説明

透明導電性シート、その製造に用いる導電性ペーストの製造法、電磁波シールド材およびタッチセンサー

【課題】焼成後においても、銀の細線の断線が生じないように改良された透明導電性シートを提供する。
【解決手段】透明導電性シートは、電磁波シールド材1に利用される。透明導電性シートは、透明基材層4と、透明基材層4の上に設けられた、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する透明多孔質層7と、透明多孔質層7の上に幾何学パターンにスクリーン印刷された導電性ペーストを、加熱処理して形成された幾何学パターンの導電部8とを備える。導電性ペーストは、有機バインダー樹脂、平均粒径系が5nm以上5μm以下の球状の銀である導電粉末及び有機溶剤を含み、導電粉末の含有量は、導電性ペーストの全体量の50〜95質量%であり、有機バインダー樹脂は、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に透明導電性シートに関するものであり、より特定的には、断線が生じないように改良された透明導電性シートに関する。本発明はまた、そのような透明導電性シート用の導電性ペーストの製造方法に関する。本発明はまた、そのような透明導電性シートを用いた電磁波シールド材およびタッチセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、放電セルの内部でHe+Ne又はNe+Xeガスの放電により発生する波長147nmの紫外線が、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体を励起するとき発生する発光現象を利用した自発光型ディスプレイである。高輝度、高効率、広視野角を有し、50インチ以上の大型画面のディスプレイ装置にも展開が進んでいる。
【0003】
PDPの放電セルからは、RGBの可視光線以外にも、近赤外線(NIR)、Neプラズマ発光、紫外線(UV)、プラズマ点火に必要な駆動回路信号に同期した数MHz〜数GHz帯の電磁波等の、本来ディスプレイに不要とされる電磁波も同時に輻射される。ここでNIRはワイヤレスリモコンの誤動作を、Neプラズマ発光はディスプレイの色再現性の低下を、UVは視力の低下等の悪影響を、数MHz〜数GHz帯の電磁波は人体への悪影響や精密機器の誤作動を引き起こす可能性がある。このため、PDPの前面には、有害な各種輻射電磁波をカットするためのシールドフィルムが装着される。
【0004】
上記各種輻射電磁波のうち数MHz〜数GHz帯の電磁波を遮蔽するための電磁波シールドフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂からなる基材フィルム上に導電性の高い金属を格子状に配列した導電性メッシュを形成したもの等が挙げられる。
【0005】
このような電磁波シールドフィルムを製造する方法としては、例えば、基材フィルム上に銅箔を貼合し、フォトリソグラフィーやスクリーン印刷法によってメッシュ状にレジスト膜を形成した後、メッシュ以外の部分(開口部)をエッチングにより除去する方法(例えば、特許文献1);基材フィルム上にグラビア印刷やオフセット印刷法を用いてメッシュ状に触媒を印刷した後、該触媒を核として無電解めっきを行う方法(例えば、特許文献2)等が提案されている。しかしながら、これらの方法はエッチングや無電解めっき等の湿式工程を含むことから、製造が煩雑となり高コストであるという問題があった。
【0006】
そこで、本願出願人らは、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する透明多孔質層を備えた透明樹脂基材の該透明多孔質層面に、表面が酸化銀で被覆された銀粒子、バインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを幾何学パターンにスクリーン印刷する電磁波シールド材の製造方法を提案した(特許文献3)。この方法は、エッチングや無電解めっき等の湿式プロセスを含まないため簡便であり、また、基材フィルムの耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性等を全く考慮する必要が無い点でも有利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−95829号公報
【特許文献2】特開2007−96049号公報
【特許文献3】特開2007−142334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に開示の技術において、透明多孔質層面に銀粒子、バインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを形成し、焼成した場合、銀と透明多孔質層面との密着性によっては、透明多孔質層面から銀の細線の一部が剥がれ、断線する場合もあった。
【0009】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、銀の細線の断線が生じないように改良された透明導電性シートを提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的は、そのような透明導電性シートの製造方法を提供することにある。
【0011】
この発明のさらに他の目的は、そのような透明導電性シートを含む電磁波シールド材を提供することにある。
【0012】
