説明

透明絶縁積層体及びこれを用いたプリント基板

【課題】植物起源の化合物を利用することによる環境適合性を有し、耐熱性及び耐湿耐水性に優れ、しかも高い密着性と透明性を示す透明絶縁積層体及びこれを用いたフレキシブルプリント基板を提供する。
【解決手段】透明支持体の少なくとも片面側に透明絶縁層を有する透明絶縁積層体であって、前記透明絶縁層が、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を主鎖に含む特定重合体を含有する透明絶縁積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明絶縁積層体及びこれを用いたプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟性や省スペース化が求められる電子機器の回路部品として、フレキシブルプリント基板が広く使用されている。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの表示装置用デバイス実装基板や携帯電話・デジタルカメラ・携帯型ゲーム機などの基板間中継ケーブル、操作スイッチ部基板等、そのアプリケーションとして、いずれも生活や産業に欠かせない電気機器が挙げられる。かかるフレキシブルプリント基板には、電気回路を水分から守るために低吸水であることが必要である。さらに、電気特性(低誘電)が求められ、約230〜260℃のはんだに耐える耐熱性が求められる。このような条件を満たすものとして、現在ポリイミドを利用した基板が主流である。
【0003】
上述したアプリケーションのなかで、例えば液晶ディスプレイが挙げられ、その市場は急速に拡大している。現在汎用されているものは、表示パネルの基材としてガラス基板が用いられているが、さらに薄型化、軽量化、フレキシブル化、ロールトゥロールプロセスによる加工コストの低減を目指し、透明基板を用いたフレキシブルディスプレイの開発が益々進むと見られている。
【0004】
ところが、上述したポリイミドからなるフィルム材料は一般的に黄色みがかった有色のものである。上記透明基板としては要求を満たすことができない。透明性を付与したポリイミドフィルムの作製も提案されているが(特許文献1,2参照)、吸水性が高く、電気特性(絶縁性)が悪い。素材を変更して、ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いたものも検討されている(特許文献3,4参照)。これにより吸湿は抑制できるが、耐熱性はいまだ不十分の状態である。また、リフロープロセスなどに伴う長時間加熱に伴う熱収縮も大きい。
【0005】
その他、フレキシブルプリント基板以外にも、表示デバイス等の光学フィルムや保護フィルム、各種産業用途における透明部材など、吸湿を抑え、耐熱性が高く、密着性を有し、高度な透明性をもつ膜材が求められる分野は多岐にわたる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−313739号公報
【特許文献2】特開2008−101068号公報
【特許文献3】特開2006−54239号公報
【特許文献4】特開2010−238720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本出願人は先に天然資源由来のアビエタン系の化合物に注目し、これを重合体とすることに成功した。そしてその重合体の物性を確認し、高耐熱性および耐湿耐水性を発現させることができることを見出した(特開2011−26569号公報、特開2011−74249号公報)。その後の研究開発を通じ、上記重合体をフィルム成形体とすることに成功し、そのフィルムを利用して極めて透明度の高い積層体とすることができることを見出した。その結果、このフィルム素材が、上述した透明フレキシブルプリント基板を始めとした、耐熱性、耐湿耐水性、密着性、透明性のすべてを必要とするアプリケーションに適合することに想到し本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち本発明は、植物起源の化合物を利用することによる環境適合性を有し、耐熱性及び耐湿耐水性に優れ、しかも高い密着性と透明性を示す透明絶縁積層体及びこれを用いたフレキシブルプリント基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は下記の手段により解決された。
〔1〕透明支持体の少なくとも片面側に透明絶縁層を有する透明絶縁積層体であって、透明絶縁層が、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を主鎖に含む特定重合体を含有する透明絶縁積層体。
〔2〕デヒドロアビエチン酸に由来する骨格が下記式(U)で表される構造を含む〔1〕に記載の透明絶縁積層体。
【化1】

(R及びRは炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはアルキレン基を表す。nは0〜3を表す。mは0〜5を表す。環Cyはヘテロ原子を含んでもよい飽和もしくは不飽和の6員環もしくは7員環を表す。式中、*,**は主鎖に組み込まれる結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。)
〔3〕デヒドロアビエチン酸に由来する骨格が下記式A1又はA2で表される繰り返し単位である〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
【化2】

(式中、L11、L12、L21、L22、及びL23は、2価の連結基を表す。*は主鎖に組み込まれる結合手を表す。)
〔4〕式A1中、連結基L11が式中2位で示される炭素原子と結合した〔3〕に記載の積層体。
〔5〕式A2中、連結基L23が式中2位及び2’位で示される炭素原子と結合した〔3〕に記載の積層体。
〔6〕式A1中のL11が、*−L13−CO−**または*−CO−L13−**(*はヒドロフェナントレン環側の結合手を表す。**はその逆の結合手を表す。)で表され、L13が、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、酸素原子、カルボニル基、又は単結合であり、L12がカルボニル基もしくはカルボニルオキシ基である〔3〕または〔4〕に記載の積層体。
〔7〕式A2中のL21及びL22がカルボニル基もしくはカルボニルオキシ基であり、L23が酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、又は単結合である〔3〕または〔5〕に記載の積層体。
〔8〕さらに、特定重合体が、ポリオール化合物由来もしくはポリカルボン酸由来の共重合成分を含む〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の積層体。
〔9〕共重合成分が、下記式(II)で表される〔8〕に記載の積層体。
【化3】

[Gはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、またはこれらを組み合わせた連結基を表す。X、Y、Zはそれぞれ独立に、−O−、−S−、−NR−、−(C=O)−、−O(C=O)−、−(C=O)O−、−(C=O)NR−、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。Rは水素原子もしくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基を表す。*は主鎖に組み込まれる結合手である。mzは0〜3の整数である。]
〔10〕式(II)が下記式(B1)で表される〔9〕に記載の積層体。
【化4】

(Lは、酸素原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、又は単結合である。Lが複数存在するとき、そのそれぞれは同じでも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。R及びRが複数存在するとき、そのそれぞれは同じでも異なっていてもよい。n1及びn2はそれぞれ独立して0〜4の整数を表す。n3は0〜2の整数を表す。*は主鎖に組み込まれる結合手を表す。)
〔11〕透明支持体が、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、及びポリ乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するものである〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の積層体。
〔12〕〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の積層体と導電性膜とを具備するプリント基板。
〔13〕透明支持体の少なくとも片面側に設けて利用される透明絶縁膜であって、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を主鎖に含む特定重合体を含有してなる透明絶縁膜。
〔14〕透明支持体の少なくとも片面側に設けて利用される透明絶縁膜形成用ドープであって、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を主鎖に含む特定重合体を有機溶媒中に溶解したドープ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の透明絶縁積層体及びこれを用いたフレキシブルプリント基板は、植物起源の化合物を利用したものであり、二酸化炭素の換算排出量の低減に大いに資する環境適合性を有する。さらに、耐熱性及び耐湿耐水性に優れ、しかも高い密着性と透明性を示すという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態としての透明絶縁積層体を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態としての透明絶縁積層体を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明の一実施形態としてのフレキシブルプリント基板を模式的に示した斜視図である。
【図4】流延膜の製造工程を説明するための流延膜及び製造装置の幅方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の透明絶縁積層体は、透明支持体の少なくとも片面側に、植物起源の化合物を利用した特定重合体からなる透明絶縁層を有する。これにより、耐熱性、耐湿耐水性、透明性のすべてが同時に実現された。この理由は未解明の点を含むが、以下のように推定される。すなわち、上記特定重合体は、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を有する化学構造的に安定した3環状部分が母格として二次元的に連結していることによる特有のマトリックスが樹脂中に作出されるためと考えられる。このような材料はこれまでなく、特にバイオマス資源を用いて得られる従来のバイオマスポリマーは、通常、耐熱性に劣る。本発明に利用される上記特定重合体は、バイオマス資源に由来する原料を用いることができるにも拘らず、上記のごとく優れた耐熱性を示す。さらに特筆すべきは、高い耐熱性を有しながら、高度な透明性を有することである。これは、従来広く利用されているポリイミド系樹脂ではなしがたかったことである。以下、本発明の好ましい実施態様を中心に詳細に説明する。
【0013】
[特定重合体]
(デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を含む繰り返し単位)
本発明の特定重合体は、下記式(AA)で表されるデヒドロアビエチン酸又はその誘導体を原料モノマーとして使用する。これを重合させて得られる単独重合体であっても、当該原料モノマーと他のモノマーとを重合させて得られる共重合体であってもよい。すなわち、上記特定重合体は、その分子構造中にデヒドロアビエチン酸に由来する骨格を含む繰り返し単位を有してなる。
【0014】
【化5】

【0015】
ここで、本発明において「デヒドロアビエチン酸に由来する骨格」とは、上記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造を有していればよく、言い変えれば、所望の効果を奏する範囲で、デヒドロアビエチン酸から誘導化できる構造骨格であればよい。好ましい例としては下記が挙げられる。好ましくは(AA−1)、(AA−3)、(AA−10)であり、最も好ましくは(AA−1)である。
【0016】
【化6】

【0017】
「デヒドロアビエチン酸に由来する骨格」はさらに置換基を有してもよい。有してもよい置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる
【0018】
本発明の特定重合体においては、式化していうと、前記デヒドロアビエチン酸に由来する骨格として下記式(U)で表される構造を含むことが好ましい。
【0019】
【化7】

及びRは炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはアルケニル基を表す。nは0〜3を表す。mは0〜5を表す。環Cyはヘテロ原子を含んでもよい飽和もしくは不飽和の6員環もしくは7員環を表す。式中、*,**は主鎖に組み込まれる結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。Rはメチル基であることが好ましい。Rは炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、i−プロピル基であることがより好ましい。Cyはシクロヘキサン環もしくはシクロヘキセン環であることが好ましく、シクロヘキサン環であることがより好ましい。n,mは1であることが好ましい。
【0020】
上記式(U)は下記式(U1)であることが好ましい。R、R、m、nは前記式(U)と同義である。RはRと同義である。pは0〜2の整数であり、0であることが好ましい。
【0021】
【化8】

【0022】
さらに、上記式(U)は下記式(U2)であることが好ましい。
【0023】
【化9】

式中、*,**は結合手を表す。
【0024】
デヒドロアビエチン酸は、植物起源の松脂に含まれるロジンを構成する成分の1つである。すなわち、天然起源の材料をその基質として利用することができるため、二酸化炭素の排出量において相殺され、化石燃料起源のプラスチック材料に比し、大幅にその換算排出量を削減することができる。次世代材料として望まれる環境適合型の、バイオマス資源由来の素材である。なお、上記デヒドロアビエチン酸に由来する骨格、式U、U1ないしはU2で表される骨格を総称してデヒドロアビエタン主骨格と呼ぶことがあり、これを「DHA主骨格」と省略して呼ぶことがある。
【0025】
さらに、本発明の好ましい実施形態において重要な骨格構造として、下記式U3及びU4で表されるものが挙げられる。下記式U3のものをデヒドロアビエタン骨格(DA骨格)と呼び、式U4のものをデヒドロアビエチン酸骨格(DAA骨格)という。
【0026】
【化10】

