説明

通信システムの方法及び装置

複数のダウンリンク物理チャネルをもつセルラ通信システムにおけるユーザ機器は、前記複数の物理チャネルのサブセットを用いて無線リンクの問題を検出する。ここで、前記サブセットは、どのチャネルが特定のインスタントにおいて利用可能であるのかに依存して動的に調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダウンリンク無線リンクの問題検出に関する。
【背景技術】
【0002】
無線リンクの監視は、セルラシステムにおける無線接続を維持するのに重要である。規則正しくシステムに対して無線状態をレポートすることにより、無線リンクの障害が発生したときに、異なるタイプの動作をとることができる。
【0003】
UTRAでは非特許文献1で説明しているように、物理レイヤで無線リンクの品質を評価して上位レイヤに対して無線フレームを基本として、所謂同期プリミティブを介してその同期状態をレポートする。
【0004】
無線リンク品質状態をレポートすることはE−UTRAでも必要とされる。E−UTRAでは、アップリンクにおける不必要な干渉、ダウンリンクにおける資源の浪費、そして、セルの再選択やハンドオーバが生じる前の不必要に長い遅延を回避するために、無線の問題について高速で信頼性の高い検出を行なうことは有益である。
【0005】
E−UTRAにおける無線リンク障害の処理
E−UTRAにおける無線リンク障害の扱いは非特許文献2に記載されており、それはその文献1の図1で図示されているように、2つのフェーズから成り立っている。簡単に言えば、それは次の通りである。即ち、
第1のフェーズ:
・例えば、タイマ時間(T1)が切れた後、無線リンク障害検出へと導くかもしれない無線の問題を検出したときに開始する。
・ネットワークをベースとするモビリティの扱いである。
第2のフェーズ:
・タイマ切れ後(T2)、CONNECTEDからIDLEへのRRC状態遷移へと導くかもしれない無線リンク障害検出時に開始する。
・UEをベースとするモビリティの扱いである。
【0006】
“無線の問題検出”の判定とともにそれをレポートする手順は物理レイヤにより扱われる。UTRAとの類似性で、後でさらに検討する、例えば、“同期外れ(out-of-sync)”のような同期プリミティブの使用に言及する。
【0007】
UTRAにおける無線の問題検出
UTRAでは、高速送信電力制御(TPC)はシステムが正しく動作するには決定的なものである。例えば、ダウンリンクにおいて、TPC命令は連続的に或いは周期的に物理制御チャネル(F−)DPCH或いはDPCCHを介して送信される。UEは所定の時間間隔でこの物理制御チャネルの品質を測定し、もし、その品質が特定の閾値より小さくなれば、UEはネットワークに“同期外れ(out-of-sync)”をレポートする。循環冗長チェック(CRC)によるエラー検出がDPDCHにマップされたトランスポートブロックに備えられる。制御チャネルの品質を監視するのに加えて、UEはまた連続するCRC失敗の数を監視し、その数が所定の数より多いなら、UEはネットワークに同期外れをレポートする。
【0008】
E−UTRAにおけるパケットデータ送信
E−UTRAは純粋にパケットデータのために設計されたセルラシステムである。そのシステムにおいて、アップリンクとダウンリンクのユーザデータの伝送は常に共用チャネルを介して行なう。直交周波数分割多重(OFDM)技術がダウンリンクでは用いられる一方、アップリンクではDFTベースのプリコーディッドOFDMが用いられる。UTRAではHSPAと同様に、UEは物理ダウンリンク共用チャネル(PDSCH)でUE専用ユーザデータにアクセスするために物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を監視して、ネットワークは物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)と物理アップリンク共用チャネル(PUSCH)とを介してアップリンク送信のためにデマンドベースでUEにアップリンクスケジューリンググラントを割当てる。エラー検出はCRCによりトランスポートブロックと制御ペイロードに備えられ、HARQ動作が効率的な再送を保証する。
【0009】
E−UTRAでは、ダウンリンク送信電力制御(TPC)は規定されておらず、アップリンクTPC命令はPDCCHにマップされた制御ペイロードに組み込まれる。PDCCHは時々E−UTRA基地局(eNodeB)により送信される。従って、(F−)DCPHやDPCCHのような連続的な或いは周期的な専用物理チャネルは、UTRAにおけるようには存在しない。
【0010】
