説明

透水性側溝の蓋部材

【課題】 各等辺山形型材同士が重なるように蓋部材を積み重ねていくことができ、繋ぎ板部材を通水間隙のスペーサとして使用して容易に溶接することができ、隣り合う等辺山形型材同士をフレキシブルに変形可能になるように連結させ、衝撃に対して十分な連結強度を持たせることができる透水性側溝の蓋部材の提供。
【解決手段】 蓋部材2を構成する各等辺山形型材21は、隣り合う等辺山形型材21a,21b同士が1ヶ所又は2ヶ所以上で繋ぎ板部材22を介して連結され、繋ぎ板部材はその板厚が通水間隙20と同一厚に形成され、その繋ぎ板部材の両板面22a,22bに隣り合う等辺山形型材の傾斜下端縁23a,23bが当接すると共に、当接部の上方隅部に隅肉溶接部24a,24bが形成され、この隅肉溶接部により隣り合う等辺山形型材同士が繋ぎ板部材を介してフレキシブルに変形可能に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水の排水機能を有する透水路面層によって上面が覆われている透水性側溝において、この透水性側溝に用いられる蓋部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、側溝本体の上面を雨水の排水機能を有する透水路面層によって覆うようにした透水性側溝が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この透水性側溝は、複数の等辺山形型材をスリット状の通水間隙を保持して連結させた蓋部材を形成させ、この蓋部材の両端部を側溝本体に形成した左右の蓋受け段差面の間に載置させた状態で、この蓋部材の上に透水路面層を形成させる構造になっている。
従って、雨水は透水路面層を透水し、さらに蓋部材を形成する等辺山形型材間の通水間隙を通して側溝本体の内部に流入するもので、これにより雨水を効率よく側溝内に排水させることができる。
【0004】
このように、スリット状の通水間隙は、ここから雨水を側溝内に排水させると同時に、ここから透水路面層の小骨材が流出するのを防止させるような間隔に設定することが重要である。
又、前記蓋部材は、各等辺山形型材の両端部が蓋受け段部に対して馴染むように載置され、ガタ付きなく装着されるようにすることが必要であり、このため、各等辺山形型材の連結部において捻じれや曲げ変形が生じ、フレキシブルに変形可能になるように隣り合う等辺山形型材同士を連結させている。
【0005】
このような蓋部材として、角部を頂部とした数本の等辺山形型材(アングル型鋼)を、スリット状の通水間隙を保持した並列状態に連結部材としての2本(2本以上でも可)の連結細棒によって連結させた構造になっている。
この蓋部材は、各等辺山形型材を角部が頂部となるように並列させ、その状態で等辺山形型材の傾斜下端を連結細棒によって一連に連結させたものであった。
しかしながら、このような蓋部材を保管や運搬等に伴い積み重ねる場合、前記連結細棒が等辺山形型材の両傾斜下端間に渡されているため、これが邪魔になり各等辺山形型材同士が重なるように順次に積み重ねていくことができないという問題があった。
このため、蓋部材の積み重ね高さが嵩高になり、その積み重ね状態で滑り易くなるし、荷姿が不安定になるなど、蓋部材の運搬時及び作業時において安全面で問題を残していた。
【0006】
又、他の蓋部材として、角部を頂部とした数本の等辺山形型材(アングル型鋼)を、スリット状の通水間隙を保持した並列状態に連結部材によって連結させた構造もある。
この蓋部材は、隣り合う等辺山形型材の傾斜下端の間に略L字状の連結部材を下側から溶接して連結させたもので、このような連結部材を用いると、各等辺山形型材同士が重なるように積み重ねていくことは可能である。
【0007】
しかしながら、蓋部材の製作に際し、前記連結部材を等辺山形型材の下側から溶接するには、各等辺山形型材はその形状が規格内であってもそれぞれに微妙な違いを有することもあって、通水間隙を一定幅に保持させるには煩雑な手間が必要になる。
また、略L字状の連結部材は頂部の角度が変形し易いため、スリット状の通水間隙を一定幅に保持することが困難であった。
