説明

透過率測定装置、フォトマスクの透過率検査装置、透過率検査方法、フォトマスク製造方法、パターン転写方法、フォトマスク製品

【課題】微細パターン(例えば、透明基板上に形成された微細な半透光膜パターン)の膜透過率を正確に測定可能な透過率測定装置を提供することを目的の一とする。
【解決手段】透明基板上に形成された半透光膜の微細パターン等の膜透過率の測定において、測定対象物となる半透光膜に、測定波長の光が最も小さなスポット径(ビームウエスト)となるように集光させて透過させた後、その透過光を全て積分球に取り込んでディテクタで検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過率測定装置に関し、例えば、透明基板上に形成された光学膜を加工してなる転写パターンを有するフォトマスク等の微細部分の光透過率を測定する透過率測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶装置等の電子デバイスの製造においては、フォトリソグラフィ工程が利用される。すなわち、エッチングされる被加工層(以下、被転写体ともいう)上に形成されたレジスト膜に対して、所定の転写パターンを有するフォトマスクを用いて所定の露光条件下で露光を行い、該転写パターンを転写し、該レジスト膜を現像することによりレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとして被転写体をエッチングするという工程が行われている。
【0003】
近年、液晶表示装置等の電子デバイスの製造において低コスト化が要求されており、製造工程におけるマスク数の削減が求められている。具体的には、遮光部と透光部と半透光部を有する多階調フォトマスク(以下、フォトマスクともいう)を用いることにより、使用するマスク枚数を低減する方法が提案されている。すなわち、遮光部と透光部のほかに半透光部を有することにより、3階調を有するフォトマスクを用いて、被転写体上に形成されたレジスト膜に露光、現像することにより、部分的に露光量を異ならせ、部分によって残膜量の異なるレジストパターンを形成することができる。この場合、従来2枚のマスクを使用していた工程が1枚のマスクで可能となるため、マスク使用枚数が削減でき、生産効率が高くなる。更に、4階調以上の多階調フォトマスクを作製するために、光透過率の異なる2種類以上の半透光膜で形成された半透光部を有するマスクも提案されている(例えば、特許文献1)。このような4階調を有するフォトマスクを用いれば、従来3枚のマスクを使用してきた工程を1枚のマスクで行うことも可能となる。ここで、半透光部とは、マスクを使用してパターンを被転写体に転写する際、透過する露光光の透過量を所定量低減させ、被転写体上のフォトレジスト膜の現像後の残膜量を制御する部分をいい、そのような半透光部を、遮光部、透光部とともに備えているフォトマスクを多階調フォトマスクという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−258250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶表示装置製造用のフォトマスクとしては、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)におけるソース、ドレインに対応する部分を遮光部として形成し、該ソース、ドレインの間に隣接して位置するチャネル部に相当する部分を半透光部として形成した多階調フォトマスクを使用することができる。近年、TFTチャネル部等のパターンの微細化に伴い、多階調フォトマスクにおいてもますます微細なパターンが必要とされてきており、TFTチャネル部のパターンにおけるチャネル幅に相当する部分、すなわち遮光膜間の半透光部の幅も微細化傾向にある。これは、液晶の明るさ向上や反応速度の向上には有効であるが、そのような微細な半透光部をもつフォトマスクの製造は、容易でない。例えば、上記半透光部の線幅が7μm以下、更には、5μm以下であるような転写パターンも、精緻に転写できなければならない。この微細化傾向は更に進み、3μm以下の線幅が求められることも想定できる。
【0006】
また、多階調フォトマスクにおける半透光部の役割は、マスクの透過光量を制御して、所望の露光量を被転写体に与えるものであるため、前記半透光部の微細化と同時に、半透光部の光透過率を正確に測定して評価する必要がある。すなわち、半透光部に形成された膜の膜透過率(単層か積層かという膜構造によらず、結果としてのその膜の光透過率を膜透過率という)を把握する必要が生じる。一般的に、透明基板上に形成された半透光部の膜透過率の測定方法としては、(1)分光光度計を用いて実測する方法、(2)可視光を光源とする顕微鏡で2次元画像を取得し、画像内の所望の点の画像濃度に基づいて画像濃度と膜の特性(透過率の波長依存性)に応じた換算式(あらかじめ求めておく)から所望の波長における透過率を予測する方法を用いることができると考えられる。
【0007】
上記方法(1)は、実測定を行う点では信頼性は高いとも言える一方で、装置の制約により、測定対象物におけるスポット径が大きいため、微細な部分の測定に適さない。例えば、分光光度計によって透過率が測定可能な限界線幅は、装置の仕様により1〜5mm程度である。従って、測定しようとする部分の線幅が5mm未満になると、その周囲の透過率の影響を受け、測定値の信頼性が下がる。測定しようとする部分の線幅が1mm未満になると、ほぼ測定不可能な状態となる。このため、線幅がμmオーダーの測定領域(例えば、微細な半透光部)について、信頼性のある透過率を測定することができないという問題がある。
【0008】
上記方法(2)は、小さな測定領域の透過率測定は可能であるが、可視光で測定した後に所望の波長に換算する必要があり、半透光部に形成された膜の分光特性の事前把握が煩雑である上、膜特性によっては誤差が生じるなど、信頼性のある正確な透過率を測定することは困難であるという問題がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、微細パターン(例えば、透明基板上に形成された半透光膜をパターニングして得られた半透光部)の膜透過率を正確に測定可能な透過率測定装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の透過率測定装置は、試験光束を射出する光源装置と、前記試験光束を集光して被検体に導く集光光学系と、前記被検体を透過した透過光束を受光し、光量を検出する光検出装置と、前記光検出装置によって検出された光量に基づき、前記被検体の光透過率を求める演算装置と、を有し、前記集光された試験光束が、ビームウエスト近傍において前記被検体の被検査位置に入射するように、前記光源装置、前記集光光学系及び前記被検体の相対位置が調節されていること特徴とする。
【0011】
