説明

透水平板及びその製造方法

【課題】曲げ強度と透水性の上昇という相反する性質を確保しつつ、さらに効率的に製造できる透水平板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材同士が接合された透水性の表層と、ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材同士が接合された基部層とを含み、表層と基部層とは、ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして接合され、透水率が0.1cm/秒以上であり、かつ、曲げ強さが4MPa以上である。振動を与えつつ基部層用ブロック材料充填工程(10)、型締め工程(20)、表層用ブロック材料充填工程(30)及び成形工程(40)を順次行うことにより得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透水性に優れかつ曲げ強さの大きい透水平板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、透水平板は、降雨時において雨水がブロック内を速やかに移動し、ブロック表面に水たまりなどを生じさせにくいため、歩行者用道路などの舗装材として広く用いられている。
【0003】
このような透水平板の中で、歩車道向けの舗装用コンクリート製品として、インターロッキングブロック(商品名)が市販されている。そして、このインターロッキングの品質規格では、3.0MPa以上の曲げ強度、0.01cm/秒以上の透水係数である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一般に、透水性舗装材において、曲げ強度は高ければ高いほど好ましく、また、透水係数も大きい方が好ましいが、透水性を向上させようとすると、より多孔質な構造をとらざるを得ず、強度が不足するなどの問題がある一方で、強度の向上を図ろうとするとブロックの構造を緻密化せざるを得ないため、透水性が低下する傾向にある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
例えば、骨材の粒子径を小さくすれば、曲げ強度が増大することが知られているが、曲げ強度を増大させた場合には透水係数が低下している(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
また、セメントにポリマーバインダを付与すれば、曲げ強度が増大することが知られているが、量を増大させると透水性が大幅に低下することが指摘されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
本出願人は、独自の手法によりこのような曲げ強度及び透水性に優れた透水平板の製造方法について既に提案している(例えば、特許文献5参照。)。
【0008】
この手法による透水平板は、例えば、表層用ブロック材料と下層用ブロック材料がそれぞれ別々に混合され、表層用ブロック材料、下層用ブロック材料の順に型枠内に投入された後、型締め機械により振動締固めを行うことにより成形される。その型締めされたブロックは、直ぐに又は一昼夜室内で養生が行われた後に脱型される。セメント分硬化後に表面を研磨することにより、外観の良好な表面層を備えた2層構造からなる透水平板が作成されている。
【0009】
また、このような透水平板に対して、その表面に光触媒として機能するNOx除去用の触媒を保持させる場合には、バインダ中に酸化チタンスラリーを混合して透水平板を製造するか、又は、得られた透水平板の表面に対して酸化チタンスラリーを噴霧し、自然乾燥などにより酸化チタンスラリーを骨材間に付着させていた(例えば、特許文献6参照。)。
【特許文献1】特開2003−206504号公報
【特許文献2】特開2001−342055号公報
【特許文献3】特開2001−182003号公報(0015段落)
【特許文献4】特公平47−7−99002号公報(第2頁右欄)
【特許文献5】特開平5−24955号公報(実施例及び図2)
【特許文献6】特開2001−90004号公報(実施例1及び実施例2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、環境への配慮から、透水平板が各種の場面で採用され、高い曲げ強度と高い透水係数を有する透水平板の安価な提供が望まれている。
【0011】
さらに、車道に面して使用される透水平板では、光触媒として機能するNOx除去用の触媒機能が付与されることが望ましく、また、そのような光触媒機能が付与された透水平板においても、高い曲げ強度と高い透水係数に加えて透水平板の製造効率が高められることが要求される。
【0012】
光触媒が含まれるバインダを用いて透水平板を製造する場合には、光触媒をバインダへ混入させる為の工程を除いては特別の工程を必要としないので、生産効率を大幅に低下させることはないが、透水平板の表面に露出する光触媒の割合が極端に少なく、実用的な光触媒性能を付与させるには、多量の光触媒が必要となり、高価格となるという課題がある。
【0013】
これに対して、得られた透水平板の表面に対して酸化チタンスラリーを噴霧し、自然乾燥などにより酸化チタンスラリーを骨材間に付着させる方法は、少量の光触媒の使用により高い光触媒機能は得られるが、光触媒機能を持たせるために、触媒の付与と乾燥工程との二工程が新たに追加必要となるという課題がある。
【0014】
また、酸化チタン粉末は、粒子状の酸化チタンから形成されているが、非常に微細な粒子であり、安定な分散体(酸化チタンスラリー)を作り出す技術が高度であり、製造コストが高まるか、または、安定な分散体を用いない場合には緻密でかつ密着性に優れた酸化チタン膜を形成することが困難となる場合があった。
【0015】
そこで、この発明の第1の目的は、曲げ強度と透水性の上昇という相反する性質を確保しつつ、さらに効率的に製造できる透水平板及びその製造方法を提供することにある。
【0016】
また、この発明の別の目的は、第1の目的が解決できる透水平板及びその製造方法において、光触媒として機能するNOx除去用の触媒を透水平板に付与させる場合においても、製造効率を低下させることなく、かつ、少ない光触媒の使用により光触媒機能を確実に発揮できる透水平板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上述の課題を解決するために鋭意研究した結果、コンクリートブロック製品を製造するための型締め機能及び振動機能を備えた成形装置、及び、ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとした表層用及び基部層用のブロック材料を用い、成形装置により振動を与えつつ型枠内に基部層用ブロック材料を充填して型締めし、ついで振動を与えつつ型枠内に表層用ブロック材料を充填して型締めし、ついで、脱型した成形物の表層部の表面を湿式研磨機および超高圧加工機を用いて加工する方法を採用することにより、曲げ強度と透水性の上昇という相反する性質を確保しつつ、製品表面に不透水性層を形成せずに透水性の表層を直接成形できるので効率的に透水平板を製造できることを見出した。
【0018】
また、このような製造方法によれば、型締め後、脱型前の適宜の段階で光触媒として機能するNOx除去用の触媒を噴霧すれば、養生工程と乾燥工程とを兼用できること、また、光触媒は表面付近に沈積できることにより光触媒の使用量を減少させることができ、かつ、光触媒は未硬化のセメント成分と固着しやすいことなどにより透水平板として繰り返し使用した場合にも、光触媒の脱落の少ない透水平板が得られることを見出した。
【0019】
すなわち本発明は、ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材同士が接合された透水性の表層と、ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材同士が接合された基部層とを含み、表層と基部層とは、ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして接合され、透水率が0.1cm/秒以上であり、かつ、曲げ強さが4MPa以上であることを特徴とする透水平板である。
【0020】
このような透水平板は、例えば、表層用ブロック材料及び基部層用ブロック材料を用い、振動を与えつつ型枠内に基部層用ブロック材料を充填する基部層用ブロック材料充填工程、充填後直ちに振動を与えつつ充填物に圧縮力を作用させて締め固めする型締め工程、型締め工程後直ちに振動を与えつつ型枠内に表層用ブロック材料を充填する表層用ブロック材料充填工程、充填工程後直ちに振動を与えつつ充填物に圧縮力を作用させて成形する成形工程を順次行い、その後、成形物を型枠から脱型する脱型工程、成形物を養生させる養生工程を組み合わせて行うことにより透水平板を得ることができる。
【0021】