このため、上側から溶接作業を行なうには、専用の治具を用いて各等辺山形型材と連結部材をセットさせる必要が生じるという問題があった。
即ち、複雑構造の治具を作成し、その治具を用いて隣り合う等辺山形型材の間に通水間隙を保持させると共に、その等辺山形型材を反転させて角部が下向きになるように置き、次に隣り合う等辺山形型材間に跨るように連結部材を載せ、その状態で連結部材と等辺山形型材を溶接させる必要があった。
【特許文献1】特開2005−23776号公報(図2、図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、板厚が通水間隙と同一厚に形成された繋ぎ板部材を用いて隣り合う等辺山形型材同士を溶接により連結させることにより、各等辺山形型材同士が重なるように蓋部材を積み重ねていくことができるようにして安全性を向上させる。
又、繋ぎ板部材を通水間隙のスペーサとして使用しながら容易に溶接することができると共に、隣り合う等辺山形型材同士を、その連結部においてフレキシブルに変形可能になるように連結させ、かつ衝撃に対して十分な連結強度を持たせることができるようにした透水性側溝の蓋部材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の(請求項1)の透水性側溝の蓋部材は、
左右の側壁(12),(12)に蓋受け段差面(14),(14)が形成された側溝本体(1)と、角部(2a)を頂部とした複数の等辺山形型材(21),(21)がスリット状の通水間隙(20)を保持して側溝の長さ方向に並列状態で連結された多数の蓋部材(2)を備え、
前記蓋部材(2)が側溝の長さ方向に列設された状態で前記蓋受け段差面(14),(14)間に載置されると共に、この蓋部材(2)の上に透水路面層(3)が形成された透水性側溝(A)において、
前記蓋部材(2)を構成する各等辺山形型材(21)は、隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)同士が通水間隙(20)のスリット方向中央部1ヶ所で繋ぎ板部材(22)を介して連結され、
前記繋ぎ板部材(22)はその板厚Xが前記通水間隙(20)と同一厚に形成され、その繋ぎ板部材(22)の両板面(22a),(22b)に前記隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)の傾斜下端縁(23a),(23b)がそれぞれ当接すると共に、前記当接部の上方隅部に隅肉溶接部(24a),(24b)が形成され、
この隅肉溶接部(24a),(24b)により隣り合う等辺山形型材同士(21a),(21b)が繋ぎ板部材(22)を介してフレキシブルに変形可能に連結されている構成とした。
【0010】
また、本発明の(請求項2)の透水性側溝の蓋部材は、
左右の側壁(12),(12)に蓋受け段差面(14),(14)が形成された側溝本体(1)と、角部(2a)を頂部とした複数の等辺山形型材(21),(21)がスリット状の通水間隙(20)を保持して側溝の長さ方向に並列状態で連結された多数の蓋部材(2)を備え、
前記蓋部材(2)が側溝の長さ方向に列設された状態で前記蓋受け段差面(14),(14)間に載置されると共に、この蓋部材(2)の上に透水路面層(3)が形成された透水性側溝(A)において、
前記蓋部材(2)を構成する各等辺山形型材(21)は、隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)同士が通水間隙(20)のスリット方向に2ヶ所以上で繋ぎ板部材(22)を介して連結され、
前記繋ぎ板部材(22)はその板厚Xが前記通水間隙(20)と同一厚に形成され、その繋ぎ板部材(22)の両板面(22a),(22b)に前記隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)の傾斜下端縁(23a),(23b)がそれぞれ当接すると共に、前記当接部の上方隅部に隅肉溶接部(24a),(24b)が形成され、
この隅肉溶接部(24a),(24b)により隣り合う等辺山形型材同士(21a),(21b)が繋ぎ板部材(22)を介してフレキシブルに変形可能に連結されている構成とした。
【0011】
又、本発明(請求項3)の透水性側溝の蓋部材は、
