説明

透明保護膜用熱硬化樹脂組成物、透明保護膜及びカラーフィルタ

【課題】 密着性が優れ、硬度が高く、透明性の高い透明保護膜を形成することができる熱硬化性樹脂組成物を提供し、且つ該熱硬化性樹脂組成物を塗布して成膜し、熱硬化させてなる透明保護膜を提供し、且つ該透明保護膜を有するカラーフィルタを提供する。
【解決手段】 本発明の透明保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、(1)水酸基及びカルボキシル基から選ばれた1種以上の反応基、(2)エポキシ、(3)エチレン性二重結合、を有するアクリル共重合体、並びに溶剤を主成分として含む。熱硬化性樹脂組成物に含まれる水酸基又はカルボキシル基は、ガラス基板等に対しての基板密着性を出す。また、エチレン性二重結合は、熱硬化時に開裂・重合反応し、膜中の架橋密度を向上させる。本発明の透明保護膜用熱硬化樹脂組成物は、水酸基、カルボキシル基から選ばれた1種以上の反応基、エポキシを有しているにもかかわらず、経時的に安定な状態で保存することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用の透明保護膜に適した熱硬化性樹脂組成物、該熱硬化性樹脂組成物を用いて形成した透明保護膜、及びカラーフィルタに関し、特に表示品質に優れ信頼性の高いカラー液晶表示装置を可能とするカラーフィルタ用の透明保護膜に適した熱硬化性樹脂組成物、及び該熱硬化性樹脂組成物を用いて透明保護膜を形成したカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットディスプレーとして、カラーの液晶表示装置が注目されている。一般に、カラー液晶表示装置は、カラーフィルタと対向電極基板とを対向させ、その間隙部(1〜10μm)に液晶層を形成した構造である。該カラーフィルタは、透明基板上にブラックマトリックスと複数の色(通常、赤(R)、緯(G)、青(B)の3 原色、或いはイエロー、マゼンダ、シアンの3原色)の画素による着色層、または、最近ではカラーホログラムを備え、この上に透明保護膜と透明電極が順に積層された構造である。そして、各色の着色層R、G、Bのそれぞれの画素やカラーホログラムに対応する部分の液晶層の光透過率を制御することによりカラー画像を得るように構成されている。
【0003】
このようなカラーフィルタにおける透明保護膜は、カラーフィルタからイオン性物質等を出さないようにするパッシベーションの機能や、画素を保護するために密着性があり強度のある保護膜とする機能や、カラーフィルタの透明基板表面のうねりに起因するギャップムラ、R、G、Bの画素間でのギャップムラ、あるいはR、G、Bの各画素内でのギャップムラを平坦化する役割を果たしている。また、カラーフィルタにおける透明保護膜は、光を透過させるために透明性が高いことも必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、密着性が優れ、硬度が高く、透明性の高い透明保護膜を形成することができる熱硬化性樹脂組成物を提供し、且つ該熱硬化性樹脂組成物を塗布して成膜し、熱硬化させてなる透明保護膜を提供し、且つ該透明保護膜を有するカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するために、本発明の透明保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、(1)水酸基及びカルボキシル基から選ばれた1種以上の反応基、(2)エポキシ、及び(3)エチレン性二重結合を有するアクリル共重合体、並びに溶剤を主成分として含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の透明保護膜用熱硬化樹脂組成物は、水酸基、カルボキシル基から選ばれた1種以上の反応基、エポキシを有しているにもかかわらず、経時的に安定な状態で保存することができ、しかも、該熱硬化性樹脂組成物を用いた保護膜は、透明性が高く、硬度が高く、緻密で、基板密着性が良い。特に、LCD等のカラーフィルタ用保護膜として用いるのに好適である。
【0007】
本発明の透明保護膜用熱硬化樹脂組成物は、水酸基又はカルボキシル基を有しているので、ガラス基板等に対しての基板密着性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0009】
1 カラーフィルタ
2 透明基板
3 着色層
3R 赤色パターン
3G 緑色パターン
3B 青色パターン
4 ブラックマトリックス
5 透明保護膜
6 透明電極
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる水酸基又はカルボキシル基は、ガラス基板等に対しての基板密着性を出すことができる。
【0011】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシは、環状エーテル及び脂環式エポキシから選ばれた1種以上であることが好ましく、これらのエポキシは嵩高い骨格構造を有する熱硬化性樹脂であるので、得られた透明保護膜は硬度が高いものとなる。前記環状エーテルは、オキセタンアクリレート〔化合物名:(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート〕及びオキセタンメタクリレート〔化合物名:(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート〕の1種以上から選択することができる。
【0012】
また、エチレン性二重結合は、熱硬化時に開裂・重合反応し、膜中の架橋密度を向上させる。
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記の(1)及び(2)の反応基或いは化学構造、或いは上記の(1)、(2)及び(3)の反応基或いは化学構造を有する化合物を混合し共重合させてアクリル共重合体を得、さらに溶剤を混合希釈して所望の粘度に調整することができる。
