説明

透湿透気性を有する非多孔質フィルム

フィルムはポリアミドと、酸部分の少なくとも一部が中和されて、含有される大部分がアルカリ金属イオンである塩となっている、有機酸改質されたアイオノマーとのブレンドを含む組成物を含むかまたはこの組成物から製造され、場合により、この組成物が、ジカルボン酸エステル含有ポリマー、軟化されたエチレン酸共重合体、エチレングリシジルエステル共重合体、またはこれらの2種以上の組合せから選択される相溶化剤を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿透気性を有する非多孔質ポリマーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素等の気体および湿分に対し高い透過性を示す合成フィルムは多くの用途に利用することができる。
【0003】
透水および透気性が高いことが所望され得る用途の1つに食材用ケーシングや食品包装がある。食材用ケーシングの作製に使用されるのは、セルロースや動物の腸等の天然材料か、あるいは最近使用されるようになってきた合成材料のいずれかである。通常、食材はこのケーシングに充填されている。燻製品が所望される場合は、この封入された食材にさらに燻煙処理を施すことができる。従来の燻煙処理においては、製造品は室内に懸吊され、ここで木材の燃焼により生じる高温の燻煙に曝される。これまで、こうした処理には、本来燻煙に対し透過性を有する天然のケーシング(例えば、腸から採取されたケーシングやセルロースまたはコラーゲンケーシング)しか使用することができないという不便さがあった。
【0004】
天然の産物および/またはセルロースから作製されたケーシングを用いると多くの不利益が生じる場合がある。すなわち、これらには高価なものもあり、水蒸気透過性が非常に高いため食材の著しい重量減少を引き起こす可能性があり、乾燥および/または界面の脂肪の酸化により製品が変化する可能性がある。同様に、天然のケーシングが微生物に汚損されることによりケーシング表面に黒ずみが現れる場合も多い。ファイブラスおよびセルロースケーシングの製造過程には二硫化炭素および硫化水素の大気中への放出が伴い、これは環境問題となるか、あるいは放出を最小限に抑えるための高額な気体洗浄システムが必要となる可能性がある。
【0005】
これらの問題を克服するべく様々な手法が試みられてきた。例えば、ソーセージ包装用の単層および多層プラスチックケーシングは当該技術分野において周知である。こうした合成材料からケーシングを作製する従来の試みは限られた成果しか収められていない。多種多様なプラスチック組成物から作製されたフィルムは、ソーセージの調理には適していても燻煙を透過させるには不十分である。例えば、ポリアミド(ナイロン)を含む単層フィルムはこの用途に必要とされる機械的性質を有しているが、湿分および燻煙を透過させるには不十分である。
【0006】
ソーセージ用ケーシングに適したブレンド組成物を作製するべくポリアミドを他のポリマー材料とブレンドする試みもなされてきた。例えば、米国特許第5773059号明細書、欧州特許出願公開第797918号明細書、欧州特許出願公開第476963号明細書、および国際公開第98/19551号パンフレットを参照されたい。
【0007】
最近では、米国特許出願第2004/0047951号明細書において、ブロックコポリエーテルアミド等の吸収性ポリマーをブレンドすることによってポリアミドを基体とするより燻煙性の高いケーシングを作製することが記載されている。しかしながら、このブレンドからダブルバブル法を用いてケーシングを調製することは困難であることが分かっている。
【0008】
燻製品の調製および貯蔵における重要な点は、ケーシングが工程段階に応じて異なる透過性を示すことが望まれていることにある。燻煙工程の最中は、高温(典型的には50〜100℃)および高湿度下で高い透過性を示すことが求められる。一旦製品の燻煙が完了して冷却されたら、ケーシングは湿分に対するバリアとして作用することが好ましく、すなわち50℃未満、特に30℃未満の温度においては透過性が低いことが好ましい。
【0009】
未改質のエチレン酸共重合体が高い透水性/透気性を有するという知見はない。しかし、エチレン酸共重合体および/またはそのアイオノマーは、透水/透気性が重要な要素となる用途に所望されるであろう他の特性を有している。
【0010】
透湿および透気性を有するアイオノマーフィルムが米国特許第7045566号明細書に記載されている。このフィルムは、アイオノマーと少なくとも約5重量%の量の有機酸塩とのブレンドから得られ、従来のアイオノマーから得られたフィルムよりも高いMVTRを有している。このフィルムはチューブ状のケーシングおよびシュリンクバッグ(shrink bag)、特に燻製食材用ケーシングの調製に好適であると記載されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
貯蔵および燻煙処理に効果的かつ効率的に使用することができる合成ケーシングが望まれている。このケーシングがダブルバブル法等の従来の製膜方法を用いて容易に作製されることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
組成物は、ポリアミド(ナイロン)と、有機酸で改質されたアイオノマーと、場合により、ジカルボン酸エステル含有共重合体、エチレン酸共重合体、およびエチレンエポキシド含有共重合体、またはこれらの2種以上の組合せを含む相溶化剤とのブレンドを含んでいてもよい。ジカルボン酸エステル含有ポリマーとしては、エチレン/無水マレイン酸共重合体またはエチレン/マレイン酸モノエステル共重合体を挙げることができる。エポキシド含有共重合体としては、エチレン/アクリル酸ブチル/メタクリル酸グリシジルまたはエチレン酸共重合体を挙げることができる。この組成物から製造されたフィルムはソーセージケーシング等の燻煙可能な食材の包装体の製造に必要とされる透過性および機械的性質を有することができる。
【0013】
有機酸改質されたアイオノマー組成物は、(a)1種またはそれ以上のエチレン酸共重合体すなわちE/W共重合体(式中、Eは、エチレンの共重合単位を表し、Wは、少なくとも1種のC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、Wは、E/W共重合体の約3〜35重量%とすることができ、エチレンはその残部を構成することができる)またはこの酸エチレン酸共重合体のアイオノマーと、(b)1種またはそれ以上の有機酸またはその塩(この有機酸は、4〜36個の炭素原子を有し、場合により、最も長い炭素鎖がC1〜C8アルキル基、OH基、およびOR1基(式中、R1は、それぞれ独立に、C1〜C8アルキル基、C1〜C6アルコキシアルキル基、またはCOR2基であり、R2は、それぞれ独立に、C1〜C8アルキル基であってもよい)からなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい)とのブレンドを含むかまたは該ブレンドから基本的になるかまたは該ブレンドからなり、有機酸またはその塩は、組成物中に(a)および(b)の合計の約5〜約50重量%存在し、E/W共重合体および有機酸中の酸基の合計の少なくとも50%は、金属イオンを含む対応する塩に名目上中和されており、この金属イオンの少なくとも50%はアルカリ金属イオンである。
【0014】
本発明はまた、上述した組成物を含むフィルムであって、ASTM D6701−01に準拠し、37.8℃、相対湿度100%で測定された水蒸気透過速度(MVTR)が少なくとも約300g/m2・Dであるフィルム(多層フィルムを含む);または上述した組成物を含むかもしくは上述した組成物を含むフィルムを備える包装体であって、食材を収容および加工するためのソーセージケーシング等の包装体も包含する。好適なフィルムの厚みは約0.25〜約5ミル、好ましくは0.5〜3ミルであり得る。
【0015】
ダブルバブルインフレーション法を用いた、上述した組成物を含むチューブ状フィルムの作製方法も包含される。
【0016】
本発明はまた、上述した組成物を含む包装体を作製することと、食材をこの包装体に装入する際のシャーリング加工工程と、包装された食材を燻煙および熱で処理することとを含む食材の調製方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に関連する最新技術をより十分に説明することを目的として、本記載においては幾つかの特許および刊行物を引用する。これらの特許および刊行物のそれぞれの開示内容をすべて本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。商標および商品名は大文字で表記する。
