説明

逓倍パルス生成装置、逓倍パルス生成方法、画像形成装置、及び画像読取装置

【課題】 駆動対象の一定量駆動が検出される毎に逓倍パルスを生成して出力するにあたり、一定量駆動の検出前後での逓倍パルス周期の不連続性が抑制された、信頼性の高い逓倍パルスを生成することを目的とする。
【解決手段】 エンコーダエッジが検出される度にR個の逓倍パルスを生成する。エンコーダエッジが検出されると、直前のエンコーダエッジ間の実周期を含む過去m個の実周期に基づき、次にエンコーダエッジが検出されるまでの時間間隔(予測周期Te)を予測する。そして、この予測周期Teと、直前のエンコーダ周期間における最終の逓倍パルスの逓倍周期tpRとに基づき、この逓倍周期tpRから今回生成する最終の逓倍パルスの逓倍周期まで、逓倍周期が直線的に変化するように、各逓倍パルスを生成する。これにより、エッジ検出前後での不連続性が抑制され、滑らかに変化する逓倍パルスが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動対象の一定駆動量ごとに出力される検出信号を逓倍した逓倍パルスを生成する逓倍パルス生成装置とその方法、及び、この逓倍パルス生成装置が搭載された画像形成装置と画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば記録ヘッドが搭載されたキャリッジを主走査方向に往復移動させつつ用紙やOHP、はがき等の被記録媒体へインクを吐出して画像を形成するよう構成されたインクジェットプリンタにおける、記録ヘッドからのインクの吐出タイミングとして、エンコーダからの検出信号(パルス信号)が用いられる。このエンコーダは、キャリッジの移動量を検出するものであって、キャリッジが一定量移動する度にパルス信号を出力する。
【0003】
また例えば、画像の読取を行うスキャナ等においては、イメージセンサ等を原稿に沿って走査させつつ原稿上の画像を読み取るが、その読み取りタイミングとしても、エンコーダからのパルス信号が用いられる。このエンコーダは、イメージセンサの移動量を検出するものであって、イメージセンサが一定量移動する度にパルス信号を出力する。
【0004】
昨今、上述した画像の記録あるいは画像の読み取りの解像度は、高くなる傾向にある。しかし、要求される画像記録の解像度あるいは画像読み取りの解像度を、エンコーダの物理的な解像度を高くすることによって実現することは、エンコーダの製造上の問題やコスト上の問題などから、実用上の限界がある。
【0005】
そこで、エンコーダの物理解像度よりも高解像度の信号を擬似的に得るために、エンコーダからのパルス信号を逓倍して逓倍パルスを生成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。ここで逓倍とは、周知の如く、エンコーダからのパルス信号の周波数をN倍(Nは自然数)することをいい、このNを逓倍数という。
【0006】
この逓倍パルス生成方法を、図17を用いて具体的に説明する。図17は、位相が互いにずれたA相、B相の各相信号を出力するエンコーダからのA相信号の立ち上がりエッジ毎に逓倍パルスが生成される例を示している。本方法では、立ち上がりエッジ検出時に、まず、直前のエンコーダエッジ間の時間間隔とその一つ前のエンコーダエッジ間の時間間隔とに基づき、次にまたエンコーダエッジが立ち上がるまでの間隔を予測する。この予測は、例えば予め用意した予測式によって演算により得ることがでる。図17において、f(α,β)とあるのは、直前の時間間隔がα、その一つ前の時間間隔βであるときに予測演算式から得られる予測周期を示しており、例えばf(tn,tn-1)は、直前の時間間隔tnとその一つ前の時間間隔tn-1に基づき予測演算式を用いて得られる予測周期であることを示す。なお、上記特許文献1では、直前の時間間隔をB、その一つ前の時間間隔をAとしたとき、2B−Aの演算、或いは、補正値Hを導入して2B−(A+H)の演算を行うことで予測することが開示されている。
【0007】
そして、得られた予測周期を逓倍数で分割することにより逓倍パルスの間隔(逓倍パルスの周期)を導出し、その逓倍パルスの周期に従って逓倍パルスを順次出力する。図17では、4逓倍の逓倍パルスを生成する例が示されている。なお、Tdは、エンコーダエッジが立ち上がってから逓倍パルス出力のための各種演算に要する時間であり、エンコーダエッジ間の時間間隔に対して実用上無視できる程度のものである。
【0008】
また、図17に示した方法のほかにも、単に、直前のエンコーダエッジ間の時間間隔を逓倍数に応じて等分割することで逓倍パルス周期を導出する方法もある。
【特許文献1】特開2003−72177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような方法によって生成される逓倍パルスは、エンコーダエッジが検出される毎に更新されはするものの、エンコーダエッジ間で生成される所定逓倍数の逓倍パルスの周期は一定である。つまり、図17に示した方法も、予測周期については過去の実際のエンコーダエッジ時間間隔に基づいて予測しているものの、生成する逓倍パルスはその予測周期を単に逓倍数に応じて分割しているだけであり、生成される逓倍パルスの周期は一定である。
【0010】
そのため、実際の駆動対象の駆動速度の変動率や、エンコーダの解像度、逓倍数などによっては、エンコーダ周期と一致する不連続点が目立つ結果が得られてしまうという問題があった。つまり、エンコーダエッジを境として、逓倍パルスの周期が不連続に変化する。この不連続な変化は、画像の記録や読み取りの結果に例えば筋状の斑模様として現れてしまう。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、駆動対象の一定量駆動が検出される毎に逓倍パルスを生成して出力するにあたり、一定量駆動の検出前後での逓倍パルス周期の不連続性が抑制された、信頼性の高い逓倍パルスを生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、駆動対象が予め設定された一定量駆動される度に検出信号を出力する検出信号出力手段を有し、該検出信号出力手段からの検出信号を所定の逓倍数にて逓倍した逓倍パルスを生成する逓倍パルス生成装置であって、検出信号出力手段から検出信号が出力される度に、該出力された検出信号と前回出力された検出信号との時間間隔である実周期を計測する実周期計測手段と、検出信号出力手段から検出信号が出力される度に、該検出信号の出力によって実周期計測手段により計測された実周期を含む過去少なくとも2つ以上の実周期に基づいて、次に再び検出信号出力手段から検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測する予測手段と、検出信号出力手段から検出信号が出力される度に上記逓倍数の逓倍パルスを順次生成する逓倍パルス生成手段とを備えている。そして、逓倍パルス生成手段は、検出信号出力手段にて検出信号が出力される度に、実周期計測手段により計測された実周期と予測手段により予測された時間間隔である予測周期とに基づき、該実周期から該予測周期への変化量に応じて、逓倍パルスを生成する時間間隔である逓倍周期も順次変化するように、逓倍パルスを生成する。
【0013】
上記構成の逓倍パルス生成装置では、従来のように予測周期を単に等分割して一定周期の逓倍パルスを生成、出力するのではなく、直前の検出信号間の周期(実周期)と予測周期とに基づき、実周期と予測周期との変化量(つまり実周期から予測周期へどのように、或いはどの程度、変化しているか)をみて、その変化量に応じて、生成する逓倍パルスの逓倍周期も順次変化させるようにしている。
【0014】
例えば、実周期に対して予測周期が増加しているならば、逓倍パルスの周期も順次増加するようにする。また例えば、実周期に対して予測周期が減少しているならば、逓倍パルスの周期も順次減少するようにする。その増加(又は減少)の傾きは、適宜決めることができるが、少なくとも実周期から予測周期への増減傾向と同じ傾向を有し、しかも前回の検出信号に基づいて生成された最終の逓倍パルスの逓倍周期からの連続性も保持されるようにすればよい。つまり、増加傾向なら、逓倍パルスも増加傾向とするとともに一つ目の逓倍パルスの周期が少なくとも前回の最終逓倍パルスの逓倍周期よりは大きくなるようにし、減少傾向なら、逓倍パルスも減少傾向とするとともに一つ目の逓倍パルスの周期が少なくとも前回の最終逓倍パルスの逓倍周期よりは小さくなるようにするのである。その結果、前回の検出信号によって生成された逓倍パルスから今回生成される逓倍パルスへと、各逓倍パルスの周期(逓倍周期)が滑らかに変化していくのである。
【0015】
従って、請求項1記載の逓倍パルス生成装置によれば、直前の実周期から次の予測周期への変化量に応じて逓倍周期が順次変化するような逓倍パルスが生成され、検出手段による検出信号の出力前後で逓倍パルスの周期が不連続に変化するのも抑制されため、信頼性の高い逓倍パルスを生成することが可能となる。
【0016】
なお、予測手段による予測は、例えば図17に示した従来の逓倍パルス生成方法における予測周期の導出方法と同じ方法を用いてもよく、種々の方法を用いて予測することが可能であるが、予測周期と実際の周期との差が大きいほど、従来と同じような問題(不連続性)が生じるおそれがあるため、予測の精度はできる限り高い方が望ましい。
【0017】
また、逓倍周期とは、逓倍パルス生成手段により順次生成される逓倍パルス相互間の時間間隔(但し一つ目の逓倍パルスについては検出信号が出力された時点からその一つ目の逓倍パルスが出力されるまでの時間間隔)である。
【0018】
逓倍パルス生成手段が検出信号出力の度に逓倍パルスを生成する際、その生成する逓倍パルスの逓倍周期を具体的にどのように変化させるかは適宜決めることができるが、例えば請求項2に記載のように、逓倍パルス生成手段は、逓倍周期が直線的に変化するように逓倍パルスを生成するようにするとよい。
【0019】
つまり、生成すべき逓倍パルスにおける一つ目の逓倍パルスの逓倍周期から最終の逓倍パルスの逓倍周期まで、同じ差をもって直線的(段階的)に逓倍周期を変化させるのである。逓倍周期の変化のさせ方としては、他にも例えば二次関数的あるいは三次関数的に変化させるなど、種々の方法が考えられるが、直線的な変化とすることで、逓倍パルスの生成を容易に行うことが可能となり、装置全体の構成も簡素化できる。
