説明

通信システム、中継機および通信方法

【課題】高性能な伝送を実現することができる通信システムを得ること。
【解決手段】BSと、MSと、BSとMSとの間の通信を中継する2機以上のAFと、を備える通信システムであって、BSは、送信信号S1,S2を時空間ブロック符号化または周波数空間ブロック符号化して2つの送信アンテナから送信し、AFは、受信アンテナ21−1,21−2と、送信アンテナ24−1,24−2と、受信した送信信号に対して所定の処理を実施することにより送信アンテナ24−1,24−2から送信する中継送信信号を生成する信号処理部22と、を備え、信号処理部22は、2機以上のAFからMSに送信される中継送信信号を表す送信信号行列を直交行列とし、かつ送信信号行列の要素がそれぞれS1またはS2のみを含むよう所定の処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送が行なわれる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスブロードバンドにおける高速大容量化の要求は日増しに大きくなっている。このような状況により、伝送容量を飛躍的に向上させるために、移動体通信、無線LAN(Local Area Network)等にMIMO伝送方式が導入されている。さらに柔軟なリソース制御が可能であり周波数選択性フェージングに対する耐性が強いという特徴を持つOFDM/OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing/Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式に、上記MIMO伝送方式を組み合わせたMIMO−OFDM/MIMO−OFDMA方式の検討が近年急速に進められている。OFDM/OFDMA方式では、システム帯域全体を複数周波数ブロックに分割し、各ブロックに対してデータを割り当てる。
【0003】
MIMO伝送は、2つの通信方式に分類される。1つは、使用無線リソース数よりも送信信号数が多い通信方式であり、伝送レートを効率的に向上できる。もう1つは、送信信号数が使用無線リソース数と等しいか使用無線リソース数以下であるRate=1とよばれる伝送を行なう通信方式であり、複数アンテナ送信の利点を活かして、時空間ダイバーシチを得ることができる。
【0004】
このような背景のなか、連続信号送信またはHARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)におけるロバーストなMIMO伝送方式として、SICC(Self-Interference Cancellation Coding)伝送方式が下記特許文献1で提案されている。SICC方式は、自己干渉可能なRate=1のMIMO信号伝送またはHARQ伝送方式として適用可能であり、自己干渉除去可能であるため、従来の方法であるChase Combiningと比較すると、その性能改善能力は大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/084207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のSICC伝送の技術によれば、送信機は、送信機と受信機との間で実現する空間ダイバーシチオーダーの数分送信アンテナを備える必要がある。そのため、高性能な伝送を実現するために空間ダイバーシチオーダーを増やすと、送信アンテナ設置スペースやRF(Radio Frequency)ポート数の増加に伴うコストの増大が発生し、低コストで高性能なSICC伝送方式を実現することは困難である、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、送信アンテナ数の増加を抑えつつ、高性能な伝送を実現することができる通信システム、中継機および通信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、送信機と、受信機と、前記送信機と前記受信機との間の通信を中継する2機以上の中継機と、を備える通信システムであって、前記送信機は、2本以上の送信アンテナと、送信信号を前記送信アンテナの本数に分割した分割送信信号を生成し、前記分割送信信号を時空間ブロック符号化または周波数空間ブロック符号化してブロック化信号として前記送信アンテナへそれぞれ出力するデータ分割部と、を備え、前記中継機は、1本以上の中継受信アンテナと、1本以上の中継