説明

通信システム

【課題】複数の受信装置へ画像データを送信する送信装置にかかる処理負荷が過剰に高くなることを回避しつつ、各受信装置にその利用者の属性に応じた範囲の画像を表示させる。
【解決手段】送信装置と複数の受信装置とを含む通信システムにおいて、送信装置には、画像データとその画像データの開示が許可されている者の範囲を示す開示範囲データとをマルチキャスト送信させる。一方、各受信装置には、その受信装置の利用者が閲覧し得る画像の範囲を示す閲覧許可範囲データを予め格納しておき、画像データとともにマルチキャスト送信されてくる開示範囲データと閲覧許可範囲データとを比較し、その比較結果に応じて上記画像データの表す画像の表示または非表示を行う処理を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信網に接続された複数の通信装置へ同一の画像データを送信し、それら通信装置に画像を表示させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ADSL(Asymmetric Digital
Subscriber Line)や光通信などの高速データ通信技術が一般に普及している。この種の高速データ通信技術を利用した通信システムの一例としては、遠隔講義(或いは遠隔プレゼンテーション)システムが挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。この種の通信システムは、講師(或いはプレゼンター)の使用する通信装置(以下、講師端末)と複数の受講者の各々が使用する通信装置(以下、受講者端末)とをインターネットなどの通信網に接続して構成される。講師端末は、講師の音声を収音しその音声を表す音声データを各受講者端末へ送信するとともに、講義資料の画像(以下、資料画像)を表示しその資料画像を表す画像データを各受講者端末へ送信する。一方、各受講者端末は、講師端末から送信されてくる音声データおよび画像データを受信し、その音声データの表す音声を出力するとともに、その画像データの表す資料画像を表示する。このようなシステムによれば、講師にとっては、講義資料に則して誤りなく講義を行うことができる、という利点があり、一方、各受講者にとっては、講義資料を確認しつつ講義を聴きその講義内容についての理解を深めることができる、といった利点がある。
【非特許文献1】http://www.yamaha.co.jp/yss/system/list/projectcast/index.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
講義資料の画像を表す画像データを講師端末から各受講者端末へ送信する際の通信態様としては、ユニキャスト通信による態様とマルチキャスト通信による態様とが考えられるが、画像データの送信元である講師端末にかかる処理負荷を軽減するという観点からマルチキャスト通信が採用されることが一般的である。ここで、ユニキャスト通信とは、送信装置から複数の受信装置へデータを送信する際に、各受信装置へ宛てて各々別個にデータを送信する通信態様のことである。一方、マルチキャスト通信とは、複数の受信装置を1つのマルチキャストグループに所属させ、そのマルチキャストグループ宛に1つのデータを送信し、通信網内に設けられているルータなどの中継装置でマルチキャストグループに属する受信装置の数分だけ上記データを複製し、各受信装置へ送り届ける通信態様のことである。
【0004】
ところで、企業においては、機密保持の観点から各従業員が閲覧し得る資料の範囲を従業員の役職や所属部門(以下、属性)に応じて異ならせていること、換言すれば資料毎にその資料を閲覧し得る従業員の範囲を定めていることが一般的である。このように閲覧し得る従業員の範囲が定められている資料の一例としては、役員のみが閲覧可能な資料や、他の部門に属する者の閲覧が禁止されている部外秘扱いの資料が挙げられる。このため、企業内で行われる講義やプレゼンテーションにおいては、受講者の属性に応じて異なる講義資料(例えば、講義等で使用する資料全体からその受講者が閲覧できない資料を除外したもの)が配布される場合がある。遠隔講義においても、受講者の属性に応じた範囲の資料のみを各受講者に閲覧させることが好ましいことは勿論である。しかし、マルチキャスト通信は複数の宛先へ同一のデータを送信することを前提としているため、このようなニーズに応えることは難しい。一方、資料画像を表す画像データをユニキャスト送信する態様によれば上記ニーズに応えることは不可能ではないが、画像データをマルチキャスト送信する態様に比較して講師端末にかかる処理負荷が高くなり、音声データについてのデータ通信に支障をきたす虞がある。