説明

透過型スクリーンおよびその製造方法

【課題】高温多湿、低温度の厳しい環境下でも表示されている画像の画質を損なうことのないように平面性が維持できると共に、その一部を構成する表面基材の最表面の品質が外力によって損なわれないようにしたことを特徴とする透過型スクリーンとその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】一部を構成するレンチキュラーレンズシートは、剛性が高く、かつ当該シートを保持できる厚みを持つ光拡散性の保持基板の一方の面に、レンチキュラーレンズ部および遮光層が設けられてなるレンズ基材が貼合され、他の一方の面には最表面に位置するように表面基材が貼合わされてなるものであり、しかも保持基板の両面に貼合されている基材の材質および厚みは等しくなるように設定されてい、前記表面基材が厚み75μm以上のPET製の基材からなり、かつ圧縮弾性率が60Mpa以上で、厚みが5μm以上25μm以下である接合層を介して保持基板に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型ディスプレイなどに用いられる透過型スクリーンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、透過型スクリーンを備えた投射型ディスプレイとして、リアプロジェクションテレビが知られている。一方、近年では、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などの薄型の大型ディスプレイに対抗し、MD方式プロジェクションテレビが台頭してきている。このMD方式プロジェクションテレビは、例えばLCDやLCOS(LCD on Silicon; 反射型液晶パネルの一種)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)などの表示デバイスを用いて、変調された投射光を透過型スクリーンのリア側から投射する方式のものである。このMD方式プロジェクションテレビは、40インチ以上の大型化が容易であり、デジタル表示のために画質も良好で、ディスプレイ本体のコストも比較的安価に製造できるため、今後の家庭用の大型テレビとして大変注目されている。
【0003】
このようなMD方式プロジェクションテレビなどの透写型ディスプレイに用いられる透過型スクリーンは、入射光の方向を整えて略平行光として出射するフレネルレンズシートと、適度の視野角を持たせるためにフレネルレンズシートからの出射光を、例えば水平、垂直方向に配置されたシリンドリカルレンズ群などにより拡散させるレンチキュラーレンズシート(シリンドリカルレンズ群が一方向に並列されてなる構成に限らず、シリンドリカルレンズ群が複数方向に並列されてなる構成や、単位レンズが2次元配列されてなる構成など、各種タイプの光拡散レンズアレイシートを含む)とを備えている。そしてフレネルレンズシートおよびレンチキュラーレンズシート中には、輝度ムラやシンチレーションなどを低減させるために透過光を拡散させる拡散層が設けられている。例えば、特許文献1には、透過型スクリーンに用いるレンチキュラーシートであって、透明支持体の片面に凸シリンドリカルレンズが並列配置されてなるレンズ部が放射線硬化性樹脂の硬化物により形成されており、他の面に、フィルム転写またはフィルムラミネートなどにより遮光パターン、拡散層が形成され、さらに拡散層上に帯電防止機能や反射防止機能を有するフィルムが設けられたものが記載されている。
【0004】
しかしながら、上記のような従来の透過型スクリーンおよびそれらを用いた投射型ディスプレイは、各層の厚みや、各層の構成材料における線膨張係数、湿気膨張係数などの違いにより、温度または湿度が変動すると反りが発生し、解像度の低下や画像ボケなどが生じ易くなり、画質が劣化するという問題がある。
【0005】
そこで、種々の環境下でのスクリーンの変形を防ぐ目的で、フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートから構成される透過型スクリーンにおいて、レンチキュラースクリーンを、厚み方向に配列されたレンズ基材、保持基板、表面基材とからなるものとし、これらの各構成部材における膨張特性値、曲げ剛性および配置位置が、レンチキュラーレンズシートの厚み方向に略対称性となるように配列させた構成とする提案がある(特許文献2参照)。
【0006】
