説明

透明な熱硬化性ポリマー/熱可塑性ポリマーブレンド型材料の製造方法、および有機ガラスの製造のための光学分野におけるその使用

【課題】透明な熱硬化性ポリマー/熱可塑性ポリマーブレンド型材料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、透明成形品のマトリックスを形成する熱硬化性ポリマー材料と、前記熱硬化性ポリマー材料中に分散された熱可塑性ポリマー材料とのブレンドを含む透明成形品の製造方法に関し、少なくとも以下の工程を含む。
i)前記熱可塑性ポリマー材料を、マトリックスの前駆体である熱硬化性組成物中に溶解させることによって、重合性液体混合物を調製する工程、
ii)工程i)で調製した重合性液体混合物を型に満たす工程、
iii)前記重合性液体混合物を、硬化したポリマーブレンドが得られるまで重合させる工程、および
iv)前記ポリマーブレンドによって形成された成形品を取り出す工程。
本方法は、前記熱硬化性組成物が、少なくとも60重量%のビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレートと、少なくとも12重量%の、少なくとも1種の一官能性または多官能性アクリルコモノマーとを含むこと、および、前記熱可塑性ポリマー材料が、少なくとも1種のポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PB-b-PMMA)トリブロックコポリマーを含むことを特徴とする。
本発明は、本方法によって得られる透明成形品、および工程i)で調製される重合成液体混合物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の熱硬化性ポリマー材料と、この熱硬化性ポリマー材料の機械的および/または光学的特性を改変する特定の熱可塑性ポリマー材料との重合性液体混合物であって、熱硬化性ポリマー材料が、通常、重合性液体混合物の主要な相を構成するものに関し、さらに、透明な物品を得ることを可能にする前述のブレンドを注型する方法に関する。本発明は、この方法によって得られる透明物品、より詳細には眼科用レンズにも関する。
【背景技術】
【0002】
光学物品、例えば眼科用レンズの製造に一般に用いられる基材には2つのタイプ、すなわち無機ガラスの基材と有機ガラスの基材がある。現在の市場は、無機ガラスに勝る2つの主な利点、すなわち良好な耐衝撃性および軽量性を有する有機ガラスに圧倒的に有利に展開する傾向にある。最も用いられている有機ガラス基材は、ビスフェノールAポリカーボネート、およびジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の重合により得られ、PPG INDUSTRIES社からCR 39(登録商標)の商標名で販売されている基材である(ESSILOR ORMA(登録商標)レンズ)。
【0003】
既知の透明な有機基材のいくつかは、既に全般的に満足できるものであるが、新規な透明基材を得ることを可能にし、良好な耐衝撃性、耐亀裂性、耐溶剤性などの有用な特性を併せ持つ光学物品をもたらす他のタイプの重合性組成物を得ることが望ましい。
【0004】
特定のジメタクリルモノマー、すなわち、式(I):
【化1】

のビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレートが、重合/架橋後に、耐衝撃性および耐亀裂性を改善させるために有用な透明な材料を生成することが知られている。そこで、本発明の目的は、このような熱硬化性ポリ(メタ)アクリル系の機械的特性、特に耐衝撃性および耐亀裂性を、弾性率を損なうことなく向上させる一方、そのような熱硬化性ポリ(メタ)アクリル系の透明性を有意に低下させないことである。
【0005】
熱可塑性コポリマー、特に配列熱可塑性コポリマーを、熱硬化性ポリマー系に、後者の機械的特性を向上させるために少量組み込むことが知られている。
【0006】
透明有機ガラスの分野では、配列ポリマーを熱硬化性の系に組み込んだ以下の例が挙げられる。
【0007】
特に、Arkema社からのスチレン-(1,4-ブタジエン)-メタクリルレート(ABC型のSBMコポリマー)のタイプのトリブロックコポリマーの熱硬化性エポキシマトリックスへの組み込みが、最近の研究につながり、材料の機械的特性の改良に関する目を見張るような結果をもたらした(この改良により、材料の透明性は維持され、かつ、弾性率がわずかに低下するのみである)。これらの研究は、例えば、文献「A new class of Epoxy Thermosets」、Girard-Reydet, E.; Pascault, J.P.; Bonnet, A.; Court, F.; Leibler, L.、Macromol. Symp. 2003, Vol. 198, 309-322、および欧州特許出願公開第1290088号(ブロックコポリマーについての詳細な記載がある)に記載されている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1290088号明細書
【非特許文献1】Girard-Reydet, Eら、Macromol. Symp. 2003, Vol. 198, 309-322
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレート(上述の式(I))をベースとする熱硬化性ポリマー系の機械的特性を、ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)トリブロック熱可塑性コポリマーの組み込みによって改良する試験の最中に、出願人らは、熱硬化性材料の架橋工程の間に熱可塑性相が偏折する問題に突き当たった。最初は熱可塑性モノマー中に可溶である熱可塑性コポリマーは、硬度に架橋した3次元ネットワークが形成されるにしたがって徐々に系に対して非相溶性になる。こうして、硬化中に系から「排除」されたコポリマーは、最終的な材料において熱硬化性マトリックス中に分散されたミクロドメインの形態で観察される。このミクロドメインは、これらがある大きさを超えると裸眼で目に見え、程度の差はあるが、材料の透明性を有意に低下させ、その光学物品の製造のための使用を妨げる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
出願人は、この問題を解決し、ジメタクリルモノマーに少量の一官能性または多官能性アクリルコモノマー(好ましくは、メチルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートまたはこれらの混合物から選択されるコモノマー)を添加することによって、ビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレートをベースとする透明ポリマーブレンドを得ることに成功した。
【0010】
このように、ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)タイプのトリブロック熱可塑性コポリマーを、相対的に少量の一官能性または多官能性アクリルコモノマーのうちの1種と混合したビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレートに溶解させ、この均一な系を重合させると、熱可塑性コポリマーの偏折が大幅に低減され、かつ、最終的な熱硬化性材料は、熱硬化性マトリックス中に熱可塑性ポリマーのナノドメインが分散された熱硬化性マトリックス(言い換えれば、材料の透明性を変化させない、目に見えないナノメートルサイズのドメインが分散された熱硬化性マトリックス)で構成される。
【0011】
したがって、本発明の主題は、透明成形品のマトリックスを形成する熱硬化性ポリマー材料と、前記熱硬化性ポリマー材料中に分散された熱可塑性ポリマー材料とのブレンドを含む透明成形品の製造方法であって、少なくとも以下の工程、
i)前記熱可塑性ポリマー材料を、前記マトリックスの前駆体である熱硬化性組成物中に溶解させることによって、重合性液体混合物を調製する工程と、
ii)工程i)で調製した前記重合性液体混合物を型に満たす工程と、
iii)前記重合性液体混合物を、硬化したポリマーブレンドが得られるまで重合させる工程と、
iv)前記ポリマーブレンドによって形成された成形品を取り出す工程と
を含み、
前記熱硬化性組成物が、少なくとも60重量%、好ましくは70重量%〜85重量%の、式(I):
【化2】

のビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレートと、少なくとも12重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の、少なくとも1種の一官能性または多官能性アクリルコモノマーとを含むこと、および
前記熱可塑性ポリマー材料が、少なくとも1種のポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PB-b-PMMA)トリブロックコポリマーを含むこと
を特徴とする、製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一官能性アクリルコモノマーは、イソボルニルアクリレート(IBOA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、ラウリルアクリレートおよび2-フェノキシエチルアクリレート(PEA)、メチルメタクリレート(MMA)、ならびにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)から選択される。
【0013】
多官能性アクリルコモノマーの場合、アクリルコモノマーは、二官能性アクリルコモノマー〔例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(TCDDMDA)、ジエチレングリコールジアクリレート(DEGDA)、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、エステルジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、およびネオペンチルグリコールプロポキシルジアクリレートなど〕、または多官能性アクリルコモノマー〔トリメチロールプロパンエトキシルトリアクリレート(TMPEOTA)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETTA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Di-TMPTTA)、トリス(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌレートトリアクリレート(THEICTA)、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(DiPEPA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、3-プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPPOTA)、4-エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PPTTA)、5-エトキシル化ペンタエリトリトールトリアクリレート、5-エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびグリセリンプロポキシルトリアクリレート(GPTA)から選択される〕から選択される。
有利な態様では、一官能性アクリルコモノマーを用いることが好ましく、さらに特に、メチルメタクリレート(MMA)およびヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはこれらの混合物から選択されるコモノマーが好ましい。
【0014】
ポリマーブレンドは、この用語が本発明で用いられる意味において、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、少なくとも1種の熱硬化性ポリマーとの混合物を示す。
【0015】
本出願で用いる「熱硬化性の」または「熱硬化の」という形容詞は、熱を加えることによって硬化可能であるもしくは硬化される系を必ずしも意味しない。実際、硬化は、例えば光重合の場合、周囲温度で、あるいは周囲温度より低い温度でさえ起こりうる。本出願においてこの用語は、プラスチックの分野において一般的であるように、「熱可塑性の」という用語の反対語として用いられる。言い換えれば、熱硬化性ポリマーは、高温で液体にならない架橋した3次元の高分子ネットワークによって形成される、硬質材料である。
【0016】
上述したように、本発明の方法で製造される透明成形品は、ポリマーのブレンドによって構成される。このポリマーブレンドは、最終物品のマトリックスを形成する第1の熱硬化性ポリマー材料と、前記第1の硬化したポリマー材料中にナノドメインの形態で熱硬化され分散した、トリブロックコポリマーによって形成された第2の熱可塑性ポリマー相とを含む。通常、第1の材料によって形成された熱硬化性相が主要な相である。
【0017】
本発明によれば、透明成形品は、トリブロック熱可塑性ポリマーが溶解された熱硬化性重合性組成物(熱硬化性マトリックスの前駆体)を含む重合性液体混合物を重合させ、前記熱硬化性重合性組成物の硬化により第一の熱硬化性材料を形成させることによって製造される。
【0018】
熱硬化性組成物は、重合性液体混合物の質量の80重量%〜97重量%、特に、90重量%〜95重量%を占めることが好ましい。熱可塑性ポリマー材料は、重合性液体混合物の質量の3重量%〜20重量%、特に、5重量%〜10重量%を占めることが好ましい。
【0019】
本発明の重合性混合物の重合は、ラジカル型、アニオン型、またはカチオン型であってよく、あるいは、当業者に周知の技術であるシクロオレフィンの存在下での開環によるメタセシスによって行ってもよい。本発明の重合性混合物がエチレン基を有する重合性モノマーを含有する場合、重合の開始および重合は一般に放射線照射下で行う。これは(場合により重合開始剤の存在下での)光重合であってもよく、電子のビームによる照射(電子ビーム照射)であってもよく、これは電子ビームのエネルギーが重合に必要なフリーラジカルを生成するのに十分であるので、重合開始剤の存在を必要としない重合のタイプである。本発明の重合性混合物は、これらの方法の組み合わせを用いて重合することもできる。本発明の熱硬化性重合性組成物は、少なくとも1種の重合開始剤、好ましくは少なくとも1種の光開始剤を含むことが好ましい。
【0020】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の熱硬化性重合性組成物は、光重合により重合され、少なくとも1種の光開始剤を含み、後者は好ましくは熱硬化性重合性組成物の質量の0.1%〜10%を占める。
【0021】
本発明の目的のために熱硬化性重合性組成物中で用いることができる光開始剤としては、これらに限定されないが、芳香族α-ヒドロキシ-ケトン、α-アミノ-ケトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、モノアシルホスフィンオキシド(MAPO)、ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)、第3級アミン/ジケトン混合物、アルキルベンゾイルエーテル、ベンゾインエーテル、フェニルグリオキシレート、チオキサントン、ならびに、カチオン性光開始剤(例えば、トリアリールスルホニウム塩およびアリールヨードニウム塩など)を挙げることができる。
【0022】
特に、Ciba Specialty Chemicals社によりIRGACURE(登録商標)の一般名称で市販されている光開始剤、特に光開始剤IRGACURE(登録商標)184(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)、光開始剤IRGACURE(登録商標)500(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトンおよびベンゾフェノンの質量で50/50の混合物)、光開始剤IRGACURE(登録商標)651(2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン)、光開始剤IRGACURE(登録商標)819〔ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド〕、光開始剤IRGACURE(登録商標)907〔2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン〕、光開始剤IRGACURE(登録商標)1700 〔ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシドおよびDAROCUR(登録商標)1173の質量で25/75の混合物〕、Ciba Specialty Chemicals社によりDAROCUR(登録商標)の一般名称で市販されている光開始剤、特に、光開始剤DAROCUR(登録商標)1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン)、光開始剤DAROCUR(登録商標)TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド)、光開始剤DAROCUR(登録商標)4265〔DAROCUR(登録商標)1173およびDAROCUR(登録商標)TPOの質量で50/50の混合物〕、Ciba Specialty Chemicals社によりCGI 1850の名称で市販されている光開始剤〔IRGACURE(登録商標)184およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシドの質量で50/50の混合物〕、BASF社によりLucirin(登録商標)の一般名称で市販されている光開始剤、特に光開始剤Lucirin(登録商標)TOP-L (エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート)、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-アセトフェノン(DEAP、Upjohnより市販されている)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ケトン、2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンを挙げることができる。
【0023】
好ましい光開始剤は、式(IV)のCGI 1850である。
【化3】