一般に、遠隔講義においては、資料画像等は、講義内容の理解をサポートするためのものであり、講義内容を直接的に表す講師の音声の方が中心的な役割を果たすため、音声データについてのデータ通信に支障が生じることは好ましくない。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、複数の受信装置へ画像データを送信する送信装置にかかる処理負荷が過剰に高くなることを回避しつつ、各受信装置にその利用者の属性に応じた範囲の画像を表示させることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、開示を許可される者の範囲が予め定められている画像を表す画像データとともに、その画像データの表す画像についての前記範囲を表す開示範囲データをマルチキャスト送信する送信装置と、前記送信装置からマルチキャスト送信される画像データと開示範囲データとを受信する受信装置であって、当該受信装置の利用者が閲覧し得る画像の範囲である閲覧許可範囲を示す閲覧許可範囲データを予め記憶し、前記開示範囲データと前記閲覧許可範囲データとから前記利用者に対して当該画像データの表す画像の開示が許可されているか否かを判定し、許可されていると判定した場合に、前記受信した画像データの示す画像を表示する処理を各々実行する複数の受信装置とを有することを特徴とする通信システム、を提供する。このような通信システムにおいては、送信装置からの画像データの送信はマルチキャスト送信で行われるため、各受信装置へユニキャストで画像データを送信する場合に比較して画像データの送信のために送信装置にかかる処理負荷が軽減される。一方、受信装置側では、画像データとともに送信装置から受信した開示範囲データと当該受信装置に予め記憶されている閲覧許可範囲データとにしたがってその画像データの表す画像についての表示または非表示の制御が行われる。
【0006】
より好ましい態様においては、前記通信システムに含まれる送信装置は、前記各利用者に対応付けてその利用者の属性に応じて定まる閲覧許可範囲を示す閲覧許可範囲データを予め記憶しており、画像データの送信に先立って前記複数の受信装置の各々にその利用者に対応する閲覧許可範囲データを送信し、前記通信システムに含まれる複数の受信装置の各々は、前記送信装置から送信されてくる閲覧許可範囲データを受信し記憶することを特徴とする。また、別の好ましい態様においては、前記送信装置は、前記複数の受信装置の各々の利用者に対応付けて、その利用者への開示が許可されている画像のうち開示を許可されている者の範囲が最も狭い画像についての開示範囲データを当該利用者についての閲覧許可範囲を示す閲覧許可範囲データとして予め記憶しており、画像データの送信に先立って前記複数の受信装置の各々にその利用者に対応する閲覧許可範囲データを送信し、前記複数の受信装置の各々は、前記送信装置から送信されてくる閲覧許可範囲データを受信して記憶し、画像データとともに前記送信装置から送信されている開示範囲データの示す範囲に当該許可範囲データの示す範囲が包含される場合に、当該画像データの表す画像の開示が許可されていると判定することを特徴とする。
【0007】
さらに別の好ましい態様によれば、前記送信装置は、前記画像データの表す画像と対をなす音声を表す音声データを前記複数の受信装置の各々へユニキャスト送信し、前記複数の受信装置の各々は、前記送信装置からユニキャスト送信されてくる音声データを受信しその音声データの表す音声を出力することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しつつ説明する。
(A:構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る遠隔講義システムの構成例を示す図である。
この遠隔講義システムは、例えば企業において、本店に居る講師が地理的に離れた各支店に居る受講者に対して遠隔講義を行うための通信システムである。この遠隔講義システムは、講師が利用する講師端末10と、N(2以上の整数)人の受講者の各々が利用するN台の受講者端末20とを、インターネットなどの通信網30に接続して構成される。図1では、支店1に配置される受講者端末20のみが例示されているが、他の支店にも受講者端末20が配置されている。
【0009】
図1に示す遠隔講義システムでは、従来の遠隔講義システムと同様、講師の音声を表す音声データと資料画像を表す画像データとが通信網30を介して講師端末10から各受講者端末20へ送信される。一方、受講者端末20は、受信した音声データの表す音を出力するとともに、受信した画像データの表す画像を表示する。受講者は受講者端末20によって再生される資料画像を参照しつつ、同受講者端末20によって再生される講師の音声を聴くことにより、その講義を受講することができるのである。