この発明のさらに他の目的は、そのような透明導電性シートを電極パターン材に用いたタッチセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る透明導電性シートは、透明基材層を備える。上記透明基材層の上に、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する透明多孔質層が設けられている。上記透明多孔質層の上に幾何学パターンにスクリーン印刷された導電性ペーストを、加熱処理して形成された幾何学パターンの導電部が設けられている。上記導電性ペーストは、有機バインダー樹脂、平均粒径系が5nm以上5μm以下の球状の銀である導電粉末及び有機溶剤を含む。上記導電粉末の含有量は、上記導電性ペーストの全体量の50〜95質量%であり、上記有機バインダー樹脂は、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、有機バインダー樹脂が、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなるので、導電性ペーストを加熱処理すると、有機バインダー樹脂が3次元硬化し、焼散せずに残り、銀粒子を互いに融着させたまま、透明多孔質層の面上に密着性よく留まり、剥がれない。
【0015】
本発明で用いられる透明性樹脂基材の基材樹脂としては、耐熱性が高く、透明であり、該基材上に該透明多孔質層を形成し得るものであれば特に限定はない。
【0016】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂;シリコーン樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂などが例示される。上記のうち、透明性、コスト、耐久性、耐熱性等の観点から総合的に判断すると、ポリエステル樹脂、特にPET又はPENが好ましく採用される。
【0017】
ここで透明性樹脂基材における透明性とは、PDP、CRT等の表示部の用途に用いられ得る程度の透明性であれば特に限定されない。通常、JIS K7105で測定した全光線透過率が85〜90%程度、及びJIS K7105で測定したヘイズ値が0.1〜3%程度である。
【0018】
透明性樹脂基材の形態は、PDP、CRT等の表示部に用い得る形態、即ち、フィルム状、シート状、平板状等が採用される。かかる形態は、上記の基材樹脂から公知の方法により製造することができる。
【0019】
上記透明多孔質層は、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する。
【0020】
ここで、酸化物セラミックスとしては、チタニア、アルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニア、シリカ等の単純酸化物、シリカ、ホルステライト、ステアタイト、ワラステナイト、ジルコン、ムライト、コージライト、スポジェメン等のケイ酸塩、チタン酸アルミニウム、スピネル、アパタイト、チタン酸バリウム、PZT、PLZT、フェライト、ニオブ酸リチウム等の複酸化物が例示できる。
【0021】
非酸化物セラミックスとしては、窒化ケイ素、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン等の炭化物、アモルファス炭素、黒鉛、ダイヤモンド、単結晶サファイヤ等の炭素が例示できる。その他、ホウ化物・硫化物・ケイ化物が例示できる。
【0022】
金属としては、金、銀、鉄、銅、ニッケル等が例示できる。
【0023】
これらのうち少なくとも1つを原料として用いればよく、より好ましいのはシリカ、チタニア、アルミナであり、その他成分や配合は特に制限はない。
【0024】
透明性樹脂基材上に透明多孔質層を形成する方法は、ウェットプロセス、ドライプロセスのいずれでもよく、特に制限はないが、生産性やコストの面からはウェットプロセスが好ましい。ウェットプロセスでは公知の手法によって基材上にコーティング(塗布)すればよい。コーティング方法としては、例えばグラビアコーティング、オフセットコーティング、コンマコーティング、ダイコーティング、スリットコーティング、スプレーコーティング、メッキ法、ゾル−ゲル法、LB膜法等が例示でき、特にゾル−ゲル法が好ましい。
【0025】
ゾル−ゲル法での出発原料としては、シリカでは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン;テトラクロロシラン、テトラブロモシラン等のテトラハロシラン等が例示される。また、アルミナでは、例えば、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド等のトリアルコキシアルミニウム;アルミニウム(III)2,4−ペンタンジオネート等が挙げられる。上記出発原料は、触媒、水の存在下でゾル−ゲル反応を進行させるが、すでにゾル−ゲル反応が進んだこれらの加水分解物(反応中間体)を出発原料として用いても良い。また、必要に応じ、樹脂、界面活性剤等の他の成分を適宜添加しても良い。
【0026】
また、上記出発原料を含むゾルに対して、酸化物セラミックスのフィラーを加えてゾル−ゲル反応させてもよい。この場合、該フィラーの含有量は、出発原料100重量部に対して、5〜100重量部程度であればよい。該フィラーの平均粒子径は、通常、10〜100nm程度であればよい。
【0027】
なお、ドライプロセスとしては、例えばCVD、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等が例示できる。
【0028】
本発明で用いられる透明性樹脂基材上に有する透明多孔質層の厚さは、0.05〜20μm程度、特に0.1〜5μm程度である。
【0029】
また、該透明多孔質層は、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする微粒子の集合体(凝集体)からなり、該微粒子間に細孔を有している。該透明多孔質層の平均粒子径は10〜100nm程度であり、該細孔径は10〜100nm程度である。本発明では、このような透明多孔質層を有しているため、後述する導電性ペーストとのマッチングが優れており、所望のパターン形成が可能となる。
【0030】
透明多孔質層を有する透明性樹脂基材の形態は、フィルム状、シート状、平板状等である。フィルム状又はシート状の場合、透明多孔質層を有する透明性樹脂基材の厚さは、通常、25〜200μm程度、好ましくは40〜188μm程度であればよい。特に、PDP等のディスプレイ全面の電磁波シールド材として用いる場合、50〜125μm程度が好ましい。また、板状の場合は、その厚さは、通常、0.5〜5mm程度、好ましくは1〜3mm程度であればよい。
【0031】