【0027】
前記特定重合体は、下記式A01又はA02で表される繰り返し単位を含む重合体から選ばれることが好ましく、式A11又はA12で表される繰り返し単位を含む重合体から選ばれることがより好ましく、A1又はA2で表される繰り返し単位を含む重合体から選ばれることが特に好ましい。なお、下記式中、R、R、RC、m、n、pは前記式(U)、(U1)と同義である。RはRと同義である。
【0028】
【化11】

【化12】

【化13】

【0029】
式中、L11、L12、L21、L22、及びL23は、2価の連結基を表す。*は結合手を表す。これらの連結基の好ましい範囲は、後記各重合体の好ましい実施形態の説明の中で述べるが、まとめて好ましいものを示すと下記のとおりである。
【0030】
(1)ポリカルボン酸由来の繰り返し単位であるとき
11:*−CO−L13−**または*−L13−CO−**(L13は連結基を表す。その詳細は後記参照。)
12、L21、L22:カルボニル基
23:酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、又は単結合
(2)ポリオール由来の繰り返し単位であるとき
11:*−L1A−O−**(L1Aは連結基を表す。その詳細は後記参照。)
12、L21、L22:*−CH−O−**
23:前記と同義
【0031】
前記式A1中、連結基L11が式中2位で示される炭素原子と結合したことが好ましい。前記式A2中、連結基L23が式中2位及び2’位で示される炭素原子と結合したことが好ましい。
【0032】
上記DHA主骨格を有する構成単位は、これ単独でホモポリマーを構成していてもよいが、本発明において好ましくは、共重合体成分ともにコポリマーを構成していることが好ましい。具体的には、下記で例示するポリカルボン酸やポリオールとともにポリエステルを形成していることが好ましい。好ましい共重合成分としては、下記式(II)で表されるものが挙げられる。
【0033】
本発明における特定重合体Aは下記式(II)で表される構造単位を共重合成分として有していてもよい。
【0034】
【化14】

【0035】
・G
はアルカン連結基(アルカンジイル、アルカントリイル、アルカンテトライル等)、アルケン連結基(アルケンジイル、アルケントリイル、アルケンテトライル等)、アリール連結基(アリールジイル、アリールトリイル、アリールテトライル等)、ヘテロアリール連結基(ヘテロアリールジイル、ヘテロアリールトリイル、ヘテロアリールテトライル等)を表す。Gがアルカン連結基、またはそれらの組合せもしくはアルケン連結基であるとき、鎖状であっても環状であってもよく、これが鎖状のとき直鎖であっても分岐であってもよい。アルカン連結基、アルケン連結基、アリール連結基、またはヘテロアリール連結基はその一つ以上の水素原子が特定の置換基に置換されていても、無置換でもよい。置換されているときの置換基としては、後記置換基Tが挙げられ、なかでもアルキル基、アルケニル基が好ましい。また、アルカン連結基およびアルケン連結基を構成する一つ以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換されていてもよく、置換されているときのヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、なかでも酸素原子が好ましい(典型的にはアルキレン鎖の一部がエーテル結合に置き換わり連結された形である。)。なお、炭素数とは置換基を有する場合、その炭素原子の数を含まない意味である。
【0036】
がアルカン連結基(好ましくはアルキレン基)またはアルケン連結基(好ましくはアルケニレン基)であるとき、炭素数2〜30であることが好ましく、炭素数2〜20がより好ましい。アルキレン基、アルケニレン基は、置換または無置換であってもよく、一部がヘテロ原子に置換されていてよいことは上記のとおりである。さらに具体的には、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CHRa)CH−、−CH−Rb−CH−、−(CHCHO)−CHCH−、−(CHCHO)−CHCH−がより好ましい。Raは炭素数6〜18のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、C1837、C1633、C1225、C17、C1835、C1631、C1223、C15であることがより好ましい。Rbは炭素数4〜12のシクロアルキレン基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましい。
【0037】
がアリール連結基(好ましくはアリールレン基)またはヘテロアリール連結基(好ましくはヘテロアリーレン基)であるとき、炭素数3〜24であることが好ましく、炭素数6〜12がより好ましい。具体的には置換もしくは無置換のベンゼン連結基(好ましくはフェニレン基)が挙げられる。なお、Gはアルカン連結基、アルケン連結基、アリール連結基、およびヘテロアリール連結基を組み合わせた連結基であってもよい。例えば、アルカン連結基(好ましくはアルキレン基)とアリール連結基(好ましくはアリーレン基)を組み合わせて連結した連結基等が挙げられ、−Ph−Me−Ph−(Ph:フェニレン基、Me:メチレン基)、−Ph−Pr−Ph−(Ph:フェニレン基、Pr:プロパン−2,2−ジイル基)などが挙げられる。
【0038】
・X、Y、Z
X、Y、Zはそれぞれ独立に、−O−、−S−、−NR−、−(C=O)−、−O(C=O)−、−(C=O)O−、−(C=O)NR−、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。好ましくは、−O−、−(C=O)O−、−(C=O)NH−、又は−(C=O)−である。前記Rは水素原子もしくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基を表す。
【0039】
・mz
mzは0〜3の整数を表す。
【0040】
前記式(II)がポリオール由来の場合は、下記式(II−1)で表されるものが好ましい。
【0041】
【化15】

【0042】
前記式(II)がポリカルボン酸由来の場合は、下記式(II−2)で表されるものが好ましい。
【0043】
【化16】

【0044】
前記式(II)がポリアミン由来の場合は、下記式(II−3)で表されるものが好ましい。
【0045】
【化17】

【0046】
前記共重合成分は環構造を含むことが好ましく、芳香族もしくは芳香族複素環構造を有することが好ましい。この環構造は前記連結基G内にあることが好ましい。なお、本明細書においては、「連結基」という用語を、2つの構造部を連結するものを広く意味し、原子や単結合を含む意味で用いる。
【0047】
(分子量等)
本発明における特定重合体は、DHA主骨格を主鎖の一部を構成するように含んでいれば、その結合態様は特に限定されるものではない。前記特定重合体の重量平均分子量は限定的でないが、好ましくは5,000〜700,000、より好ましくは10,000〜500,000である。重量平均分子量がこの範囲であることにより、フレキシブルプリント基板等に適した、耐熱性、成形性等に優れ、さらに高い耐湿耐水性及び透明性が実現され良好となる。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフェィー(GPC)による分子量測定(ポリスチレン換算)で得られた値である。なお、本明細書では特に断らない限り、キャリアとしてはN−メチル−2−ピロリドンを用い、カラムとしてはトーソー(TOSOH)株式会社製 TSK−gel Super AWM−H(商品名)用いた値で分子量を示す。
【0048】
ガラス転移温度(Tg)は限定的でないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは150〜400℃、更に好ましくは150〜350℃である。ガラス転移温度がこの範囲であることにより、ポリエステル系重合体は、特に耐熱性に優れ、フレキシブルプリント基板等に好適に用いることができる。なお、前記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、30〜400℃の温度範囲について、窒素気流下に昇温速度10℃/min.の条件で観察される吸熱ピークとして測定される。なお、本明細書では特に断らない限り、TGの測定には、SII社製、商品名:DSC6300を用いて測定した値をいう。
【0049】
前記特定重合体の密度は限定的でないが、好ましくは1.25g/cm以下、より好ましくは0.90g/cm〜1.25g/cm、更に好ましくは1.00g/cm〜1.20g/cmである。密度がこの範囲であることにより、特定重合体は、耐熱性、成形性等に優れ、さらに耐湿耐水性及び透明性が実現され、フレキシブルプリント基板等への利用に良好となる。なお、ポリエステル系重合体の密度は、精密比重計(SHIMAZU社製、商品名:精密比重計AUW120D)を用いて測定される値をいう。なお、ここでの密度は、熱プレスにより成形したフィルムの密度を前提とする。
【0050】
なお、前記特定重合体には、DHA主骨格を含む繰返し単位を有するものに対して、更に化学処理等を施した誘導体も含む。
【0051】
前記特定重合体を構成するDHA主骨格もしくはその二量体骨格を有する繰り返し単位(例えば、式(A1)で表される繰り返し単位及び式(A2)で表される繰り返し単位)の総含有率は特に制限されないが、繰り返し単位を構成する構造部の総量(例えば下記エステル系重合体のジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の総量)に対し、耐熱性と密度の観点から、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが更に好ましい。
【0052】
前記特定重合体は、必要に応じて、DHA主骨格を含まないその他の繰り返し単位の少なくとも1種を含んだ共重合体であってもよい。
【0053】
本明細書において、末尾に「化合物」と付すなどして分子ないしその構造を特定するときには、当該化合物そのものに加え、その塩、錯体、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の置換基を伴ったあるいは所定の形態で修飾された誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換基ないし連結基に関して「基」という語を末尾に付して特定の原子群を呼ぶときには、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。上記、連結基にさらに有してもよい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
【0054】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5または6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、スルホンアミド基((好ましくは炭素原子数0〜20のスルファモイル基、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルもしくはアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ベンゼンスルホニル等)、ヒドロキシル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシル基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはヒドロキシル基である。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記の置換基Tがさらに置換していてもよい。
【0055】
化合物ないし置換基・連結基等がアルキル基・アルキレン基、アルケニル基・アルケニレン基等を含むとき、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよく、上記のように置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、同様に置換されていても無置換でもよい。
【0056】
(連結形態)
式A01、A11、A1(以下式A1等)、A02、A12、およびA2(以下式A2等)には、L11、L12、L21、L22、L23の5つの連結基が存在するが、L23以外の4つの連結基については、(1)ポリエステル系重合体[I]、(2)ポリエステル系重合体[II]、(3)ポリアミド系重合体の3種においてそれぞれ好ましいものが異なる。中でも、本発明においては、(1)ポリエステル系重合体が高い性能が得られる点で好ましく、その順で以下に好ましい連結基の内容について説明する。なお、本明細書においてポリエステルとは、連結基にオキシカルボニル基があればよく、ポリカーボネート構造をとっていてもよい。ポリアミドについても同様であり、アミド基が連結基に含まれていればよく、ポリイミド構造、ポリウレア構造、ポリウレタン構造等であってもよい。
【0057】
(1)ポリエステル系重合体[I]
<ポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位>
・L11
式A1等中のL11は、*−CO−L13−**または*−L13−CO−**であることが好ましい。*は5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロフェナントレン環(母核)側の結合手を表す。**はその逆の結合手を表す。
・L13
13が、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、酸素原子、カルボニル基、単結合、またはこれらの組合せであることが好ましい。
【0058】
前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖又は分岐鎖の鎖状であっても、環状であってもよい。L13は、耐熱性の観点から、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、酸素原子、カルボニル基、又は単結合、あるいはそれらの組合せであることが好ましい。より好ましくは、炭素数2〜4の鎖状のアルキレン基もしくはカルボニルアルキレン基、炭素数5〜6の環状のアルキレン基もしくはカルボニルアルキレン基、炭素数2〜4の鎖状のアルケニレン基もしくはカルボニルアルケニレン基、炭素数5〜6の環状のアルケニレン基もしくはカルボニルアルケニレン基、炭素数6〜10のアリーレン基もしくはカルボニルアリーレン基、酸素原子、又は単結合である。
【0059】
13で表される連結基の具体例として以下のものを挙げることができるが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。なお、以下の例示化学構造式では、結合手*はヒドロフェナントレン環側に結合する側であり、結合手**がその反対側を意味する。
【0060】
【化18】