【0020】
そして、逓倍パルス生成手段によるより具体的な逓倍パルス生成方法としては、例えば請求項3記載のようにすることができる。即ち、逓倍パルス生成手段は、検出信号出力手段にて検出信号が出力されたとき、前回出力された検出信号に対応した最終の逓倍パルスの逓倍周期をTp/R(但し、Tpは実周期計測手段にて計測された実周期、Rは逓倍数)と仮定すると共に、今回生成する逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスの逓倍周期をTe/R(但し、Teは予測手段にて予測された予測周期)に設定して、Tp/RからTe/Rまで順次変化するように、逓倍パルスを生成する。
【0021】
即ち、前回検出信号が出力されて生成された逓倍パルスのうち最終に出力された逓倍パルスの逓倍周期を、実際の逓倍周期ではなくTp/R(つまり、実周期Tpに基づく逓倍周期の平均値)と仮定する。そして、今回生成すべきR個の逓倍パルスは、その最初の逓倍パルスから最後(R番目)の逓倍パルスまで、逓倍周期が上記変化量に応じて順次変化していき、且つその最終の逓倍パルスの逓倍周期がTe/R(つまり、予測周期Teに基づく逓倍周期の平均値)となるようにするのである。
【0022】
具体的な生成方法としては、例えば、逓倍パルスの出力順と逓倍周期との関係を一次関数式に帰着させ、その一次関数式に基づいて順次逓倍周期を求め、それに応じて逓倍パルスを順次出力するようにすることができる。また、等差数列の考え方を適用して求めることも可能である。即ち、Tp/Rを初項、Te/Rを末項とする等差数列とみなし、他の各項(即ち各逓倍パルスの逓倍周期)を導出するのである。もちろんこれらはあくまでも一例である。
【0023】
従って、請求項3記載の逓倍パルス生成装置によれば、直前の実周期Tpに基づく逓倍周期の平均値Tp/Rと、予測周期Teに基づく逓倍周期の平均値Te/Rとに基づき、最終の逓倍パルスの逓倍周期がTp/RからTe/Rに変化するようにしているため、検出信号の出力前後での逓倍周期の不連続変化がより確実に抑制され、より信頼性の高い逓倍パルスを生成することが可能となる。
【0024】
ところで、上述した請求項1〜3記載の逓倍パルス生成装置では、逓倍周期の合計が必ずしも予測周期に一致するとは限らない。特に、請求項3の場合は、駆動対象が定速で駆動する定速駆動時を除き、R個の逓倍パルスの各逓倍周期の合計は予測周期に一致せず、減速時には合計は予測周期より小さくなり、逆に加速時には合計は予測周期を超える。そうなると、逓倍パルスの精度が低下し、生成された逓倍パルスを使用する各種アプリケーションの動作に悪影響を及ぼしてしまうおそれがある。
【0025】
そこで、例えば請求項4記載のような逓倍パルス生成装置を構成するとよい。請求項4記載の逓倍パルス生成装置は、駆動対象が予め設定された一定量駆動される度に検出信号を出力する検出信号出力手段を有し、該検出信号出力手段からの検出信号を所定の逓倍数にて逓倍した逓倍パルスを生成するものであって、検出信号出力手段から検出信号が出力される度に、該出力された検出信号と前回出力された検出信号との時間間隔である実周期を計測する実周期計測手段と、検出信号出力手段から検出信号が出力される度に、該検出信号の出力によって実周期計測手段により計測された実周期を含む過去少なくとも2つ以上の実周期に基づいて、次に再び検出信号出力手段から検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測する予測手段と、検出信号出力手段から検出信号が出力される度に上記逓倍数の逓倍パルスを順次生成する逓倍パルス生成手段とを備える。そして、逓倍パルス生成手段は、検出信号出力手段にて検出信号が出力される度に、逓倍パルスを生成する時間間隔である逓倍周期が、前回出力された検出信号に対応した最終の逓倍パルスの逓倍周期から今回生成する逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスの逓倍周期まで段階的に変化するよう、且つ、生成する逓倍パルス毎の逓倍周期の合計が予測周期と一致するように、逓倍パルスを生成する。
【0026】
ここでいう段階的とは、例えば増加させるならば増加を維持させ、減少させるならば減少を維持させることを意味する。また、逓倍周期が全て等しい場合も含む。全て等しい場合というのは、駆動対象が一定速度で駆動されていて直前の実周期と予測周期が等しい場合などに生じ得る。
【0027】
このように構成された逓倍パルス生成装置によれば、前回生成した最終の逓倍パルスの逓倍周期からの連続性が維持されつつ、生成する各逓倍パルスの逓倍周期の合計も予測周期に一致する。これは即ち、予測周期から算出される平均速度がちょうどこの予測周期期間における中心となることを意味する。そのため、実際の駆動対象の駆動速度と逓倍周期から算出される駆動速度との誤差が非常に少ない、信頼性の非常に高い逓倍パルスを生成することができる。
【0028】
そして、上記請求項4記載の逓倍パルス生成装置における逓倍パルス生成手段も、上記請求項2と同様、逓倍周期が直線的に変化するように逓倍パルスを生成するようにするとよい。このようにすることで、上記請求項2と同様の効果が得られる。
【0029】
なお、このように逓倍周期が直線的に変化するような逓倍パルスは、例えば、等差数列の性質を利用して得ることができる。つまり、前回生成した最終の逓倍パルスの逓倍周期は既知であり、今回生成する複数(逓倍数分)の逓倍パルスの各逓倍周期の和も既知(予測周期)であるため、これらに基づいて等差数列の性質を用いれば、生成すべき各逓倍パルスの逓倍周期が等差数列として得られる。
【0030】
ここで、逓倍パルス生成手段が検出信号出力の度に逓倍パルスを生成する際、最終の逓倍パルスが生成されるタイミングが、次の検出信号の出力タイミングと一致するのが理想的である。しかし実際には、逓倍パルス生成手段は予測周期等に基づいて逓倍パルスを生成しており、次の検出信号がどのタイミングで出力されるかはわからない。そのため、各逓倍パルスの逓倍周期の合計が予測周期に一致しようがしまいが、最終の逓倍パルスの生成タイミングは次の検出信号の出力タイミングと一致しない可能性もある。特に、次の検出信号が出力された後に最終の逓倍パルスが生成される前に次の検出信号の方が先に生成されると、その検出信号の出力タイミングから最終の逓倍パルスの生成タイミングまでの時間間隔によっては、その最終の逓倍パルスが生成されてから次の最初の逓倍パルスが生成されるまでの間隔が非常に短くなってしまう。
【0031】
そこで、逓倍パルス生成手段は、例えば請求項6記載のように、生成すべき逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスを生成した時にすでに検出信号出力手段にて次の検出信号が出力されたか否かを判断する検出信号判断手段と、次の検出信号が出力されてから最終の逓倍パルスが生成される場合における該次の検出信号の出力から該最終の逓倍パルスが生成されるまでの時間である超過時間を計測する超過時間計測手段と、検出信号判断手段にて次の検出信号がすでに出力されたと判断された場合に、超過時間計測手段にて計測された超過時間が予め設定した超過量判定値を超えているか否かを判断する超過量判定手段とを備え、超過量判定手段にて超過量を超えていると判断されたときは、次の検出信号の出力に対応して生成すべき逓倍パルスのうち最初の逓倍パルスは生成しないようにするとよい。
【0032】
特に、最終の逓倍パルスの生成タイミングが、次の検出信号に対して生成すべき最初の逓倍パルスの出力タイミングをも超えてしまうような場合は、むしろその最終の逓倍パルスは生成(出力)しない方が好ましい。そのためには、例えば請求項7記載のように、超過量判定値は、次の検出信号の出力に対応して生成すべき逓倍パルスにおける最初の逓倍パルスの逓倍周期と同じ値に設定するとよい。
【0033】
このように構成することで、不適切なタイミングでの最終逓倍パルスの出力を防止することができる。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7いずれかに記載の逓倍パルス生成装置において、 検出信号出力手段として光学式エンコーダを備えたものである。既述の通り、エンコーダの物理的な解像度を高くするのには、製造上あるいはコスト上、限界がある。そこで、本発明の逓倍パルス生成装置によってエンコーダからの検出信号を逓倍した逓倍パルスを生成するようにすれば、低解像度のエンコーダであっても信頼性の高い逓倍パルスを得ることができる。
【0034】
請求項9記載の発明は、駆動対象が予め設定された一定量駆動される度に出力される検出信号を所定の逓倍数にて逓倍した逓倍パルスを生成する逓倍パルス生成方法であって、検出信号が出力される度に該出力された検出信号と前回出力された検出信号との時間間隔である実周期を計測し、検出信号が出力される度に該検出信号の出力によって計測された実周期を含む過去少なくとも2つ以上の実周期に基づいて次に再び検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測し、検出信号が出力される度に上記逓倍数の逓倍パルスを順次生成し、該逓倍パルスの生成は、計測された実周期と、予測された時間間隔である予測周期とに基づき、該実周期から該予測周期への変化量に応じて、該逓倍パルスを生成する時間間隔である逓倍周期も順次変化するように行う。
【0035】
従って、この請求項9記載の逓倍パルス生成方法によれば、請求項1記載の発明と同等の効果を得ることができる。
また、請求項10記載の発明は、駆動対象が予め設定された一定量駆動される度に出力される検出信号を所定の逓倍数にて逓倍した逓倍パルスを生成する逓倍パルス生成方法であって、検出信号が出力される度に該出力された検出信号と前回出力された検出信号との時間間隔である実周期を計測し、検出信号が出力される度に該検出信号の出力によって計測された実周期を含む過去少なくとも2つ以上の実周期に基づいて次に再び検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測し、検出信号が出力される度に上記逓倍数の逓倍パルスを順次生成し、該逓倍パルスの生成は、該逓倍パルスを生成する時間間隔である逓倍周期が、前回出力された検出信号に対応した最終の逓倍パルスの逓倍周期から今回生成する逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスの逓倍周期まで段階的に変化するよう、且つ、生成する逓倍パルス毎の逓倍周期の合計が予測周期と一致するように行う。
