説明

透過率測定装置、及び透過率測定方法

【課題】測定対象領域の透過率を内部反射光による誤差を抑えて精度良く測定するのに好適な透過率測定装置を提供すること。
【解決手段】透過率測定装置を、被検光を射出する光源装置と、該被検光を集光して測定対象上にスポットを形成する第一光学系と、測定対象を透過した被検光を集光してスポットの共役像を形成する第二光学系と、共役像の形成位置近傍に配置された絞りと、絞りを透過した被検光を検出する光検出手段と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過する領域を有する測定対象の透過率を測定する透過率測定装置及び透過率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等の電子部品の製造工程では、マスク数の削減による低コスト化のため、従来のモノクロパターンに少なくとも一層の半透過膜パターンを加えたいわゆる多階調フォトマスクが用いられている(特許文献1参照)。この種の半透過膜パターンの透過率をコントロールすることは、多階調フォトマスクの品質を管理するうえで重要である。そこで、多階調フォトマスクの品質管理においては、実際にパターンニングされる半透過膜と同一成分で基準マスクを作成して透過率を測定し、半透過膜パターンの透過率として評価している。
【0003】
特許文献2には、サンプルの特定領域(カラーフィルタの画素)の透過率を実測する透過率測定方法が記載されている。特許文献2に記載の透過率測定方法では、被検光をサンプルの測定対象領域に集光してその透過光強度を測定し、測定強度に基づいて当該領域の透過率を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−258250号公報
【特許文献2】特許4358848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半透過膜パターンは、大面積を持つ透明基板上に複雑かつ微細に形成されているため、均一な透過率に製造することが難しく基準マスクの透過率と一致しないという場合があり得る。また、半透過膜のみが形成された段階での光透過率と、複数のプロセスを経てパターニングが施されたフォトマスク完成品となったときとでは、同一の透過率を示さない場合もある。従って、フォトマスクを管理するには、フォトマスク上の任意の位置に形成された半透過膜パターンの透過率を周辺のパターンに関係なく実測することが望ましい。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された透過率測定方法を改良発展させて被検光を多階調フトマスク上に集光させるという方法を実施すれば、微細な半透過膜パターンの透過率を実測できると考えられる。例えば被検光を半透過膜パターン上に集光させてその透過光を光検出器で検出すると、微細な半透過膜パターンの透過率を周囲のパターンの透過率の影響を受けることなく測定できると考えられる。
【0007】
但し、上記透過率測定方法を実施した場合、光検出器では、多階調フォトマスクを直接透過した直接光だけでなく透明基板の内部反射光も混在して検出されることが想定される。内部反射光は、透明基板の射出時に生じた内部反射成分が透明基板の転写パターン形成面で再度内部反射した後に透明基板を射出した光として定義される。内部反射光には、透明基板の射出面と転写パターン形成面との内部反射を複数回繰り返す多重反射光も含まれる。
【0008】
転写パターン形成面における反射率は、転写パターン形成面に描かれたパターンに依存して変化する。上記反射率が変化すると、光検出器で検出される検出光量も変化する。すなわち、光検出器を用いて測定される半透過膜パターンの透過率は、転写パターン形成面上のパターンに依存して変化するため、正確に測定することが難しい。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、測定対象領域の透過率を内部反射光による誤差を抑えて精度良く測定するのに好適な透過率測定装置及び透過率測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る透過率測定装置は、被検光を射出する光源装置と、該被検光を集光して測定対象上にスポットを形成する第一光学系と、測定対象を透過した被検光を集光してスポットの共役像を形成する第二光学系と、共役像の形成位置近傍に配置された絞りと、絞りを透過した被検光を検出する光検出手段とを有することを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、被検光が測定対象を透過する際に生じた内部反射光を絞りによりほぼカットしつつ測定対象を内部反射することなく透過した直接光を光検出手段に漏れなく導くことができる。測定対象上のパターンに依存する透過率の変化が実質的に抑えられるため、例えば微細な半透過膜パターンの透過率測定が精度良く行われる。