【0024】
重合反応は、適切な手段、すなわち可視光、UV放射線照射、または他の任意の手段を用いて開始され、その選択は使用する光開始剤の種類によって異なる。
【0025】
重合開始剤は、単独で、または硬度改変剤(例えば光増感剤、促進剤(触媒)、または重合阻害剤)と従来の比率で混合して用いることができる。ある種の光開始剤は光増感特性も有し得る。
【0026】
本発明で使用することができる光増感剤および促進剤の非限定的な例は、ITX (2-または4-イソプロピル-チオキサントン)などのチオキサントン類またはCPTX (1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン)などのクロロチオキサントン類、カンファーキノンなどのキノン類、ベンズアントロン類、ミヒラーケトン(4,4'-ビス(ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン)、フルオレノン、トリフェニルアセトフェノン、ジメチル-エタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DMPT (N,N-ジメチル-p-トルイジン)、MHPT (N-[2-ヒドロキシエチル]-N-メチル-p-トルイジン)、ODAB (オクチルp-N,N-ジメチルアミノベンゾエート)、EDAB(Aceto CorporationによりQuantacure(登録商標)EPDの名称で市販されているエチルp-N,N-ジメチルアミノ-ベンゾエート)、EDMA (2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン)、またはこれらの混合物である。特に、カンファーキノン/EDABの混合物を用いることができる。
【0027】
本発明で用いることができる重合阻害剤(フリーラジカルの阻害剤)の非限定的な例は、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩、トリス[N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン]のアルミニウム塩、4-メトキシフェノール(MEHQ)、ヒドロキノンおよび置換ヒドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、4-エチル-カテコール、立体障害アミンおよびこれらの混合物である。
【0028】
本発明の熱硬化性重合性組成物は、光学物品用(特に眼科用レンズ)の重合性組成物中において従来用いられているいくつかの他の添加物を、従来の比率で含むこともできる。添加物の例は、これらに限定されないが、着色剤、安定剤(例えばUV吸収剤、酸化防止剤、および黄変防止剤など)、香料、防臭剤、離型剤、潤滑剤、接着促進剤、およびカップリング剤である。
【0029】
本発明の目的のために熱硬化性重合性組成物中に用いることができるUV吸収剤(紫外線をフィルターにかける系)として、これらに限定されないが、4-アミノ安息香酸(PABA)およびその塩、アントラニル酸およびその塩、サリチル酸およびその塩またはそのエステル(特に、アリールヒドロキシベンゾエート)、4-ヒドロキシ桂皮酸およびその塩、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、およびベンゾチアゾールのスルホン誘導体並びにそれらの塩、ベンゾフェノン(特に、ベンゾフェノンおよび2-ヒドロキシベンゾフェノンのスルホン誘導体)およびそれらの塩、ベンジリデンカンファーのスルホン誘導体およびそれらの塩、第4級アンモニウム基で置換されたベンジリデンカンファーの誘導体およびそれらの塩、カンファースルホン酸のフタリリデン誘導体およびそれらの塩、ベンゾトリアゾール(特に、ベンゾトリアゾールのスルホン誘導体およびそれらの塩)、オキサルアミド、オキサニリド、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。
【0030】
本発明で用いることができるUV吸収剤の非限定的な例は、2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、PBSA(Givaudan-Roure社によりPARSOL(登録商標)HSの名称で市販されている2-フェニル-ベンゾイミダゾール-5-スルホン酸のナトリウム塩)、4-tert-ブチル-4'-メトキシ-ジベンゾイルメタン(Givaudan-Roure社によりPARSOL(登録商標)1789の名称で市販されているもの)、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメートすなわちアボベンゾン(Givaudan-Roure社によりPARSOL(登録商標)MCXの名称で市販されているもの)、オクチルp-メトキシシンナメート、UVINUL(登録商標)MS 40 (2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、BASF)、UVINUL(登録商標)M 40 (2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、BASF)、オクトクリレン(2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート)、2-エチルヘキシル4-ジメチルアミノベンゾエート(オクチルジメチル-PABA)、トリエタノールアミンサリチレート、オクチルサリチレートである。UV光保護特性を有するポリマー、特に、スルホ基または第4級アンモニウム基で置換されたベンジリデンカンファーおよび/またはベンゾトリアゾール基を含むポリマーを使用することもできる。これらは単独で、または他のUV吸収剤と混合して用いることができる。
【0031】
米国特許第5,442,022号、米国特許第5,445,828号、米国特許第5,702,825号、米国特許第5,741,831号、および仏国特許第2,699,541号に記載されるものなどの黄変防止剤を、これらに限定されないが、単独または混合で用いることができる。好ましい黄変防止剤は、3-メチル-ブト-2-エン-1-オール(M-BOL)である。一般に、黄変防止剤の質量は、本発明の熱硬化性重合性組成物の質量の0.5〜4%を占める。
【0032】
