説明

透明塗料の噴射状態検査装置

【課題】ノズルからの透明塗料の噴射状態を目視ではなく設備的に確認して、塗装不良の見落としをなくして信頼性の高い品質管理を実現することができる噴射状態検査装置を提供する。
【解決手段】この噴射状態検査装置は、ノズル3から噴射される透明塗料Pにレーザ光Lを照射して、透明塗料Pの噴射パターンの断面Dを可視化する。そして、可視化した噴射パターンの断面Dを撮影して、その断面Dにおける幅寸法、数、面積、重心位置を測定し、これら各種測定値と予め設定されている各種基準値とを比較して、透明塗料Pの噴射状態が正常であるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として建物の外壁材表面に噴き付けられる光触媒塗料等の透明塗料の噴射状態を検査するための噴射状態検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の外壁材として、防汚塗装を施して表面を汚れ難くしたものが広く知られている。このような防汚塗装に際しては、外壁材表面の装飾性に影響を与えないように、外壁材表面に光触媒塗料のような防汚機能を有する透明塗料を噴き付けることが一般になされている。
【0003】
しかし、透明塗料を塗装する場合、ノズルからの透明塗料の噴射状態や外壁材表面における透明塗料の塗布状態を目視により確認することが困難なことから、塗装不良を見逃し易く、信頼性の高い品質管理ができないといった問題があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、透明塗料を噴き付けた外壁材表面に紫外線を照射して、透明塗料に含まれる紫外線吸収剤により吸収された紫外線の反射光の強さから塗布状態を目視ではなく設備的に確認することで、塗装不良を確実に見つけるようにした検査方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−43161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の検査方法においては、紫外線吸収剤を含む透明塗料を使用した場合のみ有効であって、紫外線吸収剤を含まない透明塗料を使用した場合には依然として塗装不良を見逃し易く、汎用性に乏しいといった不具合があった。
【0007】
また、外壁材表面に透明塗料を噴き付けた後に、その塗布状態を確認しているので、例えば塗装ラインにおいて外壁材を順次搬送しながら防汚塗装を行う場合には、先行する外壁材において塗装不良を見つけたときには、後続する外壁材の表面に透明塗料を噴き付けている最中であったり、既に透明塗料の噴き付けを終えていることがある。この場合、ノズルの目詰まり等が原因で先行する外壁材において塗装不良が生じていると、後続する外壁材においても同様に塗装不良が生じることになり、複数枚の外壁材が不良品となってしまうといった不具合があった。かといって、先行する外壁材において塗布状態の確認が終了してから、後続する外壁材における透明塗料の噴き付けを開始していたのでは、作業効率の悪化を招くといった不具合があった。
【0008】
この発明は、上記の不具合を解消して、ノズルからの透明塗料の噴射状態を目視ではなく設備的に確認して、塗装不良の見落としをなくして信頼性の高い品質管理を実現することができ、しかも塗装ラインでの不良品の発生を抑えながら、作業効率を向上することができる汎用性に優れた透明塗料の噴射状態検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明に係る噴射状態検査装置は、建材2の表面に噴き付けられる例えば防汚機能を有する光触媒塗料等の透明塗料Pの噴射状態を検査するためのものであって、ノズル3から略円錐状の噴射パターンで噴射される透明塗料Pに対して、その噴射パターンを横切るようにしてレーザ光Lを照射して、噴射パターンの断面Dを可視化するレーザ照射器10と、この可視化された噴射パターンの断面Dを撮影する撮影器11と、この撮影された噴射パターンの断面Dに基づいて測定した各種測定値と予め設定されている各種基準値とを比較して、噴射状態が正常であるか否かを判定する判定器12とを備えたことを特徴とする。
【0010】
