層上に載るようにラミネートされている。次いでe)では完成したフィルムが示されている。無機バリア層20、21とポリマー層10、11および補助支持体と剥離可能な接着剤がそれぞれ同じ材料から成る場合、それにより、少なくとも部分的に有機の均し層に対して鏡面対称のフィルム構成が生じる。
【0056】
図5Aおよび図5Bは、方法の代替形態を示しており、この形態では、ポリマー層11および無機バリア層21から成る既に予め作製された複合体のポリマー層側を、再剥離可能な接着剤50でコーティングされた補助支持体40上に載せる(ステップa))。次のステップb)では、無機バリア層21上に、少なくとも部分的に有機の均し層30が設けられる。ステップc)では、この均し層30上に、無機バリア層20およびポリマー層10から成る予め製造されたさらなる複合体の無機バリア側を載せ、これにより、第1のポリマー層10−第1の無機バリア層20−少なくとも部分的に有機の均し層30−第2の無機バリア層21−第2のポリマー層11から成る本発明による構成のフィルムが得られ、このフィルムでは、一方の側のポリマー層が、再剥離可能な接着剤50を介して補助支持体40と結合している。
【0057】
図6に示した浸透バリアフィルムの構成は、図1に示したフィルムに対応している。図6のフィルムはさらに、第1のポリマー層10の片側に追加の機能層70を備えている。この機能層は、導電性の層、例えばITOのような透明な導電性酸化物から成る層、熱伝導性の層、例えば酸化アルミニウムもしくは窒化ホウ素が富化された層、または接着剤層、例えば感圧接着剤もしくはホットメルト接着剤であることがある。
【0058】
図6に示した構成に加えて、図7に示したバリアフィルムは1つの機能層70の他にさらに第2の機能層71を含んでいる。したがってこのようなフィルムは、様々な要件に適合させることができる。
【0059】
図8は、図1に示した構成に対応する浸透バリアフィルムを示しており、ここでは、第1のポリマー層を、構造化により構造化ポリマーフィルム12に改変した。構造化することで、例えばさらなる機能層を設け易くすることができ、または層上での定着を改善することができる。
【0060】
図1に示したバリアフィルムに加えて、図9に示したフィルムは第1のポリマー層10上にさらなる機能層70を備えている。機能層70上には構造化されたさらなるポリマー層73がある。
【0061】
図10は、図8に示したバリアフィルムの変形形態を示している。図10のフィルムは、図8のフィルムに加えて、構造化ポリマー層12上にもう1つの非常に薄い機能層72を備えている。
【0062】
図11には、本発明によるバリアフィルムを含む接着テープが示されている。第1のポリマー層10と、第1の無機バリア層20と、少なくとも部分的に有機の均し層30と、さらなる無機バリア層21と、さらなる有機ポリマー層11とから成るバリアフィルムが、第1のポリマー層10上に、反射を抑える機能層70を備えている。第2のポリマー層11は、感圧接着剤51を介して、一次的な支持体としてのリリースライナー60と結合している。この支持体は、バリアフィルムの輸送および貯蔵の際の保護材となる。
【0063】
本発明による浸透バリアフィルムと、構造化ポリマー層(12)および機能層(70)との組合せが図12に示されている。このフィルムでは、機能層(70)が、第1の無機バリア層(20)と構造化ポリマー層(12)の間に配置されている。
【0064】
もう1つのさらなる可能な配置が図13から見てとれる。この配置では、浸透バリアフィルムが機能層70、71を内部に備えている。これらの機能層は、無機バリア層に対して平滑な表面を供するために、特に、少なくとも部分的に有機の均し層としてポリマー層上に設けることができる。
【0065】
図14は、本発明による浸透バリアフィルムが、内部の機能層70、71ならびに74、75を備えている組合せを示している。この場合、機能層70、71はそれぞれ、無機バリア層に対して平滑な表面を供するために、有機の均し層としてポリマー層上に設けられている。さらなる機能層74、75は、後続のプロセスの際に無機バリア層を損傷から保護する保護層である。
【0066】
実施例:
下記の実施例では以下の材料を使用する。
【0067】
フィルム1:
BOPPフィルム Kopafilm MET(Kopafilm社(Nidda))、厚さ3.5μm
このフィルムに、約80nm厚のSiOバリア層を設けた。このようなコーティングは、例えばフラウンホーファーFhG−FEP(電子ビーム・プラズマ技術研究所)が実施している。
【0068】
フィルム2:
BOPETフィルム Hostaphan GN4600(Mitsubishi Plastics社)、厚さ4μm
このフィルムに、約80nm厚のSiOバリア層を設けた。このようなコーティングは、例えばフラウンホーファーFhG−FEP(電子ビーム・プラズマ技術研究所)が実施している。
【0069】
ラミネート用接着剤:
ラミネート用接着剤として、UV架橋性樹脂をベースとする下記の処方を使用した。
【0070】
【表2】