【0061】
式(A1)等におけるL13としては、耐熱性の観点から、単結合、(L1−ex−4)、(L1−ex−10)又は(Ll−ex−12)であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。さらに好ましくは、L11が*−CO−**、*−CO−**、*−CO−Rd−COO−**(Rdは炭素数1〜6のアルキレン基)である。
【0062】
前記式A1等中、連結基L11は式中1位〜4位のいずれの炭素原子に結合するものであってもよいが、2位もしくは4位で示される炭素原子と結合したものであることが好ましく、2位で示される炭素原子と結合したものであることがより好ましい。なお、この結合位置は、後述する(2)ポリエステル重合体[II]及び(3)ポリアミド系重合体についても同様である。なお、上記式中の炭素原子の位置番号は、アビエタンの位置番号に対して、1位が11位、2位が12位、3位が13位、4位が14位に相当する。
【0063】
・L12
12は、カルボニル基であることが好ましい。
【0064】
前記ポリエステル系重合体[I]の好適な態様のもう一つは、2つのデヒドロアビエタン主骨格が直接又は連結基を介して結合してなる二量体構造を、主鎖の一部として繰り返し単位中に含むものである。この二量体構造を含む繰り返し単位は、例えば、上記式(A2)で表される。
【0065】
・L21、L22
式A2等中のL21及びL22及は、カルボニル基であることが好ましい。このことは、上記L12と同様に、本実施形態の特定重合体が、DAA骨格を含む繰り返し単位を有して構成されていることを意味する。
【0066】
・L23
23は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、又は単結合であることが好ましい。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖又は分岐鎖の鎖状であっても、環状であってもよい。L23で表される連結基は、耐熱性の観点から、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、及び炭素数6〜18のアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種から構成されることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、炭素数1〜4の鎖状のアルキレン基、炭素数5〜6の環状のアルキレン基、炭素数2〜4の鎖状のアルケニレン基、炭素数5〜6の環状のアルケニレン基、及び炭素数6〜8のアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は単結合であることがより好ましい。
【0067】
23で表される連結基を構成するアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は可能な場合には置換基を有していてもよい。アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基における置換基としては、前記置換基Tを挙げることができる。L23で表される連結基の具体例として、以下の連結基を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0068】
【化19】

【0069】
23としては、耐熱性の観点から、(L2−ex−2)、(L2−ex−5)、(L2−ex−9)又は(L2−ex−11)であることが好ましく、(L2−ex−2)であることがより好ましい。
【0070】
前記式A2等中、連結基L23は式中1位、2位、4位、1’位、2’位、4’位のいずれの炭素原子に結合するものであってもよいが、2位、4位、2’位、及び4’位で示される炭素原子と結合したものであることが好ましく(ただし、2つのヒドロフェナントレン環を連結する組合せである。)、2位及び2’位で示される炭素原子と結合したものであることがより好ましい。なお、この結合位置は、後述する(2)ポリエステル系重合体[II]及び(3)ポリアミド系重合体についても同様である。
【0071】
前記ポリエステル系重合体[I]を構成するポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位中におけるDHA主骨格ないしその二量体骨格からなる繰り返し単位(例えば、式(A1)で表される繰り返し単位及び式(A2)で表される繰り返し単位)の総含有率は特に制限されないが、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の総量を50モル%とした場合、耐熱性と密度の観点から、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。なお、ポリエステル中のポリカルボン酸由来の構成単位の含有率は通常50モル%であり、典型的にはそれが上限となる。
【0072】
本実施形態のポリエステル系重合体[I]は、その他のポリカルボン酸化合物との共重合体であってもよい。その他のポリカルボン酸化合物しては、ポリエステル系重合体[I]を構成するのに通常用いられるポリカルボン酸化合物を特に制限なく用いることができ、例えば、合成高分子V(朝倉書店)P.63−91等に記載のポリカルボン酸化合物を用いることができる。
【0073】
その他のポリカルボン酸化合物としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類や、シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられる。前記ポリエステル系重合体[I]におけるその他のポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の含有率は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば,その他のポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の含有率は、前記ポリエステル系重合体[I]を構成するポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位中に、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
【0074】
<ポリオール化合物由来の繰り返し単位>
・環構造を含むポリオール化合物
本実施形態のポリエステル系重合体[I]は、前述の共重合成分(式II、II−1)をポリオール化合物由来の繰り返し単位として含むことが好ましい。なかでも、その共重合体成分として環構造を有するポリオール化合物由来の繰り返し単位を少なくとも1種含むことが好ましい。前記ポリオール化合物に含まれる環構造は、ポリエステル系重合体[I]の側鎖部分に含まれていても、主鎖の一部を構成するように含まれていてもよいが、耐熱性の観点から、ポリオール化合物に含まれる環構造が主鎖の一部を構成していることが好ましい。これによりさらに耐熱性が向上する。
【0075】
前記ポリオール化合物に含まれる環構造は、脂肪族環であっても、芳香族環であってもよく、また炭化水素環であってもヘテロ環であってもよい。さらに脂肪族環は不飽和結合を含むものであってもよい。またポリオール化合物に含まれる環の数は特に制限されないが、例えば1〜5とすることができ、耐熱性の観点から,1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。ポリオール化合物が2以上の環構造を含む場合、2以上の単環が共有結合又は連結基で連結した構造であっても、縮環構造であってもよい。
【0076】
前記環構造を有するポリオール化合物由来の繰り返し単位の具体例としては、例えば,シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゼン、及び4−ヒドロキシエチルフェノール等に由来する繰り返し単位や、下記式(B1)で表されるポリオール化合物由来の繰り返し単位を挙げることができる。前記環構造を有するポリオール化合物由来の繰り返し単位は、耐熱性の観点から、下記式(B1)で表されるポリオール化合物由来の繰り返し単位であることが好ましい。
【0077】
【化20】

【0078】
式(B1)中、Lは、酸素原子、カルボニル基、スルホニル基、及びアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lが複数存在する場合、それぞれのLは同じでも異なっていてもよい。R及びRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。またR及びRが複数存在する場合、それぞれのR及びRは同じでも異なっていてもよい。n1及びn2はそれぞれ独立して0〜4までの整数を表し、n3は0〜2までの整数を表す。
【0079】
における2価の連結基を構成するアルキレン基は、直鎖や分岐鎖の鎖状アルキレン基であっても、環状アルキレン基であってもよい。またアルキレン基の炭素数は、耐熱性の観点から、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。なお、ここでいうアルキレン基の炭素数には、後述する置換基の炭素数を含まないものとする。さらにアルキレン基は、炭素数1〜6の鎖状又は環状アルキル基、炭素数6〜18のアリール基等の置換基を有していてもよい。アルキレン基における置換基の数は2以上であってもよく、アルキレン基が2以上の置換基を有する場合、2以上の置換基は同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。
【0080】
及びRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を表すが、耐熱性の観点から、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜8のアルキル基、及び炭素数1〜8のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基であることが好ましい。
【0081】
n1及びn2は0〜4の整数を表すが、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。n3は0〜2の整数を表すが、0又は1であることが好ましい。
【0082】
以下に式(B1)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0083】
【化21】

【0084】
式(B1)で表される繰り返し単位としては、耐熱性の観点から.上記(B1−ex−1)、(B1−ex−2)、(B1−ex−3)、(B1−ex−4)、(B1−ex−5),(B1−ex−6)、(B1−ex−7)、(B1−ex−9)又は(B1−ex−11)であることが好ましく、上記(B1−ex−1)、(B1−ex−2)又は(B1−ex−3)であることがより好ましい。
【0085】
前記ポリエステル系重合体[I]を構成するポリオール化合物由来の繰り返し単位中における、環構造を有する共重合成分(式(B1)で表される繰り返し単位)の含有率は特に制限されないが、ジオール化合物由来の繰り返し単位の総量を50モル%とした場合、耐熱性と密度の観点から、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが更に好ましい。なお、ポリエステル中のポリオール由来の構成単位の含有率は通常50モル%であり、典型的にはそれが上限となる。
【0086】
・環構造を含まないポリオール化合物
前記ポリエステル系重合体[I]は、環構造を含まないその他のポリオール化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含むものであってもよい。環構造を含まないポリオール化合物としては、ポリエステル系重合体[I]を構成するのに通常用いられるポリオール化合物を特に制限なく用いることができ、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1.3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等といったジオール化合物が挙げられる。
前記ポリエステル系重合体[I]における環構造を含まないポリオール化合物由来の繰り返し単位の含有率は、その好ましい範囲において、前記環構造を含むものと同様である。
【0087】
本実施形態のポリエステル系重合体[I]は、耐熱性の観点から、ポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位として、下記の構造の少なくとも1つずつを有する組合せに係るものであることが好ましい。
【0088】
・ポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位
式(A1)・・・L13が単結合、化学式(L1−ex−4)、(L1−ex−10)又は(L1−ex−12)、L12がカルボニル基
式(A2)・・・L23が化学式(L2−ex−2)、(L2−ex−5)、(L2−ex−9)又は(L2−ex−11)、L21及びL22がカルボニル基
・ポリオール化合物由来の繰り返し単位
化学式(B1−ex−1)、(B1−ex−2)、(B1−ex−3)、(B1−ex−4)、(B1−ex−5)、(B1−ex−6)又は(B1−ex−11)
【0089】
より好ましくは下記である。
・ポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位
式(A1)・・・L11、L12がカルボニル基
式(A2)・・・L23が(L2−ex−2)、L21及びL22がカルボニル基
・ポリオール化合物由来の繰り返し単位
化学式(B1−ex−1)、(B1−ex−2)、(B1−ex−3)又は(B1−ex−4)
【0090】
本実施形態のポリエステル系重合体[I]を構成するポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位とポリオール化合物由来の繰り返し単位の含有比率(ポリアミドであれば、ポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位:ポリアミン化合物由来の繰り返し単位)は、特に制限されないが、通常1:1である。
【0091】
(ポリエステル系重合体[I]の製造方法)
本実施形態のポリエステル系重合体[I]の製造に用いるデヒドロアビエチン酸は、例えば、ロジンから得ることができる。ロジンに含まれる構成成分は、これら採取の方法や松の産地により異なるが、一般的には、アビエチン酸(1)、ネオアビエチン酸(2)、パラストリン酸(3)、レボピマール酸(4)、デヒドロアピエチン酸(5)、ピマール酸(6)、イソピマール酸(7)等のジテルペン系樹脂酸の混合物である。これらのジテルペン系樹脂酸のうち、(1)から(4)で表される各化合物は、ある種の金属触媒の存在下、加熱処理することにより不均化を起こし、デヒドロアビエチン酸(5)と、下説構造のジヒドロアビエチン酸(8)に変性する。即ち、本発明のポリエステル系重合体[I]を製造する上で必要なデヒドロアビエチン酸(5)は、種々の樹脂酸の混合物であるロジンに適切な化学処理を施すことにより比較的容易に得ることができ、工業的にも安価に製造することができる。なお、ジヒドロアビエチン酸(8)とデヒドロアビエチン酸(5)とは、公知の方法により容易に分離できる。
【0092】
【化22】