この特許文献2に記載された発明によれば、スクリーンの平面性が優れたものとなり、高温高湿時に反りが殆ど発生しないため、高温高湿の厳しい環境下においても良好な画像の表示が可能となる。しかしながら、特許文献2に係る発明においては、表面基材として可撓性を有するフィルムを使用する場合、保持基板と表面基板との接合に使用する接合材
料の硬度が低いと、表面基材の最表面に外力が加わった際には接合材料からなる接合層のめり込みによりスクリーンの最表面に押し跡が残り、外観が損なわれ、表示品質が劣化してしまうことがある。
【特許文献1】特開平9−120101号公報
【特許文献2】特願2005−374058号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであって、高温多湿、低温度などの厳しい環境下でも平面性が維持でき、表示画像の画質を損なうことのなく、しかも、その一部を構成する表面基材の最表面の品質が外力によって損なわれないようにしたことを特徴とする透過型スクリーンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するためになされ、請求項1記載の発明は、光源から投射されてくる投射光を略平行光にするフレネルレンズシートと、前記フレネルレンズシートにより略平行光とされた投射光を発散させる複数のレンズが配列されていて、前記複数のレンズの非集光部分には遮光層が設けられているレンチキュラーレンズシートとが、前記光源側にフレネルレンズシートが位置するように適宜の間隔を保って配置されていていると共に、前記レンチキュラーレンズシートは、剛性が高く、かつ当該シートを保持できる厚みを持つ光拡散性の保持基板の一方の面に、前記複数のレンズおよび遮光層が設けられてなる可撓性のレンズ基材が貼合され、さらに、他の一方の面には最表面に位置するように可撓性の表面基材が貼合されてなるものであり、しかも前記レンチュキラーレンズシートの保持基板の両面に貼合されている基材の材質および厚みは等しくなるように設定されている透過型スクリーンであって、前記表面基材が厚み75μm以上のポリエチレンフタレート基材からなり、かつ圧縮弾性率が60Mpa以上であり、かつ厚みが5μm以上25μm以下である接合層を介して保持基板に接合されていることを特徴とする透過型スクリーンである。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、光源から投射されてくる投射光を略平行光にするフレネルレンズシートと、前記フレネルレンズシートにより略平行光とされた投射光を発散させる複数のレンズが配列されていて、さらに前記複数のレンズのそれぞれの非集光部分には遮光層が設けられているレンチキュラーレンズシートとが、前記光源側にフレネルレンズシートが位置するように適宜の間隔を保って配置されている共に、前記レンチキュラーレンズシートは、剛性が高く、かつ当該シートを保持できる厚みを持つ光透過性または光微拡散性の保持基板の一方の面に、前記複数のレンズおよび遮光層が設けられてなる可撓性のレンズ基材が貼合わされ、さらに他の一方の面には最表面に位置するように光拡散層が設けられている可撓性の表面基材が貼合わされてなるものであり、しかも前記レンチュキラーレンズシートの保持基板の両面に貼合わされている基材の材質および厚みは等しく設定されている透過型スクリーンであって、前記表面基材が厚み75μm以上のポリエチレンフタレート基材からなり、かつ圧縮弾性率が60Mpa以上であり、かつ厚みが5μm以上25μm以下である接合層を介して保持基板に接合されていることを特徴とする透過型スクリーンである。
【0010】
さらにまた、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の透過型スクリーンの製造方法であって、前記表面基材と前記保持基板との接合面に、室温における粘度が4000mPa・s以上である接着剤を塗布した後、表面基材と前記保持基板をロールを用いて圧着することにより接着剤からなる接合層により貼合わせるようにしたことを特徴とする透過型スクリーンの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の透過型スクリーンは、高温多湿や低温度などの厳しい環境の下でも平面性を確実に維持できると共に、表面基材と保持基板との接合に一定の条件を備えた接合材料を使用することにより、スクリーン最表面に外部応力に対する耐圧痕性を付与することが可能となる。