E−UTRAにおけるダウンリンク物理信号とチャネル
E−UTRAダウンリンクにおける物理レイヤ信号とチャネルとは次の通りである。即ち、
・物理レイヤ信号、例えば、基準信号(パイロット)と同期信号
・物理同報チャネル(PBCH)
・PDCCHとPDSCH
・物理制御フォーマットインジケータチャネル(PCFICH)
・物理HARQインジケータチャネル(PHICH)
である。
【0011】
次の観測がなされる。即ち、
・物理レイヤ信号とPBCHが周期的に送信されること
・PBCHとPDSCHにマップされたトランスポートブロックと、PDCCHにマップされた制御データとのCRCを介したエラー検出をすること
・あるアップリンク送信が物理チャネルPDCCHとPHICHとを介したダウンリンク応答となること
である。
【0012】
送信される信号とチャネルとを周期的に考慮することの利点は、無線の問題検出のインスタントを上位レイヤにレポートすることが前もって知られる点にある。E−UTRAにおける無線リンク品質を監視するために共用チャネルを用いることは、スケジュールされたデータの欠落のために予測しがたいレポート遅延となることもある。
【0013】
E−UTRAの代表的なにおける無線の問題の検出
E−UTRAダウンリンクの動作に関して、一定の時間周期の下でPDCCHとPDSCHとの内の少なくともいずれも検出できないUEとして無線の問題検出を特徴付けることは自然であるように思われる。いずれのユーザデータも受信できない以外に、制御データの連続的なCRC失敗も、UEが何のアップリンクスケジューリンググラントも受信できないことと、システムが正しく動作するのに極めて重要なアップリンクTPCと時間合わせ(TA)命令に応答できないことを示唆するであろう。
【0014】
しかしながら、PDCCHに関して、UE IDはCRCに暗示的に符号化され、CRC失敗が劣悪な無線リンク条件のためではないかもしれない、即ち、そのパケットが他のUEのためであることを示唆する。そのため、例えば、PDCCHへとマップされる制御データの連続的なCRC失敗の数が非常に多いことについて無線の問題検出と判定することはそれほど有用ではないように思われる。
【0015】
PDCCHへとマップされるトランスポートブロックのCRCをチェックすることは、無線の問題検出を監視するための1つの可能性ではある。PDSCHの復調は関係するPDCCHが正しく検出されることを必要とするが、PDCCHはPDSCHよりはるかに耐性が強くあるべきである。この場合、レートアダプテーションの結果、可能性のある最低のユーザデータ速度となるが、依然としてUEは連続的なNACKでeNodeBに応答する。しかしながら、例えば、PDSCHのトランスポートブロックの連続的なCRC失敗の数が非常に多いだけで無線の問題検出の基礎とすることの潜在的な欠点には、スケジュールされたデータの欠落が予測しがたい、おくらくは非常に長いレポート遅延に導くことになるという欠点がある。
【0016】
E−UTRAでは、共通の基準信号が周期的に送信され、システムの全帯域幅にわたって分散する。例えば、SIR或いは基準信号のシンボルエラー率のようなある品質指標を監視し、その品質指標が一定の閾値をこえたときに無線の問題検出をレポートすることは、上述したPDSCH CRCチェックに対する代替案となり得るし、或いは、上述したPDSCH CRCチェックに対して付加すべきことであるかもしれない。しかしながら、共用基準信号の劣悪な品質は必ずしも、ダウンリンクの物理チャネルPDCCHとPDSCHの知覚される品質に反映される訳ではない。加えて、受信同期信号と考慮しているプライマリ同期信号との間の相関が一定の閾値より小さいというように、品質指標が同期信号と関係することもある。
【0017】
CRCによるエラー検出はPBCHにマップされたトランスポートブロックにも提供され、PBCHは(共用チャネルにマップされたトランスポートブロックとは対照的に)周期的に送信され、従って、予測可能なレポート遅延をもつであろう。従って、物理同報チャネルを読み出すことが連続的に失敗することが、無線の問題検出を示唆することに用いられる。しかしながら、共用物理チャネルPBCHの品質は必ずしもPDCCHとPDSCHの知覚される品質を反映している訳ではない。
【0018】
eNodeBは必ずしも周期的である必要はないが規則的に、一群のUEにアドレスされたアップリンクTPC命令を送信する。あるグループに属するUEがそのような命令を一定の時間間隔内で検出しなかったなら、無線の問題検出を上位レイヤにレポートする。同じ概念は、例えば、時間合わせ命令を含む他の制御フォーマットにも適用可能である。ただし、これらの命令は帯域内(in-band)で送信され、例えば、アップリンクTPC命令よりも少ない頻度で送信される。