【0012】
絞りは、直接光を透過させる機能と内部反射光を遮る機能を充足するため、開口径が共役像の径以上で、かつ被検光が測定対象を透過する際に生じた内部反射光の該絞りの位置における光束径未満としてもよい。
【0013】
絞りは、直接光を透過させる機能と内部反射光を遮る機能をより好適に発揮するため、共役像の径の2〜400倍の範囲に収まる開口径を有していてもよい。
【0014】
光源装置は、測定対象上に微小なスポットを形成するため、特定波長の光を射出する構成としてもよい。
【0015】
また、本発明の一形態に係る透過率測定方法は、透明基板上に、少なくとも半透過膜がパターニングされてなる半透過パターンを有する、フォトマスクの透過率測定方法であって、上記透過率測定装置を用いて半透過膜パターンの透過率を測定する方法を含む。本方法による測定対象たるフォトマスクは、例えば、透明基板上に、半透過膜がパターニングされてなる半透過パターンと、遮光膜がパターニングされてなる遮光膜パターンを有することにより、透光部、遮光部、半透過部を備える多階調フォトマスクである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定対象領域の透過率を内部反射光による誤差を抑えて精度良く測定するのに好適な透過率測定装置及び透過率測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の透過率測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の透過率測定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】測定対象であるフォトマスクの転写パターン形成面を示す図である。
【図4】測定対象であるフォトマスクの転写パターン形成面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の透過率測定装置及び透過率測定方法について説明する。
【0019】
本実施形態の透過率測定装置は、フォトマスクの透過率を測定する装置であり、透明基板上に形成された微細な半透過膜パターンの透過率測定に好適に構成されている。図1及び図2は、本実施形態の透過率測定装置100の構成を示すブロック図である。図1は、透過率測定装置100全体の構成を示し、図2は、透過率測定装置100の一部の構成を示す。
【0020】
図1に示されるように、透過率測定装置100は、投光ユニット1と受光ユニット4を有している。投光ユニット1と受光ユニット4との間には、測定対象であるフォトマスク8が測定対象面(転写パターン形成面)を投光ユニット1側に向けて取り付けられている。本実施形態において、フォトマスク8は、透明基板上にモノクロパターンに加えて半透過膜パターンが形成された、液晶パネル製造用の、いわゆる多階調フォトマスクである。なお、後述するとおり、本発明の透過率測定装置及び方法は、液晶パネル製造用フォトマスクに限定されるものではなく、また、多階調フォトマスクに限定されるものでもない。
【0021】
投光ユニット1は、光源装置2、第一集光レンズ系3を有している。光源装置2は、特定の単一波長の被検光を射出するレーザ光源を備える。光源装置2は、LED(Light Emitting Diode)等の別の形態の光源を備えてもよい。また、光源装置2は、水銀ランプやハロゲンランプ、キセノンランプ等の広い波長域の光を射出する光源に、特定の波長の光を選択的に透過させる波長選択フィルタを組み合わせた構成としてもよい。例として、光源装置2は、波長405nmの被検光を射出する。光源装置2には、光源からの射出光をコリメート光に変換して第一集光レンズ系3に効率的に導くコリメートレンズが含まれている。
【0022】
なお、本発明においては、被検体の用途に応じて光源を選択することができる。透過率測定の被検体が液晶パネル用フォトマスクである場合には、該フォトマスクが有する転写パターンを被転写体に転写するときに用いる露光機の光源に含まれる波長を、被検光波長として用いることが好ましい。例えば、i線(365nm)、g線(405nm)、h線(436nm)のうちのいずれかを代表波長として用い、この代表波長を射出可能な水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED光源等を用いることができる。