透明多孔質層を有する透明性樹脂基材の透明性は、通常、JIS K7105で測定した全光線透過率が85〜90%程度、及びJIS K7105で測定したヘイズ値が0.1〜3%程度である。
【0032】
また、本発明で用いられる透明性樹脂基材には、上記の透明多孔質層とは反対面に、ハードコート層を設けてもよい。
【0033】
ハードコート層としては、透明性を損なわないものであれば一般的な材料を用いればよく、特に制限はない。そのうち紫外線硬化型アクリレート樹脂が好ましい。その主成分としては、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の2官能基以上を有する紫外線硬化型のアクリレートであれば特に限定されるものではない。1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレートのような2官能性アクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、PO変性グリセリントリアクリレート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレートのような多官能アクリレート等の使用が好ましい。
【0034】
また、紫外線硬化型アクリレート樹脂には、通常、光重合開始剤を添加して使用する。光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア 184 チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−1−フェニル−プロパン−1−オン等を添加することにより、充分な硬化被膜を得ることができる。その他、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン、チオキサントン誘導体、ベンジルジメチルケタール、α−アミノアルキルフェノン、モノアシルホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイド、アルクルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノン、チタノセン化合物等の光重合開始剤も使用できる。
【0035】
これらの光重合開始剤の配合割合は、紫外線硬化型アクリレート樹脂100重量部に対し1〜10重量部が好ましい。1重量部未満では充分に重合が開始せず、また、10重量部を超えると場合によっては耐久性が低下するからである。
【0036】
なお、上記の紫外線硬化型アクリレート樹脂中には、その透明性を損なわない程度で第三成分(UV吸収剤、フィラー等)を含ませてもよく特に制限はない。
【0037】
透明性樹脂基材にハードコート層を形成する方法は、一般的な塗布方法を用いればよく、特に制限はない。
【0038】
透明性樹脂基材にハードコート層を設けることにより、後述する焼成時に、基材樹脂からのオリゴマーの析出による白化や黄変を抑制することができ、これにより本発明の電磁波シールド材は高い透明性が確保される。また、電磁波シールド材の製造工程中でのキズ防止も可能となる。
【0039】
本発明で用いられる導電性ペーストは、有機バインダー樹脂、平均粒径系が5nm以上5μm以下の球状の銀である導電粉末及び有機溶媒を含む。この導電粉末は、粒径が異なる2種類の銀粒子を含むのが好ましい。
【0040】
平均粒径系が5nm以上5μm以下の球状の銀である導電粉末を用いると、銀粒子を互いに融着させたまま、透明多孔質層の面上に密着性よく留まり、剥がれない。ひいては、透明多孔質層に印刷された細線の断線が防止される。
【0041】
上記導電粉末の含有量は、上記導電性ペーストの全体量の50〜95質量%である。この範囲を選ぶことにより、焼成後、残存有機バインダー樹脂中において、銀粒子を互いに融着させたまま、透明多孔質層の面上に密着性よく留まらせることができる。導電粉末は互いにくっつき合い、電気的接続され、導電性は損なわれない。
【0042】
導電性ペーストに含まれる有機バインダー樹脂としては、透明多孔質層と密着性がよく、透明多孔質層を侵さないもので、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂である。
【0043】
これらは、導電性ペーストの焼成時に、化学反応を起こし、3次元化網目高分子が形成され、銀粒子を互いに固くつなぎ止めることが見出された。本発明は、これらの知見に基づいて完成した。
【0044】
ここでいうポリエステルは、その構成成分であるジカルボン酸成分やジオール成分にいろいろな成分をランダムに共縮重合させることにより、結晶性、融点、あるいは軟化点、ガラス転移点、溶剤に対する溶解性、機械的性質などを自由に変化させる事が出来る。ポリエステルは、分子末端に反応基(ヒドロキシル基、カルボキシル基)を持っているので、イソシアネートプレポリマーやメラミン樹脂などを併用すると、接着性、耐熱性を向上する事が出来る。
【0045】
ブロックポリイソシアネートは、硬化前に反応させないために、遊離のイソシアネートをイミダゾール類、オキシム類、フェノール等でブロックしたもので、特に限定はなく使用することができる。
【0046】
アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂には、いくつかのタイプがある。水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの側鎖官能基を有するアクリル樹脂をアミノ樹脂で架橋したもの、グリシジル基含有アクリル共重合体を脂肪族二塩基酸(ドデカン二酸)で架橋したもの、水酸基含有アクリル共重合体をブロックイソシアネートあるいはメチロール化メラミンで架橋したもの、カルボキシル基含有アクリル共重合体をエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートあるいはβ−ヒドロキシアルキルアミドで架橋したもの、アルコキシル基≡Si−ORにより湿気(水分)による架橋したもの、いずれも好ましく使用できる。
【0047】