【0012】
また、本発明の透過型スクリーンの製造方法によれば、貼合わせ時の接着剤の基材裏面への裏回りが防止され、高い収率で透過型のスクリーンを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る透過型スクリーンについて説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る透過型スクリーンの概略の構成を説明するための断面説明図である。この図面は模式図のため、形状や寸法は誇張して示している(図2〜図4も同様)。
【0016】
本実施形態の透過型スクリーン10は、図1に示すように、入射光の方向を整えて出射光とするフレネルレンズ部21を有するフレネルレンズシート20と、このフレネルレンズシート20からの出射光をスクリーンの左右方向(図1の上下方向)および上下方向(図1の紙面垂直方向)に拡散させるシリンドリカルレンズ部41を有する光学部材であるレンチキュラーレンズシート30とを少なくとも備えている。
【0017】
これらフレネルレンズシート20、レンチキュラーレンズシート30は、透過型スクリーン10の背面側(図1の左側)から前面側(図1の右側)にかけて順次配置されていると共に、互いに略平行に配置されている。以下本明細書では、図示左右方向のうち、フレネルレンズシート20側方向を光源側方向、レンチキュラーレンズシート30側方向を観察側方向とそれぞれ称することにする。すなわち、本実施形態では、投射光は光源側から観察側に向けて透過する。
【0018】
ここで、図1は模式図のため、フレネルレンズシート20とレンチキュラーレンズシート30とは互いに離間されているように描かれているが、あまり離間させると表示される画像にボケが生じるので、なるべく近接して配置させることが好ましい。
【0019】
フレネルレンズシート20は、本実施形態では図1に示すように、入射光を整えて出射するフレネルレンズ部21を有する光拡散性の光拡散基材22であり、その厚みは0.8mm〜1.5mm程度であり、その拡散度合いはヘイズ値で50%〜70%程度のものである。またその構成は、単層のものに限定されるものではなく、光拡散性を有する層と透明の層との組み合わせになる多層構成のものであってもよい。
【0020】
次にレンチキュラーレンズシート30について説明する。
【0021】
レンチキュラーレンズシート30は、図1に示すように、光源側から、シリンドリカルレンズ部41、光透過基材42、ブラックストライプ(BS)状の遮光層43、接合層61、光拡散性保持基板60、接合層62、光透過基材51、および表面コート層52がこの順に層状に積層されてなり、組み立て時に初期変形などを与えて湾曲させることなく、
平面状態を保ったままで前述のフレネルレンズシート30と共に取り付けられる平板部材である。光軸方向から見た形状はフレネルレンズシート20の外形と同様な略長方形状である。
【0022】
シリンドリカルレンズ部41は、略半円柱状をなすシリンドリカルレンズの複数個がそれらのそれぞれの母線方向が略平行になるように配列されてなるものであって、レンチキュラーレンズシート30の入射面を形成している。
【0023】
光透過基材42は、シリンドリカルレンズ部41を支持する役割を担う光透過性の基材であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる。
【0024】
BS状の遮光層43は、光源側に配列されている複数のシリンドリカルレンズからなるシリンドリカルレンズ部41の裏面側において、各シリンドリカルレンズの非集光部を各シリンドリカルレンズの母線方向に沿ってストライプ状に延されてなる部分に設けられる光吸収性の帯状の層である。そして、この遮光層43が設けられていない部分には光透過基材42と光拡散性の保持基板60を接合するための光透過性の接合層61が配置されている。この接合層61は粘着剤、または活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化性の接着剤などからなり、その厚みはBS状の遮光層43を含めて50μ以下であることが好ましい。
【0025】
光拡散性保持基板60はレンチキュラーレンズシート30の剛性を確保する役目を主として担っており、その厚みは光透過基材42、51の厚みより厚く設定されており、例えば、主材料としてはメチルメタアクリレート(MMA)を60%含むMS樹脂からなるものである。また、その光拡散度合いはヘイズ値で75%〜85%程度のものが好ましく用いられる。