【0010】
より詳細に説明すると、図1に示す遠隔講義システムでは、音声データの送受信はユニキャスト通信で行われ、画像データの送受信はマルチキャスト通信で行われる。そして、図1に示す遠隔講義システムにおいては、講師端末10および受講者端末20に本実施形態に特徴的な処理を行わせることによって、各受講者端末20にその利用者(すなわち、受講者)の属性(その受講者の役職や所属部門)に応じた範囲の資料画像のみを表示させることを可能にしている。以下、本実施形態の特徴を顕著に示す講師端末10および受講者端末20を中心に説明する。
【0011】
図2は、講師端末10の構成例を示すブロック図である。
この講師端末10は音声データおよび画像データを送信する送信装置の役割を果たすものであり、図2に示すように、制御部110、通信インタフェース(以下、I/F)部120、音声入出力部130、表示部140、記憶部150、およびこれら各構成要素間のデータ授受を仲介するバス160を有している。
【0012】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。この制御部110は、記憶部150に格納されている講師側プログラム152aにしたがって処理を実行することにより、講師端末10の制御中枢の役割を担う。講師側プログラム152aにしたがって制御部110が実行する処理については後に明らかにする。
【0013】
通信I/F部120は、例えばNIC(Network Interface Card)であり、本店内に敷設されたLAN(Local
Area Network:図示省略)に接続されている。このLANはルータやゲートウェイなどの中継装置(図示省略)を介して通信網30にも接続されている。通信I/F部120は、通信網30から送信されてくるデータを受信し制御部110へ引渡す一方、制御部110から受け取ったデータを通信網30へと送出する。
【0014】
音声入出力部130は、マイクロホン、スピーカ、および音声コーデック(図2では、何れも図示省略)を含んでいる。マイクロホンは、講師端末10の利用者(すなわち、遠隔講義の講師)の音声を収音しその音声波形を表す音声信号を音声コーデックに与える。一方、スピーカは、音声コーデックから与えられた音声信号に応じて音声を出力する。そして、音声コーデックは、マイクロホンから与えられる音声信号にA/D変換を施し、その変換結果である音声データを制御部110へ与える一方、制御部110から与えられる音声データにD/A変換を施し、その変換結果である音声信号をスピーカに与える。
【0015】
表示部140は、液晶ディスプレイとその駆動回路(何れも図示省略)とを含んでいる。表示部140には、制御部110による制御の下、講師端末10の利用者(すなわち、遠隔講義の講師)に遠隔講義を遂行させるための各種入力操作の実行を促す画面(以下、講師側UI(User Interface)画面)や、遠隔講義にて参照する講義資料の画像が表示される。遠隔講義を遂行するための入力操作の一例としては、その講義を一意に示す講義識別子(例えば、講義のタイトルを表す文字列)や、その講義の受講を予定している各受講者を示す識別子(例えば、受講者の社員番号:以下、受講者識別子)の入力操作が挙げられる。詳細については後述するが、キーボードやマウスなどの操作部(図示省略)を介して講義識別子や受講予定者の受講者識別子が入力されると、制御部110は、それら受講予定者の利用する受講者端末20へ宛てて、上記講義識別子の示す講義への参加の可否を問い合わせる通信メッセージ(以下、参加可否問い合わせ)を送信する処理を実行する。また、制御部110は、操作部を介して講義資料を示す情報(例えば、電子ファイル化された講義資料のファイル名)が入力されると、その情報に対応する電子ファイルから講義資料の画像を表す画像データを読出し、その画像データの表す画像を表示部140に表示させる処理を実行する。
【0016】
記憶部150は、図2に示すように、揮発性記憶部151と不揮発性記憶部152を含んでいる。揮発性記憶部151は、例えばRAM(Random Access Memory)であり、講師側プログラム152aを実行する際のワークエリアとして制御部110によって利用される。また、揮発性記憶部151には、レジストテーブル151aが格納される。このレジストテーブル151aについては後に詳細に説明する。一方、不揮発性記憶部152は、ハードディスクやFrashメモリである。図2に示すように、不揮発性記憶部152には、講師側プログラム152aが格納されている他、電子ファイル化された講義資料である講義資料データ152bと、閲覧許可範囲管理テーブル152cとが予め格納されている。