請求項1又は2記載の透水性側溝(A)の蓋部材(2)において、前記繋ぎ板部材(22)は前記通水間隙(20)のスリット方向を幅方向とし、その幅方向のほぼ中央部において、その上面から高さ方向の中程まで切り込み部(22c)が形成され、
前記繋ぎ板部材(22)の切り込み部(22c)から一方の幅方向端部までの間における上方隅部のうち一方の等辺山形型材(21a)とで形成される上方隅部に隅肉溶接部(24a)が形成されると共に、前記繋ぎ板部材(22)の切り込み部(22c)から他方の幅方向端部までの間における上方隅部のうち他方の等辺山形型材(21b)とで形成される上方隅部に隅肉溶接部(24b)が形成されている構成とした。
【0012】
又、本発明(請求項4)の透水性側溝の蓋部材は、
請求項1記載の透水性側溝(A)の蓋部材(2)において、前記通水間隙(20)のスリット方向両端部において隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)間に間隔保持部材(4),(4)が設けられ、
この間隔保持部材(4),(4)によって、隣り合う等辺山形型材同士(21a),(21b)が通水間隙(20)のスリット幅を拡縮させる水平曲げ方向の変形を規制されると共に、上下曲げ方向の変形及び側溝の長さ方向を軸とした捻じれ方向の変形を許容されるように形成されている構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明(請求項1、2)の透水性側溝の蓋部材は、繋ぎ板部材の両板面に隣り合う等辺山形型材の傾斜下端縁をそれぞれ当接させ、その当接部の上方隅部を隅肉溶接させて、その隅肉溶接部により隣り合う等辺山形型材同士を繋ぎ板部材を介してフレキシブルに変形可能に連結させた構成に特徴がある。
【0014】
この場合、1個の繋ぎ板部材を使用し、この1個の繋ぎ板部材を介して隣り合う等辺山形型材同士を通水間隙のスリット方向中央部1ヶ所で1連結させてもよいし(請求項1)、2個以上の繋ぎ板部材を使用し、この2個以上の繋ぎ板部材を介して隣り合う等辺山形型材同士を通水間隙のスリット方向に2ヶ所以上で連結させてもよい(請求項2)。
【0015】
1個の繋ぎ板部材によって隣り合う等辺山形型材同士を中央部1ヶ所で連結させると、連結箇所が1ヶ所であるため、その連結強度が低下するものの、連結部(繋ぎ板部材)を中心として隣り合う等辺山形型材同士のフレキシブルな変形を容易にさせることができ、蓋部材の両端部を蓋受け段部に対して馴染むように載置させ、ガタ付きなく装着させることができる。
なお、連結強度の低下に対しては、繋ぎ板部材を複数個用いる場合と比べて繋ぎ板部材のサイズを大きくすることによって対応することができる。
【0016】
一方、2個以上の繋ぎ板部材によって隣り合う等辺山形型材同士を2ヶ所以上で連結させると、連結箇所が2ヶ所以上になるため、変形容易性が低下するものの連結強度を向上させることができる。
なお、変形容易性の低下に対しては、繋ぎ板部材を1個用いる場合と比べて繋ぎ板部材のサイズを小さくすることによって対応することができる。
【0017】
また、繋ぎ板部材の両板面に隣り合う等辺山形型材の傾斜下端縁がそれぞれ当接するようにセットさせるだけの簡単な手間で溶接を行なうことがことができるもので、このとき、前記繋ぎ板部材の板厚が通水間隙と同一厚に形成されているため、この繋ぎ板部材が通水間隙を形成させるためのスペーサとして機能する。
【0018】
又、等辺山形型材は角部が頂部となるようにセットさせればよいため、そのセット状態を安定させることができるし、当接部の上方隅部を隅肉溶接するため、溶接作業を上から行なうことができ、溶接作業が簡単になるし、溶接ロボットを用いることも可能になる。
なお、連結部において生じさせるフレキシブル性や衝撃に対する強度等は、隅肉溶接部の深さや長さを検討することによって適宜に設定することができる。
【0019】
また、従来の連結細棒を用いたものとは異なり、隣り合う等辺山形型材同士を繋ぎ板部材によって連結させているため、各等辺山形型材同士が重なるように順次に積み重ねていくことができるため、その積み重ね状態での滑りを防止できるし、蓋部材の積み重ね高さの嵩張りを低くすることができるため、その荷姿を安定させることができ、蓋部材の運搬時や作業時において荷崩が生じることに伴う危険を回避して安全性を確保できる。
