説明

透明粘着性組成物

【課題】透明で粘着性に優れ、練り消し、粘着材等として有用な透明粘着性組成物を提供する。
【解決手段】スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体から選ばれる透明性スチレン系エラストマーに天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ポリブテンから選ばれる透明性ゴムと軟化剤を添加してなり、前記軟化剤の添加量が、透明性スチレン系エラストマーと透明性ゴム100重量部に対し70〜130重量部であることを特徴とする透明粘着性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明粘着性組成物に関し、更に詳しくは、透明で粘着性に優れ、練り消し、粘着材等として有用な透明粘着性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の透明性組成物としては、塩化ビニル樹脂を主成分とするものが知られている。
【0003】
例えば、平均重合度が800を超え、かつ、乳化剤の残存量が0.5重量%以下であるペースト用塩化ビニル樹脂と屈折率が1.50〜1.60である可塑剤とを主成分とすることを特徴とする透明性の優れた塩化ビニル樹脂製字消しが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、リン酸エステル系乳化剤を含有し、重合度2300〜2600の乳化重合により製造したペースト塩化ビニル樹脂100重量部に可塑剤としてBBPを60〜200重量部、およびスズ系化合物、Ba−Zn系化合物、Ca−Zn系化合物およびそれらの混合物から選ばれる安定剤0.1〜5重量部を配合してなるペースト塩化ビニル樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−242098号公報
【特許文献2】特公昭63−49640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの塩化ビニル樹脂を主成分とする組成物は、移行性の問題を含んでいる。
【0007】
一方、近年、字消しの分野においても顧客からの要求は多様化しており、装飾性、趣味性、遊戯性に富んだ透明な練り消しが要請されている。しかしながら、従来の練り消しにはサブが配合されており、このため生地全体を透明にすることは不可能である。
【0008】
また、ベース樹脂自体に透明性が要求されるため、樹脂選択の自由度が狭いという問題がある。例えば、透明な樹脂として、ブタジエンゴム、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等が考えられるが、いずれも十分な伸びを備えていないという欠点がある。
【0009】
一方、天然ゴムやブチルゴム等のゴムは伸びや生地の再接着性には優れているが、やや透明性に劣り、また熱に対する形状保持性が不十分である。
【0010】
本発明は、従来技術の問題点を解消し、透明性及び粘着性に優れるとともに十分な伸びや熱に対する形状保持性を備え、練り消しや粘着材等として有用な透明粘着性組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意研究の結果、特定の透明性スチレン系エラストマーに特定の透明性ゴムと特定量の軟化剤を添加することにより、透明性、粘着性に優れ、十分な伸びや熱に対する形状保持性を備え、練り消しや粘着材等として有用な組成物が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明の請求項1は、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体から選ばれる透明性スチレン系エラストマーに天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ポリブテンから選ばれる透明性ゴムと軟化剤を添加してなり、前記軟化剤の添加量が、透明性スチレン系エラストマーと透明性ゴム100重量部に対し70〜130重量部であることを特徴とする透明粘着性組成物を内容とする。
【0013】
本発明の請求項2は、軟化剤がプロセスオイルからなる請求項1記載の透明粘着性組成物を内容とする。
【0014】
本発明の請求項3は、更に、充填剤を添加してなる請求項1又は2記載の透明粘着性組成物を内容とする。
【0015】
本発明の請求項4は、透明性ゴムの添加量が、透明性スチレン系エラストマー100重量部に対し5〜100重量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物を内容とする。
【0016】
本発明の請求項5は、充填剤の添加量が、透明性スチレン系エラストマーと透明性ゴム100重量部に対し10重量部以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物を内容とする。
【0017】
本発明の請求項6は、透明性スチレン系エラストマーが、引張り破断伸度が100%以下で、且つ、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が1g/10min 以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物を内容とする。
【0018】
本発明の請求項7は、練り消しである請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物を内容とする。
【0019】
本発明の請求項8は、粘着材である請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物を内容とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、透明性に優れるが伸びに欠けるスチレン系エラストマーを用い、これと、透明性や熱に対する形状保持性にはやや劣るが伸びに優れる透明性ゴムと特定量の軟化剤を組み合わせることにより、相溶性が良好で両者は均一に分散混合し、透明性、粘着性に優れた透明粘着性組成物が提供される。
【0021】
また、本発明の透明粘着性組成物は、十分な伸びを有するとともに、繰り返し練る場合の再接着性に優れ、清潔感、清澄感、興趣性に富んだ透明練り消しを提供することができる。
【0022】
更に、本発明の透明粘着性組成物は、不乾性で透視性に優れるとともに粘着性に優れているため、糊や画鋲、地震の際の家具、コンピューター、プリンター等のOA機器等の転倒や落下を防ぐための粘着マット、ゴミ取りローラー用の粘着シート等の粘着材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に用いられる透明性スチレン系エラストマー(以下、スチレン系エラストマーと記す)は、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体としては、セプトン1001((株)クラレ製)、クレイトンG1701(クレイトンポリマー製)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体としては、セプトン2005、同2006、同2104、同2002(以上、(株)クラレ製)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体としては、セプトン8006、同8004(以上(株)クラレ製)、クレイトンG1651(クレイトンポリマー製)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体としては、セプトン4055、同4077(以上、(株)クラレ製)等を挙げることができる。