【0019】
eNodeBは必ずしも周期的である必要はないが規則的に、どのくらいの連続する数のPDCCHのOFDMシンボルがサブフレーム内で送信されるのかについての情報を含むPCFICHを送信する。1個或いは2個或いは3個のOFDMシンボルを示すために、PCFICHを介して送信される32ビットの3つの知られたシーケンスがある。PCFICHの品質指標として、UEは一定の時間間隔の間で受信したシーケンスのビットエラーを評価し、連続するビットエラーの大きな数が一定の閾値を越えたときに無線の問題検出をレポートする。
【0020】
接続モード(Connected Mode)における不連続受信(DRX)
E−UTRAダウンリンクはまた、(LTE_ACTIVEモードとして一般には呼ばれる)RRC_CONNECTEDモードにおける不連続受信(DRX)の可能性を許している。これにより、UEが接続状態を維持しながら電池の節約することが可能になる。なぜなら、DRXサイクルに従って周期的なインスタンスでだけウェイクアップすることが必要となるだけであるからである。ネットワークは、2ミリ秒から最大2.56秒の間で、サービスのタイプに依存して、例えば、VoIPのようなリアルタイムサービスに対しては通常、2或いは4ミリ秒、インターネット閲覧のような非リアルタイムサービスに対しては1.28秒というようにDRXサイクルを構成設定できる。DRXの間に、UEはネットワークがデータを送信中には一時的に連続受信モードに移行しても良い。データ受信後に、UEはネットワークにより構成設定されたタイムアウト後に通常のDRXに戻る。
【0021】
UEは、電池が可能性のある最大の節約を達成するためにDRXサイクルのサイレント期間の間、できる限りイナクティブな状態に留まろうと試みる。しかしながら、これはまたUEが、モビリティ、無線リンクの問題検出(同期外れの検出、同期状態の検出)などについてのウェイクアップインスタンスで主に測定を実行することを示唆している。(DRXサイクルに依存した)DRXモードにおける非効率な測定機会のために、UEは無線リンクの問題を直ちに検出することはできないであろう。
【0022】
おそらくは非常に多くの数のUEがDRXモードにあるであろう。次に、DRXモードではデータを送信するネットワークは、UEを突然に連続受信モードに切り替えることができる。それ故に、UEは無線リンク品質の点からして良好に接続された状態に留まるべきであり、従って何らかの無線リンクの問題も迅速にネットワークにレポートされるべきであろう。従って、無線リンクの問題検出はDRXと非DRXモードでの動作の両方で効率的に作用するように設計されるべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】3GPP TS25.214 V7.4.0、“物理レイヤ手順(Physical layer procedures)(FDD)”
【非特許文献2】3GPP TS36.300 V8.1.0、“概要説明;ステージ2(Overall description; stage 2)”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、本発明により解決されるべき課題の1つは、UEが無線の問題検出に対して必要な適切な数の測定サンプルを取得できるようにすることである。
【0025】
1つの可能性は、無線リンクの問題検出のために複数の物理チャネルを用いることであろう。このアプローチは特に、E−UTRAにおいて魅力的である。E−UTRAでは、パケットモード転送とDRXモードの頻繁な使用のために、多数の物理チャネルのサンプリングにより、UEが無線リンク検出のために必要な適切な数のサンプルを取得することをより簡単により迅速にできる。
【0026】
(例えば、SCH、BCH、共用チャネルやパイロットチャネルなど)チャネルを組み合わせて用いるという概念は早くから提案されている。しかしながら、以前に提案された方法論では、その思想は、これらチャネルの2つ以上の組み合わせが常に無線リンク検出のために用いられるというものである。しかしながら、パケットモードであるために、特に、DRXであるために、UEがいつでもそれらチャネルの組み合わせをサンプルすることは必ずしも可能ではない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の第1の側面からすれば、複数のダウンリンク物理チャネルをもつセルラ通信システムにおいてユーザ機器において用いられる方法が備えられる。その方法は、前記複数の物理チャネルのサブセットを用いて無線リンクの問題を検出する工程を有し、そのサブセットは、どのチャネルが特定のインスタントにおいて利用可能であるのかに依存して動的に調整可能であることを特徴とする。
