説明

通信システム

【課題】安価なフィルタを用いて、天候による影響を受けずに通信品質の劣化を防止することができる通信システムを提供する。
【解決手段】検出部28は、パイロット信号の信号レベルと信号閾値とを比較し、比較結果に応じて、光空間伝送での光信号の損失が許容レベル内であることを示すハイレベルの信号、又は光空間伝送での光信号の損失が大きくなり許容差が小さくなったことを示すローレベルの信号を制御部29へ出力する。制御部29は、検出部28からローレベルの信号を取得した場合(光信号の損失が大きい場合)、増幅された主信号がバンドパスフィルタ27を通過するように制御する。また、制御部29は、検出部28からハイレベルの信号を取得した場合(光信号の損失が小さい場合)、増幅された主信号がバンドパスフィルタ27を通過しないように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光空間伝送を用いた通信システムに関し、特に天候の影響を受けることなく、安価であって通信品質の劣化を防止することができる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体無線通信システムでは、例えば、携帯電話機(移動局)との無線通信のためビル等の建物の屋上に基地局が設置されている。しかし、基地局が設置された後にその周囲にビル等の建物が建築された場合、携帯電話機へ無線信号が届かなくなるなど電波不感地域が生じ、また、通信品質の劣化が生じる場合があった。
【0003】
従来、このような電波不感地域に対しては、光ファイバを施設し、光ファイバを通じて光信号を送受信する光伝送システムを構築することで対策が行われてきたが、光ファイバを容易に施設することができない場所があるとともに、光ファイバを施設するために多大な工事費用を要するという問題があった。
【0004】
そこで、データ信号を光信号に変換して送信する送信部と、光信号を受信してデータ信号を出力する受信部とを備えた光空間伝送装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭61−263336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の光空間伝送装置にあっては、空間を通じて光信号を伝送するため、例えば、天候(雨、霧など)に依存して送受信する信号の損失が大きくなり、雑音に対する信号レベルが低下(S/Nが劣化)する。光信号を受信する受信装置では、光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を所要のレベルに増幅して出力するため、所要の電気信号だけでなくノイズも増幅される。このため、使用する周波数帯域の帯域外で不要な信号(スプリアス)が増加するという問題があった。
【0006】
使用する周波数帯域の近傍のスプリアスを除去するためには、通過帯域特性が阻止帯域で急激に減衰する特性を有する通過帯域フィルタ(バンドパスフィルタ)を用いる必要がある。しかし、通過帯域偏差、遅延時間を一定にするためには、フィルタの構成が複雑となり高価になるという問題があった。一方、通過帯域特性が阻止帯域で緩やかに減衰する特性を有する通過帯域フィルタを用いた場合には、通過帯域フィルタは安価にすることができるものの、通過帯域偏差、遅延時間差が原因となって通信品質の劣化、例えば、フィルタを通過した信号と理想的な信号との差を示すエラーベクトル振幅(Error Vector Magnitude)が劣化するという問題があった。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、送信装置は、電気信号を変換した光信号を空間を通じて受信装置へ送信し、該受信装置は、受信した光信号が変換された電気信号の信号レベルを検出し、検出された信号レベルを所定の信号閾値と比較した比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された電気信号を通過させるか否かを制御する制御手段を備えることにより、安価なフィルタを用いて、天候の影響を受けずに通信品質の劣化を防止することができる通信システムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、送信装置は、所定の副信号を生成する生成手段を備え、送受信する情報を有する主信号と前記副信号とを合成した電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を空間を通じて受信装置へ送信し、該受信装置は、受信した光信号を電気信号に変換し、変換された電気信号を主信号と副信号とに分離し、分離された副信号の信号レベルを所定の信号閾値と比較した比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された主信号を通過させるか否かを制