説明

通信システム、基地局、及び通信方法

【課題】通信規制状態において、基地局の負担を抑制するとともに、緊急の場合、通信相手に対して最小限の連絡をすることができる通信システム、基地局、及び通信方法を提供すること。
【解決手段】通信システム1の基地局10は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により携帯電話機20から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、所定の宛先に携帯電話機20からの発呼を示す発呼要求情報を送信させ、この発呼要求に基づく携帯電話機20との通信を切断する第2制御部28を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、基地局、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末装置が普及したことに伴い、携帯端末装置が様々な場面における連絡手段として使用されている。例えば、新年の挨拶や、祭りや、花火大会等のイベントにおける連絡の手段として、携帯端末装置が使用されているが、この場合、同一の時間帯に多数のユーザにより携帯端末装置が使用されるので、通信ネットワークにおけるトラヒックが増大し、通信ネットワークに輻輳が発生するおそれがある。このような場合、携帯端末装置の基地局は、携帯端末装置からの通信を規制する。このため、通信規制状態においては、携帯端末装置から緊急呼を発信しても、通信接続が行われるまでに時間を要したり、通信接続が行われなかったりして、速やかに緊急連絡ができないおそれがある。
【0003】
このような問題に対応するために、特許文献1では、通信ネットワークの輻輳等により通信が規制されている場合に、緊急呼が発信されたとき、緊急電話番号として登録された電話番号以外でも優先度を上げて発信を可能にする携帯端末装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−358274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案された携帯端末装置は、通信ネットワークの輻輳が発生している状況において発信を可能にしても、通信ネットワークの輻輳により、確実に緊急連絡先に発信を行うことができない。よって、特許文献1で提案された携帯端末装置は、このような状況において、緊急連絡先に最小限の連絡ができないおそれがある。更に、特許文献1で提案された携帯端末装置では、通信ネットワークの輻輳が発生している状況において、緊急電話番号として登録された電話番号以外でも優先度を上げて発信を可能にするので、この通信ネットワークに設けられている基地局にかかる負荷を増大させるおそれがある。
【0006】
本発明は、通信規制状態において、基地局の負担を抑制するとともに、緊急の場合、通信相手に対して最小限の連絡をすることができる通信システム、基地局、及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信システムは、基地局と、通信ネットワークを介して前記基地局と通信を行う携帯端末装置とを備える通信システムであって、前記基地局は、前記携帯端末装置と通信を行う第1通信部と、前記携帯端末装置による通信を規制する規制部と、前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記携帯端末装置から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、当該所定の宛先に前記携帯端末装置からの発呼を示す発呼要求情報を送信させ、前記発呼要求に基づく前記携帯端末装置との通信を切断する第1制御部と、を備える。
【0008】
また、前記第1制御部は、前記第1通信部により前記発呼要求を受信した場合、前記携帯端末装置に前記発呼要求に基づく通信を切断する切断要求を送信させ、前記携帯端末装置は、前記基地局と通信を行う第2通信部と、前記第2通信部により前記基地局から前記切断要求を受信した場合に、前記基地局との通信を切断させる第2制御部と、を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記第1制御部は、前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記発呼要求を受信した際に、当該発呼要求が緊急発呼要求であるかを判定し、前記発呼要求が緊急発呼要求である場合、前記第1通信部に前記所定の宛先に対して前記発呼要求情報を送信させ、前記発呼要求が緊急発呼要求でない場合、前記第1通信部に当該所定の宛先に対して前記発呼要求情報を送信させないことが好ましい。
【0010】
また、前記第1制御部は、前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記発呼要求を受信した際に、当該発呼要求が緊急発呼要求であるか否かにかかわらず、前記携帯端末装置に前記切断要求を送信させることが好ましい。
【0011】
また、前記第1制御部は、前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記発呼要求であるオリジネーションメッセージを受信した際に、前記携帯端末装置に前記切断要求であるリリースオーダーを送信させることが好ましい。