【0028】
本発明に従う基本的な思想は、無線リンク検出のために複数の物理チャネルの組み合わせを用いることであり、UEにより用いられるそれらチャネルのサブセットは、どのチャネルが特定の測定インスタンスにおいて利用可能であるのかに依存して動的に調整される。最小のサブセットは少なくとも1つの物理チャネルから構成される。この方法により、特に、DRXにおける無線リンクの問題検出を高速にする。従って、本発明は、無線リンクの問題検出に対して複数の物理チャネル各々について、複数の物理チャネルの組み合わせ結合と異なる重みとを用いるための可能性を提供している。各チャネルについてのエラー事象を定義するための条件は、次の方法の1つ以上で設定される。即ち、ネットワークにより構成設定され、UE実施形或いはその組み合わせに基づいて標準化された値に設定される。
【0029】
本発明は、
・パケットモード送信のためにダウンリンク専用チャネルがないにも係わらず、高速で信頼できる無線の問題検出を行い、
・UEが無線の問題検出に気付いたとき、例えば、アップリンクで測定レポートや他のデータを測定するので、アップリンクにおける干渉を低減し
・基地局が劣悪なダウンリンク無線リンクで情報を受信するなら、基地局はUEをスケジューリングリストから削除することができるので、ダウンリンクにおける資源の浪費を少なくし、
・基地局が劣悪なダウンリンク無線リンクで情報を受信するなら、もしダウンリンクの問題が迅速に特定されるなら、サービング基地局はより速く変更されるかもしれないので、ハンドオーバ遅延をより短くし、
・DRX動作と制限された測定機会をもつシナリオにおいて無線リンク問題の高速な検出を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】E−UTRAにおける無線リンク障害の処理を例示する図である。
【図2】通信ネットワークアーキテクチュアの例を示す図である。
【図3】本発明の第1の側面に従う方法を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の第2の側面に従う方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は(図2には1つだけ示されている)1つ以上の無線ネットワーク制御装置(RNC)10に接続された少なくとも1つ以上の無線基地局(RBS)(或いはNodeB)を有する、例えば、発展型UMTS陸上無線アクセスネットワーク(E−UTRAN)アーキテクチュアのような無線アクセスネットワーク(RAN)を含むOFDMシステムやWCDMAシステムのような通信システムを描いている。RANはIuインタフェースのようなインタフェースによりコアネットワーク(CN)12に接続されており、そのコアネットワークは公衆交換電話ネットワーク(PSTN)や統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)のようなコネクション指向型の外部CNと、インターネットのようなコネクションレスの外部CNとの内の少なくともいずれかでも良い。
【0032】
RANとCN12とは複数のユーザ機器(UE)18a−dに対する通信と制御とを提供する。UE18夫々はダウンリンク(DL)チャネル(即ち、基地局からユーザに向かう方向、或は、順方向)とアップリンク(UL)チャネル(即ち、ユーザから基地局に向かう方向、或は、逆方向)を用いて無線或はエアインタフェースによる少なくとも1つのRBS15と通信を行なう。
【0033】
本発明の好適な実施例に従えば、通信システムはここではWCDMA通信システムとして説明されている。しかしながら、当業者であれば、本発明の方法や構成が全ての通信システムにおいてもうまく作用することを理解するであろう。ユーザ機器18は移動体電話(“セルラ”電話)や移動体の終端を備えたラップトップのような移動局で良く、従って、例えば、携帯型、ポケット型、ハンドヘルド型、コンピュータ内蔵型、或は、車両搭載型の移動体機器であっても良く、これらはRANと音声とデータとの内少なくともいずれかでの通信を行う。
【0034】
無線リンクの問題検出での物理チャネル