【0093】
例えば、上記の式(A1)又は(A2)で表される繰り返し単位及び式(B1)で表される繰り返し単位を有するポリエステル系重合体[I]を合成する工程は、式(B1)で表される繰り返し単位をなすジオール化合物と、上記の式(A1)又は(A2)で表される繰り返し単位をなすジカルボン酸化合物又はその誘導体であるジカルボン酸ハライド誘導体もしくはジエステル誘導体とを公知の方法で重縮合させることにより合成することができる。この一連の工程をスキームにすると下記スキーム1及び2の2通りに分けて説明することができる。なお、下記の反応スキームは本発明における1例であり、この説明により本発明が限定して解釈されるものではない。
【0094】
【化23】

【0095】
【化24】

【0096】
重合体の具体的な合成方法としては、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成・反応(2)、78〜95頁、共立出版(1996年)に記載の方法(例えば、エステル交換法、直接エステル化法、酸ハライド法等の溶融重合法、低音溶液重合法、高温溶液重縮合法、界面重縮合法など)などが挙げられ、本発明では特に酸クロリド法及び界面重縮合法が好ましく用いられる。
【0097】
エステル交換法は、ポリオール化合物とポリカルボン酸エステル誘導体とを溶融状態又は溶液状態で、必要により触媒の存在下に加熱することにより脱アルコール重縮合させポリエステル系重合体[I]を合成する方法である。
【0098】
直接エステル化法は、ポリオール化合物とポリカルボン酸化合物とを溶融状態又は溶液状態で触媒の存在下に,加熱下において脱水重縮合させることによりポリエステル系重合体[I]を合成する方法である。
【0099】
酸ハライド法は、ポリオール化合物とポリカルボン酸ハライド誘導体とを溶融状態又は溶液状態で、必要により触媒の存在下に加熱し脱ハロゲン化水素重縮合させることによりポリエステル系重合体[I]を合成する方法である。
【0100】
界面重合法は、ポリオール化合物を水、前記ポリカルボン酸化合物又はその誘導体を有機溶媒に溶解させ、相問移動触媒を使用して水/有機溶媒界面で重縮合させることによりポリエステル系重合体[I]を合成する方法である。
【0101】
なお、スキーム2のデヒドロアビエチン酸(DAA)の二量化体は、特開2011−26569記載の方法で合成できる。具体的には、L23を単結合で連結する場合、オキサリルクロリドを用い触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを添加して反応を進行させることができる。L23をメチレン基とする場合には、上記オキサリルクロリドをジクロロメタンに代える方法などが挙げられる。あるいは、下記合成例のように、DAAをホルマリンと混合し、触媒量のトリフルオロ酢酸を添加することで反応を進行させてもよい。
【0102】
(2)ポリエステル系重合体[II]
本実施形態においては連結基がそれぞれ以下のものであることが好ましい。
・L11
11は、*−L1A−O−**である。*はヒドロフェナントレン環側の結合手を表し、**はその逆の結合手を表す。L1Aで示される単結合もしくは二価の連結基としては特に限定的ではないが、連結基としては、例えば、−(C2n)−、−CO(C2n)−、(ここで、nは1〜12、好ましくは1〜8の整数であり、直鎖でも分岐でも環状でもよくまた、更に置換基を有していてもよい。また、分子鎖を構成する炭素原子の1つ以上が、酸素原子に置き換わった構造であってもよい。)等が挙げられる。L1Aに結合する原子が酸素原子のときには、好ましくは−(CH−、−(CH5−、又は−(CH−等である。L1Aに結合する原子がカルボニル基のときには、好ましくは−(CH−、−(CH−、−(CH−、−CO(CH−、−CO(CH−、又は−CO(CH−等である。
【0103】
・L12、L21、L22
12は、*−CH−O−**である。*はヒドロフェナントレン環側の結合手を表し、**はその逆の結合手を表す。
【0104】
・L23
23は、(1)ポリエステル系重合体[I]と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0105】
(ポリエステル系重合体[II]の製造方法)
本実施形態の重合体は、例えば、以下のスキーム3で合成することができる。以下は、反応経路の例示であり、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。なお、下記は上記式(A1)で示される態様を例示しているが、アビエタン主骨格を2つもつ2量体とする以外同様であるので式(A2)のものについては省略する。2量体化については、前記ポリエステル系重合体[I]と同様である。
【0106】
【化25】

【0107】
(i)のジカルボン酸体の合成は前記ポリエステルの(I)と同様にして行うことができる。アビエチン酸にカルボキシ基を導入したジカルボキシ化合物(i)からジアルコキシ化合物(ii)への反応は、通常の還元反応によればよい。例えば、水素化アルミで還元することにより、上記還元反応を速やかに進行させることができる。ジアルコキシ化合物(ii)からポリカルボン酸クロリド化合物との反応によりポリエステル(iii)を得る反応は、例えば、後述する合成例を参照することができる。
【0108】
ジアルコキシ化合物にテレフタル酸ジクロリドを反応させるプロセスについては、上記ポリエステル系重合体[I]で述べたのと同様である。その他、ジカルボン酸を反応させてエステル化反応を進行させたり、エステル交換反応を行ったりしてもよく、そうした反応についても、同様に上記ポリエステル系重合体[I]で述べたのと同様である。
【0109】
(3)ポリアミド系重合体
本実施形態においては連結基がそれぞれ以下のものであることが好ましい。
・L11
11は、上記(1)ポリエステル系重合体[I]におけるL11と同義であり、好ましい範囲も同じである。ただし、L1−ex−* で示したものにおいては、本実施形態では、耐熱性の観点から、単結合、(L1−ex−4)、(L1−ex−10)又は(L1−ex−12)であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
・L12、L21、L22、L23
12、L21、L22、L23は、上記(1)ポリエステル系重合体[I]におけるL12、L21、L22、L23と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0110】
前記ポリアミド系重合体を構成するDHA主骨格もしくはその二量体骨格を有する繰り返し単位(例えば、式(A1)で表される繰り返し単位、式(A2)で表される繰り返し単位及び式(A3)で表される繰り返し単位)の総含有率は特に制限されないが、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の総量を50モル%とした場合、耐熱性と密度の観点から、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
【0111】
前記ポリアミド系重合体は、式(A1)で表される繰り返し単位、式(A2)で表される繰り返し単位及び式(A3)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる2種以上のジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。ポリアミド系重合体がジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位2種以上を含む場合、それらの含有比率は目的に応じて適宜選択される。
またポリアミド系重合体が、ジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位を2種以上を含む場合、それらは同一の式で表される繰り返し単位であっても、それぞれ異なる式で表される繰り返し単位であってもよい。
【0112】
前記ポリアミド系重合体は、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を含むポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含むものであるが、必要に応じて、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を含まないその他のポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含んでいてもよい。
その他のポリカルボン酸化合物としては、ポリアミド系重合体を構成するのに通常用いられるポリカルボン酸化合物を特に制限なく用いることができ、例えば、合成高分子V(朝倉書店)P.63−91等に記載のポリカルボン酸化合物を用いることができる。
【0113】
その他のポリカルボン酸化合物としては例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類や、シクロへキサンジカルボン酸、ジシクロへキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ブラシル酸、マレイン酸、及びフマル酸等の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられる。
前記ポリアミド系重合体におけるその他のポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の含有率は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば、その他のポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の含有率は、前記ポリアミド系重合体を構成するポリカルボン酸化合物由来の繰り返し単位中に、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
【0114】
本実施形態のポリアミド系重合体は、上記DHA主骨格もしくはその二量体骨格からなる繰り返し単位を構成するモノマー(ポリカルボン酸)と、ジアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。この重合反応は公知の反応方法を適宜利用することができる。上記ポリカルボン酸化合物を得る方法は、(1)ポリエステル系重合体[I][II]で述べたようにロジンから得たアビエチン酸から誘導することができる。
【0115】
前記ポリアミド系重合体に適用することができるポリアミン化合物としては、ポリアミド系重合体の構成に通常用いられるポリアミン化合物を特に制限なく用いることができ、例えば、高分子データハンドブック基礎編(高分子学会編)(培風館)P.241〜257に記載のポリアミン化合物等が挙げられる。
【0116】
前記ポリアミン化合物としては、脂肪族ポリアミン化合物であっても、芳香族ポリアミン化合物であってもよい。また脂肪族ポリアミン化合物は鎖状であっても、環状であってもよい。
脂肪族ポリアミン化合物としては、鎖状のポリアミノアルキレン誘導体であっても、環状のポリアミノアルキレン誘導体であってもよく、さらに不飽和結合を含んでいてもよい。ポリアミノアルキレン誘導体の炭素数は特に制限されないが、耐熱性と成形性の観点から、2〜20であることが好ましく、2〜14であることがより好ましく、2〜10であることが更に好ましい。
【0117】
また芳香族ポリアミン化合物としては、ポリアミノアリーレン誘導体を挙げることができる。中でも耐熱性と成形性の観点から、炭素数6〜24のポリアミノアリーレン誘導体であることが好ましく、炭素数6〜18のポリアミノアリーレン誘導体であることがより好ましい。
【0118】
更に前記ポリアミン化合物は、脂肪族モノアミノ化合物に由来する基及び芳香族モノアミノ化合物に由来する基から選ばれる2種が、2価の連結基を介して結合してなるポリアミン化合物であってもよい。2価の連結基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基を挙げることができる。
【0119】
2価の連結基を構成するアルキレン基及びアルケニレン基は鎖状であっても、環状であってもよい。アルキレン基及びアルケニレン基が鎖状である場合、その炭素数は2〜6であることが好ましい。またアルキレン基及びアルケニレン基が環状である場合、その炭素数は5〜8であることが好ましい。
【0120】
前記ポリアミン化合物が、脂肪族モノアミノ化合物に由来する基及び芳香族モノアミノ化合物に由来する基から選ばれる2種が2価の連結基を介して結合してなる場合、ポリアミン化合物を構成する2つの脂肪族モノアミノ化合物に由来する基又は芳香族モノアミノ化合物に由来する基は互いに連結して環を形成してもよい。
更に前記ポリアミン化合物は置換基を有していてもよく、該置換基としては前記置換基Tを挙げることができる。
【0121】
以下に本発明に好ましく用いられるポリアミン化合物の具体例を示すが、発明はこれらに限定されない。
【0122】
【化26】