【0036】
従って、この請求項10記載の逓倍パルス生成方法によれば、請求項4記載の発明と同等の効果を得ることができる。
次に、請求項11記載の発明は、インクを吐出することにより被記録媒体に画像を形成する記録ヘッドと、記録ヘッドからのインクの吐出タイミングを制御する記録制御手段と、上記駆動対象としての、記録ヘッドを搭載したキャリッジと、キャリッジを画像の形成に対応した主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動手段と、請求項1〜8いずれかに記載の逓倍パルス生成装置とを備えた画像形成装置であり、記録制御手段は、キャリッジがキャリッジ移動手段によって移動されている際、逓倍パルス生成手段にて生成される逓倍パルスを吐出タイミングとして用いる。
【0037】
このように構成された画像形成装置によれば、上記逓倍パルス生成装置によって生成された逓倍パルスに従って画像の記録(インクの吐出)が行われるため、高品質の画像を得ることが可能となる。
【0038】
また、請求項12記載の発明は、原稿に形成された画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段による画像の読み取りタイミングを制御する読取制御手段と、画像読取手段を画像の読み取りに対応した主走査方向に移動させる画像読取移動手段と、請求項1〜8いずれかに記載の逓倍パルス生成装置とを備えた画像読取装置であり、読取制御手段は、画像読取手段が画像読取移動手段によって移動されている際、逓倍パルス生成手段にて生成される逓倍パルスを読み取りタイミングとして用いる。
【0039】
このように構成された画像読取装置によれば、上記逓倍パルス生成装置によって生成された逓倍パルスに従って画像の読み取りが行われるため、高品質の画像読み取り結果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(1)多機能装置の全体構成
図1は、本発明が適用された多機能装置(MFD:Multi FunctionDevice )1の斜視図であり、図2は、その側断面図である。
【0041】
本実施形態の多機能装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、及び、ファクシミリ機能を備えるものであり、合成樹脂製のハウジング2の底部に、その前側の開口部2aから差込み可能な給紙カセット3を備える。
【0042】
給紙カセット3は、例えばA4サイズやリーガルサイズ等にカットされた用紙Pを、複数枚収納可能な構成にされており、各用紙Pの短辺は、用紙搬送方向(副走査方向及びX軸方向に一致)と直交する方向(主走査方向及びY軸方向に一致)に平行配置される。
【0043】
給紙カセット3の前端には、リーガルサイズ等の長い用紙Pの後端部を支持するための補助支持部材3aがX軸方向に移動可能に装着されている。また、給紙カセット3の後側には、用紙分離用の土手部5が配置されている。多機能装置1は、金属板製の箱型メインフレーム7の底板に、給紙部9を構成する給紙アーム9aの基端部が上下方向に回動可能に装着された構成にされており、この給紙アーム9aの下端に設けられた給紙ローラ9bと、土手部5とにより、給紙カセット3に積層(堆積)された用紙Pを一枚ずつ分離して搬送する。分離された用紙Pは、U字状の搬送路を構成するUターンパス11を介して給紙カセット3より上側(高い位置)に設けられた画像形成部13に搬送される。
【0044】
画像形成部13は、インクジェット式の記録ヘッド15が搭載された主走査方向に往復動可能なキャリッジ17等からなり、キャリッジ17は、後述するCPU51により制御されて、主走査方向に記録ヘッド15を走査する。記録ヘッド15は、走査時に、インクを吐出して、自身下で停止配置されている用紙Pに、画像を形成する。この際、用紙Pは、搬送路を構成するプラテン19にて下方から支持される。即ち、記録ヘッド15は、プラテン19の真上に位置し、記録ヘッド15による用紙Pへの画像形成は、プラテン19上で行われる。
【0045】
画像形成処理時の用紙搬送は、搬送ローラ18によって用紙Pが副走査方向(用紙搬送方向)に所定量ずつ順次紙送りされることにより実現される。具体的には、往復移動可能な記録ヘッド15によって主走査方向に一パス分の記録がなされると、次パスを記録するために用紙Pが副走査方向に所定量紙送りされて停止し、そのパスにおいて記録ヘッド15による主走査方向の記録がなされる。それが終了すると、更に次パスを記録するために再び用紙Pが副走査方向に所定量紙送りされて停止し、記録ヘッド15による主走査方向への記録がなされる。つまり、搬送ローラ18による副走査方向への所定量の紙送りが、用紙Pへの記録が完了するまで順次繰り返されるのである。
【0046】
なお、搬送ローラ18は、搬送モータ(図1,2では省略。図4参照。)46により駆動される。また、搬送ローラ18には、この搬送ローラ18が所定量回転する度にパルス信号を出力する搬送エンコーダ(光学式ロータリエンコーダ)49(図1,2では省略。図4参照。)が設けられており、搬送ローラ18の駆動はこの搬送エンコーダ49からのパルス信号に基づいて制御される。
【0047】
画像形成部13により画像形成された用紙Pが排出される排紙部21は、給紙カセット3の上側に形成されており、排紙部21に連通する排紙口21aは、ハウジング2の前面の開口部2aと共通に開口されている。
【0048】
また、ハウジング2の上部には、原稿読取の際に使用される画像読取装置23が配置されている。この画像読取装置23は、その底壁23aが上カバー体25の上方からほぼ隙間なく重畳されるように配置され、図示しない枢軸部を介して、ハウジング2の一側端に対し上下開閉回動可能にされている。また、画像読取装置23の上面を覆う原稿カバー体27の後端は、画像読取装置23の後端に対して枢軸23bを中心に上下回動可能に装着されている。
【0049】
その他、この画像読取装置23の前方には、各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部29が設けられている。画像読取装置23の上面には、原稿カバー体27を上側に開けて原稿を載置することができる載置用ガラス板31が設けられ、その下側に原稿読取用のイメージスキャナ装置(CIS:Contact Image Sensor) 33が、副走査方向(Y軸方向)に延びるガイドシャフト35に沿って往復移動可能に設けられている。
【0050】
このCIS33は、読取モータ(図1,2では省略。図4参照。)41によって駆動(往復移動)される。CIS33は、読取モータ41によって所定の原稿設置基準位置を起点として原稿を走査する方向(以下「読取時順方向」ともいう)に駆動されつつ、原稿を読み取る。そして、読み取り後は読取モータ41によってその逆方向(以下「読取時逆方向」ともいう)に駆動され、元の原稿設定基準位置に戻る。また、CIS33には、このCIS33が所定量移動する度にパルス信号を出力する読取エンコーダ(光学式リニアエンコーダ)43(図1,2では省略。図4参照。)が設けられており、CIS33の駆動はこの読取エンコーダ96からのパルス信号に基づいて制御される。
【0051】
また、画像読取装置23により被覆されるハウジング2の前部には、上方に向かって開放された図示しないインク貯蔵部が設けられている。このインク貯蔵部には、フルカラー記録のための4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを各々収容したインクカートリッジが、上方から着脱可能に装着される。尚、本実施形態の多機能装置1において、インクカートリッジに収容されたインクは、各インクカートリッジと記録ヘッド15とを結ぶ複数本のインク供給管37を介して記録ヘッド15に供給される。
(2)画像形成部の構成
続いて、多機能装置1が備える画像形成部13の構成についてより具体的に説明する。図3は、多機能装置1の画像形成部13の構成を表す概略構成図である。図3に示した画像形成部13は、図1,2で説明した多機能装置1における画像形成部13を、キャリッジ17の駆動の観点から模式的に示したものである。そのため、図1,2で説明した構成要素と同じものについては、同符号を付す。
【0052】
図3に示すように、当該多機能装置1の画像形成部13においては、ガイドバー41が、搬送ローラ18等により搬送されてくる用紙Pの幅方向に設置され、このガイドバー41に、記録ヘッド15を搭載したキャリッジ17が挿通されている。
【0053】
キャリッジ17は、ガイドバー41に沿って設けられた無端ベルト42に連結され、その無端ベルト42は、ガイドバー41の一端側に設置された記録モータ10の駆動プーリ43と、ガイドバー41の他端側に設置された従動プーリ44との間に掛け止められている。つまり、キャリッジ17は、無端ベルト42を介して伝達される記録モータ10の駆動力により、ガイドバー41に沿って用紙Pの幅方向に往復駆動されるように構成されている。
【0054】
また、ガイドバー41の近傍には、所定の間隔でエンコーダスリットが形成されたリニアスケール46が、ガイドバー41に沿って(即ちキャリッジ17の移動経路に沿って)設置されている。そして、キャリッジ17におけるリニアスケール46と対向する位置には、リニアスケール46を挟んで図示しない発光部および受光部が配置された検出部47が備えられており、上述のリニアスケール46と共に記録エンコーダ(光学式リニアエンコーダ)48を構成している。記録エンコーダ48により、キャリッジ17の移動量が検出される。
【0055】
検出部47は、キャリッジ17の移動に応じて、互いに一定周期(本実施形態においては、1/4周期))ズレた2種類のパルス信号(A相信号,B相信号)を出力する。そして、A,B各相の信号は、キャリッジ17の移動方向が図中左方向(駆動プーリ43側から従動プーリ44側に向かう方向であり、以下「記録時順方向」ともいう)である場合は、A相信号がB相信号に対して位相が一定周期進み、従動プーリ44側から駆動プーリ43側に向かう方向(以下「記録時逆方向」ともいう)である場合は、A相信号がB相信号に対して位相が一定周期遅れるようにされている。なお、CIS33に設けられている読取エンコーダ96も、基本的には上記記録エンコーダ48と同様の構成であって同様に機能する。