具体的に、判定器12は、噴射パターンの断面Dの幅寸法、数、面積、重心位置を各種測定値として測定している。さらに、判定器12は、撮影された噴射パターンの断面D、各種測定値、噴射状態が正常であるか否かの判定結果を表示するとともに、噴射状態が異常であることを判定したときに警告音を発する。
【0011】
また、複数のレーザ照射器10、10を備え、これらレーザ照射器10、10を透明塗料Pの噴射方向に対して間隔をあけて配置している。
【発明の効果】
【0012】
この発明の噴射状態検査装置では、ノズルから噴射される透明塗料にレーザ光を照射して、噴射パターンの断面を可視化するとともに、この噴射パターンの断面を撮影して、その断面に基づいて測定した各種測定値と予め設定されている各種基準値とを比較して、噴射状態が正常であるか否かを判定しているので、透明塗料の噴射状態を設備的に確認することができ、目視確認のときのような塗装不良の見落としを無くして、信頼性の高い品質管理を実現することができる。しかも、透明塗料の種類や透明塗料に含まれる添加物等にかかわりなく、透明塗料の噴射状態を確認することができ、汎用性にも優れている。
【0013】
さらに、建材表面への透明塗料の噴き付けと同時に、その噴射状態の良否を判定して塗装不良を見つけることができるので、塗装ラインにおいて建材を順次搬送しながら塗装を行う場合でも、先行する建材において塗装不良を見つけたときには、その時点で塗装ラインの稼動を停止して、噴射状態が正常となるようにメンテナンスを行えば、後続する建材が不良品とならず、不良品の発生を抑えることができる。しかも、先行する建材の塗装が終了した後に、大きなタイムラグを設けることなく、後続する建材の塗装を連続して行うことができ、作業効率の向上を図ることできる。
【0014】
また、噴射パターンの断面における幅寸法、数、面積、重心位置を測定して、これら4種類の判定要素を用いて透明塗料の噴射状態の良否を多方面から判定することで、より信頼性の高い品質管理を実現することができる。
【0015】
さらに、透明塗料の噴射状態の判定結果を噴射パターンの断面及び各種測定値とともに表示し、異常の際には警告音で知らせることで、塗装不良を簡単且つ確実に見つけることができ、より信頼性の高い品質管理を実現することができる。
【0016】
さらにまた、複数のレーザ照射器を使用して、透明塗料の噴射パターンにおける数カ所の断面を可視化して、それら複数の断面に基づいて噴射状態の良否を判定することで、より精度の高い判定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る噴射状態検査装置は、図1に示すように、塗装ラインに備え付けられている。図1において、1は搬送コンベア、2は搬送コンベア1によって搬送される建材としての外壁材、3は噴射口を下向きにした塗料噴射ノズル、4は塗料噴射ノズル3を支持する支持部材である。
【0018】
そして、塗装ラインでは、搬送コンベア1によって外壁材2を搬送して、その上方において支持部材4を搬送方向と直交する方向に往復動させながら、ノズル3の噴射口から透明塗料Pを略円錐状の噴射パターンで噴射させることで、外壁材2の表面に透明塗料Pを噴き付けるようになっている。ここで、透明塗料Pとしては、防汚機能を有する無色透明な光触媒塗料が使用されており、この透明塗料Pを外壁材2の表面に塗布することで、外壁材2の表面が水となじみやすい超親水状態に保たれて、汚れ難い外壁材2とすることができる。なお、透明塗料Pとしては、このような光触媒塗料だけに限らず、例えば耐候性や撥水性を有するその他塗料であっても良い。
【0019】
噴射状態検査装置は、上記のようにして外壁材2の表面に噴き付けられる透明塗料Pの噴射状態を検査するためのものであって、図1及び図2に示すように、ノズル3の噴射口から噴射される透明塗料Pに対して、その略円錐状の噴射パターンを横切るようにしてレーザ光Lを照射して、噴射パターンの断面Dを可視化するレーザ照射器10と、この可視化された噴射パターンの断面Dを撮影する撮影器11と、この撮影された噴射パターンの断面Dから噴射状態が正常であるか否かを判定する判定器12とを備えている。
【0020】