【0012】
また、前記第1制御部は、前記発呼要求に含まれる前記所定の宛先である電話番号を利用して、前記第1通信部に、ショートメッセージサービス(SMS)により前記発呼要求情報を送信させることが好ましい。
【0013】
また、前記基地局は、特定の宛先を示す特定宛先情報を記憶する第1記憶部を更に備え、前記第1制御部は、前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記発呼要求を受信した際に、前記所定の宛先が前記特定の宛先であるかを判定し、当該所定の宛先が前記特定の宛先であると判定した場合、前記第1通信部により前記切断要求を送信させず、前記携帯端末装置と当該所定の宛先との通信を接続することが好ましい。
【0014】
また、前記携帯端末装置は、前記発呼要求の入力を受け付ける入力部と、前記入力部により前記発呼要求の入力を受け付けた場合、所定の条件に基づいて、前記第2通信部による前記発呼要求の送信を規制する送信規制部と、を更に備え、前記所定の条件は、前記発呼要求が緊急発呼要求の場合、前記発呼要求が非緊急発呼要求の場合に比べて満たし易い条件であることが好ましい。
【0015】
また、前記携帯端末装置は、前記発呼要求の送信を許可するか否かを決定するパーシステンステスト(Persistence Test)の合格率を示す確率情報を記憶する第2記憶部を更に備え、前記送信規制部は、前記基地局から前記通信規制状態を示す規制信号及び前記確率情報を受信すると、前記第2記憶部に前記確率情報を記憶させ、前記通信規制状態において、前記入力部により前記発呼要求の入力を受け付けた場合、前記確率情報に基づいて、前記パーシステンステストを実施し、前記パーシステンステストの結果に基づいて前記第2通信部による前記発呼要求の送信を規制し、前記発呼要求が緊急発呼要求の場合の前記合格率は、前記発呼要求が非緊急発呼要求の場合の前記合格率に比べて高いことが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る基地局は、複数の携帯端末装置間の通信に使用される通信ネットワークに設けられる基地局であって、前記携帯端末装置と通信を行う通信部と、前記携帯端末装置による通信を規制する規制部と、前記規制部による通信規制状態において、前記通信部により前記携帯端末装置から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、当該所定の宛先に対して前記携帯端末装置からの発呼を示す発呼要求情報を送信させ、前記発呼要求に基づく前記携帯端末装置との通信を切断する制御部と、を備える。
【0017】
また、本発明に係る通信方法は、基地局と、通信ネットワークを介して前記基地局と通信を行う携帯端末装置とを備える通信システムにおいて実行される通信方法であって、前記基地局は、前記携帯端末装置による通信を規制するステップと、前記規制するステップにおいて通信規制状態とされた際に、前記携帯端末装置から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、当該所定の宛先に対して前記携帯端末装置からの発呼を示す発呼要求情報を送信し、前記発呼要求に基づく前記携帯端末装置との通信を切断するステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通信規制状態において、基地局の負担を抑制するとともに、緊急の場合、通信相手に対して最小限の連絡をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る基地局と、携帯電話機との機能構成を示すブロック図である。
【図3】通信規制状態において、従来の携帯電話機が発呼要求を送信してから通信が切断されるまでの従来の処理の流れを示すシーケンス図である。
【図4】通信規制状態において、本実施形態に係る携帯電話機が発呼要求を送信してから通信が切断されるまでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【図5】本実施形態に係る規制部による通信規制状態における、携帯電話機及び基地局の発呼要求に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る通信システム1の構成を示す図である。
通信システム1は、複数の基地局10と、複数の携帯端末装置としての携帯電話機20と、を備える。複数の基地局10は、交換機、電話回線、インターネット等により構成されている通信ネットワークNを介して接続されており、通信ネットワークNが輻輳状態又は輻輳状態に近い状態である場合に、通信規制を行い、携帯電話機20の通信を制御する。複数の携帯電話機20は、複数の基地局10、及び通信ネットワークNを介して、互いに通信を行う。
【0022】
図2は、本実施形態に係る基地局10と、携帯電話機20との機能構成を示すブロック図である。
【0023】
基地局10は、第1通信部15と、第1記憶部16と、規制部17と、第1制御部18と、を備える。
【0024】