(3)多機能装置の電気的構成
次に、多機能装置1の電気的構成について、図4に基づいて説明する。本実施形態の多機能装置1は、図4に示す如く、装置全体の各種制御を統括するCPU51と、このCPU51により実行される各種制御処理のプログラムやデータ等が格納されたROM52、CPU51の演算時に各種データが一時的に格納されるRAM53、上述した各種エンコーダ43,48,49からの信号(パルス信号)に基づく各種処理を行うエンコーダ処理部54、各種モータ10,41,46の駆動を制御する駆動制御部55、記録ヘッド15による画像の形成(インク吐出)を制御する記録制御部56、CIS33による画像の読み取りを制御する読取制御部57、各種エンコーダ43,48,49からのパルス信号よりも十分に周期が短いクロック信号を生成して当該多機能装置1内の各部に供給するクロック生成部90などを備え、これらがバス59を介して接続されている。バス59には、既述の操作パネル部29も接続されているほか、外部インタフェース(I/F)58も接続されている。この外部インタフェース58は、USB、LAN、FAX、TEL(音声電話)などの各種インタフェースを備えており、この外部インタフェース58を介して、これら各種インタフェースに対応した外部機器と接続することが可能となっている。
【0056】
記録エンコーダ48は、既述の通り、キャリッジ17の移動に応じて2種類のパルス信号(A相信号,B相信号)を出力するものであり、各相のパルス信号は、エンコーダ処理部54内の記録エンコーダ処理部60に入力される。読取エンコーダ96も、CIS33の移動に応じて2種類のパルス信号(A相信号,B相信号)を出力するものであり、各相のパルス信号は、エンコーダ処理部54内の読取エンコーダ処理部70に入力される。
【0057】
図5に、記録エンコーダ処理部60の概略構成を示す。記録エンコーダ処理部60内のエンコーダエッジ検出部61は、記録エンコーダ48からの各相パルス信号を取り込み、A相信号の立ち上がりエッジ及び記録モータ10の回転方向を検出する。A相信号の立ち上がりエッジ検出は、エッジ検出信号として出力される。
【0058】
位置カウンタ62は、エンコーダエッジ検出部61が検出した記録モータ10の回転方向(つまりキャリッジの移動方向)に応じて、エッジ検出信号にてエッジ数カウント値(enc_cnt)をカウントアップ又はカウントダウンする(後述の図10参照)。このエッジ数カウント値(enc_cnt)は、信号処理部64及び逓倍パルス生成部65へ出力される。
【0059】
また、周期カウンタ63は、エンコーダエッジ検出部61からエッジ検出信号が入力される度に初期化されて、エッジ検出信号入力後の経過時間を、クロック生成部90からのクロック信号をカウントすることにより計時するものである(後述の図11参照)。このカウント値であるエッジ周期カウント値(enc_cyc)は、信号処理部64及び逓倍パルス生成部65へ出力される。
【0060】
逓倍パルス生成部65は、記録エンコーダ48のA相信号立ち上がりエッジ毎に、即ち、エンコーダエッジ検出部61からエッジ検出信号が入力される度に、そのエッジ検出信号を所定の逓倍数Rにて逓倍(R逓倍)した逓倍パルスを生成し出力する。なお、厳密には、エッジ検出信号の実際の周波数そのものを忠実に逓倍するものではなく、後述する処理によって擬似的に逓倍パルスを生成、出力する。
【0061】
この逓倍パルス生成部65は、エッジ検出信号が入力される度に、周期カウンタ63からのエッジ周期カウント値(enc_cyc)に基づいて、前回エッジ検出信号が入力されてから今回入力されるまでの時間間隔(実周期)を得る。この実周期は、予め設定された過去m個分の値が保持されている。逓倍パルス生成部65は、エッジ検出信号が入力される度に、今回得られた実周期を含む過去m個の実周期に基づいて、次に再びエッジ検出信号が入力されるまでの時間間隔を予測する。
【0062】
そして、その予測値(予測周期Te)が得られたら、その得られた予測周期Teと、直前のエンコーダ周期間における最終逓倍パルス(即ち、前回エッジ検出信号が入力されたことにより生成された逓倍パルスにおける最終(R番目)の逓倍パルス)の逓倍周期tpRとに基づき、所定の演算式(後述する式(1))によって、生成すべき逓倍パルスの逓倍周期を演算する。ここでいう逓倍周期とは、順次出力する逓倍パルス相互間の時間間隔であり、r番目の逓倍パルスの逓倍周期とは、r―1番目の逓倍パルスから当該r番目の逓倍パルスまでの時間間隔を意味する。ただし、最初(1番目)に生成、出力される逓倍パルスの逓倍周期は、エッジ検出信号が入力されてから当該最初の逓倍パルスを出力するまでの時間間隔である。
【0063】
そして、逓倍パルス生成部65は、逓倍周期が演算されたら、その演算された逓倍周期に相当する時間が経過した時に逓倍パルスを生成(出力)する。そして引き続き、次に出力すべき逓倍パルスの逓倍周期を演算し、その得られた逓倍周期に相当する時間が経過したら再び逓倍パルスを出力する。このような処理を、R個全ての逓倍パルスが出力されるまで繰り返す。
【0064】
信号処理部64は、エッジ検出信号、エッジ数カウント値(enc_cnt)、エッジ周期カウント値(enc_cyc)などの各種信号を処理して必要に応じてCPU51へ出力すると共に、CPU51から入力される各種信号(指令等)を処理して記録エンコーダ処理部60内の各部へ出力する。
【0065】
CPU51から信号処理部64へ入力される信号としては、例えば、逓倍パルス生成部65による逓倍パルスの生成を行うか否かを指示する信号がある。本実施形態の多機能装置1では、必ずしも常時逓倍パルスを生成する必要があるわけではなく、逓倍パルスが必要なとき(例えば画像形成時や画像読取時)と不要なときとが混在する。そのため、CPU51が信号処理部64を介して逓倍パルス生成部65へ逓倍パルスを生成すべきか否かを指示するようにしている。また、逓倍パルス生成部65には、逓倍パルスを生成するために必要な各種パラメータが設定されるが、その設定は、CPU51によって行われる。
【0066】
逓倍パルス生成部65から出力された逓倍パルスは、記録制御部56に入力される。記録制御部56では、入力された逓倍パルスを記録ヘッド15の動作タイミング(インク吐出タイミング)として用い、記録ヘッド15の動作を制御する。
【0067】
ここまでは、記録エンコーダ処理部60の構成について説明したが、読取エンコーダ処理部70の構成も、基本的には上記の記録エンコーダ処理部60と同じであり、図5と同じブロック図にて表すことができる。つまり、図5は記録エンコーダ処理部60の構成と共に読取エンコーダ処理部70の構成をも示すものである。そのため、図5において、読取エンコーダ処理部70に関する符号が、記録エンコーダ処理部60に関する符号の横に括弧内で示されている。そのため、読取エンコーダ処理部70についての詳細説明は省略する。
【0068】
読取エンコーダ処理部70における逓倍パルス生成部75から出力された逓倍パルスは、読取制御部57に入力される。読取制御部57では、入力された逓倍パルスをCIS33の動作タイミング(画像読み取りタイミング)として用い、画像読み取り動作を制御する。
【0069】
なお、各エンコーダ処理部60,70を比較すると、読取エンコーダ処理部70の逓倍パルス生成部75における逓倍パルス生成処理(後述の図14参照)と記録エンコーダ処理部60の逓倍パルス生成部65における逓倍パルス生成処理(後述の図13参照)は一部異なっているのだが、その詳細については後述する。
【0070】
図4に戻り、搬送エンコーダ49は、既述の通り搬送ローラ18(図2参照)に設けられ、その出力信号は、エンコーダ処理部54内の搬送エンコーダ処理部80に入力される。搬送エンコーダ処理部80は、搬送エンコーダ49からのパルス信号を検出・カウントすることにより、搬送モータ92、搬送ローラ18の回転量や、搬送ローラ18により搬送される用紙Pの移動距離(搬送距離)を検出することができる。そして、駆動制御部55は、この搬送エンコーダ処理部80の検出結果に基づき、搬送モータ92の駆動(ひいては搬送ローラ18の駆動)を制御する。
【0071】
駆動制御部55には、上述した記録エンコーダ処理部60からの各種信号(移動方向や移動量を示す信号)や、読取エンコーダ処理部70からの各種信号(移動量や移動方向を示す信号)も入力され、これら各種信号に基づいて、記録モータ10や読取モータ91の制御が行われる。なお、本実施形態の記録モータ10、読取モータ91、搬送モータ92は、いずれもDCモータである。
(4)逓倍パルスの生成方法
次に、記録エンコーダ処理部60及び読取エンコーダ処理部70において行われる逓倍パルスの生成について説明する。本実施形態では、逓倍パルス生成の基本的方法は、記録エンコーダ処理部60と読取エンコーダ処理部70のいずれも同じである。そのため、以下の説明では、記録エンコーダ処理部60において行われる処理について説明すると共に、記録エンコーダ処理部60の各構成要素の符号には読取エンコーダ処理部70における対応する構成要素の符号を括弧書きで付加し、特に断りのない限り、読取エンコーダ処理部70においても同様に処理されるものとする。
【0072】
本実施形態では、エンコーダエッジ検出部61(71)からエッジ検出信号が出力される度に、上述したように逓倍数Rの逓倍パルスが生成されるわけだが、従来のように、逓倍周期が一定の逓倍パルスを生成するのではなく、直前に生成された逓倍パルス(即ち、前回エッジ検出信号が出力されたときに生成された逓倍パルスにおける最終(R番目)の逓倍パルス)から今回生成する逓倍パルスにおける最終(R番目)の逓倍パルスまで、逓倍周期が直線的(段階的)に変化するようにし、且つ、生成する逓倍パルスの各逓倍周期の合計が予測周期Teと一致するようにしている。
【0073】
つまり、直前の最終逓倍パルス(逓倍周期tpR)から今回生成する最終の逓倍パルスまで、逓倍周期が単調増加、単調減少、或いは一定、となるように、各逓倍パルスの逓倍周期を導出する。そして、その得られた逓倍周期に従い、逓倍パルスを順次出力するのである。