【0017】
図3(A)に示すように、レジストテーブル151aには、各受講者端末20の通信アドレスに対応付けてその受講者端末20を利用して講義を受講する受講者の受講者識別子が格納される。このレジストテーブル151aの格納内容は、その更新を要求する旨の通信メッセージ(例えば、互いに対応付けて格納されるべき受講者識別子と通信アドレスとが書き込まれた通信メッセージ:以下、レジスト要求)を受講者端末20から受信したことを契機に制御部110によって更新される。このレジストテーブル151aの格納内容は、講義へ参加予定の社員(例えば、参加申込書面に受講者識別子に相当する情報(社員番号等)を記載して提出し参加予約を行った社員)の利用する受講者端末20を特定する際に利用される。
【0018】
講義資料データ152bは、複数ページからなる講義資料を電子ファイル化して得られるデータであり、遠隔講義の講師によって作成され、不揮発性記憶部152に書き込まれる。図3(B)に示すように、講義資料データ152bは、講義資料の各ページに対応するレコードを含んでいる。図3(B)に示すように、講義資料データ152bを構成する複数のレコードの各々は、上記講義資料の該当ページの画像(例えば、そのページのスキャン画像など)を表す画像データとそのページに記載されている情報を閲覧し得る者の範囲(以下、開示範囲)を示す開示範囲データとを含んでいる。本実施形態では、講義資料の各ページに記載されている情報の重要度や機密保持の度合いとその情報を閲覧し得る者の属性(本実施形態では、役職)との関連でそのページの開示範囲が1〜5までの5段階の数値(数値が小さいほど多くの従業者が閲覧可能、すなわち、開示範囲が広い)で定められている。例えば、開示範囲が“5”であるページについては、上記企業の社長のみが閲覧可能であり、開示範囲が“4”であるページについては社長または役員のみが閲覧可能である。そして、開示範囲が“3”であるページについては、社長、役員または部長職にある者のみが閲覧可能であり、開示範囲が“2”であるページについては、社長、役員、部長職または課長職にある者のみが閲覧可能であり、開示範囲が“1”であるページについては上記企業の全ての従業員に閲覧が許可されている。この講義資料データ152bは、遠隔講義の実行中に講師の操作に応じて上記レコード単位で制御部110によって読み出される。そして、制御部110は、読み出したレコードに含まれている画像データの表す画像を表示部140に表示させるとともに、そのレコードに含まれている開示範囲データと画像データとをマルチキャスト送信で各受講者端末20へ送信する。
【0019】
以上説明したように、本実施形態では、講義資料のページ毎に予め開示範囲が定められているのであるが、一方、各受講者についても、その受講者が閲覧し得る資料画像の範囲(以下、閲覧許可範囲)がその受講者の属性との関係で予め定められている。図3(C)に示すように、閲覧許可範囲管理テーブル152cには、各受講者の受講者識別子に対応付けてその受講者の閲覧許可範囲を示す閲覧許可範囲データが格納されている。本実施形態では、上記閲覧許可範囲データとして、受講者への開示が許可されている資料のうちで最も開示範囲の狭い資料の開示範囲を示すデータが格納されている。この閲覧許可範囲管理テーブル152cの格納内容は、遠隔講義への参加を通知してきた受講者についてその受講者が閲覧可能な資料の範囲を特定する際に利用される。なお、本実施形態では、各受講者についての閲覧許可範囲を示す閲覧許可範囲データとしてその受講者が閲覧し得る資料画像のうちで最も開示範囲が狭いものの開示範囲を示すデータを用い、受講者の役職との関係で同心円状の閲覧許可範囲(すなわち、役職が高いものほど範囲が広く、より役職が低いものについての範囲を包含する閲覧許可範囲)を定めた。しかし、各講義資料についての開示範囲を例えば部外秘等の部門(営業部や総務部等)単位で定め、各受講者の所属部門を表すデータをその受講者についての閲覧許可範囲データとして使用するようにしても良い。このような態様によれば、各受講者の属する部門に応じて互いに重なり合わない閲覧許可範囲が設定される。また、本実施形態では、受講者識別子に対応付けて受講者の属性に応じて定まる閲覧許可範囲データを閲覧許可範囲管理テーブル152cに格納しておいたが、図3(D)に示すように、受講者識別子にその受講者の属性を表す属性データを対応付けて格納した受講者管理テーブルと、上記属性データに対応付けてその属性データの示す属性を有する者(例えば、その属性データの示す役職にある者や、その属性データの示す部門に所属する者)についての閲覧許可範囲データを格納した属性別閲覧許可範囲管理テーブルとに分割して不揮発性記憶部152に格納しておいても良い。
【0020】