【0018】
「共重合体」とは、2種以上の異なるモノマーを含むポリマーを意味する。「二元共重合体」および「三元共重合体」という用語は、それぞれ2種および3種のみの異なるモノマーを含むポリマーを意味する。「様々なモノマーの共重合体」という語句は、その単位が様々なモノマーから誘導された共重合体であることを意味する。
【0019】
食材を燻煙することにより得られる効果は以下の通りである。すなわち、風味付け、色付け、抗酸化および抗菌作用による防腐、ならびに第2の表皮の形成(食肉および食肉製品の燻煙による化学的な特徴に関する一般的な参考文献は、「Advances in Food Research,第29巻」、Academic Press,Inc,Orlando,Fla.1984,87〜150に収録されている)。燻煙は、固体および液体粒子の分散相ならびに気相からなる。液体粒子のサイズは0.2〜0.4μmの間で変化する。
【0020】
燻煙の風味および色はいずれも、多くの作用物(agent)/物質同士の共同作用や、これらが製造物自体と反応することによって形成されるものである。燻煙の風味および色の形成に影響する因子は必ずしも同じである必要はなく、また、特定の因子が相乗性を有する場合もある。
【0021】
燻煙性とは、ケーシングの燻煙透過性を指す。ケーシングの燻煙性がケーシングの水蒸気透過速度(MVTR)と正比例することが認められている。
【0022】
ポリアミドを、有機酸改質アイオノマーと、場合により、ジカルボン酸エステル含有ポリマー、エチレン/酸/エステル三元共重合体、およびエチレン/グリシジルエステル共重合体からなる群から選択されていてもよい相溶化剤と溶融混練することにより、燻煙透過性を有する組成物およびそれから作製される燻製ソーセージの調製に好適なフィルムが得られる。
【0023】
この選択的透過性を有する組成物はポリアミドを含有している。この組成物には、当業者に周知のラクタムまたはアミノ酸から製造される任意のポリアミド(略語:PA)(ナイロンとも称され、本明細書においてこの用語は互換的に使用される)を使用することができる。本明細書において使用するのに好適なポリアミドとしては、脂肪族ポリアミド、非晶質ポリアミド、またはこれらの混合物が挙げられる。本明細書において使用される「脂肪族ポリアミド」という用語は、脂肪族ポリアミド、脂肪族コポリアミド、およびこれらのブレンドまたは混合物を指すことができる。
【0024】
ラクタムやアミノ酸等の単一種の反応体に由来するAB型ポリアミドと称されるポリアミドはNylon Plastics(Melvin L.Kohan編,1973,John Wiley and Sons,Inc.)に開示されており、そのようなものとして、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−12、またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。1種類を超えるラクタムまたはアミノ酸から調製されたポリアミドとしては、ナイロン−6,12が挙げられる。使用頻度の高いポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−12、およびナイロン−6,12、またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。
【0025】
本組成物に有用な他の周知のポリアミドとしては、ジアミンおよび二酸の縮合により調製されるAABB型ポリアミドと称されるもの(ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−612、ナイロン−1010、ナイロン−1212等)に加えて、ナイロン−66/610等のジアミンおよび二酸の組合せから調製されるもの、またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。
【0026】
ポリアミド6/66は、BASFから「Ultramid C4」および「Ultramid C35」の商品名で、または宇部興産(Ube Industries Ltd.)から「Ube5033FXD27」の商品名で市販されている。ポリアミド6は、例えば、E.I.du Pont de Nemoursからナイロン4.12の商品名で市販されている。
【0027】
好ましい実施形態においては、ISO307に準拠して96%H2SO4中0.5%で測定された脂肪族ポリアミドの粘度は、約140〜約270立方センチメートル毎グラムm(cm3/g)の範囲にある。
【0028】
本フィルムはさらに、米国特許第5,408,000号明細書、米国特許第4,174,358号明細書、米国特許第3,393,210号明細書、米国特許第2,512,606号明細書、米国特許第2,312,966号明細書、および米国特許第2,241,322号明細書に記載されているものなどの他のポリアミドを含んでいてもよい。本フィルムはまた、部分芳香族ポリアミドも含んでいてもよい。ポリ(m−キシレンアジパミド)(Mitsubishi Gas Chemical America Inc.)からのナイロンMXD6等)や、ヘキサメチレンジアミンおよびイソフタル/テレフタル酸から製造される非晶質ポリアミド(E.I. du Pont de Nemours and CompanyからSelar(登録商標)PAの商品名で市販されているかまたはEMS−Chemie AGからGrivory(登録商標)G21の商品名で市販されている非晶質ナイロン樹脂6−I/6−T)等の非脂肪族非晶質ポリアミドを使用してもよい。
【0029】
ポリアミドおよびその製造方法は当業者に周知であることから、その製造の開示は簡素化のため省略する。
【0030】
好ましいポリアミドは:
PA−6=H−(NH−(CH25−CO)n−OH(ナイロン−6)単独重合体または共重合体、
PA−66=H−(NH−(CH26−HN−CO−(CH24−CO)n−OH(ナイロン66)、
PA−612=H−(NH−(CH26−HN−CO−(CH210−CO)n−OH(ナイロン612)、
PA−6/66=H−(NH−(CH25−CO)−OH + H−(NH−(CH26−HN−CO−(CH24−CO)−OH(不規則配列)(ナイロン6/66)、
PA−6/12=H−NH−(CH25−CO)−OH + H−(NH−(CH211−CO)−OH(不規則配列)(ナイロン6/12)、
PA−6/69=H−(NH−(CH25−CO)−OH + H−(NH−(CH26−HN−CO−(CH27−CO)−OH(不規則配列)(ナイロン6/69)、および
MXDAを含むポリアミド、部分芳香族ポリアミド、ならびに上述のポリアミドの混合物を含む群から選択される。
【0031】
より好ましいポリアミドとしては、PA−6、PA−6/66、PA−66、またはPA−6/66およびPA−6の混合物が挙げられる。
【0032】
ポリアミドは、選択的透過性を有する組成物中に、ブレンドのポリマー成分全体の総重量を基準として45〜85重量%の量で存在させることができる。
【0033】
後述するように、ポリアミド−有機酸改質アイオノマーブレンド組成物の層を備える多層構造体中に、上述のポリアミドを含むかまたは上述のポリアミドから基本的になる(有機酸改質アイオノマーが添加されていない)層が含まれていてもよい。
【0034】
選択的透過性を有する組成物はまた、1種もしくはそれ以上のエチレン酸共重合体すなわちE/W共重合体もしくはこの酸共重合体のアイオノマー(Eは、エチレンの共重合単位を表し、Wは、少なくとも1種のC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、Wは、E/W共重合体の約3〜35、4〜25、または5〜20重量%とすることができ、エチレンが残部を構成することができる)を含むか、またはこれらから基本的になるか、またはこれらから製造される有機酸改質アイオノマー組成物も含有している。
【0035】
Wとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、MAME等の不飽和酸またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。
【0036】
具体的なE/W酸共重合体としては、エチレン/アクリル酸二元共重合体およびエチレン/メタクリル酸二元共重合体が挙げられる。他のE/W酸共重合体としては、エチレン/マレイン酸二元共重合体またはMAMEが挙げられる。
【0037】
本組成物の製造に使用される酸共重合体は、好ましくは、すべてのモノマーを同時に添加し、コモノマーに由来する原子がポリマー主鎖の一部を形成するように重合させた「ランダム」酸共重合体である。これらは、既成のポリマー上にさらなるモノマーを(多くの場合は後段のラジカル反応で)グラフトさせたグラフト共重合体とは区別される。