送信アンテナと、前記中継受信アンテナから受信した前記ブロック化信号に対して所定の処理を実施することにより前記中継送信アンテナから送信する中継送信信号を生成する信号処理部と、を備え、前記信号処理部は、前記2機以上の中継装置から前記受信機に送信される前記中継送信信号を表す送信信号行列を直交行列とし、かつ前記送信信号行列の要素がそれぞれ単一の前記分割送信信号を含むよう前記所定の処理を実施する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送信アンテナ数の増加を抑えつつ、高性能な伝送を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施の形態1の通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、BSが備える送信機の機能構成例を示す図である。
【図3】図3は、AFの機能構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2の通信システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる通信システム、中継機および通信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる実施の形態1の通信システムの構成例を示す図である。図1に示すように本実施の形態の通信システムは、本実施の形態の送信機として機能するBS(Base Station)1と、BS1から送信された信号を中継する中継機であるAF(Amplifier and Forward)2−1,2−2と、AF2−1,2−2により中継されたBS1から送信された信号を受信する受信機であるMS(Mobile Station)3と、で構成される。なお、本実施の形態では、送信機を基地局(BS)とし、受信機を移動局(MS)として説明するが、送信機は基地局に限定されず、受信機も移動局に限定されない。
【0013】
図1に示すように、BS1は2本の送信アンテナを備え、各送信アンテナから互いに異なる信号を送信することができる。なお、本実施の形態では、BS1が備える送信アンテナを2本とする場合について説明するが、送信アンテナ数は3本以上であってもよい。
【0014】
AF2−1,2−2は、それぞれ送信アンテナおよび受信アンテナを2本ずつ備える。なお、ここでは送信アンテナおよび受信アンテナの例について説明するが、AF2−1,2−2が備える送信アンテナおよび受信アンテナの数は3本以上であってもよい。
【0015】
MS3は、1本の受信アンテナを備え、受信した信号に対して所定の復調処理を実施し、送信されたデータを取得する。なお、本実施の形態では、MS3が備える受信アンテナの数を1本とするが、2本以上であってもよい。
【0016】
図2は、BS1が備える送信機10の機能構成例を示す図である。送信機10は、FEC(Forward Error Correction)エンコード部11と、変調部12と、データ分配部13と、リソースマッピング部14−1,14−2と、ベースバンド/RF処理部15−1,15−2と、送信アンテナ16−1,16−2と、で構成される。
【0017】
FECエンコード部11は、例えばコアネットワーク経由等で上位機器等から入力されるデータであるユーザデータに対して、本実施の形態の通信システムで規定された(本実施の形態の通信システムで用いることがあらかじめ規定された)FEC種別に基づいてFECエンコードを実施し、エンコード結果をFECブロックとして変調部12へ出力する。
【0018】
変調部12は、FECブロックに対して、本実施の形態の通信システムで規定されたMCSM(Modulation and Coding Scheme)レベルの1次変調を行うことにより、信号コンスタレーションにマッピングされた変調データを生成してデータ分配部13へ出力する。
【0019】
データ分配部13は、変調データを、本実施の形態の通信システムで規定された方式に従ってシリアル−パラレル変換して、複数の変調データ(送信ストリーム)を生成する。ここでは、送信機10の送信アンテナが2本であることから、データ分配部13は、2つの変調データを生成し、一方をリソースマッピング部14−1へ、他方をリソースマッピング部14−2へ、それぞれ出力する。
【0020】