【0074】
生成するR個の逓倍パルスの内、r番目(1≦r≦R)の逓倍パルスの逓倍周期terは、具体的には、次式(1)の演算により得られる。Teは予測周期、Rは逓倍数である。
【0075】
【数1】

上記式(1)の導出過程について説明する。図6に示すように、本実施形態では、エッジ検出信号が出力されると、直前のエンコーダ周期間の実周期Tpを含む過去m個分の実周期に基づき、予め用意した予測演算式(後述の式(9))を用いて、次にエッジ検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測する。そして、その予測した予測周期Teと、その直前の逓倍パルス(直前のエンコーダ周期間における最終逓倍パルス)の逓倍周期tpRとに基づき、これから生成すべきR個の逓倍パルスの各逓倍周期te1,te2,・・・teRを演算する。
【0076】
ここで、これから生成する逓倍パルスの逓倍周期が直線的に変化していくということは、言い換えれば、最初の逓倍パルスの逓倍周期te1から最終の逓倍パルスの逓倍周期TeRまでが等しい差をもって(等差数列状に)並ぶということである。そして、その合計が予測周期Teであるから、等差数列の和の演算式を適用すると、次式(2)が得られる。
【0077】
【数2】

但し、aは、生成する逓倍パルスの逓倍周期の公差である。
【0078】
また、生成する各逓倍パルスの逓倍周期の平均値t ̄を次式(3)のようにおくと、直前の最終逓倍パルスの逓倍周期TpRは次式(4)で表すことができ、これにより、公差aは次式(5)で表せる。
【0079】
【数3】

また、これから生成する逓倍パルスについて、r番目の逓倍パルスの逓倍周期terは、周知の等差数列の関係式から、次式(6)で表される。
【0080】
【数4】

よって、上記式(2),(5),(6)より、逓倍周期terは、次式(7)(=式(1))のように導出される。
【0081】
【数5】

このようにして、逓倍パルスの逓倍周期terの導出式(1)が得られるわけだが、これとは別に、単純に等差数列の性質のみを利用して導出することもできる。
【0082】
即ち、直前の最終逓倍パルスの逓倍周期からTpRから今回生成する最終逓倍パルスの逓倍周期teRまで、公差aで変化していくことから、次式(8)が当然の如く得られる。
【0083】
【数6】

この式(8)と上記式(2)から、式(1)の演算式を得ることができる。
【0084】
図7に、上記式(1)を用いて得られる逓倍パルスについて、逓倍数Rが4(4逓倍)の場合の実例を示す。A相信号のエッジ立ち上がりタイミングでエンコーダエッジ検出部61(71)からエッジ検出信号が出力されると、逓倍パルス生成部65(75)は、予測周期Teを演算し、上記式(1)を用いて順次逓倍周期を演算して逓倍パルスを出力していく。そして、生成される逓倍パルスの逓倍周期は、図示のように変化していく。
【0085】
次に、上述した逓倍パルスの生成手順について、図8〜図14を用いてより具体的に説明する。なお、図8,図12の処理を実行する逓倍パルス生成部65(75)、図13の処理を実行する逓倍パルス生成部65、図14の処理を実行する逓倍パルス生成部75、図10の処理を実行する位置カウンタ62(72)、図11の処理を実行する周期カウンタ(63(73)は、いずれも、いわゆるハードウェア回路として各種処理を行うように構成されたものであるが、ここでは理解を容易にするために、ハードウェア回路としての上記各種処理のシーケンスをフローチャートに置き換えて説明する。
【0086】
まず、当該多機能装置1の電源が投入されると、逓倍パルス生成部65(75)では、図8の変数初期化処理が実行される。即ち、電源投入後、S110にて、逓倍パルス生成部65(75)において逓倍パルスを生成するために用いられる各種変数(パラメータ)が初期化される。具体的な数値(変数)はCPU51から入力され、それに基づいて各種レジスタ等に値を設定する。なお、図8において「α:=β」とあるのは、変数αにβを代入することを意味している。
【0087】
図8において、mは、予測周期の演算に用いる過去の実周期の個数であり、a1,a2,・・・,amは、予測周期を演算する予測式(後述の式(9))で用いられる係数である。初期段階では、a1のみ「1」が設定され、他は「0」が設定される。また、yn-iは、予測周期を演算する際に用いるm個の過去データ(実周期)を保持するための変数であって、初期値としては、とりあえず、ごく低速時の周期に対応した比較的大きな値(Max Value)が設定される。また、直前のエンコーダ周期間の実周期Tpは、電源投入時は当然ながらまだ計測されていないため、初期値としてyn-1が設定される。TTは、逓倍パルスの周期(逓倍周期)を計測する逓倍周期計測カウンタ(図示略)のカウント値(逓倍周期カウント値)である。OFは、最終(R番目)の逓倍パルスの出出力タイミングが次のエッジ検出信号の出力タイミングを過ぎた場合において所定の条件(詳細は後述)が成立したときに設定されるオーバーフラグである。但し、このOFは、読取エンコーダ処理部70の逓倍パルス生成部75にのみ設定される。
【0088】
ここで、予測周期を得るための演算式である予測式は、本実施形態では、次式(9)が用いられる。
【0089】
【数7】

各変数と時系列信号との関係を、図9に示す。図9は、R=4の場合を示している。即ち、エッジ検出信号が入力されてこれからy^nを演算しようとするとき、直前の実周期はyn-1(=Tp)であり、その一つ前の実周期はyn-2であり、そのまた一つ前の実周期はyn-3である。
【0090】
そして、逓倍パルス生成部65(75)は、エッジ検出信号が入力される度に、その直前のエンコーダ周期間の実周期を含む過去m個の実周期(yn-1(=Tp),yn-2,yn-3,・・・,yn-m)の各々に重み付けをした上で加算することにより、周期を予測する。この式(9)により得られた周期y^nが、後述するように予測周期Teとして設定される。
【0091】
なお、予測式(9)で用いられる係数aiの具体例を、式(10)〜(12)に示す。式(10)は、過去2個の実周期を用いて周期を予測する予測式の例であり、式(11)は、過去3個の実周期を用いて周期を予測する予測式の例であり、式(12)は、過去4個の実周期を用いて周期を予測する予測式の例である。
【0092】
【数8】

次に、位置カウンタ62(72)が実行するエッジ数カウント処理について、図10に基づいて説明する。図10のエッジ数カウント処理においては、まず、エッジカウント値(enc_cnt)が初期化される(S160)。そして、エンコーダエッジが検出されたか否か、即ち、エンコーダエッジ検出部61(71)からエッジ検出信号が出力されたか否かが判断される(S170)。エッジ検出信号が出力されるまではこのS170の判断処理が繰り返されるが、エッジ検出信号が出力された場合は(S170:YES)、移動方向が判断される(S180)。
【0093】
具体的には、記録エンコーダ処理部60においては、記録モータ10の回転方向がCW(Clockwise ;本実施形態ではキャリッジ17が記録時順方向に移動する回転方向)又はCCW(Counterclockwise;本実施形態ではキャリッジ17が記録時逆方向に移動する回転方向)の何れであるかが判断される。また、読取エンコーダ処理部70においては、読取モータ91の回転方向がCW(本実施形態ではCIS33が読取時順方向に移動する回転方向)又はCCW(本実施形態ではCIS33が読取時逆方向に移動する回転方向)の何れであるかが判断される。
【0094】
そして、記録時、読取時のいずれにおいても、回転方向がCWであればエッジカウント値(enc_cnt)がインクリメントされ(S190)、回転方向がCCWであればエッジカウント値(enc_cnt)がデクリメントされる(S200)。
【0095】
次に、周期カウンタ63(73)が実行するエッジ周期カウント処理について、図11に基づいて説明する。図11のエッジ周期カウント処理においては、まず、エッジ周期カウント値(enc_cyc)が初期化される(S210)。そして、エンコーダエッジが検出されたか否か、即ち、エンコーダエッジ検出部61(71)からエッジ検出信号が出力されたか否かが判断され(S220)、検出されるまではエッジ周期カウント値(enc_cyc)が順次インクリメントされていくが(S230)、エンコーダエッジが検出されると(S220)、再びS210に戻る。つまり、エンコーダエッジが検出される毎に、その検出時から次にまた検出されるまでの時間間隔を計測するのである。
【0096】
次に、エッジ検出信号が入力される度に逓倍パルス生成部65(75)が実行する周期予測処理について、図12に基づいて説明する。図12の周期予測処理においては、まず、予測に必要なm個の実周期が得られるまで予測演算自体をキャンセルするための、予測キャンセルカウンタLが、1にセットされる(S310)。続いて、予測に必要な実周期の個数mと、予測式(9)における係数aiが設定される(S320)。これらの設定はいずれも、CPU51から入力される設定値に基づいて行われる。
【0097】
そして、逓倍パルス処理が終了しているか否か、即ち、CPU51から逓倍パルス生成を実行するよう指令を受けているか否かが判断される(S330)。このとき、多機能装置1が例えば記録や読取等の動作がなされていない待機状態であるなど、逓倍パルスを生成する必要がなくCPU51からその旨の指令が入力されている場合は(S330:NO)、そのままこの周期予測処理が終了されるが、逓倍パルスを生成すべき旨の指令が入力されている場合は(S330:YES)、エンコーダエッジの検出を待つ(S340)。そして、エッジ検出信号の入力によりエンコーダエッジが検出されると(S340:YES)、そのときのエッジ周期カウント値(enc_cyc)が実周期Tpに設定(代入)され(S350)、その実周期Tpがyn-1に設定される(S360)。つまり、Tp,yn-1には常に直前のエンコーダ周期間の実周期が設定されることになる。
【0098】