図4は、講師側プログラム152aにしたがって制御部110が実行する処理の一例を示す図である。図4に示すように、制御部110は、講師側プログラム152aにしたがって、レジスト応答処理S01、参加受付処理S02、およびデータ送信処理S03の3つの処理を実行する。図4のレジスト応答処理S01は、通信網30を介して受講者端末20から送信されてくるレジスト要求を受信した場合に実行される処理である。このレジスト応答処理S01は、上記レジスト要求に書き込まれている受講者識別子と通信アドレスとを対応付けてレジストテーブル151aに書き込む処理である。そして、レジストテーブル151aへのデータの書き込みを完了すると、制御部110は、上記レジスト要求の送信元へレジストテーブル151aの格納内容の更新が完了したことを示す通信メッセージ(以下、レジスト完了通知)を返信する。
【0021】
図4の参加受付処理S02は、遠隔講義への各受講者の参加受付を行う処理であり、操作部(図示省略)を介して遠隔講義の開始を指示された場合に実行される。この参加受付処理S02では、制御部110は、まず、参加受付を行うための講師側UI画面を表示部140に表示させる(図示省略)。この講師側UI画面を視認した講師は、講師端末10の操作部を操作して、開始しようとする講義を示す講義識別子や参加の可否を問い合わせるべき者(参加予約を行っていた社員)の受講者識別子を入力し、参加可否問い合わせの送信指示を入力することができる。操作部を介して上記送信指示の入力を検出した制御部110は、上記各受講者識別子に対応する通信アドレスをレジストテーブル151aから読出し、それら通信アドレスの各々を送信先アドレスとして、上記講義識別子を書き込んだ参加可否問い合わせを送信する。
【0022】
上記参加可否問い合わせに対して、講義への参加を通知する旨の通信メッセージ(以下、参加通知)が返信されてきた場合には、制御部110は、その返信元である受講者端末20の通信アドレスを講義へ実際に参加する受講者端末20を示す参加端末識別子として揮発性記憶部151へ書き込み、以下に述べる処理を実行する。すなわち、制御部110は、参加通知の返信元の通信アドレスに対応付けてレジストテーブル151aに格納されている受講者識別子を読出し、さらに、その受講者識別子に対応付けて閲覧許可範囲管理テーブル152cに格納されている閲覧許可範囲データを読み出す。そして、制御部110は、上記読み出した閲覧許可範囲データと、講義資料の各ページの画像を表す画像データをマルチキャスト送信する際の送信先アドレスとなるマルチキャストアドレスとを書き込んだ通信メッセージ(以下、参加確認通知)を上記参加通知の送信元へ返信する。つまり、参加通知の送信元である受講者端末20の利用者の属性に応じた閲覧許可範囲データとマルチキャストアドレスとがその受講者端末20へ返信されるのである。逆に、参加可否問い合わせに対して、講義への不参加を通知する旨の通信メッセージ(以下、不参加通知)が返信されてきた場合には、制御部110は、その返信元の通信アドレスを揮発性記憶部151へ書き込む処理を行わない。
【0023】
そして、図4に示すデータ送信処理S03は、参加端末識別子の示す受講者端末20に対して、講師の音声を表す音声データや講義資料の画像を表す画像データを送信する処理である。より詳細に説明すると、制御部110は、音声入出力部130から音声データが引渡される度にその音声データを上記参加端末識別子の示す各受講者端末20へユニキャスト送信する。一方、画像データについては、制御部110は、以下の処理を実行する。すなわち、操作部(図示省略)を介して講義資料の1ページ目の表示や改頁を指示されるなど表示部140の表示内容の変更を指示されたことを契機として、制御部110は、講義資料データ152bの該当レコードを読出し、そのレコードに含まれる画像データに応じて表示部140の表示内容を更新する処理と、そのレコードに含まれる開示範囲データおよび画像データを前述したマルチキャストアドレスを送信先アドレスとしてマルチキャスト送信する処理を実行する。
以上が講師端末10の構成である。
【0024】
次いで、受講者端末20について説明する。受講者端末20は、通信網30を介して送信されてくる音声データや画像データを受信する受信装置であり、その音声データの表す音声の出力およびその画像データの表す画像の表示を行う。図5は、受講者端末20の構成例を示すブロック図である。図5では、図2と同一の構成要素には同一の符号が付されている。図5と図2を対比すれば明らかなように、受講者端末20の構成は、以下の3つの点を除いて講師端末10の構成と同一である。第1に、揮発性記憶部151にレジストテーブル151aが格納されていない点である。第2に、講師側プログラム152aに代えて受講者側プログラム152dが不揮発性記憶部152に格納されている点である。この受講者側プログラム152dは、受講者端末20の利用者(すなわち、遠隔講義の受講者)に講義を聴講させるための処理を受講者端末20の制御部110に実行させるためのプログラムである。そして、第3に、講義資料データ152bおよび閲覧許可範囲管理テーブル152cが不揮発性記憶部152に格納されていない点である。