【0020】
本発明(請求項3)の透水性側溝の蓋部材は、繋ぎ板部材に形成した切り込み部から一方の幅方向端部までの間における上方隅部のうち一方の等辺山形型材とで形成される上方隅部に隅肉溶接部を形成させ、かつ前記切り込み部から他方の幅方向端部までの間における上方隅部のうち他方の等辺山形型材とで形成される上方隅部に隅肉溶接部を形成させた構成に特徴がある。
【0021】
即ち、隣り合う等辺山形型材は、繋ぎ板部材に形成した切り込み部の左右で互い違いに連結されるため、繋ぎ板部材における切り込み部から下の部分において連結された状態になる。
このように繋ぎ板部材に切り込み部を形成するだけの簡単な構造で、繋ぎ板部材と等辺山形型材とを上側からの溶接によって簡単かつ確実に連結させることができるし、隣り合う等辺山形型材同士の連結部(繋ぎ板部材)に捻じれや曲げ変形を生じさせて、フレキシブルに変形可能に連結させることができる。
【0022】
本発明(請求項4)の透水性側溝の蓋部材は、通水間隙のスリット方向両端部において隣り合う等辺山形型材間に、通水間隙のスリット幅を拡縮させる水平曲げ方向の変形を規制させると共に、上下曲げ方向の変形(上下湾曲変形)及び側溝の長さ方向を軸とした捻じれ方向の変形を許容させる間隔保持部材を設けた構成に特徴がある。
【0023】
前記請求項1のように、1個の繋ぎ板部材を介して隣り合う等辺山形型材同士を通水間隙のスリット方向中央部1ヶ所で1連結させると、連結部を中心として隣り合う等辺山形型材同士のフレキシブルな変形を容易にさせることができ、蓋部材の両端部を蓋受け段部に対して馴染むように載置させ、ガタ付きなく装着させることができる。
【0024】
この場合、隣り合う等辺山形型材同士のフレキシブルな変形としては、繋ぎ板部材を中心とし、通水間隙のスリット幅を拡縮させる水平曲げ方向の変形や上下曲げ方向の変形や側溝の長さ方向を軸とした捻じれ方向の変形が可能になる。
蓋部材を蓋受け段部に対してガタ付きなく装着させるには、上下曲げ方向の変形及び側溝の長さ方向を軸とした捻じれ方向の変形によって対応させることができる。
一方、通水間隙のスリット幅を拡縮させる水平曲げ方向の変形については、その変形によってスリット幅が一定せずにバラツキが生じ、スリット幅が拡大した場所では透水路面層に用いる小骨材が通水間隙からこぼれ落ちたり、スリット幅が縮小した場所では本来の通水機能が低下して雨水の排水不良を招いたりするおそれがある。
【0025】
本発明(請求項4)の透水性側溝の蓋部材では、間隔保持部材によって、通水間隙のスリット幅を拡縮させる水平曲げ方向の変形を規制させているため、通水間隙を一定幅に保持することができ、小骨材がこぼれ落ちたり、通水機能が低下したりするのを防止できる。
また、上下曲げ方向の変形及び側溝の長さ方向を軸とした捻じれ方向の変形を許容させているため、蓋部材の両端部を蓋受け段部に対して馴染むように載置させ、ガタ付きなく装着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1〜図6は請求項1及び請求項3に対応したもので、図1は本発明における透水性側溝の第1実施例を示す平面図、図2はその透水性側溝の幅方向断面図、図3はその透水性側溝の長さ方向断面図、図4は蓋部材の部分拡大平面図(図1のC部拡大図)、図5は図4のE−E断面図、図6は図4のF−F断面図である。
【0027】
図において、1は側溝本体で、現場打ち施工によって形成され、上面が開口し、底部11と左右の側壁12,12により内部に溝水路13に形成され、前記両側壁12,12の内面上端部分に左右の蓋受け段差面14,14が形成されている。
なお、側溝本体1としてコンクリート二次製品を用いることができる。
【0028】
そして、前記蓋受け段差面14,14間に側溝の長さ方向(図1及び図3において矢印M方向)に列設させた状態で多数の蓋部材2の両端部が載置されると共に、この蓋部材2の上に透水路面層3が形成されることで透水性側溝Aが形成されている。