ここで、表層用ブロック材料は、ポリマー増粘剤が混和されたセメントC、セメントCの総質量に対する質量割合(W/C)が0.20〜0.35の範囲内にある水(W)及び粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の表層用骨材とを含んで構成される。また、基部層用ブロック材料は、ポリマー増粘剤が混和されたセメントC、セメントCの総質量に対する質量割合(W/C)が0.20〜0.35の範囲内にある水(W)及び粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の基部層骨材とを含んで構成される。
【0022】
基部層用ブロック材料充填工程は、3000回転/分〜4000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で、1秒〜3秒の範囲内の材料供給時間により行われることが好ましい。また、型締め工程は、15kg/cm2〜50kg/cm2の範囲内の型締め圧力で1500回転/分〜2000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で0.1秒〜1秒の範囲内の時間型締めされることが好ましい。また、表層用ブロック材料充填工程は、3000回転/分〜4000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で、1秒〜3秒の範囲内の材料供給時間により行われることが好ましい。さらに、成形工程は、15kg/cm2〜50kg/cm2の範囲内の型締め圧力で1500回転/分〜2000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で2秒〜5秒の範囲内の時間型締めされることが好ましい。
【0023】
また、バインダには白華防止剤を含み、ポリマー増粘剤は、アクリル系樹脂であることが好ましい。また、この場合の白華防止剤としては、例えば、脂肪酸陰イオン界面活性剤が好ましい。脂肪酸陰イオン界面活性剤は、アクリル系樹脂の増粘効果を維持することができる。
【0024】
また、表層を構成する表層用バインダの表面側には、NOx除去用触媒としての酸化チタンが固着していることが好ましい。このような固着は、成形工程後であって、養生工程前に、表面側から光触媒として機能する酸化チタンを付与する酸化チタン付与工程を行った後、養生を行うことにより得られる。
【0025】
このように養生を行う前の段階で付与された酸化チタンは、養生工程でセメント材料に固着させることができる。
【0026】
また、本発明においては、このような酸化チタン触媒の薄層は、養生工程後の適宜の段階で付与することにより、その表面にNOx除去用触媒としての酸化チタンを主成分とする薄層を付与することができる。
【0027】
このような酸化チタン付与工程は、例えば、酸化チタンを含むスラリーの所定量を噴霧等により付与させることにより行うことができる。
【0028】
ここで、本発明においては、酸化チタンを含むスラリーに代えて、ペルオクソチタン酸イオン水溶液を使用したり、チタン塩水溶液を付与後に過酸化水素水を付与して光触媒として機能する酸化チタン膜を成膜してもよい。これにより、養生工程前のセメントが有するアルカリ性に反応してペルオクソチタン酸イオン水溶液が酸化チタン膜を成膜したり、また、同様に養生工程前のセメントが保有するアルカリ性に反応したチタン塩水溶液が、さらに過酸化水素水と反応して光触媒として機能する酸化チタン膜を成膜することができる。
【0029】
いずれの場合にも、得られた酸化チタン膜は、透水平板の表面側に固着しているので、降雨と日照との繰り返しによってもNOx除去用触媒としての酸化チタンが流されることなく、長期間にわたって光触媒効果を維持することができる。
【0030】
また、表層には、その表面にNOx除去用触媒としての酸化チタンを主成分とする薄層を有していることが好ましい。
【0031】
また、本発明においては、このような酸化チタン触媒の薄層は、養生工程後の適宜の段階で付与することにより、その表面にNOx除去用触媒としての酸化チタンを主成分とする薄層を付与したり、酸化チタンを固着させことができる。
【0032】
例えば、養生工程後の適宜の段階で、表面側から光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタンを含むスラリーを噴霧などにより付与することにより表層に酸化チタンの薄層を付与することができる。
【0033】
また、酸化チタンを含むスラリーに代えて、アルカリの存在下にペルオクソチタン酸イオン水溶液を使用したり、チタン塩水溶液を付与後に過酸化水素水を付与して光触媒として機能する酸化チタン膜を成膜してもよい。いずれの場合も、アルカリとペルオクソチタン酸イオンとが反応してブロックの表面に酸化チタン被膜を生成する。この場合のアルカリは、ブロックが有するアルカリが不足する場合には追加的に付与することができる。追加的に付与されるアルカリの付与は、酸化チタン成膜用溶液と作用できれば、どの段階で付与してもよいが、ブロックはアルカリに対しては親和性が高いので、ブロックに付与されたアルカリは、表面に均一に分散されやすく、このれにより、酸化チタン成膜用溶液を後から付与した場合に、高分散化され、かつ脱落しづらい酸化チタン膜を成膜できるという特徴を備える。
【0034】
いずれの場合にも、養生工程後では、表層側の凹凸を有する骨材表面にバインダとしてのセメントの薄層が得られている。このセメント薄層に対して、酸化チタンを含むスラリーを付与することによりセメント薄層に対して少量の酸化チタンを作用させることにより骨材表面に外部に向けて露出した酸化チタンの薄層を付与させることにより、光触媒機能を最大限に発揮することができる。
【0035】
このような性能を有するNOx除去用触媒は、平均粒径が40nm以下であり、その主結晶構造がアナターゼ型である酸化チタンが好ましい。
【0036】
これにより、本発明によれば、製造効率を低下させることなく、かつ、少ない光触媒の使用により光触媒機能を確実に発揮できる透水平板及びその製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に従えば、曲げ強度と透水性の上昇という相反する性質を確保しつつ、さらに効率的に製造できる透水平板及びその製造方法を提供することができる。
【0038】
また、本発明に従えば、光触媒として機能するNOx除去用の触媒を透水平板に付与させる場合においても、製造効率を低下させることなく、かつ、少ない光触媒の使用により光触媒機能を確実に発揮できる透水平板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0040】
まず、本発明に係る透水平板は、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材同士が接合された表層と、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材同士が接合された基部層とを含んで構成される。各表層及び基部層の骨材を結合させるバインダとしては、ポリマー増粘剤が混和されたセメントが主たる成分として用いられている。また、これらの表層と基部層とは、ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして接合されて構成されている。これにより得られる透水平板の透水率は0.1cm/秒以上であり、かつ、曲げ強さが4MPa以上である。
【0041】
このような透水平板は、例えば、表層用ブロック材料及び基部層用ブロック材料を用いて製造される。例えば、図1に示すように、振動を与えつつ型枠内に基部層用ブロック材料を充填する基部層用ブロック材料充填工程(10)、充填後直ちに振動を与えつつ充填物に圧縮力を作用させて締め固めする型締め工程(20)、型締め工程(20)後直ちに振動を与えつつ型枠内に表層用ブロック材料を充填する表層用ブロック材料充填工程(30)、充填工程(30)後直ちに振動を与えつつ充填物に圧縮力を作用させて成形する成形工程(40)が順次行われる。
【0042】
その後、図2〜図5に示されるように、成形物を型枠から脱型する脱型工程(50)、成形物を養生させる養生工程(60)及び必要により成形物の表面を処理する表面処理工程(70)を適宜に組み合わせることにより透水平板を得ることができる。
[表層用ブロック材料]
つぎに、本発明に用いられる各材料について説明する。
【0043】
本発明に用いられる表層用ブロック材料は、ポリマー増粘剤が混和されたセメントC、セメントCの総質量に対する質量割合(W/C)が0.20〜0.35の範囲内にある水(W)及び粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の表層用骨材とを含んで構成される。
[基部層用ブロック材料]
本発明に用いられる基部層用ブロック材料は、ポリマー増粘剤が混和されたセメントC、セメントCの総質量に対する質量割合(W/C)が0.20〜0.35の範囲内にある水(W)及び粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の基部層骨材とを含んで構成される。