好適な実施例では、ダウンリンク無線の問題検出は、ダウンリンク信号の品質指標を監視することに基づいていなければならない。1つ以上の品質指標が所定の時間間隔内に1つ以上閾値を超えるか、或はそれよりも小さくなったときに、無線の問題検出があったと宣言される。用いられるエラー事象のセットはUE特有或は一群のUE特有のものであると良い。各物理チャネルに対して用いられる複数のパラメータと異なる重みとの具体的な組み合わせは、例えば、トラフィックのタイプとトラフィック負荷とに依存して、eNodeBによりUEに対してシグナリングされる。1つの実施例では、用いられる条件は準静的なものであり、これにより、用いられるパラメータのセットと重みとはより上位のシグナリングを介して信号発信される。或は、複数の標準的な組み合わせは、eNodeBがそのような標準的な組み合わせに対する基準信号をシグナリングするように定義される。これは、送信されるのに必要なビット数を低減するものとなる。さらに別の実施例では、UEは標準によって設定される複数の予め定義された代替的な組み合わせをもち、例えば、DRXモードなどに対する1つの具体的な組み合わせなどの用いられる受信モードに依存して適用する。
【0035】
ダウンリンク無線品質の検出に対する可能性のある候補には次のものがある。
・ダウンリンク基準信号の品質指標の監視
例えば、ダウンリンク基準信号の品質指標は、アンテナ構成に依存して送信された基準信号の受信SIR、或は、パイロットシンボルエラー率であると良い。例えば、1つのeNodeBのアンテナポートの場合には基準信号は0である。
・同期信号の品質指標の監視
例えば、その品質指標は受信信号と考慮されるプライマリ同期信号との間の相関値であると良い。
・PBCHの品質指標の監視
例えば、RBCHの品質指標は連続するPBCH CRC失敗の数で良い。
・PDSCHの品質指標の監視
例えば、PDSCHの品質指標は連続するPDSCH CRC失敗の数、或は、HARQ再送の数がHARQ再送の目標数を超えた場合の数で良い。
・複数のユーザへのTPC命令を伴うE−UTRA制御フォーマットを参照する正しい検出PDCCH間の時間の監視
例えば、PDCCHの品質指標は欠落した受信無線フレームの数で良い。
・PCFICHの品質指標の監視
例えば、PCFICHの品質指標はビットエラー或はソフト値の品質で良い。
・PHICHチャネルの監視
例えば、PHICHの品質指標はソフトビットの品質であると良い。
【0036】
組み合わされたチャネルに基づいた無線リンク検出のアルゴリズム
図3は本発明のある側面に従う方法を図示したフローチャートである。
【0037】
ステップ100では、ユーザ機器は前記ダウンリンク(DL)の物理信号とチャネルのいずれが利用可能であるのかを判断する。ステップ110では、ユーザ機器は、ステップ100での前記ダウンリンク物理信号とチャネルのいずれが利用可能であるのかを判断した結果に基づいて、前記ダウンリンク物理信号とチャネルのサブセットを動的に選択する。ステップ120では、ユーザ機器は、前記ダウンリンク物理信号とチャネルの前記選択されたサブセットを用いて無線リンクに問題があるかどうかを検出する。この判断の詳細は以下に述べる。もし、問題があるなら、ステップ130において、ユーザ機器はその無線リンクの問題を無線基地局にレポートする。しかし、問題がなければ、その処理はステップ100に戻る。
【0038】
上述のように、UEがDRXやスケジューリングの欠落のために無線リンクの問題を検出するのに規定された時間で十分な数の測定サンプルを得ることが常に可能であるとは限らないかもしれない。しかしながら、検出処理を高速化するために、幾つかの物理チャネルが以下に述べるような動的な方法でサンプルされる。
【0039】
M個の物理チャネル(例えば、PBCH、PDSCH、SCHなど)があり、これらが無線リンクの問題を検出するためにUEによって用いられる可能性があると仮定しよう。そのとき、無線リンク障害の条件は、異なる物理チャネルの連続的な測定事象(或はサンプル)の累積数の少なくともX%(0≦X≦100)がエラーであり、一定の閾値(K1)以上になったかどうかが検出されることとする。
【0040】
特定のチャネルに対するエラー事象はチャネルのタイプに依存する。例えば、チャネルの品質が所望の閾値(SNR、BERなど)未満となったときや、或は、CRC失敗が発生したときに、エラー事象が宣言される。次に、そのエラー事象の検出は主に、特定のチャネル、例えば、単一のOFDMAシンボルにわたって測定されたSCH SNRや、単一のトランスポートブロックにわたるPBCHのCRC失敗などの特定のチャネルの単一測定サンプルに基づいたものである。各チャネルに対するエラー事象を定義する条件は次の方法の内の1つ以上を設定すると良い。即ち、ネットワークによって構成設定され、UEの実施形或はその実施例の組み合わせに基づいた標準化された値である。
【0041】
累積数は適切な関数を定義することにより取得される。一般的な公式は式(1)により表わされる。
【0042】
【数1】

【0043】