御する制御手段を備えることにより、安価なフィルタを用いて、天候の影響を受けずに通信品質の劣化を防止することができる通信システムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、送信装置は、電気信号を変換した光信号を空間を通じて受信装置へ送信し、該受信装置は、受信した光信号の直流成分を検出し、検出された直流成分を所定の閾値と比較した比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された電気信号を通過させるか否かを制御する制御手段を備えることにより、安価なフィルタを用いて、天候の影響を受けずに通信品質の劣化を防止することができる通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る通信システムは、電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を空間を通じて送信する送信装置と、該送信装置が送信した光信号を受信し、受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を所要値に増幅する受信装置とを備え、所定の周波数帯域で通信する通信システムにおいて、前記受信装置は、受信した光信号を電気信号に変換する変換手段と、前記周波数帯域の電気信号を通過させるとともに、該周波数帯域外の電気信号を阻止する帯域通過フィルタと、前記変換手段で変換された電気信号の信号レベルを検出する検出手段と、該検出手段で検出された信号レベルを所定の信号閾値と比較する比較手段と、該比較手段の比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された電気信号を通過させるか否かを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る通信システムは、電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を空間を通じて送信する送信装置と、該送信装置が送信した光信号を受信し、受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を所要値に増幅する受信装置とを備え、所定の周波数帯域で通信する通信システムにおいて、前記送信装置は、所定の副信号を生成する生成手段と、送受信する情報を有する主信号と前記副信号とを合成する合成手段と、該合成手段が合成した電気信号を光信号に変換する変換手段とを備え、前記受信装置は、受信した光信号を電気信号に変換する変換手段と、該変換手段で変換された電気信号を主信号と副信号とに分離する分離手段と、前記周波数帯域の主信号を通過させるとともに、該周波数帯域外の主信号を阻止する帯域通過フィルタと、前記分離手段で分離された副信号の信号レベルを検出する検出手段と、該検出手段で検出された信号レベルを所定の信号閾値と比較する比較手段と、該比較手段の比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された主信号を通過させるか否かを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る通信システムは、電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を空間を通じて送信する送信装置と、該送信装置が送信した光信号を受信し、受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を所要値に増幅する受信装置とを備え、所定の周波数帯域で通信する通信システムにおいて、前記受信装置は、受信した光信号を電気信号に変換する変換手段と、前記周波数帯域の電気信号を通過させるとともに、該周波数帯域外の電気信号を阻止する帯域通過フィルタと、前記変換手段で変換された電気信号の直流成分を検出する検出手段と、該検出手段で検出された直流成分を所定の閾値と比較する比較手段と、該比較手段の比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された電気信号を通過させるか否かを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第1発明にあっては、送信装置は、電気信号(例えば、送受信する情報を有し、中心周波数が2GHz、所定の帯域幅を有する信号)を光信号に変換し、空間を通じて、変換した光信号を受信装置へ送信する。受信装置は、受信した光信号を電気信号に変換し、変換された電気信号の信号レベルを検出する。検出された信号レベルは比較手段で所定の信号閾値と比較される。天候が晴れ又は曇りなどの場合、空間伝送される光信号の損失は小さいため、検出された信号レベルは信号閾値よりも大きい。この場合、増幅した電気信号の周波数帯域の帯域外に重畳するノイズレベルは小さく通信品質の劣化は生じない。一方、降雨時などの場合、空間伝送される光信号の損失は大きくなり、検出された信号レベルは信号閾値よりも小さくなる。この場合、所定値に増幅された電気信号の周波数帯域の帯域外に重畳するノイズレベルは大きくなり、特に近傍スプリアスが許容レベルを超え通信品質の劣化が生じる。