リソースマッピング部14−m(m=1,2)は、入力される変調データを無線リースに対して割当て(マッピングし)、マッピングの変調データ(マッピングデータ)をベースバンド/RF処理部15−mへ出力する。このマッピングの方法はどのような方法としてもよいが、例えば、OFDM/OFDMA伝送方式を用いる場合は、周波数方向と時間方向に連続な無線リソース領域に対して変調データが連続的に割当てられるような割当て方法が一般的に用いられる。
【0021】
ベースバンド/RF処理部15−mは、入力されたマッピングデータに対して所定の無線信号処理を施し、処理後の信号をRF帯に変換して送信アンテナ16−mを介して空中線として空間へ放射する。例えば、OFDM/OFDMA伝送方式の場合、この所定の無線信号処理として、マッピングデータに対してIFFT変換によって周波数軸信号から時間軸信号への変換が行なわれ、さらにGI(Guard Interval)信号を付加する処理等が実施される。
【0022】
なお、BS1の送信アンテナを3本以上とする場合には、データ分配部13は送信アンテナの数の変調データ(送信ストリーム)を生成することとし、リソースマッピング部およびベースバンド/RF処理部を送信アンテナごとに備えるようにする。
【0023】
図3は、本実施の形態のAF2−1,2−2が備える中継機20の機能構成例を示す図である。AF2−1,2−2が備える中継機20は、図3に示すように、それぞれ、受信アンテナ(中継受信アンテナ)21−1,21−2と、信号処理部22と、電力増幅部23−1,23−2と、送信アンテナ(中継送信アンテナ)24−1,24−2と、で構成される。
【0024】
AF2−1,2−2では、信号処理部22が、受信アンテナ21−1,21−2にて受信した受信信号に対して所定のアナログ信号処理を施すことにより2つの送信信号を生成する。そして、電力増幅部23−m(m=1,2)が、信号処理部22が生成した2つの信号をそれぞれ電力増幅し、電力増幅した信号を送信アンテナ24−m経由で、それぞれ空中線に放射する。
【0025】
なお、図3の構成例では、受信信号であるRF(Radio Frequency)信号に対して周波数変換を行なわずに、電力増幅およびアナログ信号処理を実施する方式であるが、RF信号をダウンコンバートして、IF信号やベースバンド信号に変換し、変換後の信号に対して電力増幅およびアナログ信号処理を施してもよい。また、AF2−1,2−2では変調信号を復調しないが、信号処理部22に入力される信号をAD(Analog−Digital)変換器によりデジタル信号に変換し、信号処理部22は、入力されたデジタル信号に対して所定の信号処理を行ってもよい。
【0026】
つぎに、本実施の形態の動作について説明する。本実施の形態のBS1では、データ分配部13が、送信アンテナ16−1,16−2からそれぞれ送信する送信信号を生成する。本実施の形態のBS1が送信する送信信号のベースバンド表現を、以下の式(1)に送信信号行列として示す。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、上記式(1)の行列S(太字)BSにおいて、行方向は送信アンテナ番号(例えば、送信アンテナ16−mのmを送信アンテナ番号とする)であり、列方向は、時間軸上に送信信号シンボルを割当てる場合には送信シンボル単位の時間方向、またはOFDMA/OFDM伝送を用いる場合は周波数方向(サブキャリア番号)でもよい。以降、列方向を送信信号シンボル方向とよぶこととする。また、*は、複素共役を表す。なお、上記式(1)は、ベースバンド信号の等価低域系であるため、Siは変調部12で一次変調された変調度に応じた信号コンスタレーションシンボルである。iは、送信信号コンスタレーションシンボル番号である。
【0029】
本実施の形態では、BS1は、上記式(1)に示すように、時空間ブロック符号化(STBC:Space Time Block Coding)または空間周波数ブロック符号化(SFBC:Space Frequency Block Coding)を用いて、L個の送信シンボルに基づいてL個(L列)の並列伝送信号を生成する。ここでは、L=2であり2つの送信シンボルS1,S2に基づいて、上記式(1)の行列S(太字)BSに示すような並列送信信号を生成する。BS1が備える送信アンテナの数が3本以上(L本)である場合には、同様に、STBCまたはSFBCを用いて、L個の送信シンボルに基づいてL個の並列伝送信号を生成する。
【0030】
BS1から送信された信号はAF2−1,2−2でそれぞれ受信される。BS1とAF2−1,2−2間のチャネル行列(伝送路行列)は、以下の式(2)で表すことができる。
【0031】
【数2】