本発明の透過率測定装置において、前記光源装置がレーザー光源を備え、前記集光光学系に備えられた集光レンズの有効径を1としたときに、平行光として前記集光レンズに入射される前記試験光束の径が、0.4以上0.6以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の透過率測定装置において、前記光検出装置は、内部にフォトディテクタを備えた積分球を有することが好ましい。
【0013】
本発明の透過率測定装置において、前記積分球は、前記透過光束が入光する入射ポートを有し、かつ、前記入射ポートのポート径が、前記透過光束が入光する位置における前記透過光束の径より大きくなるように、前記積分球が配置されることが好ましい。
【0014】
本発明の透過率測定装置において、前記集光光学系は、第1のコリメータレンズと集光レンズを有することが好ましい。
【0015】
本発明の透過率測定装置において、前記被検体の主平面に平行な面内において、前記光源装置、前記集光光学系及び前記被検体の相対位置を調整するために、前記光源装置と前記集光光学系を移動させ、又は、前記被検体を移動させるための移動装置を備えることが好ましい。
【0016】
本発明の透過率測定装置において、前記被検体と前記光検出装置の間に、前記透過光束の径を調整する第2のコリメータレンズを有することが好ましい。
【0017】
本発明の透過率測定装置において、前記集光光学系は、前記試験光束の光軸と垂直な面における光強度分布が、中央部において、周辺部より大きいものとする光分布調整手段を有することが好ましい。
【0018】
本発明のフォトマスクの透過率検査装置は、透明基板上に形成した光学膜がパターニングされることにより形成された転写パターンを有するフォトマスクの、前記転写パターンの特定の被検査位置における透過率を測定する透過率検査装置であって、試験光束を射出する光源装置と、前記試験光束を集光してフォトマスクに導く集光光学系と、前記フォトマスクを透過した透過光束を受光し、光量を検出する光検出装置と、前記光検出装置によって検出された光量に基づき、前記フォトマスクの前記被検査位置における光透過率を求める演算装置とを有し、前記集光された試験光束が、ビームウエスト近傍において前記フォトマスクの被検査位置に入射するように、前記光源装置、前記集光光学系及び前記フォトマスクの相対位置が調節されていること特徴とする。
【0019】
本発明のフォトマスクの透過率検査装置において、前記光源装置がレーザー光源を備え、前記集光光学系に備えられた集光レンズの有効径を1としたときに、平行光として前記集光レンズに入射される前記試験光束の径が、0.4以上0.6以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の透過率検査方法は、透明基板上に形成した光学膜がパターニングされることにより形成された転写パターンを有するフォトマスクの、前記転写パターンの特定の被検査位置における透過率を測定する透過率検査方法であって、光源装置から射出する試験光束を前記フォトマスクの被検査位置に集光し、前記試験光束のビームウエスト近傍において前記フォトマスクを透過させ、透過後に拡散する透過光束を、光検出装置に入光させ、前記光検出装置が検出した光量Lに基づき、前記被検査位置における光透過率Tを求めることを特徴とする。
【0021】
本発明の透過率検査方法において、前記光検出装置は、内部にフォトディテクタを備えた積分球を有し、前記透過光束は、前記積分球内で、繰り返し拡散反射することにより強度が均一化した状態で、前記フォトディテクタによって光量検出されることが好ましい。
【0022】
本発明の透過率検査方法において、前記転写パターンは、露光光を透過する透光部と、露光光の一部を遮光する半透光部を有することが好ましい。
【0023】
本発明の透過率検査方法において、前記転写パターンは、露光光を実質的に遮光する遮光部を更に有することが好ましい。
【0024】
本発明の透過率検査方法において、前記フォトマスクは、被転写体上に形成されたレジスト膜に、異なる複数のレジスト残膜値を有するレジストパターンを形成するための、多階調フォトマスクであることが好ましい。
【0025】
本発明の透過率検査方法において、光学膜が形成されていない透明基板上の任意の部分、または前記フォトマスクの光学膜が形成されていない部分を、参照位置として、前記光源から射出する試験光束を、前記参照位置に集光し、前記試験光束のビームウエスト近傍において透明基板又は前記フォトマスクの前記参照位置を透過させ、透過後に拡散する透過光束を、光検出装置に入光させ、前記光検出装置が検出した光量L0と、前記光量Lとを用いて、前記フォトマスクの被検査位置における光透過率Tを求めることが好ましい。
【0026】
本発明のフォトマスク製造方法は、透明基板上に、光学膜が形成されたフォトマスクブランクを用意し、前記光学膜にパターニングを施すことにより、転写パターンを形成し、前記転写パターンの検査を行うことを含むフォトマスクの製造方法において、前記検査において上記の透過率検査方法を用いることを特徴とする。
【0027】
本発明のパターン転写方法は、上記フォトマスクの製造方法により製造したフォトマスクと、露光装置を用い、前記フォトマスクの転写パターンを、被転写体上に転写することを特徴とする。
【0028】
本発明のフォトマスク製品は、上記透過率検査方法によって得られた、前記フォトマスクの所望の被検査位置の光透過率Tを、前記フォトマスクと対応付けた状態で有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、微細パターンなど、幅の小さな領域に対してでも、測定波長に対する光透過率を精緻に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る透過率測定装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る透過率測定装置の一例を示す図である。
【図3】集光レンズに均一な強度分布の平行光を入光させる場合の被検体上のスポット光を説明する図である。
【図4】集光レンズにガウス分布の光を入光させる場合を説明する図である。
【図5】集光レンズにガウス分布の光を入光させる場合を説明する図である。
【図6】測定対象物を透過した透過光を直接フォトディテクタに入光させる透過率測定装置を示す図である。
【図7】光分布調整手段の一例を示す図である。
【図8】本発明の透過率測定装置、またはフォトマスクの透過率検査装置の一例を示す図である。
【図9】本発明の透過率測定装置、またはフォトマスクの透過率検査装置の一例を示す図である。
【図10】本発明の透過率測定装置に適用する多階調フォトマスクの一例を示す図である。
【図11】図10に示した多階調フォトマスクによる転写工程の一例を示す図である。