【0123】
本発明におけるポリアミン化合物は、耐熱性と成形性の観点から、炭素数2〜14のポリアミノアルキレン誘導体、炭素数6〜24のポリアミノアリーレン誘導体、並びに、脂肪族モノアミノ化合物に由来する基及び芳香族モノアミノ化合物に由来する基から選ばれる2種以上が連結基を介して結合してなるポリアミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、前記連結基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成されることが好ましい。
【0124】
前記ポリアミド系重合体における前記ポリアミン化合物由来の繰り返し単位は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリアミド系重合体が2種以上のポリアミン化合物由来の繰り返し単位を有する場合、それらの含有比率は目的に応じて適宜選択される。
【0125】
上記(1)ポリエステル系重合体[I]の製造方法や化合物の詳細については、特開2011−026569号公報を参照することができる。(2)ポリエステル系重合体[II]の製造方法や化合物の詳細については、特開2011−074249号公報を参照することができる。
【0126】
[透明絶縁層]
本発明の積層膜においては、上記特定重合体を含有してなる透明絶縁層を有する。この透明絶縁層の厚さは特に限定されないが、5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。この厚さを上記上限値以下とすることで、基板の軽量化、フレキシブル性を確保することができ好ましい。一方、上記下限値以上とすることで、支持性や強度を確保することができ好ましい。本発明における膜厚は、デジタルリニアゲージDG−525H(小野測器製)にて測定した値とする。測定は3箇所行い、その平均値を求める。
【0127】
上記透明絶縁層において特定重合体の含有量は特に限定されないが、固形分の全量に対して、1〜99質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましい。この量を上記上限値以下とすることで、支持体の特性を付与することができ好ましい。一方、上記下限値以上とすることで、耐熱性、耐湿耐水性を付与することができ好ましい。
【0128】
本発明においては、上記透明絶縁層の形成に前記特定重合体を含有するドープを用いることが好ましい。特定重合体を溶解するための溶媒は特に限定されないが、下記のような有機溶剤が挙げられる。有機溶剤にはキシレン、ナフタレン、トルエンの如き芳香族炭化水素、ジオクチルフタレート、ジメトキシオキシエチルフタレートあるいはジメチルフタレートの如きフタル酸エステル、トリフェニルフォスフェート、あるいはトリクレジルフォスフェートの如きリン酸エステル類、グリセロールトリアセテート、エチルフタリルエチルグリコレートあるいはメチルフタリルエチルグリコレートの如き多価アルコールエステル類、灯油やケロシンの如き鉱油、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン類、メチレンクロライド、クロロホルムあるいは1,1−ジクロルエタンの如きハロゲン化炭化水素類、酢酸メチルあるいは酢酸エチルの如きエステル類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)の如き窒素化合物などがある。
【0129】
これらの溶剤を単独あるいは二つ以上の溶剤による混合溶剤として用いることができる。上記ドープにおける特定重合体の含有量は特に限定されないが、ドープ全量に対して、1〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。この量を上記上限値以下とすることで、粘度を低く抑え塗布適性を確保することができ好ましい。一方、上記下限値以上とすることで揮散溶剤の量を低減することができ好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物中には、上記樹脂および溶剤のほかに、フィラー、酸化防止剤、UV吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤等を配合してもよい。添加量は樹脂組成物に対して、通常0.01質量%〜50質量%程度配合されるが、0.1質量%〜10質量%程度配合することが好ましい。より好ましくは0.5質量%〜10質量%程度配合することが望ましい。
【0130】
[積層膜]
本発明の積層膜は、耐湿耐水性、耐熱収縮性、低誘電率、高はんだ耐性、透明性、密着性を有することが好ましい。各項目における性能特性は実施例に示した方法で測定し評価することができる。
耐湿耐水性については、実施例に示した条件で1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、0.05%以上であることが実際的である。
耐熱収縮性については、実施例に示した条件で0.15%未満であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、0.01%以上であることが実際的である。
誘電率については、実施例に示した条件で3.5未満であることが好ましく、3.2以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、2.5以上であることが実際的である。周波数ごとにみると、上記範囲のなかでも、1MHzのときは上記同様であり、1GHzのときはさらに3.0以下であることが好ましく、10GHzのときはさらに2.8以下であることが好ましい。
誘電正接については、実施例に示した条件で0.011以下であることが好ましく、0.008以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、0.001以上であることが実際的である。
透明性を示す全光線透過率については、実施例に示した条件で50%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。下限値は特にないが、30%以上であることが実際的である。
【0131】
[支持体]
本発明に用いられる支持体には、耐熱性、透明性がよいことから、セルロースアシレート系フィルムが使用されることが好ましい。このセルロースアシレートは、炭素数2〜22程度の脂肪族カルボン酸エステル又は芳香族カルボン酸エステルであり、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。或いは、特開2002−179701号公報、特開2002−265639号公報、特開2002−265638号公報に記載の芳香族カルボン酸とセルロースとのエステルも好ましく用いられる。
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテートと後述するセルロースアセテートプロピオネートである。なお、これらのセルロースエステルは混合して用いることもできる。
【0132】
セルロースアシレートの置換度(DS)は、セルロースの構成単位(β1→4グリコシド結合しているグルコース)に存在している三つの水酸基がアシル化されている割合を意味する。置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、ASTM−D817−91に準じて実施する。
セルロースアシレートは、アシル基の疎水性と水酸基の親水性を適度にバランスさせることにより、光学特性の湿度依存性とフイルムの寸度安定性を両立させるものである。すなわち、アシル基中のアルキル鎖が平均的に短かすぎる、及び/又は水酸基比率が高すぎると光学特性の湿度依存性は大きくなってしまう。
また、アシル基中のアルキル鎖が平均的に長すぎる、及び/又は水酸基比率が高すぎるとTgが低下し、寸度安定性が悪化してしまう。
【0133】
したがって、本発明で好ましく用いられるセルロースアセテートは、アセチル化度が2.30以上3.00以下で炭素数3以上の他のアシル基を有しないものが好ましい。また、アセチル化度は、2.40以上2.95以下がより好ましい。
【0134】
また、セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基の置換度をYとしたとき、下記式(a)及び(b)を同時に満たすセルロースエステルである。
式(a):2.6≦X+Y≦2.9
式(b):0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は、通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
【0135】
支持体の厚みは、5〜300μmが好ましく、10〜150μmがより好ましい。基材フィルムの厚みが該下限値以上であれば、フィルム強度が弱くなるなどの問題が生じにくく、該上限値以下であれば、質量が増加しすぎて、特に20インチ以上の大型テレビに用いた場合に不利になるなどの弊害が生じにくいので好ましい
【0136】
セルロースアシレートフィルムの溶解液(ドープ)を支持体の形成に使用する場合、これを溶解又は膨潤させる性質を持った溶剤としては:
炭素数が3〜12のエーテル類:具体的には、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトール等、
炭素数が3〜12のケトン類:具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノン等、
炭素数が3〜12のエステル類:具体的には、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、及びγ−ブチロラクトン等、
2種類以上の官能基を有する有機溶媒:具体的には、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、N−メチルピロリドン、及びアセト酢酸エチル等が挙げられる。
【0137】
これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。透明基材フィルムを溶解する溶剤としてはテトラヒドロフランもしくはケトン系溶剤が好ましく、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが特に好ましい。
【0138】
透明基材フィルム(好ましくはトリアセチルセルロース)を溶解しない溶剤として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0139】
透明基材フィルムを溶解する溶剤の総量(A)と透明基材フィルムを溶解しない溶剤の総量(B)の質量割合(A/B)は、20/80〜100/0が好ましく、30/70〜100/0がより好ましく、40/60〜100/0が更に好ましい。
【0140】
上記セルロースアシレートを使用したフィルム材については、例えば、特開2004−284312号公報、特開2008−15483号公報等が参考になる。
【0141】
その他の支持体材料としては特に限定されないが、本発明においては、本発明の効果を総合的に引き出すために、前記セルロースアシレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、及びポリ乳酸から選ばれることが好ましい。ポリアミドとしては、ポリアミド樹脂ハンドブックに記載のポリアミドなどが上げられる。ポリエステルとしては、ポリエステル樹脂ハンドブックに記載のポリエステルなどが挙げられるが、特にポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートが透明性の観点で好ましい。ポリイミドとしては、市販のユーピレックス(宇部興産)やカプトン(東レ・デュポン)などの着色ポリイミドに加え、ネオプリム(三菱瓦斯化学)、オーラム(三井化学)、また特開2007−313739に開示の無色透明ポリイミドなどが挙げられる。ポリ乳酸としては三井化学社製 レイシア100(商品名)、などが挙げられる。なかでも、セルロースアシレート、ポリイミド、が好ましく、セルロースアシレートが特に好ましい。
【0142】
[積層方法]
フィルムを積層する方法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
【0143】
・ドライラミネート
接着剤を有機溶剤で適当な粘度に希釈してフィルムに塗布し、乾燥後もう一方のフィルムと圧着して貼り合わせる方法である。ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤などがあり、耐熱性、耐薬品性、深絞り適性など、使用する接着剤の特性でラミネートフイルムの性能を変化させることができる。
ドライラミネートには、有機溶剤で希釈する一般的な方法と、有機溶剤を使用しないで、加熱によって適当な粘度に調節後塗布する無溶剤タイプがある。また最近ではエマルジョンタイプ(水の中に接着剤を分散した水性タイプ)もある。
【0144】
・押出しラミネート
押出しラミネートには、フィルムの片面に溶融したPEをコーティングするポリラミと、フィルムとフィルムの間に溶融したPEを流し込むポリサンドラミがある。
【0145】
・ホットメルトラミネート
ドライラミネートは接着剤を有機溶剤に溶かして塗布するが、ホットメルトは接着剤を加熱しながら適切な粘度にして塗布する。乾燥工程が必要なく、冷却すればすぐに使用できる。機械設備も簡単で済む。ラミネート以外にホットメルト樹脂をコーティングすることもよく行われる。耐熱性がない、強度も低いなどの欠点はあるが、ヨーグルトのアルミ蓋材のイージーピール材などによく使用されている。
【0146】
・サーマルラミネート
樹脂の種類によっては接着剤を用いなくても熱をかけて圧着するだけで接着することができる。その接着力を利用して行うのがサーマルラミネートである。
【0147】
次に、共流延法による製造工程について説明する。
本実施形態においては、複数のドープがフィードブロック(図示せず)に送られ、流延ダイ31から流延ドラム34の上に複数の層で流延する(図4参照)。流延ドラムの表面は−12℃〜0℃の範囲で略一定に保持することが好ましい。流延ドラム34上にて流延ビードが冷却され、短時間の内にゲル状の流延膜44が形成される。ここでは3層の構成の例を示している。流延膜44は流延ドラム34の回転に伴い移動する。この移動中に冷却されることでゲル状が進行し流延膜44に自己支持性が付与される。これにより生産速度の高速化が可能となる。ここで、流延ドラム34とドープとの温度差を小さくするほどドープが効果的に冷やされるので流延膜の形成時間が短縮される。なお、冷却ゲル化により流延膜を形成させれば、乾燥風等により流延膜が自己支持性を持つまで乾燥する方法に比べて乾燥ムラがなく剥げ残りが発生し辛いので剥取性が向上する。
【0148】
流延ドラム34の回転速度は60m/分以上で保持されることが好ましい。これにより、生産速度を低下させずに安定した形状の流延ビード70を形成させて優れた平面性の流延膜44を得ることができる。なお、回転速度を大きくするほど、流延ドラム34の回転支持構造や高速回転時の同伴風抑制、或いは支持体自身の振動が生じるおそれがあるので、これらの程度を確認しながら回転速度を調節することが好ましい。支持体として流延バンドを用いる場合には、上記の回転速度は流延バンドの走行速度に等しい。なお、高速回転時における支持体の安定性は、流延バンドに比べて流延ドラムが優れており、本実施形態のように流延ドラムを用いれば、回転速度を80m/分以上として安定して流延膜44を形成することが可能である。
【0149】
自己支持性を持たせた流延膜44は剥取ローラ(図示せず)で支持されながら流延ドラム34から剥ぎ取られ湿潤フィルム(図示せず)とされる。溶媒を多量に含んだ湿潤フィルムは乾燥が促進された後に、テンタ(図示せず)に送られる。テンタでは、湿潤フィルムの両側端部にピンが差し込み固定した状態で搬送する間に乾燥を進める。ここで、対面するピンの間隔を調節することにより湿潤フィルムの幅方向に対して張力を付与することができる。
【0150】
乾燥が進められた湿潤フィルムはその両側端部が切断されてピンの突き刺しキズ等が取り除かれる。乾燥室では、湿潤フィルムが搬送される間に、その膜面温度が60〜145℃となるように加熱される。これにより、湿潤フィルムの乾燥が十分に進められてフィルム(図示せず)が得られる。この後、フィルムは冷却室で略室温まで冷却される。そして、強制除電装置で帯電圧が所定の範囲に調節された後に、ナーリング付与ローラによりナーリングが付与される。
【0151】
本実施形態においては、流延ダイ31によって3層状態が維持された表層ドープ70aと基層ドープ70bと支持体層ドープ70cとは、流延ダイ31の吐出口31aから流延ドラム34の上に共流延される。表層ドープ70aは、この中に含まれる固形分の濃度C1が18質量%以上20質量%以下の範囲であって、基層ドープ70bにおける固形分の濃度C2よりも2質量%以上5質量%以下で低くされたものが用いられることが好ましい。このように固形分の濃度C1が調節された表層ドープ70aは非常に流動性が高く表層44aにおける高いレベリング効果が実現できる。このため、表層44aでの斜めムラの発生が効果的に抑制される。ただし、表層ドープ70aの濃度C1が21質量%を超えれば、流動性が低下するので、有効なレベリング効果が得られない。一方で、C1が18質量%未満では安定した流延ビードを形成させることが難しい。このため、いずれの場合も斜めムラを防止することが難しい。ここで、C1が所定の範囲を満たしていてもC2より5質量%を超えて低い場合には、両者の流動性に大きな差が生じて同時流延が困難となるおそれがあり、一方で、2質量%未満ではレベリング効果が発現されないおそれがあるので不適である。また、表層ドープ70aの濃度C1よりも基層ドープ70bの固形分の濃度C2を高くすることで安定した流延ビード70を形成される。このため、流延膜44における平面性の低下を防止する効果が得られる。
【0152】
より良好なレベリング効果を得るには、表層ドープ70aの粘度を30Pa・s以上60Pa・S以下とすることが好ましい。上記の粘度はドープのせん断粘度として測定された値である。なお、粘度は、公知の粘度計で測定すれば良い。
【0153】
図4に示すように、本実施形態で形成する流延膜44は、表層44aと基層44b及び支持体層44cからなる内層44dとから構成される。ここで、表層44aの厚みt1(μm)が流延膜44の総厚みt(μm)の2%以上10%以下とすることが好ましい。前述したような濃度範囲を満たすドープを使用し、かつ流延膜の総厚みに対する表層44aの割合を制御すれば、流延直後の表層44aにおける高いレベリング効果が得られるので斜めムラの発生が効果的に抑制される。ただし、上記の割合が10%を超えたり2%未満であれば、表層が厚すぎたりかえって薄すぎたりするので、有効なレベリング効果を得ることができない。流延膜44を構成する各層の厚みは、例えば、ドープの流量や流延ドラムの回転速度等を制御することで好適に調節することができる。また、上記の膜厚の割合は(t1/t)×100で算出される値である。
【0154】
なお、内層は複層である必要はなく単層でも良い。この場合には、本実施形態における基層44bのみからなるものを内層としてもよい。ただし、本実施形態のように支持体層44cを設ければ、ここに剥離促進剤等を含ませることにより剥取性向上等の効果を得ることができる。
【0155】
本実施形態のフィルムの製造に係る流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶剤回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0156】
なお、ドライラミネートについては特開平10−34859号公報、押し出しラミネートについては特開2006−7547号公報が参考になる。その他、ホットメルトラミネート、ウェットラミネート、ワックスラミネート、サーマルラミネートも挙げられる。共流延法については上記のほか特開2008−254429号公報、コーティングについては、特開2007−152886号公報、特開2007−152887号公報が参考となる。
【0157】
<フレキシブルプリント基板>
・基本構造
図1は本発明の一実施形態における積層体10を模式的に示しており、図2はまた別の実施形態の積層体20を示す断面図である。1は透明絶縁層、2は透明支持層を示す。さらに、本発明における一実施形態のフレキシブルプリント基板(FPC)100として、透明絶縁積層体(基材フィルム層)10、導電材層(金属箔層)12、接着剤層13、およびオーバーコート層(カバーフィルム層)11を含む構成をあげることができる(図3参照)。ただし、本発明はこれに限定されず、FPCとして採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の4層のみから構成されるFPCであってもよい。また例えば、基材フィルム層、接着剤層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の5層から構成されるFPCであってもよい。
【0158】
さらに、必要に応じて、上記のFPCを2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。このような場合には、例えば、上記4層タイプのFPCまたは5層タイプのFPCを複数積層し、必要に応じて、FPCとFPCとの間を接着剤で接着することが可能である。また例えば、上記4層タイプのFPCまたは5層タイプのFPCを2つの基材フィルム層の底部どうしを接着剤層により接着して、背中合わせに張り合わせた形態とすることもできる。
【0159】
その他、例えば、上記5層タイプのFPCを用いれば、第1のFPCのカバーフィルム層、第1のFPCのカバーフィルム側の接着剤層、第1のFPCの金属箔層、第1のFPCの基材フィルム側の接着剤層、第1のFPCの基材フィルム層、第1のFPCと第2のFPCとの基材フィルムどうしを接着する接着剤層、第2のFPCの基材フィルム層、第2のFPCの基材フィルム側の接着剤層、第2のFPCの金属箔層、第2のFPCのカバーフィルム側の接着剤層、および第2のFPCのカバーフィルム層、の合計11層が順に積層される構成とすることができる。
・導体層
本実施形態に用いられる導体層としては、回路基板に使用可能な任意の導電性材料が使用可能であり、例えば、金属箔が使用可能である。また、金属箔としては、従来公知の任意のものが使用可能である。材質としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、スチール箔、およびニッケル箔等を挙げることができ、これらを複合した複合金属箔や亜鉛やクロム化合物等の他の金属で処理した金属箔についても用いることができる。またITO等の透明導電膜を用いることで透明のFPCを形成することも可能である。
【0160】
導体層となる金属箔の厚みについては特に限定はないが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。厚さが薄すぎる場合には、回路の充分な電気的性能が得られにくい場合があり、一方で、厚さが厚すぎる場合には、回路作製時の加工能率等が低下する場合がある。
【0161】
金属箔は、通常、リボン状の形態で提供されているが、本発明のFPCを製造する際に使用される金属箔の形態は特に限定されるものではない。リボン状の形態の金属箔を用いる場合には、その長さは特に限定されるものではない。また、リボン状の金属箔の幅も特に限定されないが、一般には25〜300cm程度が好ましく、特に50〜150cm程度であることが好ましい。
【0162】
・接着剤層
本実施形態のFPCにおいては接着層を使用しないが、各層間の密着性を高めるために接着剤層を使用してもよい。接着剤層の配置としては、例えば、基材フィルム側、すなわち、基材フィルムと導体層との間、あるいは、カバーフィルム側、すなわち、カバーフィルムの一部等が挙げられる。接着剤層を構成する接着剤としては、FPC用の接着剤として従来公知の接着剤が使用可能であるが、本発明においては、透明性の高い接着剤を用いることが望ましい。このような接着剤としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤等を挙げることができる。これらのなかでは、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを含む接着剤を用いることが好ましい。エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを併用することにより、熱サイクルによって歪みが発生する可能性のあるエポキシ樹脂の内部歪をアクリル樹脂が吸収し、得られる接着剤硬化物にたわみ性を付与できるとともに、透明性を良好なものとすることができる。
なお、基材フィルム側の接着剤とカバーフィルム側の接着剤は、それぞれが違っていてもよいが、同一の接着剤を使用することが好ましい。
【0163】
接着剤層の厚さは、FPCの性能を発揮するのに支障がない限り特に限定されない。絶乾後の厚さとして、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。厚さが薄すぎる場合には、充分な接着性が得られにくい場合があり、一方で、厚さが厚すぎる場合には、加工性(乾燥性、塗工性)等が低下する場合がある。
【0164】
プリント基板を構成する際の金属(銅箔)の積層等は、特開2007−313739、特開2008−101068、特開2006−54239、特開2010−238720等を参照することができる。なお、金属に直接コーティングしてもよいし、フィルムを作成して接着剤を介して張り合わせてもよい。
【0165】
本発明の積層体においては、上述したトリアセチルセルロース(TAC)やジアセチルセルロース(DAC)にデヒドロアビエタン主骨格(DHA主骨格)を有するポリマーを積層し、透明性を損なわず、耐熱性、透湿性、密着性を改善することができる。これにより、上記フレキシブルプリント基板をはじめ、表示デバイス等の光学フィルムや保護フィルム、各種産業用途における透明部材など、広い分野で、多岐にわたる用途において優れた性能を発揮させることができる。
【実施例】
【0166】
以下に、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0167】
<合成例1> DAAモノマー合成
デヒドロアビエチン酸重合体の合成に用いる12−カルボキシデヒドロアビエチン酸(a−1)を、下記合成経路に従って合成した。
【0168】
【化27】