【0032】
なお、H(太字)1は、BS1からAF2−1までのチャネル行列を表し、H(太字)2は、BS1からAF2−2までのチャネル行列を表す。また、行列H(太字)1内のh1_ijはBS1のj番目の送信アンテナからAF2−1のi番目の受信アンテナまでの伝送路係数であり、行列H(太字)2内のh2_ijはBS1のj番目の送信アンテナからAF2−2のi番目の受信アンテナまでの伝送路係数である。
【0033】
上記式(1)および式(2)より、AF2−1,2−2が受信する受信信号は以下の式(3)のようになる。
【0034】
【数3】

【0035】
ここで、R(太字)iは、AF2−iの受信信号行列を表し、R(太字)iの行方向は受信アンテナ番号を示し、列方向は送信シンボル方向を示す。また、ri_j(k)はAF2−iの受信アンテナ21−jのk番目の受信シンボル(例えばOFDMAシンボル)を示す。
【0036】
つぎに、図3に示したAF2−1,2−2の信号処理部22が実施する信号処理ついて説明する。AF2−1,2−2では、信号処理部22が受信信号に対して信号処理を施して各送信アンテナ24−1,24−2から送信する送信信号を生成し、それぞれ送信アンテナ24−1,24−2から送信する。また、BS1では、上記(1)で示したとおり送信シンボル方向に2回の再送が行なわれる(S1,S2を含む情報がそれぞれ2回または2つの周波数で送信される)が、AF2−1,2−2では、再送回数を4回とする。AF2−1のアンテナ24−1から送信する送信信号は、以下の式(4)で表すことができる。
【0037】
【数4】

【0038】
なお、wi_j(k)()は、信号処理部22が受信信号に対して、AF2−iの送信アンテナ24−jから送信するk番目のシンボルを生成するために施す処理を示す信号処理関数である。
【0039】
同様に、AF2−1のアンテナ24−2から送信する送信信号は以下の式(5)で、AF2−2のアンテナ24−1から送信する送信信号は以下の式(6)で、AF2−1のアンテナ24−2から送信する送信信号は以下の式(7)で、それぞれ表すことができる。
【0040】
【数5】

【0041】
【数6】

【0042】
【数7】

【0043】
なお、信号処理部22が実施する信号処理により生成する第1送目信号は、BS1から2送目の送信信号として送信された信号を用いるため、上記式(4)〜式(7)の1送目の信号は、BS1の2送目のシンボルを受信してから生成されるが、上記式(4)〜式(7)の2送目以降の送信信号もBS1の2送目のシンボルを受信した時点から生成可能である。
【0044】
以上の式(4)〜式(7)を全AF(AF2−1およびAF2−2)の送信信号行列として表すと式(8)のようになる。
【0045】
【数8】

【0046】
ここで、全AFの送信信号行列S(太字)AFの行方向は、AF2−1,2−2の各送信アンテナの番号に対応し、1行目と2行目はAF2−1の送信アンテナ24−1,24−2にそれぞれ対応し、3行目と4行目はAF2−2の送信アンテナ24−1,24−2にそれぞれ対応する。また、列方向は送信信号シンボル方向である。
【0047】
式(8)からわかるように、全AFの送信信号行列S(太字)AFは直交行列となる。言い換えると、本実施の形態では、式(8)で示したように全AFの送信信号行列S(太字)AFが直交行列となるように、wi_j(k)()を定めておく。なお、式(8)で示すように、全AFの送信信号行列S(太字)AFの各要素は、それぞれS1またはS2のみを含んでいる(S1とS2の両方を含む要素は無い)。したがって、wi_j(k)()としては、S(太字)BSをデコードするための関数(S1,S2を分離するための関数)を用いることができる。まとめると、wi_j(k)()は、S1,S2を分離するための関数であり、かつ全AFの送信信号行列S(太字)AFが直交行列となるような関数であればよい。wi__j(k)()は、送信信号上記の式(4)〜式(7)で示した関数に限らず、このような条件を満たす関数であればどのような関数を用いてもよい。
【0048】
つぎに、MS3の受信処理について説明する。AF2−1,2−2からMS3までのチャネル行列は、以下の式(9)で表すことができる。
【0049】
【数9】

【0050】
なおH(太字)AF1はAF2−1からMS3までのチャネル行列であり、H(太字)AF2はAF2−2からMS3までのチャネル行列である。また、H(太字)AF1内のhAF1_ijはAF2−1の送信アンテナ24−jからMS3のi番目の受信アンテナまでの伝送路係数であり、H(太字)AF2内のhAF2_ijはAF2−2の送信アンテナ24−jからMS3のi番目の受信アンテナまでの伝送路係数である。
【0051】
上記式(8)および(9)により、AF2−1,2−2からの送信信号をMS3が受信した場合の受信信号は、以下の式(10)に示すようになる。なお、簡単のために、ここではMS3内部で付加される雑音項を無視する。なお、OFDM伝送方式の場合、時間方向ではなく周波数方向にシンボルが割当てられる場合があるため、括弧内では周波数軸方向に割当てられた場合のOFDMのシンボル番号を示している。また、rMS_i(j)は、MS3のi番目の受信アンテナが受信したj番目(時間または周波数方向の番号)の信号である。
【0052】
【数10】