【0038】
エチレン酸共重合体は、米国特許第4,351,931号明細書に記載されているものなどの当業者に周知の任意の方法によるかまたは米国特許第5,028,674号明細書に開示されている「共溶媒技術(co−solvent technology)」を利用することによって製造することができる。
【0039】
上述したエチレン酸共重合体の酸部分の少なくとも一部を中和することにより、このエチレン酸共重合体からアイオノマーを得ることができる。ナトリウムやカリウムイオン等の金属陽イオンを含む塩基性化合物を含む中和剤を用いることによって、酸共重合体の酸基の少なくともある程度の部分が中和される。未改質のアイオノマーは、米国特許第3,264,272号明細書および米国特許第3,344,014号明細書に開示されている酸共重合体等から調製される。「未改質」とは、何もブレンドしていないアイオノマーの性質に影響を及ぼす物質が一切ブレンドされていないアイオノマーを指す。酸共重合体を使用し、これを金属化合物で処理することによって、未改質の溶融加工可能なアイオノマーを調製することができる。未改質アイオノマーの酸部分のうち、約15〜約90%または約40〜約75%等の任意の量を名目上中和することができる。ナトリウムおよび/またはカリウム陽イオンを含むアイオノマーがより好ましい。カリウム含有アイオノマーが最も好ましい。
【0040】
有用なアイオノマーとしては、E/アクリル酸またはE/メタクリル酸二元共重合体から得られる、重量平均分子量(Mw)が約80,000〜約500,000のアイオノマーが挙げられる。
【0041】
上述した酸共重合体または未改質アイオノマーを、後述する有機酸もしくはその塩および/または塩基性化合物と当業者に周知の任意の手段で混合することによって、有機酸改質されたアイオノマー組成物を調製することができる。
【0042】
有機酸および/またはその塩(以後、酸または塩を具体的に参照しない限り「酸」と総称する)は、アイオノマーの結晶性を破壊するか、および/または組成物の透過性を高めるのに十分な量で添加される。好ましくは、この酸は、エチレン酸共重合体および有機酸改質されたアイオノマーブレンドの酸の総重量の少なくとも約5重量%〜約50重量%の量で添加される。より好ましくは、酸は、有機酸改質されたアイオノマーブレンドの約10重量%〜約30重量%の量で添加される。
【0043】
有機酸は36個未満の炭素原子を有する一塩基性であるかまたはその塩であってもよく、アイオノマーまたは組成物中に約1〜約50重量%存在させることができる。この酸は、場合により、最も長い炭素鎖がC1〜C8アルキル、OH、およびOR1(式中、R1は、それぞれ独立にC1〜C8アルキル、C1〜C6アルコキシアルキル、またはCOR2であり;R2は、それぞれC1〜C8アルキルである)からなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、ただし、置換された酸は、本明細書に記載する炭素数の制限を満たしている。
【0044】
有機酸は、指定の有機酸と、これよりも少ない様々な量の異なる構造を有する複数の有機酸との混合物として商業的に入手してもよい。組成物が指定の酸を含む場合、指定の酸以外の酸は、商業的に供給されている指定の酸中に存在することが認められている従来量で存在してもよい。
【0045】
有機酸としては、例えば、C4〜C36(C34、C4~26、C6~22、C12~22等)の酸が挙げられる。名目上100%中和されている(すなわち、共重合体および有機酸中の酸部分を名目上完全に中和するのに十分な金属化合物が添加されている)場合、揮発性は問題とならないので、炭素含有量がより少ない有機酸を使用することができるが、有機酸(または塩)は不揮発性(当該試剤を酸共重合体と溶融混練する温度では揮発しない)かつ非移行性(通常の貯蔵条件下(周囲温度)でポリマー表面にブルームしない)であることが好ましい。有機酸としては、例えば、これらに限定されるものではないが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、およびリノール酸が挙げられる。好ましい有機(脂肪)酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、アラキジン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。ステアリン酸やベヘン酸等の飽和有機酸が好ましい場合がある。
【0046】
特に好ましいのは、分枝アルキル置換基または不飽和を有する非結晶性(周囲温度で)の酸の塩、例えば、イソステアリン酸塩やイソオレイン酸塩等である。非結晶性の分枝酸は驚くほど良好な透過性を付与する。
【0047】
これらの有機酸の塩はいずれも、任意のアルカリ金属、例えばリチウムやナトリウム等から得られるイオンを含むことができる(アルカリ土類および遷移金属は単独では透湿性を付与しない)。好ましくは、有機酸塩は、最終組成物中に存在する金属イオン中にアルカリ金属イオン(ナトリウム、カリウム塩、および/またはセシウム塩等)が少なくとも50%含まれるように、アルカリ金属イオンを含む。有機酸のカリウム塩が最も好ましい。
【0048】
有機酸は、酸形態または塩形態のどちらでも添加することができる。酸として添加した場合は、次いでブレンドされたエチレン酸共重合体組成物に対し中和ステップを実施することによって所望の中和度を得ることができる。同様に、有機酸塩をエチレン酸共重合体または共重合体のアイオノマーに添加することもできる。既に塩形態にある有機酸をアイオノマーに添加するがことが好ましい場合がある。有機酸を完全に中和することが好ましい場合がある。
【0049】
酸性基を中和することができる量の塩基性金属化合物を供与するには、化学量論量(ブレンド中の酸共重合体および有機酸の酸部分の標的量を中和する計算値)の塩基性化合物を添加すればよい(以後、「名目上の中和(%)」または「名目上中和されている」と称する)。こうすることによって、ブレンド中において十分な塩基性化合物が利用可能になり、それによって、全体として指定された名目上の中和度を達成することができる。E/W共重合体および有機酸中の酸基全体の50%超、60%、70%、80%、または90%(または100%さえ)を名目上中和して、金属イオンとの塩を形成させることができる。この金属イオンは、アルカリ金属イオンを少なくとも50モル%(好ましくは少なくとも60、70、80、90、または100%)含む。アルカリ金属以外に少量のアルカリ土類金属および/または遷移金属イオンの塩が存在してもよい。
【0050】
塩基性金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、またはこれらの陽イオンの組合せ等のアルカリ金属の化合物を含んでいてもよい。その例として、ナトリウム、カリウム、セシウム、またはナトリウム、カリウム、および/もしくはセシウムの任意の組合せが挙げられ、場合により少量の他の陽イオン(他のアルカリ金属イオン、遷移金属イオン、アルカリ土類金属イオン等)が含まれていてもよい。特筆すべき金属化合物としては、アルカリ金属、特に、ナトリウムおよびカリウムのイオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物、またはアルコキシド、ならびにアルカリ土類金属および遷移金属のイオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、またはアルコキシドが挙げられる。特筆すべきは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムである。
【0051】
E/W共重合体またはアイオノマー、有機酸またはその塩、および所望の中和度を達成するのに必要な塩基性化合物の混合物を加熱することによって、溶融加工可能な有機酸改質されたアイオノマーブレンドを生成させることができる。例えば、この組成物の成分の混合は、個々の成分を溶融混練し、それと同時にまたはその後に、酸部分(酸共重合体および有機酸の酸部分を含む)を、好ましくは名目上の中和度が70%超、80%、90%、ほぼ100%、または100%もしくはそれを超えるように中和することができる十分な量の塩基性化合物を加えることにより実施することができる。
【0052】
例えば、二軸押出機を使用することにより、酸共重合体および有機酸(または塩)を金属化合物と同時に混合して処理してもよい。混合は、成分が緊密に混合されて、塩基性金属化合物が酸性部分を中和できるように実施することが望ましい。