第1通信部15は、所定の使用周波数帯(例えば、2GHz帯や800MHz帯等)で携帯電話機20と通信を行う。具体的には、第1通信部15は、この使用周波数帯において、所定数設けられているチャネルのうち、いずれかのチャネルを用いて、携帯電話機20と通信を行う。また、第1通信部15は、通信ネットワークNを介して、他の基地局10と通信を行う。
【0025】
第1記憶部16は、特定の宛先を示す特定宛先情報を記憶する。特定の宛先は、例えば、警察、消防等の公共の緊急連絡先の電話番号である。
【0026】
規制部17は、通信ネットワークNが輻輳状態又は輻輳状態に近い状態である場合に、携帯電話機20による通信を規制する。
具体的には、規制部17は、第1通信部15において使用されているチャネルの数を監視し、使用されているチャネルが所定数以上に達した場合、通信ネットワークNが輻輳状態又は輻輳状態に近い状態であると判定する。また、規制部17は、第1通信部15を介して、基地局10と直接接続されている通信ネットワークN上の交換機が輻輳状態であるか否かを判定し、この交換機が輻輳状態である場合、通信ネットワークNが輻輳状態であると判定する。
【0027】
第1制御部18は、基地局10の全体を制御しており、例えば、第1通信部15等に対して所定の制御を行う。また、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、携帯電話機20との通信制御を行う。第1制御部18の詳細な機能については後述する。
【0028】
携帯電話機20は、表示部21と、入力部としての操作部22と、入力部としての緊急操作部23と、音声部24と、第2通信部25と、第2記憶部26と、第2制御部及び送信規制部としての第2制御部28と、を備える。
【0029】
表示部21は、第2制御部28の制御に従って、所定の画像処理を行い、処理後の画像データをフレームメモリ(図示省略)に蓄え、所定のタイミングでディスプレイに出力する。
【0030】
操作部22は、各種設定機能、電話帳機能、メール機能、ショートメッセージ機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン、電話番号の数字や、メールやショートメッセージの文字等を入力するための入力操作ボタン、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン等から構成される。また、ユーザから発呼要求やメール送信等の各種指示入力を操作部22により受け付け、受け付けられた入力情報は、第2制御部28へ供給される。
【0031】
緊急操作部23は、緊急発呼要求の入力を受け付ける入力操作ボタン等から構成される。また、ユーザから緊急発呼要求の入力を緊急操作部23により受け付けたことに応じて、受け付けられた入力情報は、第2制御部28へ供給される。なお、緊急操作部23の例として、防犯ブザー等がある。
【0032】
音声部24は、第2制御部28の制御に従って、第2通信部25から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をスピーカ(図示せず)に出力する。また、音声部24は、第2制御部28の制御に従って、マイク(図示せず)から入力された信号を処理し、処理後の信号を第2通信部25へ出力する。
【0033】
第2通信部25は、所定の使用周波数帯(例えば、2GHz帯や800MHz帯等)で外部装置(基地局10)と通信を行う。そして、第2通信部25は、アンテナ(図示せず)より受信した信号を復調処理し、処理後の信号を第2制御部28に供給する。また、第2通信部25は、第2制御部28から供給された信号を変調処理し、外部装置(基地局10)に送信する。
【0034】
第2記憶部26は、例えば、ワーキングメモリを含み、第2制御部28による演算処理に利用される。また、第2記憶部26は、本実施形態に係る各種情報、プログラム、テーブル等を記憶する。
【0035】
具体的には、第2記憶部26は、緊急電話番号を記憶する。この緊急電話番号は、例えば、警察、消防等の公共の緊急連絡先、及び携帯電話機20のユーザの保護者等の私的な緊急連絡先である。私的な緊急連絡先は、携帯電話機20のユーザが適宜設定可能である。
また、第2記憶部26は、操作部22又は緊急操作部23による発呼要求の入力を受け付けた際に実行されるパーシステンステスト(Persistence Test)の合格率を示す確率情報を記憶する。ここで、パーシステンステストとは、発呼要求を許可するか否かを決定するテストをいう。なお、第2記憶部26は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0036】
第2制御部28は、携帯電話機20の全体を制御しており、例えば、表示部21、音声部24、第2通信部25等に対して所定の制御を行う。また、第2制御部28は、操作部22、緊急操作部23等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。また、第2制御部28は、処理実行の際には、第2記憶部26を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、並びにデータの書き込みを行う。また、第2制御部28は、基地局10の規制部17による通信規制状態において、携帯電話機20の通信制御を行う。第2制御部28の詳細な機能については後述する。