【0023】
また、レーザ光は、ビーム(光束)中における光強度が、略ガウス分布をもつことが一般的である。つまり、光軸に垂直な平面上で、ビーム中央(光軸近傍)の光強度が相対的に大きく光軸から離れるに従い(周辺部にいくに従い)減少する。一方で、複数波長を含む上述のランプやLEDにおいては、上記レーザ光のような強度分布は有せず、光束中の光強度は光源の形状及び光束を形成するための光学系に依存する。この場合、レーザ光に類似の光強度分布をもたせるために、光束の光分布を調整する目的のフィルタ(例えば、アポダイゼーションフィルタ)を備えてもよい。
【0024】
光源として、水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を用いる場合には、複数の波長が混ざっている光から、所望の波長の光を選択的に透過する波長選択フィルタを組み合わせて用いることが好ましい。一方で、レーザ光源やLEDのように、特定の波長の光を射出する光源の場合には、波長選択フィルタは設けない構成としてもよい。又は、単一波長のLEDやレーザ光源を複数搭載した光源装置を適用することも有用である。このように、互いに異なる単一波長の複数の光源を切り替えて使うことで、異なる波長ごとの透過率を測定することができる。また、これらのLEDやレーザ光源から射出された単一波長の光は、光学系による集光がし易く、光束の径を小さく絞ることができるので好適である。
【0025】
これらの、指向性の高い光源を使用する際には、射出された光束の径(ビーム径)を、ビームエキスパンダ(図示せず)などの光学素子を使用して、所定の倍率に拡大し、後述の第一集光レンズ系3に導入することもできる。また、光源としてレーザ光源を使用する際には、発振を単一モードとすることが好適であり、ビーム径の形状は円または楕円であることが好適である。
【0026】
第一集光レンズ系3は、フォトマスク8の測定対象領域11上に微小なスポットが形成できるように十分に収差補正されている。第一集光レンズ系3は、例えばNA0.4であり、光源装置2から射出された波長405nmの被検光を2.0μm以下のスポット径で測定対象領域11上に集光させる。本明細書においては、レーザ光のように光源の強度分布がガウス分布となる場合は1/e(ピーク値の約13.5%)以上の強度を持つ範囲をスポット径と定義し、ランプやLED等の光源の強度分布がガウス分布にならないものを用いる場合は光量の86.4%以上が集中している範囲をスポット径と定義する。また、本明細書中、「半径」と明記されていない径は全て「直径」を意味する。
【0027】
投光ユニット1は、図示省略された移動機構により、フォトマスク8の転写パターン形成面と平行な面内(すなわち光軸と垂直な面内)で移動可能であると共に、フォトマスク8との光軸方向の相対位置を微調節可能に構成されている。投光ユニット1は、例えば測定対象領域11が半透過膜パターンであるとき、第一集光レンズ系3の集光点が半透過膜パターン上にくるように転写パターン形成面と平行な面内及び光軸方向の位置が調節される。
【0028】
なお、受光ユニット4も、図示省略された移動機構により移動可能である。投光ユニット1と受光ユニット4は、連動機構を介して一体となってフォトマスク8に対して移動することが好ましい。
【0029】
半透過膜パターン上に集光された被検光は、フォトマスク8を透過する。被検光は、図2において点線で示されるように、フォトマスク8の透明基板を射出する際に一部の光が内部反射して転写パターン形成面で再度内部反射した後に透明基板を射出する。受光ユニット4には、フォトマスク8を内部反射することなく透過した直接光(図2中実線)だけでなく、このような内部反射光(図2中点線)も入射する。
【0030】
受光ユニット4は、光量検出器5、第二集光レンズ系6、絞り7を有している。第二集光レンズ系6のフォトマスク8側のNAは、第一集光レンズ系3により集光される被検光の光束全てを効率的に取り込むため、第一集光レンズ系3によりフォトマスク8の測定対象領域11上に収束する光束のNAより大きいことが好ましい。
【0031】
本実施形態において、絞り7は、測定対象領域11上の第一集光レンズ系3の集光点と共役な像が第二集光レンズ系6によって結ばれる位置に配置されている。そのため、測定対象領域11を透過した被検光のうち直接光は、絞り7の位置で微小なスポットの共役像を形成して絞り7を透過するが(図2中実線)、内部反射光は、直接光とは異なる位置で結像して絞り7の位置では広がるため大部分が絞り7によって遮られる(図2中点線)。そのため、光量検出器5では、実質的に直接光しか検出されない。
【0032】