有機バインダー樹脂(単に「バインダー」とも称する)の使用量は、球状銀粒子100重量部に対して1.0〜20重量%程度、好ましくは3〜10重量%程度であればよい。有機バインダー樹脂量が1.0質量%未満の場合、硬化後の導電性ペースト(銀の細線)の膜質が脆くなり、また、十分な3次元構造をとることができず銀粒子同士をつなぎとめる効果が低くなるため、所望する導電性を得ることができない。また、20質量%を超えると、銀粒子間に硬化性の樹脂が過剰に介在することにより、粒子の接触性又は焼結性を阻害することになり、所望の導電性を得ることができない。
【0048】
また、導電性ペーストに含まれる溶媒(又は「溶剤」とも称する)としては、銀粒子及びバインダーと反応を起こさず、これらを良好に分散するものであれば特に限定されるものではない。例えば、スクリーン印刷用の導電性ペーストとして調合される場合は、比較的高沸点(例えば、沸点約100〜300℃)のものが選択されることが多い。
【0049】
例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテル等のグリコールのエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(酢酸カルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールのエーテルエステル類、テルピネオールなどの有機溶剤が使用される。溶媒の使用量は、球状銀粒子100重量部に対して1〜30重量部程度、好ましくは3〜20重量程度であればよい。
【0050】
また、導電性ペーストに添加する可塑剤としては、ジ−n−オクチルフタレート(DOP)、ジ−n−ブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類、エポキシ類、グリコール類及びポリエステル類等が用いられるが、用いる有機バインダー樹脂の組成に合わせて最適なものを選択すればよく特に限定されない。可塑剤を使用する場合は、その使用量は、有機バインダー樹脂全体量に対して1.0〜15質量%程度であればよく、好適な可塑性が付与される。可塑剤量が1.0質量%未満の場合、バインダーに十分な可塑性を与えることができず、15質量%を越えると導電性ペースト保存安定性を阻害し、また、過剰な可塑剤がバインダーの硬化性を阻害するため好ましくない。
【0051】
本発明の導電性ペーストの製造は、アクリル樹脂を含むバインダー樹脂に、銀粉末を加え、攪拌混合した後に混練して高粘度の導電性ペーストを作る。混練は、ロールミル、ライカイ機、ボールミル、遊星ミル、自公転式混合機からなる群より選ばれる1つ若しくは複合された方法による。上記導電性ペーストに水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物、可塑剤及びカップリング剤を混合する。この混合は、ロールミル、ライカイ機、ボールミル、遊星ミル、自公転式混合機からなる群より選ばれる1つ若しくは複合された方法による。
【0052】
また、導電性ペーストは、スクリーン印刷に適した粘度及びチキソトロピー性に調製されてスクリーン印刷に供される。粘度及びチキソトロピー性の調製は、銀粒子の粒径、バインダーの種類、溶媒の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、導電性ペーストの粘度は、通常、10〜10000dPa・s程度であれば良く、チキソトロピーインデックスは1.5〜4.0程度の範囲で適宜選択すればよい。
【0053】
また、本発明の他の局面に係る透明導電性シートは、電磁波シールド材にも好ましく使用できる。これについて、詳述すると、電磁波シールド材は、上記の導電性ペーストを、透明性樹脂基材の透明多孔質層面上にスクリーン印刷した後、加熱処理して導電部を形成し、さらにその上にオーバーコート液を塗布及び乾燥して製造される。
【0054】
スクリーン印刷の方法は特に限定はなく、公知の方法を用いて行うことができる。印刷に用いるスクリーン版は、電磁波を効果的に遮蔽でき、かつ十分な透視性が確保できる程度の導電部が形成されるようなパターン、特に、格子状、網目状などの連続した幾何学パターンを有するものが用いられる。例えば、直径11〜23μmのステンレスワイヤで織られた360〜700メッシュのステンレス紗に、線幅10〜30μm程度、模様ピッチ200〜400μm程度の格子状パターンを設けたスクリーン版が挙げられる。
【0055】
スクリーン印刷では、微細な粒子状銀を含む導電性ペーストを用いているため、パターンにムラの発生がほとんどない。また、該導電性ペーストと透明多孔質層とのマッチングがよいため、透明多孔質層上に形成されたパターンの細線に、断線や滲みがほとんど発生しない。
【0056】
一般に、スクリーン印刷されるパターンの線幅は、原理上、スクリーン版の線幅より少し太くなる傾向があるが、線間隔のズレやパターンの歪みがほとんど発生せず、スクリーン版のパターンに対しほぼ忠実なパターンが透明多孔質層上に再現されることとなる。少し太くなる傾向を嫌う場合、スクリーン版のスリット幅を、透明多孔質層に形成される所望の線幅よりも小さく設定すればよく、当業者であればかかる設定は容易に行うことができる。
【0057】
続いて、スクリーン印刷された電磁波シールド材を、130〜200℃程度(特に、160〜180℃程度)の低温で加熱処理(焼成)して、透明多孔質層に格子状パターンの導電部を形成する。上述したように、特定の導電性ペーストを用いているため、比較的低温の加熱条件でも容易に金属銀粒子の融着が起こり、連続した金属銀の塗膜を形成することができる。加熱処理では、例えば、外部加熱方式(蒸気又は電気加熱熱風、赤外線ヒーター、ヒートロール等)、内部加熱方式(誘導加熱、高周波加熱、抵抗加熱等)等が採用される。加熱時間は、通常、5分〜120分程度、好ましくは10分〜40分程度である。
【0058】
なお、上記加熱処理(焼成)を多段階で行っても良い。例えば、第一段階として50〜60℃で10〜20分程度加熱処理した後、引き続き、第二段階として160〜180℃で10分〜40分程度加熱処理することも可能である。多段階にすることで、先に溶媒を揮発させることで、さらに滲みを抑制することができる。