【0014】
検出された信号レベルが信号閾値よりも小さい場合(光信号の損失が大きい場合)、制御手段は、増幅された電気信号が帯域通過フィルタを通過するように制御する。これにより、非常に低い時間率(例えば、年間の時間に対する降雨時の比率であり、0.01%〜0.1%程度の範囲)だけ帯域通過フィルタを用いて、電気信号の周波数帯域の帯域外に重畳したノイズ(特に近傍スプリアス)を除去し、通信品質の劣化を防止することができる。一方、検出された信号レベルが信号閾値よりも大きい場合(光信号の損失が小さい場合)、制御手段は、増幅された電気信号が帯域通過フィルタを通過しないように制御する。これにより、例えば、年間を通じて非常に高い時間率では帯域通過フィルタを使用せず、通過帯域偏差、遅延時間差が原因となって通信品質が劣化することを防止することができる。また、年間を通じて非常に低い時間率では、通過帯域偏差、遅延時間差などの要因による若干の通信品質の劣化が生じたとしても、他の周波数帯域を利用した通信に悪影響を及ぼす近傍スプリアスを除去することができ、全体として通信品質の劣化を防止することができる。
【0015】
第2発明にあっては、送信装置は、送受信する情報を有する主信号(例えば、中心周波数が2GHz、所定の帯域幅を有する信号)と副信号(例えば、中心周波数が315MHzの無変調信号)とを合成した電気信号を光信号に変換し、空間を通じて、変換した光信号を受信装置へ送信する。受信装置は、受信した光信号を電気信号に変換し、変換された電気信号を主信号と副信号とに分離し、分離された副信号の信号レベルを検出する。検出された信号レベルは比較手段で所定の信号閾値と比較される。天候が晴れ又は曇りなどの場合、空間伝送される光信号の損失は小さいため、検出された信号レベルは信号閾値よりも大きい。この場合、増幅した主信号の周波数帯域の帯域外に重畳するノイズレベルは小さく通信品質の劣化は生じない。一方、降雨時などの場合、空間伝送される光信号の損失は大きくなり、検出された信号レベルは信号閾値よりも小さくなる。この場合、所定値に増幅された主信号の周波数帯域の帯域外に重畳するノイズレベルは大きくなり、特に近傍スプリアスが許容レベルを超え通信品質の劣化が生じる。
【0016】
検出された信号レベルが信号閾値よりも小さい場合(光信号の損失が大きい場合)、制御手段は、増幅された主信号が帯域通過フィルタを通過するように制御する。これにより、非常に低い時間率(例えば、年間の時間に対する降雨時の比率であり、0.01%〜0.1%程度の範囲)だけ帯域通過フィルタを用いて、主信号の周波数帯域の帯域外に重畳したノイズ(特に近傍スプリアス)を除去し、通信品質の劣化を防止することができる。一方、検出された信号レベルが信号閾値よりも大きい場合(光信号の損失が小さい場合)、制御手段は、増幅された主信号が帯域通過フィルタを通過しないように制御する。これにより、例えば、年間を通じて非常に高い時間率では帯域通過フィルタを使用せず、通過帯域偏差、遅延時間差が原因となって通信品質が劣化することを防止することができる。また、年間を通じて非常に低い時間率では、通過帯域偏差、遅延時間差などの要因による若干の通信品質の劣化が生じたとしても、他の周波数帯域を利用した通信に悪影響を及ぼす近傍スプリアスを除去することができ、全体として通信品質の劣化を防止することができる。
【0017】
第3発明にあっては、送信装置は、電気信号(例えば、送受信する情報を有し、中心周波数が2GHz、所定の帯域幅を有する信号)を光信号に変換し、空間を通じて、変換した光信号を受信装置へ送信する。受信装置は、受信した光信号を電気信号に変換し、変換された電気信号の直流成分(受光レベル)を検出する。検出された直流成分は比較手段で所定の閾値と比較される。天候が晴れ又は曇りなどの場合、空間伝送される光信号の損失は小さいため、検出された直流成分は閾値よりも大きい。この場合、増幅した電気信号の周波数帯域の帯域外に重畳するノイズレベルは小さく通信品質の劣化は生じない。一方、降雨時などの場合、空間伝送される光信号の損失は大きくなり、検出された直流成分は閾値よりも小さくなる。この場合、所定値に増幅された電気信号の周波数帯域の帯域外に重畳するノイズレベルは大きくなり、特に近傍スプリアスが許容レベルを超え通信品質の劣化が生じる。
【0018】