絞り7の位置における内部反射光の光束半径L(単位:mm)は、第一集光レンズ系3による被検光の集光角をθ(単位:deg)と定義し、フォトマスク8の厚みをt(単位:mm)と定義し、フォトマスク8の屈折率をnと定義し、第二集光レンズ系6による共役像の結像倍率をmと定義した場合に、次式(1)で示される。
L=2tanθ・(t/n)m・・・(1)
なお、半透過膜パターンの厚みは、透明基板の厚みと比べて非常に薄く計算上無視しても差し支えない。本実施形態においては、便宜上、透明基板単体の厚み、屈折率をそれぞれフォトマスク8の厚みt、屈折率nとして光束半径Lを計算する。
【0033】
絞り7の位置における内部反射光の光束と絞り7の開口部との面積比Srは、絞り7の開口半径をr(単位:mm)と定義した場合に、次式(2)で示される。
Sr=r/L・・・(2)
【0034】
測定対象領域11を透過する被検光全体のうち光量検出器5に到達する内部反射光の割合(以下、「内部反射透過率Iy」と記す。)は、測定対象領域11を透過する被検光全体のうち絞り7に到達する内部反射光の割合を内部反射透過率Ixと定義した場合に、次式(3)で示される。なお、内部反射光は、一様な強度分布を持つ光束とする。
Iy=Ix・Sr・・・(3)
【0035】
ここで、絞り7には、直接光を透過させる機能と内部反射光を遮る機能が要求される。絞り7の開口径は、両方の機能を充足するため、絞り7の位置に形成される共役像径(直接光の径)SP以上であって内部反射光の光束径(光束半径L×2)未満の大きさであれば足りる。なお、本明細書において共役像径とはスポット径と同様に、レーザ光のように光源の強度分布がガウス分布となる場合は1/e(ピーク値の約13.5%)以上の強度を持つ範囲を共役像径と定義し、ランプやLED等の光源の強度分布がガウス分布にならないものを用いる場合は光量の86.4%以上が集中している範囲を共役像径と定義する。
【0036】
共役像の形成位置と絞り7の開口中心が組立誤差等により偏心した場合、共役像が絞り7によってケラレる虞がある。また、製品仕様によっては、光量検出器5に到達する内部反射光をより一層低減させることが望まれる。当該ケラレ量を抑えるには絞り7の開口径を大きく設計し、光量検出器5に到達する内部反射光を低減させるには絞り7の開口径を小さく設計する必要がある。これらの相反する要求を満たすため、絞り7の開口径は、共役像径SPの2〜400倍の範囲に収まる大きさに設計するのが望ましい。
【0037】
絞り7は、開口径が共役像径SPの2倍であるとき、第一集光レンズ系3を透過した直接光のうちスポット径(1/e)の外側の部分の一部を遮光する。この結果、約99.97%の光量の直接光が光量検出器5に到達する。共役像の形成位置と絞り7の開口中心が組立誤差等により偏心した場合も、共役像のうち強度の低い裾部分が絞り7でケラレるに過ぎない。すなわち、直接光の損失は軽微であるため、半透過膜パターンの透過率測定に実質的に影響はない。
【0038】
光量検出器5に到達する内部反射光は、フォトマスクの技術分野で要求される測定精度を鑑みると、絞り7により1/100以下に抑えられることが望ましい。すなわち、絞り7の開口半径rは、面積比Srが1/100以下になるように、式(2)より、内部反射光の光束半径Lの1/10以下に設計すればよい。例えばtanθ=0.4、t=6.0、n=1.47、m=4である場合、式(1)より、L=13.32である。面積比Srを1/100にするためには、式(2)より、r=1.332である。第一集光レンズ系3による測定対象領域11上でのスポット径が2.0μmであるとき、共役像径SPは、m=4であるから8.0μmである。面積比Srが1/100以下であるためには、開口半径rが1.332mmで共役像径SPの半径が4.0μmであるから、絞り7の開口径が共役像径SPの約333倍以下の必要がある。但し、廉価版のフォトマスクでは要求される測定精度が上記例よりも低くなること、また、要求される測定精度の低い測定装置においては機械的な配置ずれの許容範囲を大きくしたり測定用光学系の収差補正性能を低くすることを考慮すると、絞り7の開口径は、共役像径SPの400倍以下の大きさまで許容してもよい。
【0039】
なお、本実施形態において、絞り7は、測定対象領域11上の第一集光レンズ系3の集光点と共役な像が第二集光レンズ系6によって結ばれる位置に配置されている。但し、本発明によれば、絞り7は、第一集光レンズ系3の集光点と完全に共役な位置にある場合のみでなく、又はその前側、又は後側に配置される場合を含む。すなわち、絞り7は、第二集光レンズ系6によって集光された被検光が、光量検出器5に入射する前に、その光束の一部を遮り、光束を調整するものであればよい。この意味で、本発明によると、絞り7は、測定対象領域11上の第一集光レンズ系3の集光点と共役な像の形成位置近傍に配置される。例えば、共役な像の形成位置を含み、光軸方向に1000μm以内の領域にあることが好ましい。