【0059】
このように、上記の導電性ペーストを用いると、低温且つ短時間で銀塗膜を形成することができるため、熱による透明性樹脂基材への悪影響を回避できる。即ち、熱により透明性樹脂基材からのオリゴマー析出によって該基材が白化したり、熱により基材が黄変したりすることを抑制できる。
【0060】
また、透明性樹脂基材の透明多孔質層と反対面にハードコート層を有する場合、焼成時に基材樹脂の白化や黄変がさらに抑制される。
【0061】
さらに、本発明の製法では、上記で得られた格子状パターンの導電部が形成された透明性樹脂基材の透明多孔質層上に、酸化物セラミックス前駆体及び/又は透明性樹脂と溶媒とを含むオーバーコート液を塗布、乾燥してオーバーコート層を形成する。
【0062】
オーバーコート液には、酸化物セラミックス前駆体及び透明性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を主成分として含有する。該材料は、透明性、密着性等の特性を有するものであれば特に限定はない。
【0063】
酸化物セラミックス前駆体とは、ゾル−ゲル法等により透明な酸化物セラミックスを形成できる前駆体(化合物)であればよく、例えば、シリカ前駆体(テトラメトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン、テトラハロシラン等)、チタニア前駆体(テトラアルコキシチタン、オルガノアルコキシチタン、テトラハロチタン等)、アルミナ前駆体(トリアルコキシアルミニウム、オルガノアルコキシアルミニウム、トリハロアルミニウム等)、マグネシア前駆体、ベリリア前駆体、ジルコニア前駆体(テトラアルコキシジルコニウム、オルガノアルコキシジルコニウム、テトラハロジルコニウム等)などが挙げられる。
【0064】
これらの酸化物セラミックス前駆体は、通常、公知の方法により加水分解するなどして、シリカゾル、チタニアゾル、アルミナゾル、マグネシアゾル、ベリリアゾル、ジルコニアゾルなどのゾル状物に変換させて用いられる。
【0065】
酸化物セラミックス前駆体として、テトラメトキシシランが好適である。
【0066】
また、透明性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、シリコーン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂及びウレタン樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。該材料は、これらからなる群から選ばれる少なくとも1種を選択することができる。
【0067】
透明性樹脂として、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂が好適である。
【0068】
また、オーバーコート液に含まれる溶媒は、例えば、水、アルコール類、芳香族炭化水素、エチレングリコールのエーテルエステル類、プロピレングリコールのエーテルエステル類、ケトン類、テルピネオール等が挙げられ、これらからなる群から選ばれる少なくとも1種を選択することができる。
【0069】
オーバーコート液に含まれる酸化物セラミックス前駆体及び透明性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料の使用量は、溶媒100重量部に対して通常0.5〜30重量部程度、好ましくは0.5〜5.0重量部程度であればよい。
【0070】
オーバーコート液には、上記の酸化物セラミックス前駆体及び/又は透明性樹脂及び溶媒以外に、必要に応じて、アンチブロッキング材や、界面活性剤、触媒等を添加してもよい。
【0071】
好ましいオーバーコート液としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂及びシリカ前駆体を含むもの(例えば、商品名「コンポセランAC601」、荒川化学工業株式会社等)、ポリビニルアルコール樹脂を含むもの(商品名「ゴーセファイマーZ100」、日本合成化学工業株式会社)等が例示される。
【0072】
オーバーコート液を塗布する方法は、例えば、グラビアコーティング、オフセットコーティング、コンマコーティング、ダイコーティング、スリットコーティング、スプレーコーティング、メッキ法、ゾル−ゲル法、LB膜法、CVD、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法を採用すればよい。塗布量は、乾燥後に形成されるオーバーコート層の厚さが0.01〜20μm程度、好ましくは0.1〜10μm程度になるように調整すればよい。
【0073】
オーバーコート液が塗布された透明性樹脂基材は、続いて乾燥工程に供される。乾燥条件は、通常、80〜150℃の温度で、1〜10分間程度乾燥すればよい。
【0074】
この様にして形成されるオーバーコート層は、本発明の電磁波シールド材に高い耐久性を付与する。オーバーコート層を有する本発明の電磁波シールド材は、オーバーコート層を有しない電磁波シールド材と比べて、耐環境性、耐熱性、耐光性、耐湿性、耐擦傷性等に優れている。
【0075】
本電磁波シールド材は、オーバーコート層自体は絶縁性であるが、膜厚が小さいため、オーバーコート層の上から電極端子を設置する際に層を貫通させて或いは層を剥離するなどして下部の導電部(銀の細線)に電極を接触させて、アースを取ることも可能である。電極端子の設置方法などによっては、アースをとれない場合も想定されるが、その場合はオーバーコート層の未形成部を設けてもよい。
【0076】
以上のようにして、電磁波シールド材が製造される。本発明の電磁波シールド材は、高い開口率を有し、例えば75%以上、特に80〜95%程度となる。そのため、高い透視性が達成される。
【0077】
また、導電部の格子状又は網目状パターンの線幅(W)は、通常、10〜30μm程度、好ましくは15〜20μm程度である。線幅が約10μm未満である幾何学パターンは、その作製が困難となる傾向にあり、30μmを越えるとパターンが目に付きやすくなる傾向にあるため好ましくない。
【0078】