【0037】
本実施形態に係る通信システム1では、上述したように、通信規制状態において、第1制御部18及び第2制御部28が携帯電話機20の通信制御を行う。以下に、第1制御部18及び第2制御部28の動作について説明する。
【0038】
第2制御部28は、操作部22により発呼要求の入力を受け付けた場合、及び緊急操作部23により緊急発呼要求の入力を受け付けた場合、所定の条件に基づいて、第2通信部25による発呼要求の送信を規制する。ここで、所定の条件は、発呼要求が緊急発呼要求の場合、発呼要求が非緊急発呼要求の場合に比べて満たし易い条件である。
【0039】
具体的には、第2制御部28は、基地局10から通信規制状態を示す規制信号及び確率情報を受信すると、第2記憶部26に確率情報を記憶させる。
続いて、第2制御部28は、通信規制状態において、操作部22により発呼要求の入力を受け付けた場合、及び緊急操作部23により緊急発呼要求の入力を受け付けた場合、第2通信部25によりパーシステンステストを実施する。すなわち、第2制御部28は、発呼要求及び緊急発呼要求を受け付けた場合、第2記憶部26に記憶されている確率情報に基づいてパーシステンステストを実施し、このパーシステンステストの結果に基づいて、第2通信部25による発呼要求の送信を規制する。なお、発呼要求が緊急発呼要求の場合の合格率は、基地局10により発呼要求が非緊急発呼要求の場合の合格率に比べて高く設定されている。
【0040】
つまり、第2制御部28は、パーシステンステストに合格したと判定した場合、第2通信部25により発呼要求又は緊急発呼要求を行う。第2制御部28は、緊急操作部23により緊急発呼要求の入力を受け付けた場合、第2通信部25に緊急呼扱いとして発呼要求を送信させる。発呼要求は、この発呼要求を行った携帯電話機20の宛先(電話番号)と、所定の宛先(電話番号)と、この発呼要求が緊急発呼要求であるか否かを区別する緊急発呼要求フラグとを含んで構成されている。
【0041】
続いて、第2制御部28は、緊急操作部23により緊急発呼要求の入力を受け付けた場合、発呼要求に含まれている緊急発呼要求フラグをONにして、発呼要求を送信する。なお、第2制御部28は、操作部22により発呼要求の入力を受け付けた場合、発呼要求に含まれている緊急発呼要求フラグをOFFにして、発呼要求を送信する。
【0042】
続いて、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により携帯電話機20から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、この所定の宛先に、携帯電話機20からの発呼を示す発呼要求情報を送信させ、発呼要求に基づく携帯電話機20との通信を切断する。
また、第1制御部18は、第1通信部15により発呼要求を受信した場合、携帯電話機20に発呼要求に基づく通信を切断する切断要求を送信させる。
【0043】
具体的には、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により発呼要求を受信した際に、この発呼要求が緊急発呼要求であるか否かを判定する。すなわち、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により発呼要求を受信した際に、発呼要求に含まれる緊急発呼要求フラグがONであるか否かを判定し、この緊急発呼要求フラグがONの場合に、緊急発呼要求であると判定する。第1制御部18は、発呼要求が緊急発呼要求である場合、第1通信部15に所定の宛先に対して発呼要求情報を送信させる。
【0044】
より具体的には、第1制御部18は、発呼要求に含まれている所定の宛先である電話番号を利用して、第1通信部15に、ショートメッセージ機能(ショートメッセージサービス:SMS)により発呼要求情報を所定の宛先に送信させる。ショートメッセージの内容には、例えば、「090−XXXX−XXXXから緊急発呼がありました。」というように、緊急発呼要求を行った携帯電話機20の宛先としての電話番号を含む。また、発呼要求情報を受信した他の携帯電話機20において、電話帳機能を使用して、ショートメッセージの内容に含まれる電話番号を、この電話番号に対応するユーザ名に変換したり、対応付けたりして、ショートメッセージを表示させるようにしてもよい。
【0045】
また、第1制御部18は、発呼要求が緊急発呼要求ではない場合、第1通信部15に所定の宛先に対して発呼要求情報を送信させない制御を行う。
【0046】
また、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により発呼要求を受信した際に、この発呼要求が緊急発呼要求であるか否かにかかわらず、携帯電話機20に切断要求を送信させる。
【0047】
続いて、第2制御部28は、第2通信部25により基地局10から切断要求を受信した場合に、基地局10との通信を切断させる。なお、第2制御部28は、この切断要求を受信できなかった場合、一定時間経過後に、タイムアウトとして第2通信部25による基地局10との通信を切断させる。
【0048】