検出された直流成分が閾値よりも小さい場合(光信号の損失が大きい場合)、制御手段は、増幅された電気信号が帯域通過フィルタを通過するように制御する。これにより、非常に低い時間率(例えば、年間の時間に対する降雨時の比率であり、0.01%〜0.1%程度の範囲)だけ帯域通過フィルタを用いて、電気信号の周波数帯域の帯域外に重畳したノイズ(特に近傍スプリアス)を除去し、通信品質の劣化を防止することができる。一方、検出された直流成分が閾値よりも大きい場合(光信号の損失が小さい場合)、制御手段は、増幅された電気信号が帯域通過フィルタを通過しないように制御する。これにより、例えば、年間を通じて非常に高い時間率では帯域通過フィルタを使用せず、通過帯域偏差、遅延時間差が原因となって通信品質が劣化することを防止することができる。また、年間を通じて非常に低い時間率では、通過帯域偏差、遅延時間差などの要因による若干の通信品質の劣化が生じたとしても、他の周波数帯域を利用した通信に悪影響を及ぼす近傍スプリアスを除去することができ、全体として通信品質の劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にあっては、送信装置は、電気信号を変換した光信号を空間を通じて受信装置へ送信し、該受信装置は、受信した光信号が変換された電気信号の信号レベルを検出し、検出された信号レベルを所定の信号閾値と比較した比較結果に基づいて、増幅された電気信号が帯域通過フィルタを通過するか否かを制御する制御手段を備えることにより、天候が良い場合には、安価な帯域通過フィルタが構成されているときであっても、帯域通過フィルタを使用せず、通信品質が劣化することを防止することができる。また、時間率が非常に低い悪天候の場合にのみ帯域通過フィルタを使用して近傍スプリアスを除去し、全体として通信品質が劣化することを防止することができ、安価なフィルタを用いて、天候による影響を受けることなく通信品質の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
実施の形態1
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る通信システム100を示す構成図である。通信システム100は、送信装置1、受信装置2などを備え、送信装置1及び受信装置2の間は光空間伝送により通信が行われる。送信装置1は、合成部11、E/O(電気/光変換器)12、発光レンズ13、パイロット信号生成部14などを備えている。受信装置2は、受光レンズ21、O/E(光/電気変換器)22、分離部23、可変増幅器24、切換回路25、26、バンドパスフィルタ27、検出部28、制御部29、増幅器30、アンテナ31などを備えている。また、発光レンズ13と受光レンズ21は、夫々の光軸が一致するように配置されている。
【0021】
通信システム100は、光空間伝送により、送受信する情報を有する主信号(例えば、中心周波数が2GHzで所定の帯域幅を有する携帯電話の無線信号)と、主信号の周波数帯域と異なる周波数帯域(例えば、中心周波数が315MHzの無変調信号)のパイロット信号とをアナログ光信号として伝送する光伝送システムである。
【0022】
パイロット信号生成部14は、発振器を備え、例えば、315MHzの正弦波形の無変調信号を生成し、生成したパイロット信号を合成部11へ出力する。
【0023】
合成部11は、広帯域の合成器を備え、主信号とパイロット信号とを合成し、合成した電気信号をE/O12へ出力する。なお、合成器に代えて共用器を用いる構成でもよい。
【0024】
E/O12は、所定の波長帯のレーザ光を出力する半導体レーザを備え、合成部11から入力された電気信号(主信号とパイロット信号との合成)を所定の波長帯の光信号に変換し、発光レンズ13を通じて、変換した光信号を受信装置2へ伝送する。
【0025】
O/E22は、フォトダイオードを備え、受光レンズ21を通じて送信装置1から伝送された光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を分離部23へ出力する。
【0026】
分離部23は、2GHz帯域の主信号を通過させるフィルタ、及び315MHz帯域のパイロット信号を通過させるフィルタなどを組み合わせた共用器(デュプレクサ)を備え、O/E22から入力された電気信号を主信号とパイロット信号とに分離する。分離部23は、分離した主信号を可変増幅器24へ出力するとともに、分離したパイロット信号を検出部28へ出力する。なお、分離部23は、共用器に代えて、所要のフィルタ、分配器などを備える構成であってもよい。
【0027】
図2は主信号及びパイロット信号の周波数スペクトラムの例を示す模式図である。図中fmは主信号の中心周波数であり、例えば、2GHzであり、主信号の帯域幅は、約4MHzである。また、fsはパイロット信号の中心周波数であり、例えば、315MHzである。なお、パイロット信号の中心周波数は、315MHzに限定されるものではなく、例えば、kHz〜MHzの範囲の周波数帯域を用いることができる。
【0028】