【0024】
スチレン系エラストマーは引張り破断伸度が100%以下であることが好ましく、例えば、上記した中ではセプトン1001、同2104、クレイトンG1701は<100%であり、セプトン2005、同2006、同4055、同4077、同8006、クレイトンG1651は測定不可能な程度に小さい値である。また、セプトン8004は560%、同2002は580%である。
【0025】
更に、スチレン系エラストマーは、メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)が1g/10min 以下であることが好ましく、上記したセプトン1001は0.1g/10min 、セプトン2104は0.4g/10min 、セプトン8004は0.1g/10min である。また、セプトン2005、同2006、同4055、同4077、同8006、クレイトンG1701、同G1651は230℃、2.16kgの条件下では、測定不可能な程度に小さい値である。また、セプトン2002は70g/10min である。
【0026】
引張り破断伸度が100%を越えたり、又は、メルトフローレートが1g/10min を越えると、生地がしっかりしすぎ、その結果、伸びにくく、再接着性に欠ける傾向がある。従って、引張り破断伸度が100%以下で、且つメルトフローレート(230℃、2.16kg)が1g/10min 以下であるセプトン1001、同2005、同2006、同2104、同4055、同4077、同8006、クレイトンG1701、同G1651が好ましい。
上記したスチレン系エラストマーは、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
尚、本発明において、引張り破断伸度はJIS K 6301により、またメルトフローレート(230℃、2.16kg)はJIS K 7210により測定される。
【0027】
本発明において、スチレン系エラストマーに伸びを付与する成分としては透明性ゴム(以下、ゴムと記す)が好ましく、このようなゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ポリブテン等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。特に、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムが好ましい。尚、本発明におけるゴムは、着色していても透明性を有するものであれば使用できる。
【0028】
天然ゴムとしては、RSS 1号等が挙げられ、イソプレンゴムとしては、クレイトンIR305(クレイトン製)等が挙げられる。ブチルゴムとしては、エクソンブチル268、ビスタネックスMML80、ビスタネックスMML140(以上、エクソン製)等が挙げられる。
【0029】
ゴムの添加量は、ゴムの種類や本発明の組成物の用途に応じて変動するので一概には決定できないが、例えば、練り消し用の場合は、通常、スチレン系エラストマー100重量部に対し5〜100重量部が好ましい。5重量部未満では伸びが不足する傾向があり、一方、100重量部を超えると伸びるが強い力が必要となるので好ましくない。
【0030】
本発明の組成物には、通常、軟化剤が添加される。軟化剤はゴムとともに、引張り破断伸度及びメルトフローレートの小さいスチレン系エラストマーに伸びや再接着性を付与するものである。このような軟化剤は、鉱物油系、植物油系のいずれも使用できるが、特にプロセスオイルが好適である。プロセスオイルとしては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル等が挙げられ、前者としてはPW32、後者としてはNP24(いずれも出光興産製)が挙げられる。これらは単独で又は必要に応じ組み合わせて用いられる。
軟化剤の添加量は、通常、スチレン系エラストマーとゴム100重量部に対し70〜130重量部である。70重量部未満では硬くて伸びが不十分となり、一方、130重量部を超えるとべたつきブリードする傾向がある。
【0031】
本発明の組成物には、必要に応じ、透明性を損なわない充填剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、LP−3106〔三菱レーヨン製、アクリル(PMMA)パウダー〕、ニップシールVN−3〔東ソー製、シリカ(湿式法ホワイトカーボン)〕等が挙げられる。これらは単独で又は必要に応じ組み合わせて用いられ、その使用量は、スチレン系エラストマーとゴム100重量部に対し10重量部以下程度が好ましい。10重量部を超えると白濁する傾向がある。更に、必要に応じ、オングストロームレベルの微細な酸化物、例えば、酸化インジウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等を導電性を付与したり、紫外線をカットする目的で添加することができる。
【0032】
上記の如き成分からなる本発明の透明粘着性組成物は、混練され、プレス成形、射出成形、押出成形等により成形され、所定の寸法に裁断されて製品とされる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0034】
以下の実施例及び比較例で用いた材料を表1に示す。尚、表2〜表8の記載において、配合部数は特に断らない限り、重量部を表す。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1〜4、比較例1
表2に示すように、熱可塑性エラストマーとして「セプトン8006」、ゴムとしてブチルゴム「ビスタネックスMML80」、軟化剤としてプロセスオイル「PW32」を配合した樹脂組成物を混練り混合した後、押出成形により試料を得た。
得られた試料について、透明度、伸び、加熱時の形状保持性を下記の方法により評価した。結果を表2に示す。
【0037】
「透明度」
試料を肉眼で評価し、下記の基準により評価した。
◎:透明度が非常に高い。
○:透明度が高い。
【0038】
「伸び」
試料を両手で持って伸ばし、伸び具合を下記の基準により評価した。
◎:非常によく伸びる。
○:よく伸びる。
□:伸びるが切れ易い。
△:伸びるが相当の力が必要である。
×:伸びない。
【0039】
「形状保持性」
試料を70℃の恒温槽で一定期間保管し、形状保持性を肉眼で下記の基準により評価した。
◎:4週間まで形状保持する。
○:3週間まで形状保持する。
△:2週間まで形状保持する。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例5〜8
表3に示すように、ゴムとして、ブチルゴム「ビスタネックスMML140」を用いた他は実施例1〜4と同様に操作し、物性を評価した。評価結果を表3に示す。尚、比較のため、比較例1の評価結果も併記した。
【0042】
【表3】