[増粘剤]
本発明に用いられるポリマー増粘剤としては、セメント配合物用の増粘剤であれば、何でも用いることができる。例えば、増粘剤としては、セルロース誘導体、多糖類、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルエーテル、水溶性ポリウレタン等を用いることができる。また、その形状も粉末状、ラテックス状など自由である。
【0044】
セメント配合物に増粘剤を混練する場合、増粘剤が粉末である場合には、水との接触によりいわゆるママコを生成する場合があるので、先ず水を除いた材料で空練りを行って増粘剤をよく分散させることによりママコ生成の防止対策をとり、次いで水を加えて混練するのがよい。
【0045】
ここで、増粘剤をエフロレッセンス防止剤(白華防止剤)と併用した場合の適合性を考慮すると、アクリル系(アクリル樹脂系)の増粘剤は、脂肪酸陰イオン界面活性剤系の白華防止剤と併用しても増粘効果が維持でき、かつ、得られた透水平板の高い曲げ強度を維持することができるので好ましい。
【0046】
このようなアクリル樹脂系の増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、スルホン化ポリアクリルアミド等が挙げられるが、好ましくはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等を主成分とした高分子ラテックスである。アクリル系モノマーを乳化重合して得られる合成高分子ラテックスはセメントペーストへ混入工法で配合して利用できる。
【0047】
アクリル系増粘剤を添加したバインダは、練り混ぜ時に原材料の凝集がなくなるため練り混ぜが容易になると共に粘性は増大して、少量のバインダを用いても骨材間を強い強度で固着させることができる。これにより、得られる透水平板の透水性が増大し、また、曲げ強度の向上を図ることができる。
【0048】
本発明で用いる増粘剤の添加量は、増粘剤を構成する単量体の種類、極限粘度、セメントの種類、その他の混和剤の種類等により異なるが、一般に、セメント質量に対して0.01%〜3.0%の範囲内とすることが好適である。増粘剤の量が少なすぎると必要な粘性をバインダとしてのセメントに付与することができない。増粘剤の量が多すぎると粘性が高すぎ、流動性に乏しく、充填されにくくなる。好ましい増粘剤の量は、セメント質量に対して0.01%から3.0%の範囲内である。
【0049】
本発明において、アクリル系増粘剤を添加する場合、アクリル系増粘剤をセメントにあらかじめ配合したもの(プレミックスポリマーセメントペースト:いわゆるメンテペースト)を用いても、あるいは水溶液として添加してもよい。
【0050】
その際、アルキルアルコール系、エステル系などの各種成膜助剤の適量を添加することもできる。また、例えばカルボン酸系ポリマー、β−アルキルナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、β−アルキルナフタレンスルホン酸/リグニンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、β−アルキルアンスラセンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物等の高性能減水剤の適当量を添加することもできる。また、コンクリート用分散剤、流動化剤の適量を添加することができる。
[セメント]
本発明において使用されるセメントとしては、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント)、混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、特殊セメント(アルミナセメント、膨張セメント)等から選ばれる1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0051】
しかしながら、本発明においては特殊セメントは必ずしも必要ではなく廉価な入手容易なセメントを用いることができる。それらは、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどであり、このような汎用性のセメントを用いても十分な特性を得ることができる。
[骨材]
また、本発明に用いる骨材としては曲げ強度の大きい透水平板に適した骨材であれば、特には限定されないが、その粒子径は1mm〜10mmの範囲内にあることは本質的に重要である。この粒子径が小さすぎると、バインダの種類や量を選択しても、十分な透水性性能を発揮することが困難である。また、粒子径が大きすぎると、バインダの種類や量を調整しても、所望とする曲げ強度を得ることが困難である。
【0052】
また、本発明においては、これらの骨材に粒子径が小さな骨材が実質的に混合されていないことが好ましい。本発明において好ましい骨材は、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、1.2mmのふるい目寸法を通過する粒子径の小さい骨材の含有量が5質量%未満、好ましくは3質量%未満である。
【0053】
また、本発明において好ましい骨材は、均等係数Uc(=U60/U10)の値で評価される粒度分布が4未満、好ましくは、1乃至3の範囲内である。この均等係数の値が大きければ大きいほど大小の骨材が混ざっていて型枠への充填時に充填物が締め固めされてよく締まるので、透水性を上げることが困難となる。ここで、U60とは、ふるいの通過率が60%のときの粒径であり、また、U10とは、ふるいの通過率が10%のときの粒径であり、ふるい分けデータから算出される。
【0054】
本発明に好ましく用いられる骨材のふるい分けデータの一例を表1及び図6に示す。これらの表1及び図6で示されるように、符号1で示される大和桜、符号2で示される土器砂利、符号3で示される青玉砂利及び符号4で示される多和砂利7号ともにこれらの条件を満たすようにふるい分けした骨材が好ましい骨材として選択されている。
【0055】
【表1】

以上の条件を満たすことにより、本発明においては、粒子径が比較的大きな骨材を用いても、比較的大きな曲げ強度を得ることができるという特徴を備えている。例えば、2mmを越える粒子径の骨材を主体としても、4MPa程度の曲げ強度を容易に得ることができる。透水性能は、長期間の使用に対して、詰まりなどを引き起こしやすいので、性能的に十分に余裕を有して設計することが好ましい。それ故、透水平板としては、所望の曲げ強度が得られれば、透水性能が大きい方が望ましい。そこで、この発明では、4MPa程度の曲げ強度を得るために、例えば、平均粒子径が5mm程度以上の骨材を用いることができる。
[製造方法の説明]
つぎにこのような材料を用いた透水平板の製造方法の一例について説明する。
【0056】
まず、本発明の透水平板の製造方法においては、上述の増粘剤、セメント及び骨材の適当量を配合させることにより、表層用ブロック材料と基部層用ブロック材料とを用意する。
【0057】
表層用ブロック材料及び基部層用ブロック材料は、ポリマー増粘剤が混和されたセメントC、水(W)及び粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材を含み、そのセメントCの総質量に対する水(W)の質量割合(W/C)は0.20〜0.35の範囲内である。
【0058】
この水の使用割合がこの範囲内にあれば、表層用ブロック材料及び基部層用ブロック材料は全てが同一組成であっても異なっていてもよい。例えば、外表面となって露出する表層用ブロック材料としては、装飾性に優れた骨材を用いてもよい。
【0059】
本発明においては、図1に示すように、振動を与えつつ型枠内に基部層用ブロック材料を充填する基部層用ブロック材料充填工程(10)、充填後直ちに振動を与えつつ充填物に圧縮力を作用させて締め固めする型締め工程(20)、振動を与えつつ型枠内に表層用ブロック材料を順次充填する表層用ブロック材料充填工程(30)、充填後直ちに振動を与えつつ充填物に圧縮力を作用させて成形する成形工程(40)は本質的に必要である。
【0060】
充填工程(10,30)では、基部層用ブロック材料と表層用ブロック材料とを含む少なくとも2工程の充填工程が順次行われること、各充填工程(10,30)は振動を与えつつ充填されること、及び各充填工程(10,30)後に直ちに型締め工程(20)成形工程(40)が行われることが必要である。
【0061】
従来技術のように、表層用ブロック材料、基部層用ブロック材料の順に充填されたのでは、後述するように、効率よく触媒層を付与させることが困難となる。
【0062】
また、各充填工程(10,30)が振動を与えつつ行われ、各充填工程(10,30)の間に素早い型締めが行われることにより、曲げ強度及び透水性に優れた透水平板を製造することが可能となる。一度の充填工程で製造する場合には、バインダの種類及び量を制限しても、曲げ強度が不十分であるか、又は透水性能のどちらかが犠牲となる。
【0063】