これにより、雨水は透水路面層3を透水し、さらに蓋部材2に側溝の幅方向(図1及び図2において矢印N方向:スリット方向)に形成したスリット状の通水間隙20を通して側溝本体1の溝水路13に流入する。
【0029】
この実施例は、透水性側溝Aを、前記特許文献1(特開2005−23776号公報)に示したような従来構造の通水性舗装路Bの路肩部分に設置した例である。
即ち、図2に示すように、下地層(不透水層)91の上に通水性表層90が形成された通水性舗装路Bの路肩部に透水性側溝Aが設置されたもので、この透水性側溝Aの透水路面層3と前記通水性舗装路Bの通水性表層90とが同時施工で一体に連続して形成されている。
【0030】
このように透水性側溝Aの透水路面層3を通水性舗装路Bの通水性表層90に連続させるように施工することで、通水性舗装路B上の雨水を通水性表層90に透水させたのち、この通水性表層90から引き続き連続して透水性側溝Aの透水路面層3に流入させることができる。
【0031】
実施例では、透水路面層3の一側(画面右側)のみを通水性舗装路Bの通水性表層90に連続させた施工例を示したが、これに限らず、道路を横断して透水性側溝Aを設置させるような場合、透水路面層3の左右両側を通水性舗装路Bの通水性表層90に連続させるように施工することができるし、必ずしも通水性舗装路Bの通水性表層90に連続させる必要はなく、透水性側溝Aの上だけに透水路面層3を形成してもよい。
【0032】
前記蓋部材2は、角部2aを頂部とした複数(実施例では9個)の等辺山形型材21がスリット状の通水間隙20を保持して側溝の長さ方向に並列状態で連結されたもので、この蓋部材2を構成する各等辺山形型材21は、隣り合う等辺山形型材21,21,同士が1個の繋ぎ板部材22を介して通水間隙20のスリット方向(矢印N方向)中央部1ヶ所で連結されている。
【0033】
前記繋ぎ板部材22は、その板厚X1が前記通水間隙20と同一厚に形成されると共に、その板面形状が方形に形成されている。
そして、その両板面22a,22bに前記隣り合う等辺山形型材21a,21bの傾斜下端縁23a,23bがそれぞれ当接すると共に、前記当接部の上方隅部に隅肉溶接部24a,24bが形成され、この隅肉溶接部24a,24bによって隣り合う等辺山形型材21a,21b同士が繋ぎ板部材22を介してフレキシブルに変形可能に連結されている。
【0034】
実施例では、板面の横幅Y1(通水間隙のスリット方向)が50mm、板面の縦幅Z1(側溝の高さ方向)が16mm、板厚X1が5mmに形成された繋ぎ板部材22を用いている。
【0035】
又、前記繋ぎ板部材22はその幅方向のほぼ中央部において、その上面から高さ方向の中程まで切り込み部22cが形成されている。この実施例では、繋ぎ板部材22の上端から6mmの深さで切り込み部22cが形成され、この切り込み部22cの下に10mmの高さで連続部25を残している。
なお、連続部25の高さは、繋ぎ板部材22の板厚を5mmとした場合、強度面から見て少なくとも5mm以上にするのが好ましい。
【0036】
そして、前記繋ぎ板部材22の切り込み部22cから一方の幅方向端部までの間における上方隅部のうち一方の等辺山形型材21aとで形成される上方隅部に隅肉溶接部24aが形成されると共に、前記繋ぎ板部材22の切り込み部22cから他方の幅方向端部までの間における上方隅部のうち他方の等辺山形型材21bとで形成される上方隅部に隅肉溶接部24bが形成されている。
【0037】
即ち、隣り合う等辺山形型材21a,21bは、繋ぎ板部材22に形成した切り込み部22cの左右において隅肉溶接部24a,24bにより互い違いに連結されるため、繋ぎ板部材22における切り込み部22cから下の部分である連続部25において連結された状態になっている。
この場合、図5及び図6に示すように、等辺山形型材21a,21bの傾斜下端縁23a,23bの位置が前記切り込み部22cの切込奥端面26の位置に一致するように形成されている。
なお図4及び図6において、隅肉溶接部24a及び隅肉溶接部24bを黒塗潰により示す。
【0038】
蓋部材2の製作に際しては、各等辺山形型材21を、それぞれ隣り合う等辺山形型材21a,21b間に通水間隙20を保持させるように、角部2aを頂部として並列させるものである。
