説明

通信システム

【課題】 要求装置10からの要求信号に対して、全ての応答装置21、22からレスポンスが返ってきたことを条件に要求装置10の機能実行部3が所定のコマンドを実行する通信システムでは、一部の通信回線72に障害が発生すると応答装置22からのレスポンスが要求装置に返信できないため、機能実行部3が所定のコマンドを実行できない問題点があった。
【解決手段】 回線監視部1は通信回線72の障害によって応答装置22からレスポンスが返信できないと判断したとき、機能実行部3に対して擬似レスポンスを送信する。これにより、機能実行部3は応答装置22からレスポンスが返ってきたと判断し、所定のコマンドを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに係るものであり、特に要求装置からの要求信号を受けた全ての応答装置が要求装置に対してレスポンスを返信したことを条件として要求装置がコマンドを実行するようにした通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の通信制御装置間でグループ通信を実現する場合、会議を主催・管理する要求装置としての通信制御装置からグループ内の他の通信制御装置に対して接続要求を送信する。この接続要求を受けた応答装置としての他の通信制御装置は、要求装置に対してレスポンスとして接続許可を送信する。全ての応答装置から接続許可を受け取った要求装置は、各応答装置に対して回線接続を行なうコマンドを実行し、グループ通信で会議通話を開始する。
【0003】
一方、一部の通信回線に障害が発生して、要求装置が全ての応答装置から接続許可を受け取れなかった場合には、回線接続を行なうコマンドを実行できなく、会議通話を開始できない。このように、一部の回線障害でシステム全体が機能できない従来技術として特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
ここで、上述のグループ通信を行なう通信システムにおいて、回線接続する従来の手順を図1について補足説明を行なう。
【0005】
グループ通信を行なう通信制御装置は、全国の各支局に通信網を介して配備されており、会議を主催・管理する支局の通信制御装置が要求装置となって会議に参画する支局の応答装置としての通信制御装置へ接続要求を行なう。図1は要求装置が応答装置(1)及び応答装置(2)に対してグループ通信による会議開催のための接続要求A1、A2を送信している。接続要求A1、A2を受けた応答装置(1)及び応答装置(2)のオペレータは、操作卓を操作して要求装置からの接続要求に対してレスポンスとして接続許可B1、B2を返信する。応答すべき全ての応答装置(1)及び応答装置(2)から接続許可B1、B2を受けた要求装置のオペレータは、応答装置(1)及び応答装置(2)との回線接続のコマンドを実行して、3つの支局間でグループ通信による会議通話100を開始する。
【0006】
【特許文献1】特開平6−62085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1の通信シーケンスは、要求装置と応答装置(1)及び応答装置(2)間の通信回線が正常であり、何らの不具合もない。しかしながら、図2のように応答装置(2)側に回線の障害があった場合要求装置へ応答装置2からの接続許可が返信されないために要求装置は回線接続のコマンドを実行できない。
【0008】
即ち、要求装置からの接続要求A1、A2に対して応答装置(1)から接続許可B1のレスポンスが返信されるが、応答装置(2)からのレスポンスが要求装置に返信されない。したがって、要求装置は回線接続のコマンドが実行できない。要求装置のオペレータは、応答装置(2)から接続許可が返信されないことにより、応答装置(2)との通信ができないことを認識する51。そこで、要求装置のオペレータは、会議開催を断念するか、もしくは図2のように応答装置(1)のみに接続要求A3を再度送信し、応答装置(1)の接続許可B3を受けて要求装置及び応答装置(1)間のみでグループ通信による会議通話200を実行する。
【0009】
このように、従来の通信システムは、要求信号に対して応答すべき全ての応答装置が接続許可のレスポンスを返信しなければ、要求装置が回線接続のコマンドを実行できないように構成されており、仮に要求装置及び正常な通信回線に接続された応答装置間のみでグループ通信する場合には、要求装置から再度、接続要求を送信する必要があった。