【0040】
好ましくは、絞り7は、上記集光点と共役な位置を中央値とした所定の許容公差内に収
まる位置に配置される。共役点に対する絞り7の許容可能な配置誤差は、絞り7の開口径
(組立誤差等に起因する絞り7による共役像のケラレ量)や、光量検出器5で検出される
内部反射光の許容程度等を考慮して決められる。
【0041】
本発明者の検討によれば、例えば、被検体表面での被検光の反射率を80%とし、裏面での反射率を4%としたとき、絞り7の開口径を、内部反射光の光束径の1/2とすることで、内部反射光の透過率の測定誤差への影響は約1%以下とすることができる。
【0042】
光量検出器5には、Siフォトダイオードやフォトマルチプライヤ等が想定される。測定対象領域11の透過光量を高精度に測定するため、光量検出器5を例えば積分球の内面に設置してもよい。この積分球とは、入射ポートから入光する光(透過光束)を球内壁面での拡散反射により空間的に積分し均一にして、光量検出器5に入射する役割を果たす。
【0043】
光量検出器5で検出された光量データは、演算装置9に入力する。演算装置9は、入力した光量データに基づいてフォトマスク8の透過率T(単位:%)を演算する。ここで、薄膜が形成される前の透明基板単体の透過率Tb(単位:%)が透過率測定装置100を用いて予め測定されて、演算装置9のメモリに保存されている。演算装置9は、次式(4)を用いて、測定対象領域11上の半透過膜パターンの透過率Ta(単位:%)を計算する。
Ta=T/Tb・・・(4)
【0044】
なお、本発明による透過率測定装置には、絞りの開口径の大きさを調整する、絞り開口調整手段(不図示)を設けてもよい。また、絞りの位置を、光軸方向に調整可能とする、絞り位置可変手段を備えることができる。例えば、厚みの異なる複数種類のフォトマスクが存在する場合を考える。この場合、フォトマスクの厚みに応じて上記共役像の形成位置が変動し、これが測定精度に影響することがあり得る。その場合には、上記絞り位置可変装置を用いて測定精度を高めることができる。また、本発明の透過率測定装置は、絞りの位置を、光軸方向に対して垂直方向に調整する手段を備えていてもよい。
【0045】
図3は、フォトマスク8の転写パターン形成面を示す図である。ここでは液晶パネル用フォトマスクを示す。図4(a)、(b)はそれぞれ、図3中領域R、Rを拡大して示す図である。図3及び4に示されるように、転写パターン形成面には一様にパターンが形成されているわけではない。フォトマスク8の中央に位置する領域Rは、画素に対応する部分であるためパターンが少なく透過領域の割合が大きい。フォトマスク8の外周付近に位置する領域Rは、配線部であるためパターンが多く遮光膜パターンの割合が大きい。領域Rは遮光膜パターンの割合が大きいため、領域Rと比べて内部反射光が多くなる。以下、比較例を用いて具体的に説明する。
【0046】
(比較例)
図4(a)、(b)において半透過膜自体の透過率Taを45.0%とし、透明基板の透過率Tbを96.0%とする。フォトマスク8の透過率Tは、式(4)より、
0.45×0.96×100=43.2%
である。また、内部反射光が転写パターン形成面で内部反射するときの内部反射率(透明基板裏面からの反射光の光束が照射する領域の反射率を平均した値)を図4(a)の例において5.0%とし、図4(b)の例において40.0%とすると、内部反射透過率Ixは、それぞれ、
0.45×(1−0.96)×0.05×100=0.09%
0.45×(1−0.96)×0.40×100=0.72%
である。
【0047】
第二集光レンズ系6及び絞り7が無い場合、光量検出器5を用いて測定されるフォトマスク8の透過率Tは、透過率T+内部反射透過率Ixであるから、図4(a)の例では43.29%であり、図4(b)の例では43.92%である。このように、第二集光レンズ系6及び絞り7が無い場合、本来同一の値であるべき透過率Tが測定対象領域11上の周囲のパターンに依存して変化するため、半透過膜パターンの透過率測定に支障をきたす。なお、本比較例及び次に説明する各実施例では、発明の特徴を簡易に把握できるように、多重反射光については光量が非常に小さいため考慮していない。
【実施例1】
【0048】
本実施例1において、透過率測定装置100を構成する各要素の仕様は、次に示される通りである。なお、本実施例1及び次に説明する実施例2において、透過率T、Ta、Tb、内部反射透過率Ixの各値は、測定対象であるフォトマスク8が比較例と各実施例とで同一であるため、比較例の値を援用する。