【0053】
このような方法で、不活性希釈剤を使用することなく酸共重合体および有機酸を塩基性化合物で処理(同時にまたは後段で)して組成物を調製すると、溶融加工性または特性(靭性や伸び等)の低下が回避され、アイオノマー単独の場合に予想されるよりも加工性や特性の低下を小さくすることができる。例えば、有機酸をブレンドした酸共重合体は、その溶融加工性を損なうことなく、名目上70%超、80%、90%、もしくは約100%までまたは100%中和することができる。さらに、名目上約100%または100%中和することによって有機酸の揮発性が低減される。
【0054】
後述もするが、ポリアミド−有機酸改質アイオノマーブレンド組成物の層を備える多層構造体に、上述の有機酸改質アイオノマー(ポリアミドを添加しないもの)を含むかまたはこれから基本的になる層を備えるものであってもよい。
【0055】
相溶化剤は、ジカルボン酸エステル含有ポリマー、エチレン酸共重合体すなわちE/X/Y共重合体、エチレンエポキシド含有(グリシジル)共重合体、および軟化された(softened)エチレン酸共重合体からなる群から選択することができ、これを選択的透過性を有する組成物中に使用することができる。好ましくは、使用される相溶化剤は1種類のみである。
【0056】
相溶化剤は有機酸改質アイオノマーおよびポリアミドの混和性を改善することができるものであり、これを用いることによってブレンド加工性(blending processibility)が改善されるとともにより均一な相間分散(interphase dispersion)が得られる。
【0057】
任意選択的な相溶化剤ポリマーとして、ジカルボン酸エステル含有ポリマーを使用してもよい。本明細書において用いられる「ジカルボン酸エステル含有ポリマー」という用語は、エチレンまたはプロピレンの共重合単位と、C4〜C8不飽和二酸の環状無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステル(例えば、これらの二酸の1個のカルボキシル基がエステル化されており、他がカルボン酸基であるもの)、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のジエステル、およびこれらの混合物からなる群から選択される極性コモノマーとを含むポリマーを指す。
【0058】
好ましくは、環状無水物ならびに二酸のモノエステルおよびジエステルは、ジカルボキシル基が近接しているもの(すなわち、カルボキシル基で置換されている炭素原子が連続しているもの)である。環状無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。モノエステルの例としては、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、およびシトラコン酸モノエステルが挙げられる。マレイン酸モノエステルは、マレイン酸ハーフエステルまたはマレイン酸水素アルキルとしても周知である。ジエステルの例としては、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、およびシトラコン酸ジエステルが挙げられる。エステルは、好ましくは、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含むエステルである。
【0059】
エチレンおよび無水マレイン酸の共重合体が好ましい。エチレンおよびマレイン酸モノエステル、より好ましくはマレイン酸C1〜C4アルキルモノエステル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルモノエステル等)の共重合体も好ましく、エチレンおよびマレイン酸モノエチルエステル(すなわちマレイン酸水素エチル)の共重合体も好ましい。
【0060】
ジカルボン酸エステル含有共重合体はグラフト化法等の周知の技法により得てもよく、これは、ポリエチレン単独重合体もしくは共重合体、ポリプロピレン単独重合体もしくは共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、またはエチレン/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体から選択されるポリマーを、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸モノエステル、または不飽和ジカルボン酸ジエステルおよびラジカル発生剤と一緒に有機溶媒に溶解した後、撹拌しながら加熱するものである。グラフト化法を行うことにより、無水物単位を約0.1〜約3重量%有する共重合体が得られる。得られるグラフト共重合体は、ポリマー主鎖中に不飽和ジカルボン酸エステル基由来の炭素が組み込まれておらず、ジカルボン酸エステル基がポリマー主鎖から懸垂している共重合体である。このようなグラフト共重合体はDuPontからFUSABOND(登録商標)またはBYNEL(登録商標)のブランド名で市販されている。
【0061】
無水マレイン酸やマレイン酸モノエチルエステル等の反応性官能基を含むエチレン共重合体は高圧ラジカル法を用いても容易に得ることができ、その場合はオレフィンコモノマーおよび官能性コモノマーがランダムに共重合される。このランダム共重合体は、ポリマー鎖が、エチレンと官能性コモノマー単位を約5〜約15重量%とのランダム共重合単位からなる形態を有する。ランダム共重合体はグラフト化ポリマーとは異なるものであり、区別して分類される。この共重合体においては、無水物コモノマーまたはジカルボン酸モノエステルもしくはジエステルコモノマーに由来する炭素原子(元々は不飽和であったもの)は、ポリマー主鎖に組み込まれている。
【0062】
好適な高圧法は、例えば、米国特許第4、351、931号明細書に記載されている。この方法により、無水物単位を3重量%超、例えば、約4または5重量%〜約15重量%有する共重合体を調製することが可能になる。このような共重合体としては、エチレン/無水マレイン酸やエチレン/マレイン酸モノエチルエステル共重合体等のオレフィン/マレイン酸エステル共重合体が挙げられる。
【0063】
エチレンの共重合単位と、少なくとも1種のC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位と、酢酸ビニル、アクリル酸アルキル、またはメタクリル酸アルキルの共重合単位とを含む軟化されたエチレン酸共重合体を、任意選択的な相溶化剤ポリマーとして使用することができる。
【0064】
この共重合体はE/X/Y共重合体と称することができ、Eは、エチレンの共重合単位を表し、Xは、共重合体の約2〜約35重量%存在する、少なくとも1種のC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、Yは、共重合体中に0.1〜約35重量%または約2〜約35重量%存在する、軟化用コモノマーの共重合単位を表す。
【0065】
「軟化」とは、対象となるポリマーが、少なくとも1種のC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を同量有するが軟化用コモノマーの共重合単位を有していないポリマーと比較して、結晶化度が低いことを意味する。
【0066】
Xの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和酸が挙げられる。好ましいXとしては、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。
【0067】
軟化用コモノマー(Y)の例としては、酢酸ビニル、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、またはこれらの組合せが挙げられ、アルキル基は1〜8個または1〜4個の炭素原子を有する。好適な軟化用コモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、および(メタ)アクリル酸n−ブチルである。
【0068】
E/X/Y共重合体の例としては、エチレン/アクリル酸/アクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸n−ブチル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸イソブチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸イソブチル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸メチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸エチル三元共重合体、およびエチレン/メタクリル酸/メタクリル酸エチル三元共重合体、またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。