【0026】
一方、表面基材50は、光透過基材51、および表面コート層52が積層されてなるものである。光透過基材51は、例えば、前記した光透過基材42と同じPET樹脂素材から成り、厚みも同じのものである。
【0027】
表面コート層52は、透過型スクリーン10の表面性を良好に仕上げるために必要に応じてレンチキュラーレンズシートの観察者側に設けられる種々のコート層である。例えば、鉛筆硬度2H以上程度の表面の耐擦傷性を付与するためのハードコート(HC)層や、写り込み防止のためのアンチグレア(AG)層、埃付着防止のための帯電防止(AS)層など機能を有するコート層を、単層または複数の層として積層したものである。
【0028】
以上のような構成になる表面基材50は、接合層62を介して、光拡散性保持基板60と接合されている。ここで、接合層62は厚み(t1)が5μm〜25μm程度のものであり、かつ硬化後の圧縮弾性率が60Mpa以上である接着剤からなる。これにより、最表面層である表面コート層52をペン先や爪で強く押しても押し痕が残らず、画像の表示品質を良好な状態に保つことが可能となる。
【0029】
また、レンチキュラーレンズシート30は光拡散性保持基板60の両面には同じ素材、同じ厚みの光透過基材42、51を接合しているので、スクリーンの平面性が確保でき、高温高湿時に反りも殆ど生じなくなるため、高温高湿の厳しい環境下に置かれても良好な画像を表示することが可能となっている。
【0030】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る透過型スクリーンについて説明する。
【0031】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る透過型スクリーンの構成について説明するための断面説明図である。
【0032】
本発明の第2の実施形態に係る透過型スクリーンの構成は、保持基板63が光透過性、または微拡散性のものであり、かつ光透過性基材51と透明または微拡散性保持基板63との間に接合層62を介して光拡散層53が設けられている点が、第1の実施形態に係る透過型スクリーンの構成と異なっている(図2参照)。
【0033】
光拡散層53は、例えば、活性エネルギー線硬化型樹脂に屈折率の異なる樹脂粒子からなるフィラーを混入した塗液の薄膜に活性エネルギー線を照射して硬化せしめてなる層である。この光拡散層53の拡散度合いはヘイズ値で75%〜85%程度に設定する。
【0034】
続いて、本発明の透過型スクリーンの製造方法について説明する。
【0035】
図3は、本発明の透過型スクリーンの製造方法の一工程を示す模式図である。
【0036】
本発明の透過型スクリーンの製造方法は、上記したフレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートを具備してなる透過型スクリーンの製造方法であって、レンチキュラーレンズシートを構成する前記表面基材50と前記保持基板60または63との接合面に、室温における粘度が4000mPa・s以上である接着剤の薄膜を設けた後、その薄膜上に前記保持基板60上に載置してからロールを用いて圧着させることにより貼合わせることを特徴とするものである。
【0037】
即ち、図1や図2に示す透過型スクリーンの製造に際し、初めに光拡散性保持基板60、または透明または微拡散性保持基板63上に、接合層62を構成する材料であり、室温における粘度が4000mPa・s以上の接着剤の薄膜を設けた後、その薄膜に表面基板50を当接させて、ロールラミネータのゴムまたは金属からなるロール70、70の間に通して貼合わせる(図3参照)。
【0038】
この時、図4に示すとおり、過剰に塗られた接着剤はその粘度が4000mPa・s未満であると、ロール70、70でしごかれる際に、保持基板60、または透明または微拡散性保持基板63および表面基材50の端部にはみ出し、はみ出した接着剤が下ロールまで達し、貼合わせを1回行う毎にロールの清掃が必要となるため、製造効率は著しく低下してしまう。しかし、接着剤の粘度が4000mPa・s以上である場合には、はみ出した接着剤が下ロールまでに達することがないので連続して貼合わせることが可能となり、製造効率が飛躍的に向上する。
【0039】
接着剤により貼合わせた後は、表面基材50の表面コート層52側から紫外線を照射するなどして接着剤を硬化させればよい。