レーザ照射器10は、例えば緑色のレーザ光Lを照射する半導体レーザからなり、支持部材4の一端部に取り付けられている。このレーザ照射器10からの緑色のレーザ光Lは、透明塗料Pの噴射パターンの側方から噴射パターンを上下に分断するように所定の幅を持って照射される。なお、レーザ照射器10としては、緑色のレーザ光Lを照射するものだけに限らず、例えば赤色のレーサ光を照射するものであっても良い。
【0021】
撮影器11は、例えばCCDカメラからなり、支持部材4のノズル3を挟んだレーザ照射器10とは反対側の他端部に取り付けられている。この撮影器11は、噴射パターンの断面Dの形状や大きさを明確に把握できるように、断面Dを斜め上方から撮影するようになっている。
【0022】
判定器12は、図3に示すように、入力部15、判定部16、記憶部17、表示部18、警報部19を備えている。入力部15は、透明塗料Pが正常に噴射されているときの噴射パターンの断面Dにおける幅寸法、数、面積、重心位置といった各種基準値(具体的には、幅寸法、数、面積、重心位置の上下限値)、さらには各種条件等を入力するためのもので、キーボードやマウス等から構成されている。判定部16は、撮影器11によって撮影された噴射パターンの断面Dが画像データとして入力され、この断面Dの幅寸法、数、面積、重心位置を各種測定値として測定し、それら各種測定値と予め設定されている各種基準値とを比較して、噴射状態が正常であるか否かを判定するもので、制御プログラム、CPU、ROM、RAM等から構成されている。記憶部17は、制御プログラム、各種基準値及び各種測定値、噴射パターンの断面Dの画像データ、判定部16によって判定された判定結果等を記憶するためのもので、HDDやCD−ROM等から構成されている。表示部18は、各種基準値及び各種測定値、噴射パターンの断面D、判定部16によって判定された判定結果等を表示するためのもので、LCD、CRT等のディスプレイから構成されている。警報部19は、判定部16によって噴射状態が異常であることが判定されたときに警報音を発するもので、スピーカ等から構成されている。
【0023】
上記構成において、搬送コンベア1によって搬送される外壁材2の表面に対して、ノズル3の噴射口から透明塗料Pが噴射されると、レーザ照射器10から緑色のレーザ光Lが所定の幅を持って面状に照射されて、透明塗料Pの噴射パターンにおける略楕円形状の断面Dを可視化する。そして、この可視化された断面Dが撮影器11によって撮影されて、画像データとして判定器12に入力される。
【0024】
判定器12では、断面Dに基づいてその幅寸法、数、面積、重心位置を測定し、それら各種測定値と予め設定されている各種基準値(幅寸法、数、面積、重心位置の上下限値)とを比較して、噴射状態が正常であるか否かを判定する。すなわち、各種測定値のいずれかが上限値を上回っているか或いは下限値を下回っている場合に、噴射状態が異常であるとの判定をする。このように、噴射パターンの断面Dにおける幅寸法、数、面積、重心位置といった4種類の判定要素を用いることで、透明塗料Pの噴射状態の良否を多方面から精度良く判定している。
【0025】
そして、図4乃至図7に示すように、噴射パターンの断面D、各種測定値、噴射状態が正常であるか否かの判定結果を表示するとともに、噴射状態が異常であることを判定したときには警告音を発する。
【0026】
図4は、噴射状態が正常な場合の表示部18における表示状態を示しており、噴射パターンの断面D及び各種測定値とともに、正常であることを示す「OK」が表示されている。図5乃至図7は、噴射状態が異常な場合の表示部18の表示状態を示しており、噴射パターンの断面D及び各種測定値とともに、異常であることを示す「NG」が表示されている。特に、図5は、断面Dの幅が狭い場合、図6は、断面Dの幅が広い場合、図7は、噴射パターンに割れが生じて断面Dが2個形成され、面積や重心位置も基準値からずれている場合の表示状態を示している。
【0027】
このように、上記の噴射状態検査装置では、透明塗料Pの噴射状態の良否を自動的に判定して、その判定結果を表示するとともに、異常の際には警告音で知らせることから、塗装不良の見落としを無くして、信頼性の高い品質管理を実現することができる。
【0028】