なお、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により発呼要求を受信した際に、この発呼要求が緊急発呼要求であるか否かにかかわらず、携帯電話機20に切断要求を送信させることとしたが、これに限らない。
【0049】
例えば、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により発呼要求を受信した際に、所定の宛先が、第1記憶部16に記憶されている特定の宛先(緊急電話番号)であるか否かを判定し、所定の宛先が特定の宛先であると判定した場合、第1通信部15により切断要求を送信させず、携帯電話機20と所定の宛先との通信を接続するようにしてもよい。また、第1制御部18は、所定の宛先が第1記憶部16に記憶されている特定の宛先ではないと判定した場合に、携帯電話機20に切断要求を送信するようにしてもよい。
【0050】
このようにすることで、第1制御部18は、輻輳の原因となり得る不要な発呼要求について切断し、緊急性が高い発呼要求のみ接続するので、基地局の負担を抑制し、輻輳の解消を促進することができる。
【0051】
[処理フロー]
続いて、図3を参照して、従来の携帯電話機と基地局とにおける発呼要求から切断要求までの処理の流れについて説明する。
図3は、通信規制状態において、従来の携帯電話機が発呼要求を送信してから通信が切断されるまでの従来の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0052】
ステップS1において、携帯電話機は、アクセスチャネルを介して、オリジネーションメッセージ(Origination Message)を基地局に送信する。
ステップS2において、基地局は、トラヒックチャネルをセットアップし、基地局認知指令(Base Station Acknowledgement Order)を携帯電話機に送信し、ステップS3において、(拡張)チャネル割当メッセージ((Extended) Channel Assignment Message)を携帯電話機に送信する。
【0053】
ステップS4において、携帯電話機は、トラヒックチャネルプリアンブル(Traffic Channel Preamble)を基地局に送信する。
ステップS5において、基地局は、基地局認知指令を携帯電話機に送信し、ステップS6において、携帯電話機は、携帯機認知指令(Mobile Station Acknowledgement Order)を基地局に送信する。
【0054】
ステップS7において、基地局は、サービス接続メッセージ(Service Connect Message)を携帯電話機に送信し、ステップS8において、携帯電話機は、サービス接続完了メッセージ(Service Connect Completion Message)を基地局に送信する。
【0055】
ステップS9において、基地局は、通信ネットワークNが通信規制状態であることから、インフォメーションメッセージ(Flash with Information Message)によって、通信を切断する旨のメッセージ(Infomation Record = Release)を携帯電話機に送信する。
【0056】
ステップS10では、携帯電話機は、切断要求であるリリースオーダー(Release Order)を基地局に送信し、更に、基地局から、携帯電話機に対してリリースオーダー(Release Order)を送信することで、互いに通信の切断を行う。
【0057】
このように、従来の処理では、ステップS1からステップS8の処理で、サービスの接続を行ってから、通信の切断を行うため、例え切断処理を行う場合であっても、基地局における負荷は多大なものとなる。
【0058】
続いて、図4を参照して、本実施形態に係る携帯電話機20と基地局10とにおける発呼要求から切断要求までの処理の流れについて説明する。
図4は、通信規制状態において、本実施形態に係る携帯電話機20が発呼要求を送信してから通信が切断されるまでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【0059】
ステップS21において、携帯電話機20は、発呼要求であるオリジネーションメッセージ(Origination Message)を、アクセスチャネルを介して基地局10に送信する。
ステップS22において、基地局10は、トラヒックチャネルのセットアップを行わずに、アクセスチャネルに係るメッセージを基地局認知指令(Base Station Acknowledgement Order)として、携帯電話機20に送信する。
【0060】
ステップS23において、基地局10は、携帯電話機20に発呼要求に対する切断要求(Release Order)を送信する。続いて、携帯電話機20は、切断要求を受信し、基地局10との通信を切断する。
【0061】
なお、基地局10は、この切断要求の後に、携帯電話機20に情報を送信しないので、携帯電話機20の第2制御部28は、この切断要求を受信できなかった場合、一定時間経過後に、タイムアウトとして第2通信部25による通信を切断させる。
【0062】
このように、本実施形態では、従来例のように、サービスの接続を行わずに、リリースオーダーを送信して通信の切断を行うため、基地局10における負荷を抑制することができる。
【0063】
続いて、図5を参照して、基地局10及び携帯電話機20に係る処理の流れについて説明する。