【0040】
また、レンズ基材40と保持基材60、または透明または微拡散性保持基板63の貼合わせは、表面基材50を貼合わせた場合と同じように、粘度4000mPa・s以上の接着剤を用いて行ってもよいし、他の一般的な粘着剤を用いて行ってもよい。
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0042】
まず、アクリル系有機フィラーからなる光拡散性微粒子を分散混合したPCアロイ(ポリカーボネートとポリエステルのブレンド)により構成され、一表面にフレネルレンズ部が設けられている光拡散性基材からなり、厚みが1.0mmで光の拡散度合がヘイズ値で
55%のフレネルレンズシートを用意した。また、このフレネルレンズシートにより略平行光とされた投射光を発散させる複数のシリンドリカルレンズをその母線方向が互いに平行となるように並置させてなるシリンドリカルレンズ部と各シリンドリカルレンズの非集光部分に設けられているストライプ状の遮光層とを有する可撓性のレンズ基材を用意した。さらに、ポリエチレンテレフタレートからなる厚みが75μmの光透過基材の一表面に表面コート層を設けてなる表面基材を用意した。
【0043】
そして、MMAからなる厚みが1.85mmの光拡散性保持基板の一方の面に紫外線硬化性接着剤(粘度;6273mPa・s)の薄膜(厚み5μm)を形成させてから上述したレンズ基材をその遮光層形成が当接するように載置させると共に、光拡散性保持基板の他方の面には、室温における粘度が6273mPa・sである接着剤からなる薄膜(厚み25μm)を形成してから上述した表面基材を当接させた。しかる後に、前記工程で得られた積層物を一対のロール(硬度60度のゴムロール)の間に通し、ラミネート圧は0.45MPa、ロール温度は25℃、ラミ速度は1m/minに設定して、紫外線を照射しながらラミネートさせることにより、レンチキュラーレンズシートを得た。なお、各接着剤からなる薄膜の硬化膜(接合層)の圧縮弾性率は60MPaであった。
【0044】
上述したラミネート法と同様な方法で、接着剤からなる薄膜の厚みを25μmと30μmにして、さらに2種類のレンチキュラーレンズシートを得た。これらのレンチキュラーレンズシートの接着剤からなる薄膜の硬化膜(接合層)の圧縮弾性率は60MPaであった。
【0045】
そして、このレンチキュラーレンズシートと前述したフレネルレンズシートとを互いのレンズ部同士が少なくともシート中心部では接するように対峙させてセットし、実施例1に係る透過型スクリーンを得た。
【実施例2】
【0046】
硬化前の接着剤の粘度が6400mPa・sで、硬化後の接着剤の圧縮弾性率が430MPaであった以外は実施例1と同様にして、実施例2に係るレンチキュラーレンズシートと透過型スクリーンを得た。
【実施例3】
【0047】
硬化前の接着剤の粘度が2370mPa・sで、硬化後の接合層の圧縮弾性率が218MPaであった以外は実施例1と同様にして、比較のための実施例3に係るレンチキュラーレンズシートと透過型スクリーンを得た。
【実施例4】
【0048】
硬化前の接着剤の粘度が3800mPa・sで、硬化後の接合層の圧縮弾性率が38MPaであった以外は実施例1と同様にして、比較のための実施例4に係るレンチキュラーレンズシートと透過型スクリーンを得た。
【0049】
以上のようにして得られた透過型スクリーンに対してそのレンチキュラーレンズシートの表面基材における耐圧痕性を評価した。レンチキュラーレンズシートのラミネート作成時における接着剤のロールへの付着状況と共にその結果を表1に示す。
【0050】
因みに、ラミネート時の接着剤のロールへの付着状況については、付着が認められたものは×とし、付着が認められなかったものは○とした。また、接着剤硬化後の耐圧痕性は、レンチキュラーレンズシート30の表面コート層(鉛筆硬度2H(荷重1kg)のハードコート層)52の表面を硬度2Hの鉛筆で1kg荷重でなぞった際に、鉛筆の芯のめり込み痕が残らない(○)か、残る(×)かで判断した。
【0051】
【表1】