【0169】
92%デヒドロアビエチン酸((A),荒川化学工業製)60.0gと塩化メチレン120mlの混合物に、塩化オキサリル26.8gを室温で滴下した。3時間撹拌した後、溶媒を減圧留去し、そこにメタノール32.0gを滴下した。室温で3時間撹拌後、過剰のメタノールを減圧留去し、化合物(B)の白色結晶62.8gを得た。
【0170】
化合物(B)62.8g、塩化アセチル18.8gおよび塩化メチレン160mlの混合物に無水塩化アルミニウム58.6gを少量ずつ3〜5℃で加えた。5〜8℃で2時間撹拌した後、反応液を1000gの氷水に注いだ。酢酸エチル400mlを加えて有機層を抽出した。食塩水で洗浄、無水塩化マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、残渣に冷メタノール100mlを加えて析出した化合物(C)の白色結晶をろ取した(収量65.6g)。
【0171】
水酸化ナトリウム64.0gを水200mlに溶かし、そこに臭素51.2gを8〜10℃で滴下した。さらに、化合物(C)35.6gをジメトキシエタン200mlに溶かした液を10〜12℃で滴下した。室温で2時間攪拌した後、反応液を6N冷希塩酸に注いで酸性とし、析出した白色結晶を濾取した。結晶をメタノールから再結晶して化合物(D)の結晶29.8gを得た。
【0172】
化合物(D)20.4gに対して10wt%水酸化ナトリウム水100gを加えて攪拌した。その後、反応系を外設130℃にて昇温し、緩やかに還流させた。そのまま3時間攪拌し、反応を薄層クロマトグラフィーにてチェックした後、反応系の温度を室温まで冷却した。冷却した1N塩酸250mLに反応系の内容物をゆっくりと添加し、酸析させた。そのものをヌッチェにてろ取し、水をかけ洗いすることでろ液を中性にした。固体を取り出し、乾燥させることで12−カルボキシデヒドロアビエチン酸(a−1)19.2gを得た。
【0173】
<合成例2>
【0174】
【化28】