このとき、隣り合う等辺山形型材21a,21bの間に繋ぎ板部材22を配設させて、この繋ぎ板部材22の板面22a,22bに等辺山形型材21a,21bの傾斜下端縁23a,23bを当接させるようにセットさせれば、この繋ぎ板部材22の板厚X1が通水間隙20と同一に形成されているため、それだけで隣り合う等辺山形型材21a,21b間に通水間隙20を保持させることができる。
【0039】
次に、繋ぎ板部材22に形成した切り込み部22cから一方の幅方向端部までの間において一方の等辺山形型材21aとで形成される上方隅部と、前記切り込み部22cから他方の幅方向端部までの間において他方の等辺山形型材21bとで形成される上方隅部をそれぞれ隅肉溶接により溶接(例えば、アーク溶接)させるものである。
【0040】
従って、隣り合う等辺山形型材21a,21bは、切り込み部22cの左右で隅肉溶接部24a及び隅肉溶接部24bにより互い違いに連結されると共に、切り込み部22cから下に残した連続部25によって連結される。
これにより、繋ぎ板部材22と等辺山形型材21とを上側からの溶接によって簡単かつ確実に連結させることができるし、隣り合う等辺山形型材21a,21b同士の連結部に捻じれや曲げ変形を生じさせて、フレキシブルに変形可能に連結させることができる。
【0041】
特に、本実施例では、1個の繋ぎ板部材22によって隣り合う等辺山形型材21a,21b同士を中央部1ヶ所で連結させて連結箇所を1ヶ所にしているため、連結強度が低下するものの、連結部を中心として隣り合う等辺山形型材21a,21b同士のフレキシブルな変形を容易にさせることができ、蓋部材2の両端部を蓋受け段部14,14に対して馴染むように載置させ、ガタ付きなく装着させることができる。
なお、連結箇所を1ヶ所にしたことによる連結強度の低下に対しては、連結箇所を複数ヶ所にした場合(後述の第2実施例)に比べて繋ぎ板部材のサイズを大きく(Y1=50mm)することによって対応させている。
【0042】
次に、図7〜図10は請求項2及び請求項3に対応したもので、図7は本発明における透水性側溝の第2実施例を示す平面図、図8は蓋部材の部分拡大平面図(図7のD部拡大図)、図9は図8のG−G断面図、図10は図8のH−H断面図である。
この第2実施例において、前記第1実施例と同様の構成については図面の符号を同一にしている。
【0043】
この第2実施例では、隣り合う等辺山形型材21a,21b同士が通水間隙20のスリット方向に2ヶ所で繋ぎ板部材22,22を介して連結されており、その他の構成は前記第1実施例と同様である。
この場合、通水間隙20のスリット方向の中央線Lを基準としてほぼ同一間隔になるように2個の繋ぎ板部材22,22が配設されている。
【0044】
実施例の繋ぎ板部材22は、板面の横幅Y2(通水間隙20のスリット方向)が25mm、板面の縦幅Z2(側溝の高さ方向)が13mm、板厚X2が5mmに形成された繋ぎ板部材22を用いている。
【0045】
又、前記繋ぎ板部材22はその幅方向のほぼ中央部において、その上端から高さ方向の中程まで切り込み部22cが形成されている。この実施例では、繋ぎ板部材22の上端から5mmの深さで切り込み部22cが形成され、この切り込み部22cの下に8mmの高さで連続部25を残している。
【0046】
このように、2個の繋ぎ板部材22,22によって隣り合う等辺山形型材21a,21b同士を2ヶ所で連結させて、連結箇所を2ヶ所にしているため、変形容易性が低下するものの連結強度を向上させることができる。
なお、連結箇所を2ヶ所にしたことによる変形容易性の低下に対しては、連結箇所を1ヶ所にした場合(前記第1実施例)に比べて繋ぎ板部材22の連続部25を小さく(高さ8mm)することによって対応させている。
【0047】
次に、図11及び図12は請求項4に対応したもので、図11は本発明における透水性側溝の第3実施例を示す平面図、図12はその透水性側溝の幅方向断面図である。
この第3実施例において、前記第1実施例と同様の構成については図面の符号を同一にしている。
【0048】