本発明の目的のために熱硬化性重合性組成物中に用いることができる酸化防止剤として、これらに限定されないが、立体障害フェノール系酸化防止剤、Ciba Specialty Chemicals社により市販されているIRGANOX(登録商標)245 DW(エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)を挙げることができる。
【0033】
本発明のブロックポリマーは、三配列コポリマー(trisequenced copolymer)(トリブロックコポリマーとも呼ぶ)である、ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PB-b-PMMA)トリブロックコポリマーである。以下、これをSBMコポリマーと呼ぶ。
【0034】
本発明の枠組み内で用いることができるブロックコポリマーは、特に、国際公開第2005/073314号および国際公開第2005/014699号に記載されている。これらのブロックコポリマーのPS、PB、およびPMMA部分の詳細な記載に関しては、これらの文書を特に参照されたい。
【0035】
最後に、本発明の方法によるポリマーブレンドを含む透明成形品の製造においては、ブロックポリマーのポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ブロックがブロックコポリマーの比較的大きな部分を占めることが重要である。本発明の有利な変法によると、PMMAブロックは、好ましくはポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)ブロックコポリマーの重量平均モル質量の50重量%〜80重量%、より好ましくは52重量%〜70重量%を占める。
【0036】
したがって、15000〜200000 g/molの重量平均モル質量を有する三配列のSBMトリブロックコポリマーについては、ポリ(メチルメタクリレート)ブロックの重量平均モル質量は好ましくは10,000〜100,000 g/molである。
【0037】
本発明の枠組みの範囲内で、使用するブロックコポリマーは、トリブロックコポリマーとポリスチレン-block-ポリブタジエン型のジブロックコポリマーとの混合物とすることができることが理解される。
【0038】
本発明の方法は、少なくとも4つの工程を含む。第1の工程は、トリブロック熱可塑性ポリマーを熱硬化性重合性組成物に溶解させることによって、重合可能な混合物を準備することから成る。この熱可塑性ポリマーは、好ましくは粉末状または顆粒状で用いる。これを、一般に、撹拌しながら熱硬化性重合性組成物に徐所に添加する。得られる分散物が周囲温度で均一でない場合には、トリブロックコポリマーが完全に溶解するまで、分散物をサーモスタット制御の油浴中で撹拌しながら加熱することができる。本発明において周囲温度は、15〜25℃の温度を意味する。この溶解の工程は、およそ80℃の温度で数週間かかることがある。一般に透明で粘稠である、得られた重合性混合物を、(場合により熱いうちに)ろ過し、次いで(場合により熱いうちに)撹拌しながら脱気してもよく、その後これを第2の注型工程で用いる。
【0039】
この第2の工程は、こうして得られた重合性混合物を型に満たすことを含む。場合により、前記重合性混合物を型と同様に予熱してもよい。一般に、およそ80〜90℃の温度が十分に好適である。重合性液体混合物を、例えば、外周を粘着テープで貼り合わせた2つの無機ガラス部品から構成される組立体に注入することができる。
【0040】
第3の工程は、重合性液体混合物を、硬化したポリマーブレンドが得られるまで、(好ましくは光重合によって)重合させることを含む。重合を、0℃〜100℃の温度、特に10℃〜30℃の温度、さらに理想的には周囲温度(すなわち、20℃〜25℃の温度)にて、型から取り出すために十分に硬く、求める機械的特性および光学特性を有する材料が得られるまで行わせることが好ましい。
【0041】
重合は、最初の混合物中に最初に存在するアクリル性二重結合が、90%を超えて、好ましくは95%を超えて反応するまで行わせることが好ましい。
【0042】
最後に、第4の最終工程では、成型品の取り出しおよび回収を行う。
【0043】
本発明の主題は、熱硬化性ポリマーとトリブロック熱可塑性ポリマーとのブレンドを含み、上述した方法によって得ることができる、透明成型品である。
【0044】
本発明の方法に従って得られる透明成形品は、好ましくは、光学物品、すなわち有機ガラスである。これらを、一般に、しかし限定的ではないが、光学物品として、好ましくは眼科用レンズとして使用することを意図している。これらは、2つの材料各々に由来する特性、特に、熱硬化性材料によりもたらされる良好な耐溶剤性と、熱硬化性マトリックス中にナノドメインの形態で分散された熱可塑性ポリマー材料に起因する良好な耐衝撃性および耐亀裂性とを兼ね備えるという利点を有する。
【0045】
有機ガラス製のこのような光学物品の他の特性、例えば耐摩耗性および耐引っかき性、反射防止特性および防汚性などを改善するために、その主要表面の少なくとも一方の上に、1層以上の機能性コーティングを形成させることができる。
【0046】
無機レンズより硬度が低い有機レンズの主な欠点は、引っかきに対する耐性の低さである。したがって、基材の主要表面上に、物品の衝撃強度を高め、基材へのその後のコーティングの接着性をも高めることを目的とする、第一耐衝撃コーティングと呼ばれる第1コーティングを形成させ、次いで、この第一耐衝撃コーティング上に、光学物品表面の機械的応力による損傷に耐える能力を向上させることを目的とする、一般に摩耗防止コーティングまたは耐引っかき性コーティングと呼ばれるハードコーティングを連続して形成させることが知られている。この摩耗防止コーティングを、反射防止コーティングで被覆させ、次いで、反射防止コーティングを、防汚コーティングで被覆する。防汚コーティングの役割は、反射防止層と水または油脂との間の界面張力を(それらの付着を低下させるために)改変することであるが、油脂の浸透および残存を防ぐようにすき間をふさぐことでもある。
【0047】
本発明の主題はさらに、本発明の方法の実施に用いられ、透明成型品をもたらす重合性液体混合物である。この重合性液体混合物は、熱硬化性組成物中に溶解された熱可塑性ポリマー材料(ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PB-b-PMMA)トリブロックコポリマーから選択されるポリマー材料)を含み、少なくとも60重量%、好ましくは70重量%〜85重量%の、式(I):
【化4】

のビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレートと、少なくとも12重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の、少なくとも1種の一官能性または多官能性アクリルコモノマーとを含む。
【0048】
一官能性アクリルコモノマーは、イソボルニルアクリレート(IBOA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、ラウリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート(PEA)、メチルメタクリレート(MMA)、ならびにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)から選択される。
【0049】
多官能性アクリルコモノマーの場合、アクリルコモノマーは、二官能性アクリルコモノマー〔例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(TCDDMDA)、ジエチレングリコールジアクリレート(DEGDA)、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、エステルジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、およびネオペンチルグリコールプロポキシルジアクリレートなど〕、または多官能性アクリルコモノマー〔トリメチロールプロパンエトキシルトリアクリレート(TMPEOTA)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETTA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Di-TMPTTA)、トリス(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌレートトリアクリレート(THEICTA)、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(DiPEPA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、3-プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPPOTA)、4-エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PPTTA)、5-エトキシル化ペンタエリトリトールトリアクリレート、5-エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびグリセリンプロポキシルトリアクリレート(GPTA)から選択される〕から選択される。
有利な態様では、一官能性アクリルコモノマーを用いることが好ましく、さらに特に、メチルメタクリレート(MMA)およびヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはこれらの混合物から選択されるコモノマーが好ましい。
【0050】
本発明の有利な態様では、一官能性アクリルコモノマーを用いることが好ましく、さらに特に、メチルメタクリレート(MMA)およびヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはこれらの混合物から選択されるコモノマーが好ましい。
【0051】
これまでに特定した参考文献はいずれも、特に、熱硬化性組成物と熱可塑性ポリマー材料との相対的な割合、重合開始剤の性質および量、熱可塑性ポリマーの科学的性質および分子量を含めて、当然本重合性液体混合物にも当てはまる。
【実施例】
【0052】
使用するさまざまな熱硬化性重合成組成物を、ベースとなる「配合物A」と、いろいろな割合の本発明の一官能性アクリルコモノマー〔すなわち、メチルメタアクリレート(MMA)またはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)〕とを混合することによって調製する。
【0053】
ベースとなる「配合物A」は、
− 98質量%の式(I):
【化5】