【0069】
エチレングリシジルエステル共重合体は、エチレングリシジルエステル共重合体の総重量を基準として、エチレンエステル共重合体の総重量を基準として、エチレンの共重合単位を約20〜約95%と、1種またはそれ以上の式CH2=C(R5)CO26のオレフィンの共重合単位を約0.5〜約25%と、1種またはそれ以上の式CH2=C(R3)CO24のオレフィンの共重合単位を0〜約70%とを含むことができる(R3は、水素または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、R4は、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(メチル、エチル、ブチル、またはこれらの組合せ等)であり、R5は、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R6は、グリシジルである)。エチレングリシジルエステル共重合体は、(a)エチレン、(b)1種またはそれ以上の式CH2=C(R5)CO26のオレフィン、および場合により(c)1種またはそれ以上の式CH2=C(R3)CO24のオレフィンの単位(モノマー)を共重合させることにより製造することができる。エチレン共重合体の例としては、エチレンの共重合単位およびメタクリル酸グリシジルの共重合単位から基本的になるものがあり、これはEGMAと称される。任意選択的なモノマー(iii)は、アクリル酸ブチルであってもよい。アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸イソブチル、およびアクリル酸sec−ブチルのうちの1種またはそれ以上を使用することができる。エチレングリシジルエステル共重合体の例としては、エチレンの共重合単位、アクリル酸ブチルの共重合単位、およびメタクリル酸グリシジルの共重合単位から基本的になるもの(EBAGMA)に加えてエチレン、アクリル酸メチルの共重合単位およびメタクリル酸グリシジルの共重合単位から基本的になるもの(EMAGMA)がある。モノマー(iii)から誘導された共重合単位が存在する場合は、共重合体の重量を基準として、約3、15、または20%〜約35、40、または70%を構成することができる。
【0070】
エチレングリシジルエステル共重合体は、さらに一酸化炭素等の他のコモノマーを含んでいてもよい。存在する場合、一酸化炭素の共重合単位は、エチレングリシジルエステル共重合体の総重量を基準として、通常は約20重量%まで、または約3〜約15重量%を構成することができる。
【0071】
エチレングリシジルエステル共重合体は、米国特許第3350372号明細書、米国特許第3756996号明細書、米国特許第5532066号明細書、米国特許第5543233号明細書、および米国特許第5571878号明細書に開示されているものなどの任意の好適な方法で調製することができる。別法として、エチレングリシジルエステル共重合体は、エチレン共重合体またはポリオレフィンにメタクリル酸グリシジルをグラフトしたものであってもよく、これはメタクリル酸グリシジルから誘導された単位がポリマー鎖から懸垂している共重合体であり、エチレン/アクリル酸メチル共重合体等の既成のエチレン共重合体またはポリエチレン等のポリオレフィンをメタクリル酸グリシジルと反応させることにより得られる。
【0072】
好ましくは、ブレンドは、ポリアミドを、(1)、(2)、(3)、(4)、および(5)の総重量を基準として25〜85重量%と;有機酸改質アイオノマー組成物(2)を、(1)、(2)、(3)、(4)、および(5)の総重量を基準として25〜85重量%と;ジカルボン酸エステル含有ポリマーを、(1)、(2)、(3)、(4)、および(5)の総重量を基準として0〜15重量%と;エチレン酸三元共重合体を、(1)、(2)、(3)、(4)、および(5)の総重量を基準として0〜20重量%と;エチレングリシジルエステル共重合体を、(1)、(2)、(3)、(4)、および(5)の総重量を基準として0〜15重量%とを含む。
【0073】
任意選択的なジカルボン酸エステル含有共重合体またはエチレングリシジルエステル共重合体が組成物中に存在する場合は、存在するポリマー材料の総重量を基準として、0.1〜15重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%、2〜5重量%存在する。任意選択的な軟化されたエチレン酸共重合体が組成物中に存在する場合は、存在するポリマー材料の総重量を基準として、0.1〜20重量%、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%存在する。
【0074】
選択的透過性を有するブレンドは「ポリアミド富化」されていてもよく、ポリアミドがブレンドの45〜85重量%を構成し、有機酸改質アイオノマーがブレンドの25〜45重量%を構成し、相溶化剤は含まれていても含まれていなくてもよい。別法として、選択的透過性を有するブレンドは、「有機酸改質アイオノマー富化」されていてもよく、有機酸改質アイオノマーがブレンドの45〜85重量%を構成し、ポリアミドがブレンドの25〜45重量%を構成し、相溶化剤は含まれていても含まれていなくてもよい。
【0075】
ジカルボン酸エステル含有共重合体、軟化されたエチレン酸共重合体、および/またはエチレングリシジルエステル共重合体の組合せを組成物中に使用する場合、コンパチブリザー(compatiblizer)の総量は20重量%以下である。例えば、選択的透過性を有する組成物は、ジカルボン酸エステル含有共重合体を1〜10重量%および軟化されたエチレン酸共重合体を1〜10重量%含むか、またはジカルボン酸エステル含有共重合体を1〜10重量%およびエチレングリシジルエステル共重合体を1〜10重量%含むか、エチレングリシジルエステル共重合体共重合体を1〜10重量%および軟化されたエチレン酸共重合体を1〜10重量%含んでいてもよい。
【0076】
上に開示した選択的透過性を有する組成物は当業者に周知の任意の手段により製造することができる。これは実質的に溶融加工可能であり、その製造は、1種またはそれ以上のエチレン酸共重合体、1種またはそれ以上の一塩基性カルボン酸もしくはその塩、塩基性化合物、ポリアミド、および場合により相溶化剤(すなわち、ジカルボン酸エステル含有共重合体、エチレングリシジル共重合体、または軟化されたエチレン酸共重合体)を組み合わせて混合物を形成し、この混合物を、当該組成物を生成させるのに十分な条件下で加熱することにより実施することができる。加熱は、約140〜約350、約160〜約335、または180〜320℃の範囲の温度およびこの温度に対応する圧力で約30秒間〜約2または3時間実施することができる。例えば、この組成物は、酸共重合体および/またはそのアイオノマーを1種またはそれ以上の有機酸またはその塩と溶融混練し;それと同時にまたはその後に、酸部分を名目上の中和度が50%超、60%、70%、80%、90%〜ほぼ100%または100%になるまで中和することができる十分な量の塩基性金属化合物と混合し;ポリアミドおよび場合により上述した相溶化剤を混合することによって製造してもよい。成分はドライブレンド(salt−and−pepper blend)してもよいし、あるいは成分を押出機で溶融混練してもよい。
【0077】
場合によっては、エチレン酸共重合体および有機酸を、ポリアミド成分等の他のポリマー材料の存在下に塩基性化合物で中和することも可能である。しかしながら、有機酸改質されたアイオノマーブレンドを調製した後に、次いでポリアミドおよび相溶化剤中にブレンドすることが望ましい。
【0078】
本組成物は、ポリマーフィルム中に使用される従来の添加剤等の任意選択的な非高分子材料、例えば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および安定剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填剤、潤滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、離型剤、ならびに/またはこれらの混合物をさらに含んでいてもよい。これらの添加剤については、the Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technologyに記載されている。
【0079】