可変増幅器24は、制御部29から出力される制御信号(不図示)に基づいて、分離部23から入力された主信号を所要のレベルまで増幅し、増幅した主信号を切換回路25へ出力する。例えば、光空間伝送において光信号の損失が大きくなった場合、可変増幅器24は、光空間伝送で損失した分を補うため入力された主信号を所要のレベルになるように増幅する。
【0029】
切換回路25は、共通接続端子a、第1接続端子b、及び第2接続端子cを備え、後述する制御部29から出力される制御信号に基づいて、共通接続端子aが、第1接続端子b、又は第2接続端子cのいずれか一方に接続される。また、切換回路26も切換回路25と同様の構成を有し、制御部29から出力される制御信号に基づいて、共通接続端子aが、第1接続端子b、又は第2接続端子cのいずれか一方に接続される。
【0030】
切換回路25、26夫々の第2接続端子c同士は電気的に接続してあり、また、第1接続端子b同士の間には、バンドパスフィルタ27を接続してある。
【0031】
バンドパスフィルタ27は、主信号を通過し、主信号の周波数帯域の帯域外の信号を阻止するような通過帯域特性(例えば、中心周波数が2GHz、帯域幅が5MHzの特性)を有する。これにより、主信号の周波数帯域の帯域外に重畳するノイズ、特に近傍スプリアスを除去する。
【0032】
切換回路25、26の共通接続端子aが第1接続端子bに接続された場合、可変増幅器24から出力された主信号はバンドパスフィルタ27を通過して増幅器30へ出力される。また、切換回路25、26の共通接続端子aが第2接続端子cに接続された場合、可変増幅器24から出力された主信号はバンドパスフィルタ27を通過せずに増幅器30へ直接出力される。
【0033】
増幅器30は、入力された主信号を増幅してアンテナ31を通じて無線信号として出力する。
【0034】
検出部28は、例えば、A/D変換器を備え、分離部23で分離されたパイロット信号の波高値(又は実効値など)をサンプリングし、サンプリングして検出したパイロット信号の信号レベルと予め記憶された信号閾値とを比較する。検出部28は、パイロット信号の信号レベルが信号閾値より大きい場合、光空間伝送での損失が許容レベル内であるとして、例えば、ハイレベルの信号を制御部29へ出力する。また、検出部28は、パイロット信号の信号レベルが信号閾値より小さい場合、光空間伝送での損失が大きくなり許容差が小さくなったとして、例えば、ローレベルの信号を制御部29へ出力する。なお、検出部28の構成は、これに限定されるものではなく、他の構成であってもよい。例えば、予め主信号の信号レベルとパイロット信号の信号レベルとの比率を定めておき、分離されたパイロット信号に基づいて、主信号のS/Nを算出し、算出したS/Nを所定の閾値と比較するように構成することもできる。また、検出部28は、コンパレータなどを備える構成として、パイロット信号の信号レベルと予め設定された基準電圧(信号閾値)とを比較するような構成であってもよい。
【0035】
図3は主信号のS/Nと光空間伝送の光信号の損失との関係を示す説明図である。図中、横軸は光空間伝送の光信号の損失を示し、縦軸は主信号のS/Nを示す。図に示すように、光信号の損失が大きくなるに応じて、主信号のレベルが低下し、ノイズに対する主信号の信号レベルの比率が小さくなる。また、光信号の損失は天候により変化し、例えば、天候が晴れ又は曇りである場合は、光信号の損失はそれほど大きくなく、S/Nの低下も少ない。しかし、悪天候の場合(例えば、小雨又は大雨などの場合)、例えば、降雨量に応じて光信号の損失は大きくなり、S/Nも低下し許容レベル以下になる。なお、降雨以外であっても、例えば、霧又は雪などによってもS/Nは低下する。
【0036】
晴れ、曇り、雨天などの天候状態に応じて、年間を通じた時間率が統計的に算出されており、例えば、大雨時の時間率は0.01%であり、光空間伝送を行った場合、年間の0.01%の時間では、S/Nが許容レベル以下となり、通信不可の状態になり得る。また、例えば、小雨時の時間率は0.01〜0.1%であり、年間の0.01〜0.1%の時間では、S/Nが低下するものの、通信品質を改善して通信可能状態にすることができると考えられる。本発明は、特にS/Nが低下した場合、使用する周波数帯域の帯域外で発生する近傍スプリアスを除去して、通信品質を改善するものである。また、晴れ又は曇り時の時間率は99.9%であり、年間の99.9%の時間では、S/Nが十分に許容レベル以上であり、天候による通信品質の劣化はない。
【0037】
制御部29は、検出部28から出力される信号(ハイレベル又はローレベル)に基づいて、切換回路25、26の共通接続端子aを第1接続端子b、又は第2接続端子cのいずれか一方に切り換える。例えば、検出部28からハイレベルの信号が出力された場合(すなわち、光空間伝送での光信号の損失が許容レベル内である場合)、制御部29は、切換回路25、26の共通接続端子aを第2接続端子cに切り換えるよう制御信号を出力する。また、検出部28からローレベルの信号が出力された場合(すなわち、光空間伝送での光信号の損失が大きくなり許容差が小さくなる場合)、制御部29は、切換回路25、26の共通接続端子aを第1接続端子bに切り換えるよう制御信号を出力する。