【0043】
実施例9〜13
表4に示すように、ゴムとして、ブチルゴム「エクソンブチル268」を用いた他は実施例1〜4と同様に操作し、物性を評価した。評価結果を表4に示す。尚、比較のため、比較例1の評価結果も併記した。
【0044】
【表4】

【0045】
実施例14〜17
表5に示すように、ゴムとして、イソプレンゴム「クレイトンIR305」、天然ゴム「RSS 1号」を用いた他は実施例1〜4と同様に操作し、物性を評価した。評価結果を表5に示す。
【0046】
【表5】

【0047】
実施例18〜27
表6に示すように、熱可塑性エラストマーとして、セプトン1001、同2005、同2006、同2104、同4055、同4077、同8004、同2002、クレイトンG1651、同1701を用いた他は実施例2と同様に操作し、物性を評価した。評価結果を表6に示す。尚、比較のため、実施例2の評価結果も併記した。
表6の結果から明らかなように、引張り破断伸度が100%以下で、且つ、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が1g/10min 以下の条件を満足しないスチレン系エラストマーであるセプトン8004、同2002を用いた場合は、伸びるが相当の力が必要であることがわかる。
【0048】
【表6】

【0049】
実施例28〜30、比較例2、3
表7に示すように、プロセスオイル「PW32」の添加量を変えた他は実施例2と同様に操作し、物性を評価した。評価結果を表7に示す。尚、比較のため、実施例2の評価結果も併記した。
尚、実施例30は、プロセスオイル「NP24」を用いた。
【0050】
【表7】

【0051】
実施例31〜34
表8に示すように、充填剤として、「LP−3106」、「ニップシールVN−3」を添加した他は実施例2と同様に操作し、物性を評価した。評価結果を表8に示す。尚、比較のため、実施例2の評価結果も併記した。
【0052】
【表8】

【0053】
上記の実施例1〜34で得られた試料は、透明で粘着性を有し、練り消し、転倒や落下を防ぐ粘着マット、ゴミ取りローラー用の粘着シート等として使用可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
叙上のとおり、本発明の透明粘着性組成物は十分な伸びを有するとともに、繰り返し練る場合の再接着性に優れ、清潔感、清澄感、興趣性に富んだ透明練り消しを提供することができる。
【0055】
更に、本発明の組成物は、不乾性で透視性に優れるとともに粘着性に優れているため、糊や画鋲、地震の際の家具、コンピューター、プリンター等のOA機器等の転倒や落下を防ぐための粘着マット、ゴミ取りローラー用の粘着シート等の粘着材を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体から選ばれる透明性スチレン系エラストマーに天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ポリブテンから選ばれる透明性ゴムと軟化剤を添加してなり、前記軟化剤の添加量が、透明性スチレン系エラストマーと透明性ゴム100重量部に対し70〜130重量部であることを特徴とする透明粘着性組成物。
【請求項2】
軟化剤がプロセスオイルからなる請求項1記載の透明粘着性組成物。
【請求項3】
更に、充填剤を添加してなる請求項1又は2記載の透明粘着性組成物。
【請求項4】
透明性ゴムの添加量が、透明性スチレン系エラストマー100重量部に対し5〜100重量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物。
【請求項5】
充填剤の添加量が、透明性スチレン系エラストマーと透明性ゴム100重量部に対し10重量部以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物。
【請求項6】
透明性スチレン系エラストマーが、引張り破断伸度が100%以下で、且つ、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が1g/10min 以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物。
【請求項7】
練り消しである請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物。
【請求項8】
粘着材である請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明粘着性組成物。

【公開番号】特開2012−77304(P2012−77304A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243125(P2011−243125)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2004−191080(P2004−191080)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000106782)株式会社シード (52)
【Fターム(参考)】