【0071】
ラミネート用接着剤の粘度は200mPasであった(DIN53019に従い23℃で回転式粘度計により測定)。
【0072】
ラミネート用接着剤を、140番(140−er)の六角アニロックスロールを備えたアニロックスロール塗布装置により、逆回転(80%)でコーティングし、その際フィルムは、スリップしながらアニロックスロール上に密着しており、つまりフィルムにかかる力を小さく保つために、圧胴を使わずに押し当てた。ウェブ張力は約20MPaであった。
【0073】
ウェブ速度が8m/minの場合、接着剤の塗布量が2.5g/mになった。
【0074】
対向するフィルムを、硬度50ショアの圧胴により、まだ硬化していないラミネート用接着剤上にラミネートした。
【0075】
例1:
フィルム1をラミネート用接着剤でコーティングし、この複合体をまたさらなるフィルム1で被覆した。硬化は、IST社の、中圧水銀灯を備えたUV設備を用いて照射線量40mJ/cmで行った。
【0076】
例2:
フィルム1をラミネート用接着剤でコーティングし、この複合体をまたさらなるフィルム1で被覆した。硬化は、IST社の、中圧水銀灯を備えたUV設備を用いて照射線量80mJ/cmで行った。
【0077】
例3:
フィルム2を、バリア層を設けられていない側で、可逆性接着テープtesa50550上にラミネートした。この複合体をラミネート用接着剤でコーティングし、フィルム2で被覆した。
【0078】
例4:
例2に基づき作製されたフィルム構成体をラミネート用接着剤でコーティングし、さらにまた例2に基づき作製されたフィルム構成体で被覆した。硬化は、IST社の、中圧水銀灯を備えたUV設備を用いて照射線量80mJ/cmで行った。
【0079】
例5:
例4に基づき作製されたフィルム構成体をラミネート用接着剤でコーティングし、さらにまた例4に基づき作製されたフィルム構成体で被覆した。硬化は、IST社の、中圧水銀灯を備えたUV設備を用いて照射線量80mJ/cmで行った。
【0080】
比較例1:
Alcan Packaging社の、12μPETフィルムとSiOコーティングの多重ラミネートをテストした(Alcan UHBF)。
【0081】
このように製造された試料に関し、透過性およびヘイズを、ASTM D1003−00に従って測定した。WVTRおよびOTRは、STM F−1249に従い38℃および相対湿度90%で、またはDIN53380第3部に従い23℃および相対湿度50%で測定した。結果を下の表2にまとめる。
【0082】
バリアフィルムの特性
【0083】
【表3】