【0038】
制御部29は、検出部28で検出されたパイロット信号の信号レベルが信号閾値よりも小さい場合(光信号の損失が大きい場合)、増幅された主信号がバンドパスフィルタ27を通過するように制御する。これにより、非常に低い時間率(例えば、年間の時間に対する降雨時の比率であり、0.01%〜0.1%程度の範囲)だけバンドパスフィルタ27を用いて、主信号の周波数帯域の帯域外に重畳したノイズ(特に近傍スプリアス)を除去し、通信品質の劣化を防止することができる。一方、制御部29は、検出部28で検出されたパイロット信号の信号レベルが信号閾値よりも大きい場合(光信号の損失が小さい場合)、増幅された主信号がバンドパスフィルタ27を通過しないように制御する。これにより、例えば、年間を通じて非常に高い時間率ではバンドパスフィルタ27を使用せず、安価なバンドパスフィルタ27で構成された場合であっても、通過帯域偏差、遅延時間差が原因となって通信品質が劣化することを防止することができる。
【0039】
次に本発明の通信システム100の動作について説明する。送信装置1は、主信号とパイロット信号とを合成した電気信号を光信号に変換し、空間を通じて、変換した光信号を受信装置2へ送信する。光空間伝送では、天候に応じて伝送される光信号の損失が変化するとともに、S/Nも変化する。
【0040】
図4は受信装置2で受信した主信号及びパイロット信号の周波数スペクトラムの例を示す模式図である。図中、横軸は周波数を示し、縦軸は信号レベルを示す。図4(a)は、例えば、天候が晴れ又は曇りの場合を示し、図4(b)は、降雨時の場合を示す。天候が晴れ又は曇りの場合には、主信号及びパイロット信号とも損失による信号レベルの低下は少なく、ノイズのレベルに対する信号レベルは大きい。降雨時の場合には、主信号及びパイロット信号とも損失による信号レベルの低下が多くなり、ノイズのレベルに対する信号レベルは小さくなり、S/Nが低下する。
【0041】
受信装置2は、受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を主信号とパイロット信号とに分離する。分離された主信号は、可変増幅器24で所要の信号レベルまで増幅される。また、分離されたパイロット信号は、検出部28へ出力され、検出部28は、パイロット信号の信号レベルと信号閾値とを比較し、比較結果に応じて、光空間伝送での光信号の損失が許容レベル内であることを示すハイレベルの信号、又は光空間伝送での光信号の損失が大きくなり許容差が小さくなったことを示すローレベルの信号を制御部29へ出力する。
【0042】
図5は可変増幅器24で増幅された主信号の周波数スペクトラムの例を示す模式図である。図中、横軸は周波数を示し、縦軸は信号レベルを示す。可変増幅器24は、主信号の信号レベルを所要のレベルまで増幅するため、可変増幅器24に入力される主信号の入力レベルが小さいほど(すなわち、光空間伝送の光信号の損失が大きいほど)、増幅率が大きくなり、主信号のみならず、使用する周波数帯域の帯域外に重畳したノイズも増幅される。このため、周波数帯域の帯域外に近傍スプリアスの影響が顕著に現われることになり、通信品質の劣化を招く。
【0043】
制御部29は、検出部28からローレベルの信号を取得した場合(光信号の損失が大きい場合)、増幅された主信号がバンドパスフィルタ27を通過するように制御する。また、制御部29は、検出部28からハイレベルの信号を取得した場合(光信号の損失が小さい場合)、増幅された主信号がバンドパスフィルタ27を通過しないように制御する。
【0044】
図6はバンドパスフィルタ27通過後の主信号の周波数スペクトラムの例を示す模式図である。図中、横軸は周波数を示し、縦軸は信号レベルを示す。可変増幅器24で増幅された主信号及び主信号に重畳した近傍スプリアスをバンドパスフィルタ27を通過させることにより、主信号は通過させるとともに近傍スプリアスの通過を阻止することができる。なお、バンドパスフィルタ27は、比較的安価なものを使用することができる。上述したように、天候によりS/Nが低下する時間率は、0.01〜0.1%と非常に小さく、常時使用するものではないため、通過帯域偏差、遅延時間差などの要因による若干の通信品質の劣化が生じたとしても、他の周波数帯域を利用した通信に悪影響を及ぼす近傍スプリアスを除去することができ、全体として通信品質の劣化を防止することができる。
【0045】
実施の形態2
上述の実施の形態1では、パイロット信号を検出することにより、光空間伝送での光信号の損失の大小を検知する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、パイロット信号に代えて主信号を検出する構成であってもよい。
【0046】