【0014】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に使用できる溶剤には、水100重量部に対して20重量部以下の溶解性の溶剤が、吸湿性がなく、エポキシと水との反応が抑制でき、熱硬化性樹脂組成物を経時的に安定に保つので、好ましく用いられる。このような水溶解性の溶剤には、例えば、酢酸−3−メトキシブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0015】
溶剤の使用量は、塗布作業性を考慮して熱硬化性樹脂組成物の粘度が1cps〜100cpsとなるように調整することが望ましい。特に好ましくは、1cps〜10cpsとなるように調整するのが良い。
【0016】
次に、本発明のカラーフィルタ及び透明保護膜について説明する。
【0017】
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略構成図である。図1において、本発明のカラーフィルタ1は、透明基板2に赤、緑及び青からなる画素、或いは、イエロー、マゼンダ、シアンからなる画素を用いて所定のパターンで形成された着色層3およびブラックマトリックス4と、着色層3を覆うように形成された透明保護膜5を備え、透明保護膜5上に液晶駆動用の透明電極6が形成されている。
【0018】
このようなカラーフィルタ1を構成する透明基板2としては、石英ガラス、パイレツクスガラス、合成石英板等の可撓性のないリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有するフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、カラー液晶表示装置に使用するカラーフィルタに適している。
【0019】
カラーフィルタ1を構成する着色層3は赤色パターン3R、緑色パターン3Gおよび青色パターン3Bがモザイク型、ストライプ型、トライアングル型、4 画素配置型等の所望の形態で配列されてなり、ブラックマトリックス4は各着色パターンの間および着色層3形成領域の外側の所定領域に設けられている。
【0020】
着色層3は、染色基材を塗布し、フォトマスクを介して露光・現像して形成したパターンを染色する染色法、感光性レジスト内に予め着色顔料を分散させておき、フォトマスクを介して露光・現像する顔料分散法、印刷インキで各色を印刷する印刷法、透明基板上に予め透明導電層を形成し、この透明導電層上にポジレジスト層を形成し、フォトマスクを介して露光・現像して透明導電層の所定箇所を露出させた後、透明基板を電着液中に浸漬した状態で透明導電層に通電して電着を行い着色層を形成する電着法等、いずれの方法を用いて形成してもよい。
【0021】
また、ブラックマトリックスも、上記の染色法、顔料分散法、印刷法、電着法のいずれを用いても形成することができ、また、クロム蒸着等により形成してもよい。
【0022】
透明保護膜は、上述した本発明の熱硬化性樹脂組成物を、着色層とブラックマトリックスが形成された透明基板上にスピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により、乾燥膜厚0.5μm〜20μm、好ましくは1μm〜8μmで塗布し、その後、加熱して形成される。スピンコーターを使用する場合、回転数は500〜1500回/分の範囲内で設定することが好ましい。
【0023】
本発明の透明保護膜の形成において、熱硬化性樹脂組成物中のアクリル共重合体中に存在するエポキシ、特に、環状エーテル及び脂環式エポキシと、同じくアクリル共重合体中に存在する水酸基及びカルボキシル基から選ばれた1種以上の反応基とが熱により反応して硬化が行われる。
【0024】
また、必要に応じてシランカップリング剤をカラーフィルタ層と基板ガラスとの密着性改善を目的として本発明の熱硬化性樹脂組成物に添加してもよい。
【0025】
また、コーティング時のレベリング性を改善するために、界面活性剤を添加してもよい。
【0026】
この熱硬化性樹脂組成物の塗布膜に対する加熱処理は、通常、100〜250℃、5〜90分程度の条件で行うことができる。この加熱処理により、熱硬化性樹脂組成物中に含有されるエポキシが、水酸基及び/又はカルボキシル基と反応して塗膜が硬化して透明保護膜となる。また、この時にエチレン性二重結合が開裂・重合反応して、架橋密度を高める効果を有する。
【0027】
透明保護膜上の透明電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等及びその合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な成膜方法により形成され、必要に応じてフォトレジストを用いたエッチングにより所定のパターンとしたものである。この透明電極の厚みは20〜500nm程度、好ましくは100〜300nm程度である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。
(共重合樹脂(1)の合成)
組成:
・メチルメタクリレート …60.3モル%
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート …14.3モル%
・メタクリル酸 … 5.4モル%
・グリシジルメタクリレート … 6.5モル%
・(メタ)アクリロイルアルキルイソシアネート …13.5モル%
を混合して、酸化26.5mgKOH/g、分子量14000(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体を得た。
【0029】
(共重合樹脂(2)の合成)
組成:
・メチルメタクリレート …61.2モル%
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート …14.5モル%
・メタクリル酸 … 5.5モル%
・オキセタンメタクリレート(OXE−30:商品名、大阪有機化学工業株式会社製) … 5.1モル%
・(メタ)アクリロイルアルキルイソシアネート …13.7モル%