【0053】
MS3は、送信信号S1の復調するための復調処理として、上記の式(10)で示した受信信号を用いて、以下の式(11)〜式(13)に示す処理を実施する。
【0054】
【数11】

【0055】
【数12】

【0056】
【数13】

【0057】
また、MS3は、送信信号S1の復調するための復調処理として、上記の式(10)で示した受信信号を用いて、以下の式(14)〜式(16)に示す処理を実施する。
【0058】
【数14】

【0059】
【数15】

【0060】
【数16】

【0061】
上記の式(13)と式(16)を用いると、下記式(17)に示すように、BS1からの送信信号S1を復調処理することができる。
【0062】
【数17】

【0063】
さらに、送信信号S2を復調処理するために、上記式(11)と式(12)を用いて、式(18)に示すように受信信号を処理する。
【0064】
【数18】

【0065】
また、式(14)と式(15)を用いて、式(19)に示すように受信信号を処理する。
【0066】
【数19】

【0067】
上記の式(18)と式(19)を用いると、式(20)に示すようにBS1からの送信信号S2を復調処理できる。
【0068】
【数20】

【0069】
上記の式(17),式(20)に示すように、MS3は、BS1の送信信号S1,S2を復調処理することができ、ダイバーシチオーダー数4の利得を得ることができる。
【0070】
なお、ここではMS3の受信アンテナが1つの場合について説明したが、MS3が複数の受信アンテナを有する場合は、受信アンテナごとに上記と同様の処理を実施する。これにより、受信アンテナごとにMS1からの送信信号S1,S2を復調可能であり、さらに受信アンテナごとの復調結果を線形合成することで、最大比合成を行なうことができ、さらなる受信利得をえることができる。
【0071】
このように、本実施の形態では、BS1がSTBCまたはSFBC符号化した送信信号を送信し、AF2−1,2−2の信号処理部22が、BS1から受信した信号に対して、AF2−1,2−2から送信される信号についての送信信号行列が直交行列となるように送信信号を生成するようにした。そのため、送信機10を備えるBS1のアンテナ数の増加を抑えて、高性能な伝送を実現することができる。
【0072】
実施の形態2.
図4は、本発明にかかる実施の形態2の通信システムの構成例を示す図である。本実施の形態の通信システムは、実施の形態1のAF2−1,2−2をそれぞれAF2a−1,2a−2に代える以外は実施の形態1と同様である。
【0073】
実施の形態1では、AF2−1,2−2がそれぞれ2本の送信アンテナおよび受信アンテナを備えたが、本実施の形態のAF2a−1,2a−2は、それぞれ1本の送信アンテナおよび受信アンテナを備える。また、本実施の形態のAF2a−1,2a−2は、それぞれ信号処理部と電力増幅部とを備える。AF2a−1,2a−2では、信号処理部がBS1から受信した信号に対して所定の信号処理を実施する。そして、電力増幅部が、信号処理後の信号を送信アンテナから送信する。
【0074】
つぎに、本実施の形態の動作について説明する。BS1の構成および動作は、実施の形態1と同様であり、BS1が送信する送信信号は実施の形態1と同様である。
【0075】
BS1とAF2a−1,2a−2間の伝送路行列(チャネル行列)は、それぞれ以下の式(21)で表すことができる。なお、H(太字)1は、BS1から2a−1までのチャネル行列を表し、H(太字)2は、BS1から2a−2までのチャネル行列を表す。また、H(太字)1内のh1_ijは、BS1のj番目の送信アンテナからAF2a−1のi番目の受信アンテナまでの伝送路係数であり、H(太字)2内のh2_ijは、BS1のj番目の送信アンテナからAF2a−2のi番目の受信アンテナまでの伝送路係数である。
【0076】
【数21】

【0077】
したがって、AF2a−1,2a−2での受信信号は以下の式(22)で表すことがでできる。なお、R(太字)jは、AF2a−iの受信信号行列であり、行方向は受信アンテナ番号であり、列方向は送信シンボル方向である。また、ri_j(k)はAF2a−iのj番目の受信アンテナ(この場合は1つ)のk番目の受信シンボル(例えばOFDMAシンボル)を示す。
【0078】
【数22】