【0175】
化合物(a−1)の結晶13.76gを塩化メチレン160mlに分散し、塩化オキサリル11.18gおよびジメチルホルムアミド0.6mlを加えて5時間加熱還流した。この間結晶は完全に溶解した。放冷後、溶媒を減圧留去し、残渣に酢酸エチル20mlとn−ヘキサン60mlを加え、化合物(a−1)の酸クロリド(a−1’)の白色沈殿を濾取、減圧乾燥した。収量は13gであった。
【0176】
ジカルボン酸(a−2)を、下記合成経路に従って合成した。
【0177】
【化29】

【0178】
92%デヒドロアビエチン酸(上記化学式(A)、荒川化学工業製)120g、36%ホルマリン20ml及び塩化メチレン200mlの混合物に、10〜15℃でトリフルオロ酢酸200mlを滴下した。15〜20℃で8時間攪拌した後、塩化メチレンとトリフルオロ酢酸を減圧留去した。残渣に水2lを加え、灰白色結晶を濾過、十分に水洗した。乾燥後、1lの熱n−ヘキサンを加えて1時間攪拌し、放冷後、(a−2)の白色結晶を濾取した。収量は118gであった。
【0179】
<合成例3>
【0180】
【化30】

【0181】
500ml三口ナスフラスコに、化合物A(デヒドロアビエチン酸)(42.0g,0.140mol)、無水コハク酸(20.7g,0.207mol)を入れ、塩化メチレン(240ml)に溶解させた。反応系に無水塩化アルミニウム(63.6g,0.477mol)を10〜15℃で少量ずつ加えた。室温で3時間攪拌した後、反応液を氷水に添加し、塩化メチレンで抽出、分液、有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物にメタノールを加えて晶析、かけ洗いし、化合物(a-3)(48.0g,0.120mol,85.7%)を得た。
【0182】
<合成例4>
【0183】
【化31】

【0184】
1L三口フラスコにデヒドロアビエチン酸ジメチルエステル(a−1”)58.1g(0.156mol)及びテトラヒドロフラン500mlを加え、窒素雰囲気下、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムのトルエン溶液(Sigma-Aldrich製)を108g(0.374mol)を滴下した。滴下時は水冷にて30℃程度に反応系内の温度を保った。室温にて3時間攪拌したのち、酢酸エチル/希塩酸水にて分液洗浄を行った。硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムを用いて、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒にて精製を行うことで、化合物(b−6)43.0gを得た(収率87%)。
【0185】
<合成例5> ポリマーの合成
以下のスキームに従ってポリエステル系重合体(PE−1)を合成した。
【0186】
【化32】

【0187】
ハイドロキノン5.78g、N,N’−ジメチルアミノピリジン13.5gをNMP(N-メチルピロリドン)150mlに溶解させた。系内の温度を10℃まで冷却し、そこに上記で得られたジカルボン酸化合物(a−1)の酸クロリド誘導体(a−1’)20.0gを少量ずつ加えた。反応液は徐々に粘稠となった。室温で8時間撹拌した後、反応液にメタノール1Lを加え、生成したポリマーを濾別、メタノールで洗浄した。得られたものを乾燥後、THF100mlに加熱溶解し、メタノール1000mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。再沈殿物を回収し、乾燥後、PE−1の白色固体21.5gを得た。得られたポリエステル系重合体(デヒドロアビエチン酸重合体、PE−1)のGPC測定(溶媒:NMP)による重量平均分子量は74,000であった。
【0188】
上記PE−1の合成例において、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物を下記表1に記載した化合物にそれぞれ変更したこと以外は同様にして、ポリエステル系重合体(PE−2)〜(PE−10)を得た。
【0189】
(合成例6)
ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン(c−1)3.78gをNMP180mlに加え、窒素雰囲気下、45℃に加熱して溶解させた。この液を15℃まで冷却し、そこに上記ジカルボン酸化合物(a−1)の酸クロリド誘導体(a−1’)13.35gを少量ずつ加えた。反応液は徐々に粘稠となった。室温で2時間撹拌した後、反応液にメタノール200mlを加え、生成したポリマーを濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、ジメチルホルムアミド100mlに加熱溶解し、メタノール1000mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。乾燥後、PA−1の白色固体14.3gを得た。
【0190】
前記合成例において、ジアミン化合物をc−2に記載した化合物に変更したこと以外は同様にして、ポリアミド系重合体(PA−2)を得た。
【0191】
【表1】

*1 ジカルボン酸化合物については酸クロリド誘導体として合成に用いた。
*2 PA−1、PA−2はジアミン化合物を用いた。
【0192】
表1中、ジカルボン酸化合物、ジオール化合物、ジアミン化合物における括弧内の数字は、ポリエステル系重合体およびポリアミド系重合体製造時の仕込み量(モル%)を示す。なお、ジカルボン酸化合物、ジオール化合物、ジアミン化合物の総量を100モル%とした。また以下にジカルボン酸化合物、ジオール化合物、ジアミン化合物の構造を示す。
【0193】
【化33】