添加剤は、ドライブレンディング、様々な構成成分の混合物の押出、従来のマスターバッチ技法等の任意の周知の方法によって組成物に混合することができる。
【0080】
本組成物は当業者に周知の様々な手段を用いて物品に形成することができる。例えば、組成物を押出成形や貼り合わせ等によって所望の形状および寸法の物品を得ることも、あるいは好ましくは流延またはインフレーション成形によりシートまたはフィルムを得ることもできる。
【0081】
溶融押出されたポリマーは当業者に周知の任意の技法を用いてフィルムに変換することができる。例えば、インフレーション押出、キャストフィルム押出、およびキャストシート押出を行うことによって選択的透過性を有する組成物を含むフィルムまたはシートを作製することができる。
【0082】
選択的透過性を有する組成物を含む層およびこの組成物とは異なる組成物を含む少なくとも1つの他の層からフィルム等の多層構造体を作製することができる。多層構造体を形成するためには、これらの層を共押出することもできるし、あるいはこれらを独立に形成した後に接着することにより互いに付着させることもできる。さらなる層は、例えば熱可塑性樹脂を含むものであっても、あるいは熱可塑性樹脂から製造されたものであってもよく、それに本組成物から形成された層を接着させることによって、物品を保護するかまたは外観を改善する構造層が得られる。
【0083】
多層フィルム構造体は共押出により作製するか、または1種もしくはそれ以上の他の層を含む基材上に押出コーティングもしくは押出ラミネートすることにより作製することができる。
【0084】
多層フィルムは共押出により作製してもよい。例えば、選択的透過性を有する組成物またはその成分の顆粒および他の層の成分の顆粒を押出機内で溶融し、溶融ポリマー樹脂を製造し、これをダイまたは一連のダイを通過させることにより、層流として加工される溶融ポリマーの層が形成される。溶融ポリマーを冷却することにより層状構造が得られる。
【0085】
好ましくは、フィルムは、インフレーション押出または共押出により作製される。
【0086】
その例としては、選択的透過性を有する組成物の層と、選択的透過性を有する組成物以外のポリアミド組成物を含む少なくとも1つのさらなる層とを備える多層フィルムまたは選択的透過性を有する組成物の層と、選択的透過性を有する組成物以外の有機酸改質アイオノマー組成物を含む少なくとも1つのさらなる層とを備える多層フィルムが挙げられる。
【0087】
より具体的には、多層フィルムは、内層(層の両方の主要面が構造体の他の層と接触する層)としての選択的透過性を有する組成物の層と、ポリアミドを含む少なくとも1つの表面層(主要面の一方のみが他の層と接触する層)とを備えていてもよい。他の多層フィルムとしては、選択的組成物の少なくとも1つの内層と、有機酸改質アイオノマー組成物を含む内層(すなわち、エチレン酸共重合体および有機酸の組合せであり、その酸部分の少なくとも一部が中和されて塩(含有される大部分が上述したようなアルカリ金属イオンである)となっている)と、ポリアミドを含む表面層とを備えるものが挙げられる。
【0088】
他の多層フィルムの例としては、以下に列挙する構造が挙げられる。ここで「PA」は、有機酸改質されたアイオノマーを加えていないポリアミドを指し、「OAMI」は、ポリアミドを加えていない有機酸改質アイオノマーを指し、「PA富化」は、上に定義したポリアミド富化されたポリアミド−有機酸改質アイオノマーブレンドを指し、「OAMI富化」は上に定義した有機酸改質アイオノマー富化ポリアミド−有機酸改質アイオノマーブレンドを指す。各実施例において、様々な層に使用されるポリアミドは同一であっても異なっていてもよく、様々な層に使用される有機酸改質アイオノマーは同一であっても異なっていてもよい。
PA/OAMI/PA、
PA富化/OAMI/PA富化、
PA/OAMI富化/PA、
PA/OAMI富化/OAMI/OAMI富化/PA、および
PA富化/OAMI富化/OAMI/OAMI富化/PA富化。
【0089】
多層フィルムは、好ましくは3〜5層を備えていてもよく、および/または好ましくはインフレーションフィルムである。
【0090】
本明細書に記載されるフィルムは、フィルムを直後に急冷または流延した後にさらに延伸することができる。フィルムは一軸延伸してもよいが、好ましくは、機械的および物理的特性を十分に両立させるために、フィルム平面内の互いに直交する2つの方向に伸長することにより二軸延伸する。
【0091】
一軸または二軸延伸フィルムの延伸(orientation and stretching)装置は当該技術分野において周知であり、本発明のフィルムの製造に当業者が採用することができる。この種の装置および方法の例として、例えば、米国特許第3,278,663号明細書、米国特許第3,337,665号明細書、米国特許第3,456,044号明細書、米国特許第4,590,106号明細書、米国特許第4,760,116号明細書、米国特許第4,769,421号明細書、米国特許第4,797,235号明細書、および米国特許第4,886,634号明細書に開示されているものが挙げられる。
【0092】
好ましい実施形態においては、フィルムは、ダブルバブル押出(double bubble extrusion)法を用いて延伸される。この場合、一次チューブ(primary tube)を押出し、次いでこれを急冷し、再加熱した後、内部ガス圧で膨張させて横方向の延伸を誘発し、そして周速差を有するニップまたは搬送ローラーを用いて長手方向の延伸を誘発することができる速度で伸長することによって同時に二軸延伸することができる。
【0093】
延伸されたインフレーションフィルムを得るためのダブルバブル加工はPahlkeにより米国特許第3,456,044号明細書に記載されているように実施することができる。より詳細には、一次チューブが環状ダイから溶融押出される。この押出成形された一次チューブは結晶化を最小限に抑えるように急冷され、次いで延伸温度に加熱される(例えば、水浴が用いられる)。フィルム作製装置の延伸域において、インフレーションにより二次チューブが形成され、それによってフィルムが横方向に放射状に膨張し、また、好ましくはそれと同時に、両方向に膨張が起こるような温度で縦方向に引張すなわち伸長され、延伸点で厚みを急激に減少させることによってチューブの膨張が達成される。次いでチューブ状フィルムはニップロールを通過して再度平らに潰される。場合により、フィルムを再度インフレーションさせ、その後アニールステップ(熱固定)を通過させることができてもよい。このステップでは収縮性を調整するために再度加熱される。アニールされていないフィルムはヒートシュリンクフィルムとして有用な場合がある。フィルムをアニールすることによって、再び加熱された際の寸法安定性をより高めることができる(収縮がより少なくなる)。食品用ケーシング(例えば、ソーセージケーシング)を調製する際には、フィルムをチューブ状形態に維持することが所望される場合がある。フラットフィルムを調製する際はチューブ状フィルムを長手方向に切り開くことによりフラットシートにすることができ、これを巻き取るかおよび/またはさらに加工してもよい。
【0094】
好ましくは、速度が約50メートル毎分(m/分)〜速度が約200m/分のフィルム作製機でフィルムを加工することができる。
【0095】
フィルムのMVTRは少なくとも約300g/m2・Dである。好ましくは、フィルムのMVTRは少なくとも約約500、または最小約750、または最小約1000、またはそれを超える。
【0096】
本明細書に記載するフィルムは食材の封入および加工に有用である可能性がある。典型的には、このフィルムからチューブ状ケーシングが作製され、これは、好ましくはインフレーション技法を用いてチューブ状形態を直接作製するか、またはフィルムのフラットシートからチューブ状構造を形成し、チューブの長手方向に走る継ぎ目でシートの端部を閉じることによって行われる。
【0097】
食材のチューブ状ケーシング内への導入を促すために、ケーシングは食材を導入する前に場合によりシャーリング加工しておいてもよい。「シャーリング加工された」という用語は、チューブ状ケーシングを寄せ集めてチューブの円周に平行な複数のひだが寄せられていることを意味する。食材を、場合によりシャーリング加工されたチューブ状ケーシングの開放端から内部に導入し、チューブを引き伸ばして食材を封入してもよい。食材包装の当業者は十分に確立された手順を用いて食材をケーシングに容易に導入することができる。
【0098】
食品包装構造は、折り畳み、ヒートシール、ならびに場合により熱成形および/または熱収縮を組み合わせることにより作製してもよい。このような包装体はより大型または不規則な形状の、燻煙される可能性があるハムや七面鳥の部位等の食品の包装に有用な可能性がある。