光源装置2・・・コリメート光を射出する波長405nmの半導体レーザーモジュール
第一集光レンズ系3・・・NA0.4(式(1)のtanθ=0.43)の顕微鏡対物レンズ
光量検出器5・・・Siフォトダイオード
第二集光レンズ系6・・・焦点距離30mmの非球面レンズ
絞り7・・・開口φ20μmのピンホール
フォトマスク8・・・厚みt=7.0mmの合成石英(波長405nmでの屈折率n=1.46966)
第二集光レンズ系6は、第一集光レンズ系3の集光点が絞り7上で4倍になる位置に配置されている(すなわちm=4)。
【0049】
本実施例1において光束半径Lは、式(1)より16.38mmである。面積比Srは、式(2)より3.72E−7である。表記Eは、10を基数、Eの右の数字を指数とする累乗を表している。式(3)より、被検光が領域R、R中の半透過膜パターンを透過した際の内部反射透過率Iyはそれぞれ、次に示す通りである。
0.09×(3.72E−7)×100=3.35E−6
0.72×(3.72E−7)×100=2.68E−5
【0050】
第二集光レンズ系6及び絞り7が配置されている場合、光量検出器5を用いて測定されるフォトマスク8の透過率Tは、透過率T+内部反射透過率Iyであるから、図4(a)、(b)の何れの例においてもほぼ43.2%である。本実施例1においては、第二集光レンズ系6及び絞り7を配置することにより、光量検出器5に直接光を漏れなく導きつつ内部反射光をほぼカットでき、測定対象領域11上の周囲のパターンによる透過率の変化を実質的に抑えることができる。そのため、微細な半透過膜パターンの透過率測定が正確に行われる。
【実施例2】
【0051】
本実施例2において、透過率測定装置100を構成する各要素の仕様は、次に示される通りである。
光源装置2・・・波長355nmのYAGレーザ+ビームエキスパンダ(コリメータ)
第一集光レンズ系3・・・NA0.65(式(1)のtanθ=0.86)の顕微鏡対物レンズ
光量検出器5・・・フォトマルチプライヤ
第二集光レンズ系6・・・焦点距離50mmの二枚構成のレンズ系
絞り7・・・開口φ1.5mm
フォトマスク8・・・厚みt=12.0mmの合成石英(波長355nmでの屈折率n=1.47604)
第二集光レンズ系6は、第一集光レンズ系3の集光点が絞り7上で3倍になる位置に配置されている(すなわちm=3)。
【0052】
本実施例2において光束半径Lは、式(1)より41.95mmである。面積比Srは、式(2)より3.20E−4である。式(3)より、被検光が領域R、R中の半透過膜パターンを透過した際の内部反射透過率Iyはそれぞれ、次に示す通りである。
0.09×(3.20E−4)×100=0.003
0.72×(3.20E−4)×100=0.023
【0053】
光量検出器5を用いて測定されるフォトマスク8の透過率Tは、図4(a)の例では43.203%であり、図4(b)の例では43.223%である。本実施例2においては、第二集光レンズ系6及び絞り7を配置することにより、光量検出器5に直接光を漏れなく導きつつ内部反射光をほぼカットでき、測定対象領域11上の周囲のパターンによる透過率の変化を僅少に抑えることができる。そのため、微細な半透過膜パターンの透過率測定が正確に行われる。
【0054】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば、本発明は、測定対象をフォトマスクとする透過率測定装置に限定されず、光を透過する領域を有する他の形態の測定対象の透過率を測定する透過率測定装置にも適用することができる。
【0055】
また、本実施形態にて説明したように、本発明には透過率測定方法も含まれており、測定対象としては、透明基板上に形成した半透過膜をパターニングしてなる半透過膜パターンを有するものが挙げられる。また、更に遮光膜パターンも有することにより、遮光部、透過部、半透過部を有する、多階調フォトマスクにおいて、本発明の効果が顕著である。半透過膜の透過率は、露光光に対して、5〜80%であることが好ましい。このようなフォトマスクを用いて、被転写体上に形成されたレジスト膜に露光、現像することにより、部分的に露光量を異ならせ、部分によって残膜量の異なるレジストパターンを形成することができる。この場合、従来2枚のマスクを使用していた工程が1枚のマスクで可能となるため、マスク使用枚数が削減でき、液晶パネルなどの生産効率が高くなる。
【0056】