を混合して、酸化23.2mgKOH/g、分子量9300(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体を得た。
【0030】
(共重合樹脂(3)の合成)
組成:
・メチルメタクリレート …61.4モル%
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート …14.5モル%
・メタクリル酸 … 5.5モル%
・脂環式エポキシ(メタ)アクリルモノマー(サイクロマーM100:商品名、ダイセル化学社製) … 4.8モル%
・(メタ)アクリロイルアルキルイソシアネート …13.8モル%
を混合して、酸化30.0mgKOH/g、分子量21000(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体を得た。
【0031】
(比較樹脂)
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピコート180S65:商品名、油化シェルエポキシ社製)
上記の各樹脂の希釈に使用する場合、経時的に樹脂を安定に保つ性質の溶剤を次に検討した。下記の表1に列挙した各溶剤について、水100重量部に対する各溶剤の溶解性を下記の表1に示す。また、下記の表1に列挙した各溶剤で上記各樹脂を希釈した場合の各樹脂の経時安定性を調べその結果を下記の表1に示す。希釈は、固形分濃度40重量部で行い、希釈後、B型粘度計で粘度を測定し、密閉した容器で室温暗所に30日間保存した後、B型粘度計で粘度を測定した。各溶剤種による樹脂の経時安定性の評価は、粘度上昇が10%未満を○、粘度上昇が10%以上を×とした。
【0032】
【表1】

【0033】
共重合樹脂(1)〜(3)及び比較樹脂をそれぞれ酢酸−3−メトキシブチルで粘度6cps程度まで希釈し、良く洗浄したガラス基板ならびにカラーフィルタにスピンコートし、十分に乾燥した後、ホットプレートにて、80℃で5分間プレベークを行い、その後、クリーンオーブンにて230℃で30分間最終硬化を行うことによって、透明保護膜を形成した。最終硬化後の透明保護膜の膜厚は、約1.5μmであった。得られた透明保護膜の耐温純水性、耐溶剤性、耐熱性、可視光透過率(400nm〜700nm)、250℃、1時間後の可視光透過率、鉛筆硬度を測定し、その結果を下記の表2に示す。また、各評価方法を下記に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
碁盤目テープ剥離テスト:JISK5400(1900)8.5に準じてカッターで碁盤目状キズを形成し、キズ上に粘着テープを張った後、粘着テープを剥離し、キズの形状で評価した。
耐温純水性:80℃の純水に1時間浸漬した後、碁盤目テープ剥離テストをして評価した。
耐溶剤性:40℃のNメチルピロリドンに1時間浸漬した後、碁盤目テープ剥離テストをして評価した。
耐熱性:250℃のクリーンオーブン中に1時間放置した後、碁盤目テープ剥離テストをして評価した。
250℃、1時間後の可視光透過率:透明保護膜が形成されたガラス基板に関して、波長400〜700nmにおける透過スペクトルを測定し、その後、この基板をクリーンオーブン中で250℃で60分間加熱した後、同様に波長400〜700nmにおける透過スペクトルを測定し、加熱前後における透過スペクトルの変化を調べ、以下の基準により、透明保護膜の透過率に関する耐熱性を評価した。透過率の測定は、顕微分光測光装置(型式:OSP−SP100、オリンパス社製)を用いた。
○:透過スペクトルの変化が1%未満
×:透過スペクトルの変化が1%以上
鉛筆硬度:JIS K5400(1990)鉛筆引っかき試験のうち、84・1試験法に準じた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の透明保護膜用熱硬化樹脂組成物、透明保護膜及びカラーフィルタはカラーの液晶表示装置に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水酸基及びカルボキシル基から選ばれた1種以上の反応基、
(2)エポキシ、
(3)エチレン性二重結合、
を有するアクリル共重合体、並びに溶剤を主成分として含むことを特徴とする透明保護膜用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシが、環状エーテル及び脂環式エポキシから選ばれた1種以上である請求項1記載の透明保護膜用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状エーテルが、オキセタンアクリレート及びオキセタンメタクリレートから選ばれた1種以上である請求項2記載の透明保護膜用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記溶剤の水溶解性は、水100重量部に対して20重量部以下である請求項1記載の透明保護膜用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の透明保護膜用熱硬化性樹脂組成物を塗布して成膜し、熱硬化させてなる透明保護膜の400nm〜700nmの可視光領域における透過率が90%以上であることを特徴とする透明保護膜。
【請求項6】
透明基板上に、赤、緑及び青からなる画素、或いは、イエロー、マゼンダ、シアンからなる画素が設けられ、該画素上に請求項1、2、3又は4記載の透明保護膜用熱硬化性樹脂組成物の透明保護膜が形成されてなるカラーフィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−68901(P2011−68901A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261059(P2010−261059)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【分割の表示】特願平11−46207の分割
【原出願日】平成11年2月24日(1999.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】