【0099】
ほぼ非晶質および/または予め延伸されていないこれらのキャストフィルムまたはシートをさらに熱成形して物品および構造体を得た後に熱処理を施してもよい。熱成形された物品の調製は、当業者に周知の任意の手段を用いて、例えば非晶質シートを、ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)超かつ融点未満に加熱し、金型を用いた真空または加圧成形によりシートを延伸して延伸された物品を得、延伸された物品を冷却することにより最終物品を得ることによって行うことができる。延伸された物品は結晶化度を高めるために場合により熱処理してもよく、こうすることによって、付形された構造体に再加熱時の寸法安定性が付与される。シートを包装すべき食品の形状に近い形状に熱成形することが望ましい場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0100】
得られたケーシングは、驚くべきことに、速やかに燻煙可能であり、燻煙された生産品は従来の燻煙可能なケーシングを用いて製造されたソーセージのような味および外観を呈していた。必要な燻煙時間は短く、したがって、上記ソーセージケーシングは、調理済み食肉ソーセージ、湯煮または蒸煮された(scalded)練肉製品、脂肪を含む調理済みまたは短期間で発酵させたソーセージ、およびハムや七面鳥等の燻煙された食肉製品を工業規模で製造するのに特に適している。非常に薄肉のケーシングを、依然として良好な耐圧性、寸法安定性、および良好な調理耐久性(cooking durability)を維持したまま製造することができる。さらに、本明細書に記載するケーシング内で製造されたソーセージの重量減少は、天然またはセルロースベースのケーシングを用いたものよりも大幅に低下している。
【0101】
本明細書に記載するフィルムおよびケーシングはヒートシール性も有しているため、ソーセージの製造がより単純かつ経済的になる。これらは耐脂肪性を有しており、すなわちケーシングから脂肪が漏れないので、脂肪分を含む多くの調理済みまたは発酵ソーセージに特に好適となる。
【0102】
場合により、このチューブ状ケーシングは、少なくとも1種の食品加工用液状風味剤および/または着色剤を吸収性ケーシングに吸着させる処理をさらに施してもよい。この風味剤および/または着色剤は、次いで例えば加熱、塩せき、燻煙、調理等の食材加工を行う間に食材に移行する。
【0103】
本発明のフィルムを用いて加工することができる食材としては、牛肉、豚肉、家禽類(例えば、鶏肉および七面鳥肉)、魚介類(例えば、魚肉および軟体動物)、およびチーズが挙げられる。食肉製品は、肉塊(whole−muscle)、成形肉、または挽肉であってもよい。成形肉または挽肉の場合、食肉は場合により1種類を超える種から得られた材料の混合物であってもよい。食材は、本発明のケーシングに導入する前に加工しておき、ケーシング内でさらに加工することができる。
【0104】
他の実施形態においては、本明細書に記載されるフィルムは食材から水分を吸収しながら包装体内に水分を保持することが望ましい食材包装にも使用することができる。フィルムは、例えば、調理前の食肉または調理済みの食肉(例えば、牛肉、豚肉、家禽類、ハム、または魚介類)の包装に使用することができ、食材から出た水分または食材表面の余分なマリネードを食材から移行させて下部に溜めておくことができる。
【0105】
以下の実施例は単に例示的なものであって、本発明の範囲を制限するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0106】
MI(温度および圧力制御条件下で指定された毛細管内を流れるポリマーの質量流量)をASTM 1238に準拠し、190℃で2160gの錘を用いてg/10分単位で測定した。
【0107】
透水性が高い試料(>100g/m2・24h)の場合は、ASTM D6701−01に準拠してMocon PERMATRAN−W 101Kを用いて37.8℃、相対湿度100%で水蒸気透過試験を実施した。水蒸気透過速度(WVTR)をg/m2・24hで報告し、フィルム試料の水蒸気透過値(water vapor transmission value)(WVPV)をg・ミル/m2・24hで報告する。本組成物のMVPVは少なくとも300g・ミル/m2・24hであった。
【0108】
本明細書に記載する選択的透過性を有する組成物を含むフィルム層に伴う水分透過性を例示するために、押出キャストフィルムを以下に列挙する材料から作製した。
【0109】
使用した材料
EAC−1:エチレンおよびメタクリル酸(19重量%)の二元共重合体、MI=300
EAC−2:エチレン、アクリル酸n−ブチル(23.5重量%)、およびメタクリル酸(9重量%)の三元共重合体、MI=60
EAC−3:エチレン、アクリル酸n−ブチル(28重量%)、およびアクリル酸(6.2重量%)の三元共重合体、MI=210
F−1:無水マレイン酸を1.8重量%グラフトしたエチレン/アクリル酸メチル共重合体、DuPontよりFusabond 556として入手可能
F−2:無水マレイン酸を0.9重量%グラフトした直鎖状低密度ポリエチレン、DuPontよりFusabond 525として入手可能
F−3:無水マレイン酸を0.9重量%グラフトしたエチレン/プロピレン/ジエン共重合体、DuPontよりFusabond 416として入手可能
F−4:エチレン/マレイン酸エチルモノエステル共重合体(エチレン90.5重量%およびマレイン酸水素エチル9.5重量%)、MI30g/10分
ABA:アラキジン酸およびベヘン酸の混合物を90重量%と、C18酸を6重量%と、商品名Hystrene(登録商標)9022としてChemturaから市販されている他の酸を4重量%とを含む混合物
PA−6:BASFよりULTRAMID(登録商標)B4001として入手可能なナイロン−6ポリマー
PA−6/66:BASFよりULTRAMID(登録商標)C33 01として入手可能なナイロン−6/66ポリマー
PA−66:DuPontよりZYTEL(登録商標)42A NC010として入手可能なナイロン−66ポリマー
EBAGMA:オートクレーブで製造したエチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジル三元共重合体(エチレン66.75重量%、アクリル酸n−ブチル28重量%、メタクリル酸グリシジル5.25重量%)、MI=12g/10分、溶融範囲50℃〜80℃。
【0110】
Werner&Pfleiderer二軸押出機を用いて、EAC−1を80重量%およびABAを20重量%を含む組成物を水酸化カリウムで名目上93〜95%中和することにより組成物Aすなわち有機酸改質アイオノマー組成物とした。
【0111】
表1にまとめたように、組成物Aを様々なポリアミドおよびジカルボン酸エステル含有相溶化剤と一緒に以下の一般的手順に従って溶融混練した。強力混合スクリューを備えた30mmの二軸押出機を用いて、ポリアミドおよび相溶化剤をメインフィーダー(rear feeder)から計量し、これとは別のフィーダーであるメインフィーダーまたは押出機中間部のサイドスタッファから組成物Aを供給した。加工条件は、270〜320℃の溶融温度および300〜500rpmのスクリュー回転数を含むものとした。幾つかの例においては、1000rpmまでのスクリュー回転数を使用することが可能であった。
【0112】
実施例4〜6は、それぞれ実施例1〜3と組成物Aおよび相溶化剤の追加分とをブレンドして列挙した量(重量部)にすることにより調製した。
【0113】
【表1】

【0114】
これを溶融混練した後、実施例の組成物から押出キャストフィルムまたはメルトブローンフィルム(melt blown film)の標準的な一般手順を用いてキャストフィルムまたはインフレーションフィルムを形成した。
【0115】
【表2】

【0116】
一部のフィルムに関しては、ASTM D882に準拠して、縦方向(MD)および横方向(TD)の両方について引張特性を測定した。結果を表3にまとめる。
【0117】
【表3】

【0118】
表4にまとめたように、組成物A、ポリアミド、およびエチレン酸三元共重合体をブレンドしてさらなる実施例を調製した(値は「重量部」)。この組成物からキャストフィルムも形成し、その水蒸気透過性を測定した。結果を表5にまとめる。
【0119】
【表4】

【0120】
【表5】

【0121】
組成物A、ポリアミド、およびコンパチブリザーをブレンドすることによりさらなる実施例を調製した。表6にまとめる。