式(1)の特別な場合は、全ての物理チャネルのエラー事象の重み付けされた線形和によって表わされ、それは式(2)によって表わされる。
【0044】
【数2】

【0045】
各チャネルに対する重み付けが同じ場合、即ち、α1=α2=……=αM=1である場合、式(3)が得られる。
【0046】
【数3】

【0047】
このアプローチは、可能性のある最短時間で十分な数の測定サンプルを取得することにおいてUEにある柔軟性を与えるものとなる。DRXサイクルのウェイクアップインスタンスの間に、1つのチャンスで、UEは無線リンク検出のために基準シンボルBERのみを測定できるに過ぎない。別のインスタンスでは、UEはSCH BER(或はSNR)と基準シンボルBERとを測定することができる。同様に別のインスタンスでは、UEはPBCH CRCなどをチェックできる。この種の制限は、UEも規則的な隣接セル識別と測定とを実行しなければならないという事実に起因する。DRX動作と結合した限定された測定能力は、無線リンクの問題を検出するために、全てのサービングセルからより頻繁により多くのチャネルをサンプルするという点からUEに更なる制限をかける。
【0048】
しかしながら、UEが同時に非常に短時間で複数の物理チャネルを測定できるときに、その状態が発生することもある。しかしながら、この種の検出は余りにも短い時間で実行されるべきではない。従って、最小時間が規定され、たとえエラー事象の累積数が式(1)で表現された制限(K1)を超えるとしても、その時間にわたって検出が実行されるべきである。
【0049】
問題のある無線リンクは回復することもある。従って、UEはまたこの回復や改善も検出できるべきである。この場合、少なくとも、式(4)で表現された一定の閾値(K2)を超える十分な数の正しい事象があるべきである。その正しい事象はまた、稼動性、UE測定能力、DRXサイクルなどに依存する多数のチャネルから取得される。
【0050】
【数4】

【0051】
式(4)の特別な場合は、全ての物理チャネルの正しい事象の重み付けされた線形和によって表現され、即ち、式(5)によって表現される。
【0052】
【数5】

【0053】
タイミングの不確実性に基づく無線リンク検出アルゴリズム
図4は本発明に従う代替案の方法を図示したフローチャートである。ステップ200では、ユーザ機器はパイロットチャネルでチャネルの評価を試み、ステップ210でその試みが成功したかどうかを判断する。もし、そのユーザ機器がパイロットチャネルでチャネルを所定の時間にわたり所定の閾値内に正しく評価できないなら、その処理はステップ220に進み、そこでユーザ機器は同期チャネルでの送信タイミングの検出を試みる。ステップ230では、その試みが成功したかどうかを判断する。もし、そのユーザ機器が同期チャネルでの測定タイミングを所定の時間にわたり所定の閾値内に検出できないなら、処理はステップ240に進み、ユーザ機器は無線リンクに問題があると判断する。もし、ステップ210或はステップ230において、ユーザ機器がそのタイミングを正しく検出することができるなら、処理はステップ250へと進み、処理は正常に進行する。
【0054】
従って、UEが一定の時間間隔にわたって、或は、一定数の連続する同期の試行の後に一定の精度で(例えば、±T0μ秒のタイミング精度で)タイミング(例えば、フレームの境界)を検出できないなら、無線リンクは問題があるとみなされる。そのタイミングは劣悪な無線リンクにより喪失する。別の理由は、基地局の送信タイミングがドリフトすることであるかもしれない。従って、タイミングの不確実性は、規則正しい間隔で、或は、何か別のチャネルの品質が劣化したときに、サービングSCHチャネル(より具体的にはそれがフレームタイミングを与えるのでプライマリSCH)によって相関をとることを再び実行することにより、再度チェックされる必要がある。相関出力(例えば、SNR)が不確かな範囲(例えば、±T0μ秒)を超えて一定の閾値より小さいところに留まるなら、無線リンクは悪いと考えられる。評価の処理は、UEが既にサービングセルのSCHシーケンス(即ち、P−SCHとS−SCH)を知っており、そのセルのタイミングをしばしばチェックするので、あまり複雑であるべきではない。無線リンク検出を評価する最小期間は、高速なフェージングの影響を防止するのに有用である。例えば、相関検出器の出力はしばしば、フェージングのために予想できない悲観的な結果へと導くこともある。
【0055】
問題のある無線リンクは回復することもある。従って、UEはまたこの回復を検出できるべきである。このことはまた、UEがSCHにわたる相関を実行することによりフレームタイミングを検出することができるなら追跡できる。従って、もしUEがある精度内(例えば、±T0μ秒)でタイミングを回復することができるなら、無線リンクは適したものであるとみなされる。