そして、予測キャンセルカウンタLの値がmと等しいか否か、即ち、m個の実周期が得られたか否かが判断される(S365)。このとき、まだm個得られていない場合は、予測演算は行わず、予測キャンセルカウンタLがインクリメントされ(S390)、さらに、直前のエンコーダ周期間における最終逓倍パルスの逓倍周期tpRとして、その直前の実周期Tpを逓倍数Rで平均化したTp/Rが設定される(S400)。つまり、エンコーダエッジ検出初期の段階では、後に逓倍パルスを生成する際に使用されるTpRの初期化のために、このtpRの値として、直前の実周期を逓倍数に応じて均等配分した値が設定されるのである。そして、これまで計測されて保持されている実周期それぞれについて、yn-iに入っていた値をyn-(i+1)にシフトさせる(S410)。つまり、それまで過去1番目(つまり直前),過去2番目,3番目,・・・の実周期として位置づけされていたものを、次のエンコーダエッジ検出に備え、それぞれ過去2番目,過去3番目,過去4番目,・・・の実周期として位置づけるわけである。その後、再びS330の処理に戻る。
【0099】
このようにしてS330以下の処理が繰り返されることにより、LがインクリメントされていってL=mになると(S365:YES)、予測に必要な材料(yn-1〜yn-m)は全て揃ったことになり、上記予測式(9)を用いて周期の予測演算が行われる(S370)。そして、得られた周期y^nを予測周期Teとして設定し(S380)、S410へ移行する。以後は、エンコーダエッジが検出される度に、予測周期Teが更新されていくことになる。
【0100】
次に、記録エンコーダ処理部60の逓倍パルス生成部65が実行する逓倍パルス生成処理について、図13を用いて説明する。図13の逓倍パルス生成処理においては、まず、エンコーダエッジの検出有無が判断され(S510)、検出されると、逓倍パルス処理が終了しているか否かが判断される(S520)。このS520の処理は、図12の周期予測処理におけるS330の処理と全く同じである。
【0101】
そして、逓倍パルスを生成すべき旨の指令がCPU51から入力されている場合(S520:YES)、逓倍周期計測カウンタの逓倍周期カウント値TTを0にセットする。そして、予測周期Teが演算済みであることを条件として(S540:YES)、これから生成する逓倍パルスの出力順rにr−R+1の値が設定されると共に、エッジ数カウント値保持レジスタ(図示略)の保持カウント値(enc_reg)に、その時点でのエッジ数カウント値(enc_cnt)が設定される(S550)。そして、既述の式(1)により、r番目の逓倍パルスの周期である逓倍周期terが演算される(S560)。このようにして逓倍周期terが得られた後は、その時間が経過するまで待機して経過後に逓倍パルスを出力すればよい。
【0102】
そこで、周期計測カウンタの動作を開始させる(S570)。この場合、エンコーダエッジ検出後の最初のカウント動作の場合は、そのエンコーダエッジ検出時からの経過時間が逓倍周期カウント値TTとしてカウントされることとなる。そして、逓倍周期カウント値TTが逓倍周期terに到達するまではカウントが継続され(S580:NO)、逓倍周期カウント値TTが逓倍周期terに到達すると(S580:YES)、逓倍パルスを出力する(S590)。
【0103】
その後、出力順rが逓倍数Rに等しいか否か、即ち、R個全ての逓倍パルスが出力されたか否かが判断され(S600)、まだ全て出力されていなければ、出力順rをインクリメントすると共に逓倍周期カウント値TTを0にリセットして、S560に戻る。これにより、S560の処理では、今出力したr番目の逓倍パルスと次に出力すべきr+1番目の逓倍パルスとの間の時間間隔(逓倍周期)が演算され、その演算された時間の経過後に再び逓倍パルスが出力される。このようにして、R個全ての逓倍パルスが出力されるまで、S560〜S610の処理が繰り返される。
【0104】
そして、R個全ての逓倍パルスが出力されたら(S600:YES)、そのときのエッジ数カウント値(enc_cnt)と保持カウント値(enc_reg)が等しいか否か、即ち、最終の逓倍パルスが出力される前に次のエンコーダエッジが入力されたか否かが判断される(S620)。このとき、次のエンコーダエッジが入力される前にR個全ての逓倍パルスが出力されたならば(S620:YES)、S510に戻って、次のエンコーダエッジの検出を待つことになるが、R個全ての逓倍パルスが出力されるよりも次のエンコーダエッジの方が先に入力されたならば(S620:NO)、そのときのエッジ周期カウント値(enc_cyc)(つまり、先に入力されたエンコーダエッジの検出タイミングからR個目の逓倍パルスが出力されるまでに経過した時間)を逓倍周期カウント値TTとしてセットした上で(S630)、S540に戻る。
【0105】
つまり、R個全ての逓倍パルスの生成中に次のエンコーダエッジが入力されている場合は、逓倍周期カウント値TTにその時点でのエッジ周期カウント値(enc_cyc)を代入し、エンコーダエッジの検出(S510)は行わずに、逓倍パルスの生成に入るのである。
【0106】
予測周期Teの演算精度や駆動対象の速度変動などによっては、最後のR番目の逓倍パルスが出力されるよりも前に次のエンコーダエッジが入力されてしまうことも起こりうるが、そのような場合は、上記S630の処理により、R番目の逓倍パルスが出力された時点において既に次のエンコーダエッジの入力時から経過している時間が加味されて、次の新たな逓倍パルスの生成処理に入ることができる。
【0107】
次に、読取エンコーダ処理部70の逓倍パルス生成部75が実行する逓倍パルス生成処理について、図14を用いて説明する。図14の逓倍パルス生成処理において、図13と比較して明らかなように、S710〜S830の処理(但しS790を除く)については、図13におけるS510〜S620の処理と全く同じである。そのため、その図13と同じ処理については、説明を省略する。そして、図13と異なる部分について詳細説明する。
【0108】
図14の逓倍パルス生成処理では、逓倍周期terの演算後(S760)、逓倍周期カウント値TTがその逓倍周期terに達すると(S780)、すぐに逓倍パルスが出力されるのではなく、オーバーフラグOFが1にセットされているか否かが判断される(S790)。このオーバーフラグOFは、既述の通り最初は0に初期化されているため、初めてこのS790の判断処理がなされる際は必然的にS800へ移行し、逓倍パルスが出力されることとなる。
【0109】
一方、R個全ての逓倍パルスが出力されたとき、既に次のエンコーダエッジが入力されている場合(S830:NO)、記録エンコーダ処理部60では、図13のS630に示したように、単に、逓倍周期カウント値TTにその時点でのエッジ周期カウント値(enc_cyc)を代入して、次の新たなエンコーダエッジ周期間における逓倍パルスの生成に入るようにしたが、読取エンコーダ処理部70では、まず、そのときのエッジ周期カウント値(enc_cyc)が最初に出力すべき逓倍パルスの逓倍周期を超えているか否か、即ち、最終のR個目の逓倍パルス出力タイミングが、次の周期における最初(一番目)の逓倍パルス出力タイミングを超えているか否かが判断される(S840)。
【0110】
このとき、超えていなければ(S840:NO)、さらに、そのエッジ周期カウント値(enc_cyc)が予め設定した判定値T_limを超えているか否かが判断される(S850)。そして、判定値T_limを超えていない場合は(S850:NO)、逓倍周期カウント値TTにその時点でのエッジ周期カウント値(enc_cyc)を代入して、次の新たなエンコーダエッジ周期間における逓倍パルスの生成に入る(S740に戻る)。逆に、エッジ周期カウント値(enc_cyc)が判定値T_limを超えている場合、即ち、次の周期の最初の逓倍パルス出力タイミングまでには達していないものの、そこまで非常に接近している場合は(S850:YES)、オーバーフラグOFに1をセットして、S870以降の処理に進む。
【0111】
また、S840の処理において、そのときのエッジ周期カウント値(enc_cyc)が最初に出力すべき逓倍パルスの逓倍周期を超えていると判断された場合は、逓倍周期カウント値TTに、最初(一番目)の逓倍パルスを出力する予定であったタイミングからの経過時間(カウント値)が設定されると共に(S890)、出力順rの値がインクリメントされて(S900)、S740に戻る。
【0112】
これにより、次のエンコーダ周期間における逓倍パルスの生成が開始されたとき、エンコーダエッジの入力後に直前の最終逓倍パルスが出力されてしかもその出力タイミングが次のエンコーダ周期における最初の逓倍パルスの出力予定タイミングを超えてしまっている場合は、S890及びS900の処理がなされていて出力順rも一つインクリメントされているため、最初の逓倍パルスの出力はキャンセルされ、2番目の逓倍パルスから出力されることとなる。
【0113】
また、エンコーダエッジの入力後に直前の最終逓倍パルスが出力されたもののその出力タイミングは次のエンコーダ周期における最初の逓倍パルスの出力タイミングにまでは到達していない場合であっても、最終逓倍パルスが出力されたときのエッジ周期カウント値(enc_cyc)が上記判定値T_limを超えている場合は、S860の処理によりオーバーフラグが1にセットされている。そのため、S790の判定処理において肯定判定され、S880の処理(オーバーフラグのクリア)を経てS810に進むことになり、S800の処理、即ち逓倍パルスの出力がなされないことになる。つまり、この場合も最初の逓倍パルスの出力はキャンセルされ、2番目の逓倍パルスから出力されることとなる。
【0114】
なお、このように最初の逓倍パルスがキャンセルされた場合、そのキャンセルされた逓倍パルスを基準にして本来読み取るはずであった画像データが得られないことになる。その場合は、例えばその前の逓倍パルス(つまり直前の周期における最終逓倍パルス)で読み取った画像データをそのままコピーしてそのキャンセルされた逓倍パルスに対応した画像データとして扱うようにしてもよい。また、キャンセルされた逓倍パルスの前後の逓倍パルスを元に得られた2ラインの画像データに基づき、例えばその両者の平均をとる等の処理をすることにより、そのキャンセルされた部分の画像を生成(再現)するようにしてもよい。