【図12】多階調フォトマスクの製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者は、試験光束を射出する光源装置と、前記試験光束を集光して被検体に導く集光光学系と、前記被検体を透過した透過光束を受光し、光量を検出する光検出装置と、前記光検出装置によって検出された光量に基づき、前記被検体の光透過率を求める演算装置とを有する、透過率測定装置であって、前記集光された試験光束が、ビームウエスト近傍において前記被検体の被検査位置に入射するように、前記光学系及び前記被検体の相対位置が調節されていること特徴とする、透過率測定装置を用いることにより、測定波長における被検体の膜透過率そのものを正確に測定できるとの知見を得た。以下に、本発明の透過率測定装置の構成例について図面を参照して説明する。
【0032】
図1に示す透過率測定装置は、少なくとも光源101と、光源101から射出した光束を被検体に導く集光光学系(ここでは、光源101からの射出光を平行光束111とするコリメータレンズ102と、コリメータレンズ102からの平行光束111を被検体120に集光する集光レンズ103を備えている)と、試験光束が被検体120を透過後に拡散する透過光束112となり、該透過光束112を入光させて検出する光検出装置を備えている。光検出装置は、透過光束112を、入射ポート104から入光させて拡散反射により空間的に積分した後にフォトディテクタ106に導く積分球105を有している。また、被検体120を透過した透過光束112は被検体120の後方において拡散するが、入射ポート104の位置において透過光束112の径より入射ポート104の径が大きくなるように積分球105を配置することにより、透過光束112を全て積分球105に取り込める構成とする。以下に、透過率測定装置の構成要素について具体的に説明する。
【0033】
<光源装置>
光源装置は少なくとも光源101を備える。光源101は、被検体120に対して所定の光を射出するものであればよい。被検体120が半透光部を含む転写パターンを有するフォトマスクである場合には、該フォトマスクを使用する際に用いる露光機の光源に含まれる波長をもつ光とすることができる。例えば、i線、g線、h線を含む波長域の光、またはその中の代表波長を射出可能な水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED光源等を用いることができる。また、光源101として特定の単一波長の光を射出するレーザーを用いてもよい。
【0034】
尚、レーザー光は、ビーム(光束)中における光強度が、略ガウス分布をもつことができる。つまり、光軸に垂直な平面上で、ビーム中央(光軸近傍)の光強度が相対的に大きく光軸から離れるに従い(周辺部にいくに従い)減少する。一方で、複数波長を含む上述のランプやLEDにおいては、上記レーザー光のような強度分布は有さず、光束中の光強度はほぼ均一である。この場合、レーザー光に類似の光強度分布をもたせるために、光束の光分布を調整する目的のフィルタを備えたものであってもよい。この点については後述する。
【0035】
光源装置に用いる光源101として、水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を用いる場合には、光源101からは複数の波長が混ざっている光が射出されるため、所望の波長の光を選択的に透過する波長選択フィルタ121を設けることができる。一方で、レーザーやLEDのように、光源101が特定の波長の光を射出する場合には、波長選択フィルタ121は設けない構成としてもよい。又は、単一波長のLEDやレーザー光源を複数搭載した光源装置を適用することも有用である。このように互いに異なる単一波長の複数の光源を切り替えて使うことで、異なる波長ごとの透過率を測定することができる。また、これらのLEDやレーザー光源から射出された単一波長の光は、光学系による集光がし易く、光束の径を小さく絞ることができるので好適である。
【0036】
これらの、指向性の高い光源を使用する際には、射出された光束の径(ビーム径)を、ビームエキスパンダ(図示せず)などの光学素子を使用して、所定の倍率に拡大しコリメータレンズ102に導入することが好適である。また、光源101としてレーザー光源を使用する際には、発振を単一モードとすることが好適であり、ビーム径の形状は円または楕円であることが好適である。
【0037】
<集光光学系>
本態様では、集光光学系は、コリメータレンズ102と集光レンズ103を備える。コリメータレンズ102は、光源101から射出した光を平行光束111として、集光レンズ103に導く機能を有している。これにより、光源101から射出した光を効率的に集光レンズ103に導くことができる。
【0038】
コリメータレンズ102は、光源101の射出光(試験光束)が平行光となるように調整することが望ましい。但し、コリメータレンズ102(以下、第1コリメータレンズともいう)は、光源101の射出光(試験光束)を完全に平行光にすることを必須としない。コリメータレンズ102は、光源101から射出される光(試験光束)を適切な光束径に調整し、これが後述する集光光学系(集光レンズ103)の径内(有効径内)に入射できるようにするのが望ましい。
【0039】
集光レンズ103は、光を集光させる機能を有しており、試験光束が被検体120の被検査位置に集光されるようにする。すなわち、試験光束の径が最も小さな部分(ビームウエスト)近傍において、被検体120の被検査位置に入射するように配置する。例えば、被検体120がフォトマスクであり、被検査位置が、転写パターン中の半透光部であるとき、該半透光部に焦点を合わせる。このようにすると、試験光束の径が最も小さな部分で被検査位置の測定ができるので、微細なパターンの測定に有利である。尚、分光光度計を用いて、微細な領域の透過率を実測する従来の方法では、所望の被測定位置の周辺部分(例えば、遮光部や透光部)の光透過率が、測定スポット中に位置してしまうため、測定精度が低下するという問題があるが、本実施の形態で示す透過率測定装置は、試験光束を被検査領域(例えば、半透光部)だけに導き、透過させることが可能となるため、半透光膜そのものの膜透過率を正確に測定することができる。
【0040】
ここで、ビームウエスト近傍とは、集光レンズ103によって集光された光束の最も径の小さい部分をビームウエストとしたとき、その径に対して、1.1倍を超えない径の領域をいう。また、光束の径とは、光軸と垂直方向の面で光束を切断したときの切断面において、中心部の光強度(すなわち最大光強度)を100%としたときに、光強度が13.5%(中心部の最大光強度の1/e)以上の領域の円の直径、又は楕円の長径とすることができる。
【0041】
上記の関係を満たすためには、集光レンズ103と被検体120の光軸方向の相対位置の調整が重要であるが、上記のように被検体120を固定した状態で集光レンズ103を移動させてもよく、逆に、集光レンズ103に対して被検体120を移動させてもよい。もしくは、両者を移動させてもよい。
【0042】
集光レンズ103の開口数(NA)は、集光スポット形状と被検体120への入射角度依存性の観点から、0.25〜0.65(NA=0.25〜0.65)とすることが好ましい。NAが小さすぎると、被検査位置において、集光スポット形状を十分に小さくすることができなくなる。一方で被検体120への入射角度が大きくなりすぎると、被検体120に対して斜め(被検体表面に対して垂直以外の方向)に入射する光線の比率が増加し、透過率測定の信頼性が低下するため、NAの上限を0.65とすることが好ましい。