図7は実施の形態2の通信システム200を示す構成図である。実施の形態1との相違は、送信装置1において合成部11、パイロット信号生成部14がなく、受信装置2において、分離部23がないことである。
【0047】
E/O12は、所定の波長帯のレーザ光を出力する半導体レーザを備え、入力された電気信号(主信号)を所定の波長帯の光信号に変換し、発光レンズ13を通じて、変換した光信号を受信装置2へ伝送する。
【0048】
O/E22は、フォトダイオードを備え、受光レンズ21を通じて送信装置1から伝送された光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を可変増幅器24及び検出部32へ出力する。
【0049】
検出部32は、例えば、A/D変換器を備え、O/E22から入力された主信号の波高値(又は実効値など)をサンプリングし、サンプリングして検出した主信号の信号レベルと予め記憶された信号閾値(例えば、実施の形態1の場合と異なる信号閾値)とを比較する。検出部32は、主信号の信号レベルが信号閾値より大きい場合、光空間伝送での損失が許容レベル内であるとして、例えば、ハイレベルの信号を制御部29へ出力する。また、検出部32は、主信号の信号レベルが信号閾値より小さい場合、光空間伝送での損失が大きくなり許容差が小さくなったとして、例えば、ローレベルの信号を制御部29へ出力する。なお、他の構成とすることができるのは、実施の形態1と同様である。
【0050】
実施の形態1と同様である部分は同一符号を付し説明を省略する。また、通信システム200の動作も実施の形態1と同様であるので説明は省略する。
【0051】
実施の形態3
上述の実施の形態2では、主信号の信号レベルを検出する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、電気信号に含まれる直流成分(すなわち、受光レベル)を検出し、検出した直流成分と予め定められた閾値と比較するような構成であってもよい。
【0052】
図8は実施の形態3の通信システム300を示す構成図である。実施の形態2との相違は、受信装置2においてO/E22で変換された電気信号の交流成分を可変増幅器24へ出力し、変換された電気信号の直流成分(受光レベル)を検出部32へ出力することである。
【0053】
検出部32は、例えば、A/D変換器を備え、O/E22から入力された電気信号の直流成分をサンプリングし、サンプリングして検出した直流成分と予め記憶された閾値とを比較する。検出部32は、直流成分が閾値より大きい場合、光空間伝送での損失が許容レベル内であるとして、例えば、ハイレベルの信号を制御部29へ出力する。また、検出部32は、直流成分が閾値より小さい場合、光空間伝送での損失が大きくなり許容差が小さくなったとして、例えば、ローレベルの信号を制御部29へ出力する。
【0054】
実施の形態2と同様である部分は同一符号を付し説明を省略する。また、通信システム300の動作も実施の形態2と同様であるので説明は省略する。
【0055】
以上説明したように、本発明にあっては、年間のほとんどの時間(例えば、99.9%)を占める天候が良い場合には、安価なバンドパスフィルタを構成したときであっても、バンドパスフィルタを使用せず、通信品質が劣化することを防止することができる。また、時間率が非常に低い(例えば、0.01〜0.1%)悪天候の場合にのみ、構成されたバンドパスフィルタを使用して近傍スプリアスを除去し、全体として通信品質が劣化することを防止することができ、安価なフィルタを用いて、天候に拘わらず通信品質の劣化を防止することができる。
【0056】
上述の実施の形態においては、主信号の中心周波数を2GHz、パイロット信号の中心周波数を315MHzとして説明したが、中心周波数、周波数帯域などはこれに限定されるものではなく、所要の主信号及びパイロット信号を使用することができる。また、光空間伝送における光ビームのビームトラッキンング用信号をパイロット信号として用いることができる。この場合には、新たな信号生成部を構成する必要がない。
【0057】
上述の実施の形態において説明したバンドパスフィルタの通過帯域特性は、一例であって、これに限定されるものではない。例えば、光空間伝送の伝送距離、使用する周波数帯域、電波法等の規制などに応じて適宜設定することができる。
【0058】
上述の実施の形態では、送信装置1から受信装置2へ主信号を送信する場合について説明したが、本発明は、上り方向及び下り方向の双方向に光信号を伝送する光伝送システムにも適用することができる。
【0059】
上述の実施の形態で用いた主信号、パイロット信号の信号レベルを検出するための信号閾値及び主信号に含まれる直流成分を検出するための閾値は、光空間伝送の伝送距離、使用する周波数帯域、電波法等の規制などに応じて適宜設定することができる。
【0060】