【0194】
(実施例1・比較例1)
上記で得られたポリエステル系重合体PE−1をメチレンクロライドに10%の濃度で溶解させ、これを対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で加圧ろ過してドープを作製した。作製したドープをドクターブレードを用いて、銅箔上に流延した。流延後、40℃で30分、100℃で30分加熱乾燥させ、透明絶縁層を形成した。引き続き、同様にして作成したセルロースアセテート(アセチル置換度2.95、ダイセル化学製)をメチレンクロライドに溶解して10%の支持体形成用ドープとし、これを銅箔/PE−1積層フィルム上に流延し、40℃で30分、100℃で30分加熱乾燥させ、銅箔/PE−1/セルロースアセテート積層フィルムFPC−101を得た。このとき支持体の厚さは50μmであった。
上記と同様にして、ポリエステル系重合体PE−2〜PE−8用いて、同様にして積層フィルムFPC−102〜FPC−110を作製した。
【0195】
銅箔/PE−1積層体に積層する基材をセルロースアセテートからポリ乳酸(三井化学 レイシア100)に、また塗布溶剤をクロロホルムに変更し積層フィルムFPC−111を作製した
【0196】
銅箔/PE−1積層体に積層する基材をセルロースアセテートから特開2007−313739の実施例に従いポリイミドに変更し積層フィルムFPC−112を作製した
【0197】
上記で得られたポリアミド系重合体PA−1をN−メチル−2−ピロリドンに10%の濃度で溶解させ、これを対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で加圧ろ過してドープを作製した。作製したドープをドクターブレードを用いて、銅箔上に流延した。流延後、100℃で120分加熱乾燥させた。引き続き、セルロースアセテート(アセチル置換度2.95、ダイセル化学製)のメチレンクロライド10%ドープを銅箔/PA−1積層フィルム上に流延し、40℃で30分、100℃で30分加熱乾燥させ、銅箔/PA−1/セルロースアセテート積層フィルムFPC−201を得た。
【0198】
ポリアミド系重合体PA−2を用いて、同様にして積層フィルムFPC−202を作製した。
【0199】
(比較例)
セルロースアセテート(アセチル置換度2.95、ダイセル化学製)のメチレンクロライド10%ドープを銅箔上に流延し、40℃で30分、100℃で30分加熱乾燥させ、銅箔/セルロースアセテート積層フィルムFPC−c11を得た。また、銅箔をガラス基板に変更し、セルロースアセテートの単膜F−c11を得た。
【0200】
特開2008−158483の実施例に従い塗工液を作製し、銅箔上に塗布しフレキシブルプリント基板FPC−c12を作製した。また、銅箔をガラス基板に変更し、PVDF/セルロースアセテートの積層膜F−c12を得た。
【0201】
特開2007−313739の実施例に従いポリイミドを用いたベースフィルムF−c13、及びフレキシブルプリント基板FPC−c13を作製した。
【0202】
特開2010−238720の実施例に従いポリエチレンナフタレートを用いたベースフィルムF−c14及び、フレキシブルプリント基板FPC−c14を作製した。
【0203】
市販のポリイミド製樹脂フィルム(宇部興産社製、商品名 ユーピレックス50S)を用いたベースフィルムF−c15及び、フレキシブルプリント基板FPC−c15を作製した。
【0204】
実施例1同様に銅箔上にPE−1ドープを流延した後、すぐさま塗布面にPETフィルム(東洋紡製、コスモシャインA4100:100μm)を張り合わせ、40℃で30分、100℃で30分加熱乾燥させ、銅箔/PE−1/PET積層フィルムFPC−113を得た。PE−1層の厚みは10μmとした。
なおPETフィルム単独でF−c16とした。
【0205】
FPC−113においてPETをポリアリレート(PAR)フィルム(ユニチカ製、U−100:100μm)に変更し、同様に積層フィルムを作製した(FPC−114)。
なおPARフィルム単独でF−c17とした。
【0206】
FPC−113においてPETをポリカーボネート(PC)フィルム(帝人製、ピュアエース:100μm)に変更し、同様に積層フィルムを作製した(FPC−115)。
なおPCフィルム単独でF−c18とした。
【0207】
銅箔を各フィルム(PET、PAR、PEN、PC)に変更し、同様のプロセスにて積層フィルムF−101〜F−115、F−201、F−202を得た。
【0208】
−評価方法−
前記実施例及び比較例の樹脂フィルムについて、下記の評価を行った。
【0209】
<耐湿耐水性(吸水%)>
得られた積層フィルムについて、23℃の水浴に24時間浸漬し、質量の増加率を測定した。
【0210】
<熱収縮>
得られた積層フィルムについて、熱機械分析(SIIナノテクノロジー社製、TMA/SS7100)を用い、引っ張りモードで、昇温5℃/min、260℃1時間保持、降温5℃/minの温度プログラム後におけるフィルムの収縮を測定した。
【0211】
<誘電率(LCR法)>
得られた積層フィルムについて表面に直径20mmの金電極を蒸着、誘電緩和測定はAlpha−Aアナライザ(Novocontrol社製)を用い、1MHzにおける誘電率(1)と誘電正接(1)を求めた。測定温度は室温(約25℃)とした。
【0212】
<誘電率(空洞共振器摂動法)>
得られた積層フィルムについて1.5mm×80mmを切り出し、ネットワークアナライザ E8363B (アジレントテクノロジー製)、空洞共振器 CP431(1GHz用)、CP531(10GHz用)(関東電子応用開発製)を用い、1GHz、10GHzにおける誘電率(2−1)(2−2)を求めた。測定温度は室温(約25℃)とした。
【0213】
<はんだ耐性>
得られたフレキシブル基板の金属箔をエッチング加工しパターンを作成したサンプルを23℃、65%RHで調湿した。その後、260℃、及び320℃のはんだ浴に浸漬し、白濁、剥がれ、膨れなどの故障の有無を観察した。浸漬時間は60秒とした。
A:白濁、剥がれ、膨れなどの故障なし
B:白濁、剥がれ、膨れなどの故障あり
【0214】
<透明性>
積層フィルムについて、JIS規格 K6714−1958に準じ、全光線透過率Tt(%)を測定した。
85%以上をAとした
85%未満50%以上をBとした
50%未満をCとした
【0215】
<密着性>
フィルムの層間、あるいは支持体と塗布層との密着性は以下の方法により評価した。
塗布層を有する側の表面にカッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを1mm間隔で入れて合計100個の正方形の升目を刻み、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(NO.31B)を圧着し、24時間放置後引き剥がす試験を同じ場所で繰り返し3回行い、剥がれの有無を目視で観察する。
A:剥がれが無い
B:一部に剥がれがあるが実用上で問題が無い
C:全面に剥がれがある
【0216】
<総合評価>
上記全評価項目の結果を総合し、フレキシブルプリント基板等としての性能を下記基準で評価した。
A:高い要求レベルにも好適に対応することができる
B:一般的な要求レベルに対応することができる
C:一般的な要求レベルであっても対応することが難しい
【0217】
【表2−1】

【0218】
【表2−2】

【0219】
【表2−3】

【0220】
TAC:トリアセチルセルロース
PET:ポリエチレンテレフタレート(コスモシャインA4100)
PC:ポリカーボネート(ピュアエース)
PAR:ポリアリレート(U−100)
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PI−1:ポリイミド(特開2007−313739の実施例)
PI−2:ポリイミド(ユーピレックス50s)
PEN:ポリエチレンナフタレート
PLA:ポリ乳酸
【0221】
上記表の要求レベルは、フレキシブルプリント基板等における要求を満足する性能レベルを示したものである。これは一例にすぎず、本願発明がこれに限定して解釈されるものではない。また、フレキシブルプリント基板以外の光学フィルム等のアプリケーションによっては、このレベルは変わりうる。
【0222】
上記の結果からわかるとおり実施例(本発明の積層膜)によれば、植物起源の化合物を利用することによる環境適合性を有し、耐熱性、耐湿耐水性、密着性、透明性のすべてを満足することができフレキシブルプリント基板等のアプリケーションに対応することができることがわかる。特に、ポリエステル系重合体(I)において特定の構造をもつもの(試験No.101〜107)は極めて高い性能を示し、シビアな条件や高い市場ニーズが課されるアプリケーションにも好適に対応することができることがわかる。
【0223】
(実施例2・比較例2)
試験101に用いたPE−1を下表のとおりに変えた以外同様にして、はんだ耐性試験および密着性試験を行った。その結果、いずれの試験体においても、はんだ耐性(260℃)、密着性で「A」もしくは「B」の結果が得られた。なお、下表では、ジカルボン酸化合物については、同化合物由来の繰り返し単位として、一般式およびその連結基により当該構成単位を特定している。
【0224】
【表3−1】

【0225】
【表3−2】

【0226】
【表4−1】

【0227】
【表4−2】

【符号の説明】
【0228】
1 透明絶縁層
2 透明支持層
10、20 透明絶縁積層体
11 オーバーコート(カバーフィルム層)
12 導電材層(金属箔層)
13 接着剤層
100 フレキシブルプリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体の少なくとも片面側に透明絶縁層を有する透明絶縁積層体であって、前記透明絶縁層が、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を主鎖に含む特定重合体を含有する透明絶縁積層体。
【請求項2】
前記デヒドロアビエチン酸に由来する骨格が下記式(U)で表される構造を含む請求項1に記載の透明絶縁積層体。
【化1】

(R及びRは炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはアルキレン基を表す。nは0〜3を表す。mは0〜5を表す。環Cyはヘテロ原子を含んでもよい飽和もしくは不飽和の6員環もしくは7員環を表す。式中、*,**は主鎖に組み込まれる結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。)
【請求項3】
前記デヒドロアビエチン酸に由来する骨格が下記式A1又はA2で表される繰り返し単位である請求項1または2に記載の積層体。
【化2】

(式中、L11、L12、L21、L22、及びL23は、2価の連結基を表す。*は主鎖に組み込まれる結合手を表す。)
【請求項4】
前記式A1中、連結基L11が式中2位で示される炭素原子と結合した請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記式A2中、連結基L23が式中2位及び2’位で示される炭素原子と結合した請求項3に記載の積層体。
【請求項6】
式A1中のL11が、*−L13−CO−**または*−CO−L13−**(*はヒドロフェナントレン環側の結合手を表す。**はその逆の結合手を表す。)で表され、L13が、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、酸素原子、カルボニル基、又は単結合であり、L12がカルボニル基もしくはカルボニルオキシ基である請求項3または4に記載の積層体。
【請求項7】
式A2中のL21及びL22がカルボニル基もしくはカルボニルオキシ基であり、L23が酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、又は単結合である請求項3または5に記載の積層体。
【請求項8】
さらに、前記特定重合体が、ポリオール化合物由来もしくはポリカルボン酸由来の共重合成分む請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記共重合成分が、下記式(II)で表される請求項8に記載の積層体。
【化3】

[Gはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、またはこれらを組み合わせた連結基を表す。X、Y、Zはそれぞれ独立に、−O−、−S−、−NR−、−(C=O)−、−O(C=O)−、−(C=O)O−、−(C=O)NR−、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。Rは水素原子もしくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基を表す。*は主鎖に組み込まれる結合手である。mzは0〜3の整数である。]
【請求項10】
前記式(II)が下記式(B1)で表される請求項9に記載の積層体。
【化4】

(Lは、酸素原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、又は単結合である。Lが複数存在するとき、そのそれぞれは同じでも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。R及びRが複数存在するとき、そのそれぞれは同じでも異なっていてもよい。n1及びn2はそれぞれ独立して0〜4の整数を表す。n3は0〜2の整数を表す。*は主鎖に組み込まれる結合手を表す。)
【請求項11】
前記透明支持体が、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、及びポリ乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するものである請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の積層体と導電性膜とを具備するプリント基板。
【請求項13】
透明支持体の少なくとも片面側に設けて利用される透明絶縁膜であって、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を主鎖に含む特定重合体を含有してなる透明絶縁膜。
【請求項14】
透明支持体の少なくとも片面側に設けて利用される透明絶縁膜形成用ドープであって、デヒドロアビエチン酸に由来する骨格を主鎖に含む特定重合体を有機溶媒中に溶解したドープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28162(P2013−28162A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139186(P2012−139186)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】