ここで、基部層用ブロック材料充填工程(10)は、3000〜4000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で、1秒〜3秒の範囲内の材料供給時間により行われる。
【0064】
ついで、型締め工程(20)は、15kg/cm2〜50kg/cm2の範囲内の型締め圧力で1500回転/分〜2000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で0.1秒〜1秒の範囲内の時間型締めされる。
【0065】
また、表層用ブロック材料充填工程(30)は、3000回転/分〜4000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で、1秒〜3秒の範囲内の材料供給時間により行われる。
【0066】
また、成形工程(40)は、15kg/cm2〜50kg/cm2の範囲内の型締め圧力で1500回転/分〜2000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で2秒〜5秒の範囲内の時間型締めされる。
【0067】
このような条件を採用することにより、極めて短時間で充填及び型締めすることにより、曲げ強度及び透水性能の優れた透水平板を製造することが可能となる。
【0068】
成形工程(40)の後は、常法に従い、脱型工程、養生工程及び必要により表面処理工程を適宜に組み合わせて行うことにより透水平板を得ることができる。
【0069】
ここで、図2では、成形工程(40)の後は、脱型工程(50)、養生工程(60)及び表面処理工程(70)が順次行われている。この表面処理工程の一例は、脱型した成形物の表層部の表面を湿式研磨機および超高圧加工機を用いて加工することであるが、成形物の表面に適宜の加飾を施したり、及び又は光触媒などを付与して透水平板の機能を高める処理を行うことを包含する。
【0070】
また、図3では、成形工程(40)と脱型工程(50)との間に表面処理工程(70)としての触媒付与工程(71)が行われ、次いで脱型工程(50)、養生工程(60)の後に、湿式研磨機および超高圧加工機を用いて加工する表面処理工程(70)としての表面加工工程(72)が行われている。
【0071】
また、図4では、養生工程が脱型工程(50)の前後で行われ、成形工程(40)後に前養生工程(61)、脱型工程(50)後養生工程(62)が順次行われている。また、図5では、表面加工工程(72)の後に触媒付与工程(71)が行われている。
【0072】
ここで、本発明の透水平板の製造方法によれば、型枠内に基部層用ブロック材料が充填された後、表層用ブロック材料が充填されるので、成形工程(40)の直後で型枠内に存するブロック材料の上側には表層部が配置されることになる。これにより、脱型工程(50)前の状態でも表層部の表面が露出できるので、この表面に光触媒などの触媒を付与させることができる。
【0073】
ここで、光触媒を付与させる付与方法は特には限定されない。例えば、一般的なスラリーを用いる方法を採用できるが、本発明者等が提案した、ペルオクソチタン酸イオン水溶液又はチタン塩水溶液と過酸化水素との反応物由来の酸化チタンを直接成膜してもよい。
【0074】
すなわち、光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタンを含むスラリーを、成形工程(40)後であって、養生工程(60)前の適宜の段階で噴霧することにより、表面側から酸化チタンのスラリーを付与させることができる。また、このように養生前の工程で酸化チタンのスラリーを付与させることにより、養生過程で、酸化チタンとセメントとを十分に反応させつつスラリーの乾燥とセメントの養生とを同時並行的に遂行させることができ、これにより、酸化チタンはセメントに固着させることができる。
【0075】
また、同様に、例えば、成形工程後であって、養生工程前に、表面側からペルオクソチタン酸イオン水溶液を作用させて光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタン膜を成膜した後、養生を行うこともできる。また、同様に、成形工程後であって、養生工程前に、表面側からチタン塩水溶液を作用させたのち、過酸化水素水を作用させることにより、光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタン膜を成膜することもできる。養生工程前であれば、十分なセメントに由来するアルカリが存在するので、酸化チタンの成膜がスムースに行える。
【0076】
そして、このような製造方法によれば、触媒を付与する数秒間の触媒付与工程(71)が付加されるだけで、特別の乾燥工程を経ることなく酸化チタンの被膜を表層部に形成させることができるという、本願発明に特有の作用効果を得ることができる。また、いずれの場合にも、その後に養生を行うことにより、酸化チタン膜は、表層部に固着させることができる。
【0077】
ここで、本発明に用いられるペルオクソチタン酸イオン水溶液は、ペルオクソチタン酸(過酸化チタン:TiO3・nH2O)由来のペルオクソチタン酸イオン(化学式)を含有する水溶液であればよく、製造方法は特に限定されない。例えば、硫酸チタン(Ti(SO42)水溶液や塩化チタン(TiCl4)水溶液等のチタン塩水溶液と過酸化水素水とを混合すれば、ペルオクソチタン酸イオン水溶液を容易に得ることができる。
【0078】
また、このようなチタン塩水溶液に用いるチタン塩としては、硫酸チタンや塩化チタンの他、ペルオクソチタン酸カリウム(K4TiO8・6H2O)、ペルオクソチタン酸ナトリウム(Na4TiO8・2H2O又はNa22・TiO3・3H2O)等を用いることができるが、水に溶けてペルオクソチタン酸イオンを生じる水溶性チタン塩であれば特に限定されない。
【0079】
触媒として酸化チタンを選択する場合には、養生工程(60)で蒸気などを用いた高温養生が行われる場合であっても、酸化チタンの触媒性能は水蒸気程度の温度では安定であるので触媒能を低下させることがない。水蒸気養生を行う場合には、触媒能は低下することなく、酸化チタンは骨材表面に付着したセメント成分と強固に固着された光触媒コーティング層とすることができる。
【0080】
なお、NOx除去用の触媒は、図5に一例を示すように、表面加工工程(72)後に噴霧又は浸漬などにより付与することもできる。
【0081】
このような酸化チタンは、例えば、スラリー等の水分散液などの形態で市販されているものをそのまま用いることができる。一般に、酸化チタンの平均粒径が40nmを超えると光触媒としての活性が低下し、NOx低減効果が減少するといわれているので、本発明においても、平均粒径は、40nm以下であることが望ましい。
【0082】
また、酸化チタンは、ルチル型でもよいが、より活性の優れたアナターゼ型の酸化チタンが望ましい。
【0083】
また、上述したように、この養生工程後の段階で、上述の一般的なスラリーを用いる方法を採用できるが、本発明者等が提案した、ペルオクソチタン酸イオン水溶液又はチタン塩水溶液と過酸化水素との反応物由来の酸化チタンを直接成膜してもよい。この場合のペルオクソチタン酸イオン水溶液又はチタン塩水溶液と過酸化水素との反応物は、上述の場合と全く同様のものを用いることができる。養生後の段階では基材が十分なアルカリ性を保持していない場合があるが、この場合には適宜のアルカリ含有材料を保持させた後に、ペルオクソチタン酸イオン水溶液を作用させるか、又はチタン塩水溶液作用後に、過酸化水素を作用させる。
【0084】
本発明では、アルカリとペルオクソチタン酸イオンとを反応させて酸化チタン膜を成膜するものであり、これにより、透水平板の深層部に酸化チタンを生成させることなく、表面にのみ(或いは表層部にのみ)酸化チタン膜を効率良く成膜することができる。すなわち、酸化チタンは紫外線の照射により光触媒機能を発揮することから、透水平板の表面に酸化チタン膜を成膜すれば、少量のチタンを用いて、より大きな効果を得ることが可能となる。
【0085】
ここで、このアルカリは、どのような態様で透水平板の表面に保持されていてもよい。例えば、透水平板自体をアルカリ含有材料から形成し、これによりその表面がアルカリを有するように構成してもよいし、また、透水平板に別途のアルカリ含有材料を保持させて、これによりその表面がアルカリを有するように構成してもよい。
【0086】
さらには、透水平板にアルカリ含有液を塗布、噴霧、浸漬等することにより、その表面にアルカリを付着させてもよい。この場合、本発明で用いる透水平板は、透水率が0.1cm/秒以上であるので、表面により均一にアルカリを保持させるために好適である。これは、透水平板にアルカリ含有液を噴霧等すれば、アルカリが透水平板の表層付近の連通孔に担持されるからである。
【0087】
表面に付与するアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)等を用いることができる。更に、アルカリとしてアンモニア(NH3)等も用いることができる。
【0088】