図5は、本実施形態に係る規制部17による通信規制状態における、携帯電話機20及び基地局10の発呼要求に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、発呼要求に含まれている緊急発呼要求フラグの初期値は、OFFに設定されるものとする。また、携帯電話機20は、基地局10から規制信号及び確率情報を受信しているものとする。
【0064】
ステップS101において、第2制御部28は、操作部22及び緊急操作部23により発呼要求の入力を受け付けたか否かを判定する。第2制御部28は、この判定がYESの場合、ステップS102に処理を移し、この判定がNOの場合、ステップS101の処理を再実行する。
【0065】
ステップS102において、第2制御部28は、発呼要求が緊急操作部23によるものか否かを判定する。第2制御部28は、この判定がYESの場合、ステップS103に処理を移し、この判定がNOの場合、ステップS105に処理を移す。
【0066】
ステップS103において、第2制御部28は、基地局10から受信した確率情報に基づいて、第2記憶部26に記憶されている合格率を非緊急発呼要求の場合とは異なる値に設定する。なお、発呼要求に係る通話が終了した場合や、発呼要求が切断された場合、第2制御部28は、合格率を元の値に戻す設定をする。
ステップS104において、第2制御部28は、緊急発呼要求フラグをONに設定する。
【0067】
ステップS105において、第2制御部28は、第2記憶部26に記憶されている確率情報(合格率)に基づいてパーシステンステストを実行する。
ステップS106において、第2制御部28は、ステップS105において実行されたパーシステンステストに合格したか否かを判定する。第2制御部28は、この判定がYESの場合、処理をステップS107に移し、この判定がNOの場合、処理をステップS105に移す。
【0068】
ステップS107において、第2制御部28は、第2通信部25に、基地局10に対して発呼要求(オリジネーションメッセージ)を送信させる。
ステップS108において、第1制御部18は、第1通信部15により、携帯電話機20から所定の宛先への発呼要求(オリジネーションメッセージ)を受信する。
【0069】
ステップS109において、第1制御部18は、ステップS108において受信した発呼要求が緊急発呼要求であるか否かを判定する。具体的には、第1制御部18は、この発呼要求に含まれている緊急発呼要求フラグに基づいて、発呼要求が緊急発呼要求であるか否かを判定する。第1制御部18は、この判定がYESの場合、処理をステップS110に移し、この判定がNOの場合、処理をステップS113に移す。
【0070】
ステップS110において、第1制御部18は、ステップS108において受信した発呼要求に含まれる所定の宛先が緊急電話番号か否かを判定する。具体的には、第1制御部18は、ステップS108において受信した発呼要求に含まれる所定の宛先が、第1記憶部16に記憶されている特定の宛先であるか否かを判定する。第1制御部18は、この判定がYESの場合、処理をステップS111に移し、この判定がNOの場合、処理をステップS112に移す。
【0071】
ステップS111において、第1制御部18は、携帯電話機20と、この発呼要求に対応する所定の宛先との通信を接続する。この処理が完了すると、本フローチャートに係る処理を終了する。すなわち、携帯電話機20は、通話可能状態となる。
【0072】
ステップS112において、第1制御部18は、発呼要求情報を、ショートメッセージ機能(ショートメッセージサービス)を使用して、第1通信部15により所定の宛先に送信させる。
【0073】
ステップS113において、第1制御部18は、携帯電話機20に切断要求(リリースオーダー)を送信する。
【0074】
ステップS114において、第2制御部28は、基地局10から切断要求(リリースオーダー)を受信する。
ステップS115において、第2制御部28は、ステップS114において、切断要求(リリースオーダー)を受信したことに応じて、基地局10との通信を切断する。
【0075】
以上のように、本実施形態の通信システム1によれば、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により携帯電話機20から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、所定の宛先に携帯電話機20からの発呼を示す発呼要求情報を送信させ、この発呼要求に基づく携帯電話機20との通信を切断する。
よって、通信システム1の基地局10は、携帯電話機20から受信した発呼要求に基づいて携帯電話機20との通信を切断するので、通信規制状態において、基地局の負担を抑制することができる。更に、携帯電話機20との通信を切断するので、輻輳状態又は輻輳状態に近い状態から回復させて、緊急の場合に、通信相手に対して最小限の連絡をすることができる。
【0076】
また、本実施形態の通信システム1によれば、第1制御部18は、携帯電話機20に発呼要求に対する切断要求を送信させる。また、第2制御部28は、基地局10から切断要求を受信した場合に、基地局10との通信を切断させる。
【0077】