なお、印刷される格子状又は網目状パターンの線の間隔(ピッチ)(P)は、上記の開口率及び線幅を満たす範囲で適宜選択することができる。通常、200〜400μm程度の範囲であればよい。
【0079】
細線の厚み(透明多孔質層面から垂直方向の細線の最大高さ)は、線幅等によって変動し得るが、通常約1μm以上であり、特に1〜30μm程度である。
【0080】
本電磁波シールド材は、高い電磁波シールド効果を有し、透明性及び透視性に優れている。しかも、導電部の細線の断線がほとんどないため抵抗が低いという特徴も有している。本発明の電磁波シールド材の表面抵抗値は、5Ω/□以下、好ましくは3Ω/□以下、更に好ましくは2Ω/□以下である。表面抵抗値が大きすぎる場合には、シールド特性の点で好ましくない。
【0081】
本電磁波シールド材の全光線透過率(JIS K7105)は、72〜91%程度と高い値を達成できる。また、ヘイズ値(JIS K7105)は、0.5〜6%程度と低い。
【0082】
さらに、透明多孔質層上に形成された導電性パターンは、実質的にその大部分が銀粒子からなり、かつ、この銀粒子が直接融着し結合した高純度の銀の塊となる。このため、本発明の電磁波シールド材は、より低く且つ安定な抵抗値を有している。
【0083】
更に、上述したように、本電磁波シールド材において、オーバーコート層を有する場合には、耐環境性、耐熱性、耐光性、耐湿性、耐擦傷性等に優れている。具体的には、高温かつ高湿度下で用いても、透明性の劣化が起こりにくく、高い透明性及び透視性が保持される。
【0084】
また、本電磁波シールド材は、透明多孔質層及び導電部の上に形成されたオーバーコート層上に、保護フィルムが積層されていてもよい。その保護フィルムとしては、一般的に用いられる公知の樹脂が用いられる。それらの樹脂をドライラミネート、ウェットラミネート等の公知の方法により積層する。
【0085】
本電磁波シールド材は、さらに機能性フィルム等が積層されていてもよい。機能性フィルムとしては、フィルムの表面の光反射を防止する反射防止層が設けられた反射防止フィルム、着色や添加剤によって着色された着色フィルム、近赤外線を吸収又は反射する近赤外線遮蔽フィルム、指紋など汚染物質が表面に付着することを防止する防汚性フィルムなどが挙げられる。
【0086】
本電磁波シールド材は、電磁波シールド効果が高く、透明性および透視性に優れている。また、本発明のスクリーン印刷法を用いた製造方法では、均質な導電性の幾何学パターンを、高い精度で簡便に基材上に設けることができる。そのため、表示面積の大きなディスプレイに適用される電磁波シールド前面板であっても、簡便に製造することができる。従って、陰極線管(CRT)などの他、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのような表示画面の大きなディスプレイに用いる電磁波シールドフィルターとして有用である。
【発明の効果】
【0087】
本発明によれば、有機バインダー樹脂が、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなるので、導電性ペーストを加熱処理しても、焼散せずに残り、銀粒子を互いに融着させたまま、透明多孔質層の面上に密着性よく留まり、剥がれない。ひいては、焼成後においても、銀の細線の断線が生じないように改良された透明導電性シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】(A) 本発明に係る透明導電性シートを含む電磁波シールド材を装着したプラズマディスプレイパネルの概念図である。(B) 本発明に係る透明導電性シートを含む電磁波シールド材の平面図である。 (C) 図1(B)におけるC−C線に沿う断面図である。
【図2】(A) 本発明に係る透明導電性シートを含むタッチパネルの概念図である。 (B) タッチパネルの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
銀の細線の断線が生じないように改良された透明導電性シートを得るという目的を、有機バインダー樹脂、平均粒径系が5nm以上5μm以下の球状の銀である導電粉末及び有機溶剤を含む導電性ペーストを用い、上記導電粉末の含有量を、上記導電性ペーストの全体量の50〜95質量%とし、さらに上記有機バインダー樹脂として、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなるものを用いることによって実現した。以下、この発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0090】
透明性樹脂基材として、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名『A4300』)を用い、このフィルムの両面に日本ペイント株式会社製NAB−001を膜厚が1.0μmになるようにリバースグラビア塗工し、UV照射を施してハードコート層を形成した。概フィルムの片方面に、シリカ微粒子が分散したゾル液(オルガノシロキサン系のゾル溶液中に粒径10〜100nmのシリカフィラーを添加したもの)を硬化後の膜厚が1.0μmになるように製膜し、120℃で1分間乾燥し、シリカ膜の透明多孔質層(層厚さ1.0μm)を有するポリエチレンテレフタレートフィルム透明基板を製造した。導電性ペーストとして、粒径0.1〜2.0μmの球状銀粉末100重量部に対し粒径5〜45nmの銀粒子を10質量重量部、また、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解したアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製 商品名『EMB005』)の樹脂固形分が5.0質量重量部を攪拌混合後、3本ロールにて混練、高粘度導電ペーストを作製した。次に、この高粘度導電ペースト100重量部に対し、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解した飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製 商品名『バイロン(登録商標)220』)の樹脂固形分として2.5重量部、ブロックポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製 商品名『デュラネート(登録商標)17B60PX』)1.0重量部、カップリング剤0.5重量部、可塑剤3.0重量部をそれぞれ攪拌混合後、3本ロールにて混練し、導電性組成物を得た。ペースト粘度は、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを希釈剤として用いて2000〜3000dPa・sになるよう適宜調整した。