しかも、外壁材2の表面への透明塗料Pの噴き付けと同時に、その噴射状態の良否を判定して塗装不良を見つけることができるので、塗装ラインにおいて外壁材2を順次搬送しながら防汚塗装を行う場合でも、先行する外壁材2において塗装不良を見つけたときには、その時点で塗装ラインの稼動を停止して、噴射状態が正常となるようにメンテナンスを行えば、後続する外壁材2が不良品とならず、不良品の発生を抑えることができる。しかも、先行する外壁材2の防汚塗装が終了した後に、大きなタイムラグを設けることなく、後続する外壁材2の防汚塗装を連続して行うことができ、作業効率の向上を図ることできる。
【0029】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば上記実施形態においては、単一のレーザ照射器10を使用していたが、図8に示すように、複数のレーザ照射器10、10を透明塗料Pの噴射方向に対して上下に間隔をあけて配置して、これらレーザ照射器10、10からのレーザ光L、Lを透明塗料Pの噴射パターンを横切るようにして照射することで、噴射パターンの上下数カ所の断面D、Dを可視化するようにしても良い。そして、これら可視化された断面D、Dに基づいて透明塗料Pの噴射状態の良否を判定することで、より確実に塗装不良を見つけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施形態に係る噴射状態検査装置を塗装ラインに備え付けた状態を示す概略斜視図である。
【図2】同じくその概略正面図である。
【図3】判定器のブロック図である。
【図4】噴射状態が正常な場合の表示部における表示状態を示す図である。
【図5】噴射状態が異常な場合の表示部における表示状態を示す図である。
【図6】噴射状態が異常な場合の表示部における表示状態を示す図である。
【図7】噴射状態が異常な場合の表示部における表示状態を示す図である。
【図8】他の実施形態に係る噴射状態検査装置を塗装ラインに備え付けた状態を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0031】
2・・建材(外壁材)、3・・ノズル、10・・レーザ照射器、11・・撮影器、12・・判定器、P・・透明塗料、L・・レーザ光、D・・断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材(2)表面に噴き付けられる透明塗料(P)の噴射状態を検査するための噴射状態検査装置であって、ノズル(3)から略円錐状の噴射パターンで噴射される透明塗料(P)に対して、その噴射パターンを横切るようにしてレーザ光(L)を照射して、噴射パターンの断面(D)を可視化するレーザ照射器(10)と、この可視化された噴射パターンの断面(D)を撮影する撮影器(11)と、この撮影された噴射パターンの断面(D)に基づいて測定した各種測定値と予め設定されている各種基準値とを比較して、噴射状態が正常であるか否かを判定する判定器(12)とを備えたことを特徴とする透明塗料の噴射状態検査装置。
【請求項2】
判定器(12)は、噴射パターンの断面(D)の幅寸法、数、面積、重心位置を各種測定値として測定する請求項1記載の透明塗料の噴射状態検査装置。
【請求項3】
判定器(12)は、撮影された噴射パターンの断面(D)、各種測定値、噴射状態が正常であるか否かの判定結果を表示するとともに、噴射状態が異常であることを判定したときに警告音を発する請求項1又は2記載の透明塗料の噴射状態検査装置。
【請求項4】
複数のレーザ照射器(10)(10)を備え、これらレーザ照射器(10)(10)を透明塗料(P)の噴射方向に対して間隔をあけて配置した請求項1乃至3のいずれかに記載の透明塗料の噴射状態検査装置。
【請求項5】
透明塗料(P)は、防汚機能を有する光触媒塗料である請求項1乃至4のいずれかに記載の透明塗料の噴射状態検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−128209(P2009−128209A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304139(P2007−304139)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】