【0025】
図6は、受講者側プログラム152dにしたがって受講者端末20の制御部110が実行する処理の一例を示す図である。図6に示すように、制御部110は、受講者側プログラム152dにしたがって、レジスト要求処理R01、参加応答処理R02、およびデータ受信処理R03の3つの処理を実行する。
【0026】
図6のレジスト要求処理R01は、講師端末10へレジスト要求を送信する処理である。このレジスト要求処理R01は、例えば、受講者側プログラム152dの実行開始時に実行される。図6の参加応答処理R02は、講師端末10から送信された参加可否問い合わせを受信したことを契機として実行される。受講者端末20の制御部110は、上記参加可否問い合わせを通信I/F部120を介して受信すると、その参加可否問い合わせに含まれている講義識別子の示す講義へ参加するのか、それとも参加しないのかを問い合わせる画面を表示部140に表示させる。この画面を視認した受講者は、操作部(図示省略)を操作して、その講義への参加指示または不参加指示を入力することができる。そして、参加指示または不参加指示の入力を検出すると、制御部110は各指示内容に応じて以下の処理を実行する。すなわち、不参加指示が入力された場合には、制御部110は不参加通知を上記参加可否問い合わせの送信元(すなわち、講師端末10)へ返信し、受講者側プログラム152dの実行を終了する。逆に、参加指示が入力された場合は、制御部110は、参加通知を上記送信元へ返信し、前述した参加確認通知が送信されてくることを待ち受ける。そして、制御部110は、上記参加確認通知を受信すると、その参加確認通知に含まれている閲覧許可範囲データおよびマルチキャストアドレスを揮発性記憶部151の所定領域へ書き込み、通信網30を介して音声データおよび画像データが送信されてくることを待ち受ける。この参加応答処理R02にて揮発性記憶部151に書き込まれるマルチキャストアドレスおよび閲覧許可範囲データは、後続のデータ受信処理R03にて利用される。
【0027】
そして、図6に示すデータ受信処理R03は、通信網30を介して講師端末10から送信されてくる音声データや画像データを受信し、その音声データの表す音声の再生およびその画像データの表す画像の表示を行う処理である。より詳細に説明すると、制御部110は、通信網30を介して当該受講者端末20宛てにユニキャスト送信されてくる音声データを受信すると、その音声データを音声入出力部130に引渡し、その音声データに応じた音声を出力させる。このようにして出力される音声を聴くことによって受講者端末20の利用者(すなわち、遠隔講義の受講者)は、講師端末10の利用者(すなわち、遠隔講義の講師)が行う講義を受講することができるのである。
【0028】
一方、画像データについては、制御部110は、以下の処理を実行する。すなわち、制御部110は、上記マルチキャストアドレスを送信先アドレスとして送信されてくる画像データおよび開示範囲データを当該受講者端末20宛てに送信されたものとして受信する。そして、制御部110は、受信した開示範囲データと揮発性記憶部151に格納されている閲覧許可範囲データとを比較し、上記開示範囲データとともに受信した画像データの表す画像の受講者への開示が許可されているか否かを判定し、許可されていると判定した場合にはその画像データの表す画像を表示部140に表示させる一方、許可されていないと判定した場合には、受信した画像データを破棄し、所定の画像(例えば、無模様一色の画像や“このページの閲覧は許可されていません”などの文字列画像)を表示部140に表示させる。本実施形態では、制御部110は、閲覧許可範囲データの示す範囲が上記受信した開示範囲データの示す範囲に含まれる場合(すなわち、開示範囲データの値が閲覧許可範囲データの値以下である場合)に、その開示範囲データとともに受信した画像データの表す画像の受講者への開示が許可されていると判定する。例えば、画像データとともにマルチキャスト送信されてくる開示範囲データの値が“3”である場合には、値が3、4、または5である閲覧許可範囲データが記憶されている受講者端末20ではその画像データに応じた画像が表示され、値が1または2である閲覧許可範囲データが記憶されている受講者端末20(すなわち、課長職にある者または役付きではない受講者の利用する受講者端末20)ではその画像データに応じた画像に換えて上記所定の画像が表示される。なお、各講義資料についての開示範囲を例えば部外秘等の部門(営業部や総務部等)単位で定め、各受講者の属する部門に応じて互いに重なり合わない閲覧許可範囲を設定する場合には、開示範囲データの表す範囲と閲覧許可範囲データの表す範囲とが一致する場合(すなわち、資料画像の閲覧を許可されている部門と受講者の所属部門とが一致する場合)に、受信した画像データの表す画像の受講者への開示が許可されていると判定するようにすれば良い。