のジメタクリレートと、
− 1.8質量%の3-メチル-ブト-2-エン-1-オール(M-BOL、黄変防止剤)と、
− 0.2質量%のCGI 1850(式(IV)の光開始剤)と
を含む(百分率は、重合性熱硬化性組成物の総質量に対して表す)。
【0054】
この実施例で用いるトリブロックコポリマーは、質量で50%を超えるPMMAブロック部分を有する、重量平均モル質量が41900g/molのPS-b-PB-b-PMMAである。
【0055】
トリブロックコポリマーは、予め80℃に加熱しておいた熱硬化性組成物(配合物A+メチルメタクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートまたはイソブチルメタクリレート)に、粉末の形態で徐々に導入する。この懸濁液を、所用期間が約7日間続く溶解時間の間、攪拌下、この温度に保つ。
【0056】
得られる重合性混合物は、透明で粘稠である(粘度は周囲温度にて約10 Pa・s)。
【0057】
次いで、この重合性液体混合物を20ミクロンの細孔径のフィルターを用いてろ過する。ろ過した重合性混合物を2時間脱気した後、約30mLの混合物を、80℃にて約30分間予熱しておいたシリンジに取り出し、やはり80℃に予熱しておいた、外周を粘着テープで貼り合わせた無機ガラス製の部品2つから構成される組立体に注入する。
【0058】
次いで、こうして注入した組立体を、約20℃の温度にて10時間貯蔵する。この周囲温度での休養期間の後、紫外線照射に曝すことによって重合を開始させる。約13分の曝露時間後に、成形システムの解体によって型から取り出すために十分に高い硬度を有する透明有機ガラスが得られる。メタクリレート官能基の変換率は、赤外吸収スペクトルによって測定して、95%より高い。
【0059】
[有機ガラスの透明性]
上述した方法で、上述した通りの固定量のSBMトリブロック熱硬化性コポリマーと、増加させた濃度の本発明の一官能性アクリルコモノマー(MMAおよびHEMA)とを含む一連の熱硬化性有機ガラスを製造した。100%にするための補完的な部分は、上述により定義した配合物Aで構成される。
【0060】
表1は、アクリルコモノマーの量が、得られる有機ガラスの透明性に及ぼす影響を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
コモノマーMMAおよびHEMAの効果的な最小含有量は、10重量%を越える量である。
【0063】
[靭性]
いくつかの配合物の靭性を、ノッチ入り試験片の3点曲げ破壊によって評価した。
【0064】
[靭性測定]
(線形弾性破壊の力学的判定基準)
線形弾性破壊の力学は、ノッチ入り試験片に(本研究では、方法I、張力亀裂開口法で)応力をかけた場合に、フックの法則(加えた応力とひずみが比例関係にある)にしたがう素材に適用される。この状況の下で、相互依存の2つの測定可能な変数により破壊の機構を特徴づけることができる。
− GIc:破壊エネルギー(亀裂伝播を引き起こすのに必要なエネルギー)
− KIc:破壊靭性(材料の亀裂開始強さ)
〔ここで、平面応力においては、GIc = KIc2/E であり、平面ひずみにおいてはGIc = KIc2 x (1-ν2)/Eである。〕
【0065】
<実験手順>
3点曲げ破壊試験は、Instron4301装置(空調室内において20℃で測定)を使用して行った。
破壊試験に用いる試験片の形状を図1に示す。試験片を、6mm厚みの小ディスクからWilliamsが彼の試験手順*1で推奨しているものに準じた形状を持つように切り出した。第1のステップで、試験片を0.5mm厚みのカッターでプレカットし、次いで120℃で2時間焼鈍した。最後に、プレノッチの底に、カミソリの刃を用いてギロチン方式によりV−ノッチをつくった。
*1 Williams J.G.、EGF Task Group on Polymers and Composites、「A Linear Elastic Fracture Mechanics (LEFM) standard for determining Kc and Gc for plastics 」(1989)
【0066】
試験片を最も脆い条件で試験して、GIcおよび KIcを算出する公式に当てはめることができるようにするために、試験片の形状およびノッチづくりに関する基準を厳守しなければならない。
今回の場合、図1において B=6mm、W=12mm である。
【0067】
[破壊変数の算出]
Icは次の式に基づき経験的に決められる。
【数1】