(5)第1実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態の多機能装置1では、記録ヘッド15による画像形成(インク吐出)のタイミングとして、記録エンコーダ処理部60にて生成される逓倍パルスが用いられる。この逓倍パルスは、エンコーダエッジの検出毎(エッジ検出信号が出力される度)に所定の逓倍数Rだけ生成される。そして、その生成は、直前のエンコーダ周期における最終の逓倍パルスの逓倍周期tpRと、予測された予測周期Teとに基づき、逓倍周期が直線的(段階的)に滑らかに変化していくように行われる。具体的には、上記式(1)の演算式によってr番目の逓倍パルスの逓倍周期terが算出される。これは即ち、予測周期Teから算出される平均速度がちょうどこの予測周期期間における中心となることを意味する。
【0115】
そのため、従来のようにエッジ検出信号の入力前後で逓倍パルスの周期が不連続に変化してしまうといった問題が解消され、しかも実際の駆動対象の駆動速度と逓倍パ逓倍周期から算出される駆動速度との誤差が非常に少ない、滑らか且つ信頼性の非常に高い逓倍パルスを生成することができる。そして、そのような滑らか且つ信頼性の高い逓倍パルスによって記録ヘッド15のインク吐出タイミングが制御されることで、高品質の画像形成結果を得ることが可能となる。
【0116】
CIS33による画像読み取りについても、その読み取りタイミングとして、読取エンコーダ処理部70にて生成される逓倍パルスが用いられ、この逓倍パルスは上記の記録エンコーダ処理部60における逓倍パルスの生成方法と基本的には同様の方法で行われるため、高品質の画像読み取り結果を得ることができる。
【0117】
また特に、読取エンコーダ処理部70における逓倍パルスの生成は、最終(R番目)の逓倍パルスの出力タイミングがすでに次のエンコーダエッジが入力された後である場合に、そのエンコーダエッジ入力時からの経過時間に応じて、次のエンコーダ周期における最初の逓倍パルスを出力するか否かを判断するようにしている。そのため、最終の逓倍パルスの出力と、次のエンコーダ周期における最初の逓倍パルスとの出力タイミングが不適切な状態(近接あるいは逆転する等)となるのが防止され、画像の読み取りをより適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0118】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、逓倍パルスの逓倍周期を、式(1)の演算式により算出するようにしたが、本実施形態では、後に述べる式(13)を用いて算出する。それ以外の処理や装置構成については、上記第1実施形態の多機能装置1と全く同じである。
【0119】
即ち、本実施形態では、逓倍パルス生成部65(75)にて逓倍パルスを生成するにあたり、次式(13)の演算式を用いて、r番目の逓倍パルスの逓倍周期terを算出する。
【0120】
【数9】

つまり、図13の逓倍パルス生成処理(記録エンコーダ処理部60の逓倍パルス生成部65にて実行される処理)におけるS560の演算、および、図14の逓倍パルス生成処理(読取エンコーダ処理部70の逓倍パルス生成部75にて実行される処理)におけるS760の演算を、上記式(13)を用いて行うのである。
【0121】
上記式(13)の導出過程について説明する。図15に示すように、本実施形態でも、エッジ検出信号が出力されると、直前のエンコーダ周期間の実周期Tpを含む過去m個分の実周期に基づき、既述の予測式(9)を用いて、予測周期Teが演算される。そして、その予測周期Teと、その直前のエンコーダ周期の実周期Tpとに基づき、これから生成すべきR個の逓倍パルスの各逓倍周期te1,te2,・・・teRを演算する。具体的には、実周期Tpから予測周期Teへの変化量に応じて、逓倍パルスの逓倍周期も順次変化するように、逓倍パルスを生成する。
【0122】
本実施形態では、実周期Tpから予測周期Teへの変化量に応じて、逓倍周期が直線的に変化していくような逓倍パルスを生成する。加えて、前回のエッジ検出信号により生成された最終の逓倍パルスの逓倍周期からの今回生成する逓倍パルスの逓倍周期への連続性も保持されるようにする。
【0123】
そこで、本実施形態では、図15に示すように、エッジ検出信号が出力されたとき、前回出力されたエッジ検出信号により生成された最終の逓倍パルスの逓倍周期をTp/Rと仮定すると共に、今回生成する逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスの逓倍周期teRをTe/Rに設定して、Tp/RからTe/Rまで順次直線的に変化するように逓倍パルスを生成する。
【0124】
そして、上記のような考え方に基づき、逓倍周期terの演算式を単純な一次関数式に帰着させる。具体的には、逓倍周期の初期値をb、傾きをaとすると、初期値bおよび傾きaはそれぞれ、次式(14),(15)で表される。
【0125】
【数10】

よって、逓倍周期terは、次式(16)のように導出される。
【0126】
【数11】

図16に、上記式(13)を用いて得られる逓倍パルスについて、逓倍数Rが4(4逓倍)の場合の実例を示す。A相信号のエッジ立ち上がりタイミングでエンコーダエッジ検出部61(71)からエッジ検出信号が出力されると、逓倍パルス生成部65(75)は、予測周期Teを演算し、上記式(13)を用いて順次逓倍周期を演算して逓倍パルスを出力していく。そして、生成される逓倍パルスの逓倍周期は、図示のように変化していく。
【0127】
従って、本実施形態によれば、直前の実周期Tpから次の予測周期Teへの変化量に応じて逓倍周期が順次変化するような逓倍パルスが生成され、エッジ検出信号の出力前後で逓倍パルスの周期が不連続に変化するのが抑制される。そのため、信頼性の高い逓倍パルスを得ることができる。
【0128】
但し、上記式(13)により逓倍周期を演算する場合、直前の周期における最終逓倍パルスの逓倍周期をその周期における平均逓倍周期Tp/Rとおくと共に、今回生成する最終の逓倍パルスの逓倍周期を予測周期Teに基づく平均逓倍周期Te/Rとしている。つまり、最終逓倍パルスの逓倍周期を、その周期における平均の逓倍周期とおいて、上記式(13)を導出している。そのため、定速移動中を除き、生成される逓倍パルスの逓倍周期の合計は予測周期Teと一致しない。
【0129】
具体的には、例えばキャリッジ17が加速中であれば、逓倍周期の合計は予測周期Teを超えてしまい、逆に減速中であれば、逓倍周期の合計は予測周期Teより小さくなる。これに対し、上記第1実施形態では、逓倍周期の合計が予測周期Teと一致するように式(1)を導出している。
【0130】
そのため、誤差のないより高精度の逓倍パルスを得るためには、本実施形態の逓倍パルス生成方法(演算式(13))よりも上記第1実施形態の逓倍パルス生成方法(演算式(1))の方が好適である。
【0131】
[変形例]
尚、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0132】
例えば、上記各実施形態では、逓倍周期が直線的(一次関数的)に変化するような逓倍パルスを生成する例を示したが、これはあくまでも一例であって、例えば二次関数的あるいは三次関数的に変化するような逓倍パルスを生成してもよい。つまり、逓倍周期が滑らかに変化し、その変化の仕方(増加又は減少)がエッジ検出信号の出力前後でも同じになる限り、種々の演算式を用いることができる。
【0133】
また、上記各実施形態では、リニアエンコーダからのパルス信号に基づいて逓倍パルスを生成する例を示したが、これもあくまでも一例であり、例えばロータリエンコーダからのパルス信号に基づいて逓倍パルスを生成するようにしてもよい。要するに、駆動対象の駆動量を検出するためのものであって駆動対象が一定量駆動される毎に検出信号が出力されるよう構成されたものであれば、その検出信号に基づいて本発明を適用し、逓倍パルスを生成することができる。
【0134】
また、上記各実施形態では、2相(A相およびB相)のパルス信号におけるある一つのエッジ(A相信号の立ち上がりエッジ)をもとに上記各処理(図10〜14)を行っているが、これは一例であって、例えば、A相(又はB相)の立ち上がり・立ち下がり両エッジ(即ち2つのエッジ)に基づいて上記各処理を行ったり、A,B各相の立ち上がり・立ち下がり両エッジ(即ち4つのエッジ)に基づいて上記各処理を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本実施形態の多機能装置の斜視図である。
【図2】本実施形態の多機能装置の側断面図である。
【図3】本実施形態の多機能装置が備える画像形成部の概略構成を表す構成図である。
【図4】本実施形態の多機能装置の電気的概略構成を示すブロック図である。
【図5】記録エンコーダ処理部および読取エンコーダ処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態における各逓倍パルスと予測周期との関係を説明する説明図である。
【図7】第1実施形態の逓倍パルスの実例(4逓倍の場合)を示す説明図である。
【図8】変数初期化処理を示すフローチャートである。
【図9】変数と時系列信号の関係を説明するための説明図である。
【図10】エッジ数カウント処理を示すフローチャートである。
【図11】エッジ周期カウント処理を示すフローチャートである。
【図12】周期予測処理を示すフローチャートである。
【図13】記録エンコーダ処理部内の逓倍パルス生成部が実行する逓倍パルス生成処理を示すフローチャートである。
【図14】読取エンコーダ処理部内の逓倍パルス生成部が実行する逓倍パルス生成処理を示すフローチャートである。
【図15】第2実施形態における各逓倍パルスと予測周期との関係を説明する説明図である。
【図16】第2実施形態の逓倍パルスの実例(4逓倍の場合)を示す説明図である。
【図17】従来の逓倍パルス生成方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0136】