【0079】
つぎに、本実施の形態のAF2a−1,2a−2の信号処理部が実施する信号処理について説明する。本実施の形態の信号処理部は、以下の式(23)および式(24)に示すように、送信信号を生成して送信する。式(23)は、AF2a−1が送信する送信信号を示し、式(24)は、AF2a−2が送信する送信信号を示す。なお、信号処理関数wi_j(k)()は、本実施の形態の信号処理部が受信信号に基づいて送信信号を生成するための信号処理を示す関数であり、AF2a−iのj番目の送信アンテナから送信するk番目のシンボルを生成するために施す処理を示す信号処理関数である。
【0080】
【数23】

【0081】
【数24】

【0082】
以上の信号処理後の送信信号を、全AF(AF2a−1およびAF2a−2)の送信信号行列S(太字)AFとすると、S(太字)AFは、式(25)で表すことができる。なお、送信信号行列S(太字)AFの行方向はAF2a−1,2a−2の送信アンテナ番号であり、1行目はAF2a−1の送信アンテナ1番に対応し、2行目はAF2a−3の送信アンテナ1番に対応する。また、列方向は送信信号シンボル方向である。
【0083】
【数25】

【0084】
上記式(25)からわかるように、S(太字)AFは、直交行列となっている。また、式(23),式(24)からわかるように、AF2a−1では、S1を含む項のみ(S2を含まない)の送信信号を生成し、AF2a−2では、S2を含む項のみ(S1を含まない)の送信信号を生成している。言い換えると、AF2a−1,AF2a−2では、復号と再符号化を行なっていることになる。なお、上記の例と逆に、AF2a−1が、S2を含む項のみの送信信号を生成し、AF2a−2が、S1を含む項のみの送信信号を生成してもよい。すなわち、wi_j(k)()は、式(23),式(24)に示した関数に限らず、S(太字)AFが直交行列が直交行列となり、AF2a−1,2a−2の一方が、S1を含まない送信信号を生成し、他方がS2を含まない送信信号を生成するように定めておけばよい。
【0085】
つぎに、AF2a−1,2a−2からのMS3までの伝送路は、以下の式(26)で表すことができる。なお、H(太字)AF1はAF2a−1からMS3までのチャネル行列を示し、H(太字)AF2はAF2a−2からMS3までのチャネル行列を示す。また、H(太字)AF1内のhAF1_ijはAF2a−1のj番目の送信アンテナからMS3のi番目の受信アンテナまでの伝送路係数であり、H(太字)AF2内のhAF_ijはAF2a−2のj番目の送信アンテナからMS3のi番目の受信アンテナまでの伝送路係数である。
【0086】
【数26】

【0087】
以上の式(25)と式(26)を用いると、AF2a−1とAF2a−2からの送信信号に対するMS3の受信アンテナでの受信信号は、以下の式(27)で表すことができる。なお、簡単のために、ここではMS3の内部で付加される雑音項を無視する。rMS_i(j)は、MS3のi番目の受信アンテナのj番目の受信信号である。
【0088】
【数27】

【0089】
MS3では、送信信号S1とS2を復調処理するために、上記式(27)に示した受信信号を用いて、以下の式(28),式(29)に示すような処理を実施する。
【0090】
【数28】