【0122】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド、有機酸改質されたアイオノマー、および場合により相溶化剤のブレンドを含んでもよい組成物であって、
前記有機酸改質されたアイオノマーが、(a)1種またはそれ以上のエチレン酸共重合体すなわちE/W共重合体(Eは、エチレンの共重合単位を表し、Wは、少なくとも1種のC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を表す)と、(b)1種またはそれ以上の有機酸またはその塩とのブレンドを含み;
前記有機酸が、4〜36個の炭素原子を有し、場合により、最も長い炭素鎖がC1〜C8アルキル基、OH基、およびOR1基からなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;
1は、それぞれ独立に、C1〜C8アルキル基、C1〜C6アルコキシアルキル基、またはCOR2基であり;
2は、それぞれ独立に、C1〜C8アルキル基であり;
前記有機酸またはその塩は、前記組成物中に、(a)および(b)の合計の約5〜約50重量%存在し;
前記E/W共重合体および前記有機酸の酸性基の合計の少なくとも50%が名目上中和されて、金属イオンを含有する対応する塩になっており、前記金属イオンの少なくとも50%がアルカリ金属イオンであり;かつ
前記相溶化剤が、ジカルボン酸エステル含有共重合体、エチレン酸共重合体、およびエチレンエポキシド含有エステル共重合体からなる群から選択され;
前記エチレン酸共重合体が、エチレンの共重合単位と、少なくとも1種のC3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位と、酢酸ビニル、アクリル酸アルキル、またはメタクリル酸アルキルの共重合単位とを含み;
前記エチレンエポキシド含有エステル共重合体が、エチレンの共重合単位、1種またはそれ以上の式CH2=C(R5)CO26のオレフィンの共重合単位、および前記エチレンエステル共重合体の総重量を基準として0〜約70%の1種またはそれ以上の式CH2=C(R3)CO24のオレフィンの共重合単位を含み;
3は、水素または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり;
4は、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり;
5は、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり;かつ
6は、グリシジルである、組成物。
【請求項2】
前記ブレンドが、前記組成物の総重量を基準として、
(1)ポリアミドを25〜85重量%、前記有機酸改質されたアイオノマーを25〜45重量%、前記ジカルボン酸エステル含有ポリマーを0〜15重量%、前記エチレン酸三元共重合体を0〜20重量%、およびエチレングリシジルエステル共重合体を0〜15重量%;または
(2)ポリアミドを25〜45重量%、前記有機酸改質されたアイオノマーを25〜85重量%、前記ジカルボン酸エステル含有ポリマーを0〜15重量%、前記エチレン酸三元共重合体を0〜20重量%、およびエチレングリシジルエステル共重合体を0〜15重量%を含み、前記ポリアミドが、脂肪族ポリアミド、非晶質ポリアミド、または一部芳香族ポリアミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリアミドが、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−12、およびナイロン−6,12、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−612、ナイロン−1010、およびナイロン−1212)、ナイロン−66/610、ナイロン6/66、ナイロン6/69、ナイロンMXDA、ナイロン6−I/6−T、またはこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリアミドが、ナイロン−6単独重合体または共重合体、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン6/69、またはナイロンMXDAであり、好ましくはナイロン−6、ナイロン−6/66、ナイロン−66、またはナイロン−6/66およびナイロン−6の混合物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機酸が、12〜36個の炭素原子を有し、カプロン、カプリル、カプリン、ラウリン、ミリスチン、パルミチン、ステアリン、イソステアリン、12−ヒドロキシステアリン、オレイン、イソオレイン、リノール、エルカ、アラキジン、ベヘン酸、およびこれらの2種以上の組合せからなる群から選択され、かつ前記金属イオンがカリウムイオンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ジカルボン酸エステル含有共重合体を0.1〜15%含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記エチレンエポキシド含有エステル共重合体を0.1〜15重量%または前記エチレン酸共重合体を0.1〜20%含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を含む第1層を備えるかまたは前記第1層から製造されるフィルムであって、前記フィルムのASTM D6701−01に準拠して37.8℃、相対湿度100%で測定された水蒸気透過速度(MVTR)が少なくとも約300または750g/m2・dayである、フィルム。
【請求項9】
前記MVTRが少なくとも約1000であり、かつ前記フィルムが二軸延伸されている、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムが、請求項1の組成物以外のポリアミド組成物を含む第2層をさらに備える多層フィルムであり、前記第1層が内層であり、前記第2層が第1表面層である、請求項8または9に記載のフィルム。
【請求項11】
第2組成物を含む第2表面層をさらに備えるフィルムであって、前記第2組成物が、第2組成物の総重量を基準として、ポリアミドを45〜85%、前記有機酸改質されたアイオノマー組成物を25〜45%、ジカルボン酸エステル含有ポリマーを0〜15%、エチレン酸三元共重合体を0〜20%、およびエチレングリシジルエステル共重合体を0〜15%を含む、請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記内層が、前記有機酸改質されたアイオノマー組成物以外の第2の有機酸改質されたアイオノマー組成物をさらに含む、請求項11に記載のフィルム。
【請求項13】
2つの表面層および内層を備え、
前記表面層が、前記組成物の総重量を基準として、ポリアミドを45〜85%、前記有機酸改質されたアイオノマー組成物を25〜45%、ジカルボン酸エステル含有ポリマーを0〜15%、エチレン酸三元共重合体を0〜20%、エチレングリシジルエステル共重合体を0〜15%を含む組成物を含み、かつ
前記内層が、前記組成物の総重量を基準として、ポリアミドを25〜45%、前記有機酸改質されたアイオノマー組成物を45〜85%、ジカルボン酸エステル含有ポリマーを0〜15%、エチレン酸三元共重合体を0〜20%、およびエチレングリシジルエステル共重合体を0〜15%を含む組成物を含む、請求項11に記載のフィルム。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか一項に記載のフィルムを備えるかまたは前記フィルムから製造される包装体であって、場合によりチューブ状ソーセージ用ケーシングであってもよい、包装体。
【請求項15】
食材を包装するためのフィルムの使用であって、前記フィルムが、請求項8〜13のいずれか一項に記載のものであり、前記食材が、場合により燻煙および熱で処理されていてもよく、前記食材が、調理済み食肉ソーセージ、湯煮もしくは蒸煮された練肉製品、脂肪を含む調理済みもしくは短期間で発酵させたソーセージ、または燻煙された食肉製品である、使用。

【公表番号】特表2013−514446(P2013−514446A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544733(P2012−544733)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060407
【国際公開番号】WO2011/084448
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】