【0043】
上記を考慮し、集光レンズ103の開口数は、測定する領域の面積(フォトマスクの半透光部の面積)、測定波長等により適宜設定することができる。
【0044】
<光検出装置>
光検出装置は、積分球105及びフォトディテクタ106を備える。積分球105は、入射ポート104から入光する光(透過光束112)を球内壁面での拡散反射により空間的に積分し均一にしてフォトディテクタ106に入射する役割を果たす。図1では、光源装置から射出された試験光束は、被検体120の表面に集光されて透過した後、透過光束112が入射ポート104を介して積分球105に入光し、積分球105内部の拡散反射により空間的に積分される。また、積分球105は、被検体120の後方で拡散する透過光束112が全て入射ポート104から積分球105に取り込まれるように配置する。
【0045】
フォトディテクタ106(又はパワーメータともいう)は、積分球105に設けられた、入射ポート104とは別の開口部により、設置することができる。当該フォトディテクタ106には、積分球105で空間的に積分されて均一化(平均化)された光が入射する構成となっている。つまり、被検体120の被検査位置(光源装置からの試験光束が集光された範囲)を通過した全ての光が平均化され、その強度に比例した光がフォトディテクタ106に均一に入射することとなり、被検体120の被検査位置における光透過量を高精度で測定することができ、この光透過量に基づき、光透過率を求めることが可能となる。フォトディテクタ106は、積分球105の内部に備えられていることが望ましい。ここで、内部とは積分球105で積分された光をフォトディテクタ106に入射させることができる位置であり、例えば、積分球105の内側、内面を含むことができる。但し、機械的な制約等によってフォトディテクタ106を積分球105の内部に設置できない場合には、フォトディテクタ106に入射される光量が減少してしまう等のデメリットはあるものの、積分球105で積分された光をフォトディテクタ106に入射させることができる位置の範囲で、フォトディテクタ106の設置位置を変更することができる。例えば、積分球105の外側にフォトディテクタ106を設置することができる。また、積分球105内で空間的に積分して十分に均一化(平均化)するために、入射ポート104の径は積分球105の直径の1/4以下であることが好ましい。
【0046】
また、前記積分球105は、内壁に前記試験光束に対する反射率が0.8以上の素材が被覆されているものであることが好ましい。
【0047】
尚、図6に示すように、積分球105を用いずに、被検体120を透過した透過光束112を直接フォトディテクタ123の受光部に入光させ、透過光束112をフォトディテクタ123で直接検出することも可能である。この場合、一般的に、フォトディテクタ123は、受光部が平面であり、受光部に対する入射角度依存性が存在するため受光部を光軸に対して垂直に設置する必要がある。被検体120を透過した透過光束112を直接フォトディテクタ123に入光させる場合には、拡散する透過光束112の光軸に対して受光部を垂直に設置しても、該透過光束112のすべてを垂直に入光させることはできないため、測定誤差が生じる可能性がある。また、フォトディテクタ123の受光面は、透過光束112の径より大きくなければならず、その大きさについても制約があるため、透過光束112を全てフォトディテクタ123に入光させる場合には、被検体120とフォトディテクタ123間の距離を非常に短くしなければならなくなる。一方で、図1に示すように、積分球105を用いる場合は、フォトディテクタ106の受光面より大きい径を有する入射ポート104から、透過光束112を入光させて、積分球105で空間的に積分されて均一化(平均化)した光をフォトディテクタ106に入射するため、透過光束112の径がフォトディテクタ106の受光面より大きな場合でも、対応したサイズの積分球105を選択することで、上記した装置上の制約が無くなり、すぐれた精度の測定が可能である。
【0048】
また、膜透過率についてより高精度な測定を行う場合には、積分球105への入射光(透過光束112)を一定の角度(立体角)に固定することができる。この場合、図2に示すように、被検体120と積分球105の間に、透過光束112を平行光とするコリメータレンズ122(以下、第2コリメータレンズともいう)を設けることができる。これにより、積分球105の入射ポート104に、透過光束112のすべてが入光することが容易となり、その入射角も一定範囲内となるため、フォトディテクタ106における測定精度をより向上させることが可能となる。
【0049】
また、被検体120と積分球105の間に第2コリメータレンズ122を設けることにより透過光束112の径を減少させることができるため、入射ポート104の径を非常に大きなものにしなくても積分球105を被検体120から所望距離離して配置させることができる。つまり、積分球105の配置を自由に設定することが可能となり、光学エレメントの設置の自由度が向上するとういう効果を奏する。
【0050】
尚、ここでいう第2コリメータレンズ122も、上述した第1コリメータレンズ102と同様に、透過光束112を完全な平行光とすることが必ずしも必要ではない。光束径を減少させることによって、透過光束112を積分球105内部へ、確実に取り込めるものであればよい。換言すれば、第2コリメータレンズ122は、積分球105を所望の位置に配置するための、光束径調整手段として、機能することができる。
【0051】
尚、図6の装置においても、被検体120を透過した透過光束をコリメータレンズで平行化してフォトディテクタ123に入光させることは可能である。但し、フォトディテクタ123が、透過光束112以外の迷光(装置内や装置外の光源に由来し、被検査位置以外のところから意図せずに入光する光)を検知する可能性があるので、積分球を用いた図1又は図2の装置がより好ましい。
【0052】
<透過率測定装置>
上記にて説明した、光源装置、集光光学系、光検出装置を搭載した、透過率測定装置を、図8及び図9に例示する。
【0053】
本態様において、光源装置と集光光学系は、その光軸を一致させた状態で、被検体(ここではフォトマスク)120の所望位置に配置可能である。また、光検出装置も、被検体120を透過した透過光束を完全に入光させられるように、その軸を上記光軸と実質的に一致させている。このようにして、被検体120の所望の被検査位置の光透過率を検出可能である。
【0054】