【0029】
このように、本実施形態によれば、遠隔講義において、各受講者にその属性に応じた範囲の講義資料のみを閲覧させることが可能になる。また、本実施形態では、資料画像を表す画像データの通信態様としてマルチキャスト通信を用いるため、複数の受講者端末の各々に受講者の地位や役職に応じた資料画像を表す画像データをユニキャスト送信する場合に比較して講師端末の処理負荷が過剰に高くなることはない。
【0030】
(B:他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、かかる実施形態に以下に述べる変形を加えても良いことは勿論である。
(1)上述した実施形態では、企業内で行われる遠隔講義を実現するためのシステムに本発明を適用したが、テレビ会議システムに本発明を適用しても勿論良い。また、本発明の適用対象は企業内の講義やプレゼンテーション、テレビ会議に限定されるものではなく、資格取得等の自己啓発を目的とする学習や小中学生および高校生の家庭学習を支援するためのシステムに適用しても勿論良い。要は、通信網を介して送信装置から複数の受信装置へ同一の画像データをマルチキャスト送信する通信システムであれば、本発明を適用し各受信装置における画像の表示/非表示の制御をその受信装置の利用者の属性に応じて行うことができる。例えば、小中学生および高校生の家庭学習を支援するためのシステムに本発明を適用する際には、上記属性として利用者の年齢や学年などを用いるようにすれば良く、資格取得等の自己啓発を目的とする学習を支援するためのシステムに本発明を適用する場合には、その利用者がシステム利用料を支払った正規の利用者であるのか、それとも、無料で体験受講をしている利用者であるのかを上記属性として用いれば良い。要は、画像データを受信する受信装置の利用者についての何らかの属性との関連でその利用者が閲覧し得る画像の範囲を定めるようにすれば良い。
【0031】
(2)上述した実施形態では、参加通知に対して返信する参加確認通知に閲覧許可範囲データを書き込んだが、レジスト要求に対するレジスト完了通知に上記閲覧許可範囲データを書き込んで送信しても良い。また、上述した実施形態では、開示範囲や閲覧許可範囲を“1”から“5”までの5種類の数字で表したが、例えば英文字や片仮名などを用いたコード体系で表しても勿論良い。要は、両者を比較して画像の表示/非表示の制御を行える態様であれば良い。なお、各受講者の閲覧許可範囲データをその受講者の利用する受講者端末20に予め記憶させておいても良いが、講義毎に開示範囲や閲覧許可範囲を示すコード体系を異ならせたり、定期的に上記コード体系を変更するなどして受講者端末20に予め記憶させて閲覧許可範囲データが他の講義などで不正利用されないように配慮することが好ましい。
【0032】
(3)上述した実施形態では、複数ページからなる資料の各ページの画像毎に開示範囲を設定した。しかし、一枚の画像を複数の部分画像に分割し、それら部分画像の各々について開示範囲を設定しても良い。このような場合には、画像データの表す画像全体に占める各部分画像の位置や大きさ、形状を示すデータとその部分画像についての開示範囲を示す開示範囲データとを配列した表示制御データをその画像データとともにマルチキャスト送信し、その表示制御データにしたがった表示制御を受信装置に行わせる(すなわち、表示制御データに含まれている各開示範囲データと受信装置に記憶されている閲覧許可範囲データとを対比し、開示が許可されていると判定される部分画像のみを表示し他の部分画像については所定の画像(無模様一色の画像など)に置き換えて表示する)ようにすれば良い。また、上述した実施形態では、複数ページからなる講義資料の各ページを表す画像データに開示範囲データを対応付けて講義資料データを作成しておいたが、例えば、講師が講師端末10の操作部を操作して該当ページの画像を表示させる際にその都度そのページの開示範囲を指定し、該当ページの画像を示す画像データとともに上記指定された開示範囲を示す開示範囲データをマルチキャスト送信させても良い。
【0033】