【0010】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、再度の接続要求を送信せずに、要求装置が正常な通信回線に接続された応答装置間のみでグループ通信することができる通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における通信システムは、要求装置と通信網を介して接続された複数の応答装置を有し、上記要求装置からの要求信号に対して応答すべき応答装置の全てがレスポンスを上記要求装置へ返信したことを条件に上記要求装置の機能実行部が所定のコマンドを実行するようにした通信システムであって、上記要求装置は上記複数の応答装置が接続されている通信回線を監視する回線監視部を有し、該回線監視部は上記応答すべき応答装置の一部がレスポンスを返信しないとき、擬似レスポンス応答を上記機能実行部へ送信し、該機能実行部が上記所定のコマンドを実行可能にするように構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、要求装置の回線監視部によって応答すべき応答装置の一部がレスポンスを返信しないとき、擬似レスポンス応答を機能実行部へ送信し、該機能実行部が所定のコマンドを実行するようにしたので、要求装置と応答装置がグループ通信する場合、要求装置が再度の接続要求を送信せずに、正常な通信回線に接続された応答装置間のみでグループ通信することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図について説明する。図3は本発明の実施の形態1に係る通信システムのシステム構成図である。
【0014】
図において、1は回線監視部であり、通信回線を監視するとともに、障害管理部2へ通信回線の障害を伝達し、かつ、機能実行部3と後述する応答装置(1)21及び応答装置(2)22との信号のやり取りを中継する。障害管理部2は回線監視部1から各応答装置(1)21及び応答装置(2)22が接続された通信回線の障害状況を受信し、その状況を記憶更新するとともに、表示部4に障害内容を表示する。機能実行部3は応答装置(1)21及び応答装置(2)22に対して接続要求を送信したり、回線接続を行なうもので、装置全体の機能を司るものである。5はオペレータがキー操作等により要求装置10を操作するための操作卓である。要求装置10としての通信制御装置は、これら回線監視部1、障害管理部2機能実行部3、表示部4、操作卓5からなっている。応答装置(1)21及び応答装置(2)22も要求装置10と同じ構成を有しているが、簡単のため図3では図示を省略している。6は通信網、71は応答装置(1)21を通信網6に接続する通信回線、72は応答装置(2)22を通信網6に接続する通信回線である。なお、図3では要求装置10、応答装置(1)21及び応答装置(2)22としての通信制御装置が3つだけであるが、大きなシステムとしては全国に通信制御装置を配備した支局があり、各都道府県をカバーするシステムを構築できる。
【0015】
次に、要求装置10の動作を図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。
【0016】
まず、要求装置10のオペレータは操作卓5を操作することにより、機能実行部3を動作させ、応答装置(1)21及び応答装置(2)22へグループ通信のための接続要求を発信させる(ST1)。機能実行部3の発信した接続要求は回線監視部1、通信網6、通信回線71を介して応答装置(1)21へ伝達されるとともに、回線監視部1、通信網6、通信回線72を介して応答装置(2)22へ伝達される。応答装置(1)21及び応答装置(2)22のオペレータは要求装置10から接続要求を受けると、グループ通信を行なうために接続許可を要求装置10へ返信する。応答装置(1)21及び応答装置(2)22のオペレータは状況により接続不許可を返信することもできるが、ここでは接続許可を返信するものとする。
【0017】
要求装置10の回線監視部1では応答装置(1)21及び応答装置(2)22の接続許可を受信待ちしており、接続許可を受信すると、その接続許可がどの応答装置から返信されたかを確認し、機能実行部3へ送信する。ここで、応答装置から返信される接続許可信号のヘッダには各応答装置のアドレスが付加されているので、回線監視部1はどの応答装置から接続許可を受信したかを認識している。
【0018】
次に、回線監視部1は全ての応答装置21、22から接続許可が返信されたかを判断する(ST2)。全ての応答装置21、22から接続許可が返信されたとすると、機能実行部3は応答装置(1)21及び応答装置(2)22と回線接続を行ない、グループ通信を開始する(ST3)。この場合の通信シーケンスは図1のシーケンスと同じになる。
【0019】
一方、例えば応答装置(2)22と通信網6とを接続する通信回線72に障害が発生していたとすると、機能実行部3からの接続要求が応答装置(2)22へ送信されないか、応答装置(2)22の接続許可が回線監視部1に送信されない。いずれにしても、回線監視部1は応答装置(2)22からの接続許可を受信できないため、通信回線72に障害が発生したと判断する(ST4)。通信回線72に障害が発生したと判断した回線監視部1は障害管理部2へ障害を通知(ST5)するとともに、機能実行部3へ応答装置(2)22の接続許可に相当する擬似レスポンスを送信する(ST6)。障害通知を受けた障害管理部2は障害発生を記憶装置(図示せず)に記憶する(ST7)とともに、表示部4に通信回線72に障害が発生していることを表示する(ST8)。
【0020】