【0091】
該フィルムの多孔質層膜面に、スクリーン印刷機により、上記製造例の導電性ペーストを用いて、格子状パターンのスクリーン印刷を行った。
【0092】
スクリーン版は、直径23μmのステンレスワイヤで織られた400メッシュのステンレス紗に、線幅20μm、模様ピッチ300μm、開口率87.1%の格子状乳剤パターンを設けたスクリーン版(中沼アートスクリーン株式会社製)を用いた。
【0093】
印刷後、フィルムごと導電性ペーストを170℃で30分間焼成して、正方形模様を格子状に描いた導電部を形成し、透明導電フィルムを得た。
【0094】
得られた透明導電フィルムの格子状パターン面をセロテープ(登録商標)で剥離しても、導電部(銀の細線)の剥離はほとんどなかった。
【0095】
(比較例1)
導電性ペーストとして、ナノ銀粒子が5.0重量部、バインダーにアクリル樹脂のみを使用した以外は実施例1と同様の導電ペースト組成物を用いること以外は、実施例1と同様にして、透明導電フィルムを得た。
【0096】
得られた透明導電フィルムの格子状パターン面をセロテープ(登録商標)で剥離したところ、導電部(銀の細線)は簡単に剥離してしまった。
【0097】
得られた透明導電フィルムの性能を表1にまとめる。
【0098】
【表1】

【実施例2】
【0099】
図1(A)は、上記実施例に係る透明導電性シートを含む電磁波シールド材を装着したプラズマディスプレイパネルの概念図である。図1(B)は、電磁波シールド材の平面図である図1(C)は、図1(B)におけるC−C線に沿う断面図である。
【0100】
これらの図を参照して、電磁波シールド材1は、プラズマディスプレイパネル2の表示部3に装着されて用いられ、プラズマテレビから放射される電磁波を遮断する。電磁波シールド材1は、PET基材層4(100μm)と近赤外線吸収機能付きハードコート層5(15μm)が一体化された複合基材(NIRA−HCフィルム基材)を備える。
【0101】
近赤外線吸収機能付きハードコート層5は、無機系近赤外線吸収剤、紫外線硬化型樹脂などを含む近赤外線吸収機能付きハードコート塗液を硬化させることによって形成される。
【0102】
上記無機系近赤外線吸収剤は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、複合タングステン酸化物等を用いることができる。そのうち、近赤外線の吸収率が高く、かつ可視光線の透過率が高いことから、複合タングステン酸化物が好ましく、特にセシウム含有酸化タングステンが最も好ましい。
【0103】
上記紫外線硬化型樹脂は、紫外線硬化性の官能基を有する単量体、オリゴマー、重合体又はそれらの混合物が含まれる。具体的には、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を用いることができる。
【0104】
上記近赤外線吸収機能付きハードコート層5の厚みは、好ましくは2〜25μmである。実施例における実膜厚(d)は15μmである。
【0105】
複合基材の一方の面上に、反射防止層6(実膜厚(d)0.2μm)が設けられている。
【0106】
反射防止層6は、上記近赤外線吸収機能付きハードコート層5の塗工面の上に、高屈折率層/低屈折率層を、または低屈折率層を、塗布、硬化させることによって形成される。
【0107】
上記高屈折率層は、無機材料や、紫外線硬化型樹脂などを含む高屈折率層塗液を硬化させることによって形成される。
【0108】
上記無機材料は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等を用いることができる。
【0109】
上記高屈折率層の屈折率は、高屈折率層の直上に形成される低屈折率層よりも屈折率を高くする必要があり、その屈折率は好ましくは1.55〜1.90の範囲内である。
【0110】
上記高屈折率層の光学膜厚(nd)は、好ましくは100nm〜250nmである。実施例の膜厚と屈折率は、光学膜厚(nd):150nm、屈折率(n):1.60である。
【0111】
上記低屈折率層は、シリカ微粒子、バインダー成分などを含む低屈折率層形成用塗液を硬化させることによって形成される。
【0112】
上記シリカ微粒子は、シリカゾル、多孔質シリカ微粒子、中空シリカ微粒子等を用いることができる。上記バインダー成分は、含フッ素有機化合物の単体又は混合物や、フッ素を含まない有機化合物の単体若しくは混合物又は重合体等を用いることができる。
【0113】
上記低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.45の範囲内である。上記低屈折率層の光学膜厚(nd)は、好ましくは100nm〜175nmである。実施例の膜厚と屈折率は、 光学膜厚(nd):140nm、屈折率(n):1.35である。
【0114】
上記近赤外線吸収機能付きハードコート層5と反射防止層6の塗工方法としては、ロールコート法、スピンコート法、コイルバー法、ディップコート法、ダイコート法等により基材フィルム上に塗布、乾燥した後、紫外線を照射する方法が挙げられる。ロールコート法等、連続的に塗布できる方法が生産性及び生産コストの点より好ましい。
【0115】
PET基材層4の他方の面(プラズマディスプレイパネルPDPに貼り付ける側)に、導電性ペーストインキのにじみ(線太り)を防止するためのインキ受容層である透明多孔質層7(1μm)が設けられている。透明多孔質層7の上に、実施例1で用いた導電性ペーストインキをスクリーン印刷し、これを焼成することによって形成された電磁波シールドメッシュ層8が設けられている。