【0084】
これらの例は、本発明によるフィルム構成が、比較的小さなフィルム厚で非常に優れたバリア値を達成することを示している。つまり単独での構成のフィルム(層厚約10μm)のWVTRおよびOTRが既に10−2g/mdまたはcm/md barの範囲内にあり(例1および例2を参照)、2つ重ねたまたは4つ重ねた構成による複合体(例4および例5を参照)のWVTRおよびOTRは、10−3g/mdまたはcm/md barの範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー層(10)と、
第1の無機バリア層(20)と、
少なくとも1つの少なくとも部分的に有機の均し層(30)と、
少なくとも1つのさらなる無機バリア層(21)と、
少なくとも1つのさらなるポリマー層(11)とから成り、
前記ポリマー層どうし、および前記無機バリア層どうしが、それぞれ同じ材料から成っていても異なる材料から成っていてもよい、透明で基材を有さない浸透バリアフィルムにおいて、
無機バリア層が2〜1000nmの間の厚さを有し、ポリマー層および少なくとも部分的に有機の均し層が5μm未満、好ましくは0.5〜4μmの間の厚さを有することを特徴とする浸透バリアフィルム。
【請求項2】
ポリマー層が、少なくとも1つの方向に、好ましくは2つの方向に配向されていることを特徴とする請求項1に記載の浸透バリアフィルム。
【請求項3】
ポリマー層が、フィルムから、好ましくは1軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムから成ることを特徴とする請求項1または2に記載の浸透バリアフィルム。
【請求項4】
ポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フッ素ポリエステル、ポリメチルペンテン、ポリノルボルネン、置換ポリアリレート、ポリイミド、シクロオレフィンコポリマー、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリカーボネートから成る群、または前記群からのポリマーをベースとするコポリマーから選択されることを特徴とする請求項3に記載の浸透バリアフィルム。
【請求項5】
ポリマーが、2000MPa超、好ましくは3000MPa超の弾性率を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルム。
【請求項6】
ポリマーが、1重量%未満の水分含有率を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルム。
【請求項7】
無機バリア層が、真空中もしくは大気圧下で堆積された金属から、または真空中もしくは大気圧下で堆積された金属化合物から、好ましくは金属酸化物、金属窒化物、または金属水窒化物から成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルム。
【請求項8】
無機バリア層が、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、またはテルルの酸化物、窒化物、もしくは水窒化物から成る群、または酸化インジウムスズから選択された化合物、あるいはさらなる元素でドープされた前記化合物の1種から成ることを特徴とする請求項7に記載の浸透バリアフィルム。
【請求項9】
少なくとも部分的に有機の均し層が、10g/md以下の水蒸気浸透性および/または100cm/md bar以下の酸素浸透性を有する接着層であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の少なくとも2つの浸透バリアフィルムから成る浸透バリアフィルム複合体であって、前記浸透バリアフィルムが、少なくとも1つのさらなる少なくとも部分的に有機の均し層を介して相互に重ねてラミネートされており、その際、前記浸透バリアフィルムの材料および構成が、同じでも異なっていてもよいことを特徴とする浸透バリアフィルム複合体。
【請求項11】
前記フィルムまたは複合体が、製造および/または輸送のために、補助支持体(40)、好ましくは再剥離可能な接着剤(50)でコーティングされた補助支持体(40)を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルムまたは請求項10に記載の浸透バリアフィルム複合体。
【請求項12】
前記フィルムまたはフィルム複合体が、少なくとも片面で全面的または部分的に、少なくとも1つのさらなる機能層および/または構造化を備えており、前記機能層が、特に、熱伝導性もしくは導電性の層、保護層、接着層、反射抑制層、および/または光出射層もしくは光入射層、さらに前記層の組合せから成る群から選択されることを特徴とする請求項1〜9または11のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルムまたは請求項10または11に記載の浸透バリアフィルム複合体。
【請求項13】
前記接着層の接着剤が、感圧接着剤またはホットメルト接着剤であり、特にスチレンブロックコポリマー、ポリイソブチレン、ポリイソブチレンブロックコポリマー、またはポリオレフィンをベースとする感圧接着剤またはホットメルト接着剤であることを特徴とする請求項12に記載の浸透バリアフィルムまたは浸透バリアフィルム複合体。
【請求項14】
ポリマー層、無機バリア層、および少なくとも部分的に有機の均し層の屈折率の差が0.3以下、特に0.1以下であることを特徴とする請求項1〜9または11〜13のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルムまたは請求項10〜13のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルム複合体。
【請求項15】
<10μmの厚さ、<10−2g/mdの水蒸気浸透性、および<10−2cm/md barの酸素浸透性を有することを特徴とする請求項1〜9または11〜14のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルム。
【請求項16】
浸透バリアフィルムが、<20μmの厚さ、<10−3g/mdの水蒸気浸透性、および<10−3cm/md barの酸素浸透性を有することを特徴とする請求項10〜14のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルム複合体。
【請求項17】
(a)ポリマーフィルム(10)を用意するステップと、
(b)複合体を製造するために前記ポリマーフィルムを無機バリア層(20)でコーティングするステップと、
(c)前記複合体を少なくとも部分的に有機の均し層(30)でコーティングするステップと、
(d)前記少なくとも部分的に有機の均し層を、ポリマーフィルム(11)および無機バリア層(21)から成るさらなる複合体により被覆するステップとを含む方法において、
ステップ(a)ではポリマーフィルム(10)が、またはステップ(b)ではポリマーフィルム(10)および無機バリア層(20)から成る複合体が、再剥離可能な接着剤を備えた補助支持体(40)上に供されることを特徴とする請求項1〜9または11〜15のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルムの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜9または11〜15のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルムまたは請求項10〜14または16のいずれか一つに記載の浸透バリアフィルム複合体を含む貼付け可能な平面構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a)】
image rotate

【図4b)】
image rotate

【図4c)】
image rotate

【図4d)】
image rotate

【図4e)】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2012−524677(P2012−524677A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506435(P2012−506435)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054628
【国際公開番号】WO2010/121905
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】