この第3実施例では、通水間隙20のスリット方向両端部において、隣り合う等辺山形型材21a,21b間に間隔保持部材4,4が設けられ、この間隔保持部材4,4によって、繋ぎ板部材22を中心とした通水間隙20のスリット幅を拡縮させる水平曲げ方向の変形を規制させると共に、繋ぎ板部材22を中心とした上下曲げ方向の変形(上下湾曲変形)及び側溝の長さ方向を軸とした捻じれ方向の変形を許容させるようになっている。
【0049】
実施例の間隔保持部材4は、その板厚が通水間隙20のスリット幅と同一(繋ぎ板部材22の板厚と同一)の板材を使用し、その片面を隣り合う等辺山形型材21a,21bの内の一方の等辺山形型材21a(又は等辺山形型材21b)の傾斜下端縁23aに溶接部41(黒塗潰により示す)によって固定させ、他面を他方の等辺山形型材21b(又は等辺山形型材21a)の傾斜下端縁23bに当接させている。
【0050】
このように、間隔保持部材4,4を設けることにより、通水間隙20のスリット幅を拡縮させる水平曲げ方向の変形を規制できるため、通水間隙20を一定幅に保持することができ、小骨材がこぼれ落ちたり、通水機能が低下したりするのを防止できる。
また、上下曲げ方向の変形及び側溝の長さ方向を軸とした捻じれ方向の変形を許容できるため、蓋部材2の両端部を蓋受け段部14,14に対して馴染むように載置させ、ガタ付きなく装着させることができる。
【0051】
なお、本発明において、繋ぎ板部材の個数、配設場所、サイズ(横幅、縦幅、板厚)、切り込み部の深さ、切り込み部から下の連続部の高さ、隅肉溶接部の幅や深さ等は、変形容易性と連結強度を勘案しながら必要に応じて適宜に設定できるし、繋ぎ板部材の材質についてもSS鋼、SGD鋼、SMA鋼、SPA−H鋼、SPA−C鋼、その他の鋼材を使用できる。
又、蓋部材は防錆のために溶融亜鉛メッキを施すようにしているが、繋ぎ板部材を使用した本発明の蓋部材では、この溶融亜鉛メッキを全体に行き渡らせることができる。
また、間隔保持部材についても、板材に限らず棒材等を使用できるし、材質及についても通水間隙のスリット幅を一定幅に保持できるものであれば特に制限はないし、その固定方法についても溶接に限らずビス止め等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明における透水性側溝の第1実施例を示す平面図である。
【図2】その透水性側溝の幅方向断面図である。
【図3】その透水性側溝の長さ方向断面図である。
【図4】蓋部材の部分拡大平面図(図1のC部拡大図)である。
【図5】図4のE−E断面図である。
【図6】図4のF−F断面図である。
【図7】本発明における透水性側溝の第2実施例を示す平面図である。
【図8】蓋部材の部分拡大平面図(図7のD部拡大図)である。
【図9】図8のG−G断面図である。
【図10】図8のH−H断面図である。
【図11】本発明における透水性側溝の第3実施例を示す平面図である。
【図12】その透水性側溝の幅方向断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 側溝本体
11 底部
12 側壁
13 溝水路
14 蓋受け段差面
2 蓋部材
2a 角部
20 通水間隙
21 等辺山形型材
21a 等辺山形型材
21b 等辺山形型材
22 繋ぎ板部材
22a 板面
22b 板面
22c 切り込み部
23a 傾斜下端縁
23b 傾斜下端縁
24a 隅肉溶接部
24b 隅肉溶接部
25 連続部
26 切込奥端面
3 透水路面層
4 間隔保持部材
41 溶接部
90 通水性表層
A 透水性側溝
B 通水性舗装路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側壁(12),(12)に蓋受け段差面(14),(14)が形成された側溝本体(1)と、角部(2a)を頂部とした複数の等辺山形型材(21),(21)がスリット状の通水間隙(20)を保持して側溝の長さ方向に並列状態で連結された多数の蓋部材(2)を備え、
前記蓋部材(2)が側溝の長さ方向に列設された状態で前記蓋受け段差面(14),(14)間に載置されると共に、この蓋部材(2)の上に透水路面層(3)が形成された透水性側溝(A)において、