ここで、光源装置と集光光学系は、光軸を一致させた状態で一体に保持され(ユニットA)、ユニットA駆動用レールに移動方向を制御されつつ移動可能となっている。そして、被検体120の主平面と平行な面内で所望の位置に配置することができる。その一方、光検出装置(ユニットB)は、ユニットB駆動用レールによって移動方向を制御されつつ、やはり、被検体120の主平面と平行な面内で移動できる。ユニットAとユニットBは、被検体の主平面を両側から対向し、光透過率測定時には、両者の光軸が一致する。光検出装置側にコリメータレンズ122を設ける場合(図2参照)は、これも光軸を一致させ、ユニットBの一部として設置することができる。
【0055】
上記ユニットA及びユニットBは、被検体120の主平面と平行な面内(すなわち光軸と垂直な面内)で、それぞれを所望位置に移動させるためのユニットA移動装置301、ユニットB移動装置302にそれぞれ接続され、これらの移動装置は、制御装置300によって制御される(図9参照)。
【0056】
更に、被検体120とユニットA,ユニットBは、位置調節機構(不図示)によって、その光軸方向の相対位置調整が可能である。すなわち、光源装置から射出された試験光束が、集光光学系によって被検体120に導かれ、その光束がビームウエスト近傍において被検体120の被検査位置に入射するように、相互の位置が精緻に調節される。この位置調節機構は、ユニットA移動装置301、ユニットB移動装置302に含ませることも可能である。また、ユニットA内において、光源装置と集光光学系の光軸方向においての相互位置、光源装置内において、その構造部品(光源101、第1コリメータレンズ102など)の相互位置も、必要に応じて調整可能であることは言うまでもない。
【0057】
光検出装置によって検出された光量は、演算装置303に送られ、被検体の光透過率を演算することが可能である。演算装置303はまた、付随するメモリを用いて、光透過率の算出に必要はパラメータをあらかじめ、記憶し保存しておくことができる。
【0058】
本発明の装置は更に、被検体120を保持する被検体ホルダを有する。本態様の前記被検体ホルダは、一辺が300mm以上の方形を有する、フォトマスクを保持可能である。例えば、一辺が300〜1800mmの方形のフォトマスクを保持可能であることが好ましい。
【0059】
尚、上述の態様では、被検体120を固定し、両ユニット(A,B)を可動としているが、逆でもよく、更には両者が可動であってもよい。また、図8に示すように、被検体ホルダは被検体120をほぼ水平に保持してもよく、或いはほぼ垂直に保持してもよい。
【0060】
<透過率測定方法>
上記透過率測定装置に、被検体(ここでは、フォトマスク)120をセットし、そのフォトマスク120上に形成された転写パターンの、所望位置における光透過率を測定することができる。例えば、フォトマスク120が、露光光の一部を透過する、半透光部を備えたものであるとき、その半透光部が微細なサイズであった場合においても、該半透光部の周辺に配置されたパターン(透光部、遮光部など)に影響されず、正確な半透光部の光透過率を測定することができる。
【0061】
例えば、被検体であるフォトマスク120を、本発明の装置の被検体ホルダにセットする。次に、ユニットAとユニットBを、両者の光軸が一致した状態で、フォトマスク120の主平面に平行な面内で移動させ、透過率を得ようとする半透光部の位置にセットする。ここで、被検体であるフォトマスク120が、液晶表示装置用の大型マスクである場合、その露光光波長は、i線〜g線であるから、それと実質的に等しい波長域をもつ光源を用いて、測定することが有用である。或いは、マスクユーザが透過率測定の基準として用いる代表波長(たとえばi線)を用いて測定することも、また有用である。
【0062】
ユニットAとユニットBの、マスク面と平行な面内での位置を画定し、更に、光源装置から射出する試験光束が集光光学系を経て、そのビームウエスト近傍が、測定しようとするフォトマスク120の半透光部に位置するように、ユニットAと被検体の相対位置を調整する。ついで、試験光束が該半透光部を透過したのちの透過光束112が、光検出装置の積分球105の入射ポート104から確実に入光するように、光検出装置を位置させる。このとき、積分球105内におかれた、フォトディテクタ106の出力(透過光量L)を演算装置303に取り込む。
【0063】
フォトマスク120の半透光部における膜透過率Tを求めようとするときには、膜が形成される前の透明基板がもつ、参照透過量L0を予め求めておくことができる。これは、膜が形成されていない透明基板の一部分、または、フォトマスク120の転写パターン中、膜が形成されていない部分(これらを「参照位置」ともよぶ)について、上記と同様の方法で参照透過光量L0を求めることにより得られる。そして、上記のように半透光部の光透過量Lを求めれば、該半透光部の光透過率Tは、
T= L/L0
として求めることができる。
【0064】
<被検体>
本実施の形態で示す透過率測定装置の被検体120としては、光が透過するものであればよい。本実施の形態で示す透過率測定装置を用いて透過率の測定を行うことができる好適な一例としては、透明基板上に形成された光学膜をパターニングして得られた転写パターンをもつ、フォトマスクが挙げられる。
【0065】
光学膜とは、露光光の少なくとも一部を遮光する(つまり、一部を透過する)膜(半透光膜とよぶ)とすることができる。これは、被転写体上に形成されたレジスト膜を、フォトマスクを使用して露光することにより、所望量減膜させ、所望形状のレジストパターンを形成するときに用いられる。
【0066】
特に、多階調フォトマスクにおいて、複数の異なる残膜量をもつレジストパターンを形成し、これを用いて、所望の電子デバイスを製造することが可能であり、極めて有用である。例えば、本発明に適用されるフォトマスクとして、液晶表示装置の製造に用いられる多階調フォトマスクであることができ、透光部、遮光部のほか、1種類又は複数種類の露光光透過率をもつ、半透光部を有することができる。
【0067】
図10に上記用途の多階調フォトマスクを例示する。透明基板200上に形成された半透光膜201と遮光膜202がそれぞれパターニングされ、所望の転写パターン(半透光膜パターン201p、遮光膜パターン202p)を有する、3階調のフォトマスク20となっている。ここで半透光部215は、微細な幅をもち、透光部220、遮光部210と隣接している。このため、パターニングが施された後に、半透光部に形成された半透光膜の光透過率を正確に把握することは従来技術において困難である。
【0068】
遮光膜の形成前、半透光膜のみが形成された段階(後述のフォトマスクブランク形成過程)で光透過率を測定することは可能であるが、複数のプロセスを経てパターニングが施された後、フォトマスク完成品となったときに、これが同一の透過率を示すか否かは不明である。したがって、フォトマスクとしての、微細な半透光部の透過率測定が必要である。
【0069】
上記の多階調フォトマスクによる転写工程を、図11に示す。すなわち、透明基板500上に形成された複数の薄膜501を積層した被転写体50に対して、3次元的なパターンを形成したいときに、適宜フォトマスクを用いて、パターンを転写する。ここでは、多階調フォトマスク20を用い、被転写体上に形成したポジレジスト層502に対して、複数の異なる残膜量をもつレジストパターン502pを形成している。このようにすることで、フォトマスク2枚分のパターン加工を、フォトマスク1枚によって行うことができる。