【0056】
第3の方法は前述した組み合わされたチャネルとタイミングの不確実性とに基づいた方法の組み合わせに基づいたものである。これらの方法は並列に実行されても良いし、直列に実行されても良い。1実施例では、複数の条件の内の少なくとも1つが満足されるなら、無線リンクは悪いと考えられる。別の実施例では、無線リンクが悪いと考えられる前に両方の条件が満足されねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のダウンリンク物理チャネルをもつセルラ通信システムにおけるユーザ機器において用いられる方法であって、前記方法は、
前記複数の物理チャネルのサブセットを用いて無線リンクの問題を検出する工程を有し、
前記サブセットは、どのチャネルが特定のインスタントにおいて利用可能であるのかに依存して動的に調整可能であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複数の物理チャネルの前記サブセットにおけるエラー事象の累積数が閾値を超えたとき、無線リンクの問題を検出する工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エラー事象の累積数は、前記複数の物理チャネルの前記サブセットにおけるエラー事象の数の総計を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エラー事象の数の前記総計は、重み付けされた線形和であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記チャネルの品質が閾値より小さくなったとき、チャネルについてのエラー事象を検出する工程をさらに有することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記品質は、シンボルにわたって測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
CRC失敗が発生したときにチャネルについてのエラー事象を検出する工程をさらに有することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のチャネルのサブセットを用いて無線リンクの改善を検出する工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の物理チャネルの前記サブセットにおける正しい事象の累積数が閾値を超えるとき、無線リンクの改善を検出する工程をさらに有することを特徴する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記正しい事象の累積数は、前記複数の物理チャネルの前記サブセットにおける正しい事象の数の総計を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エラー事象の数の前記総計は、重み付けされた線形和であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数のダウンリンク物理信号とチャネルとをもつセルラ通信システムにおけるユーザ機器において用いられる方法であって、前記方法は、
前記複数のダウンリンク物理信号とチャネルとの内のどれが利用可能であるのかを判断する工程と、
前記複数のダウンリンク物理信号とチャネルとの内のどれが利用可能であり、所与の時刻において無線リンクの問題検出のためにどれが最良の使用であるのかに基づいて、前記複数のダウンリンク物理信号とチャネルとのサブセットを動的に選択する工程と、
前記複数のダウンリンク物理信号とチャネルとの選択されたサブセットを用いて無線リンクの問題を検出する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記複数の物理チャネルの前記サブセットにおけるエラー事象の数の総計が閾値を超えたとき、無線リンクの問題を検出することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エラー事象の数の前記総計は、重み付けされた和であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記チャネルの品質が閾値より小さくなったとき、チャネルについてのエラー事象を検出する工程をさらに有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記品質はシンボルにわたって測定されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