このような酸化チタンの成膜量は、酸化チタンの固形分濃度で5g/m2〜100g/m2の範囲が望ましい。成膜量が少ないと十分に触媒能が発揮されない。また、成膜量を必要以上に付与すると、得られたコーティング膜の厚みが増大することにより、セメント成分との固着性が低下して触媒が脱落する場合がある。
【0089】
次いで、この酸化チタンを主成分とする被膜を形成する方法としては、上記のように酸化チタンスラリーを塗布した後、常温乾燥あるいは850℃以下の温度で熱処理を行うが、その際、処理温度が850℃より高いと、酸化チタンの結晶構造が変化して、光触媒活性が低下してしまうので注意を要する。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により、本発明の効果を説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。なお、実施例に用いた材料及び機材はつぎのとおりである。
[表層骨材]:色彩の美しい砕石。小割りして、ふるいで粒径範囲を10mm〜1.2mmに選別して用いた。
[下層骨材]:7号砕石(粒径5mm〜2.5mmを主体とし、均等係数が2以下)。
[セメント]:白色ポルトランドセメント
[増粘剤]:アクリル系(旭化成社製の商品名ポリトロンA1500)
[白華防止剤]:脂肪酸陰イオン界面活性剤(株式会社エヌエムビー社製のエフロレッセンス防止剤:商品名ルブリリス640)
振動発生装置付き成形装置:
透水係数:(社)日本道路建設業境界が透水性舗装ハンドブックに示す透水性舗装の現場透水性試験方法(案)に準拠して測定した。
曲げ強さ荷重:JIS A 5371:2004(付属書2)に準拠して測定した。
<実施例1>
骨材の80質量部、セメント20質量部をから練り後、セメント100質量部に対して25質量部30質量部の水と0.01から3質量部の増粘剤と0.5から3質量部の白華防止剤を添加し、ミキサで混合攪拌して表層用ブロック材料及び下層用ブロック材料を調整した。
【0091】
縦横各30cm、深さ6cmの型枠を成形装置にセットして、3000回転/分〜4000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件(例えば、3780回転/分)で、1秒〜3秒の範囲内の材料供給時間(例えば、2.3秒程度)により下層用ブロック材料が供給された後、直ちに型締めされた。この型締め、15kg/cm2〜50kg/cm2の範囲内の型締め圧力で1500回転/分〜2000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で0.1秒〜1秒の範囲内の時間(例えば、0.3秒間)である。
【0092】
ついで、型が開かれ、直ちに表層用ブロック材料が供給される。この表層用ブロック材料充填工程は、3000回転/分〜4000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件(例えば、3780回転/分)で、1秒〜3秒の範囲内の材料供給時間(例えば、1.7秒)により行われ、成形工程は、15kg/cm2〜50kg/cm2の範囲内の型締め圧力で1500回転/分〜2000回転/分の範囲内のモータ振動数の条件で2秒〜5秒(例えば、3〜4秒)の範囲内の時間型締めされる。
【0093】
成形後、型枠毎成形装置から取り出し、40゜〜60゜に保たれた養生室内で6時間〜12時間養生した。
【0094】
得られた製品は、養生後に湿式研磨及び超高圧加工機を用いて表層部の表面を加工して透水平板を得た。
【0095】
得られた透水平板は、セメントを主バインダとして骨材同士に空隙を設けて接合し透水性を保たせた透水ブロックであり、平均厚みが約8mmの表層部と平均厚みが約52mmの基部とが一体となって結合された全体厚みが約60mm程度の方形の平板であった。
【0096】
この透水平板の透水係数は0.27cm/s〜0.35cm/s程度であり、また曲げ強さ荷重は14kN〜15kN程度であり、基準値である透水係数は0.01cm/秒であった。
<実施例2>
実施例1において、養生室に入る前に、型枠ごと表層部に光触媒として機能するNOx除去用の触媒を含むスラリーを噴霧し、その後養生を行った。
【0097】
以下同様にして、実施例1と同一寸法、同一性能の透水平板を得た。
【0098】
得られた透水平板の表面を電子顕微鏡で観察したところ、表層骨材表面に酸化チタンの薄膜が形成されていることが確認された。
【0099】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【0100】
例えば、以上の実施例は、表層材料部と下層材料部との2層構造とした透水性コンクリートブロック(透水平板)に関するものであるが、本願発明は、これに限らず、3層構造又はそれ以上の多層構造であっても実施することができる。
【0101】
また、型締めの際に、型枠、又は押さえ蓋に凹凸を付与させれば、概ね凹凸に即した形状の透水平板を得ることもできる。これにより、意匠性、機能性を備えた透水平板とすることもできる。
【0102】
また、以上の実施例の透水平板は方形であったが、平面視六角形、三角形などのその他の多角形、円形、楕円形、その他の任意の形状とすることもできる。
<実施例3>
下記の工程により試料1〜試料15を製造した。
(1)透水平板にアルカリ含有材料を保持させる工程
基材としての透水平板(幅10cm×長さ20cm×厚さ6cm)の表面にペースト状のアルカリ含有材料を塗布した。表2に示すように、このアルカリ含有材料として、試料1〜試料11にはセメントを、試料12及び試料13には水酸化カルシウムを、試料14及び試料15には水酸化ストロンチウムを、それぞれ用いた。
(2)透水平板にペルオクソチタン酸イオン水溶液を付着させる工程
試料1〜9及び試料12〜15にはセメントが乾燥して固化した後に、試料10、11にはセメントが乾燥する前に、ペルオクソチタン酸イオン水溶液を噴霧した。表2に示したように、ペルオクソチタン酸イオン水溶液として、試料1〜試料4には塩化チタン水溶液と過酸化水素水との混合溶液を、試料5から試料15には硫酸チタン水溶液と過酸化水素水との混合溶液を、それぞれ用いた。
(3)脱イオン水への浸漬及び乾燥工程
試料3、11、13、15は脱イオン水に浸漬させた。この工程では、対象試料を脱イオン水1.4l中に1日間浸漬させ、その後に乾燥させた。また、試料4についてはこの浸漬・乾燥工程を二回繰り返した。
<実施例4>
下記の工程により試料16及び試料17を製造した。
(1)透水平板にアルカリ含有材料を保持させる工程
実施例3と同一の透水平板の表面にペースト状のアルカリ含有材料を塗布した。表2に示すように、このアルカリ含有材料としてはセメントを用いた。
(2)透水平板の表面に可溶性チタン塩水溶液を付着させる工程
透水平板に保持されたセメントの表面に可溶性チタン塩水溶液を噴霧することにより付着させた。ここで、可溶性チタン塩水溶液として硫酸チタン水溶液を用いた。
(3)透水平板に過酸化水素水を付着させる工程
硫酸チタン水溶液が付着したセメントの表面に過酸化水素水を噴霧することにより付着させた。
(4)脱イオン水への浸漬及び乾燥工程
試料17は脱イオン水に浸漬させた。この工程では、対象試料を脱イオン水1.4l中に1日間浸漬させ、その後に乾燥させた。
<実施例5>
下記の工程により試料18を製造した。
(1)透水平板にペルオクソチタン酸イオン水溶液を付着させる工程
アルカリ含有材料にペルオクソチタン酸イオン水溶液10gを噴霧することにより付着させた。ここでは、アルカリ含有材料としてフライアッシュ25gを用いた。このフライアッシュはアルカリ性の粉体であり、その表面にアルカリを有している。また、表2に示したように、ペルオクソチタン酸イオン水溶液として硫酸チタン水溶液と過酸化水素水との混合溶液を用いた。
【0103】
また、ペルオクソチタン酸イオン水溶液を噴霧後、乾燥させた。
(2)透水平板にフライアッシュを堆積させる工程
ペルオクソチタン酸イオン水溶液を付着させたフライアッシュを、透水平板(実施例3と同様)に堆積させた。
<実施例6>
下記の工程により試料19乃至試料29を製造した。
(1)透水平板にアルカリを付着させる工程
透水平板(実施例3と同様)に、アルカリ水溶液を噴霧することによりその表面に含浸させ、これによりアルカリを付着させた。表3に示したように、アルカリ水溶液として、試料19から試料21には水酸化ナトリウム水溶液を、試料22から試料29には水酸化バリウム水溶液を、それぞれ用いた。
(2)透水平板に過酸化水素水を付着させる工程
アルカリ水溶液が付着した透水平板の表面に過酸化水素水を噴霧することにより付着させた。
(3)脱イオン水への浸漬及び乾燥工程
試料20、23、26、29は脱イオン水に浸漬させた。この工程では、対象試料を脱イオン水1.4l中に1日間浸漬させ、その後に乾燥させた。また、試料21、24、27についてはこの浸漬・乾燥工程を二回繰り返した。
<実施例7>
下記の工程により試料32乃至試料36を製造した。
(1)チタン含有過酸化水素水とアルカリ水溶液とを混合する工程