更に、光透過率の異なる2種類以上の半透過膜パターンで形成された複数の半透過部を有する、4階調以上の多階調フォトマスクも提案されている。このような複数の半透過部の透過率保証にも、本発明は有効である。
【0057】
液晶パネル用のフォトマスクとしては、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)におけるソース、ドレインに対応する部分を遮光部として形成し、ソース、ドレインの間に隣接して位置するチャネル部に相当する部分を半透過部として形成した多階調フォトマスクを使用することができる。近年、TFTチャネル部等のパターンの微細化に伴い、多階調フォトマスクにおいてもますます微細なパターンが必要とされてきており、TFTチャネル部のパターンにおけるチャネル幅に相当する部分、すなわち、遮光膜間の半透過部の幅も微細化傾向にある。このような微細化は、液晶パネルの明るさ向上や反応速度の向上には有効である。微細化を達成するためには、微細パターン部分の透過率管理が重要である。
【0058】
本発明はまた、透明基板上に、半透過膜のみが形成され、これに所定のパターニングが施されたフォトマスクにおいても有効に適用でき、半透過部の微細なパターンの透過率を精緻に測定することができる。
【0059】
本発明の測定対象としては、半透過パターンに、0.5μm以上10μm以下の線幅を有するものが例示される。また、1μm以上7μm以下、より好ましくは2μm以上7μm以下であるときに、本発明の効果が顕著である。
【0060】
上記において、液晶パネル用フォトマスクを例示して説明したが、フォトマスクの用途はこれに限定されない。本発明の透過率測定装置及び方法は、他の用途のフォトマスクの透過率測定に対しても同様に適用され、有用な効果を奏することができる。例えば、液晶の他、有機ELなどを含む、表示装置用のフォトマスク、撮像装置用のフォトマスク、集積回路用フォトマスクなどが挙げられる。用途に応じて、半透過膜が、透過光を位相反転させることで、干渉作用を利用するもの(透過光の代表波長について位相シフト量が180度±30度のもの)、又は干渉効果を実質的に利用しないもの(透過光の代表波長について、位相シフト量が60度以下のもの)、の何れについても、本発明の効果が有用に得られる。
【符号の説明】
【0061】
1 投光ユニット
2 光源装置
3 第一集光レンズ系
4 受光ユニット
5 光量検出器
6 第二集光レンズ系
7 絞り
9 演算装置
100 透過率測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検光を射出する光源装置と、
前記被検光を集光して測定対象上にスポットを形成する第一光学系と、
前記測定対象を透過した被検光を集光して前記スポットの共役像を形成する第二光学系と、
前記共役像の形成位置近傍に配置された絞りと、
前記絞りを透過した被検光を検出する光検出手段と、
を有することを特徴とする透過率測定装置。
【請求項2】
前記絞りの開口径は、前記共役像の径以上で、かつ前記被検光が前記測定対象を透過する際に生じた内部反射光の該絞りの位置における光束径未満であることを特徴とする、請求項1に記載の透過率測定装置。
【請求項3】
前記絞りは、前記共役像の径の2〜400倍の範囲に収まる開口径を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の透過率測定装置。
【請求項4】
前記光源装置は特定波長の光を射出することを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の透過率測定装置。
【請求項5】
透明基板上に、少なくとも半透過膜がパターニングされてなる半透過パターンを有する、フォトマスクの透過率測定方法であって、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の透過率測定装置を用いて、前記半透過パターンの透過率を測定する、フォトマスクの透過率測定方法。
【請求項6】
前記フォトマスクは、透明基板上に、半透過膜がパターニングされてなる半透過パターンと、遮光膜がパターニングされてなる遮光膜パターンを有することにより、透光部、遮光部、半透過部を備える多階調フォトマスクである、請求項5に記載のフォトマスクの透過率測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−177678(P2012−177678A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3862(P2012−3862)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】