よって、通信システム1は、携帯電話機20による通信を制御するとともに、所定の宛先に対して発呼を示す発呼要求情報を送信することができるので、通信規制状態において、基地局の負担を抑制するとともに、携帯電話機20の負担を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態の通信システム1によれば、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により発呼要求を受信した際に、当該発呼要求が緊急発呼要求であるかを判定し、発呼要求が緊急発呼要求である場合、第1通信部15に所定の宛先に対して発呼要求情報を送信させ、発呼要求が緊急発呼要求でない場合、第1通信部15に前記所定の宛先に対して前記発呼要求情報を送信させない。
【0079】
よって、通信システム1は、発呼要求が緊急発呼要求である場合に限定して、所定の宛先に対して発呼要求情報を送信させるので、不要な発呼要求に対する発呼要求情報の送信を抑制し、更に、基地局10の負担を抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態の通信システム1によれば、第1制御部18は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により発呼要求を受信した際に、この発呼要求が緊急発呼要求であるか否かにかかわらず、携帯電話機20に切断要求を送信させる。このようにすることで、通信システム1では、携帯電話機20による通信を切断することができるので、通信規制状態における通信を抑制し、通信ネットワークNの輻輳の解消を促進することができる。
【0081】
また、本実施形態の通信システム1によれば、基地局10は、規制部17による通信規制状態において、第1通信部15により発呼要求であるオリジネーションメッセージを受信した際に、携帯電話機20に切断要求であるリリースオーダーを第1通信部15に送信させる。よって、通信システム1では、サービスの接続を行わずに、リリースオーダーを送信して通信の切断を行うため、基地局10における負荷を抑制することができ、携帯電話機20の負担を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態の通信システム1によれば、第1制御部18は、第1通信部15により、ショートメッセージサービスを使用して発呼要求情報を送信させる。よって、通信システム1は、既存の技術を利用して、簡易的に発呼要求情報を送信することができる。
【0083】
また、本実施形態の通信システム1によれば、第2制御部28は、操作部22により発呼要求を受け付けた場合、又は緊急操作部23により緊急発呼要求を受け付けた場合、所定の条件に基づいて、第2通信部25による発呼要求の送信を規制する。更に、所定の条件は、発呼要求が緊急発呼要求の場合、発呼要求が非緊急発呼要求の場合に比べて満たし易い条件である。よって、通信システム1では、緊急発呼要求の場合、非緊急発呼要求の場合よりも規制されにくい状態としつつ、携帯電話機20側において通信規制状態における通信を抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態の通信システム1によれば、第2制御部28は、発呼要求が緊急発呼要求である場合のパーシステンステストの合格率を、非緊急発呼要求の合格率より高く設定する。よって、通信システム1では、携帯電話機20は、発呼要求が緊急発呼要求である場合に、非緊急発呼要求の場合に比べてパーシステンステストに合格しやすいので、緊急発呼要求を優先的に基地局10に送信させることができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
1 通信システム
10 基地局
15 第1通信部(通信部)
16 第1記憶部
17 規制部
18 第1制御部(制御部)
20 携帯電話機(携帯端末装置)
22 操作部(入力部)
23 緊急操作部(入力部)
25 第2通信部(通信部)
26 第2記憶部
28 第2制御部(通信規制部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、通信ネットワークを介して前記基地局と通信を行う携帯端末装置とを備える通信システムであって、
前記基地局は、
前記携帯端末装置と通信を行う第1通信部と、
前記携帯端末装置による通信を規制する規制部と、
前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記携帯端末装置から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、当該所定の宛先に前記携帯端末装置からの発呼を示す発呼要求情報を送信させ、前記発呼要求に基づく前記携帯端末装置との通信を切断する第1制御部と、を備える通信システム。
【請求項2】
前記第1制御部は、
前記第1通信部により前記発呼要求を受信した場合、前記携帯端末装置に前記発呼要求に基づく通信を切断する切断要求を送信させ、
前記携帯端末装置は、
前記基地局と通信を行う第2通信部と、