表4に示したように、硫酸チタン水溶液又は塩化チタン水溶液に過酸化水素水を添加した水溶液(Ti−H22水溶液)に、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム8水和物、若しくは水酸化ストロンチウム8水和物を添加して、淡黄色若しくは白色の沈殿を生成させた。
(2)沈殿物から水溶性成分を取り除く工程
前述の混合して得た水溶液を静置し、上澄み液を除去し、水100mlを混合した。更に、この水溶液を静置し、上澄み液を除去し、水を混合する操作を数回繰り返した。そして、沈殿物を濾過することにより、水溶性成分を取り除いた。
(3)沈殿物を乾燥する工程
得られた沈殿物をシリカゲル入りのデシケータ内で乾燥した後、約107℃に保った電気乾燥機内で乾燥して試料32〜試料36を得た。
<参考例1>
参考例1として、酸化チタン含有ゲルを用いる従来の成膜方法によって試料30及び試料31を製造した。
(1)酸化チタン含有ゲルの調整工程
硫酸チタン水溶液と過酸化水素水との混合水溶液にアンモニア水溶液(NH4OH)を添加してpH7とし、これにより、黄色のゲル状物質を含有する懸濁液を得た。
(2)透水平板に懸濁液を付着させる工程
懸濁液を透水平板(実施例3と同様)に付着させた。
(3)脱イオン水への浸積及び乾燥工程
試料31は脱イオン水に浸漬させた。この工程では、対象試料を脱イオン水1.4l中に1日間浸漬させ、その後に乾燥させた。
<参考例2>
参考例2として、透水平板(実施例3と同様)にペースト状のセメントを塗布し、酸化チタン膜を備えていない試料32を製造した。
(B)各試料の光触媒能及び組成の測定実験及び結果
実施例3〜実施例7、及び参考例1及び参考例2で得られた試料1〜36について、下記の実験を行った。
(B−1)一酸化窒素吸着速度測定
(B−1−1)実験方法
(1)試料1を、上面が石英ガラスで形成された測定用容器(長さ10cm×幅20cm×厚さ8cm)にセットした。このとき、表面(酸化チタン膜が成膜された表面)が上方を向くように試料1を配設した。
(2)測定用容器の長手方向の一端から、一酸化窒素を含むガス(NO含有ガス)を0.5l/minで送気し、他端から排出した。NO含有ガスとしては、NO:4.7ppm、O2:10.5vol%、N2:89.5vol%の体積割合を有するガス(以下、「第一のNO含有ガス」という。)、NO:4.7ppm、N2:100.0vol%の体積割合を有するガス(以下、「第二のNO含有ガス」という。)、及び4.7ppmよりNO濃度を高めたガスを用いた。
(3)化学発光法のNO濃度測定装置(TN−7:柳本製作所)を用い、他端から排出されたガス(排出ガス)のNO濃度を測定した。更に、検知管法により、排出ガスの二酸化窒素濃度を測定した。
(4)試料2〜試料32のそれぞれについて、上記(1)〜(3)を行った。
(B−1−2)実験結果
(1)第一のNOガスの通気時には、試料1〜試料31の総てについて、測定用容器からの排出ガスのNO濃度は測定用容器に送気した第一のNOガスのNO濃度(4.7ppm)より低下した。
【0104】
また、排出ガスからは二酸化窒素は検出されなかった(検出下限値以下であった)。そして、酸素を含有していない第二のNO含有ガスを通気させても、第一のNO含有ガスと同程度のNO濃度の低下が確認され、且つ、O2濃度は低下しなかった。
【0105】
更に、4.7ppmよりNO濃度を高めたガスを通気したものでは、NO濃度の低下率が大きくなった。
【0106】
他方、試料32では、ほとんどNO濃度は低下しなかった。
(2)このようなNO濃度の低下率より、次式によりNO吸着速度を求めた。このNO吸着速度は、各試料が紫外線を照射されていない場合のNOの減少速度に相当するものである。
【0107】
NO吸着速度(μmol/h)=通気ガス流量(l・N/h)×(送気ガスNO濃度−排出ガスNO濃度)(ppm)/22.4(l・N/mol)
これにより得た結果を表2及び表3に示した。
(3)また、試料1〜3及び試料5〜9の実験結果より、噴霧したペルオクソチタン酸イオン水溶液のH22/Ti(モル比、以下同じ)とNO吸着速度との関係を図7に示した。
(4)試料6、12、14、19、22の実験結果より、アルカリの種類別に比較したNO吸着速度を図9に示した。
(5)試料22、23、25、26、28、29の実験結果より、噴霧した水酸化バリウム及びペルオクソチタン酸イオン水溶液におけるBa(OH)2/Ti(モル比、以下同じ)とNO吸着速度との関係を図11に示した。
(B−2)一酸化窒素光酸化速度測定
(B−2−1)実験方法
(1)試料1を、上面が石英ガラスで形成された測定用容器(長さ10cm×幅20cm×厚さ8cm)にセットした。このとき、表面(酸化チタン膜が成膜された表面)が上方を向くように試料1を配設した。
(2)測定用容器の長手方向の一端から、第一のNO含有ガスを0.5l/minで送気し、他端から排出した。更に、このように第一のNO含有ガスを通気しつつ、石英ガラスからなる上面から0.6W/cm2で紫外線を照射した。
(3)化学発光法のNO濃度測定装置(TN−7:柳本製作所)を用い、排出ガスのNO濃度を測定した。更に、検知管法により、排出ガスの二酸化窒素濃度を測定した。
(4)試料2〜試料31のそれぞれについて、上記(1)〜(3)を行った。
(B−2−2)実験結果
(1)紫外線の照射を開始するとNO濃度が低下し始め、一定時間を経過すると排出ガス中のNO濃度が一定となった。このように定常状態となった際のNO低下率を用いて、次式によりNO光酸化速度を求め、この結果を表2及び表3に示した。
【0108】
NO光酸化速度(μmol/h)=通気ガス流量(l・N/h)×(送気ガスNO濃度−排出ガスNO濃度)(ppm)/22.4(l・N/mol)
(2)また、試料1〜3及び試料5〜9の実験結果より、噴霧したペルオクソチタン酸イオン水溶液のH22/TiとNO光吸着速度との関係を図8に示した。
(3)更に、試料6、12、14、19、22の実験結果より、アルカリの種類によるNO光酸化速度を図10に示した。
(4)試料22、23、25、26、28、29の実験結果より、噴霧した水酸化バリウム及びペルオクソチタン酸イオン水溶液におけるBa(OH)2/TiとNO光酸化速度との関係を図12に示した。
(B−3)光触媒活性成分の同定
(B−3−1)実験方法
(1)試料32〜36のそれぞれについて、X線回折測定を行った。
(2)試料32〜36のそれぞれについて、X線光電子分光法により組成分析を行った(アルバック・ファイ株式会社社製X線光電子分光装置5000型)。
(B−3−2)実験結果
(1)試料32〜36のX線回折パターンを137に示した。
(2)X線光電子分光法の測定結果を表5に示した。
【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
【表5】

(C)考察
(C−1)酸化チタン膜のNO吸着性及びNO光酸化速度
試料1〜試料31の総てについて、測定用容器からの排出ガスのNO濃度は測定用容器に送気したガスのNO濃度(4.7ppm)より低下した。
【0113】
そして、排出ガスからは二酸化窒素は検出されなかったこと、及び、酸素を含有していない第二のNO含有ガスを通気させても第一のNO含有ガスと同程度のNO濃度の低下が確認され、且つO2濃度が低下しなかったことから、NO濃度の低下はNOからNO2への変換に基づくものではないことが確認できた。
【0114】
また、4.7ppmよりNO濃度を高めたガスを通気したものでは、NO濃度の低下率が大きくなった。これにより、NO濃度の低下は酸化チタン膜を有する透水平板(試料1〜試料31)によるNOの吸着によるものと考えられる。更に、セメントが塗布されただけであり酸化チタン膜を備えていない試料32では、NO濃度はほとんど低下しなかった。従って、NOの吸着は酸化チタン膜に関連しているものと考えられる。
【0115】
また、試料30及び試料31においてもNO吸着性能、及びNO光酸化性能が確認できたものの、試料5、16、17、20、21、25、29等と比し、その値は低いものとなっている。このことから、酸化チタンをゲルとして付着させるよりも、チタン酸イオン水溶液由来に基づき酸化チタン膜を成膜したものの方が酸化チタンをより高分散化させることができることがわかった。これは、このような酸化チタン膜の成膜方法によれば、イオン状のチタン(ペルオクソチタン酸イオン)が溶解した水溶液を用いるため、固体の酸化チタンを含有するゲルを付着させる成膜方法よりも酸化チタンを高分散化することができるものと考えられる。
(C−2)NO吸着速度のH22/Ti依存性
図7に示したように、チタン塩として硫酸チタンを用いた場合には、H22/Tiが0.1〜1程度までは略一定であり、H22/Tiが1より大きくなるとNO吸着速度は大きく上昇した。一方、チタン塩として塩化チタンを用いた場合には、H22/Tiが0.1〜2の範囲内ではNO吸着速度が略一定となった。また、脱イオン水に一日間浸漬し乾燥させた試料3、7は、H22/Tiが同等(H22/Ti=1)で脱イオン水に浸漬させていない試料1、6よりも高い吸着速度を示した。
(C−3)アルカリの相違に基づくNO吸着速度
図9に示したように、アルカリとして水酸化カルシウムを用いた試料12や水酸化ストロンチウムを用いた試料14では高いNO吸着速度を示したが、これらを水に浸漬した試料13や試料15ではNO吸着速度は大きく低下している。