【0070】
本発明による、半透光膜の透過率の測定としては、上記の多階調フォトマスクにおける、転写パターン中の、微細な(たとえば幅が1mm以下。特に、2〜500μmのときに本発明を適用する必要性が高く、2〜100μmの時に、本発明による効果が殊に顕著である)半透光部の露光光透過率を測定できる。
【0071】
例えば、遮光部と隣接する半透光部の膜透過率を測定しようとするとき、測定スポットの大きい、既存の分光光度計を使用すれば、測定視野内に、被検査位置にある半透光部のみを配置することが不可能であって、正確な光透過率が得られない。本発明によれば、測定視野は、集光光学系の形成するビームウエストの径とすることができるので、微小なスポットの測定が可能である。
【0072】
上述したように、近年フォトマスクの多階調化やパターンの微細化により、透明基板上に形成された光学膜(ここでは、露光光の一部を透過する、半透光膜)が、製造後のフォトマスクにおいて有している膜透過率を正確に測定することが求められており、このような被検体に対して本実施の形態で示す透過率測定装置を用いることは非常に有効となる。
【0073】
すなわち、製造後のフォトマスクにおいては、分光光度計を用いた従来の測定方法によって測定可能な面積よりも小さい面積の半透光部が存在し、この部分の膜透過率を正確に知ることが、フォトマスクの検査や製品保証の上で、極めて重要である。
【0074】
例えば、このようなフォトマスクとして液晶表示装置製造用のフォトマスクであって、そのサイズが一辺300mm以上の大型マスクが挙げられる。
【0075】
また、液晶表示装置に用いる薄膜トランジスタ(TFT)製造用、或いはカラーフィルタ(CF)製造用として透光部、半透光部、遮光部をもつ、(3階調の)多階調フォトマスクが挙げられる。或いは、互いに透過率の異なる2種類以上の半透光部をもつ、4階調以上の多階調フォトマスクが挙げられる。
【0076】
更には、2階調のフォトマスクであっても、遮光部に所定の透過率を有する光学膜を用いる場合には、本発明の被検体として有用に適用できる。
【0077】
本発明に適用する被検体として、本発明の顕著な効果が得られる、多階調フォトマスク及びその検査方法、製造方法について説明する。
【0078】
多階調フォトマスクは、例えば、図12に示す方法で作製することができる。即ち、まず透明基板(200)に、半透光膜201と遮光膜202をこの順に積層し、レジスト203(ここではポジレジスト)を塗布したフォトマスクブランク20bを用意する(図12(a)参照)。
【0079】
透明基板200は、例えば、石英(SiO)ガラスや、SiO,Al,B,RO(Rはアルカリ土類金属),RO(Rはアルカリ金属)等を含むガラス等からなる平板として構成されている。透明基板200の主面(表面及び裏面)は、研磨されて平坦且つ平滑に構成されている。透明基板200は、例えば一辺が500mm〜1800mm程度の方形とすることができる。透明基板200の厚さは例えば3mm〜20mm程度とすることができる。
【0080】
半透光膜201は、例えばクロム(Cr)を含む材料からなり、例えば窒化クロム(CrN)、酸化クロム(CrO)、酸窒化クロム(CrON)、フッ化クロム(CrF)等のクロム化合物とすることができる。これらの半透光膜201は、例えば硝酸第2セリウムアンモニウム((NHCe(NO)及び過塩素酸(HClO)を含む純水からなるクロム用エッチング液を用いてエッチング可能なように構成されている。又は、モリブデン(Mo)等の金属材料とシリコン(Si)とを含む材料からなる金属シリサイド化合物とすることができる。例えばMoSi、MoSix、MoSiN、MoSiON、MoSiCON等からなる。この種の半透光膜201は、フッ素(F)系のエッチング液(又はエッチングガス)を用いてエッチング可能なように構成されている。
【0081】
遮光膜202は、クロム(Cr)またはクロムを主成分とするクロム化合物とすることができる。なお、遮光膜202の表面に所定組成のCr化合物(CrO、CrC,CrN等)を積層する(図示せず)ことにより、遮光膜202の表面に光反射抑制機能を持たせることができる。遮光膜202は、上述のクロム用エッチング液を用いてエッチング可能なように構成されている。
【0082】
遮光膜202は露光光(i線〜g線)を実質的に遮光し、透光部220は露光光を略100%透過させるように構成されている。そして、半透光膜201は、透明基板の透過率を100%としたとき、3%以上80%以下の膜透過率をもつものとすることができる。TFT製造用のフォトマスクとして、3階調以上の多階調フォトマスクの半透光部に用いる半透光膜としては、5〜60%、マスクユーザによる被転写体の加工のしやすさの点では、20〜60%が好ましい。尚、代表波長(たとえばi線)を用いて、上記透過率を持つものを評価してもよい。
【0083】
更に、2階調(遮光部と透光部)のフォトマスクにおいて、遮光部に用いる遮光膜に一定の透過率をもたせる場合、その透過率は、3〜20%が好ましく、より好ましくは、5〜15%とすることができる。
【0084】
上記フォトマスクブランクに対し、所定のパターンを描画し、現像することによって、第1のレジストパターン(203p)を得る(図12(b)参照)。これをマスクにして、遮光膜202をエッチングすることによって、遮光膜パターン202pが形成される(図12(c)参照)。
【0085】
レジストパターン203pを剥離したのち、再度全面にレジスト204を塗布する(図12(d)参照)。そして、2度目の描画及び現像により、第2のレジストパターン(204p)を得る(図12(e)参照)。これをマスクとして、半透光膜201をエッチングすることにより、半透光膜パターン201pが形成される(図12(f)参照)。そして、残留するレジストパターン204pを剥離する(図12(g)参照)。このようにして、多階調(ここでは3階調)のフォトマスクが完成する。
【0086】
図12は、パターニングプロセスを模式的に示したものであり、実際のパターン形状には、用途に応じ他の種々の形式がある。
【0087】
本発明の製造方法では、上記パターニングの後、透過率の検査工程を設けることができる。これは、マスクユーザの求める正しい光透過率が得られているか否かを確認し、不都合があれば製造工程に戻し、問題がなければ、製品保証をすることができる。
【0088】
尚、マスクユーザの希望によっては、本発明の検査方法で得られた光透過率の数値を、フォトマスクと対応づけた形でフォトマスク製品として供給することができる。すなわち、フォトマスク製品の供給を受けても、その微細部分の光透過率を精密に測定することは、通常は不可能であるから、フォトマスクの属性である透過率を、フォトマスクと一体化して付属させることが有意義である。この場合、供給形式は、フォトマスクと透過率データを物理的に一体にしてもよく、または、流通は個々に行うものの、互いを結び付ける情報によって、対応づけられていてもよい。