また、回線監視部1から応答装置(2)22の接続許可に相当する擬似レスポンスを受けた機能実行部3は、全ての応答装置21、22から接続許可が返信されたと判断し、応答装置(1)21及び応答装置(2)22と回線接続を行なうコマンドを実行し、グループ通信を開始する(ST3)。但し、このとき通信回線72は障害が発生しているので、現実には要求装置10及び応答装置(2)22間の通信回線は接続されておらず、通話できる状態にないが、要求装置10のオペレータは表示部4に表示された障害情報から応答装置(2)22との通話ができないことを認識している。したがって、要求装置10と応答装置(1)21との間で通話するグループ通信による会議通話が再度の接続要求を送信することなく実現することができる。
【0021】
図5はこのときの通信シーケンスを示したものである。即ち、要求装置10はグループ通信する応答装置(1)21及び応答装置(2)22に接続要求A1、A2を発信する。応答装置(1)21が接続された通信回線71は正常に機能しているので、該応答装置(1)21は接続要求A1を受けて、接続許可B1を要求装置10へ返信する。一方、応答装置(2)22が接続された通信回線72には障害が発生しているので、応答装置(2)22からの接続許可が要求装置10へ返信されない。
【0022】
要求装置10の回線監視部1は、接続要求A2の発信から一定時間以内に応答装置(2)22から接続許可が返信されないことにより、通信回線72に障害があって応答装置(2)22との通信ができないと判断51し、障害を通知するとともに、機能実行部3に対して応答装置(2)22の擬似レスポンス信号を送信52する。要求装置10の機能実行部3は全ての応答装置21、22から接続許可を受信したものと判断して、応答装置(1)21及び応答装置(2)22と回線接続するコマンドを実行する100。しかし、現実には要求装置10及び応答装置(1)21間のみで回線接続され、グループ通信による会議通話200が開始される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、複数の支局間でグループ通信を行なう通信システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の通信システムにおいて回線接続を行なうシーケンスを示す説明図である。
【図2】従来の通信システムにおいて一部の回線に障害があった場合に回線接続を行なうシーケンスを示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成を示すブロック構成図である。
【図4】本発明における要求装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の通信システムにおいて回線接続を行なうシーケンスを示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 回線監視部 2 障害管理部 3 機能実行部 4 表示部 5 操作卓 6 通信網 10 要求装置 71、72 通信回線 21、22 応答装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求装置と通信網を介して接続された複数の応答装置を有し、上記要求装置からの要求信号に対して応答すべき応答装置の全てがレスポンスを上記要求装置へ返信したことを条件に上記要求装置の機能実行部が所定のコマンドを実行するようにした通信システムであって、
上記要求装置は上記複数の応答装置が接続されている通信回線を監視する回線監視部を有し、該回線監視部は上記応答すべき応答装置の一部がレスポンスを返信しないとき、擬似レスポンス応答を上記機能実行部へ送信し、該機能実行部が上記所定のコマンドを実行可能にしたことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
回線監視部は応答装置へ要求信号を送信した後、応答装置の一部が所定時間以内にレスポンスを返信しないことにより、上記応答装置の一部が接続されている通信回線に障害が発生していると判断し、擬似レスポンス応答を上記機能実行部へ送信するとともに、障害管理部へ障害を通知することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
障害管理部は回線障害を記憶すると共に、表示部へ回線障害を表示させることを特徴とする請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
機能実行部が実行するコマンドは応答装置に対して通話のための回線を接続するコマンドであることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
要求装置は通話すべき応答装置に対してのみ選択的に要求信号を送信することを特徴とする請求項4に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−251315(P2007−251315A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68699(P2006−68699)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】