前記第2通信部により前記基地局から前記切断要求を受信した場合に、前記基地局との通信を切断させる第2制御部と、を備える請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1制御部は、
前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記発呼要求を受信した際に、当該発呼要求が緊急発呼要求であるかを判定し、前記発呼要求が緊急発呼要求である場合、前記第1通信部に前記所定の宛先に対して前記発呼要求情報を送信させ、前記発呼要求が緊急発呼要求でない場合、前記第1通信部に当該所定の宛先に対して前記発呼要求情報を送信させない請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記第1制御部は、
前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記発呼要求を受信した際に、当該発呼要求が緊急発呼要求であるか否かにかかわらず、前記携帯端末装置に前記切断要求を送信させる請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記第1制御部は、
前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記発呼要求であるオリジネーションメッセージを受信した際に、前記携帯端末装置に前記切断要求であるリリースオーダーを送信させる請求項2から4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記第1制御部は、
前記発呼要求に含まれる前記所定の宛先である電話番号を利用して、前記第1通信部に、ショートメッセージサービス(SMS)により前記発呼要求情報を送信させる請求項2から5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記基地局は、
特定の宛先を示す特定宛先情報を記憶する第1記憶部を更に備え、
前記第1制御部は、
前記規制部による通信規制状態において、前記第1通信部により前記発呼要求を受信した際に、前記所定の宛先が前記特定の宛先であるかを判定し、当該所定の宛先が前記特定の宛先であると判定した場合、前記第1通信部により前記切断要求を送信させず、前記携帯端末装置と当該所定の宛先との通信を接続する請求項2から5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記携帯端末装置は、
前記発呼要求の入力を受け付ける入力部と、
前記入力部により前記発呼要求の入力を受け付けた場合、所定の条件に基づいて、前記第2通信部による前記発呼要求の送信を規制する送信規制部と、を更に備え、
前記所定の条件は、前記発呼要求が緊急発呼要求の場合、前記発呼要求が非緊急発呼要求の場合に比べて満たし易い条件である請求項2又は3に記載の通信システム。
【請求項9】
前記携帯端末装置は、
前記発呼要求の送信を許可するか否かを決定するパーシステンステスト(Persistence Test)の合格率を示す確率情報を記憶する第2記憶部を更に備え、
前記送信規制部は、
前記基地局から前記通信規制状態を示す規制信号及び前記確率情報を受信すると、前記第2記憶部に前記確率情報を記憶させ、
前記通信規制状態において、前記入力部により前記発呼要求の入力を受け付けた場合、前記確率情報に基づいて、前記パーシステンステストを実施し、前記パーシステンステストの結果に基づいて前記第2通信部による前記発呼要求の送信を規制し、
前記発呼要求が緊急発呼要求の場合の前記合格率は、前記発呼要求が非緊急発呼要求の場合の前記合格率に比べて高い請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
複数の携帯端末装置間の通信に使用される通信ネットワークに設けられる基地局であって、
前記携帯端末装置と通信を行う通信部と、
前記携帯端末装置による通信を規制する規制部と、
前記規制部による通信規制状態において、前記通信部により前記携帯端末装置から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、当該所定の宛先に対して前記携帯端末装置からの発呼を示す発呼要求情報を送信させ、前記発呼要求に基づく前記携帯端末装置との通信を切断する制御部と、を備える基地局。
【請求項11】
基地局と、通信ネットワークを介して前記基地局と通信を行う携帯端末装置とを備える通信システムにおいて実行される通信方法であって、
前記基地局は、
前記携帯端末装置による通信を規制するステップと、
前記規制するステップにおいて通信規制状態とされた際に、前記携帯端末装置から所定の宛先への発呼要求を受信した場合、当該所定の宛先に対して前記携帯端末装置からの発呼を示す発呼要求情報を送信し、前記発呼要求に基づく前記携帯端末装置との通信を切断するステップとを含む通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−23642(P2012−23642A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161108(P2010−161108)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】