上述の実施の形態では、S/Nが低下する例として雨天時の場合について説明したが、これは一例であって、例えば、霧が発生している場合、雪が降っている場合などにおいても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る通信システムを示す構成図である。
【図2】主信号及びパイロット信号の周波数スペクトラムの例を示す模式図である。
【図3】主信号のS/Nと光空間伝送の光信号の損失との関係を示す説明図である。
【図4】受信装置で受信した主信号及びパイロット信号の周波数スペクトラムの例を示す模式図である。
【図5】可変増幅器で増幅された主信号の周波数スペクトラムの例を示す模式図である。
【図6】バンドパスフィルタ通過後の主信号の周波数スペクトラムの例を示す模式図である。
【図7】実施の形態2の通信システムを示す構成図である。
【図8】実施の形態3の通信システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1 送信装置
2 受信装置
11 合成部
12 E/O
13 発光レンズ
14 パイロット信号生成部
21 受光レンズ
22 O/E
23 分離部
24 可変増幅器
25、26 切換回路
27 バンドパスフィルタ
28、32 検出部
29 制御部
30 増幅器
31 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を空間を通じて送信する送信装置と、該送信装置が送信した光信号を受信し、受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を所要値に増幅する受信装置とを備え、所定の周波数帯域で通信する通信システムにおいて、
前記受信装置は、
受信した光信号を電気信号に変換する変換手段と、
前記周波数帯域の電気信号を通過させるとともに、該周波数帯域外の電気信号を阻止する帯域通過フィルタと、
前記変換手段で変換された電気信号の信号レベルを検出する検出手段と、
該検出手段で検出された信号レベルを所定の信号閾値と比較する比較手段と、
該比較手段の比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された電気信号を通過させるか否かを制御する制御手段と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を空間を通じて送信する送信装置と、該送信装置が送信した光信号を受信し、受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を所要値に増幅する受信装置とを備え、所定の周波数帯域で通信する通信システムにおいて、
前記送信装置は、
所定の副信号を生成する生成手段と、
送受信する情報を有する主信号と前記副信号とを合成する合成手段と、
該合成手段が合成した電気信号を光信号に変換する変換手段と
を備え、
前記受信装置は、
受信した光信号を電気信号に変換する変換手段と、
該変換手段で変換された電気信号を主信号と副信号とに分離する分離手段と、
前記周波数帯域の主信号を通過させるとともに、該周波数帯域外の主信号を阻止する帯域通過フィルタと、
前記分離手段で分離された副信号の信号レベルを検出する検出手段と、
該検出手段で検出された信号レベルを所定の信号閾値と比較する比較手段と、
該比較手段の比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された主信号を通過させるか否かを制御する制御手段と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項3】
電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を空間を通じて送信する送信装置と、該送信装置が送信した光信号を受信し、受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を所要値に増幅する受信装置とを備え、所定の周波数帯域で通信する通信システムにおいて、
前記受信装置は、
受信した光信号を電気信号に変換する変換手段と、
前記周波数帯域の電気信号を通過させるとともに、該周波数帯域外の電気信号を阻止する帯域通過フィルタと、
前記変換手段で変換された電気信号の直流成分を検出する検出手段と、
該検出手段で検出された直流成分を所定の閾値と比較する比較手段と、
該比較手段の比較結果に基づいて、前記帯域通過フィルタに増幅された電気信号を通過させるか否かを制御する制御手段と
を備えることを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−266751(P2007−266751A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86172(P2006−86172)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】