CRC失敗が発生したときにチャネルについてのエラー事象を検出する工程をさらに有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
検出された無線リンクの問題を無線基地局にレポートする工程をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
複数のダウンリンク物理信号とチャネルとをもつセルラ通信システムにおいて用いられるユーザ機器であって、前記ユーザ機器は、
前記複数のダウンリンク物理信号とチャネルとの内のどれが利用可能であるのかを判断し、
前記複数のダウンリンク物理信号とチャネルとの内のどれが利用可能であるのかの判断に基づいて、前記複数のダウンリンク物理信号とチャネルとのサブセットを動的に選択し、
前記複数のダウンリンク物理チャネルとチャネルとの選択されたサブセットを用いて無線リンクの問題を検出するよう構成されていることを特徴とするユーザ機器。
【請求項20】
複数の同期チャネルとチャネル評価のためのパイロットチャネルとを含む複数のダウンリンク物理チャネルをもち、前記パイロットチャネルのタイミングが前記複数の同期チャネルのタイミングに関係して設定されるセルラ通信システムにおけるユーザ機器において用いられる方法であって、前記方法は、
前記パイロットチャネルで前記チャネルを評価することを試みる工程と、
前記ユーザ機器が、所定の時間にわたり、前記パイロットチャネルで前記チャネルを所定の閾値内に正しく評価できない場合に、前記複数の同期チャネルにおける送信のタイミングを検出することを試みる工程と、
前記ユーザ機器が、所定の時間にわたり、前記複数の同期チャネルで前記送信のタイミングを所定の閾値内に検出できない場合に、無線リンクの問題があると判定する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項21】
前記パイロットチャネルはE−UTRANにおける基準信号を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記パイロットチャネルはE−UTRANにおける共通パイロットチャネルを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記同期チャネルは、プライマリ及びセカンダリ同期チャネルを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記無線リンクの問題があると判定した後に、
前記無線リンクに関して前記パイロットチャネルで前記チャネルを評価することを試みる工程と、
前記ユーザ機器が所定の時間にわたり、前記パイロットチャネルで前記チャネルを所定の閾値内に正しく評価できる場合に、前記複数の同期チャネルにおける送信のタイミングを検出することを試みる工程と、
前記ユーザ機器が所定の時間にわたり、前記複数の同期チャネルで前記送信のタイミングを所定の閾値内に検出できる場合に、前記無線リンクは改善されたと判定する工程とをさらに有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
複数の同期チャネルとチャネル評価のためのパイロットチャネルとを含む複数のダウンリンク物理チャネルをもち、前記パイロットチャネルのタイミングが前記複数の同期チャネルのタイミングに関係して設定されるセルラ通信システムにおいて用いられるユーザ機器であって、前記ユーザ機器は、
前記パイロットチャネルで前記チャネルを評価することを試み、
前記ユーザ機器が、所定の時間にわたり、前記パイロットチャネルで前記チャネルを所定の閾値内に正しく評価できない場合に、前記複数の同期チャネルにおける送信のタイミングを検出することを試み、
前記ユーザ機器が、所定の時間にわたり、前記複数の同期チャネルで前記送信のタイミングを所定の閾値内に検出できない場合に、無線リンクの問題があると判定するよう構成されていることを特徴とするユーザ機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−541435(P2010−541435A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527333(P2010−527333)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003535
【国際公開番号】WO2009/043392
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】