【0089】
フォトマスクユーザは、この透過率データを参照し、該フォトマスクと、露光機とを用いて、フォトマスクの有する転写パターンを、被転写体に転写し、所望の電子デバイスを製造することができる。この場合、製造工程に適用される様々な条件パラメータは、該透過率データを基に設定されることができる。
【0090】
また、本実施の形態に示す透過率測定装置において、測定精度をより向上させるためには、光源装置から射出する試験光束の強度分布等を適宜制御することが好ましい。
【0091】
例えば、図1に示す透過率測定装置において、コリメータレンズ102から集光レンズ103に入光する平行光束111の強度分布を、中央部が周辺部と比較して相対的に明るい分布とするための、光分布強度調整手段を導入することができる。分布の形態の一例としては、例えばガウス分布があげられる。
【0092】
一般的に、均一な強度分布の平行光束111を集光レンズ103に入光させて、被検体120に集光させた場合、集光された光のピークの外周にサイドローブが発生することが発明者らによって確認された(図3(A)、(B)参照)。微細な部分の透過率を正確に測定するためには測定光を測定対象部分に集光させる必要があるが、サイドローブが発生することにより集光したスポットの外側にも一部の光が出てしまい、微細パターンのサイズや周辺パターンの位置(例えば、スリット幅)によってはサイドローブが被検体120の被検査位置以外の位置に入射されてしまい、そのはみ出し光のために、測定精度が低下する恐れがある。
【0093】
そのため、集光光学系に入光する平行光束111内の強度分布を均一でなく、中央部(光軸近傍)が周辺部に比べて相対的に明るい分布とすることが好ましい(図4参照)。これにより、サイドローブの発生を抑制し、測定領域の透過率を高い精度で測定することが可能となる。
【0094】
平行光束111内の光強度分布の種類は、中央(光軸近傍)に比べ、周辺方向に向かって強度が単調減少するものであればとくに制約は無い。例えば、ガウス分布とすることが可能である。光源がレーザーの場合には、ほぼガウス分布が得られる。その他の光源の場合には、光分布を調整する手段を導入して同様の効果を得ることができる。
【0095】
図5に、試験光束光強度分布を変化させた場合に、サイドローブにより微細パターンからはみ出すスポット光の割合について検証したシミュレーション結果を示す。分布形状はガウス分布とした。
【0096】
具体的には、コリメータレンズ102からの平行光束111のガウス分布を変化させて集光レンズ103に入光させ、被検体120のパターン線幅に応じてスポット光がはみ出す割合を測定した。集光レンズ103としては、NAが0.4と0.65のレンズを用い、評価波長は405nmの光とした。
【0097】
図5(A)は、NAが0.4の集光レンズ103を用いた場合に、集光レンズ103に入射させる平行光束111のガウス分布を示しており、縦軸が強度を示し、横軸が集光レンズ103に入射するビーム断面(ガウス分布幅1/e)を示している。
【0098】
上述のように、ガウス分布のビーム径は、光軸に対して直交する面で測定されたピーク値の1/e(約13.5%)の強度となる幅として定義することができる。この幅(図5(B)に示す「ガウス分布のNA」、NAgともいう)が、集光レンズのNA(NAcともいう)に対し、
0.4 ≦ NAg/NAc ≦ 0.6
であることが好ましい。
【0099】
例えば、集光レンズのNAを元に、上記数式の範囲からガウス分布のNA比を求め、使用される集光レンズの有効径(瞳径)との比によって、本発明に好適に使用できるガウス分布幅を求めることができる。例えば、集光レンズの有効径を1としたときに、集光レンズに入射される試験光束の径(ビーム断面)は0.4以上0.6以下の範囲とすることができる。
【0100】
例えば、NA0.4の集光レンズを用いたとき、平行光束111のガウス分布のNAが0.4であれば、6μm幅のパターンについては、はみ出し光が小さい(0.61%)が、2μm幅のパターンについては、はみ出し光が2.18%に達してしまう(図5(B))。一方、同一の集光レンズを用いても、平行光束111のガウス分布のNAが0.2(NAg/NAc=0.5)であれば、6μm幅のパターンについては0.0%、2μm幅パターンでも0.42%となり、測定精度が向上する。
【0101】
また、被検査位置(例えば半透光部)の幅内に、試験光束全体の光強度の99.7%以上が入っている状態(はみ出し光0.3%以下)とするのが好ましい。より好ましくは、99.9%以上(はみ出し光0.1%以下)である。光束径中の光強度分布の調整は、光強度分布制御手段(例えば、アポダイゼーションフィルタ(図7参照))の利用や、集光レンズのNAの選択、それらの組み合わせによって行うことができる。
【0102】
以上により、本願発明によって、CCDやCMOS等の2次元センサーを用いて画像を取得する従来の方法が有していた、測定領域から取得した信号強度が、該測定領域に隣接した領域で取得した信号強度の変化に影響して変動を生じる、という問題も発生せず、該測定領域の正確な透過率を得ることができるようになった。
【0103】
このように、本願発明は、微細なパターンの透過率を測定する際に、該パターンの周辺に存在するパターンの透過率の影響や、該パターン周辺にあるパターンによる検査光束の回折が生じることが無く、微細パターンの透過率測定を行うことが可能となる。ここで、本発明における、微細なパターンとは0.5μm以上7μm以下の線幅を有する半透光部の透過率測定に有効である。さらには0.5μm以上5μm以下の線幅、よりさらには0.5μm以上3μm以下の線幅の透過率測定に有効である。
【0104】
また、本願発明によって、従来は不可能であった、フォトマスクの微細な半透光部や、前述の透過率をもたせた遮光部の微細パターンの膜透過率に関する品質保証が可能となった。さらには、周辺の条件に影響されず、膜固有の特性としての膜透過率を正確に評価可能な本願発明は、より微細化が求められているフォトマスクの開発においても有効となる。
【0105】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態における材質、パターン構成、部材の個数、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
101 光源
102 コリメータレンズ
103 集光レンズ
104 入射ポート
105 積分球
106 フォトディテクタ
111 平行光束
112 透過光束
120 被検体
121 波長選択フィルタ
122 コリメータレンズ
123 フォトディテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験光束を射出する光源装置と、前記試験光束を集光して被検体に導く集光光学系と、前記被検体を透過した透過光束を受光し、光量を検出する光検出装置と、前記光検出装置によって検出された光量に基づき、前記被検体の光透過率を求める演算装置と、を有する透過率測定装置であって、