1…多機能装置、3…給紙カセット、9…給紙部、9b…給紙ローラ、10…記録モータ、13…画像形成部、15…記録ヘッド、17…キャリッジ、18…搬送ローラ、19…プラテン、21…排紙部、23…画像読取装置、25…上カバー体、27…原稿カバー体、29…操作パネル部、31…載置用ガラス板、33…CIS、35…ガイドシャフト、37…インク供給管、41…ガイドバー、42…無端ベルト、43…駆動プーリ、44…従動プーリ、46…リニアスケール、47…検出部、48…記録エンコーダ、49…搬送エンコーダ、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…エンコーダ処理部、55…駆動制御部、56…記録制御部、57…読取制御部、58…外部インタフェース、59…バス、60…記録エンコーダ処理部、61,71…エンコーダエッジ検出部、62,72…位置カウンタ、63,73…周期カウンタ、64,74…信号処理部、65,75…逓倍パルス生成部、70…読取エンコーダ処理部、80…搬送エンコーダ処理部、90…クロック生成部、91…読取モータ、92…搬送モータ、96…読取エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象が予め設定された一定量駆動される度に検出信号を出力する検出信号出力手段を有し、該検出信号出力手段からの検出信号を所定の逓倍数にて逓倍した逓倍パルスを生成する逓倍パルス生成装置であって、
前記検出信号出力手段から検出信号が出力される度に、該出力された検出信号と前回出力された検出信号との時間間隔である実周期を計測する実周期計測手段と、
前記検出信号出力手段から検出信号が出力される度に、該検出信号の出力によって前記実周期計測手段により計測された実周期を含む過去少なくとも2つ以上の前記実周期に基づいて、次に再び前記検出信号出力手段から検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測する予測手段と、
前記検出信号出力手段から検出信号が出力される度に前記逓倍数の逓倍パルスを順次生成する逓倍パルス生成手段と、
を備え、
前記逓倍パルス生成手段は、前記検出信号出力手段にて検出信号が出力される度に、前記実周期計測手段により計測された実周期と前記予測手段により予測された時間間隔である予測周期とに基づき、該実周期から該予測周期への変化量に応じて、前記逓倍パルスを生成する時間間隔である逓倍周期も順次変化するように、前記逓倍パルスを生成する
ことを特徴とする逓倍パルス生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の逓倍パルス生成装置であって、
前記逓倍パルス生成手段は、前記逓倍周期が直線的に変化するように前記逓倍パルスを生成する
ことを特徴とする逓倍パルス生成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の逓倍パルス生成装置であって、
前記逓倍パルス生成手段は、
前記検出信号出力手段にて検出信号が出力されたとき、前回出力された前記検出信号に対応した最終の逓倍パルスの逓倍周期をTp/R(但し、Tpは前記実周期計測手段にて計測された実周期、Rは前記逓倍数)と仮定すると共に、今回生成する前記逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスの逓倍周期をTe/R(但し、Teは前記予測手段にて予測された予測周期)に設定して、前記Tp/Rから前記Te/Rまで順次変化するように、前記逓倍パルスを生成する
ことを特徴とする逓倍パルス生成装置。
【請求項4】
駆動対象が予め設定された一定量駆動される度に検出信号を出力する検出信号出力手段を有し、該検出信号出力手段からの検出信号を所定の逓倍数にて逓倍した逓倍パルスを生成する逓倍パルス生成装置であって、
前記検出信号出力手段から検出信号が出力される度に、該出力された検出信号と前回出力された検出信号との時間間隔である実周期を計測する実周期計測手段と、
前記検出信号出力手段から検出信号が出力される度に、該検出信号の出力によって前記実周期計測手段により計測された実周期を含む過去少なくとも2つ以上の前記実周期に基づいて、次に再び前記検出信号出力手段から検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測する予測手段と、
前記検出信号出力手段から検出信号が出力される度に前記逓倍数の逓倍パルスを順次生成する逓倍パルス生成手段と、
を備え、
前記逓倍パルス生成手段は、前記検出信号出力手段にて検出信号が出力される度に、逓倍パルスを生成する時間間隔である逓倍周期が、前回出力された前記検出信号に対応した最終の逓倍パルスの逓倍周期から今回生成する前記逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスの逓倍周期まで段階的に変化するよう、且つ、生成する前記逓倍パルス毎の前記逓倍周期の合計が前記予測周期と一致するように、前記逓倍パルスを生成する
ことを特徴とする逓倍パルス生成装置。
【請求項5】
請求項4記載の逓倍パルス生成装置であって、
前記逓倍パルス生成手段は、前記逓倍周期が直線的に変化するように前記逓倍パルスを生成する
ことを特徴とする逓倍パルス生成装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の逓倍パルス生成装置であって、
前記逓倍パルス生成手段は、
生成すべき逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスを生成した時に、すでに前記検出信号出力手段にて次の前記検出信号が出力されたか否かを判断する検出信号判断手段と、
前記次の検出信号が出力されてから前記最終の逓倍パルスが生成される場合における該次の検出信号の出力から該最終の逓倍パルスが生成されるまでの時間である超過時間を計測する超過時間計測手段と、
前記検出信号判断手段にて前記次の検出信号がすでに出力されたと判断された場合に、前記超過時間計測手段にて計測された前記超過時間が予め設定した超過量判定値を超えているか否かを判断する超過量判定手段と、
を備え、前記超過量判定手段にて前記超過量を超えていると判断されたときは、前記次の検出信号の出力に対応して生成すべき前記逓倍パルスのうち最初の逓倍パルスは生成しない
ことを特徴とする逓倍パルス生成装置。
【請求項7】
請求項6記載の逓倍パルス生成装置であって、
前記超過量判定値は、前記次の検出信号の出力に対応して生成すべき前記逓倍パルスにおける最初の逓倍パルスの逓倍周期である
ことを特徴とする逓倍パルス生成装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の逓倍パルス生成装置であって、
前記検出信号出力手段は光学式エンコーダであることを特徴とする逓倍パルス生成装置。
【請求項9】
駆動対象が予め設定された一定量駆動される度に出力される検出信号を所定の逓倍数にて逓倍した逓倍パルスを生成する逓倍パルス生成方法であって、
前記検出信号が出力される度に、該出力された検出信号と前回出力された検出信号との時間間隔である実周期を計測し、
前記検出信号が出力される度に、該検出信号の出力によって計測された前記実周期を含む過去少なくとも2つ以上の前記実周期に基づいて、次に再び前記検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測し、
前記検出信号が出力される度に、前記逓倍数の逓倍パルスを順次生成し、該逓倍パルスの生成は、前記計測された実周期と、前記予測された時間間隔である予測周期とに基づき、該実周期から該予測周期への変化量に応じて該逓倍パルスを生成する時間間隔である逓倍周期も順次変化するように行う
ことを特徴とする逓倍パルス生成方法。
【請求項10】
駆動対象が予め設定された一定量駆動される度に出力される検出信号を所定の逓倍数にて逓倍した逓倍パルスを生成する逓倍パルス生成方法であって、
前記検出信号が出力される度に、該出力された検出信号と前回出力された検出信号との時間間隔である実周期を計測し、
前記検出信号が出力される度に、該検出信号の出力によって計測された前記実周期を含む過去少なくとも2つ以上の前記実周期に基づいて、次に再び前記検出信号が出力されるまでの時間間隔を予測し、
前記検出信号が出力される度に、前記逓倍数の逓倍パルスを順次生成し、該逓倍パルスの生成は、該逓倍パルスを生成する時間間隔である逓倍周期が、前回出力された前記検出信号に対応した最終の逓倍パルスの逓倍周期から今回生成する前記逓倍パルスにおける最終の逓倍パルスの逓倍周期まで段階的に変化するよう、且つ、生成する前記逓倍パルス毎の前記逓倍周期の合計が前記予測周期と一致するように行う
ことを特徴とする逓倍パルス生成方法。
【請求項11】
インクを吐出することにより被記録媒体に画像を形成する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドからのインクの吐出タイミングを制御する記録制御手段と、
前記駆動対象としての、前記記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
前記キャリッジを前記画像の形成に対応した主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動手段と、
請求項1〜8いずれかに記載の逓倍パルス生成装置と、
を備え、
前記記録制御手段は、前記キャリッジが前記キャリッジ移動手段によって移動されている際、前記逓倍パルス生成手段にて生成される前記逓倍パルスを前記吐出タイミングとして用いる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
原稿に形成された画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段による画像の読み取りタイミングを制御する読取制御手段と、
前記画像読取手段を前記画像の読み取りに対応した主走査方向に移動させる画像読取移動手段と、
請求項1〜8いずれかに記載の逓倍パルス生成装置と、
を備え、
前記読取制御手段は、前記画像読取手段が前記画像読取移動手段によって移動されている際、前記逓倍パルス生成手段にて生成される前記逓倍パルスを前記読み取りタイミングとして用いる
ことを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−92340(P2008−92340A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271791(P2006−271791)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】