【0091】
【数29】

【0092】
このようにして、MS3では、上記式(28),式29に示すように、BS1からの送信信号S1とS2を復調することができる。本実施の形態では、実施の形態1のようなダイバーシチ次数の改善はないが、AF2a−1,2a−2での信号処理(復号と再符号化)により、信号間干渉を除去することができ、高性能な伝送を実現できる。また、これにより、AF2a−1,2a−2の電力増幅部における入力電力量を削減でき、電力増幅部に求められる要求性能を緩和できる。
【0093】
なお、実施の形態1と同様に、MS3が複数の受信アンテナを備える場合は、受信アンテナごとに上記と同様の処理をして、受信信号ごとに送信信号S1,S2を復調することができる。そして、受信アンテナごとの復調結果を線形合成することで最大比合成となり、さらなる受信利得をえることができる。
【0094】
このように、本実施の形態では、AF2a−1,2a−2で、2種類の送信信号のうち一方を復号し、AF2a−1,2a−2の全体の送信信号行列が直交行列となるよう再符号化を行なうようにした。そのため、アンテナ数の増加を抑えて、信号間干渉を除去することができ、高性能な伝送を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明にかかる通信システム、中継機および通信方法は、MIMO伝送が行なわれる通信システムに有用であり、特に、中継機を備える通信システムに適している。
【符号の説明】
【0096】
1 BS
2−1,2−2,2a−1,2a−2 AF
3 MS
10 送信機
20 中継機
11 FECエンコード部
12 変調部
13 データ分配部
14−1,14−2 リソースマッピング部
15−1,15−2 ベースバンド/RF処理部
16−1,16−2 送信アンテナ
21−1,21−2 受信アンテナ
22 信号処理部
23−1,23−2 電力増幅部
24−1,24−2 送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と、受信機と、前記送信機と前記受信機との間の通信を中継する2機以上の中継機と、を備える通信システムであって、
前記送信機は、
2本以上の送信アンテナと、
送信信号を前記送信アンテナの本数に分割した分割送信信号を生成し、前記分割送信信号を時空間ブロック符号化または周波数空間ブロック符号化してブロック化信号として前記送信アンテナへそれぞれ出力するデータ分割部と、
を備え、
前記中継機は、
1本以上の中継受信アンテナと、
1本以上の中継送信アンテナと、
前記中継受信アンテナから受信した前記ブロック化信号に対して所定の処理を実施することにより前記中継送信アンテナから送信する中継送信信号を生成する信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、前記2機以上の中継装置から前記受信機に送信される前記中継送信信号を表す送信信号行列を直交行列とし、かつ前記送信信号行列の要素がそれぞれ単一の前記分割送信信号を含むよう前記所定の処理を実施する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記中継機は、
前記中継送信信号を増幅し、増幅後の信号を対応する前記送信アンテナへ出力する増幅部、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記中継受信アンテナの本数を2本とし、前記中継送信アンテナの本数を2本とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記中継受信アンテナの本数を1本とし、前記中継送信アンテナの本数を1本とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項5】
前記受信機は、
複数の受信アンテナ、
を備え、
前記受信アンテナごとに、前記送信信号を復調し、前記受信アンテナごとの復調結果を用いて最大比合成を行なう、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項6】
送信機と、受信機と、前記送信機と前記受信機との間の通信を中継する2機以上の中継機と、を備える通信システムにおける前記中継機であって、
1本以上の中継受信アンテナと、
1本以上の中継送信アンテナと、
前記中継受信アンテナで受信した、時空間ブロック符号化または周波数空間ブロック符号化して送信されたブロック化信号に対して、所定の処理を実施することにより前記中継送信アンテナから送信する中継送信信号を生成する信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、前記2機以上の中継装置から前記受信機に送信される前記中継送信信号を表す送信信号行列を直交行列とし、かつ前記送信信号行列の要素がそれぞれ単一の前記分割送信信号を含むよう前記所定の処理を実施する、
ことを特徴とする中継機。
【請求項7】
送信機と、受信機と、前記送信機と前記受信機との間の通信を中継する2機以上の中継機と、を備える通信システムにおける通信方法であって、
前記送信機が、送信信号を前記送信アンテナの本数に分割した分割送信信号を生成し、前記分割送信信号を時空間ブロック符号化または周波数空間ブロック符号化してブロック化信号として前記送信アンテナへそれぞれ出力するデータ送信ステップと、
前記中継機が、中継受信アンテナから受信した前記ブロック化信号に対して所定の処理を実施することにより前記中継送信アンテナから送信する中継送信信号を生成する信号処理ステップと、
を含み、
前記信号処理ステップでは、前記2機以上の中継装置から前記受信機に送信される前記中継送信信号を表す送信信号行列を直交行列とし、かつ前記送信信号行列の要素がそれぞれ単一の前記分割送信信号を含むよう前記所定の処理を実施する、
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−5046(P2012−5046A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140642(P2010−140642)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】