前記集光された試験光束が、ビームウエスト近傍において前記被検体の被検査位置に入射するように、前記光源装置、前記集光光学系及び前記被検体の相対位置が調節されていること特徴とする透過率測定装置。
【請求項2】
前記光源装置がレーザー光源を備え、
前記集光光学系に備えられた集光レンズの有効径を1としたときに、
前記集光レンズに入射される前記試験光束の径が、0.4以上0.6以下であることを特徴とする請求項1記載の透過率測定装置。
【請求項3】
前記光検出装置は、内部にフォトディテクタを備えた積分球を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の透過率測定装置。
【請求項4】
前記積分球は、透過光束が入光する入射ポートを有し、かつ、前記入射ポートのポート径が、前記透過光束が入光する位置における前記透過光束の径より大きくなるように、前記積分球が配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透過率測定装置。
【請求項5】
前記集光光学系は、第1のコリメータレンズと集光レンズを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透過率測定装置。
【請求項6】
前記被検体の主平面に平行な面内において、前記光源装置、前記集光光学系及び前記被検体の相対位置を調整するために、前記光源装置と前記集光光学系を移動させ、又は、前記被検体を移動させるための移動装置を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透過率測定装置。
【請求項7】
前記被検体と前記光検出装置の間に、前記透過光束の径を調整する第2のコリメータレンズを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透過率測定装置。
【請求項8】
前記集光光学系は、前記試験光束の光軸と垂直な面における光強度分布が、中央部において、周辺部より大きいものとする光分布調整手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透過率測定装置。
【請求項9】
透明基板上に形成した光学膜がパターニングされることにより形成された転写パターンを有するフォトマスクの、前記転写パターンの特定の被検査位置における透過率を測定する透過率検査装置であって、
試験光束を射出する光源装置と、前記試験光束を集光してフォトマスクに導く集光光学系と、前記フォトマスクを透過した透過光束を受光し、光量を検出する光検出装置と、前記光検出装置によって検出された光量に基づき、前記フォトマスクの前記被検査位置における光透過率を求める演算装置と、を有し、
前記集光された試験光束が、ビームウエスト近傍において前記フォトマスクの被検査位置に入射するように、前記光源装置、前記集光光学系及び前記フォトマスクの相対位置が調節されていること特徴とするフォトマスクの透過率検査装置。
【請求項10】
前記光源装置がレーザー光源を備え、
前記集光光学系に備えられた集光レンズの有効径を1としたときに、
前記集光レンズに入射される前記試験光束の径が、0.4以上0.6以下であることを特徴とする請求項9記載のフォトマスクの透過率検査装置。
【請求項11】
透明基板上に形成した光学膜がパターニングされることにより形成された転写パターンを有するフォトマスクの、前記転写パターンの特定の被検査位置における透過率を測定する透過率検査方法において、
光源装置から射出する試験光束を前記フォトマスクの被検査位置に集光し、前記試験光束のビームウエスト近傍において前記フォトマスクを透過させ、
透過後に拡散する透過光束を、光検出装置に入光させ、
前記光検出装置が検出した光量Lに基づき、前記被検査位置における光透過率Tを求めることを特徴とする透過率検査方法。
【請求項12】
前記光検出装置は、内部にフォトディテクタを備えた積分球を有し、前記透過光束は、前記積分球内で、繰り返し拡散反射することにより強度が均一化した状態で、前記フォトディテクタによって光量検出されることを特徴とする請求項11記載の透過率検査方法。
【請求項13】
前記転写パターンは、露光光を透過する透光部と、露光光の一部を遮光する半透光部を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の透過率検査方法。
【請求項14】
前記転写パターンは、露光光を実質的に遮光する遮光部を更に有することを特徴とする請求項13に記載の透過率検査方法。
【請求項15】
前記フォトマスクは、被転写体上に形成されたレジスト膜に、異なる複数のレジスト残膜値を有するレジストパターンを形成するための、多階調フォトマスクであることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の透過率検査方法。
【請求項16】
前記光学膜が形成されていない透明基板上の任意の部分、または前記フォトマスクの光学膜が形成されていない部分を、参照位置として、
前記光源から射出する試験光束を、前記参照位置に集光し、前記試験光束のビームウエスト近傍において透明基板又は前記フォトマスクの前記参照位置を透過させ、
透過後に拡散する透過光束を、前記光検出装置に入光させ、
前記光検出装置が検出した光量L0と、請求項11〜15のいずれかに記載の透過率検査方法より得られた光量Lとを用いて、前記フォトマスクの被検査位置における光透過率Tを求めることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の透過率検査方法。
【請求項17】
透明基板上に、光学膜が形成されたフォトマスクブランクを用意し、前記光学膜にパターニングを施すことにより、転写パターンを形成し、前記転写パターンの検査を行うことを含む、フォトマスクの製造方法において、
前記検査において、請求項11〜16のいずれかに記載の透過率検査方法を用いることを特徴とするフォトマスク製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の製造方法により製造したフォトマスクと、露光装置を用い、前記フォトマスクの転写パターンを、被転写体上に転写することを特徴とするパターン転写方法。
【請求項19】
請求項11〜16のいずれかに記載の透過率検査方法によって得られた、前記フォトマスクの所望の被検査位置の光透過率Tを、前記フォトマスクと対応付けた状態で有することを特徴とするフォトマスク製品。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−47732(P2012−47732A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155689(P2011−155689)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】