表1からも分かるように、硬化前の接着剤の室温における硬化前粘度が、4000mPa・s以上であれば、貼合わせ時に問題となる接着剤のラミロールへの付着は起こらず、また、接着剤の硬化後の圧縮弾性率が60MPa以上であれば5μm〜25μmの厚みの範囲で透過型スクリーンの最表面に耐圧痕性があることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る透過型スクリーンの構成について説明するための断面説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る透過型スクリーンの構成について説明するための断面説明図である。
【図3】本発明の透過型スクリーンの製造方法の一工程を示す説明図である。
【図4】本発明の透過型スクリーンの製造方法に係る他の工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
10 透過型スクリーン
20 フレネルレンズシート
21 フレネルレンズ部
22 光拡散基材
30 レンチキュラーレンズシート
40 レンズ基材
41 シリンドリカルレンズ部
42、51 光透過基材
43 遮光層
50 表面基材
52 表面コート層
53 光拡散層
60 拡散性保持基板
63 透明または微拡散性保持基板
61、62 接合層
t1 支持基板と表面基材の間の接合層厚み
70 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から投射されてくる投射光を略平行光にするフレネルレンズシートと、前記フレネルレンズシートにより略平行光とされた投射光を発散させる複数のレンズが配列されていて、さらに前記複数のレンズのそれぞれの非集光部には遮光層が設けられているレンチキュラーレンズシートとが、前記光源側にフレネルレンズシートが位置するように適宜の間隔を保って配置されていると共に、前記レンチキュラーレンズシートは、剛性が高く、かつ当該シートを保持できる厚みを持つ光拡散性の保持基板の一方の面に、前記複数のレンズおよび遮光層が設けられてなる可撓性のレンズ基材が貼合わされ、さらに、他の一方の面には最表面に位置するように可撓性の表面基材が貼合わされてなるものであり、しかも前記レンチュキラーレンズシートの保持基板の両面に貼合わされている基材の材質および厚みは等しくなるように設定されている透過型スクリーンであって、前記表面基材が厚み75μm以上のポリエチレンフタレート基材からなり、かつ圧縮弾性率が60Mpa以上で、厚みが5μm以上25μm以下の接合層を介して保持基板に接合されていることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項2】
光源から投射されてくる投射光を略平行光にするフレネルレンズシートと、前記フレネルレンズシートにより略平行光とされた投射光を発散させる複数のレンズが配列されていて、さらに前記複数のレンズのそれぞれの非集光部分には遮光層が設けられているレンチキュラーレンズシートとが、前記光源側にフレネルレンズシートが位置するように適宜の間隔を保って配置されている共に、前記レンチキュラーレンズシートは、剛性が高く、かつ当該シートを保持できる厚みを持つ光透過性または光微拡散性の保持基板の一方の面に、前記複数のレンズおよび遮光層が設けられてなる可撓性のレンズ基材が貼合わされ、さらに他の一方の面には最表面に位置するように光拡散層が設けられている可撓性の表面基材が貼合わされてなるものであり、しかも前記レンチュキラーレンズシートの保持基板の両面に貼合わされている基材の材質および厚みは等しく設定されている透過型スクリーンであって、前記表面基材が厚み75μm以上のポリエチレンフタレート基材からなり、かつ圧縮弾性率が60Mpa以上であり、かつ厚みが5μm以上25μm以下である接合層を介して保持基板に接合されていることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の透過型スクリーンの製造方法であって、前記レンチキュラーレンズの表面基材と保持基板は、それらの接合面に、室温における粘度が4000mPa・s以上である接着剤の薄膜を設けた後、ロールを用いて表面基材と保持基板とを接着剤の薄膜を介して圧着させながら接着剤を硬化せしめ、貼合わせるようにしたことを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−129493(P2008−129493A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316782(P2006−316782)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】