ここで、BおよびWはそれぞれ試験片の厚さと高さである。
aはノッチの深さである(ノッチ+プレノッチ)。
maxは破壊試験中に記録された最大荷重である。
α=a/W
fは、本形状の試験片については、形状ファクターであり、次の方程式で表される:
【数2】

【0068】
Icは、経験的に下記式により決定する:
【数3】

ここで、Ui は、Pmaxまでの力−変位曲線の下の面積であり、
Φは、形状ファクターであり:
【数4】

同時に
【数5】

である。
【0069】
表2の、いずれも完全に透明である5つの有機ガラス試料の臨界応力拡大係数KIC (MPa.m1/2で表す)、破壊エネルギーGIc (KJ/m2)、および弾性率E (MPa)を示す。
【0070】
【表2】

【0071】
結果は、SBMトリブロックコポリマーとアクリルコモノマーとが組み合わせて存在することによる、配合物Aの機械的特性の強化における効果を証明している。特に、これらの結果は、純粋な配合物Aと比較して、あるいはアクリルコモノマーのみが存在する場合と比較して、エネルギーGIcの増加を示している(0.74および1.02)。弾性率も強化されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、破壊試験に用いる3点曲げ試験用試験片の形状寸法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明成形品のマトリックスを形成する熱硬化性ポリマー材料と、前記熱硬化性ポリマー材料中に分散された熱可塑性ポリマー材料とのブレンドを含む透明成形品の製造方法であって、少なくとも以下の工程、
i)前記熱可塑性ポリマー材料を、マトリックスの前駆体である熱硬化性組成物中に溶解させることによって、重合性液体混合物を調製する工程と、
ii)工程i)で調製した重合性液体混合物を型に満たす工程と、
iii)前記重合性液体混合物を、硬化したポリマーブレンドが得られるまで重合させる工程と、
iv)前記ポリマーブレンドによって形成された成形品を取り出す工程と
を含み、
前記熱硬化性組成物が、少なくとも60重量%、好ましくは70重量%〜85重量%の、式(I):
【化1】

のビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレートと、少なくとも12重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の、少なくとも1種の一官能性または多官能性アクリルコモノマーとを含むこと、および
前記熱可塑性ポリマー材料が、少なくとも1種のポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PB-b-PMMA)トリブロックコポリマーを含むこと
を特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記アクリルコモノマーが一官能性アクリルコモノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項3】
前記アクリルコモノマーが、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項4】
前記熱硬化性組成物が、前記重合性液体混合物の質量の80重量%〜97重量%、好ましくは90重量%〜95重量%を占めること、および、前記熱可塑性ポリマー材料が、前記重合性液体混合物の3重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜10重量%を占めることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性組成物が、少なくとも1種の重合開始剤、好ましくは少なくとも1種の光開始剤をも含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項6】
前記重合開始剤の質量が、前記熱硬化性組成物の質量の0.1%〜10%を占めることを特徴とする、請求項5に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項7】
前記重合性液体混合物を光重合によって重合させることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項8】
工程iii)における重合を、0℃〜100℃の温度、好ましくは10℃〜30℃の温度、特に好ましくは20℃〜25℃の温度にて行うことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項9】
前記ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ブロックが、前記ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)トリブロックコポリマーの重量平均モル質量の50重量%〜80重量%、好ましくは52重量%〜70重量%を占めることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項10】
前記ポリ(メチルメタクリレート)ブロックの重量平均モル質量が、10000〜100000 g/molであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項11】
前記透明成形品が、光学物品、好ましくは眼科用レンズであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項12】
熱硬化性ポリマーとトリブロック熱可塑性ポリマーとのブレンドを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法により得られる透明成形品。
【請求項13】
眼科用レンズであることを特徴とする、請求項12に記載の透明成形品。
【請求項14】
熱硬化性組成物中に溶解された熱可塑性ポリマー材料を含む重合性液体混合物であって、
前記熱硬化性組成物が、少なくとも60重量%、好ましくは70重量%〜85重量%の、式(I):
【化2】

のビスフェノールA -4,4'-ジ(エトキシエチル)ジメタクリレートと、少なくとも12重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の、少なくとも1種の一官能性または多官能性アクリルコモノマーとを含むこと、および
前記熱可塑性ポリマー材料が、少なくとも1種のポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PB-b-PMMA)トリブロックコポリマーを含むこと
を特徴とする、重合性液体混合物。
【請求項15】
前記アクリルコモノマーが一官能性アクリルコモノマーであることを特徴とする、請求項14に記載の重合性液体混合物。
【請求項16】
前記アクリルコモノマーが、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項14または15に記載の重合性液体混合物。
【請求項17】
前記熱硬化性組成物が、前記重合性液体混合物の質量の80重量%〜97重量%、好ましくは90重量%〜95重量%を占めること、および、前記熱可塑性ポリマー材料が、前記重合性液体混合物の3重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜10重量%を占めることを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項に記載の重合性液体混合物。
【請求項18】
前記熱硬化性組成物が、少なくとも1種の重合開始剤、好ましくは少なくとも1種の光開始剤をも含むことを特徴とする、請求項14から17のいずれか一項に記載の重合性液体混合物。
【請求項19】
前記重合開始剤の質量が、前記熱硬化性組成物の質量の0.1%〜10%を占めることを特徴とする、請求項14から18のいずれか一項に記載の重合性液体混合物。
【請求項20】
前記ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ブロックが、前記ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)トリブロックコポリマーの重量平均モル質量の50重量%〜80重量%、好ましくは52重量%〜70重量%を占めることを特徴とする、請求項14から19のいずれか一項に記載の重合性液体混合物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−57559(P2009−57559A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−220188(P2008−220188)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506062207)エシロール・ランテルナシオナル(カンパニー・ジェネラル・ドプティク) (8)
【Fターム(参考)】