(4)上述した実施形態では、講師端末10の不揮発性記憶部152には講師側プログラム152aが予め格納されており、受講者端末20の不揮発性記憶部152には受講者側プログラム152dが予め格納されていた。しかし、これらプログラムを例えばCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)などコンピュータ装置読み取り可能な記録媒体に書き込んで配布しても良く、また、電気通信回線経由のダウンロードにより配布しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠隔講義システムの一例を示す図である。
【図2】同遠隔講義システムに含まれる講師端末10の構成例を示すブロック図である。
【図3】同講師端末10の記憶部150に格納されている各種データを説明するための図である。
【図4】同講師端末10の制御部110が不揮発性記憶部152に格納されている講師側プログラム152aにしたがって実行する処理を説明するための図である。
【図5】同遠隔講義システムに含まれる受講者端末20の構成例を示すブロック図である。
【図6】同受講者端末20の制御部110が不揮発性記憶部152に格納されている受講者側プログラム152dにしたがって実行する処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
10…講師端末、20…受講者端末、30…通信網、110…制御部、120…通信I/F部、130…音声入出力部、140…表示部、150…記憶部、151…揮発性記憶部、151a…レジストテーブル、152…不揮発性記憶部、152a…講師側プログラム、152b…講義資料データ、152c…閲覧許可範囲管理テーブル、152d…受講者側プログラム、160…バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開示を許可される者の範囲が予め定められている画像を表す画像データとともに、その画像データの表す画像についての前記範囲を表す開示範囲データをマルチキャスト送信する送信装置と、
前記送信装置からマルチキャスト送信される画像データと開示範囲データとを受信する受信装置であって、当該受信装置の利用者が閲覧し得る画像の範囲である閲覧許可範囲を示す閲覧許可範囲データを予め記憶し、前記開示範囲データと前記閲覧許可範囲データとから前記利用者に対して当該画像データの表す画像の開示が許可されているか否かを判定し、許可されていると判定した場合に、前記受信した画像データの示す画像を表示する処理を各々実行する複数の受信装置と、
を有することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記送信装置は、前記各利用者に対応付けてその利用者の属性に応じて定まる閲覧許可範囲を示す閲覧許可範囲データを予め記憶しており、画像データの送信に先立って前記複数の受信装置の各々にその利用者に対応する閲覧許可範囲データを送信し、
前記複数の受信装置の各々は、
前記送信装置から送信されてくる閲覧許可範囲データを受信し記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記送信装置は、
前記複数の受信装置の各々の利用者に対応付けて、その利用者への開示が許可されている画像のうち開示を許可されている者の範囲が最も狭い画像についての開示範囲データを当該利用者についての閲覧許可範囲を示す閲覧許可範囲データとして予め記憶しており、画像データの送信に先立って前記複数の受信装置の各々にその利用者に対応する閲覧許可範囲データを送信し、
前記複数の受信装置の各々は、
前記送信装置から送信されてくる閲覧許可範囲データを受信して記憶し、画像データとともに前記送信装置から送信されている開示範囲データの示す範囲に当該許可範囲データの示す範囲が包含される場合に、当該画像データの表す画像の開示が許可されていると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記送信装置は、
前記画像データの表す画像と対をなす音声を表す音声データを前記複数の受信装置の各々へユニキャスト送信し、
前記複数の受信装置の各々は、
前記送信装置からユニキャスト送信されてくる音声データを受信しその音声データの表す音声を出力する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1に記載の通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−258988(P2009−258988A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107150(P2008−107150)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】