【0116】
アルカリとして水酸化バリウムや水酸化ナトリウムを用いた試料19、22の結果によれば、これらを水に浸漬した試料20、23のNO吸着速度と大きな相違は確認できなかった。
(C−4)アルカリの相違に基づくNO光酸化速度
図10に示したように、NO光酸化速度は、アルカリとしてセメントを用いた試料6、7を除き、水に浸漬していない試料12、14、19、22と比し、水に浸漬した試料13、15、20、23の方が同等或いは高い値を示した。これより、セメント以外のアルカリを用いた場合には、少なくとも水に浸漬されることによりNO光酸化速度が著しく低下するような特性の変化はないと考えられる。
(C−5)NO光酸化速度のH22/Ti依存性
図8に示したように、可溶性チタン塩として塩化チタンを用いた場合には、H22/Tiの値に関わらずNO光酸化速度は略一定となった。他方、可溶性チタン塩として硫酸チタンを用いた場合には、H22比率の増加(すなわち、H22/Tiの増大)に伴いNO光酸化速度は増加し、H22/Ti=2程度でその変化は微小となり略一定のNO光酸化速度となった。また、脱イオン水に一日間浸漬し乾燥させた試料3、7は、H22/Tiの値が同等(H22/Ti=1)で脱イオン水に浸漬させていない試料1、6よりNO吸着速度は低くなったものの、NO分解能は残存していることがわかった。
【0117】
このような図8の結果より、酸化チタン膜の成膜の際のH22/Tiは、0.1≦H22/Tiであることが好ましく、より少量のチタンを用いて効率的にNOを吸着するためには1.0≦H22/Ti≦2.0であることが好ましいと考えられる。
【0118】
また、表2に示したように、試料16、17も高いNO光酸化速度(4.02μmol/h)を示すことがわかった。すなわち、アルカリ含有材料としてのセメントを保持した透水平板に硫酸チタン水溶液を噴霧した後、過酸化水素水を噴霧する成膜方法によっても高いNO光酸化速度を示す酸化チタン膜を成膜できることがわかった。しかも、脱イオン水1.4l中に1日間浸漬後乾燥させた試料17についても同等の高いNO光酸化速度(4.02μmol/h)を示したため、この成膜方法によれば、透水平板から脱離し難い、すなわち、固着された酸化チタン膜を成膜することができると考えられる。
(C−6)NO吸着速度及びNO光酸化速度とアルカリ/Ti(モル比、以下同じ)との関係
図11に示したように、NO吸着速度はBa(OH)2/Tiの値には大きく依存せず、略一定の値となった。
【0119】
また、NO光酸化速度は、0.25≦Ba(OH)2/Ti<1の範囲でBa(OH)2/Tiの増加に伴いNO光酸化速度は増加する傾向にあり、Ba(OH)2/Ti=1付近では略一定となった。
【0120】
これらの結果より、少なくともアルカリとしてBa(OH)2を用いる場合には、モル比で、0.25≦Ba(OH)2/Ti≦1、好ましくはBa(OH)2/Ti≒1となるようにBa(OH)2/Tiの値を定めることがよいと考えられる。
(C−7)光触媒活性成分の結晶構造
図13を参照すると、Ti(SO42−H22−NaOH系では、幅広なピーク(ブロードピーク)のみが現れていることから、非結晶質成分が生成したものと考えられる。
【0121】
また、TiCl4−H22−Ca(OH)2系、TiCl4−H22−Sr(OH)2系、及びTiCl4−H22−Ba(OH)2系では、炭酸塩(CaCO3、SrCO3、BaCO3)に由来する回折ピークが検出された。更に、非結晶質に由来するブロードピークも検出された。検出されたこれらの炭酸塩は、試料の製造過程において、空気中に存在するCO2がアルカリ水溶液に吸収されることにより生成したものと推定される。これらの炭酸塩は難水溶性のため、沈殿物中に残存したものと考えられる。この炭酸塩は難水溶性であることから、水に触れても容易には溶出することがなく、非結晶質二酸化チタンを保持して溶出を防ぐバインダーとして機能させることができると考えられる。従って、酸化チタン膜を成膜する場合において、アルカリとしてCa(OH)2、Sr(OH)2、或いはBa(OH)を用い、このアルカリが残存する程度のペルオクソチタン酸イオン水溶液を付着させれば、空気との接触により経時的に炭酸塩が生成され、非結晶質二酸化チタンの溶出を防止されて酸化チタン膜の耐久性を高めることができると考えられる。
【0122】
また、チタン塩として塩化チタンを用いたTiCl4−H22−Ca(OH)2系、TiCl4−H22−Sr(OH)2系、及びTiCl4−H22−Ba(OH)2系では、塩化ナトリウム、塩化カルシウム或いは塩化バリウムが生成すると考えられるが、これらは沈殿物からは検出されていない。これは、塩化ナトリウム、塩化カルシウム或いは塩化バリウムが水溶性であるためである。従って、チタン塩として塩化チタンを用い、アルカリ土類金属水酸化物として水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムのいずれか一つを用いれば、水洗するだけで容易に、塩素(塩素化合物)を除去することができる。
【0123】
他方、チタン塩が硫酸チタンであり、アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムのいずれか一つである本発明の酸化チタン膜の成膜方法によれば、酸化チタンを生成させる際に、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、或いは硫酸バリウムが生成する。そして、この硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、或いは硫酸バリウムは、酸化チタン膜の光触媒能をほとんど低下させずに酸化チタン(二酸化チタン)のバインダーとして機能するため、酸化チタンが雨等により溶出し難く、より耐久性の高い酸化チタン膜を成膜することができる。
【0124】
また、Ti(SO42−H22−Ba(OH)2系では、難水溶性の硫酸バリウム(Ba(SO42)に由来する明瞭な回折ピークのほか、ブロードピークも検出された。これらの沈殿物のX線回折パターンには、共通してブロードピークが現れている。これより、本発明により成膜した酸化チタン膜は、非結晶質成分がNO光酸化に活性を示す光触媒成分であると推定される。
(C−8)光触媒活性成分の同定
表5を参照すると、Ti(SO42−H22−NaOH系、TiCl4−H22−Ca(OH)2系、TiCl4−H22−Sr(OH)2系、及びTiCl4−H22−Ba(OH)2系では、各沈殿物に、チタン、酸素、アルカリ若しくはアルカリ土類金属が含まれており、更に、炭素が含まれていることが分かった。ここで、これらの各沈殿物のアルカリが総て炭酸塩(MCO3)として存在するとして、残りの酸素とチタンとの原子比を求めると、この比はほぼ2となった(Ti:O≒1:2)。これより、チタンは二酸化チタン(TiO2)として存在するものと推定される。
【0125】
他方、Ti(SO42−H22−Ba(OH)2系では、その沈殿物にチタン、酸素、バリウム、硫黄が含まれていることが分かった。この沈殿物中のバリウムが総て硫酸バリウム(BaSO4)として存在するとして、残りの酸素とチタンとの原子比を求めると、この比はほぼ2.5となった(Ti:O≒2:5)。これより、チタンは二酸化チタン(TiO2)として存在するものと推定される。
【0126】
この組成分析の結果及び前述のX線回折分析の結果を合わせて考察すると、非結晶質の二酸化チタン(非結晶質二酸化チタン)が生成しており、これがNO光酸化に活性を示す光触媒成分と推認でき、光触媒成分としての非結晶質二酸化チタンを含有する酸化チタン膜を成膜することができる。また、これらの沈殿物には炭酸塩や硫酸バリウムが共存しているが、NOの光酸化速度の測定結果からこれらの共存物質によって非結晶質二酸化チタンの光触媒活性が著しく阻害されるとは考えられない。これら結晶性の共存物質はいずれも難水溶性であることから、水に触れても容易には溶出することがなく、非結晶質二酸化チタンを保持して溶出を防ぐバインダーとして機能すると考えられる。従って、チタン塩が硫酸チタンであり、アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムのいずれか一つである酸化チタン膜の成膜方法によれば、酸化チタンを生成させる際に、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、或いは硫酸バリウムが生成する。そして、この硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、或いは硫酸バリウムは、酸化チタン膜の光触媒能をほとんど低下させずに酸化チタン(二酸化チタン)のバインダーとして機能するため、酸化チタンが雨等により溶出し難く、より耐久性の高い酸化チタン膜を成膜することができる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明したように、本発明に従えば、透水性能に優れ、かつ、曲げ強度の高い透水平板を廉価に製造することができる。また、この透水平板へNOx除去用の触媒を付与させる場合にも、製造コストを抑えることができる。