【0116】
導電性ペーストインキに含まれる有機バインダー樹脂が、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなり、かつ上記導電粉末の含有量を、上記導電性ペーストの全体量の50〜95質量%とし、さらに上記有機バインダー樹脂として、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなるので、導電性ペーストを加熱処理しても、焼散せずに残り、銀粒子を互いに融着させたまま、透明多孔質層の面上に密着性よく留まり、剥がれない。ひいては、焼成後においても、電磁波シールドメッシュ層8である銀の細線に、断線が生じない。
【実施例3】
【0117】
本実施例に係る透明導電性シートは、図2(A)に示すようなタッチセンサー用の電極パターン材(タッチパネル)9に好ましく用いられる。透明なベースフィルムの片面に透明導電膜が形成されたものが、互いに透明導電膜を一定間隔をおいて対向配置された構成を持つ。透明導電膜は、実施例1で用いた導電性ペーストインキをスクリーン印刷し、これを焼成することによって形成されている。静電容量方式のタッチパネル9は、図2(B)に示すように、センサの四隅に均一な電圧をかけ、センサの表面に均一の電界を作る。タッチ動作(押下)により、指が触れると、センサの四隅から指までの距離に比例した、容量の変化が生じる。コントローラが、四隅の容量変化に基づき指の座標位置を計算する。
【0118】
本実施例に係るタッチセンサー用の電極パターン材は、導電性ペーストインキに含まれる有機バインダー樹脂が、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなり、かつ上記導電粉末の含有量を、上記導電性ペーストの全体量の50〜95質量%とし、さらに上記有機バインダー樹脂として、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなるので、導電性ペーストを加熱処理しても、焼散せずに残り、銀粒子を互いに融着させたまま、透明多孔質層の面上に密着性よく留まり、剥がれない。ひいては、タッチ動作を繰り返しても、断線が生じない。
【0119】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、銀の細線に断線が生じない透明導電性シートが得られ、タッチセンサー、電磁波シールド材に利用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 電磁波シールド材
2 プラズマディスプレイパネル
3 表示部
4 透明基材層(PET基材層)
5 ハードコート層
6 反射防止層
7 透明多孔質層
8 幾何学パターンの導電部(電磁波シールドメッシュ層)
9 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材層と、
前記透明基材層の上に設けられた、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する透明多孔質層と、
前記透明多孔質層の上に幾何学パターンにスクリーン印刷された導電性ペーストを、加熱処理して形成された幾何学パターンの導電部とを備え、
前記導電性ペーストは、有機バインダー樹脂、平均粒径系が5nm以上5μm以下の球状の銀である導電粉末及び有機溶剤を含み、
前記導電粉末の含有量は、前記導電性ペーストの全体量の50〜95質量%であり、
前記有機バインダー樹脂は、水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート、アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂、可塑剤及びカップリング剤からなることを特徴とする透明導電性シート。
【請求項2】
前記水酸基を有するポリエステル樹脂は、有機バインダー樹脂の全体量の10〜50質量%であり、前記ブロックポリイソシアネートは、有機バインダー樹脂の全体量の1.0〜15質量%であり、前記アクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂は、有機バインダー樹脂の全体量の35〜90質量%であり、前記可塑剤は、有機バインダー樹脂の全体量の1.0〜15質量%であり、前記カップリング剤は、有機バインダー樹脂の全体量の0.5〜2.0質量%である、請求項1に記載の透明導電性シート。
【請求項3】
前記導電性ペースト中の前記導電粉末は、粒径が異なる2種類の銀粒子を含む、請求項1又は2に記載の透明導電性シート。
【請求項4】
請求項1に記載の透明導電性シートを含む電磁波シールド材。
【請求項5】
請求項1に記載の透明導電性シートを電極パターン材に用いたタッチセンサー。
【請求項6】
アクリル樹脂を含むバインダー樹脂に、銀粉末を加え、攪拌混合した後に、ロールミル、ライカイ機、ボールミル、遊星ミル、自公転式混合機からなる群より選ばれる1つ若しくは複合された方法により、混練して高粘度の導電性ペーストを作り、
前記導電性ペーストに水酸基を有するポリエステル樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物、可塑剤及びカップリング剤を、ロールミル、ライカイ機、ボールミル、遊星ミル、自公転式混合機からなる群より選ばれる1つ若しくは複合された方法により、混合することを特徴とする、透明導電性シート用の導電性ペーストの製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−192755(P2011−192755A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56556(P2010−56556)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【出願人】(591040292)大研化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】