前記蓋部材(2)を構成する各等辺山形型材(21)は、隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)同士が通水間隙(20)のスリット方向中央部1ヶ所で繋ぎ板部材(22)を介して連結され、
前記繋ぎ板部材(22)はその板厚Xが前記通水間隙(20)と同一厚に形成され、その繋ぎ板部材(22)の両板面(22a),(22b)に前記隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)の傾斜下端縁(23a),(23b)がそれぞれ当接すると共に、前記当接部の上方隅部に隅肉溶接部(24a),(24b)が形成され、
この隅肉溶接部(24a),(24b)により隣り合う等辺山形型材同士(21a),(21b)が繋ぎ板部材(22)を介してフレキシブルに変形可能に連結されていることを特徴とする透水性側溝の蓋部材。
【請求項2】
左右の側壁(12),(12)に蓋受け段差面(14),(14)が形成された側溝本体(1)と、角部(2a)を頂部とした複数の等辺山形型材(21),(21)がスリット状の通水間隙(20)を保持して側溝の長さ方向に並列状態で連結された多数の蓋部材(2)を備え、
前記蓋部材(2)が側溝の長さ方向に列設された状態で前記蓋受け段差面(14),(14)間に載置されると共に、この蓋部材(2)の上に透水路面層(3)が形成された透水性側溝(A)において、
前記蓋部材(2)を構成する各等辺山形型材(21)は、隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)同士が通水間隙(20)のスリット方向に2ヶ所以上で繋ぎ板部材(22)を介して連結され、
前記繋ぎ板部材(22)はその板厚Xが前記通水間隙(20)と同一厚に形成され、その繋ぎ板部材(22)の両板面(22a),(22b)に前記隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)の傾斜下端縁(23a),(23b)がそれぞれ当接すると共に、前記当接部の上方隅部に隅肉溶接部(24a),(24b)が形成され、
この隅肉溶接部(24a),(24b)により隣り合う等辺山形型材同士(21a),(21b)が繋ぎ板部材(22)を介してフレキシブルに変形可能に連結されていることを特徴とする透水性側溝の蓋部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の透水性側溝(A)の蓋部材(2)において、前記繋ぎ板部材(22)は前記通水間隙(20)のスリット方向を幅方向とし、その幅方向のほぼ中央部において、その上面から高さ方向の中程まで切り込み部(22c)が形成され、
前記繋ぎ板部材(22)の切り込み部(22c)から一方の幅方向端部までの間における上方隅部のうち一方の等辺山形型材(21a)とで形成される上方隅部に隅肉溶接部(24a)が形成されると共に、前記繋ぎ板部材(22)の切り込み部(22c)から他方の幅方向端部までの間における上方隅部のうち他方の等辺山形型材(21b)とで形成される上方隅部に隅肉溶接部(24b)が形成されている透水性側溝の蓋部材。
【請求項4】
請求項1記載の透水性側溝(A)の蓋部材(2)において、前記通水間隙(20)のスリット方向両端部において隣り合う等辺山形型材(21a),(21b)間に間隔保持部材(4),(4)が設けられ、
この間隔保持部材(4),(4)によって、隣り合う等辺山形型材同士(21a),(21b)が通水間隙(20)のスリット幅を拡縮させる水平曲げ方向の変形を規制されると共に、上下曲げ方向の変形及び側溝の長さ方向を軸とした捻じれ方向の変形を許容されるように形成されている透水性側溝の蓋部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−270425(P2009−270425A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242115(P2008−242115)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(504127887)エムシー産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】