【0128】
これにより、このような透水平板は、歩道、駐車場、建物周辺、ガレージ、公園、プールサイド、親水施設などの透水性の表層材料として利用できるほか、車道や公道などへの適用の拡大が期待される。
【0129】
光触媒が付与された透水平板は、透水性に加えて光触媒機能を付与した環境改善型の舗装材料として一層適切に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の透水平板の製造工程を説明する工程図である。
【図2】本発明の透水平板の製造工程を説明する工程図である。
【図3】本発明の透水平板の製造工程を説明する工程図である。
【図4】本発明の透水平板の製造工程を説明する工程図である。
【図5】本発明の透水平板の製造工程を説明する工程図である。
【図6】本発明に好ましく使用される骨材の粒度曲線グラフである。
【図7】ペルオクソチタン酸イオン水溶液のH22/Ti(モル比)とNO吸着速度との関係を示した図である。
【図8】ペルオクソチタン酸イオン水溶液のH22/Ti(モル比)とNO光吸着速度との関係を示した図である。
【図9】各種アルカリ毎のNO吸着速度を示した図である。
【図10】各種アルカリ毎のNO光酸化速度を示した図である。
【図11】水酸化バリウム及びペルオクソチタン酸イオン水溶液におけるBa(OH)2/Ti(モル比)とNO吸着速度との関係を示した図である。
【図12】水酸化バリウム及びペルオクソチタン酸イオン水溶液におけるBa(OH)2/Ti(モル比)とNO光酸化速度との関係を示した図である。
【図13】アルカリ水溶液とペルオクソチタン酸イオン水溶液とを混合することにより生成した沈殿物のX線回折結果を示した図である。
【符号の説明】
【0131】
1:大和桜
2:土器砂利
3:青玉砂利
4:多和砂利7号
10:基部層用ブロック材料充填工程
20:型締め工程
30:表層用ブロック材料充填工程
40:成形工程
50:脱型工程
60:養生工程
61:前養生工程
62:後養生工程
70:表面処理工程
71:触媒付与工程
72:表面加工工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材同士が接合された透水性の表層と、
ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして、粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の骨材同士が接合された基部層とを含み、
前記表層と前記基部層とは、ポリマー増粘剤が混和されたセメントを主たるバインダとして接合され、
透水率が0.1cm/秒以上であり、かつ、曲げ強さが4MPa以上であることを特徴とする透水平板。
【請求項2】
前記バインダには白華防止剤を含み、前記ポリマー増粘剤は、アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の透水平板。
【請求項3】
前記表層を構成する表層用バインダの表面側には、NOx除去用触媒としての酸化チタンが固着していることを特徴とする請求項1記載の透水平板。
【請求項4】
前記表層には、その表面にNOx除去用触媒としての酸化チタンを主成分とする薄層を有していることを特徴とする請求項1記載の透水平板。
【請求項5】
前記酸化チタンは、ペルオクソチタン酸イオン水溶液又はチタン塩水溶液と過酸化水素との反応物由来であることを特徴とする請求項3又は4記載の透水平板。
【請求項6】
ポリマー増粘剤が混和されたセメントC、該セメントCの総質量に対する質量割合(W/C)が0.20〜0.35の範囲内にある水(W)、及び粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の表層用骨材、とを含む表層用ブロック材料、並びに、
ポリマー増粘剤が混和されたセメントC、該セメントCの総質量に対する質量割合(W/C)が0.20〜0.35の範囲内にある水(W)、及び粒子径が1mm〜10mmの範囲内にあり、均等係数が4未満の基部層骨材、とを含む基部層用ブロック材料、を用い、
振動を与えつつ型枠内に基部層用ブロック材料を充填する基部層用ブロック材料充填工程、
該充填工程後直ちに振動を与えつつ充填物に圧縮力を作用させて締め固めする型締め工程、
該型締め工程後に直ちに振動を与えつつ型枠内に表層用ブロック材料を充填する表層用ブロック材料充填工程、
充填工程後直ちに振動を与えつつ充填物に圧縮力を作用させて成形する成形工程、
を順次行い、その後、
成形物を型枠から脱型する脱型工程、成形物を養生させる養生工程、を組み合わせて行うことを特徴とする透水平板の製造方法。
【請求項7】
前記バインダには白華防止剤を含み、前記ポリマー増粘剤はアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項6記載の透水平板の製造方法。
【請求項8】
前記成形工程後であって、前記養生工程前に、表面側から光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタンを付与する酸化チタン付与工程を行った後、養生を行うことを特徴とする請求項6記載の透水平板の製造方法。
【請求項9】
前記酸化チタン付与工程は、酸化チタンを含むスラリーの所定量を付与するスラリー付与工程である請求項8記載の透水平板の製造方法。
【請求項10】
前記酸化チタン付与工程は、養生工程前のセメントが保有するアルカリ性を利用して、セメント表面にペルオクソチタン酸イオン水溶液を作用させることにより、光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタン膜を成膜する成膜工程であることを特徴とする請求項8記載の透水平板の製造方法。
【請求項11】
前記酸化チタン付与工程は、養生工程前のセメントが保有するアルカリ性を利用して、セメント表面にチタン塩水溶液を作用させたのち、過酸化水素を作用させることにより、光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタン膜を成膜する成膜工程であることを特徴とする請求項8記載の透水平板の製造方法。
【請求項12】
前記養生工程後の適宜の段階で、表面側から光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタンを付与する酸化チタン付与工程を含むことを特徴とする請求項6記載の透水平板の製造方法。
【請求項13】
前記酸化チタン付与工程は、酸化チタンを含むスラリーを付与するスラリー付与工程であることを特徴とする請求項12記載の透水平板の製造方法。
【請求項14】
前記酸化チタン付与工程は、アルカリの存在下にペルオクソチタン酸イオンを作用させて光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタン膜を成膜する成膜工程であることを特徴とする請求項13記載の透水平板の製造方法。
【請求項15】
前記酸化チタン付与工程は、アルカリの存在下に、(1)ペルオクソチタン酸イオン水溶液を作用させて光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタン膜を成膜するか、又は(2)チタン塩水溶液を付与させた後、過酸化水素水を作用させて光触媒として機能するNOx除去用触媒としての酸化チタンを成膜する成膜工程であることを特徴とする請求項13記載の透水平板の製造方法。
【請求項16】
前記ペルオクソチタン酸イオン水溶液は、チタン塩水溶液と過酸化水素水との混合水溶液であることを特徴とする請求項10又は15に記載の透水平板の製造方法。
【請求項17】
前記チタン塩は、硫酸チタン又は塩化チタンであることを特徴とする請求項11又は15に記載の透水平板の製造方法。
【請求項18】
前記アルカリは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、又はアンモニアのいずれか一つであることを特徴とする請求項14又は15に記載の透水平板の製造方法。
【請求項19】
前記チタン塩が硫酸チタンであり、前記アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムのいずれか一つであることを特徴とする請求項18に記載の透水平板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−124260(P2006−124260A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318155(P2004−318155)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(591286085)東洋工業株式会社 (17)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】